2024年11月7日木曜日

兵庫県/福良港で津波防災施設完成式典開く、西日本初のフラップ式水門採用

 兵庫県が淡路島の福良港(南あわじ市)で進めてきた津波防災インフラ整備事業が完了し、4日に現地で完成式典が開かれた。湾口に新設した3基の水門や防波堤、かさ上げした防潮堤などによる二重防御で、堤内地の浸水被害縮減に大きな効果が見込まれる。式典は服部洋平副知事や守本憲弘南あわじ市長のほか、来賓の国会議員や県議会議員、市議会議員、国土交通省、設計・工事関係者などが多数出席。地域防災の新たな一歩を盛大に祝った。
 同事業は2015年度に着手。沿岸の延長3・3キロにわたって既存防潮堤を約3メートルかさ上げ、一部の未整備箇所に防潮堤を新設し、陸閘も整備した。湾口部では離島を介した延長約1・1キロで、既存防波堤の改良と防波堤の新設で湾内の防護壁を構築。船舶航行用の航路2カ所と「煙島水門」(幅25メートル)、水質環境維持で通水用の「洲崎水門」(幅10メートル)、「既存防波堤水門」(同)を設置した。
 煙島水門は海底に沈めた扉体が浮力で起き上がり、港の開口部を閉鎖する「フラップ式ゲート水門」を採用。西日本で初の採用例となる。新設3基を含む水門と陸閘の計48基で閉鎖操作が自動で行われる。
 津波防災施設の完成によって、数十~数百年に1回程度発生する(レベル1)津波が発生した場合、堤内地の浸水面積を約60%縮減。木造家屋の全壊はほとんど生じず、浸水深を1メートル未満程度に低減する。南海トラフ巨大地震で予測されるような最大クラスの津波(レベル2)では浸水面積を約30%縮減。住民の主体的な避難と合わせて効果を発揮する。総事業費は約140億円。
 式典で主催者代表の服部副知事は「福良港は県内でも優先度の高い津波浸水想定域だった。南あわじ市は住民の防災意識が高い先進地域。今回のハード整備と合わせて一人一人が正しい知識を持って行動につなげてほしい」と話した。
 地元中学生による演奏に続き、関係者によるテープカットとくす玉開披が行われた。




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回転窓/若者を見守る社会に

 「担い手を確保したければコツコツやらないと駄目だ」。先日、取材先で専門工事会社の社長が口にした言葉である。人材確保は経営者にとって悩ましく、地道に取り組んでいくしかないと話す▼リクルート活動の一環で工業高校などに出向き、卓越した技術を教える出前授業が各所で開催されている。ベテランや若い職人が高校生らと触れ合う姿はほほ笑ましくもあり、1人でも多くが業界の仲間になってほしいと願う▼高額報酬を謳(うた)った闇バイトが社会問題になっている。若者が心理的に追い詰められ、凶悪犯罪に手を染めてしまう事件が後を絶たない。闇バイトに申し込んでしまった人に対して警察庁は専用ダイヤルを開設し、勇気を持って相談するよう呼び掛ける▼加害者の多くは金銭的な理由から凶行に及んだとされる。決して許されることではないが、無職や非正規雇用の増加などに伴う貧困化が背景にあると指摘する専門家もいる▼先の経営者の言葉はこう続く。「社会が若者をほったらかしてはいけない」。そうした社会であるにはどうすればいいのか、相次ぐ闇バイト事件の報道に触れて考えさせられる。




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国交省/都道府県らとブロック監理課長会議スタート、市区町村への支援強化訴え

 国土交通省は都道府県・政令市の担当者と入札契約制度や建設業行政の課題を議論する2024年度下期「ブロック監理課長等会議」(入札契約担当課長会議)を7日の近畿地区を皮切りに全国8ブロックで開く。時間外労働の罰則付き上限規制の適用などを踏まえ、地方自治体発注工事の週休2日や工期の適正化に重点を置く。改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)に基づき小規模自治体の発注体制を強化するため、これを機会に都道府県などと連携した市区町村への支援・働き掛けを強める。
 主要議題は▽持続可能な建設業に向けた制度的対応▽公共発注体制の強化▽公共工事の円滑な施工確保-の三つ。これまでオブザーバーとして参加していた各ブロックの政令市を今回から正規の構成員とする。
 直近の制度的対応として第3次担い手3法の運用について説明。発注体制の強化として都道府県による管内市区町村への入札契約適正化の働き掛け状況を把握し、優良事例の水平展開を図る。自治体発注工事の法令順守の徹底も改めて訴える。円滑な施工確保に向け、施工時期や業務の履行時期の平準化も要請。円滑な価格転嫁の取り組みも推進する。
 日程は▽7日=近畿(開催地・大阪市)▽11日=九州・沖縄(北九州市)▽12日=北陸(新潟市)▽13日=北海道・東北(仙台市)▽18日=中国(広島市)▽19日=四国(高松市)▽22日=関東甲信(さいたま市)▽12月5日=中部(津市)。




