2022年3月29日火曜日

【回転窓】恐れず、ひるまず、新たな道を

  3月も終わりに近づき、今週金曜日には新年度がスタートする。新社会人として4月1日を迎える方々にとって、今週は不安と期待が胸中に渦巻く日々になるのだろう▼記者生活を始めて30年近くの時間が過ぎた。駆け出しだった頃の自分と今の自分。仕事仲間がどう見ているかは知るよしもないが、自分自身、常に心掛けてきたことがある。それは取材先と正面から向き合い、相手の懐に飛び込んでいくという姿勢だ▼できるだけ多くのことに興味を持ち、広報担当者と共に記事を作っていく。恐れず、ひるまず、一歩を踏み出すことが良い結果につながると信じ、記者という仕事にプライドを持っていた▼コロナ禍もあって、ここ2年間は取材活動に制約が掛かることも多かった。日々苦労している後輩たちの姿を見て、後押ししてあげられない自分の無力さを感じることもたびたびあった▼「何かを始めるのは怖いことではない。怖いのは何も始めないことだ」。元プロバスケットボール選手で数々の奇跡的なプレーでチームを勝利に導いたマイケル・ジョーダンの言葉だ。恐れず一歩を踏み出し新たな道を切り開いてほしい。

【サッカー場など再整備で方向性】埼玉県、大宮スーパー・ボールパーク構想を策定

  埼玉県はさいたま市にある県営大宮公園を再整備する「大宮スーパー・ボールパーク構想」を策定した。公園内の主要3競技施設(競輪場〈大宮双輪場〉、野球場、サッカー場)を再整備する三つの案を提示。競技施設関係者や民間事業者と意見交換し整備パターンを絞り込む。

 2022年度以降に基本計画の策定や要求水準書の作成などを進める。詳細スケジュールは今後詰めるが、すべての施設の完成は32年度以降を見込む。

 県営大宮公園(大宮区高鼻町、寿能町、堀の内町、見沼区大和田)は敷地面積67・8ヘクタールの規模。「試合がある日もない日も楽しめる公園」をコンセプトに構想をまとめた。

 再整備案として▽競技施設すべて建て替え▽野球場建て替え、サッカー場修繕、新たな運動施設整備▽サッカー場建て替え、野球場大規模改修・修繕、新たな運動施設整備-の3パターンを示した。新たな運動施設はアリーナ、スケートボードパーク、自転車競技場などを想定。民間事業者に意見を聞きながら、新たな競技施設エリアにふさわしい競技施設を検討する。

 3案とも競技施設の併設エリアににぎわいと交流をもたらす空間を確保する。スポーツ観戦前後に滞在するカフェなどの施設のほか、観戦をより楽しむための音響・映像装置、広場などを想定している。

 整備手法では、BTO(建設・移管・運営)方式、設計・施工一括(DB)方式など公民連携事業手法の導入可能性を検討する。今後、エリア全体や各競技施設の基本計画や要求水準書を作成。事業者を公募し設計、工事へと進める。

【記者手帖】おいしいストック効果

 長崎県松浦市の道の駅「松浦海のふるさと館」で食べたアジフライが格別の味だった。一般的なアジフライより大ぶりで肉厚。衣は軽めで歯応えが良く、やわらかい身はうま味たっぷりで全く臭みがない◆同市は県北部の水産都市で、アジやサバの水揚げは全国トップクラスを誇る。2019年に「アジフライの聖地」を宣言しPRに余念がない。道の駅にはアジフライをかたどったモニュメントが置かれている。市内の飲食店で食べられるのはもちろん、コンビニや自動販売機でもアジフライが購入できる◆「聖地」が根付いた背景には西九州自動車道の開通もある。福岡市から1時間半ほどでアクセスできるようになり、観光客が増え、水産物を新鮮なまま都市圏に届けられるようになった。地域資源を生かした街づくりの可能性が広がったのも高速道路のストック効果と言えよう◆アジフライは飲食店ごとに特徴があり、特に趣向を凝らしたソースで差別化しているそう。コロナ禍が落ち着いたら改めて現地を訪れ、今度はお店で揚げたてのアジフライ定食を味わってみたい。(松)

【3件の再開発プロジェクトと連動】東京駅前の地下空間に国内最大級のバスターミナル

バスターミナル東京八重洲の全体イメージパース(都市機構提供)

  東京駅前の地下空間に日本最大級となるバスターミナルが出現する--。組合施行の三つの再開発事業に都市再生機構が参画して「バスターミナル東京八重洲」(東京都中央区)を整備している。建設される3棟の再開発ビルの地下空間を活用し、計約2.1万m2の大規模ターミナルを構築。現在路上に点在するバス停を集約することで利便性を高める。全体開業は2028年度を予定。第1期エリアが9月に開業を迎える。

 東京の玄関口である東京駅には鉄道だけでなく、多くの高速バスが発着している。八重洲南口のバス乗り場に収容しきれないバスが多く、八重洲通りの路上や、駅南側にある鍛冶橋駐車場での乗降を余儀なくされている。バスが道路をふさぐなど交通障害が発生し、利用者にとっても駅からの乗り換え効率が悪いといった課題を抱えている。

 こうした中、八重洲口の外堀通り沿いで組合施行の三つの再開発事業が計画され、一体的なターミナルを整備する機運が高まった。いずれの事業も施行者や時期が異なるため、都市機構がそれぞれの組合に参加組合員として参画。各事業でターミナル床を取得し、3地区にまたがる大規模ターミナルを整備するプロジェクトが始動。都市機構東日本都市再生本部の村上卓也本部長は「三つのバスターミナルを異なる事業で整備する初の試みになるのではないか」と話している。

再開発事業の位置図(都市機構提供)

 ターミナル整備はそれぞれの再開発事業の進捗(しんちょく)に合わせ、3期に分けて進めている。第1期は三井不動産の複合施設「東京ミッドタウン八重洲」(地下4階地上45階建て延べ28万3900平方メートル)を建設する「八重洲二丁目北地区」。ビルの基本・実施設計は日本設計。竹中工務店が実施設計と施工を担当している。ターミナル部分は地下1階のチケットカウンターと、地下2階に整備する6バース(乗降場)。来年3月のオープン予定の東京ミッドタウン八重洲に先行し、9月17日の開業を目指している。

 第2期は、第1期エリアの北側で計画が進む「東京駅前八重洲一丁目B地区」。地上部に51階建て延べ22万5200平方メートル規模の再開発ビルを建設するプロジェクトで地下1階に7バースを整備する。乗降場を地下2階に設ける第1期エリアとは直接接続しない計画だが、両敷地の間にある八重洲地下街を通じて歩行者が自由に移動できるようにする。昨年10月に着工。25年度の完成を予定している。特定業務代行者は大林組、大成建設の2社。組合には都市機構のほか東京建物、大林組が参画している。

 第3期は第1期エリアの南側に位置する「八重洲二丁目中地区」。43階建て延べ38万8300平方メートル規模のビルの地下にターミナルを設ける。地下2階に建設する乗降場は第1期ターミナルと接続し、計13バースに拡大する。東京メトロ銀座線京橋駅に接続する歩行者空間を地下1階に整備し、利用者の利便性を高める。

 着工は24年度。28年度の竣工を予定している。日建設計が基本設計を担当。実施設計と施工予定者は鹿島となっている。組合には都市機構以外に▽鹿島▽住友不動産▽阪急阪神不動産▽ヒューリック▽三井不動産-の5社が参画している。

 ターミナルの運営は京王電鉄バスが担う。運営コンセプトは「SMARTバスターミナル」。利用者が迷わないよう、サイネージやウェブサイトを通じたリアルタイムの情報発信などを視野に入れる。都市機構東日本都市再生本部都心業務部の大貫英二担当部長は「利用者に分かりやすさと安心感を提供し、活気のあるバスターミナルを目指す」としている。

工事が進行中の第1期エリアのバス乗降場(15日撮影)

 9月17日に開業を迎える第1期ターミナル。路上や鍛冶橋駐車場で発着している一部のバスを受け入れ、1日550便以上の発着に対応する予定だ。第3期が完成すると、ターミナル全体で総延べ約2万1000平方メートルの規模になる。バース数は20で1日1500便以上の発着に対応できる。

