2025年4月9日水曜日

ワールドワイド/メッセ・フランクフルトが冷暖房・空調設備国際見本市

 ◇持続可能な未来へ最新技術発信  メッセ・フランクフルトが主催する世界最大級の冷暖房・空調・衛生設備専門国際見本市「ISH」が、ドイツのフランクフルトで3月17~21日の5日間にわたり開催された。「持続可能な未来へのソリューション」をテーマに、冷暖房設備や空調機器など54カ国・地域から2183社が出展。業界最先端の技術やトレンドを発信した。日本企業はTOTOが大規模ブースを出展し、来場者の注目を集めた。  ISHは1960年から2年に1度の頻度で開催している。設備業界の最新技術が一堂に介し、グローバルトレンドや技術動向を見定める場として国内外から関心を集める。期間中は150カ国・地域から16万3157人が来場。全体の45%がドイツ国外からの来場者で、国際的な注目度の高さを物語っていた。  世界中から多くのバイヤーが集まるため、企業にとっても海外市場開拓の絶好の機会となっている。出展した日本企業関係者からは「実質的な商談の場となるため、念入りな出展準備を進めてきた」との声もあった。ブースを2階建てにしたり、バーカウンターを設けたりしてデザインを意識したブースも多く、各社のこだわりが感じられた。  展示会は衛生設備や配管設備、熱供給システム、ソフトウエアなど8ジャンルに分かれて行った。各社ともスマートホーム技術やIoT関連製品の展示が目立ち、今後の住宅設備業界のトレンドが垣間見えた。再生可能エネルギーや高耐久性素材など環境に配慮した製品も注目度が高かった。電気ではなく木材を熱源に使用する暖房や、排水の熱を再利用するシステムなど、日本国内ではなじみの薄い技術も多く見られた。  会場で大きな存在感を示していたのはTOTOだ。玄関口にある展示ホール「フォーラム0」に、前回に続いて1社で単独出展した。出展面積は約1500平方メートル。独自の洗浄技術や環境負荷を減らす取り組みを伝えるコーナーを設け、企業イメージを発信した。  ブースではホワイトに加え、ブラックやベージュ、グレーの4色の衛生陶器を展示した。素材や加工が異なる水洗金具や洗面台も設置され、多くの見学者でにぎわっていた。グローバル事業推進本部でプロモーションを担当する佐藤克仁氏(グローバルプロモーション推進グループリーダー)は「インテリア性を重視する欧州の文化を踏まえ、空間に調和する製品を選べる楽しさをアピールした」と展示の狙いを説明する。  ウォシュレット(温水洗浄便座)の販売拡大に向け、水道工事業者が設置作業を体験できるコーナーも設けた。「取り付けの簡易性を体感してもらい、リフォーム需要の獲得につなげたい」と佐藤氏。施工時間を計測するタイマーを設置するなど、展示方法にも工夫を凝らした。  1社の単独ブースとなるフォーラム0への出展は、製品の宣伝だけでなく、ブランドの地位を確立する上でも重要な意義を持つ。田村信也取締役兼専務執行役員(取材当時、現社長)は「世界的な影響力の大きい欧州市場で、世界のコアとなるブランドに肩を並べたことを証明できた」と話す。市場への波及効果も大きく「取り扱い先が自信を持ってTOTOの製品を提案できるブランドイメージが育った」と手応えを語った。  少子高齢化が進む欧州では、将来的な職人不足への危機感が日本同様に高い。こうしたニーズを捉え、海外での販路拡大を目指す日本企業も出展していた。ステンレス配管製品の販売を手掛けるオーエヌ工業(岡山県津山市)は、配管用ステンレス鋼鋼管の管継ぎ手「ナイスジョイント」を展示。複雑なねじ切りを省略できる施工効率の高さをアピールした。営業本部の江原泰道部長は「誰でも一定の品質を保って施工できる技術は、日本だけでなく海外でも非常に評価が高い」とし、さらなる事業成長に自信を見せた。  産業・業務用加湿器の製造を手掛けるユーキャン(東京都八王子市)も欧州での需要拡大を目指す。冷蔵室からクリーンルームまで幅広く使用できる超音波加湿器を展示。国内外の製造ラインを統一し、コスト削減と納期短縮を実現した。現在は国内が売り上げの中心だが、棚見修一社長は「欧州市場ではフードロス対策や鮮度管理の分野で潜在的な需要が大きい」と分析する。出展を足掛かりに「海外取引量を倍増させたい」と意気込んだ。  日本GT(東京都目黒区)はバイメタルサーモスタット(自動温度調節器、温度過昇防止装置)を展示した。熱関連の家電製品や自動車、通信機器分野など幅広い用途での活用を提案し、海外市場の拡大を狙う。3度目の出展となり、営業部営業課の今藤稜係長は「展示会の規模が大きく、実際の売り上げとつながってきている」と手応えを語った。  新たな市場の開拓を目指す企業もいる。初出展となった因幡電機産業は、空調の室内配線を隠す化粧カバー「スリムダクトMD」を展示した。ドイツは電材用のラバーで室内配線を覆うのが一般的で、化粧カバーが普及していない。美観の高さや維持管理の手軽さを売り込み、新たな需要を掘り起こす。因幡電工カンパニー企画室製品企画グループの鹿嶽智史主事は「まずは新たな選択肢を提示し、業界の反応を見定めていきたい」と話す。  最新の技術やトレンドを求め、展示会場は連日多くの関係者でにぎわっていた。メッセ・フランクフルトの調査によると、来場者の約96%が「出展者の展示に満足した」と回答したという。次回のISHは2027年3月15~19日に開催される。市場ニーズの高い効率化と持続可能性を両立した製品はどのように進化していくのか。さらなる技術革新と業界の発展が期待される。 from...

シンガポールと五洋建設-60年の歩みと戦略・4/実績認められ受注した鉄道施設工事

 シンガポールとマレーシアの国境鉄道施設工事「T232」(発注・シンガポール陸上交通庁〈LTA〉)は建築・土木の複合工事。両国を結ぶ高速輸送システムのうち、五洋建設はシンガポール側の新駅舎、鉄道軌道トンネル、税関・出入国管理・検疫所棟の建設工事などを担う。既存の地下鉄であるトムソン・イーストコースト・ライン(TEL)のウッドランド・ノース駅(2019年竣工、五洋建設単独施工)に隣接した約30ヘクタールの土地に建設する。既存駅舎と地下で直結し、シンガポール中心部へアクセスできるようにする。  両国を結ぶ道路は1日に25万~30万人が行き交い、慢性的な交通渋滞が問題になっている。新線を設けると15~16分で往来できるようになり渋滞解消が期待できる。受注金額は約714億円(受注当時)。単純な価格競争ではなく、隣接駅を建設した経験や品質が重視され20年11月26日に受注に至った。  同工事の特徴は土砂掘削の量が約135万立方メートルに上り、さらに現場には固い岩盤層があり、約25万立方メートルの岩盤を火薬で発破し取り除くことであった。現場周辺には公共住宅、学校、地下鉄の駅などが存在しており、それらの建物に影響を与えないように発破の際は振動をできるだけ抑えるために火薬量を調整するなど細心な作業を強いられた。  場所打ち杭では、硬い岩盤や転石が多く存在する厳しい条件下で1500本を超える杭を打設した。  内田桂司総括所長(国際部門国際土木本部専門副本部長)は「一つの工事でこれだけの掘削量や杭の数量はなかなかない。非常に苦労した工種だった」と振り返る。  同工事は新型コロナウイルス感染症発生後に発注され、同工事に従事する作業員が外部でコロナに感染することを避けるため、作業員専用の宿舎を現場内に設けるなどさまざまなリスクを考慮しながら工事を開始した。  24年12月時点で日本人6人、ローカル職員120人が従事しており、今後、建築内装工や設備工の最盛期には約2000人が働くという。内田総括所長は「シンガポールでは今後もLTA発注の地下鉄工事などが多く計画されている。同国での信頼をさらに高め続けたい」と話す。 from...

新社長/UBE三菱セメント・平野和人氏、組織成熟のステージに

 最終年度に入った中期経営戦略で掲げた目標達成に向け、より強固な国内事業を確立しつつ、海外事業のさらなる成長とカーボンニュートラル(CN)対応に注力する。製販一体の体制が整い「多様な人材がいる」という強みを最大化し、「組織を成熟させる次のステージ」への移行でアクセルを踏み込む。  --業績が順調に推移している。  「本年度は次の中期戦略を策定する大事な年になる。キーワードはビジネスモデルの再構築だ。国内事業をより確実にしつつ、海外事業を大きく成長させる。社会貢献としてCN対策も進める。現在の中期戦略で掲げた営業利益の目標は前倒しで達成した。次期戦略の期間中に30年度が目標だった営業利益750億円の達成を目指す。バイオマス関連などの事業化も進める」  --主力のセメント事業で将来像をどう描く。  「国内は事業基盤の強化とCN対策が重要になる。セメント需要は落ち込んでいるが、いずれ下げ止まるとみている。当面は1トン当たり2000円の値上げをしっかりとやり切る。生産体制は見直しを終えたが、燃料コストなどに工夫の余地がある。聖域なくコストダウンの努力を続けなければならない」  「海外は石灰石の採掘からセメントの生産と出荷、生コン工場の運営までを一体的に手掛ける『垂直統合モデル』を米・南カリフォルニアで展開している。米国は骨材の価格が高く鉱山を所有していれば事業が有利に展開できる。骨材鉱山の買収や鉱区の開発を含め事業基盤をより強化する。M&A(企業合併・買収)を基軸に北米、オセアニアなど環太平洋エリアで新拠点の開拓を進めていく」  --CN対応は待ったなしだ。  「セメント製造でのアンモニア混焼試験は、技術的に世界で最も進んでいると自負している。実証に取り組みながらビジネスモデルを構築するのが重要になる。セメント事業はインフラ整備や産業廃棄物処理で社会的使命をしっかり果たしている。二酸化炭素(CO2)は対応が不可避な課題であり、採算、需要ベースに乗せることが大切。他業種との協業も必要だ」  --改革の歩みは止まらない。  「セメント事業の物流改革は1日付で営業部にあった物流担当部署を物流部として独立させた。運送会社とのコミュニケーションを深め、ドライバー不足などの問題に備える。輸送に精通している人材も増強する。産廃処理は関西に新しい廃プラスチック集積施設を整備する。品質を維持しながらセメント製造でより多くの産廃が活用できるよう工場の設備を増強する」。  (4月1日就任)  (ひらの・かずと)1985年上智大学法学部卒、三菱鉱業セメント(現三菱マテリアル)入社。2022年4月にUBE三菱セメントの代表取締役副社長に就任。「100年以上セメント製造を行ってきた宇部興産(現UBE)と三菱マテリアルのDNAを受け継ぎ、会社を発展させていく」と力を込める。神奈川県出身、63歳。 from...

