2025年2月21日金曜日

阪神電鉄/阪神タイガースのファーム拠点完成、環境に優しい野球文化の発信拠点に

 阪神電気鉄道が兵庫県尼崎市で整備を進めてきた阪神タイガース2軍本拠地「ゼロカーボンベースボールパーク」が完成し、20日にオープン式典が開かれた。新たな2軍球場「日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎」や選手寮、室内練習場、一般用野球場などで構成する。設計・監理を久米設計、施工を熊谷組が担当。関係者約200人を集め、環境に優しい野球文化の発信拠点の誕生を盛大に祝った。  場所は阪神電鉄大物駅東側に位置する小田南公園(杭瀬新町3、約7・4ヘクタール)。現在の鳴尾浜(兵庫県西宮市)から2軍本拠地を移転する。阪神電鉄と尼崎市が共同で、脱炭素や循環型社会に貢献する公園として再整備するプロジェクトを環境省に提案。2022年に脱炭素先行地域の選定を受けていた。  2軍野球場(RC一部S造3階建て延べ約1万1000平方メートル)のグラウンド面積は甲子園球場と同程度(両翼95メートル、中堅118メートル)を確保。LEDのナイター照明灯を6基設置し、観客席は約3600席を備える。阪神なんば線を挟んだ南側敷地に室内練習場(S造平屋6168平方メートル)と選手寮「虎風荘」(S造3階建て延べ3704平方メートル)を整備した。  脱炭素化の取り組みでは、ナイター試合を開催する野球場の年間電力使用量の80%強相当を太陽光発電と蓄電池で賄い、不足分を尼崎市のクリーンセンターの発電でカバーする。  竣工式で、阪神電鉄の久須勇介社長は「この施設が沿線活性化の起爆剤になると確信している。今後も市と連携し期待に応えたい」、阪神タイガースの秦雅夫会長が「球団創設90周年の節目に素晴らしい施設が完成し、大変感慨深い」と話した。尼崎市の松本眞市長は「環境貢献のシンボルとして多くの来場者でにぎわってほしい」と述べ、来賓の小林史明環境副大臣は「尼崎市と阪神電鉄の先進的な取り組みに敬意を表する」と語った。  続いて久須社長が久米設計の藤澤進社長と熊谷組の上田真社長に感謝状を贈呈。藤澤社長は「基本構想段階から参画し、6年を経てきょうを迎えることができた。この場所から将来のスター選手が巣立つのが楽しみだ」、上田社長は「施設を快適に利用していただくため、万全体制でアフターケアに努めていく」と述べた。  オープニングセレモニーで関係者代表らがテープカットを行い、無事完成と新たな門出を祝った。 from...