 15バースを備える「バスタ新宿」(東京都渋谷区)を上回る国内最大級のターミナル。コロナ禍で苦境にあえぐバス業界や観光業にとって復調の兆しになりそうだ。

2022年3月28日月曜日

【凜】林野庁林政部木材産業課・増田莉菜さん

  ◇森林資源の活用と持続めざす◇

 環境問題や地球温暖化への対応などに興味があり、大学や大学院で環境生態学を専攻した。研究室ではカーボンニュートラルの観点で世界的に注目されている二酸化炭素(CO2)の森林吸収など炭素循環を研究テーマに選んだ。学んだ知識を生かしたいとの思いから、林野庁への就職を希望した。「森林という資源を活用しながら保ち続けるというバランスを考えていく仕事は大変な分、やりがいも大きい」。

 入庁して9年目。現在は建築物の木材利用を促すために技術開発を支援している。国内にある多くの森林は伐採の適齢期を迎えている。林野庁は森林を活用しカーボンニュートラルの実現、林業や木材産業の持続可能な成長を目指している。

 「目標の達成には需要の開発が重要になる」という思いが強い。ターゲットは非住宅や中高層の建物。強度や耐火性に優れる建築部材や施工の効率化につながる技術の開発を補助事業で後押ししている。CLT(直交集成板)を活用した建築物の設計や建設、街づくりなどの実証も支援している。

 「2~3年で異動があり、新しく覚えることがたくさんある。大変な半面おもしろい」とやりがいを語る。「どの部署にいても、森林資源を活用し持続させていきたいという思いは変わらない」。初心を忘れず、前を向き続ける。

 (木材製品技術室木材専門官、ますだ・りな)


【サークル】鉄建スキークラブ「雪があってもなくても楽しむ!!」


  2015年に林康雄社長(現会長)の号令で発足した会社公認の「鉄建スキークラブ」。メンバーの勧誘活動が功を奏し3月時点で43人が登録している。「雪上はもちろん、雪のないところでも楽しむ!」が活動モットー。メンバーは建築職が中心だが、内勤、現場を問わず支店や職種を超えてスキーを楽しんでいる。

 高橋昭宏代表取締役副社長執行役員が会長、部長を東京支店の増島和紀建築生産計画部工事計画部長が務める。秋は東京都内で決起集会を行い、シーズン中は越後湯沢方面へのツアーを3回実施している。シーズン後半はクラブ員以外の社員やOB、家族も参加できる「スキー・スノーボード大会」も開催していたが、コロナ禍で2シーズン連続中止に。増島部長は「来シーズンはぜひスキー大会を開催したい」と意欲を見せる。

 現在のチームウエアは4シーズン使っており、「そろそろ新しいチームウエアを作りたい」(増島部長)のがひそかな思い。最近は行事参加の顔ぶれが似通ってきたこともあり、「もっとたくさんの人に参加してほしい」(同)とイベント参加者も絶賛募集中だ。

【駆け出しのころ】アジア航測取締役社会インフラマネジメント事業部長・臼杵伸浩氏

  ◇哲学を持って考え抜く◇

 私が中学生だった1983年8月、自宅近くの小貝川(茨城県取手市)が決壊しました。田畑が洪水に襲われる状況を目の当たりにし、防災の仕事に携わりたいと思います。アジア航測に入り、砂防関係の業務を担当するようになりました。

 入社当時の上司だった小川紀一朗会長の仕事を見ながら、顧客ニーズを的確に捉えた提案方法やプレゼンテーション技術を学びました。仕事をする上で「哲学を持て」という小川会長の言葉を踏まえ、何も考えずに仕事をするのではなく、常に思考を巡らすことを意識するようになりました。

 入社3年目の頃、砂防ダムの設計基準の制定経緯などにも思いを巡らす必要性を感じ、社内の自由研究で砂防ダムデザインを研究しました。デザインの歴史を調べるため、砂防図書館へ通い始めます。そのうち、図書館の館長からいろいろな参考図書を紹介され、砂防ダムの歴史なども教わるようになりました。

 しばらくして会社でそのことを話すと、館長は建設省(現国土交通省)砂防部の初代部長を務められた矢野義男さんだと教えられました。ある時、矢野さんから京都大学の学生の頃に使っていた欧州の砂防事業に関する研究資料をいただきます。ガラス乾板で撮影した写真が掲載された150ページにも及ぶ手書きの立派な本で、今でも私の大切な宝物となっています。

 デザインの歴史的な背景を知り、砂防調査・計画・設計の考え方をより深く理解できます。哲学を持って仕事に取り組むことで、さらに新しい視点からものごとを考えることができる。私の仕事へのアプローチの大きな転換点となりました。

 矢野さんからは、リーダーとしての振る舞いも学びました。終戦直後に国民を励ますための昭和天皇の行幸ルートを設定する責任者だった時、壊れかけた橋を補修したものの物資が不足し十分な工事はできません。万が一にも落橋した時、補修に携わった人に責任が及ばぬよう、その場で自ら切腹しようと日本刀を持っていたそうです。激動期を駆けた人の生きざまに感銘を受けました。

 1999年に広島で発生した土砂災害では、被災直後の現場に初めて足を踏み入れました。行方不明者の救助・捜索活動と並行しての現地調査は常に危険と隣り合わせでしたが、緊急対策計画の策定という強い使命感がありました。

 富士山大沢崩の調査には何度も携わりました。日が昇る前からスタートする過酷な調査。大沢崩には何度も登りましたが、今はさすがに前のような体力はありません。

 仕事に哲学を持つこと。これからの若い人には、何か疑問に思うことは徹底して調べ考え抜いてほしいと思います。矢野さんに私のような新人がいろいろと話をしていただけたのは、礼儀をわきまえていたこともあったと思います。初対面の時から、あいさつやお礼は欠かしていません。若い人の礼儀正しい姿は、目上の方にすがすがしく映るのだと思います。

10年ほど前に調査した富士山大沢崩れ(標高3400m付近)

 (うすき・のぶひろ)1992年宇都宮大学林学科(砂防専攻)卒業、アジア航測入社。防災地質部長、西日本支社長などを経て2021年から現職。神奈川県出身、54歳。

2022年3月25日金曜日

【超高層ビル視野に挑戦】三菱地所設計、「木」でライフスタイル変革目指す

MI鹿児島湧水工場の食堂棟(三菱地所設計提供)

  三菱地所グループが建築物の木造木質化事業を強化している。三菱地所を中心に、木材生産から設計、施工、販売までを一体的に推進。中大規模も含め建築物に国産材が積極的に利用されるような好循環を生み出し全体最適を図る、そんな姿を描く。三菱地所設計は、挑戦的な木造木質化プロジェクトの設計や現行法規制下で最適な技術開発提案、新建材の開発支援などに取り組んできた。デベロッパーグループの設計事務所というメリットを生かし、持続可能な社会の実現に貢献していく。

 三菱地所グループはSDGs(持続可能な開発目標)を見据えて、CLT(直交集成板)活用を進めるなど、持続可能な木材利用に向けた体制を構築してきた。2020年には三菱地所や竹中工務店、大豊建設ら7社で木を用いた新建材を手掛けるMEC Industry(MI、鹿児島県霧島市、森下喜隆社長)を設立した。同社は来月、鹿児島県湧水町にある鹿児島湧水工場に本社を移す予定だ。

 三菱地所設計はこうした動きに呼応して、21年4月にR&D推進部に木質建築推進室を設置。グループ内での情報共有や戦略的な人材育成、設計上のノウハウ蓄積など幅広い役割を担う。同室の吉原正室長は「先導プロジェクトの設計から木造木質化技術を学んで実践できることや、コスト感などを三菱地所と深く議論できることが強み」と話す。

 札幌市中央区のホテル「ザ ロイヤルパーク キャンバス札幌大通公園」は、高層階が純木造、中層階がRC・W造、低中層階が木質化を施したRC造。高層ハイブリッド木造を国内で初めて実現した。大阪市北区の堂島公園内に整備された観光トイレは、CLTを導入し、国産木材によるぬくもりある空間を創出した。

 一連のプロジェクトに共通するのは、すべてを木で賄う「木造化」だけではなく、適材適所に木材を配置する「木質化」を取り入れることで、木材利用量を増やすという思想だ。超高層建築の木造化は技術的に可能だが、現時点ではコストが高く、事業成立が難しい。三菱地所設計の名倉良起建築設計二部兼R&D推進部チーフアーキテクトは「純木造よりハイブリッドがベストであればそう提案する。設計者目線よりも消費者や事業者の目線で考え、トータルで世の中を変えたい」と意欲を見せる。

S造でのMIデッキ活用イメージ(パンフレットから)

