増大が続く世界の航空需要を取り込み、日本経済・社会の成長と地域の活性化を図るため、首都圏空港の機能強化の必要性が指摘されている。
成田空港(千葉県成田市)では、昨年9月に国と県、空港周辺9市町村、成田国際空港会社による4者協議会の初会合が開かれ、新たな機能強化策の具体化に向けた議論がスタート。同11月の会合で成田空港会社が示した第3滑走路などの整備案の調査内容をたたき台に検討が進む。
2020年東京五輪後を見据え、激化する空港間競争を勝ち抜く次の一手を模索する。
◇第3滑走路構想始動、空港間競争激化で対応急務◇
成田空港の1日当たりの旅客数(14年度実績)は国際線約8万人、国内線約1・7万人。発着回数(15年冬ダイヤ)は国際線が1日最大約490回、国内線が約130回。就航都市数は36カ国3地域の106都市に上る。
急増する訪日外国人旅行者(インバウンド)などへの対応を強化するため国は成田・羽田両空港の機能強化を推進。両空港とも20年までに実現可能な各種施策を実行し、年間合計発着枠を現在より約8万回多い約83万回にまで拡大する計画だ。
成田空港では管制機能の高度化と高速離脱誘導路の整備でそれぞれ年間2万回ずつ増やす計画。成田空港会社は自己財源から約470億円を投じて同誘導路やエプロン整備などを進める。
国土交通省は16年度予算案で成田空港関連の施設整備に49億円を計上。空港庁舎の耐震対策を引き続き進めるほか、五輪の関係者や観客を円滑に受け入れるためのCIQ(税関・入管・検疫)エリアを含めたターミナルビル全体の利便性向上に向け、必要な施設整備の調査・検討を実施する。
首都圏空港の航空需要の増加傾向が続く中、国交省は20年代には需要が両空港の計画処理能力を超過すると予測する。一方で、他のアジア各国の主要空港は17~19年に大規模な施設整備を予定しており、20年代前半までに機能が大幅に拡張される見通し。こうした空港との間で、ネットワーク拡充に向けた路線獲得競争が一段と激しさを増すことが予想され、国は首都圏空港のさらなる機能強化を急ぐ必要性を指摘している。
4者協議会での議論でたたき台になるC滑走路南東案 |
発着容量の拡大効果や運用の効率性などの観点から、他の整備案よりも優位と評価した。国交省の首都圏空港機能強化技術検討小委員会が示した整備費約1000億~1200億円程度については、用地費を含む滑走路と新滑走路に付随する誘導路のみの限定的数値とし、今後精査する必要があるとした。
用地上の問題では、一定規模の用地面積を確保する必要があるが、他の案に比べて家屋への影響は比較的小さいと説明。騒音の影響については、騒音コンターを今後作成してより具体的な検証を行った上で、対策を進める考えを示した。
夜間飛行制限の緩和については、他の機能強化策と一体的に議論する必要性を指摘。一方で、周辺住民への航空機騒音の影響も大きいことから、環境対策への十分な配慮と慎重な検討が欠かせないと強調した。
同社幹部は「検討の方向性として、C滑走路の新設、B滑走路の北伸、夜間飛行制限の緩和の三つがポイント。何をどのように進めるか。まずは関係者が共通認識の下で機能強化への理解を深めるため、騒音の影響などより詳細な調査を行い、各種データや調査結果を提供しながら議論を進めてもらう」と話す。
◇地域との共存共栄が不可欠◇
4者協議会を中心とした機能強化策の議論とは別に、成田空港の施設整備を地元主導で支援する動きも活発化している。地元住民や商工会らで組織する「成田第3滑走路実現を目指す有志の会」は、昨年末に組織の運営体制を固めた。今後、関係機関への要請や提言活動などを展開していく。
15年12月19日に開いた代表幹事会で有志の会の会長に選任された山崎和敏多古町商工会会長は「地域の発展のため、知恵を出して第3滑走路の早期実現に頑張りたい」と決意を表明した。
有志の会に顧問として参加する成田市の小泉一成市長は「4者協議会の中で(第3滑走路実現への)カギは騒音、環境、振興の各対策にあり、顧問としてつくる側と地域の声を届けていきたい」との考えを示した。
成田空港の建設をめぐり、反対運動が深刻化した過去への反省を踏まえ、国や成田空港会社ら事業者側は、地元への丁寧な説明と意見の収集を行いながら計画案の内容を詰めていく方針だ。
同社はこのほど、成田空港の機能強化の必要性を分かりやすく解説したパンフレットを県や関係市町に配布し、専用ホームページも開設した。さまざまな情報を社会に広く発信・提供し、関係者の理解・協力を得ながら地域と空港の共存共栄を目指す。
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