土木学会/24年度インフラメンテ賞の受賞者決定、5部門43件に栄誉

 土木学会(佐々木葉会長)は20日、2024年度「インフラメンテナンス賞」の受賞者を発表した。同賞はインフラ維持管理で優れたプロジェクトや先進的な技術、功績のあった個人や企業・団体、優秀な論文などを顕彰。21年度に創設し今回で4回目となる。  応募があった80件・編の中から5部門で43件・編を決定した。27日に東京都新宿区の同学会講堂で表彰式を開く。  受賞の内訳は▽プロジェクト賞6件▽チャレンジ賞9件▽エキスパート賞9件▽マイスター賞9▽優秀論文賞10編。  受賞件名(論文名)と受賞者は次の通り(敬称略)。  【プロジェクト賞】  ▽カチプール、メグナ並びにグムティ橋第2橋梁建設および既設橋改修工事=バングラデシュ人民共和国交通橋梁省国道・道路局、オリエンタルコンサルタンツグローバル、日本構造橋梁研究所、大日本ダイヤコンサルタント、片平インターナショナル、大林組、清水建設、JFEエンジニアリング、IHIインフラシステム  ▽線路データのプラットフォーム構築によるメンテナンス連携=日本線路技術、小田急電鉄、東急電鉄、東京メトロ、JR東日本  ▽名神高速道路における日本初の集中工事を利用した床版取替リニューアルプロジェクト=中日本高速道路名古屋支社、鹿島  ▽ベトナム技能者育成学校=日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会  ▽九州自動車道宝満川橋床版取替工事プロジェクト=大林組・大本組JV  ▽中空床版全面打換え工事の品質確保・工程管理に向けた取り組み=東日本高速道路北海道支社、戸田建設、ネクスコ・メンテナンス北海道  【チャレンジ賞】  ▽橋梁実モデルと橋梁メンテナンスVRを活用した橋梁メンテナンスの技術力向上の取組=九州地方整備局九州技術事務所  ▽住民主体型橋梁セルフメンテナンスを通じた女性技術者による次世代育成・指導者育成の取り組み=土木技術者女性の会、茨城県建設業協会建女ひばり会、石岡市道路建設課  ▽AI活用等による主要線路設備全ての劣化状態自動判定の実現=JR東日本、日本線路技術  ▽鉄筋コンクリート内部ひび割れ検出システムによる床版調査の取り組み=技建開発  ▽ポリカーボネート樹脂製透光板の飛散防止材の開発=首都高速道路会社  ▽「福国橋守マイスター会」による道路インフラメンテナンスの取組=福岡国道事務所、福国橋守マイスター会  ▽ひび割れ進行評価技術を用いた橋梁維持管理の高度化・効率化を目指す取り組み=多摩市都市整備部道路交通課、八千代エンジニヤリング、ニコン・トリンブル  ▽メンテナンスフリーと施工の効率化を目的とした補修工法の開発と導入=JR東日本東京土木設備技術センター、デンカ  ▽道路走行可能な新幹線・在来線両用のレール探傷車の開発と運用=JR東日本、JR四国、JR九州、日本線路技術  【エキスパート賞】  ▽稲田勉▽太田哲司▽黒谷努▽坂上悟▽田上敏博▽並木宏徳▽林良範▽堀雄一郎▽山口敏久  【マイスター賞】  ▽藍郷一博▽植野芳彦▽加賀山泰一▽川村昭宣▽葛目和宏▽時田英夫▽中田雅博▽横田聖哉▽吉田好孝  【優秀論文賞】  ▽中小河川に架かる橋梁を対象とした効率的な定期点検への取り組み=後藤幹尚(大田区都市基盤整備部)、藤森竣平(同)、近藤冬東(同)、岩波光保(東京科学大学)千々和伸浩(同)、津野和宏(国士館大学)  ▽橋梁定期点検の義務化をチャンスと捉えた定期点検実務のスパイラルアップとコスト縮減=木下義昭(玉名市役所建設部)  ▽空港舗装動態観測への干渉SAR解析等の新技術導入の可能性及び具体の方策の検討=山田凱登(沿岸技術研究センター)、遠藤敏雄(同)、森弘継(関東地方整備局東京空港整備事務所)、三浦幸治(同)、小野憲司(京都大学)  ▽動ひずみ計測による疲労き裂の発生原因推定とLPWAを活用した対策効果の検証=三森章太(首都高技術)、木之本剛(首都高速道路会社)、日和裕介(首都高技術)、和田尚人(同)、後藤幹尚(大田区都市基盤整備部)、岩波光保(東京科学大学)  ▽地方公共団体における橋梁の新しい再評価方法の有効性・実用性に関する検討=齋藤和也(IHI)、塩永亮介(同)、津田誠(石川工業高等専門学校)、廣井幸夫(IHI)  ▽橋梁長寿命化修繕計画における既存橋梁の撤去および継続利用の評価手法に関する検討=尾場瀬美綺(茨城大学)、原田隆郎(同)、大崎康弘(茨城県土木部)大久保克紀(同)  ▽ゴム引布製起伏堰に用いられるゴム引布の疲労破壊に関する実験的検討=川邉翔平(農業・食品産業技術総合研究機構)  ▽超音波法によるウェブ厚推定を利用したPCポストテンションT桁橋のグラウト充填調査=大野健太郎(東京都立大学)、岩野聡史(リック技術研究所)、後藤幹尚(大田区都市基盤整備部)、岩波光保(東京科学大学)  ▽既設ガードレール支柱の鉄筋コンクリート部材を用いた補強工法の提案=林和彦(香川高等専門学校)、飛鷹政亘(丸治コンクリート工業所)酒井凌(カンケン)、福山裕史(同)、渡井忍(マックストン)  ▽新幹線構造物の検査の省力化に向けたデータ取得・分類・蓄積に関する研究開発=栗林健一(JR東日本研究開発センター)、大島竜二(同)、佐藤保大(JR東日本)、久田真(東北大学)、皆川浩(同)、宮本慎太郎(同)。 from...