 木を用いた空間をもっと身近にしようと開発したのが製材型枠配筋付きデッキ「MIデッキ」だ。配筋と木製型枠とを一体化した製品で、現場での配筋作業を省力化するとともに、下面から木材の現しを可能にした。MI鹿児島湧水工場の食堂棟の天井に導入。大階段部分も木質建材を取り入れることで、S造でありながら全体的に木を感じられる象徴的な場となっている。

右から吉原、名倉、海老澤の各氏。名倉、海老澤両氏は
三菱地所とMIの業務を兼務する

 三菱地所設計の海老澤渉R&D推進部木質建築推進室兼構造設計部チーフエンジニアは、製造から利用まで一連の流れに関わることで「必要十分な部材を製造して、必要なところで利用する統合型最適化を目指す」と話す。「MIデッキが全国で使われれば、何十万平方メートルという木の消費が生まれる。日本の木をうまく使うことで再生産できる余力を作り、林業を活性化させたい」(海老澤氏)。

 MIは、CLTや集成材を用いたプレハブ化により短工期・低コストの住宅を実現する事業「MOKU WELL HOUSE(モクウェルハウス)」も進める。より幅広い層が購入しやすい木の住宅を広めて「新たなライフスタイルを提供する」(海老澤氏)。

 こうした地ならしをしながら、超高層ビルの実現へと歩みを進めていく。「地震対策や火事に対する意識、法的な解釈を踏まえて、何がリアリティーがあるかをしっかりと考えていく」と名倉氏。木質化による二酸化炭素(CO2)固定量算出など効果の見える化により、建築主にアピールする手法も確立していく。

 三菱地所設計は、学識経験者を交えた研究会を立ち上げて、超高層ビルに適用可能な木造架構を研究中だ。集成材などの木質系材料「プライ(積層物)」と高層建築物(スカイスクレパー)を掛け合わせて、木質化・木造化超高層ビルを意味する「プライスクレパー」という言葉も生まれている。吉原氏は「東京都心部でプライスクレパーを目指したい」と力を込める。多くの人が目にして、良さを実感できるようなプロジェクトが実現すれば需要喚起にもつながる。世の中のニーズをくみ取りながら、先を見た提案を続けていく。

【日比谷公園との一体感醸成】三井不ら10社の内幸町一丁目街区開発、総延べ110万㎡規模

開発完了後のイメージ(報道発表資料から)

  三井不動産ら10社が東京・内幸町で計画する「(仮称)内幸町一丁目街区開発」は、総延べ約110万平方メートル規模の施設群を整備する。隣接する日比谷公園との一体感を強め、「TOKYO CROSS PARK構想」として人が中心の街づくりを目指す。

 同街区の所在地は東京都千代田区内幸町1。西側に日比谷公園、東側はJRの線路がある。帝国ホテル東京が立地する北地区、NTT日比谷ビルなどを含む中地区、東京電力ホールディングス(HD)の本社などが立つ南地区に分かれる。

 北地区(約2・4ヘクタール)は帝国ホテルと三井不が2024年度から「帝国ホテルタワー」を解体。「ノースタワー」(地下4階地上46階建て、高さ約230メートル)を30年度に完成させる。設計は日建設計・山下設計JVが担当する。

 31年度には「帝国ホテル本館」を解体し、「新本館」(地下4階地上29階建て延べ約15万平方メートル)の建設に着手する。設計は山下設計・日建設計JV。36年度の竣工を予定している。

 中地区(約2・2ヘクタール)では▽NTT都市開発▽公共建物▽東京電力パワーグリッド(東電PG)▽三井不-の4社で開発を推進する。オフィスやホテルが入る地下6階地上46階建て延べ約37万平方メートルのビルを整備する。設計はNTTファシリティーズ。22年度に着工し29年度の竣工を目指す。

 南地区(約1・9ヘクタール)の開発事業者は▽第一生命保険▽中央日本土地建物▽東京センチュリー▽東電PG-の4社。地下5階地上43階建て延べ約31万平方メートルのビルを整備する。オフィスやホテルなどの機能が入る。来年度から工事に着手し、28年度の竣工を目指す。設計は日建設計が担当している。

 24日に東京都内で会見した三井不の菰田正信社長は「人の流れが交わる場所に大きな価値が生まれる。類いまれなるポテンシャルを持った土地を生かしたい」と話した。NTTの澤田純社長は「街の中心となるのは人だ。街のスマート化と人々の幸せを両立する街づくりを進める」と述べた。

【臨海副都心の発展をリード】ヴィーナスフォート(東京都江東区)が3月27日閉館

開業初年度は約1900万人が来場したヴィーナスフォート(森ビル提供)

  東京・台場にある商業施設「ヴィーナスフォート」が27日に閉館する。来場者の「体験」に着目した施設コンセプトに基づき、中世ヨーロッパの街並みを再現。1999年の開業以降、幅広い世代の人気を得た。臨海副都心エリアに人を呼び込む土台を作り、年間5580万人が訪れる一大観光拠点に押し上げた。施設運営を担う森ビルは跡地で再開発プロジェクトを計画する。街に新たな魅力を生み出そうとしている。ヴィーナスフォートが果たした役割とは-。

 複合エリア「パレットタウン」内の施設として99年に開業したヴィーナスフォート。敷地は東京都が開催を目指していた「世界都市博覧会」(95年中止決定)の会場予定地。敷地の暫定利用者として森ビル、トヨタ自動車らが選定され、開発を進めることになった。

 都市博中止などの経緯もあり、開発当時の計画地周辺はほぼ更地の状態だった。東京臨海高速鉄道りんかい線の全線開業前で、交通手段も新交通臨海線ゆりかもめに限られるなど交通アクセスも悪かった。就業者以外の来街者は少なく「突き抜けたインパクトがないと集客が非常に難しい状況」(森ビル)だった。テナントの誘致も難航していた。

 施設計画に当たっては、既存の商業施設と差別化し、足を運んでもらえるようにすることが最重要課題。そこで着目したのがモノを売るだけではなく「体験」を提供するという発想だ。施設の内装やサービスに工夫を凝らした「テーマパーク型ショッピングモール」というコンセプトを打ち出し、これまでにない商業施設を目指した。

施設内は中世ヨーロッパの街並みを再現した(森ビル提供)

 完成した施設は、イタリアや南フランスなど中世ヨーロッパを再現した街並みに店舗がずらりと並ぶ構成にした。ランドマークとなる噴水広場や教会広場も整備した。20代~30代前半の若い女性をメインターゲットに設定。「女性誌へのヒアリングを通じて『非日常感』を重視する傾向が強いことが分かり、海外をテーマにすることを決めた」(森ビル)。

 空を模した天井部には、時間に合わせて照明演出が変化する「スカイプログラム」を日本で初めて採用した。朝から夜にかけて1時間ごとに空模様が変化していき、屋内に居ながらも歩いて楽しい空間になるよう工夫を凝らした。

 施設は大きな反響を呼び、開業初年度には約1900万人が来場。当初予測の1200万人を大きく上回った。ヴィーナスフォートを起爆剤に周辺開発も加速し「アクアシティお台場」(2000年開業)や「ダイバーシティ東京プラザ」(12年開業)といった大規模商業施設が次々オープン。臨海副都心エリアは国内外から人々を引き付ける観光エリアに成長していった。

 森ビルらはパレットトタウンの再開発計画を進めており、昨年7月にヴィーナスフォートを含む一帯の施設を22年8月までに閉館すると発表した。跡地の一部にはトヨタグループの東和不動産(名古屋市中村区、山村知秀社長)がスポーツ観戦などが可能な多目的アリーナを整備する予定だ。森ビルが建設する施設の計画は未定だが、「臨海副都心の今後の新たなにぎわい創出に寄与する施設を検討していきたい」としている。