日建連/公明党・西田実仁幹事長に要望書、強靱化実施中期計画で十分な事業量確保を

 日本建設業連合会(日建連)の宮本洋一会長と押味至一、蓮輪賢治両副会長は8日、公明党の西田実仁幹事長を訪ね、政府が6月に策定予定の国土強靱化実施中期計画について十分な事業量の確保などを要望した。政府の素案では5年間で「おおむね20兆円強程度」との規模感が示されており、西田幹事長は「25兆円の要望に添えるよう努めたい」と応じた。  日建連側は資材価格の高騰や労務費の上昇を背景に、実質的な公共事業費が目減りしている状況を指摘。建設業界に施工余力があることを強調した上で、実施中期計画では5年間で25兆円程度の事業規模の確保が必要と訴えた。  西田幹事長は事業規模について、素案で示した20兆円強から「資材価格の高騰等でプラスαする記載となっている」と説明し、日建連の要望に対しては「理にかなっている」と理解を示した。能登半島地震の被災状況や埼玉県八潮市での道路陥没事故、南海トラフ地震の被害想定見直しなどでインフラの老朽化に対する国民の不安が高まっている状況についても言及。「国民の不安を解消する必要がある」とインフラ対策の重要性を強調した。 from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172885 via 日刊建設工業...

福島県双葉町/JR双葉駅東地区でにぎわい再生へ、事業化検討支援を公募

 福島県双葉町は東日本大震災前に町の中心市街地だったJR双葉駅東地区の再生に向け、にぎわいを取り戻す方策の検討に着手する。まちづくり中核事業の具体化に向けた「双葉駅東地区事業化検討支援業務」の委託先を決める公募型プロポーザルを公告した。駅周辺の3エリアで再整備や公共複合施設の複合化、官民連携手法の検討などを任せる。参加申請を5月2日まで受け付ける。2回の審査を経て、同28日に契約候補者を選定する。契約上限額は2996万4000円(税込み)。履行期間は2026年3月31日まで。  プロポには、過去3年(22~24年度)に市町村が発注したまちづくり基本構想や計画などの策定業務を元請で完了した実績がある単体が参加できる。  町は24年度に策定した「双葉駅東地区まちづくり基本構想」で、各エリアの特性に合わせた先行整備を検討する重点エリアに▽駅前・駅前通り周辺▽新山▽旧国道・町民グラウンド周辺-の3カ所を設定した。復興の各段階に応じた拠点づくりを検討。このうち公共施設が集積する駅前・駅前通りエリアでは、商業・公共・居住機能の導入と街路整備の連携などで、歩行者が回遊しやすく出歩きたくなるまちづくりを目指す。  学校教育施設に近接する新山エリアは緑と河川に囲まれた環境を生かし、区画道路の再整備や居住環境の創出を図る。旧国道・町民グラウンド周辺エリアでは、町有地を核にした運動広場・公共施設を整備。町民グラウンドへの入り口になる旧国道沿いには商業施設を計画する。26年度の予算化に向け、事業目的や事業概要、事業手法・スケジュール、概算事業費などを整理し「双葉駅東地区事業計画」案としてまとめる。  双葉駅東地区は、22年8月に双葉駅を中心とする特定復興再生拠点区域の避難指示が解除され、再定住が可能になった。公共・商業機能が集積し、居住機能の拡充も見込まれる中、段階的な復興にあわせた都市サービス機能などを再配置する。  基本構想策定業務は建設技術研究所が担当した。 from...

大林組ら/低炭素型の高性能セメント複合材料を開発、大阪・関西万博会場に適用

 大林組と太平洋マテリアルは、低炭素型の高性能セメント複合材料「ユニバーサルクリートGX」を共同開発した。材料のセメントの一部を高炉スラグ微粉末などの産業副産物に置き換え、従来の高性能セメント複合材料と比較して、製造時の二酸化炭素(CO2)排出量を約50%低減。磁気を持たない特徴と耐久性を生かし、大阪・関西万博で来場者が移動に使う電気自動車(EV)バスが走るワイヤレス給電システムの道路設備に適用した。  ユニバーサルクリートGXは、モルタルとポリプロピレン短繊維で構成。磁気を持つ素材を使用せず、繊維による補強効果により0・5%程度の引っ張りひずみでも引っ張り強度を保持する性能を持つ。一般のセメント系材料と比べ高い耐久性を実現した。  大阪・関西万博のEVバス用道路設備にも適用。大林組は「来場者移動EVバス」事業に協賛しており、ワイヤレス給電システムの構築に向け、送電コイルの埋設工事を担当した。  EVバスが走行しながらワイヤレス給電を実現するには、送電コイルの上面を被覆する材料が非磁性であることや、通行車両の荷重に耐えられる耐久性を持たせる必要がある。給電効率を高めるため道路表面のごく浅い位置に送電コイルを埋設。送電コイルの上面にユニバーサルクリートGXを被覆したプレキャストコイルユニットで舗装した。送電コイル上面を覆うユニバーサルクリートGXの舗装厚さは約25ミリで、通行車両の重量に耐えることができる。  大林組は今後、ユニバーサルクリートGXの特徴を生かし、ワイヤレス給電システムの道路設備をはじめ、非磁性と耐久性が求められる分野への適用を進める。さらにセメント材料の低炭素化を推進することで、脱炭素社会の実現に貢献していく。 from...

2025年4月8日火曜日

森ビル/虎ノ門ヒルズグラスロックを公開、社会課題解決へ共創促進

 森ビルは7日、虎ノ門ヒルズ(東京都港区)を構成する施設「グラスロック」を報道陣に公開した。中には共創プラットフォーム「Glass Rock」を開設。霞が関の官庁街や丸の内・新橋などのオフィス街に近い立地を生かし、官民や法人・個人の枠を越えたコミュニティーの形成を促す。少子高齢化や気候変動といった幅広い社会課題を視野に、解決に向けた取り組みが具体化するよう後押しする。9日に開業する。  共創プラットフォームは地下1階と地上4階に入る。コワーキングスペースやラウンジ、キッチンなどで構成。地下1階には活動を社会に発信するギャラリーも設けた。  企業や行政機関、研究機関、NPO、NGO、個人など幅広い主体に利用してもらい、セクターを越えた協働を促す。それぞれがテーマにする社会課題の解決に向け、知恵を出し合って実践的な取り組みにつなげてもらう。  コミュニティーの活性化やマッチングの促進に向け、外部のコーディネーターも入れる。森ビルは100社・1000人規模への拡大を目標に掲げている。  地上2、3階には丸善ジュンク堂書店が、新業態店舗「magma books」をオープンする。地下2階~地上2階には飲食・物販店舗も入る。  建設地は虎ノ門1(敷地面積2445平方メートル)。同ヒルズの森タワーとステーションタワーの中間に位置し、東京メトロ日比谷線虎ノ門ヒルズ駅に直結している。建物は地下3階地上4階建て延べ8800平方メートルの規模。デザインをOMA、基本・実施設計を森ビル、施工は鹿島ときんでん、三建設備工業、日立ビルシステムの4社が手掛けた。 from...

シンガポールと五洋建設-60年の歩みと戦略・3/市街地地下に整備する大型トンネル

 ◇難工事を日本の技術で効率施工  シンガポール陸上交通庁(LTA)発注の「N105」は大型道路トンネル工事。同国の南北を縦断する全長約21・5キロのノースサウスコリドー(NSC)高速道路のN105工区に当たる。2018年8月1日に着工し、10月末で約50%の進捗率となっている。受注金額は642億円(受注当時)。  NSC高速道路工事は北側に高架橋を架け、南側に市街地の一般道路の下にトンネルを整備する。五洋建設が担当するN105工区は南側の地下高速道路(全長約1キロ)。片側4車線、上下2連のボックスカルバート構造で地下高速道路を造る。地上部は病院や学校、ショッピングセンターなどの建物が隣接している交通量の多い繁華街に位置する。地下部分は工区内を既設のMRT(都市高速鉄道)が横断しており、高速道路と交差する箇所がある。  既存MRTを上下に挟んで施工する。高速道路とMRTの最小離隔は1・5メートルしかない。慎重な施工が必要になるため、日本の特許技術である函体推進工法を代替案として提案し採用された。  上越しのトンネル部で採用されるSFT工法(Simple Faceless Tunnel工法)は切羽掘削を行わず、ところてんのようにボックスカルバート(函体)を押し出すのが特徴。ボックスカルバート外周部に設置した箱形ルーフ(矩形推進管、1・2メートル角)を地盤とともに本体構造物であるボックスカルバートで水平に押し出し、置き換えることにより、地下構造物を非開削で構築する施工法である。  荒木俊雄総括所長(取材時・国際部門国際土木本部土木事業部長)は「供用中の地下鉄の上下を横断するのが最大の特徴だ。技術的に難度の高い工事」と話す。  同工事の入札は、価格よりも設計や施工方法など技術面に高い評価を与える選考方法が採用された。五洋建設は、最も技術的に困難な既設MRTとの交差箇所で日本の技術を用いた施工方法を提案。これまでの実績が認められ、競争入札で勝ち取った。  荒木総括所長は「注目度の高い工事だ。期待に応えられるように業務を遂行する。日本人や日本の技術がすごいことを示したい」と力を込める。入社7年目の田島涼主任は同工事が初めての現場。国際部門を志願し、シンガポール勤務は5年目となる。田島主任は「安全第一で現場を自分の目で危険を察知し仕事を全うしたい」と意気込む。 from...

