千葉県四街道市が進めていた第1期庁舎整備工事が8月に完了し、市の新たなシンボルとなる新築棟が姿を見せた。デザインに市の花である「サクラソウ」を取り入れるなど、市民に親しまれる建物を目指した。利用者が多い窓口や議会、災害対策室などの機能を集約している。既存棟を減築、改修する第2期工事は11月にスタート。2026年2月の全庁開庁に向け、着実にプランを進めていく。
現庁舎は鹿渡無番地(敷地面積1万8284平方メートル)に所在する。本館と新館、分館、新分館で構成する。本館と新館は施設の老朽化や耐震性の不足が課題となっていたことから、新庁舎の整備に踏み切った。基本・実施設計はINA新建築研究所が手掛けた。施工は大成建設が担当している。
第1期工事として敷地北側にあった駐車場に新築棟を建設した。設計を担当したINA新建築研究所の加藤朋行社長によると、設計方針は「時代のニーズに対応するため、長寿命化を目指した」。建物はRC一部S造4階建て延べ8040平方メートルの規模。コンパクトにし既存庁舎も活用することで、建設事業費や維持管理費を縮減。メンテナンスコストを抑えることも考慮したという。
新築棟の階高は既存棟に合わせている。大成建設の梅村英樹千葉支店作業所長は「現代の建物にしては階高が低く感じるかもしれない」とした上で、「設備などを含め、苦労して設計されたように感じる」と述べた。
建物外観はシンプルにまとめ、スタイリッシュな意匠にした。内観は白を基調とした明るい雰囲気。エントランスにつながる歩行者専用道路「サクラ街道」も整備する。サクラ街道に面した場所と新築棟北側に新たに駐車場を設ける。
エントランスから庁舎内に入ると、開放感のあるまっすぐな1本道が迎えてくれる。ここに利用者が多い窓口を集約した。プライバシーに配慮した相談室や、バリアフリートイレ、視覚・聴覚障害者をサポートする設備などを設け「すべての人にやさしい庁舎」を目指した。
防災拠点としての機能にも力を入れた。現庁舎では、災害時に対策本部を設置した後、各課で個別に議論しており、情報共有や連携の面で課題があったという。新築棟は3階に災害対策室や危機管理室、特別会議室をまとめ、スムーズな連携を可能にした。地震や浸水に備え、サーバー室は3階に、非常用発電機や受変電設備は屋上に設けた。
4階は議会機能を配置した。議会関連諸室を1フロアに集約。議員は控室や会派室から議場に移動できる。議場はオーソドックスな対面型レイアウトにした。傍聴席は車いす利用者や子ども連れの人に対応した席を設けた。誰でも訪れやすい開かれた議会エリアにした。
環境との調和も図った。真夏の直射日光を抑える庇(ひさし)や、高断熱性のエコガラス、高効率空調設備などを採用。太陽光発電設備も設置するなど、エネルギー使用量の削減に努めた。
第2期工事は、既存の新館の4、5階部分を取り壊し、RC造地下1階地上3階建て延べ2207平方メートルの規模に減築する。S造2階建て延べ427平方メートルの分館とRC一部S造地下1階地上3階建て延べ867平方メートルの新分館は改修する。市内に分散している庁舎機能も新庁舎に集約するという。
「市はまさに歴史の転換期を迎えている」。役割を静かに終えようとしている現庁舎を前に鈴木陽介市長は語る。半世紀を超える55年もの間、市政運営の拠点として市民に親しまれてきた現庁舎が生まれ変わろうとしている。新築棟は15日に供用開始となる。
from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=167839
via 日刊建設工業新聞
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