 臨海副都心の商業施設として人の流れを作り出したヴィーナスフォート。今後は新たな形でエリアの発展を支えていくことになるだろう。

 ■ヴィーナスフォート■

 ▷所在地=東京都江東区青海1の3の15

 ▷建物規模=S造3階建て延べ6万9158㎡

 ▷設計=森ビル、日本設計、エスインターナショナルアーキテクツ

 ▷内装施工=丹青社、乃村工芸社、内田洋行、西武百貨店

 ▷施工=戸田建設

 ▷竣工=1999年7月

2022年3月24日木曜日

【回転窓】桜に願いを

  東京でも桜の開花が宣言され、桜前線は徐々に北上しつつある。近所の桜並木はつぼみの赤みが増しているものの開花にはまだ時間がかかりそう。ここに来て寒の戻りもあり、満開のお花見が楽しめるのはもう少し先になる▼気象庁の専門サイトが全国にある観測地点の桜がどうなっているか情報を随時更新している。標本木の種類に違いはあるが、1月の中下旬には沖縄で一足早く開花を確認。先週から九州、四国、東海などで開花発表が相次ぐ▼花より団子の人も多かろう。残念ながら今年の花見も飲食が伴う大人数での宴会は自粛ムードが漂う。新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」は全面解除されたが、感染の再拡大を防ぐためにも油断は禁物だ▼春の行楽シーズン到来に期待を寄せる観光業にはコロナ禍に加え、先日発生した福島県沖の地震も痛手になっている。不通の東北新幹線は全線復旧が4月20日前後になるという。転勤や入学など人の移動が多くなる時期でもあり影響は大きい▼東北地方の桜の満開時期は平年4月中下旬ごろ。早期復旧に向け、懸命に作業を続ける現場関係者にエールを送りたい。

【筑後川本格改修100周年】記念ロゴ、九大・藤本清楓さんの作品に


  筑後川の本格改修開始から2023年で100周年を迎える。国土交通省九州地方整備局筑後川河川事務所(吉田大所長)は、記念事業の一環で九州大学芸術工学部の曽我部春香准教授の協力を得て、学生40人が参加するロゴマーク作成プロジェクトを実施。インターネット投票を経て3年生の藤本清楓さんの作品「筑後川改修100年物語」に決定したと23日発表した。

 藤本さんは筑後川の治水、利水に向けた歴史を「100年を表すデザインと色、ディテールで表現した」という。ロゴは22年度から記念ポスターなどに使われる。

 九州最大の1級河川・筑後川は明治、大正、昭和期にそれぞれ大洪水が発生している。本格改修は1923年に発足した内務省筑後川改修事務所で始動。河道の掘削や拡幅、ダム建設などが行われ現在も河川整備が進む。

【供用から半世紀、抜本対策必要に】首都高羽田トンネル(東京都大田区)、中床版の大規模更新が急務


  首都高速道路会社は23日、大規模更新を計画する東京都大田区の「羽田トンネル」で劣化状況などを報道機関に初めて公開した。1964年に供用を開始して50年以上が経過するトンネルは、躯体に浸透する海水が原因でコンクリートの中床版などが腐食。抜本的な性能回復が求められる中、上下線で1日当たり計10万台に上る通過交通に配慮しながら、更新事業をどう進めていくかが課題となっている。

 羽田トンネルは1号羽田線に整備された首都高初の海底トンネル。延長約300メートル、幅20・3~36・2メートル、高さ7・4~11・7メートルの規模。トンネル形式は横浜から東京方面に向かって開削、ケーソン、沈埋の3タイプで構成している。

 供用を始めて約20年となる1983年、同社は沈埋トンネルの剥落防止対策に着手。その後も天井板の撤去や塩害対策などを実施している。躯体同士を連結する継ぎ目に止水板を施しているが、各所で漏水が発生している。

 初公開したのは損傷が著しいダクト部。天井と車道の境に位置する高さ約1メートルの空間は、火災時に煙を逃がす通気口として利用されている。ダクト内はしみ出した海水が影響し、多くの箇所で中床版の亀裂や剥離が目立つ。開削からケーソンに切り替わる上り線部では1分間で最大約10リットルもの海水が流れ込んでくるという。

 トンネル躯体の損傷が全面的に拡大している状況を踏まえ、同社は補修を繰り返すなど対応に当たっている。だが抜本的に性能が回復しておらず、ダクトの床版を造り替えるなどの対策が急務となっている。

 大規模更新工事の期間中はトンネルの片側1車線が使用できなくなる。付近を流れる海老取川の両岸に架かる「羽田可動橋の一部を再利用したり、恒設の橋梁を新たに架けたり」(首都高速会社担当者)して大量の通過交通に支障を来さないよう工夫する考え。

 同社は昨年12月、有識者委員会を設置し大規模更新・修繕などを技術的に検討している。今後は有識者による約1年間の議論を経て、2024年度中の事業化を目指している。

2022年3月23日水曜日

【回転窓】メタボリズムの可能性

  中銀カプセルタワービル 4月に解体着手--。17日付の本紙1面に掲載した記事の見出しだ。建て替えかカプセル交換かで議論が繰り返されてきたが、ついにこの時が来たかと寂しさを覚える方も多かろう▼東京・銀座の端に位置する集合住宅(1972年竣工)は、2本の塔に140戸の取り外し可能なカプセル(部屋)が付いている。生物が代謝を繰り返しながら成長するようにカプセルは必要に応じて交換できる仕組みだ▼住戸の大きさは幅2・5メートル×奥行き4・0メートル×高さ2・5メートル。自分好みに空間をカスタマイズできる。60年代に展開された建築運動「メタボリズム」の実践作品で、建築家・黒川紀章氏(1934~2007年)の代表作として知られる▼「メタボリズムの建築は実体そのものより関係を重視する」と黒川氏は冊子『21世紀への遺言』(92年発行)に記した。実物の存在よりもメタボリズムの考え方や思想の継続、発展に重きを置いていたのだろう▼外されるカプセルは美術館への寄贈や宿泊施設での再活用が計画されている。場所を変えても共生し成長するメタボリズムの可能性を信じ続けたい。

【緑道にコンビニやカフェを整備】川崎市初のPark-PFI、事業予定者に山崎製パン

施設の完成イメージ(報道発表資料から)

  川崎市は22日、Park-PFI(公募設置管理制度)を初導入する「皐橋水江町線沿道及び池上新町南緑道の一体利用による地域環境改善事業」の事業者予定者に山崎製パンを選定した。基本協定の締結は5月ごろを予定している。着工は2023年1月を予定し、同4月の供用開始を目指す。

 事業概要は池上新町南緑道の改修・維持管理、大型車の休憩施設の設置など。事業区域は池上新町南緑道(川崎区池上新町3の4ほか)。対象面積は7656平方メートル(池上新町南緑道4175平方メートル、皐橋水江町線沿道3481平方メートル)。

 提案によると緑道内にコンビニエンスストアを設置し、店舗内と屋外テラスにカフェスペースを設ける。園内にはベンチや花壇、芝生などを設置し、自然を生かした散歩道なども整備する。

【撮ってもいいね!北海道】北海道開発局の開局70年動画コンテスト、最優秀賞は広瀬結花さんに

最優秀賞は広瀬結花さんの作品「THE PROUD LAND HOKKAIDO」に

  北海道開発局は北海道の魅力を支えるインフラ整備の紹介動画を募集した「撮ってもいいね!北海道 動画コンテスト」の審査結果を公表した。531作品の応募があり、最優秀賞に広瀬結花さんの「THE PROUD LAND HOKKAIDO」を選んだ。

 昨年7月に迎えた開局70年を記念した取り組み。「北海道の魅力」や「インフラのちから」をテーマに動画作品を募集した。昨年7月~今年1月の7カ月間で531作品の応募があり、最優秀賞以外に優秀賞5作品、佳作と審査員特別賞を各6作品選定した。受賞作品は同局のウェブサイトで公開している。

 優秀賞の受賞作品は次の通り。

  【優秀賞】

 〈一般部門〉

 「Beautiful Hokkaido」(内山憂さん)、「夏の昆布漁【朝霧に臨む】」(LOVE PHANTOMさん)

 〈学生部門〉

 「『いただきます』を言えてますか?」(高道悠生さん)、「僕らの朝」(北海道名寄産業高等学校・小野天馬さん)、「北海道と北欧の架け橋!道の駅とうべつ」(吉田有里さん)。

【IT人材の育成目指す】近大東大阪キャンパスに情報学部棟完成、eスポーツ専用施設も

競技大会の会場にもなるeスポーツ専用施設

  近畿大学は大阪府東大阪市の東大阪キャンパスに4月に開設する情報学部の学部棟を18日に公開した。人工知能(AI)やデータ分析、サイバーセキュリティー対策などの分野で活躍するIT人材を育成する。近大が新学部を開設するのは6年ぶり。情報学部は15番目の学部となる。基本設計はNTTファシリティーズ、実施設計と施工は五洋建設が担当した。