回転窓/玉手箱、開ける?開けない?

 日本古来の文学として知られる「御伽草子」は鎌倉時代末から江戸時代にかけて編さんされた短編文学で、現存する作品は300編を超えるという▼物語の主人公は高僧や公家、武士、庶民など多種多様。親しみやすい文章が特徴で、単純な筋書きを通じて人生の教訓や知識を読み手に教えてくれる。多くの人が幼い頃、一寸法師などを読んだり聞いたりした経験があるだろう▼浦島太郎は御伽草子の中でも特に有名な物語。いじめられている亀を助け、お礼に竜宮城で歓待された後、乙姫と約束したにもかかわらず玉手箱を開け、あっという間に年老いてしまう。子どもの頃は分からなかったが、改めて考えると良い行いを心掛ける、約束を守るのは大切、快楽に溺れてはいけないなど、読み取れる教訓が多いことに気付く▼新年度に入り企業や行政機関で新しい職場や部署に異動した人も多いと思う。たった数年離れていただけなのに事情が分からず戸惑ってしまう。組織の動きに取り残された心境を「浦島状態」と呼ぶ▼小欄も3年ぶりで東京に戻った。玉手箱を開けようか開けまいか…。太郎の迷いが少しだけ分かる気がする。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172857 via 日刊建設工業...

新社長/関電工・田母神博文氏、働き続けたいと思える会社に

 設備工事業界に追い風が吹くタイミングで、経営のかじ取りを任された。主に管理、営業部門を歩み、就任の打診時には「胸がざわついた」と明かす。過去に事務システムの全面刷新を取り仕切った経験などを生かし、社是である「ひといち(人間第一)」を追求していく。  --就任の抱負を。  「業績が伸びる中で重いバトンを引き継いだ。電力・通信インフラ、建築設備(屋内線・空調)の二つを事業の柱とすることは変わらない。今求められる脱炭素化などのニーズに応え、後輩にもっと輝くバトンを渡すべく業界ナンバーワンを目指す」  「(技術職として)現場で働いた経験がない点は弱みかもしれない。できる限り現場に足を運んで会話をし、どうすれば働き続けられる会社をつくれるかを考えたい。現場を知り過ぎないからこそ、思い切った業務の分業化ができる部分もあるだろう」  --どうナンバーワンを目指すのか。  「創立100周年を迎える2044年に『グリーンイノベーション企業』の実現を掲げている。鍵は省エネと電化だ。顧客のエネルギーの使い方を可視化し提案するのが第一歩であり、ニーズに技術的に応える必要がある。価値を生み出すために、今から投資していく」  「中期経営計画(24~26年度)では連結売上高6400億円を目指しているが、刻々と変化する環境を踏まえて数字は柔軟に見直す。建設コストの上昇に伴う投資抑制の動きには強い危機感がある。海外事業は将来的に売上高10%程度に伸ばしたい。M&A(企業合併・買収)も事業単位で広く検討している」  --生産性向上策は。  「そのうち設備工事の需給逼迫(ひっぱく)も解消され、また価格競争が厳しくなるだろう。同じ単価で、いかに生産性を高めるかが大事だ。特に電力は、効率化を促す新託送料金制度(レベニューキャップ制度)の期間中に量をこなす必要がある。DXやロボット化の研究開発を進める。社内の分業の仕切りを変えて事務も含め一緒にものづくりができる体制を築く。今年中に方向性をまとめたい」  --人材確保の方針は。  「できることは、なんでもやる。新卒採用では役員が出向くなどして学校や学生とつながりをつくっている。文系出身や外国出身の技術者を育てる多様な育成メニューを用意したい。定期採用の割合を見直し、中途採用も積極的に増やす」  「従業員や関係会社、協力会社を含め業務に従事する人を守らず、顧客の設備は守れない。資格手当の拡充など働き続けたいと思える福利厚生施策を打ち出していく」。  (4月1日就任)  (たもがみ・ひろふみ)1986年明治大学商学部卒、関電工入社。2020年常務執行役員、23年取締役、24年6月専務執行役員、同7月最高戦略責任者(CSO)兼最高人事責任者(CHRO)。同社がパートナーを務めるプロバスケットボールチーム「アルティーリ千葉」の観戦が趣味。座右の銘は「上善水の如し」。東京都出身、61歳。 from...

鹿児島市/いづろ交差点地区の都市再生促進、25年度に再開発基本計画策定へ

 鹿児島市は、いづろ交差点周辺地区(約7ヘクタール)を対象とした市街地総合再生基本計画をまとめた。計画期間を2044年度までのおおむね20年間に設定。第1種市街地再開発事業や共同建て替え事業などを推進し、観光客らが集う交流拠点施設の整備を目指す。同地区のうち市街地再開発事業の検討区域は約4ヘクタールで、25年度に再開発ビルの配置イメージや規模などを示す再開発基本計画を策定する。  対象区域は中町、大黒町、金生町、泉町、堀江町、住吉町の14街区。このうち市街地再開発の検討区域は金生町、泉町と堀江町の一部の8街区で、残る6街区は共同建て替えや個別建て替えなどを視野に入れる。  整備の基本方針では7ヘクタールのうち、いづろ交差点を含む西側一帯を商店街街区の機能更新を目指す「魅力向上エリア」、鹿児島港本港区寄りの東側一帯を「まちなか居住エリア」として居住推進や低層の商業施設、オフィス、ホテルといった多様な機能を誘導。両エリアの間は「拠点施設整備エリア」に設定し集約駐車場などを整備する。併せて、道路上空通路などを整備し、歩行者が快適に移動可能な空間整備にも取り組む。  市街地再開発の検討区域では月内にも地権者でつくるまちづくり協議会が設立される見通し。これを踏まえ、市は再開発基本計画の策定に向けた調査検討業務の委託先を決める一般競争入札を5月上旬ごろに公告し、6月ごろまでに開札して業務委託する予定。25年度当初予算で委託費など関連経費に567万7000円を計上した。  同地区では建物の老朽化が課題となる中、一部の地権者が市街地再開発事業を視野に都市再生の検討に取り組むことを市に提案。これを受け、市からも地区の関係者に呼び掛けを行い、24年3月に地権者約150者による研究会が設立された。勉強会開催や地域へのアンケートの結果を踏まえ、総合再生基本計画を取りまとめた。  総合再生基本計画の作成業務はアール・アイ・エーが担当。 from...

2025年4月7日月曜日

結/ナイガイ・グエンカイン・クエットさん、チョウタイン・ロンさん

 ◇キャリアアップの道開く  2024年10月、特定技能外国人で初の熱絶縁施工技能士1級に2人そろって合格した。学科試験の日本語の勉強に先輩社員が協力するなど社内全体で後押し。難関を突破し特定技能2号などキャリアアップへの展望が開けた。「技術を高め、帰国したら自分の会社を設立したい」(ロンさん)、「もっと長く日本に滞在しスキルを磨き収入も増やしていきたい」(クエットさん)と夢を語る。  ナイガイ初の技能実習生としてベトナムから17年に来日。韓国や台湾も選択肢だったが、日本を選んだのは安全面などが決め手だった。2人とも最初に苦労したのは現場でのコミュニケーション。現場特有の専門用語に苦戦し、作業中の職人にどう話し掛ければいいか迷うことも。それだけに日々の努力で仕事を覚え「チームで協力して働いていると感じることがうれしい」(ロンさん)と話す。  今では同社直用の外国人技能者が約60人在籍。多くは技能実習期間を無事に終え、うち6割以上は特定技能に移行する。キャリアを重ね、現場の主力となる2人はロールモデルと言える存在だ。「保温工として技術が向上していると感じることがうれしい。きれいに仕上がり現場が完成していく様子を見ることがやりがい」(クエットさん)。異国の地で培った自信を胸に、この先の未来を切り開く。 from...

PKSHA Technology/AIで面接スキル向上、ミスマッチ防止など

 AIサービス開発を手掛けるPKSHA Technology(パークシャテクノロジー)が、AIを使った面接官のスキル向上に取り組んでいる。AIで人事業務の効率化を実現するソリューションサービス「AI Suite for HR」を展開。AI面接や面接官トレーニングなどのサービスを累計700社以上が導入している。  AI Suite for HRは、企業側の人事担当者が抱える課題解決に向けたソリューションサービス。面接官の評価や指標などのばらつきをAIで最適化し、企業と求職者の希望に合致した採用を目指している。AIの面接官トレーニングやAI面接に加え、今回新たに「PKSHA面接コパイロット」を開発した。  PKSHA面接コパイロットは、高精度な自然言語処理技術を活用。オンライン面接時の会話内容をリアルタイムに解析し、適切な質問を表示する。候補者を知るために必要な質問の聞き漏らしを削減する。  事前に設定された評価基準に基づき、AIが候補者の能力や適性を客観的に分析するため、面接官の主観や偏見による評価のばらつきを抑え、公平な評価ができる。面接内容は自動で記録・分析し、評価リポートを生成。面接後の情報整理や共有にかかる時間を削減する。  面接終了後、面接の会話内容の要約と分析を行い、人間が最終的に評価するための前提情報を整理。面接の申し送りや評価の標準化を支援する。  面接官はAIによるフィードバックを通じて、自身の面接スキルを客観的に把握し改善できる。質問のバリエーションや候補者の反応に応じた対応を学ぶことで面接官の成長を促す。  PKSHAの大野紗和子CEO室室長は「多くの企業で人事担当者の採用面接に必要なスキルが足りていない現状がある。評価にばらつきが生じるため優秀な人材の取りこぼしや、入社後のミスマッチが課題だ。学生がしっかりと準備しているのであれば企業側や面接官もその準備に応えないといけない。そのサポートをPKSHAで担っていく」と話す。  同社は今後、人事領域全体を網羅するサービスへと展開していく予定。学生や中途向けにAIがキャリア相談を受けるサービスなども検討していく。 from...

