シンガポールとマレーシアの国境鉄道施設工事「T232」(発注・シンガポール陸上交通庁〈LTA〉)は建築・土木の複合工事。両国を結ぶ高速輸送システムのうち、五洋建設はシンガポール側の新駅舎、鉄道軌道トンネル、税関・出入国管理・検疫所棟の建設工事などを担う。既存の地下鉄であるトムソン・イーストコースト・ライン(TEL)のウッドランド・ノース駅(2019年竣工、五洋建設単独施工)に隣接した約30ヘクタールの土地に建設する。既存駅舎と地下で直結し、シンガポール中心部へアクセスできるようにする。
両国を結ぶ道路は1日に25万~30万人が行き交い、慢性的な交通渋滞が問題になっている。新線を設けると15~16分で往来できるようになり渋滞解消が期待できる。受注金額は約714億円(受注当時)。単純な価格競争ではなく、隣接駅を建設した経験や品質が重視され20年11月26日に受注に至った。
同工事の特徴は土砂掘削の量が約135万立方メートルに上り、さらに現場には固い岩盤層があり、約25万立方メートルの岩盤を火薬で発破し取り除くことであった。現場周辺には公共住宅、学校、地下鉄の駅などが存在しており、それらの建物に影響を与えないように発破の際は振動をできるだけ抑えるために火薬量を調整するなど細心な作業を強いられた。
場所打ち杭では、硬い岩盤や転石が多く存在する厳しい条件下で1500本を超える杭を打設した。
内田桂司総括所長(国際部門国際土木本部専門副本部長)は「一つの工事でこれだけの掘削量や杭の数量はなかなかない。非常に苦労した工種だった」と振り返る。
同工事は新型コロナウイルス感染症発生後に発注され、同工事に従事する作業員が外部でコロナに感染することを避けるため、作業員専用の宿舎を現場内に設けるなどさまざまなリスクを考慮しながら工事を開始した。
24年12月時点で日本人6人、ローカル職員120人が従事しており、今後、建築内装工や設備工の最盛期には約2000人が働くという。内田総括所長は「シンガポールでは今後もLTA発注の地下鉄工事などが多く計画されている。同国での信頼をさらに高め続けたい」と話す。
from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172888
via 日刊建設工業新聞
0 comments :
コメントを投稿