内閣府/PFI事業のスライド条項、標準契約に記載検討

 内閣府はPFI事業の物価変動対策として、スライド条項の適用を巡る検討を進める。PFI法に基づく直近の事業を調査したところ、47件は全体・単品・インフレの各スライド条項とも規定されていたが、いずれの規定もないのが57件あった。受注者からは、条項の運用のばらつきを指摘する意見も出ており、契約のひな型となる「PFI標準契約1」に全体スライドの記載を追加することを検討するとともに、適用の状況を注視していく。  民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)が158事業を対象に行った調査によると、全体・単品・インフレの各スライド条項のうち、全体は70件、単品は79件、インフレは64件で規定があった。規定の有無はさまざまで、緩やかな価格水準の変動に対応する全体スライドだけが規定されていたり、特定資材の急激な価格変動に対応する単品スライドや、急激な価格水準の変動に多応するインフレスライドの規定がない事業が少なくなかった。  工事などへの物価変動の影響が大きく、日本建設業連合会は2024年6月に国や地方自治体でスライド条項の適用にばらつきが見られるとも指摘した。その上でスライド条項の適用をPFI事業の関係ガイドラインに明記するとともに、すべての発注者に適用するよう申し入れていた。  スライド条項を巡っては、PFIのような官民連携の事業領域に物価高騰の影響が出ていることで、川崎市は3日公表の「民間活用(川崎版PPP)推進方針」に、通常範囲を超える物価変動の場合には市と民間事業者とで「事業手法や性質に応じて適切にリスクを分担する」と明記。物価変動に対する趣旨を明確にするのが狙いで、事業継続の必要な措置という認識も示した。一方で「通常の範囲内のインフレ・デフレについては民間事業者のリスク」とした。  PFI標準契約1は全体スライドの規定そのものがなく、単品スライドやインフレスライドの官民負担の割合を規定していない。同推進室は公共工事標準請負契約約款や国の直轄工事の規定を参考に、全体スライドの追加を検討する考え。受発注者の契約変更協議が活発になっていることで、実態を見た物価変動対策を進める。 from...