堺市/ICT活用工事26年度から「提案評価」、証明書交付取りやめ

 堺市は総合評価方式でのICT活用工事の新たな評価方法として、2026年度から「提案評価」を導入する。詳細は今後検討し、「総合評価方式ガイドライン」に盛り込む。現行の「実績評価」は24年度末で原則廃止し、これに伴い「ICT活用証明書」の交付を取りやめた。評価方法の見直しに合わせ、ICT活用工事試行要領を改定した。  これまで市は発注工事でICT活用の取り組みを定着させるため、3D起工測量や3D設計データ作成など、所定のプロセスを実施した受注者に対し「ICT活用証明書」を交付し、総合評価での実績評価の加点対象としてきた。  一方で、国土交通省が土工や浚渫工へのICT活用を原則化する方向で検討を進めるなど、ICT施工に携わる業者層の裾野が大手にとどまらず中小企業にも広がりつつある。堺市が発注する工事でも活用実績を持つ入札参加者が増えており、証明書の有無だけでは評価の差が付きにくくなってきた。  こうした状況を踏まえ、実績に代えてより主体的な活用提案を評価する方式へ転換する。26年度は移行期間とし、実績評価と提案評価の両方を活用可能とする方針。同年度版のガイドラインに具体的な運用を盛り込む。  これに伴うICT活用工事試行要領の改定では証明書発行廃止に加え、「部分的ICT施工」の定義も一部見直す。従来は3D起工測量と3D設計データ作成を行えばICTを部分活用したとみなしてきた。本年度4月以降は、この組み合わせでの部分活用を認めないようにする。ICT建機による施工や3D出来形管理の実施が別途必要になる。  堺市の担当者は「ICT施工の導入が広がる中、実績だけでは業者の差が見えにくくなってきた。各社が現場特性に即した工夫を提案することで、より実効性のある活用が進み、生産性の向上や技術の底上げにつながるのではないか」と話す。 from...

回転窓/正しい知識得て対策を

 旅がらすの麻しん(はしか)ウイルス、その名も「はっしー」が人体に侵入して大暴れ! こんなストーリーから始まる児童向けの『うつる病気のひみつがわかる絵本2 はしかウイルスのはっしー』(おかだはるえ・文、あおきひろえ・絵/ポプラ社)は感染や予防の基礎を学べて大人にも参考になる▼ウイルスがどのように体内で増え、これらと免疫がどう戦うのか。医学博士の著者(文)がキャラクターを通じて分かりやすく解説する▼米国で2月、同国内では10年ぶりにはしかによる死者が確認された。海外で感染者が増え、日本でも増加傾向にあるという▼感染者が出た自治体では、他の人へ感染させてしまう可能性のある期間に患者が利用した公共交通機関などの情報を公表している。はしかはウイルスの中でも強い感染力を持つ▼はしかを「命定め」の病と恐れた江戸時代に数多く出版されたのが「はしか絵」。感染しないために避けることなどが描かれ、これらの錦絵がはしかに関する情報を広める役割も果たした。流行期は春から夏にかけて。予防接種の効果など正しい知識を得て感染対策に努めたい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172831 via 日刊建設工業...

北九州市/戸畑枝光線2期区間(戸畑~牧山)、25年度内に着工

 北九州市は「都市計画道路戸畑枝光線」(戸畑区戸畑~八幡東区東田、延長約4・4キロ)の2期区間(戸畑~牧山間、約1・7キロ)の工事に着手する。トンネル延長約840メートルのうち最も深い地点である明治町アンダーパスの下の約30メートル部から工事を行う。工法は推進工法で、公告時期や入札方式は未定としている。  2025年度一般会計当初予算に工事や用地買収、測量調査を行うための整備事業費10億6100万円を計上。今回着手する部分のトンネル工事について、26~28年度の限度額74億円の債務負担行為を設定した。  事業は福岡北九州高速道路公社が主体の有料道路事業と街路事業の合併施行方式。街路事業の車線数は4車線。3月に開通した牧山~枝光間の1期区間(約2・7キロ)と、戸畑~牧山間の2期区間で構成する。  2期区間のトンネル以外は土工で、トンネルのうち約810メートルは開削工法で行う。事業費は約458億円で、3月時点での事業費ベースの進捗率は10%未満。33年度の事業完了を目指す。  有料道路事業は、料金所や交通管制施設などの整備費が約90億円。若戸JCT(戸畑区川代)、牧山出入り口(同牧山海岸)、枝光出入り口(八幡東区東田)を設置するほか、北九州高速2号線(戸畑区戸畑)と同5号線(八幡東区東田5)への接続区間としてそれぞれ約0・3キロと約0・5キロを整備する。 from...

2025年4月4日金曜日

大阪広域生コン協組/先端技術研究開発プロジェクトが竣工、施工はフジタ

 大阪広域生コンクリート協同組合(木村貴洋理事長)が大阪市住之江区で建設を進めていた「(仮称)大阪広域協組先端技術研究開発プロジェクト」が完成し、2日に竣工式と定礎式が開かれた。木村理事長をはじめ、協同組合の幹部、設計・施工の関係者ら約40人が完成を祝った。施設名は「テクノ・ラボ大阪」に決めた。設計は梓設計、施工はフジタが担当。  神事では、神職による祝詞奏上、清はらいの儀に続き、木村理事長、協同組合副理事長、梓設計の杉谷文彦会長、フジタの新谷恭英常務執行役員が玉串をささげた。定礎式では紙幣や貨幣、同日付の新聞などを入れた定礎箱を壁の中に収め、木村理事長が「定礎」の文字が刻まれたプレートを所定の位置に張り付けた。  式典の後、木村理事長は「技術の粋を結集して建設した。大阪広域協同組合の覚悟がこれだけの建物を生んだ。きょうが新しい第一歩だ」と述べ、杉谷会長、新谷常務執行役員に感謝状を手渡した。  建設地は南港北1の6の2の敷地約1万3580平方メートル。建物の規模はRC造地下1階地上4階建て延べ約1万3000平方メートル。事務所棟はホールやセミナールーム、カフェのほか、大阪広域協組や関連団体の事務室、会議室などが入り、研究棟は実験プラントや最新の機器をそろえた試験室などを設け、最先端の技術研究・開発拠点として機能する。 from...

回転窓/イノベーションの種

 今月13日に大阪・関西万博の開幕を控え、ドローンなどの技術を応用した「空飛ぶクルマ」の発着拠点(ポート)が会場内に完成した。会期中(10月13日まで)に次世代モビリティーの姿を発信する計画だが、実際に乗車できる商用運航はもう少し先になりそう▼ここにきてドローン技術の進展が目覚ましい。信州大学などの研究チームは生きたカイコガの触角をセンサーに使い、ドローンの高性能化に成功した▼フェロモンを検知すると電気信号が出る触角の性質を利用した技術。においの濃度の違いなどから発生源を見つけ、その場所にドローンを向かわせる仕組みという▼10センチ四方の小型ドローンを、オスのカイコガの触角を使ったセンサーで自動制御する。最近の実験ではこれまでの2倍以上となる約5メートル先から発せられるメスのフェロモンのにおいを感知。一般的なガスセンサーと比べ10~100倍の速さでにおいに反応し、ドローンが発生源へと飛行する▼この技術を使えば人のにおいも検知でき、災害時に要救助者を探すことも可能になると期待されている。イノベーションの種は身近なところにあるのかもしれない。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172773 via 日刊建設工業...

JAC/無料技能講習・オンライン特別教育を拡充、開催回数増や科目追加

 建設技能人材機構(JAC)は2025年度、特定技能外国人などが対象の母国語による無料の技能講習、オンライン特別教育を拡充する。技能講習は建設機械関係の教習を手掛けるPCTに加えキャタピラー教習所の協力も得て、5科目で139回行う。新たにガス溶接の技能講習も始める予定。オンライン特別教育は提供科目を増やし、フルハーネスと足場組み立てで入国前に修了できる環境整備を進める。=2面に関連記事  技能講習はベトナム語、インドネシア語で1月から行っている。25年度の受講は3日に募集を始めた。JACのホームページから申し込む。3期に分け1530人(24年度〈3月14日時点〉144人)の受講を見込む。学科、実技の試験に合格すれば、その場で修了証を発行する。PCTの16カ所、キャタピラー教習所の7カ所で、車両系建設機械(整地・運搬・積み込み・掘削用)運転技能講習など5科目を行う。  開催の回数、地域の増加を求める要望が多い。英語、中国語、カンボジア語での実施も準備するという。実施予定のガス溶接技能講習は建設キャリアアップシステム(CCUS)の圧接の能力評価基準で、レベル2に必須の保有資格の一つとなっている。  オンライン特別教育は24年7月から7科目を5言語で提供してきた。3月28日開講分までで983人が受講した。  25年度は新たに▽玉掛け(1トン未満)▽ローラー運転▽小型車両系建設機械(3トン未満)▽移動式クレーン等運転(1トン未満)▽フォークリフト(同)運転▽建設機械(コンクリートポンプ車)運転▽高所作業車運転▽電気取り扱い(低圧)▽特定粉じん作業▽石綿等使用建物業務-の科目を追加する方向で準備する。  振動工具取り扱い作業者安全衛生教育などの提供も視野に入れている。学科受講後の実技教育の支援をPCT、キャタピラー教習所と検討する。入国前の特別教育はインドネシア、ベトナムなどの現地の送り出し機関と連携して行う。 from...

