夜道を歩いていると、青白く光る月を見上げることがある。満月なら、なおさらだ。きれいなのに、どこか不気味。こんな夜は、どこかで誰かが悪巧みをしている気がしてならない▼月は何も言わない。ただ、青白い光を地上に落としている。こちらが何を思おうと知らん顔だ。それなのに、見られているような気がする。月のせいなのか、こちらに後ろめたいことがあるのかは分からない▼人間は勝手なものだ。腹が立てば世の中に文句を言い、思い通りにならなければ誰かのせいにする。誰にも言えないことを抱えた夜には、何の罪もない月にまで文句を言いたくなる▼考えてみれば、書くことも似ている。誰かに届く保証などない。それでも、言葉にせずにはいられないことがある。書いたところで何かが変わるとは限らない。それでも、淡々と書く。月が黙って夜空を照らすように▼月は空にいる。こちらの愚痴にも、怒りにも、たぶん興味はない。ただ青白く、こちらを照らしている。ひとりで歩く夜も、誰かと歩く夜も、いつも同じように。もっとも、月からすれば、こっちの方がよほど怪しい夜更けの男なのかもしれない。
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from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=188157
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