工場探訪/大林道路大分センターアスコン(大分市)、工場全体をDX・自動化

 大林道路が次世代モデルのアスファルト合材工場と位置付ける「大分センターアスコン」(大分市)。田中鉄工(佐賀県基山町、末吉文晴社長)と開発した製品事業運営を効率化、最適化するさまざまなデジタル(DX)ツールの連携により、施工現場と運搬車両の情報をひも付けた製造のプロセスの自動化による出荷を実現している。材料を貯蔵してプラント本体に供給するまでのルートも設備化し、場内で材料供給するホイールローダーの稼働も不要とした。将来的に工場従事者の半減を目指す。  大分センターアスコンは年間10万トンを製造、出荷する大林道路にとって主力工場の一つ。経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2024年6月に公表した指針を踏まえ、製造部門の業務DX化や設備の自動化に着目して最適化する「スマートマニュファクチャリングBIツール」を先行導入した。  同ツールは統合API連携サーバーやデータ保存ストレージを介し▽ウェブから工事情報を収集する受注管理▽ダンプ台数を自動算出する配車管理▽製造を自動化する出荷管理▽製造配合と出荷情報を整合させる製造管理▽製造・現場双方が車両情報を把握する運行管理▽契約情報と施工情報を統合する品質管理-などの各システムを連携させる仕組み。受注管理や出荷管理、製造管理で先行しており、残るシステムは25年度にも開発する。  時間外労働上限規制に対応して働き方改革を推進する必要があり、原材料高騰分の価格転嫁が思うように進まずコスト削減や収益性の向上が急務だったことも背景にある。そこで実現性の高いシステムから順次導入していった。  その一つが施工現場と運搬車両の情報をひも付けて製造プロセスを自動化する出荷管理システム。さまざまなDXツールでダンプの入場や受け付け、場内誘導、合材の自動積み込み、出荷伝票の受け渡し、退場までを運転手が降車せずに完結するドライブスルーのシステムを導入した。  場内での車両渋滞緩和や歩行による事故防止だけでなく、事務担当者の作業効率も向上。夜間の少量出荷を無人で行うことも可能となった。同システムによる製造情報と配合情報の一元管理に基づく出荷によって、適切な品質確保によるコンプライアンス強化にもつなげたいという。  材料の貯蔵設備として24年11月末から本格運用する新材コルゲートサイロ8基(貯蔵量1基当たり280トン)と再生骨材貯蔵サイロ4基(同120トン)も生産性向上に貢献している。いずれも雨水などの浸水による含水比率上昇を抑制。プラント本体への供給ルートも設備化、自動化しており、アスファルト合材の製造プロセスにおいて場内でのホイールローダー稼働がなくなり人件費や燃料費のコストダウン、二酸化炭素(CO2)排出量の削減も実現した。  同社によると、再生骨材貯蔵サイロは世界初で初導入した。サイロ内で石や砂など材料同士の固まりを防ぐブロッキング対策用の設備として、材料を入れ替えられる循環路を開発し採用している。  同社は大分工場での先行事例を全国に順次広げていく考えだ。当面は品質確保に向け合材の配合管理を徹底するシステム強化に万全を期す。担当者は「将来的にはAIも取り入れ、工場運営のさらなる効率化を目指す」と展望する。 from...

関東整備局/17号北本電線共同溝PFIで見積活用、NTTインフラネットグループに

 国土交通省はPFI事業の入札不調・不落対策に「見積活用方式」を取り入れた。関東地方整備局が「国道17号北本(5)電線共同溝PFI事業」の一般競争入札(WTO対象、総合評価方式)を開札し、23億7518万2529円(税込み、以下同)でNTTインフラネットを代表とするグループが落札した。不調・不落対策を目的に、入札者が提出した見積書の内容を予定価格に反映する見積活用方式を、同局が実施する工事を伴うPFI事業で初めて採用。3月の事業契約締結を目指す。  関東整備局は2024年1月に入札手続きした「国道20号西府町・谷保電線共同溝PFI事業」で発生した入札不調を踏まえ、見積活用方式を採用した。入札手続きに当たっては、電線共同溝事業への参画意欲などを確認するための市場調査を実施。標準歩掛かりではなく見積活用をした方が望ましいと考えられる工種も聴取した。市場調査の結果や現場付近の工事を受注した施工会社へのヒアリングも行った。  全46工種のうち入札者に提出を求める見積書の内容として、特殊部設置の▽縁石工(復旧)▽側溝工(同)▽路側防護柵工(同)。管路部設置の▽管路工(管路部)▽縁石工(復旧)▽側溝工(同)▽路側防護柵工(同)▽構造物取り壊し工-の8工種を選定。残りを標準歩掛かりで積算し予定価格を設定した。  落札したのはNTTインフラネットとミライト・ワン、オリエンタルコンサルタンツで構成するグループ。総合評価では価格点300点と内容点700点の合計1000点を満点として審査。その結果、同グループは763・75点(内容点463・75点、価格点300円)だった。  事業区間は埼玉県北本市本宿5~同宮内7の約800メートル。事業方式はBTO(建設・移管・運営)方式。電線共同溝と道路、道路付属物の調査設計、工事、工事管理と電線共同溝部分維持管理を一括して任せる。2034年3月の施設完成と引き渡しを目指す。契約期間は44年までの20年間。  電線共同溝整備は災害時の泥閉塞(へいそく)解消や円滑な交通確保を目的に行う。事業スピードのアップや財政負担の平準化を図るため、同局はPFI手法で整備を進める。 from...