関東整備局/羽田空港アクセス鉄道開削部他躯体築造、鹿島JVと随契

 関東地方整備局は「令和6年度東京国際空港空港アクセス鉄道開削部(ターミナル北連絡橋部)他躯体築造工事」を118億1398万9000円(税込み、以下同)で鹿島・東亜建設工業・あおみ建設JVと随意契約した。契約日は3月25日。予定価格は118億2039万1000円だった。履行期間は2029年3月23日まで。概要は仮設工、撤去工、地盤改良工、土工、本体工、復旧工、工事場所は東京都大田区羽田空港。  23年11月に「令和5年度東京国際空港空港アクセス鉄道開削部(ターミナル北連絡橋部)他躯体築造工事に係る技術協力業務」の公募型プロポーザル(WTO対象)で、同JVを選定した。施工予定者が設計を支援するECI方式(技術協力・施工タイプ)を採用。羽田アクセス線工事のうち、道路橋直下やモノレールトンネル直上などで開削工法によりトンネル躯体を築造するための技術協力を行い、基本協定に基づく価格などの交渉を経て随意契約した。 from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172780 via 日刊建設工業...

清水建設、日本道路/BIM・CIMで道路施工のDX推進、3Dデータをシームレスに

 清水建設と日本道路が道路施工のDXを強力に推進している。検討段階で使用したBIM/CIMモデルの3Dデータをそのまま施工にも展開するシームレスなデータフローを構築。両社で組成したJVが福岡市東区で施工する「九大箱崎南地区都市計画道路築造その他工事」の現場では、舗装切削工事のマシンコントロール(MC)施工でBIM/CIMにひもづいた施工検討データを展開・活用し、高精度な切削機械の自動運転を実現した。  今回の現場で活用したBIM/CIMは、施工対象の道路舗装や施工エリアにある埋設物、路面標識の各モデルを同一の座標系で統合。モデルデータは検討段階から施工段階へのシームレスなデータ連動を見据え、最終工程のMC施工に沿ったデータ形式からバックキャストし統合モデルのデータ仕様を定義した。  このデータ仕様に基づき工事エリアの点群データを取得。設計図面から作成した構築物の3Dモデルや探査結果を反映した埋設物の3Dモデルなどに、点群データに基づく位置情報を付与し、多様な用途に活用できる統合モデルを構築した。  統合モデルに集約した3Dデータをシームレスに展開するデータフローを構築。データ変換作業が不要となり、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)による施工検討や施工スケジュールの4Dシミュレーションができる。早期の計画変更などにも柔軟に対応可能となる。  舗装切削工のMC施工では、統合モデルの検討データをMCシステムに展開し、施工指示データの作成などの準備工程を圧縮することによって大幅な省力化、省人化を実現。MC施工のコストを約25%削減した。  両社は同現場の取り組みを他の協働案件で推進していく方針。清水建設は他の土木工種にも展開し、土木工事全体の生産性向上を目指す。 from...

2025年4月3日木曜日

回転窓/防災・減災が連日話題な中で

 地域で発生した災害を分かりやすく伝え教訓をつないでいく活動や施設を国が認定する「NIPPON防災資産」。「3・11伝承ロード」(青森、岩手、宮城、福島)や「黒潮町の防災ツーリズム」(高知)などが認定されている▼認定の関係者が集まった2月の会議を踏まえ、国土技術研究センターが人や施設の連携を促す役割を担うことになった。災害を自分事にしてもらい避難につなげるためにもセンターの役割は大切になるであろう▼政府が国土強靱化実施中期計画の素案を1日に決めた。関係府省庁が所管する324施策のうち116施策の推進に必要な事業規模を2026年度から5年で「おおむね20兆円強程度」と見積もった▼資材費や人件費の高騰分が別枠となったのをはじめ事業規模の全体像はまだ見えていない。6月とされる計画の閣議決定に向け、事業規模を巡る政府・与党内の調整が注目される▼3月末に南海トラフ巨大地震の被害想定が公表されたばかり。ミャンマーやタイの地震被害も報道が続く。災害への備えをどうか進め続けてほしい--。防災や災害が連日話題になる中で、そう求めずにいられない。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172741 via 日刊建設工業...

新社長/青木あすなろ建設・望月尚幸氏、提案型営業で他社と差別化

 大手ゼネコンで長年建築現場に携わり、コンサルティング会社で建設業の問題解決に取り組んできた異色の経歴を持つ。計画立案や市場戦略に基づく提案型営業に注力する。コンサル時代に新規事業の創出や業務改革をけん引した経験を強みに経営のかじを取る。  --就任の抱負を。  「辻井靖前社長の意思を引き継ぎ、全体の調和を保ちながら会社を改革していく。コンサル時代の経験を生かし、10年後の市場を自分なりに分析している。提案型営業を積極的に行い、データセンター(DC)や物流施設などで個性を出して他社と差別化する。競争での仕事ではなく当社でしかできないことを増やす」  --経営環境をどう見る。  「価格転嫁などの対策効果も徐々に出ているが、建設費の高騰と需要のミスマッチが生まれている。今後は大規模再開発工事中心ではなくインフラの復旧や耐震工事、再生可能エネルギー、災害復興事業といった社会ニーズに即した需要が出てくるだろう。コンバージョンや全館リニューアルを中心に『リモデル事業』に特化し、建築売上高の25%を占めるようにしたい」  --注力する分野は。  「建築・土木ともに、DCや冷蔵冷凍、リニューアル、風力など市場規模の成長が期待できる再エネ、耐震、国土強靱化が中心になる。提案型営業を進め、高松コンストラクショングループ(TCG)などとの相乗効果を創出する。現在、積極的に高松建設の営業力を借りて共同受注している。それぞれの領域を補完していく。大阪・関西万博で次世代水中ブルドーザー(水中施工ロボット)を披露する。貢献度の高い事業になり得る。ダム工事の浚渫などで活用したい」  --人材確保と育成は。  「施工管理者が本来するべき業務に集中できるよう2025年度から新事業としてスマートBPO(外部委託)を展開する。写真管理やITベンダーなど7社と連携して外販も検討している。業務を『計画・管理業務』と『事務・書類業務』に分けて内勤業務のシェアードサービスセンター(SSC)化を実現する」  「海外技術者の採用や、施工計画・管理に特化したスペシャリストを育てる。オールラウンダーではなく、向き不向きを見定め能力を発揮してもらい社員のキャリアパスにつなげたい。個々人が活躍できるための組織改革を徐々に進める。人事制度・評価を変えモチベーションを上げる仕組みを26年度から運営する」  --今後の展望を。  「営業利益を確実に上げられる会社を目指して今後3年で営業利益5%以上を上げる。独自の強みを確立し、必要とされる企業を目指すことで安定した収益を確保する」。  (4月1日就任)  (もちづき・なおゆき)1987年日本大学理工学部卒、清水建設入社。PwCコンサルティング合同会社シニアマネージャーや日本国土開発取締役兼副社長執行役員、TCG顧問などを経て、2024年1月青木あすなろ建設顧問、同4月副社長執行役員、同6月代表取締役。趣味は茶道。座右の銘は「利他の心」。神奈川県出身、61歳。 from...

国交省/直轄営繕でも完全週休2日、受注者選択可能にし労務費・現場管理費補正

 国土交通省は直轄営繕工事を対象に「週単位」で2日以上の休みを確保する完全週休2日を推進する。2025年度から週単位の週休2日を受注者が工事着手前に選択可能とし、これに合わせた労務費と現場管理費の補正係数を設定した。新築工事では「月単位」の週休2日を必須として発注する方針。工事全体(通期)の週休2日は改修工事も含めて全発注案件で必須となることから労務費補正を撤廃した。  直轄土木工事と同じように土日休みを原則とした完全週休2日に取り組む意向。建物内を使いながらの改修など建築・設備工事に特有の事情を考慮し、受注者との協議で平日を代替休日とすることも週単位の週休2日として認める。  週休2日の発注方式は新築工事を想定した「I型」、改修工事を想定した「II型」の二つに分けて運用。I型は月単位を必須、週単位を選択制とし、II型は通期を必須、月単位と週単位を選択制とする。施工実態の調査を踏まえ、労務費の補正係数は月単位で1・02倍(24年度1・04倍)と設定。新設となる週単位の補正係数は労務費1・02倍、現場管理費1・01倍とした。  受発注者双方の負担とならないよう既存書類で現場閉所の達成状況を確認し、当初の目標水準に満たない場合、それに応じ補正分を減額変更する。設備工事などを分離発注する場合、発注案件単位で現場作業がない状態を「現場休息」とし現場閉所と同等とみなす。  工事成績評定は、以前から標準の評価項目とする「休日・代休の確保」で適切に評価する。I型、II型ともに選択制となる部分を加点対象とする方向だ。受注者側に週休2日に取り組む姿勢が見られない場合には減点対象とする。  営繕工事の働き方改革を巡っては、国交省と都道府県、政令市でつくる全国営繕主管課長会議で「公共建築工事における工期設定の基本的考え方」の改定作業が進行中。国や自治体の週休2日工事の取り組み状況などを反映した形に見直す方針。建築・設備関連業界団体の意見も取り入れつつ、7月の策定・公表を見込む。 from...