 学部棟は4階建て延べ約8700平方メートル。研究室以外に「eスポーツ」専用施設やオンライン授業など多様な形態に対応するサロンを設置。壁面全体を大型スクリーンにした教室もあり、システム設計やプログラミング、英語コミュニケーション能力などを身に付けるカリキュラムを組む。入学定員は330人。理工学部情報学科の定員(190人)から140人増やす。

 eスポーツ専用施設にはゲーミングパソコン31台を設置し、音響や録画、配信など常設施設として国内最高クラスの設備を導入。競技大会の会場としても使用できる。

完成した情報学部棟の外観

 学部長にはソニー・コンピュータエンタテインメントの社長などを歴任し、家庭用ゲーム機「プレイステーション」の開発に携わった久夛良木健氏が就任する。久夛良木氏は「情報学は過去にはなかった新しい分野だ。世界では新しい技術がどんどん生まれ、点と点が有機的に組み合わさって新しい産業が生まれている。学生と一緒に可能性をつくり上げるプロセスを学んで、育てる学部を目指したい」と話した。

【総事業費1200億円、経済活性化などに期待】徳島南部道、徳島JCT~徳島沖洲IC間4・7kmの供用開始

徳島沖洲ICの全景(西日本高速四国支社提供)

  西日本高速道路四国支社が徳島市内で建設していた徳島南部自動車道の徳島JCT~徳島沖洲IC間(4・7キロ)が完成し、21日に供用を開始した。2021年3月に開通した徳島沖洲IC~徳島津田IC間(2・4キロ)とつながり、徳島市中心部と京阪神、瀬戸内方面が高速道路網で直結。経済の活性化や周辺道路の渋滞緩和が期待されると同時に、災害時の緊急輸送路にもなる。15年7月に着工した。総事業費は約1200億円。

 同日、徳島沖洲IC近くで式典が開かれ、県や市、国土交通省の関係者、国会議員ら約220人が出席した。前川秀和西日本高速道路会社社長は開通区間の特色として、吉野川河口に架かる約1・7キロの吉野川サンライズ大橋を紹介。「自然環境の保全に配慮し整備したコンクリート道路橋としては国内最長級」と述べた。

 阿波おどりの演舞やテープカット、関係車両によるパレードで開通を祝った。一般車両の通行は午後4時に始まった。徳島南部自動車道は、徳島JCT~徳島県阿南市の阿南IC(仮称)を結ぶ約22キロ。四国横断自動車の一部を形成する。徳島津田IC以南は未開通で、国交省が整備している。

2022年3月22日火曜日

【曲線重力式コンクリートダム、工事進む】立野ダム(熊本県南阿蘇村)、放流管据え付けを「横引き施工」で効率化

 

据え付けが完了した左岸側の放流管

 九州地方整備局立野ダム工事事務所は、工事が最盛期を迎えている立野ダムの建設現場(熊本県南阿蘇村立野ほか)で常用洪水吐き放流管の設置作業の様子を報道関係者に17日に公開した。効率的に施工を進めるため、堤体コンクリートの打設と並行して仮設構台上で放流管を組み立てた後、堤体内に引き込む「横引き施工」を採用。重さ約200トンの巨大な放流管を、油圧ジャッキで押しながらレール上をゆっくりと移動させ堤体内に据え付けた。

 立野ダムの本体工事はブロック分けして堤体のコンクリートを打設するという複雑で手間のかかる柱状打設工法で施工している。一般的なダム放流管の据え付けは堤体内で鋼材を組み立てた後、コンクリートを打設するが、同ダムでは据え付けのための打設休止期間を減らすため、横引き施工を採用した。

 同ダムは常用洪水吐きを下段に1カ所、上段に2カ所設ける。下段の放流管は一般的な工法で施工を終えており、上段の放流管2条を横引き施工で設置する。放流管は鋼製矩形断面溶接管。水を取り込みやすいよう上流側が広いラッパ状の形で寸法は呑口部が幅5メートル×高さ8・93メートル、吐口部が幅5メートル×高さ5メートル、長さは10メートル。

 放流管の製作据え付け工事はIHIインフラシステムが担当。仮設構台には日綜産業の構台システム「マルチアングル工法」が採用されている。

 同日の作業は午前9時ごろに開始。上流側に設けた仮設構台から仮橋とレールを使用して左岸側の放流管を下流方向に約26メートル移動させ、堤体内に押し込んだ。順調に作業が進んだため、当初の予定の半分の3時間程度で据え付けをほぼ完了した。

 右岸側の放流管も近日中に据え付ける。据え付けた放流管はコンクリートで巻き立て、堤体の高さが一定に達したら流木などを捕捉するスクリーンで覆う。

 横引き施工により本体コンクリート打設の待ち時間が3カ月ほど短縮され、型枠やアンカーの設置などの作業の輻輳(ふくそう)が減るため安全に効率よく作業ができるという。同事務所の岩元隆太郎工事課長は「DX(デジタルトランスフォーメーション)も活用しながら効率的に良いものを造っていく」と話した。

 同ダムは国直轄では初となる流水型(洪水調節専用)で型式は曲線重力式コンクリートダム。堤高87メートル、堤頂長197メートル、堤体積約40万立方メートル、総貯水容量約1010万立方メートル。本体工事は西松建設・安藤ハザマ・青木あすなろ建設JVが担当。2022年度末までに本体コンクリート打設を完了する予定。

【半世紀の歩みなど紹介】中部整備局ら、矢作ダム完成50周年で特設サイト開設

特設サイトのトップページ(報道発表資料から)

  中部地方整備局矢作ダム管理所や自治体などで構成する矢作ダム完成50周年記念事業実行委員会は、同ダム完成50周年を記念した特設サイトを開設した。50年の歩みや地元小学生らの環境活動の記録動画、関係者のあいさつやメッセージを収録。矢作ダム管理所ホームページの特設コーナーから閲覧できる。

 矢作ダム(左岸・愛知県豊田市閑羅瀬町、右岸・岐阜県恵那市串原)は1971年4月に管理を開始した。矢作川の洪水調節をはじめ愛知県西三河地域の水道、工業・農業用水、発電など多目的ダムとしての機能を発揮し、地域の発展や防災に大きく貢献している。

 当初は2月に豊田市内で記念式典を開催する予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響で開催を断念。このため、式典のために用意したさまざまなコンテンツを再構成して公開した。

 水野徹矢作ダム管理所長や大村秀章愛知県知事、太田稔彦愛知県豊田市長らのあいさつやメッセージのほか、豊田市立西広瀬小学校の児童と地域の関係者が毎日行っている矢作川の水質汚濁調査などの活動記録を動画で紹介。ダムの役割や効果、水源地域の魅力を再認識してもらうために実施したパネル展の資料も収録している。

 実行委員会のメンバーは、矢作ダムの水源である豊田市、恵那市、長野県根羽村、同平谷村、利水関係者の愛知県企業庁、発電事業者の中部電力再生可能エネルギーカンパニー愛知水力センター、矢作ダム管理所。

【山手線に31番目の駅!?】「バーチャル・アキバ・ワールド」、3月25日開業

  JR東日本ら3社は、巨大な仮想空間・メタバースに駅舎や商業施設などを再現した「バーチャル・アキバ・ワールド(VAW)」を25日に開業する。

 スマートフォンを使い、仮想空間に再現した駅構内などが散策できる。JR東日本はVAWを山手線で31番目の駅と位置付ける。ユーザー同士が対話できる「オフ会ルーム」など豊富なコンテンツを提供し、サービスのさらなる向上に努める。

 VAWはJR東日本と同社グループのジェイアール東日本企画(東京都渋谷区、赤石良治社長)、VR(仮想現実)関連事業を展開するHIKKY(同渋谷区、舟越靖社長)が運営する。駅構内と周辺エリアの散策や商業施設や売店で買い物を可能にするなど、さまざまなメニューを用意。企業同士のビジネスマッチングを創出する環境も整える。詳細はVAWの専用サイトへ。

【記者手帖】復旧・復興報じ続ける

  東北地方の取材活動には、東日本大震災から復旧・復興したインフラが欠かせない。道路や鉄道といった交通インフラだけでなく、電気や水道など生活インフラも日々の暮らしを支えている。東北支社に勤務し1年半。インフラのありがたさを実感しつつも、あることが当たり前になっていた◆16日の午後11時36分、福島県沖を震源とする最大震度6強の大きな地震が起きた。自宅は幸いにも停電せず、生活に支障を来すような被害はなかったが、一夜明けテレビやインターネットで流れるインフラの被災状況に大きな衝撃を受けた。亀裂が生じた高速道路、損傷した新幹線高架橋…。当たり前が一瞬にしてなくなることに怖さを覚えた◆17日は災害対応に奔走する官民の様子を取材した。インフラに従事する誰もが前を向き、11年前の経験と教訓を生かし、被災状況の全容把握や早期復旧に向け全力で当たっていた。徐々に復旧も進み同日に東北道が開通し、18日にはひび割れた常磐道で通行止めが解除された◆社会・経済生活を支えるインフラと従事者に感謝するとともに、その姿を建設専門紙の記者としてきちんと取材し、報じ続けていきたい。(菅)

