2026年3月10日火曜日

東日本大震災15年/日本建築学会・小野田泰明会長に聞く/安全な環境が次への希望に

 建築計画学の専門家として、東日本大震災や能登半島地震などの被災地で復興事業に携わってきた。物理的復興を最優先した東北での経験は、その後の復興の在り方に大きく影響。復興事業の最前線で被災地を見つめ続ける中、「能登ではなりわいの復興に力を入れている」という。
 --東日本大震災から15年がたつ。
 「能登の復興に関わり、改めて東日本大震災がいかに特殊な災害、復興であったか気付かされた。500キロにわたる海岸線で津波被害が発生し、その中には原子力発電所も含まれる。数百年から千年に一度程度起きるL2津波に対応した巨大なインフラを整備した。物理的な安全の確保に特化し復興したが、今後膨大なインフラを維持し続けられるか疑問も残る」
 --被災地の現状は。
 「東北は高齢化や人口減が著しいが、漁業など産業の足腰が強く、活力がある。事業者たちが次に向かって非常に頑張っている。地元の負担を減らして物理的に復興したことで、事業者がすぐ立ち上がれた側面もあろう。安全な環境を作り出したことで希望を持って、次に向け仕事をしている人たちがいっぱいいる」
 「覚悟を持った若者が現れている。発災当時子どもだった人たちが被災地に戻り、復興後の環境をマネジメントする会社を経営するなど、次の世代に思いが受け継がれている。親の姿を見ていた世代が、地元で良い仕事をしている姿を見るのはうれしい。こういう継承もすごく大事なことだ」
 --能登でも復興事業に携わっている。
 「いま能登では物理的な復興を第一とせず、なりわいの復興を重視している。人々の生活が戻り、文化を残していくという復興だ。交流人口をどう増やしていくかなど地味で時間のかかる施策だが、民間と公共が一体となって事業をつくっている。ただ公費解体は壊した方が得をするという制度で、伝統的な建物が消えようとしている」
 「金沢の建築家たちを中心に組織する『能登復興建築人会議』が、石川県と共に古い民家のリストを作成した。建物の価値や被害状況を整理したことで再生に向け投資しやすくなった。建築の専門家が再生を担う事業者のリスクを減らし、一緒に伴走するような役割を果たしている」
 --復興事業の在り方、進め方をどう考える。
 「被災地ではとにかく時間がないので、短い時間の中で長い時間のことを考えなくてはいけない。能登では何を復興するのか冷静に議論している。そのプラットフォームを、被災地を伴走支援するNGOが担うケースも少なくない。東日本大震災の時に生まれ動き出しNGOだが、現在は行政と一緒に資金を集め被災地に届けている。こういう人たちの出現は、日本が成熟してきた一つの証だろう」
 「マルチステークホルダーは物理的な復興を目的とせず、当事者を巻き込みコミュニティーの回復やなりわいの再建に力を入れているところも多い。能登で活躍するNGOもそうだ。建築学会では最新の知見を整理し、情報提供やアドバイスするような役割を担っていきたい」。




from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=182264
via 日刊建設工業新聞

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