竹中工務店/量子コンピューターで教育施設整備計画最適化、短時間で要望反映しやすく

 竹中工務店は、量子コンピューターを用いた教育施設整備計画の最適化技術を開発した。大学や高校、専門学校といった校舎などの新築や改修を想定し、複数のカリキュラム(授業と教室の最適な組み合わせ)実施案を短時間で算出、比較検討できるようにした。その結果を踏まえ最適な施設整備計画案を効率的に作成。発注者の要望をより的確に反映しやすい計画立案も可能になった。  多数の中から高速で最適な組み合わせを探し出す量子コンピューターの計算方式の一つ、量子アニーリング技術を活用。カリキュラム案を1案当たり10時間程度で作成する。  同社によると、教育施設のカリキュラム実施案は施設構成や学生数、教員数など複数の要因を考慮する必要がある。1学期を通して500以上の授業が行われるような大規模な大学の場合、一つの実施案作成に数カ月かかる。  新技術を用いた計画立案の手順は▽教育施設の現状やカリキュラム実施上の制約を確認▽教育施設から協議可能な教員の時間帯や授業計画、教室数・定員などの施設情報を入手▽教室数や定員について施設構成案を考察▽教育施設から入手したデータと竹中工務店が設定した施設構成案データを整理し、プログラムで読み取れる形式に変換▽教育施設固有の制約に対応するよう、最適な施設構成案を算出するプログラムを修正、テスト▽プログラムを実行して最適な施設構成案を算出▽算出した結果を教育施設に確認してもらいフィードバックを受けてプログラムを修正、再実行▽最終的な施設構成案を基に整備計画立案-となる。  複数のカリキュラム実施案を一つの最適案に絞る際、二つ以上の必修授業が同日に行われず教員や学生の授業間移動が減ることを評価。教室の稼働率が高いかどうかも考慮する。  同社は個別の施設整備だけでなくキャンパス全体の運用も視野に入れ、より効率的で精度の高い提案ツールとして活用していく。 from...