2022年3月18日金曜日

【万博協がプロポ公告】万博会場の休憩所やサテライトステージ、設計に若手建築家起用へ

  2025年日本国際博覧会協会は、大阪市此花区夢洲の万博会場に設ける休憩所やサテライトステージ、トイレなど20施設の設計を担う42歳以下の若手建築家20人を公募型プロポーザルで選ぶ。大阪府建築士会(岡本森廣会長)が協力。同協会が指定した3施設から応募者が1棟を選択し提案する。審査を経て優秀提案者20人を選定し1施設ずつ設計する。一次審査書類を6月3日まで受け付け、同下旬に審査通過者を発表。通過者は7月上旬に行う二次審査会場で提案書類を提出する。同下旬に審査結果を公表する予定だ。

 参加資格は単体の1級建築士事務所。若手建築家を起用するため、事務所開設者の生年月日を1980年1月1日以降に限定する。20施設の内訳は休憩所4棟、展示用催事施設のギャラリー1棟(想定延べ床面積1000平方メートル)、展示施設1棟(1862平方メートル)、イベント用屋外ステージのポップアップステージ4棟、放送局用サテライトスタジオ2棟、トイレ8棟。

 応募者がプロポーザルで選択できるのは▷休憩所1(想定延べ床面積836平方メートル、委託上限額2030万円〈税込み〉)▷サテライトスタジオ東(150平方メートル、618万8000円〈同〉)▷トイレ6(235平方メートル、555万円〈同〉)ーの3施設。

 万博施設の基本設計期間は23年2月下旬まで、実施設計期間は同3月~12月22日を予定している。工期は24年1月~25年3月。

提供:2025年日本国際博覧会協会


2022年3月17日木曜日

【メタボリズム建築の代表作】黒川紀章氏設計の中銀カプセルタワービル、4月に解体着手

  銀座八丁目開発は、建築家の黒川紀章氏(1934~2007年)が設計した集合住宅「中銀カプセルタワービル」(東京都中央区)の解体工事に4月に着手する。施工は東京ビルド。12月末の工事完了を予定している。

 ビルの所在地は銀座8の16の10。建物はSRC造地下1階地上13階建て延べ3091m2の規模。生物が代謝を繰り返しながら成長する仕組みを建築や都市計画に取り入れる「メタボリズム」に基づき黒川氏が設計した。計140戸の取り外し可能なカプセル(部屋)が特徴となっている。

 1972年に竣工した建物は老朽化が課題だった。管理組合は建て替えとカプセルの交換を議論していたが、昨年3月に敷地の売却を決定。建物が解体されることになった。

4月 日刊建設工業新聞・電子版創刊

  日刊建設工業新聞社は読者サービスの一環として、2022年4月に「日刊建設工業新聞・電子版」を創刊します。テレワークの普及など働き方が大きく変わっています。職場以外でも本紙がいつでもどこでも、パソコンやスマートフォン、タブレットでご覧いただけます。IDとパスワードを登録すれば記事の「切り抜き」機能、お気に入りの記事がブックマークできる「記事クリップ」機能などが無料で利用できます。

 数多くの記事から読みたい記事を探す検索機能も充実。検索ワードのハイライト強調で探していた記事にある検索ワードが一目で分かります。気になる記事を「記事クリップ」に登録しておけば、時間がある時にまとめ読みするのに便利です。

 自動メール配信機能は検索条件(最大4件)とメールアドレス(最大3件)を事前登録すれば、本紙に掲載された最新記事の検索結果がお手元に届きます。

 紙面ビューアー・記事ビューアーで本紙と同じレイアウトのまま紙面を読むこともできます。画面の拡大・縮小はもちろん、切り抜き時の閲覧も可能です。スマートフォンやタブレットはタッチ操作でより快適に記事が読めます。紙面、記事ともにPDFデータの印刷とダウンロードができます。

 これまでの日刊建設工業新聞オンラインサービス(人事・入落札・発注情報検索)は電子版スタート後も引き続きご利用いただけます。電子版の創刊に合わせオープンサイト(https://www.decn.co.jp/)も大幅にリニューアルします。注目の最新ニュースをはじめ、イベントや書籍など建設産業の総合情報をこれまでにも増して積極的に発信します。

 電子版の無料コースと有料コースの料金(税込み)と主な機能の使用条件は次の通りです。購読時の消費税率は紙(8%)と電子版(10%)で異なりますのでご注意下さい。

 4月創刊の日刊建設工業新聞・電子版にご期待下さい。

2022年3月16日水曜日

【回転窓】後輩のいたわり方

  13年活躍してくれた冷蔵庫が動かなくなった。会社の先輩が見つけてくれた価格、性能とも手頃な商品を求めて量販店に行くと、半導体不足の影響で納品は4週間後と説明された。帰りに訪れた近くの競合店に幸い在庫があった▼翌日設置に来てくれたのは若い2人組の作業員。「手を離すよ、気を付けて」「そっち側、そうそう、ありがとう」。後輩をいたわる先輩の指導と丁寧な手際に、チームワークと信頼が感じられて温かい気持ちになった▼庁舎を新築中のあるゼネコンの所長が、安全、工程の順守とともに新入社員の育成を現場運営のポイントに挙げていた。誰もが話しやすい風通しのいい職場を心掛けているという▼「自分のやり方を見つけてほしい」。付きっきりで教えることと、任せて見守ることを分けるのが大事なのだそう。相手をいたわる気持ちに育成の効果は比例するのだと信じたい▼壊れたのは結婚に伴って購入した冷蔵庫だった。当時の先輩は「花を育てよう」と助言してくれた。心の余裕といたわる気持ちを欠かさないために。結婚を考えているという後輩に同じ言葉が贈れる日を楽しみにしている。

【丸の内と八重洲を結ぶ新ルート】東京駅南側東西自由通路、2029年ころの供用めざす

自由通路の完成イメージ(報道発表資料から)

  JR東日本は東京駅の南側に位置する東西自由通路の本体工事に着手する。駅の南側に位置する丸の内と八重洲の両エリアを結び周辺の回遊性を高める。ゆとりある歩行者空間を整備し利便性もアップする。2029年ごろの供用開始を目指す。JR東日本は自由通路などの整備を通じ、駅周辺地区の魅力向上に努める。

 自由通路の計画地は東京都千代田区丸の内1の9の1。幅員8メートル、延長約290メートルの規模。地下1階の空間を利用する。02年6月に都市計画決定した。事業主体はJR東日本、都とJR東海が整備を支援している。

 本体工事の着工は月内を予定し、近く施工者を決める方針。設計はJR東日本建築設計とJR東日本コンサルタンツらが担当。準備工事は大林組などが手掛けている。

【五輪の夢追うアスリート】大建工業、スケルトン・高橋弘篤選手の競技活動を支援

スケルトン競技中の高橋選手。現実離れしたスピードでタイムを競う(高橋選手提供)

  大建工業が、2026年ミラノ・コルティナ冬季五輪の出場を目指すアスリートを支援している。氷上コースをそりで滑走するスケルトン競技で活躍してきた高橋弘篤選手(37)は、冬期五輪に二度出場している国内トップ選手。この4年間でさらに能力を高めると同時に、スケルトン競技の世界を盛り上げることを目標に掲げる。夢を追い続ける姿から見えてくるのは--。

 大建工業、スケルトン競技・高橋弘篤選手の挑戦後押し

 「寝そべった状態で頭から突っ込み、現実離れしたスピードで100分の1秒を争う。『なんだこれは』という非日常感と、細かいコントロールを必要とする緻密な部分がある。自分と向き合いながらトライ・アンド・エラーできる」。スケルトンの魅力を高橋選手はこう説明する。

 高橋選手がスケルトンと出会ったのは、体育系総合大学の仙台大学でボブスレー・リュージュ・スケルトン部に入ったのがきっかけだ。卒業後はクラブチームに所属し、14年ソチ冬季五輪で12位の成績を収めた。だが所属チームの解散が決まり、選手人生は岐路に立たされる。ワールドカップなどに毎年参加して好成績を残さなければ、五輪に出場できない。なんとか競技を続けたいという熱意で、スポンサー探しに奔走した。そこで出会ったのが大建工業だった。