燈/建設業界特化型AIエージェント開発、顧客企業ごとにカスタマイズ

 建設DXを手掛ける燈(東京都文京区、野呂侑希最高経営責任者〈CEO〉)が、建設業界特化型のAIエージェントを開発した。自社の大規模言語モデル(LLM)を使用した建設業界向けのAIチャットサービス「光/Hikari」の新機能として実装。建設業の業務フローに基づき構築され、顧客企業ごとにカスタマイズできるため、高度な自然言語処理技術を用い、設計図書や画像解析にも対応する。DX推進のためAIエージェントが現場業務を効率化、ノウハウの標準化を実現する。  燈が開発したAIエージェントは、数千体規模のAIエージェントがプロンプト(指示)に対して自律的に仕事を実行する。建設業界特化の知識データベースで高度な専門知識に対応し、各業務プロセスに最適化された専門エージェントが業務を遂行する。日報や帳簿・報告書作成など、現場監督や施工管理の担当者が日常的に行う業務をサポートし、施工以外で必要とする事務作業の時間を大幅に削減する。  例えば施工計画書を作成する場合、従来は一つの指示を何回も行う必要があり、複数の情報やデータを参照した後に、最終的には人がまとめていた。一方、AIエージェントを使用すると、施工計画書作成というタスクに対して特記仕様書の検索と整理、過去資料の参照、法令調査など施工計画書の作成に関わるタスクを総合的に行い生成・評価も可能となる。  技術提案や安全管理などの業務にも活用できる。AIが総合的に担当し、自立型として全てを加味して結果を出してくれる。書類作成の自動化や現場業務の効率化を実現し、ヒューマンエラーの低減、事務作業の時間削減、熟練技術者の知識継承の促進に貢献する。  AIエージェントの機能は、企業ごとにカスタマイズ可能。共通業務フローに加え独自の承認プロセスや書類テンプレート、社内システムとAPI連携できる。さらに高度な自然言語処理技術を活用し、建築・土木分野の専門用語を高精度で理解し、設計図や画像の解析も対応している。  野呂氏は「2025年はAIエージェント元年だ。これからどんどん加速するだろう」とし、「理想的なエージェントを多く作って、建設業に送り込みたい。人手不足を解消したい。エージェントが1万体いれば全ての企業が『1万人企業』ということになる。建設業のほとんどを燈が担える。高齢化対策にもつなげたい」と意気込む。 from...

2025年4月2日水曜日

回転窓/桜の下で祈る願い

 過ごしやすい陽気になってきたかと思えば、1日は真冬の寒さとなった地域もあり驚かされた。寒暖を繰り返すのは春の常だが、体調を崩さないよう注意したい▼この時期に天候が良ければ楽しみなのはお花見。きれいな桜を見ようと景勝地などに多数の花見客が訪れる。昨年よりも5日早く開花した東京都内では、目黒川沿い(目黒区)や千鳥ケ淵(千代田区)で見ごろを迎えているようだ▼春の風物詩として人気の桜も人間と同じように病気に罹(かか)る。樹齢400年を数える熊本県南阿蘇村の「一心行の大桜」は花の数が減少。今年は樹勢回復の治療に専念することを理由に、村が桜の公開を中止した。これからも多くの花を咲かせてくれるためには仕方がない▼桜は北半球に分布する。特に日本列島付近に多くの種類が集中し、薄紅色の花を咲かせるヤマザクラや白色が特徴のオオシマザクラなど9種が自生している▼花見の文化は奈良時代に貴族の間で流行し、江戸時代になり農民へ広がったとされる。豊作を祈願して木の下で宴会するスタイルが確立したのもこの頃。農業の恵みにも感謝しながら花をめでたい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172700 via 日刊建設工業...

新社長/飛島建設・築地功氏、培ったイノベーション力で変革

 入社してダムやトンネルの現場施工と、技術部門を約20年ずつ経験してきた。2024年10月に発足した飛島ホールディングス(HD)の中核事業会社として、各部門の連携強化でイノベーションを一層推進し、新しい時代を切り開いていく方針だ。これからも「顧客や地域社会からの信頼を得る」ことが何よりも重要とし、新技術・方法を積極的に取り入れ、「最前線を走り続けたい」と強調する。  --就任の抱負を。  「創業142年の歴史と築いてきた信頼を最大限に尊重し、次につないでいく。新技術をどんどん取り入れるなど、これまでの固定観念を破る。前職の技術研究所では社会課題や顧客ニーズに対するソリューションビジネスの中核として技術開発を推進してきた。技術部門で培ったイノベーション力で変革を進める。歴史と革新を両立させ、これからも存在価値のある会社にしたい」  --経営方針は。  「飛島HDグループの中でしっかりと収益を上げていくことが重要だ。建設事業とシナジー(相乗効果)を発揮できる『グロース事業』や、デジタル技術で建設生産プロセスを変革する『イノベーション事業』の展開により領域の拡充と規模の拡大を目指す。理念に掲げる『創造』『共創』『共生』を実効性のある価値として具現化し続ける。旺盛な建設需要に対応したいが、協力会社を含めて人材が不足している。生産性向上に努め、現場のノンコア業務を集約しているFSC(フィールドサクセスセンター)のシステムを多方面に水平展開していきたい」  --注力分野は。  「飛島HDのグループ間の連携を強化し、幅広い建設の形を作りたい。今後も防災技術を突き詰めて、国土強靱化や既存インフラの長寿命化などに貢献する。建築は中層階オフィスビルなどに取り組み、木造技術の研究も進める。再生可能エネルギー関連で小水力発電などに注力し、設計からマネジメントのノウハウを生かして、ダムの再開発なども狙う。社会的なニーズに対応できる二酸化炭素(CO2)の削減、カーボンニュートラルに貢献していく」  --今後の人材育成は。  「働き方の急激な変化に対応しながら、今まで常識だったことも見直し、会社が持続的に発展していける仕組みづくりを進める。熟練技術者の知見やノウハウをデータベース化して技術継承するほか、若手社員の早期育成のために複数現場でさまざまな工種を幅広く経験させていく。そして何でも話しやすい生き生きとした社内環境を作ることでエンゲージメント向上を目指す。多様な人材を生かすダイバーシティーの推進にも積極的に取り組む」。  (4月1日就任)  (つきじ・いさお)1987年京都大学工学部土木工学科卒、飛島建設入社。2016年土木事業本部土木技術部長、24年4月執行役員技術研究所長、同10月同技術戦略担当。大学時代は硬式野球部に所属。2番手キャッチャーとしてチーム力向上に貢献した経験を社長業に生かす。信条は「誠心誠意」。京都府出身、61歳。 from...

神奈川県/厚木市など3市と自走式ロープウエー導入検討、25年度に研究会設置

 神奈川県は2025年度、厚木、藤沢、三浦3市と自走式ロープウエーの導入に向けた検討に着手する。県と3市に開発事業者を加え、研究会を立ち上げる。25年度予算に新たな交通システムの展開として10百万円を計上した。需要や費用対効果などの導入可能性調査業務も委託する。県は安全性・利便性に優れた新たな公共交通の実現に期待している。  導入を予定するのはZip Infrastructure(福島県南相馬市、須知高匡最高経営責任者〈CEO〉)が開発中の自走式ロープウエー「Zippar(ジッパー)」。既存のモノレールに比べて整備コストが約5分の1(1キロ当たり15億円)、約1年での建設が可能など経済性に優れている。ロープとゴンドラが独立しているため、カーブや分岐などが自在で、柔軟な路線設計ができるなどの利点もある。県と同社は24年4月に「新たな交通サービスの実用化に向けた取組等に関する連携協定」も締結している。  県が県内自治体に導入意向などを打診した結果、秦野市、松田町、寒川町も導入検討の意向を示したが、需要者数などを勘案して今回は3市を選定した。研究会では各市の特徴なども踏まえた想定ルートや利用者数、技術上の課題などを検討する。県は実用化することで工業団地や大規模事業所への通勤、観光用途などで交通課題の解決を図ることに期待する。 from...

東急建設ら/打ち分け不要の耐震スリット材開発、打設管理効率化、品質向上

 東急建設とJSP(東京都千代田区、大久保知彦社長)、クギン(名古屋市中区、釘宮祐治社長)は、RC造建築物のコンクリート打設時に柱と壁の交互打ち分けを不要とする耐震スリット材を共同開発した。東急建設が東京都渋谷区で開発した「(仮称)宇田川町42計画新築工事」に初適用し、打設管理の効率化やコンクリートの品質向上といった効果を確認した。  耐震スリット材は一般的にRC造建築物に用いられている。地震発生時に柱や壁などの損傷を防ぎ建物の安全性を確保する。従来は打設するコンクリートの耐力を踏まえ1~1・5ミリ程度の高さで柱と壁を交互に打ち分ける必要がある。今回開発したのは従来の垂直スリット材に加え、補強材(トラストデッキ)と中間支持材によって打設時の側圧を支持することで、打設時に垂直スリット材の変形を抑制する高耐力、高剛性のスリットになる。  新たな耐震スリット材を用いることに伴い、一般的な階高の柱と雑壁がそれぞれ1回で打ち上げ可能となる。打ち重ね不良の低減や表面の色むら抑制に効果を発揮し、打設管理の効率化やコンクリートの品質向上に役立つ。  東急建設は今後、新たな耐震スリット材の適用拡大を目指す。 from 技術・商品 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172709 via...