2025年2月20日木曜日

スコープ/茨城大学と日立建機が教育や研究開発で連携、地域発展にも貢献

 日立建機が教育・研究機関との連携を加速する。茨城大学と人材育成や研究開発などで相互協力する包括連携協定を3日に締結。共同研究をはじめさまざまな連携を通じ、顧客に寄り添う革新的なソリューションの創出に向け新たな技術を探索する。同社が教育・研究機関と包括連携協定を結ぶのは初めて。茨城県内に拠点を置く企業と大学のオープンイノベーションにより、社会価値の創出や地域の発展に貢献する。  両者は同日、水戸市の茨城大水戸キャンパスで調印式を開き、先崎正文社長と太田寛行学長が協定書に署名した。新たな価値創造のオープンイノベーションに取り組む同社と、ステークホルダーとの共創による教育や研究を進める同大学の方向性が一致した形だ。  先崎社長は建機オペレーターの減少や高齢化、環境負荷の低減、安全性向上など業界を取り巻く課題が「複雑、高度化している」と指摘。その上で建機の開発に必要な技術分野が電気電子や情報通信、ソフトウエアへと広がっていることを踏まえ「幅広い分野を総合的に扱うエンジニアの育成が急務だ」との考えを示した。  共同研究などさまざまに連携し、「われわれが目指す顧客に寄り添う革新的なソリューションの創出に向けた新たな技術探索を図る」と協定締結の狙いを説明。「茨城県に立地するわれわれが緊密に連携、協力を図ることにより、その成果を地域社会の発展へと還元する」と述べた。  茨城大は工学部と大学院理工学研究科で、地域産業に貢献する製造系の高度ITエンジニアの育成に力を注いでいる。地域企業と協力して機械や電気、電子、情報工学といった分野をまたぐ実践的カリキュラムで教育を展開。2006年からは「サステイナビリティ学」の研究や教育に取り組んでいる。  太田学長は「このタイミングで、サーキュラーエコノミー(循環経済)やカーボンニュートラル(CN)への対応を強化している日立建機と協定を結ぶことで、社会実装、社会還元の道を得られた思いだ」と今後の取り組みを展望した。  同大学は3年次に原則、必修科目を開講せず、特に学外での主体的な学びを促す期間「iOP(internship Off-campus Program)クオーター」を設けている。太田学長は「今は4年間キャンパスの中で学ぶ時代ではない。これからの大学は社会と接しながら、学生が自己実現を図る場を提供しなければならない。そういう意味で、日立建機は良いパートナーだ」との期待感を示した。  日立建機は現在、デジタル技術を含む幅広い分野を総合的に扱っており、新たな価値を創造するためのエンジニア育成に注力している。その一環で産学問わずさまざまなパートナーとオープンイノベーションの推進にも積極的に取り組んでいる。  今回の協定締結を機に、大学院修士1年を対象にした企業提携講座を25年度にも開設する。同社社員が講師となり、理工学部の学生にものづくりの基礎知識や安全、品質保証などの考え方などを講義。ものづくりに関わる企業が求める人材を育成する。土浦工場(茨城県土浦市)でインターンシップの受け入れも行う。  共同研究も始まる。研究内容は未定だが、先崎社長と太田学長は「持続可能な地球環境の構築」を研究テーマに据える。  太田学長は新しい学問として「気候変動科学」の確立を目指していると説明。「二酸化炭素(CO2)を固定化し燃料にしたり、水田で発生するメタンを活用したりする。企業がそれらを商品やサービスにどう生かすか考えることも大切。(気候変動に対し)緩和策と適応策を組み合わせた社会モデルを考える上で、建設現場のサステナビリティに取り組む日立建機のような企業との連携は重要だ」と語った。  先崎社長は「お客さまが求めるサステナブルな環境づくりをサポートする。そのため広い視野を持つ大学と連携し、オープンな関係で研究ができることはわれわれにとってもプラスになる」との考えを示した。  日立建機は企業のPRを目的に、茨城大の水戸キャンパスと日立キャンパス(茨城県日立市)にある施設のネーミングライツ(施設命名権)の取得も予定する。協定を結んだ3日、先崎社長が愛称を付ける予定の水戸キャンパスの中庭を視察。「学生が集まる動線の中にあるので、カットモデルの展示や電動ショベルを使った実演などいろいろなイベントを展開してみたい」と展望を語った。 from...