 同社は16年に高橋選手とスポンサー契約し、活動資金を支援し続けている。小谷哲也広報部次長兼広報室室長は「広告塔としてPRしてもらっているが、それだけではない。スポーツは見る人が勇気をもらえる。国と国とのつながりもできていく。そうした社会貢献がこれから大事になる」と話す。ESG(環境・社会・企業統治)やSDGs(持続可能な開発目標)ともつながる。

 同社の支援を得て18年の平昌冬季五輪にも出場。日本人選手で最高の22位に入り、高橋選手は「感謝の気持ちでいっぱいだった」と当時の心境を振り返る。ただ競技を取り巻く環境は厳しい。長野市にある唯一の競技施設は、維持管理コストの負担を理由に18年から冬季の製氷を休止。氷上での滑走練習が国内ではできない。2月の北京冬季五輪は日本としての出場枠を逃した。

レースはスタートダッシも重要なポイントになる(高橋選手提供)

 「悔しい思いはある」と高橋選手。ただ「モチベーションが落ちることはない。次はどうしようというわくわくしかない」とあくまで前向きだ。目指す先にあるのは、26年にイタリアで開催されるミラノ・コルティナ冬季五輪。高橋選手は「次こそ絶対に行ける。必ずたどり着くというマインドが強くある。4年後にどうなっているべきか。そこから逆算して、1年1年をしっかりとクリアしていく」と決意を新たにする。「(五輪で)結果も出すし、皆にも知ってもらうという信念を持って活動していく」とも。「壁にぶつかってもポジティブになれる力がある。本当にすごい。頑張ってほしい」と小谷氏もエールを送る。

 スケルトンの魅力をできるだけ多くの人に知ってもらうのも大きな目標だ。

 「競技の発展と普及のどちらも目指したい。過去に日本は世界トップクラスだった。返り咲くことは難しくない」(高橋選手)

高橋選手㊧と小谷広報部次長兼広報室室長

 スケルトンは体格が大きく体力があれば勝てるという単純な競技ではない。一瞬の判断でそりを操作し、100分の1秒、1000分の1秒を削っていく。求められるのは「真面目さや集中力、細やかさ」(高橋選手)だ。

 30年冬季五輪には、札幌市が招致に名乗りを上げている。国内開催で日本人選手が活躍すればスケルトン競技も脚光を浴びる。小谷氏は「非住宅分野で認知度を上げようと頑張ってきた当社と共通するところがある。マイナースポーツがどんどんメジャーになるようなサクセスストーリーを見てみたい。引き続き支援していきたい」と高橋選手の活躍とスケルトン競技の盛り上がりに期待する。

 夢に向かって羽ばたいていけるか、高橋選手と同社の挑戦は続く。

 □スケルトンとは□

 氷で作られた全長1300~1500メートルのコースを鉄製のそりで滑り、タイムを競う。進行方向に頭を向けうつぶせで滑走。最高速度は時速120キロを超えるケースもある。ランナー(滑走部)と選手が体を預けるシャシー(本体)というシンプルなそりでタイムを競う。02年のソルトレークシティー冬季五輪以降、正式種目となっている。

【水循環と海事の広報官】ミス日本「水の天使」と「海の日」、斉藤鉄夫国交相を表敬訪問

 

斉藤国交相㊥を表敬訪問した横山さん㊨と属さん

 ミス日本コンテストで2022年の「水の天使」に選ばれた横山莉奈さんと、「海の日」に就任した属安紀奈さんが東京・霞が関の国土交通省を14日に訪れ、斉藤鉄夫国交相と懇談した。2人は水循環や海事の広報官として各地でイベントや式典に参加する。

 横山さんは東京医科歯科大学の3年生。下水道から新型コロナウイルスの感染者を見つける技術があると最近知り、驚いたという。今後の活動では「医学生として実際に現場を見てみたい」と話す。

 山口県周南市出身の属さんは最近、2級小型船舶操縦士免許を取得した。操縦は思ったより難しく苦戦した。今後は「地元の瀬戸内海を走ってみたい。SNS(インターネット交流サイト)を活用し魅力を発信していきたい」と話していた。

2022年3月15日火曜日

【回転窓】心地良い揺れにご用心

  東京~新大阪間を最短2時間21分で結ぶ東海道新幹線。最速列車の「のぞみ」は1992年3月14日に運行を開始した▼航空便を意識し、スピードにこだわった営業戦略を展開した鉄道会社。日帰り出張のビジネス客らを取り込むため、1秒1分を削ることに心血を注いだのだろう。運行開始から30年でのぞみは累計13億人の乗客を目的地まで運んだ▼フル規格の新幹線は現在、一部開業を含め北海道、東北、上越、北陸、東海道、山陽、九州の7路線が営業運転している。総営業キロは2997キロ。各地に92駅が設けられ鉄道による高速移動を支えている▼節目を迎えたのぞみはコロナ禍もあり乗客数はここ2年減っている。ただ安全にそして正確な時間で運行し、きょうも多くの人を目的地に送り続けている。1時間に最大12本、5分間隔で運行するスケジュールは日本が世界に誇れる鉄道のマネジメントノウハウだろう▼仕事で新幹線に乗った時、いつも気を付けていることがある。それは「行きの新幹線は座っても絶対寝ない」こと。心地よい揺れは眠りを誘うが熟睡すると寝過ごしてしまうことも。油断大敵と肝に銘じている。

【2023年度末開業めざし工事進む】鉄道運輸機構、北陸新幹線工事現場の動画公開

加賀トンネルの内部(鉄道運輸機構提供)

  鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、2023年度末の完成・開業を目指して工事が進む「北陸新幹線(金沢・敦賀間)」(延長約125km)の工事現場動画を、動画投稿サイト・YouTubeの「JRTT鉄道・運輸機構公式チャンネル」にアップした。石川県内の小松駅や加賀温泉駅を中心に、安全運行を支える電気設備工事の様子などを紹介。工事中の駅、トンネル、除雪基地などを巡りながら、大詰めを迎えている現場をリポートしている。時間は約11分。22年に制作した。

【五輪レガシーの継承実現めざす】スポーツ庁、第3期スポーツ基本計画案策定


  スポーツ庁は2022年度から5カ年の「第3期スポーツ基本計画案」を策定した。21年に開催した東京五輪・パラリンピックのスポーツレガシー(遺産)を継承し発展させる。実現に向け、大会の競技施設を周辺の街づくりや地方創生に活用する。国立競技場など国立施設は民営化事業などを通じ、地域のスポーツ・街づくりの拠点としていく。月末の計画決定を目指す。

 計画案では、スポーツ・健康街づくりに取り組む自治体の割合を15・6%(21年度)から26年度末に40%とする目標を掲げた。東京五輪・パラリンピックの競技施設では、国立競技場の民営化を着実に推進する。新秩父宮ラグビー場(仮称)は、民間活力を活用しながら、神宮外苑地区のにぎわい創出に貢献できる施設として整備・運営する。

 スポーツ施設のストックマネジメントも適正化。国が公立や民間のスポーツ施設の実態を3年に1度のペースで把握し公表する。自治体が取り組む施設の集約・複合化や既存施設の有効活用を後押しする。

【記者手帖】冬の厳しさを初めて知る

  今冬は北日本などが記録的な大雪被害に見舞われた。JR北海道が2月に2度、3月にも1度、これまでにない大規模な計画運休を行うなど、平年以上に大雪の影響が濃かった。道路の慢性的な渋滞や公共交通機関の運休など間接的な影響は道民にとっていつものことだが、今シーズンは個人的にも大きな影響があった◆2月の大雪では自家用車の駐車場前の路地で立ち往生する車が続出。数えてみると2度の大雪時だけで9台の車の救助を手伝った。それだけではなく自分が運転する車も1度、スタックして身動きがとれなくなった。北海道で40年近く暮らし、札幌に住んでから20年になるが、初めてのことだった◆これだけではない。除雪も入るようになり、車が多少スムーズに走れるようになった2月末のこと。路面にできたポットホールにはまり、左側の前後輪2本がパンク。JAFを呼んだが、大人気のレッカー車が来るまで何もない田舎道で8時間待った◆先週、秋口に依頼した自転車の修理が完了したと連絡を受けた。引き取りに行こうと自宅の駐輪場に続く通路を見ると、自分の身長を超す積雪が。北国の冬の洗礼は続く。(ほ)