建設各社が25年度入社式/若い視点で新しい価値を、困難乗り越え果敢に挑戦

 新年度が始まった1日、ゼネコンなど建設関連各社で入社式が開かれた。働き方改革や物価高騰など経営環境は大きく変化している。企業トップからは伝統と精神を受け継ぎつつ、若い力で新たな成長の可能性を切り開いていく主体的な挑戦を求めるメッセージが目立った。=4、5面と3、4日付に各社のトップメッセージ  同日付で社長が交代したのは大林組、清水建設、長谷工コーポレーション、飛島建設、青木あすなろ建設など。大林組の佐藤俊美社長兼最高経営責任者(CEO)は「皆さんはグループの中で最も新しい目を持っている人材だ。どうすれば新たな価値が生まれるか考え続け、その思いを実現するまで大切に育ててほしい」と呼び掛けた。  仕事への心構えとして常に「原点」に立ち返る重要性を説いたのは清水建設の新村達也社長。「迷いや不安に直面した時、答えは必ず皆さんの心の中にある。その志こそがどんな困難をも乗り越え、新たな未来を切り開く力になる」と訴えた。  長谷工コーポの熊野聡社長は、環境の変化に対応し乗り越えてきた「長谷工DNA」の精神を強調。「厳しいと思う場面を成長する機会と捉えて粘り強く挑戦し、長谷工DNAを継承していってほしい」と力を込めた。  飛島建設の築地功社長は「皆さんの『イノベーションマインド』に耳を傾ける準備はできている。若いからと遠慮せず、失敗を恐れずに変革していこう」と述べ、青木あすなろ建設の望月尚幸社長は「これまでの当たり前を踏襲するのではなく、自分で考えて行動できる、変化への適応力を持った人財に成長してほしい」と話した。  若い力の前向きな挑戦を応援し、新たな企業価値創出の原動力として期待する声が相次ぐ。  鹿島の天野裕正社長は「まずはやってみるという実践主義を大切にしてほしい」、大成建設の相川善郎社長は「会社のこれからを自らの手で創っていくという高い志を持ってほしい」、竹中工務店の佐々木正人社長は「革新への意識を持ち個性豊かで創造的な社会人に育ってほしい」とそれぞれ話した。  時代とともに多様化するニーズに対応するには、若い世代の視点が欠かせない。各社は一人一人が技能や個性を発揮できる環境を整備し、新たな成長戦略を築いていく。 from...

2025年4月1日火曜日

建設業スキー大会/竹中工務店が団体2連覇、節目の50回大会に約90人が参加

 第50回「建設業スキー大会」(主催・建設業スキー会、後援・日刊建設工業新聞社)が3月1、2の両日、長野県小諸市の高峰マウンテンパークで開かれた。9社から約90人が参加。団体戦では竹中工務店が優勝に輝いた。個人男子は清水悟選手(大成建設)が11年ぶりに栄冠を手にした。個人女子は橋本佳奈絵選手(三機工業)が悲願の1位を勝ち取った。  本戦は全長700メートル、最大斜度25度、標高差140メートルのパノラマコースで実施。仲佐俊之会長(清水建設OB)は「50回目の開催という伝統ある大会がこれからも盛り上がっていくことを期待したい」と総括した。  団体優勝した竹中工務店の市川和也主将は「昨年の初優勝に続き2連覇できて感無量だ。部で合宿をして練習を重ね、新戦力が入ったことも勝因の一つだと思う」と喜びを語った。  個人男子優勝の清水選手は、前年の大会で転倒したことを振り返り「絶対に完走して結果を出そうと思い、11年ぶりに優勝できてとてもうれしく思う」と述べた。個人女子優勝の橋本選手は「姉妹で目指して金メダルがやっと手元に来てくれた。応援し続けてくれた天国の母に感謝する」と話した。  50回目の節目を迎えた今回の大会では、特別企画としてゲスト選手による前走・後走や特別戦でのスノーボードクラス新設、本戦でのカムバック賞の新設、記念Tシャツの作成、記念アルバムや記念スライドショーの作成、過去大会の主な成績表の作成などが行われた。 from...

回転窓/勤務地は変われど

 駿河湾から静岡県の内陸部を想定震源域とするマグニチュード(M)8クラスの東海地震は、南海トラフ沿いで想定される大規模地震の一つ。この地域では1854年の安政東海地震の発生から現在まで大規模地震が発生していない▼20代前半まで同県内で過ごした。長年にわたり地震・津波を想定した避難訓練が定期的に実施されており、小学校の児童は防災頭巾をかぶって集団下校するなど、大人から子どもまで災害への危機意識が高い地域と言える▼先月28日にミャンマー中部を震源とする大規模地震が発生した。長大な断層の一部が破壊された内陸型地震で、過去からM7クラスの大規模地震が頻発していたという。だが今回の震源地周辺は、同クラスの地震が200年近く発生していない空白域だったようだ▼日本では南海トラフ巨大地震の被害想定が見直された。これまでの対策効果は一定程度あるものの、依然として強い揺れや津波で甚大な被害が広域で発生するリスクは大きい▼小欄は勤務地が変わり、きょうから東海・北陸エリアを担当。これからも紙面で防災・減災対策の重要性を発信し続けていきたい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172676 via 日刊建設工業...

新社長/大林組・佐藤俊美氏、社員の自己実現をグループの成長に

 2026年度を最終年度とする中期経営計画を新体制で着実に推進する。事業環境の変化に迅速に対応できる体制構築を最重要課題と捉える。国内建設事業を中核とし、それ以外の事業で国内建設事業と同等以上の業績を創出する体制を将来的に構築する。「社員とベクトルを合わせて企業成長する」と意気込む。  --就任の抱負を。  「大林グループの企業理念と精神を承継し、グループの持続的な成長を図る。技術面、ビジネス面でイノベーションを起こし、建設事業の生産性向上や新事業開拓に挑戦していきたい。持続的な成長とは何か、スローガンである『つくるを拓く』の意味は何かを具体的に示し、グループに共有していく。エンジニアを中心に優秀な人材がいる。国内建設事業を中核に活躍の場が大林グループにはある。社員の自己実現や成長をグループの成長につなげたい」  --事業環境をどう見る。  「収益改善が進み、業績は堅調に推移していくだろう。中期経営計画(22~26年度)の数値目標は達成できそうだが、計画策定時に想定していた事業環境とは全く様相が変わった。データセンターや半導体関連施設などの建設需要も拡大し続けるわけではない。市場変化にいかに迅速に対応できるかを考える必要がある。事業環境の変化に対応できる体制を建設、非建設の両領域で構築するシナリオ作りに着手している。同時に成長戦略を描くためのプロジェクトを立ち上げ、次期中期計画に向けて議論を始めた」  --経営方針は。  「水やエネルギー、食、廃棄物など社会課題の解決につながる領域に事業機会がある。グループの技術力と総合力を生かして社会に貢献するため、中核である建設事業のサプライチェーン(供給網)も含めた供給能力向上と、新領域を担う人材戦略を具体的に描き、他社との差別化も視野に戦略を策定する。再生可能エネルギー事業は戦略を大きく転換することになるだろう。ブラウンフィールドを含め、再エネ市場のどこに関わっていくかを検討する。さらに施工側で二酸化炭素(CO2)排出量の削減に貢献できる技術開発も継続的に行う」  「海外分野は、未進出の地域や事業領域に事業機会があれば取り組む。北米地域は、直近で23年に買収した水処理関連の建設会社をはじめ、複数子会社が収益面で貢献している。各社で成長戦略を描くが、個別最適が本当にグループの全体最適になるかを考える。一方、国内は建設周辺領域を含め、社会課題の解決による顧客提供価値の向上や持続的成長を創出する事業機会があれば、企業のM&A(企業合併・買収)も手段の一つとして検討していく」。  (4月1日就任)  (さとう・としみ)1985年早稲田大学政治経済学部経済学科卒、大林組入社。2013年財務部長、15年経営企画室長、17年執行役員、18年取締役、19年常務執行役員、22年専務執行役員、23年副社長執行役員、24年代表取締役。学生時代は野球に明け暮れた。趣味は野球観戦。妻とユニホームを着て応援している。神奈川県出身、64歳。 from...

政府WG/南海トラフ地震の被害想定見直し、あらゆる主体の総力結集を

 南海トラフ地震の被害想定や防災対策を議論してきた政府の有識者ワーキンググループ(WG)は3月31日、最終報告書を公表した。最新データに基づき被害想定を見直した結果、想定される最も規模の大きな地震が発生すると、最大で死者29・8万人、建物倒壊は約235万棟に上ると推計。資産被害は約224・9兆円、経済被害は約45・4兆円に達する。報告書では「あらゆる主体が総力を結集して災害に臨むことが必要」と訴えている。  政府は「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」策定から10年を機に、対策の進歩や最新知見を反映させた計画改定に着手。中央防災会議(会長・石破茂首相)が「南海トラフ巨大地震対策検討WG」(主査・福和伸夫名古屋大学名誉教授)を2023年4月に立ち上げ、議論を重ねてきた。  報告書ではプレートや断層域を精査し、地震や津波のモデルに変更の必要なしと結論。一方、地形・地盤データの高精度化により、津波浸水域(30センチ以上)は約3割増加。震度7の揺れに襲われる自治体数も143から149に増えた。  地震と津波による建物などの被害額は最大193・4兆円、電気・ガス・水道や交通機関、土木施設などライフラインの被害は31・5兆円に上る。被害算出式の見直しなどで単純比較できないが、10年前と比べて建物等被害は45兆円、ライフライン被害は10・4兆円増加。一方、最大死者数は2・4万人、全壊焼失棟数は15・4万棟減っており、防潮堤や津波避難タワーの整備と耐震化の進展がある程度反映された。  報告書では地震対策の基本的な考え方として▽地震・津波から命と社会を守る▽直接的被害を免れた命の保護と生命維持▽生活や社会経済活動の早期復旧-の3点を掲げた。事前防災の観点から強靱化・耐震化・早期復旧の推進を重要な対策と位置付けた。建物の耐震化は、人的・物的被害の軽減につながる「重要かつ根本的な取り組み」とし耐震診断や改修の促進、沿岸部の液状化対策などインフラ強靱化の加速を求めた。  津波だけで最大で死者21・5万人、全壊建物18・8万棟と想定した。対策として、早期避難意識の醸成などソフト対策に加え、防潮堤などハード対策の重要性も強調。高台移転や土地利用の見直しなど、事前復興準備も必要とした。  東西の震源域で時間差で発生する「半割れケース」も初めて検討した。同ケースでは繰り返しの揺れで建物倒壊が増える一方、津波の死者数は減る可能性がある。東側の先発地震の後、数日たって西側で後発地震が発生するケースでは、建物倒壊は単独で発生する場合より3・1万棟増えるが、津波による死者数は5・3万人減る。事前避難が徹底されていれば、最大で98%程度の減少が可能とした。  政府は報告書を踏まえ防災対策推進計画の改定に着手する。報告書が課題と指摘した地震対策のモニタリング体制や技術開発、広域性を考慮したリソースの確保策、地盤と建物基礎の研究など対応策の具体化にも取り組む方針だ。 from...