北海道企業局/経営戦略改定案、工水建設改良費に5年で273億円

 北海道企業局は、中長期的な経営目標や投資・財政計画を示す経営戦略の改定案をまとめた。2025~29年度の5カ年の建設改良費は電気事業で約98億円を見込み、岩尾内発電所の大規模改修などを実施する。室蘭、苫小牧、石狩合わせた工業用水道事業は24年11月に示した原案より約28億円増の273億円を見込み、苫小牧で新規ユーザー配水管敷設、石狩で水管橋耐震補強を盛り込んだ。経営戦略は本年度内の成案化を目指す。  現行の経営戦略は20~29年度を計画期間とするが、20年度の計画開始以降、ラピダスの次世代半導体製造工場やデータセンターの立地などを契機とした再生可能エネルギーや工業用水需要の高まり、資材費や人件費の高騰、金利の上昇による経営コストの増大、ゼロカーボンの実現などの社会的要請の高まりなど、経営環境に大きな変化が生じたため、中間年となる本年度に内容を見直す。  中長期の投資計画を見ると、電気事業では20年度から40年間の建設改良費に約744億円を試算。主な事業では計画期間内に岩尾内発電所大規模改修(21~28年度)に約67億円、ポンテシオ発電所改修(21~25年度)に約23億円を投じる計画で、25~29年度の建設改良費は約98億4500万円を見込む。このほか計画期間外の事業として、川端発電所大規模改修(31~39年度)、鷹泊発電所大規模改修(41~49年度)を計画するとともに、川端ダムと鷹泊ダムについてはダム安全性評価委員会で審議中となっており、国がダム改修を含めた老朽化対策を検討している。  工業用水道事業では、今後40年間の更新需要に室蘭工水で約160億円、苫小牧工水で約440億円、石狩工水で約60億円の総額約660億円を試算。25~29年度の建設改良費には室蘭工水が30億7600万円を投じる計画で配水管更新改修やダム放流設備耐震補強などを実施。苫小牧工水は225億6900万円で配水管更新改修や新規ユーザー配水管敷設などを計画し、25年度は約92億円、26年度は100億円超の投資を見込む。石狩工水は17億1400万円で配水管更新改修や新たに水管橋等耐震補強などに取り組む。 from...

愛媛県/東予港西条地区産業用地整備、DBで軟弱地盤対策発注2月中に入札公告

 愛媛県は、半導体や蓄電池など先端成長産業の大型投資を呼び込むため、東予港西条地区(西条市ひうち)に約30ヘクタールの大規模産業用地を整備する。県が浚渫土などによる埋め立てを進めており、産業用地として必要な軟弱地盤対策をデザインビルド(DB)方式で発注する。月内にも総合評価方式の一般競争入札を公告したい考えだ。  2025年度当初予算案に事業費29億1277万3000円を新規計上した。このうち地盤改良整備に28億6254万7000円を充てる。合わせて26年度の債務負担行為42億5628万6000円を設定した。  5000トン級の船が着岸できる水深7・5メートルの岸壁(延長130メートル)も整備する。予備設計委託費などとして3202万9000円を盛り込んだ。工業用水の配水管路を整備するための実施設計・試掘調査費1819万7000円も計上している。  進出企業は26年に公募する。用地は分割せずに一括での利用を見込む。28年度中の供用開始を見据える。 from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171556 via 日刊建設工業...

大成建設ら/ふるい下残さでソイルモルタル製造、最終処分量低減を実証

 大成建設と光洲産業(川崎市高津区、光田興熙社長)は、建設混合廃棄物の中間処理過程で発生する建設副産物「ふるい下残さ」をソイルモルタルの母材として有効利用する技術を確立した。建設発生土の再利用によってソイルモルタルを製造する大成建設の「TAST工法」を応用。砂質土を主体とする材料の代替としてふるい下残さ100%の再生土砂を活用し、ソイルモルタルが製造できることを室内試験や試験施工で実証した。  一般的に解体工事で発生する廃棄物はがれき類のほか木材、プラスチック、ゴムなどの有機物が混在し適切に処理することが義務付けられる。中間処理過程で再生砕石や再生資材が選別、分別された後、最終的に土が主体となる粒径2ミリ程度以下のふるい下残さが生じる。微細な異物などが混入しており再生利用が難しい。大成建設によると各地にある最終処分場は残余容量が減少傾向にあり、最終処分量の低減が課題となっている。  そこで同社らは、砂質土を主体とする建設発生土にセメントと水を混ぜてソイルモルタルを製造するTAST工法に着目。代替材としてふるい下残さをセメントと混合し固化することにより、有害物質の溶出抑制と所定強度の確保を実現した。  このほど横浜市戸塚区にある同社技術センターに建設した木造人道橋の橋台周辺空隙部を充填するため、約8トンのふるい下残さをソイルモルタルの部材として初適用した。試料の7日強度はソイルモルタルの目標品質を上回り、有害物質の溶出量も土壌環境基準値に満たしていることを実証。ふるい下残さの再生利用と最終処分量低減を実現した。 from...