【施工は大成建設】南摩ダム(栃木県鹿沼市)が定礎、国内初の薄層転圧CFRD

 

 水資源機構は12日、栃木県鹿沼市に建設している南摩ダムの定礎式を現地で行った。金尾健司理事長はじめ同機構や施工する大成建設の関係者、来賓の福田富一栃木県知事、佐藤信鹿沼市長ら約120人が出席。堤体直下に礎石を納める「埋納の儀」などで工事の安全とダムの永遠堅固を願った。

 南摩ダムは洪水調節や水道用水の供給などを目的とした思川開発事業として整備する。堤体をロック材でもり立て、上流側を被覆するコンクリートフェーススラブが遮水機能を担う「コンクリート表面遮水壁型ロックフィルダム(CFRD)」となる。

 コンクリートを薄層転圧する近代的な施工方法を用いるCFRDは国内初。堤体は利根川水系南摩川の流れる上南摩町に位置。高さ86・5メートル、天端236・5メートル、体積約240万立方メートル、総貯水容量は5100万立方メートル。事業完了予定は2025年3月。工事にはDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に取り入れる。

【設計・施工は五洋建設JV】羽田空港と川崎・殿町地区結ぶ「多摩川スカイブリッジ」開通

  川崎市川崎区の殿町キングスカイフロント地区と東京都大田区の羽田空港をつなぐ「多摩川スカイブリッジ」が12日に開通した。多摩川を挟んでオープンイノベーションを軸にした開発が進行する二つの地域を直結し、成長戦略拠点機能の強化につなげる。

 路線名は川崎都市計画道路殿町羽田空港線、東京都市計画道路補助線街路第333号線。延長は約675m(渡河部602.2m、取り付け部72m)。幅員17.3~21.3m。橋梁整備の事業主体は川崎市と都。施行主体が川崎市で、羽田空港側の取り付け部を国土交通省が施行している。設計・施工は五洋建設・日立造船・不動テトラ・横河ブリッジ・本間組・高田機工JV。

開通した多摩川スカイブリッジ(川崎市提供)

 式典には福田紀彦川崎市長、黒岩祐治神奈川県知事らが出席。福田市長は「殿町が羽田と直結するゲートウェイ。日本の成長を引っ張る未来をつなぐ橋になることを期待する。安全・正確な工事を施工していただき感謝する」とあいさつした。

2022年3月14日月曜日

【回転窓】結石の予防と宇宙

  以前に「結石と釣り損じた魚のサイズは大げさに表現される」という内容の川柳を新聞紙上で読んだ。人の心理をうまくついたなかなかの秀作と思い記憶に残っている▼激しい痛みを伴う尿路結石が体外に出た時の喜びはひとしおだろう。その結石のことを話す時、釣り人が逃した魚を語るのと同じように実物よりつい大きめに表現してしまう。共感を覚える方もおられるのでは▼再発の確率が高い疾患とされるが、昨秋に興味深い発表があった。微小重力の影響で宇宙飛行士に多い尿路結石の新たな予防法が発見されたのだ▼名古屋市立大大学院の岡田淳志准教授らと宇宙航空研究開発機構(JAXA)、米航空宇宙局(NASA)の共同研究チームが、国際宇宙ステーションに長期搭乗中の宇宙飛行士に骨粗しょう症治療薬「ビスホスホネート製剤」を投与した結果、リスクを減らせることが分かった。地上でも寝たきりの人などにできやすい尿路結石の予防法に応用できるという▼宇宙滞在技術の確立には衣食住の広範な研究が欠かせない。さまざまな研究成果を宇宙と地球で相互に役立てていけば、宇宙はもっと身近になる。

【光降り注ぐ幻想的な空間に】しまね海洋館、3月16日から新プログラム

シロイルカパフォーマンスエリアのイメージ(報道発表資料から)

  「島根県立しまね海洋館アクアス」(島根県浜田市、島田一嗣理事長)が、プロジェクションマッピングや光で幻想的な空間を演出する新たな体験プログラムを16日に開始する。島根地方で古来から神話が語り継がれてきた背景を踏まえ、「海×神話」をキーワードに設定。海の生き物たちの生態を見たり知ったりしながら、島根の文化や魅力、地球環境へと意識を広げてもらう内容となっている。

 展示テーマは「光降るアクアス」。空間デザイナーにはベルベッタ・デザイン(東京都杉並区)の長谷川喜美代表を起用した。

 同館は中四国地方最大級の規模で、西日本で唯一シロイルカを飼育しており、神々しく降り注ぐ光とともに幻想的にシロイルカを見ることができるコーナーを用意した。神話で知られるヤマタノオロチが登場するサンゴコーナーも設けている。

【熊本地震から6年】長陽大橋ルートの通行止め区間が解除に

 


 2016年4月に発生した熊本地震で被災した道路の最後の復旧区間が11日、交通開放した。熊本県南阿蘇村からの権限代行で国土交通省が村道の復旧工事を進めてきた。発災から6年を迎える前に、現地に復興事務所を構えて取り組んできた道路復旧は、今回の交通開放で全て完了した。

 交通開放したのは、国道57号と同325号を結ぶ約3キロの長陽大橋ルート(村道栃の木~立野線)の一部。震災後、路線上の戸下大橋(延長380メートル)のうち、損壊した約30メートルを仮橋として復旧し、17年8月にルート全線の供用を開始。21年3月の325号新阿蘇大橋の供用後、戸下大橋仮橋を中心に約1キロを再び通行止めとし、仮橋の撤去と架け替えの本復旧工事が行われてきた。

 11日の午後2時、南阿蘇村の吉良清一村長が「開放します」と号令をかけると、バリケードを外して交通を開放。地元の子どもらを乗せたスクールバスなどが通り初めした。吉良村長は「日本の土木技術の高さに感謝します」と、厳しい現場環境下で復旧に尽力した国交省や施工業者への思いを語った。

 道路復旧は17年4月発足の九州地方整備局熊本復興事務所が担当。県の権限代行を受けた国道325号、県道28号(俵山トンネルルート)などの復旧も手掛けた。今回の交通開放で役割を終え、今月末に閉所する。

【着工は2024年度目標】ウィンド・パワー・グループら、鹿島港洋上風力の運転開始前倒しめざす

鹿島港洋上風力発電の完成予想パース
(ウィンド・パワー・エナジー提供)

  茨城・鹿島港で洋上風力発電事業を計画するウィンド・パワー・グループ(茨城県神栖市、小松崎衛代表取締役)などの事業予定者は、運転開始時期を2028年1月から26年中への前倒しを目指す。進行中の環境影響評価(環境アセス)の手続きに関する現地調査を7月に終える予定。必要な情報の精度を高め、手続きの早期完了につなげる。22年度は風況観測、地盤調査などとともに、外港地区に基地港を整備する場合の検討などを進める。

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【凜】COOOL(福岡県宗像市)・宮良ゆかりさん

 ◇冷却人工芝の素晴らしさ伝えたい◇

  特許を出願している国内初の冷却人工芝「COOOL TURF」を開発したCOOOL(福岡県宗像市、濱口光一郎社長)の沖縄直営店(沖縄県糸満市)に勤務する。手掛ける仕事は営業から事務処理、現場施工まで幅広い。1月に転職したばかりで「今は施工手順など先輩たちから教わることばかり」と話す。

 転職前は約15年、インテリアコーディネーターとして内装関係の業務に就いていた。仕事で冷却人工芝と出会い「とんでもないものができた」と衝撃を受けた。「商品を多くの人に知ってもらいたい」という気持ちが大きくなり、濱口社長に入社を直談判した。

 フットサルやゴルフをプレーするのが好きで、人工芝の良しあしは体感している。夏場に暑くなりすぎず人体にも環境にも優しい冷却人工芝は「これから普及するはず」と思っている。

 現場では重い資機材を担ぎ、土まみれになってハンマーを振るう。「かなり泥臭い仕事だけど、言葉では表せない喜びや感動、感謝が詰まっている」。顧客に掛けてもらったありがとうの一言が忘れられない。

 2歳と5歳の子どもを育てる母親でもある。会社は子育てに理解があり社長は施工現場に子どもを連れてきてもいいと言ってくれるという。かわいい盛りの子どもはもちろん、できるだけ多くの人たちに「仕事は楽しい!大人って楽しい!を伝えたい」と思っている。

 (みやら・ゆかり)