4月からの建設業界は/建築物省エネ基準適合が義務化、育児支援手厚く

 2025年度を迎える1日、建設関係の法令や政策による新しい措置が講じられる。改正建築基準法・建築物省エネ法が全面施行となり、同日以降に着工するすべての建築物は原則省エネ基準に適合することが義務化される。労働安全衛生法に基づく省令改正に伴い、危険箇所の作業に従事する労働者以外の人や、作業を請け負う一人親方などの保護が事業者に義務付けられる。雇用・労働関係は、柔軟な働き方や育児支援などが促される。  建築物の省エネ基準適合は、新築の住宅・非住宅すべてで義務付けられ、建築確認手続きの中で基準への適合性審査が行われる。政府の脱炭素政策の一環。建築確認、検査対象の見直し、審査省略制度(いわゆる4号特例)の縮小が措置される。小規模住宅の省エネ計算などの業務の増加が想定され、国土交通省は「建築士サポートセンター」を1月までに全都道府県に設置するなど施行に備えてきた。  入札契約関係は、予定価格が少額な場合に選択できる国の「少額随意契約」(少額随契)の基準が引き上がる。物価上昇を受けた措置で、少額随契を選択できる工事は対象の予定価格250万円以下を400万円以下に見直す。直轄土木工事は、土日休みの完全週休2日に対応した労務費や経費の新しい補正係数が適用になる。共通仮設費に率計上している現場環境改善費から避暑・避寒対策費を切り離し、現場の環境に応じた対策費を積み上げ計上できる。  改正物流効率化法・貨物自動車運送事業法の一部規定の施行により、荷主・物流事業者に物流を効率化するための努力義務が課される。トラック事業者は、運送契約の締結時に提供役務、対価を記載した書面交付などが義務化される。  雇用・労働関係のうち、労働安全衛生法の省令改正では、事業者が講じる危険箇所への立ち入り禁止、搭乗禁止、立ち入り可能箇所の限定、悪天候時の作業禁止の措置などが労働者以外の人も対象となる。下請業者や一人親方に保護具を使う必要があることの周知も義務になる。重層下請では、上位の下請業者が下位に対して必要な措置の義務を負う。事業者がすべての作業を請負人に請け負わせた場合、事業者は注文者の立場となり、措置義務の対象にはならない。  就業・育児では、両親が14日以上の育児休業を取得した場合、既存の育児休業給付と合わせて手取りの10割相当を出生後休業支援給付金から受給できる。看護休暇の対象となる子どもの年齢が現行の小学校就学前から小学校3年生までになり、男性労働者の育児休業などの取得状況を年1回公表する事業主の範囲は、常時雇用300人超の事業主にまで拡大される。 from...

時間外労働上限規制適用から1年/週休2日は着実に浸透、民間工事多い建築分野が課題

 建設業に対する時間外労働の罰則付き上限規制の適用から1日で1年になる。建設関係団体の調査によると、労働時間の削減に向けた週休2日が一段と浸透し、厚生労働省の統計でも総実労働時間が減少していた。ただ民間工事が多くを占める建築分野の課題が浮き彫りになり、上限規制の課題に対する指摘も出てきている。=各面に関連記事  厚労省がまとめた2024年の毎月勤労統計調査(事業所規模5人以上)によると、建設業の月間実労働時間は、総実労働時間が前年比1・7%減、所定外労働時間は7・6%減となった。減少は総実労働時間が2年ぶり、所定外労働時間は2年連続。同省は関係性を分析していないものの、減少の要因の一つには上限規制の適用があるとみられる。  日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)が会員企業に実施した調査では、24年度上期(4~9月)に4週8閉所以上を実現した現場の割合は61・1%と、前年同期を11・7ポイント上回った。ただ土木・建築別は、土木が73・0%(10・4ポイント上昇)に対し、建築は49・3%(13・7ポイント上昇)と差が開き、民間工事の多い建築分野が依然課題となっていることが分かった。  24年9月、日建連、全国建設業協会(全建)、全国中小建設業協会(全中建)、建設産業専門団体連合会(建専連)の4団体と国土交通省とで行われた意見交換では、同3月改定の「工期に関する基準」と、同6月成立の第3次担い手3法を受け、民間発注者に対する適切な指導を求める意見が出た。4団体は同11月、不動産協会(不動協)に現場の土日閉所運動の展開に当たっての協力を申し入れ、土日閉所可能な工期設定なども求めた。  不動協への働き方改革の協力要望は初めて。4団体は、24年度に開始した「目指せ!建設現場 土日一斉閉所」運動への協力を要請した。この運動は25年度から日本空調衛生工事業協会(日空衛)、日本電設工業協会(電設協)が加わり、6団体で強力に推進する。  第3次担い手3法を踏まえ、週休2日や適正工期の確保を巡る国交省の対応も進展している。直轄土木工事には、25年度から土日休みの完全週休2日に対応した労務費や経費の新しい補正係数を適用する。政府が2月に公表した新しい公共工事設計労務単価は、上限規制に対応するために必要な費用が引き続き反映された。  上限規制や働き方改革は、今国会でも質疑が行われており、3月14日の衆院国土交通委員会では地域の建設業協会の調査結果から「公共工事は工期に猶予をもらっているが民間はタイト」(赤羽一嘉元国交相)と指摘があった。厚労省の担当者は、都道府県ごとの「働き方改革推進支援センター」の機能や関係助成金による建設会社の支援とともに、助言、指導を行っていく考えを示した。  同委員会では、収入を増やすために働く時間を増やしたい労働者を巡るやりとりもあった。それでも労働時間の削減や週休2日の定着は、処遇の改善や若い担い手の確保・定着に影響するだけに、上限規制の適用2年目も受発注者双方の対応が活発になりそうだ。 from...

中部整備局/インフラDX行動計画更新、テックフォース活動スマート化検討

 中部地方整備局は、中部インフラDX行動計画の第4版を策定した。これまでの取り組みを踏まえ、個別進捗状況を更新。2025年度は、TECアプリを活用した被災状況調査の高度化・効率化に向けた検討や車載器からの走行情報を活用した大規模災害時通行可否情報の早期把握の本格運用開始などを予定する。  TECアプリを活用した被災状況調査の高度化・効率化では、テックフォース(緊急災害対策派遣隊)活動のスマート化を図る。被災現地の計測、記録、撮影から作業基地でのデータ整理、被災数量や被災額などの報告書の策定までの一連の作業は、人手が必要で1カ所の調査に時間がかかり、隊員の負担も大きい。  このため将来的には、AIや3D点群データなどを活用。TECアプリに入力する被災写真や点群データ、所見テキストから、被災報告の自動作成を支援する仕組みの実現を目指す。25年度は支援システムの構築に向けた検討に着手する。  大規模災害時の通行可否情報の早期把握は、ETC2・0などの走行情報を活用する。走行実績の消滅範囲をAIなどで自動判別し、通行可否情報を迅速に把握。消防や警察、自衛隊の救急救命活動につなげる。システムの評価や改良を進め、25年度中の本格運用を目指す。  このほか25年度は、映像を活用することで地権者が急傾斜地など現地に入らずに済むリモート境界確認やウェブ会議システムによるオンライン用地交渉の本格運用も予定。国営木曽三川公園の運営維持管理の効率化などに向けた検討も深める。  中部インフラDX行動計画は22年4月に策定した。最新のDXツールを活用した生産性の向上などを目指し、建設企業や関係機関と協力して取り組みを推進している。 from...

JACIC/新サービス「コブリス・プラス」を5月7日から提供開始

 日本建設情報総合センター(JACIC、山田邦博理事長)は、既存の建設副産物情報交換システム(コブリス)と建設発生土情報交換システム(発生土システム)を全面的にリニューアルし一体化した「コブリス・プラス」のサービス提供を5月7日に開始する。同時に利用者の拡大に向け、料金を引き下げる。  コブリス・プラスは、両システムに加え、建設発生土の官民有効利用マッチングシステム(官民マッチング)も一体化させる。三つのシステムを、一つのIDで利用できる。リニューアルとシステムの一体化で機能の充実を図るとともに、操作性やデータ精度などを向上させた。  具体的にはデータの受け渡し経緯が見える化され、関係書類の印刷や紙データでのやりとりを不要にした。資源有効利用促進法省令改正に伴う土壌汚染対策法などの手続き状況の確認結果票は、画面に沿って入力するだけで簡単に作成できる。工事データの登録前に受発注者で同じデータのチェックが可能で、データの精度も高まる。  新サービスの料金は▽国土交通省地方整備局・北海道開発局、内閣府沖縄総合事務局、他省庁、独立行政法人、高速道路会社など=16万5000円(1ID当たり)▽都道府県、政令市=3万3000円(ID数によらず定額)▽都道府県・政令市の外郭団体、広域水道企業団など=1万6500円(2ID以上が3万3000円)▽市町村、特別区、外郭団体=7700円(ID数によらず定額)。  JACICは新規利用の申し込みを1日に始め、操作説明会を22日に開催する。コブリスと発生土システムは30日、官民マッチングは5月2日にシステムを停止する。 from...