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さいたま市/新庁舎(大宮区)基本設計、アール・アイ・エーJVに

 さいたま市は6日、「さいたま市新庁舎整備基本設計業務」の委託先をアール・アイ・エー・環境デザイン研究所JVに決めたと発表した。委託額は6億5084万2500円(税込み、以下同)。公募型プロポーザル方式で選定し、1日に契約した。プロポには3者が参加。同JVは新庁舎ビル横に設ける「屋根付き市民広場」を市民活動の場として具体的に提案した点などが評価された。事業費限度額は6億6871万6400円。履行期間は2026年4月30日まで。
 新庁舎の建設地はJRさいたま新都心駅のバスターミナル周辺(大宮区北袋町1の603の1ほか、敷地面積約1・7ヘクタール)。基本設計先行型の実施設計・施工一括(DB)方式を採用し、新庁舎ビルと民間ビルを分けて建てる。
 南側敷地に新庁舎ビル、北側敷地に民設民営の民間ビルを置く。新庁舎ビルは高層の行政部分をセットバックさせ、低層の議会部分が基壇部となる。ビル横に屋根付きの市民広場を設け、さいたま新都心駅と接続する。
 総延べ面積は約5万平方メートル。うち行政部分は約4万1000平方メートル、議会部分は約3600平方メートル、駐車場は約5300平方メートルとなる。概算事業費は約400億円。このうち予定工事費に371億円を見込む。26年度にDB事業者を決め、27年度以降に実施設計に着手する。工期は28年4月1日~31年2月28日の予定。
 市は基本設計業務の選定に先立ち、9月に「さいたま市新庁舎整備基本設計等発注者支援業務」の委託先を日建設計コンストラクション・マネジメント(NCM)に決定している。




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日特建設/のり面吹き付けを遠隔操作で大容量・省力化、家庭用ゲーム操作機も使用可能

 日特建設はのり面吹き付け作業を大容量化、省力化するロボット施工技術「スロープセイバー」の遠隔操作システムを構築し、5日に福島県南相馬市の福島ロボットテストフィールド(RTF)で初公開した。最新型式ではない建設機械にも遠隔操作機器が後付けできる汎用(はんよう)性の高いシステムを実現。家庭用ゲーム機「プレイステーション5」のコントローラーによる操作も可能にした。
 スロープセイバーは、吹き付けアタッチメントとバックホウを用いたのり面吹き付け工のロボット施工技術として実際の現場で展開中。LiDARを用いたのり面施工システムも併用することでリアルタイムでの吹き付け厚計測ができる。人力施工に比べ最大70%の工期短縮、同80%の省人化を実現する。新たにインターネット経由の遠隔操作システムを構築することにより、のり面工の担い手不足・高齢化を補完し多様な働き方や安全リスクの高い災害現場などでの施工を後押しする。
 スロープセイバーの遠隔操作システムは、建設現場のDX化を支援するARAV(東京都文京区、白久レイエス樹代表取締役)の遠隔操作・自動運転システム「ModelV」を取り入れた。Wi-Fiなどのネット環境を確保すればバックホウの運転席やコントローラーに遠隔操作機器を簡単に後付けでき、いつどこにいても吹き付け作業を行うことができる。
 同日公開した遠隔操作システムの実証では、担当者がゲームコントローラーで操作しながら人力吹き付け作業の最大5倍程度となる植生基材の大容量吐出を行った。日特建設は21日に東京都中央区の本社でゼネコン関係者らを対象に行うシンポジウムで、同システムの特徴を説明する予定だ。福島RTFの現場公開に立ち会った菅浩一常務執行役員技術開発本部長は、若者が建設業に魅力を感じるようなツールとしての活用や役割にも期待を示した。




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2024年11月6日水曜日

国交省ら/和歌山港などで大規模津波防災訓練、120機関2000人参加

 5日は国連が定めた「世界津波の日」。国土交通省は4日、南海トラフ地震を想定した大規模な津波防災総合訓練を実施した。大阪府、和歌山県、堺市、和歌山市との共催。和歌山市の和歌山下津港西浜地区をメイン会場に、すさみ、串本両町や堺市のサテライト会場で行い、約120機関から官民合わせて約2000人が参加。情報伝達や道路啓開、ライフラインの応急復旧など発災後の対応を確認した。
 訓練には近畿整備局や大阪管区気象台、警察庁、海上保安庁、陸・海・空各自衛隊、関西電力送配電、大阪ガスネットワーク、NTT西日本のほか、日本建設業連合会(日建連)や日本道路建設業協会(道建協)、日本埋立浚渫協会(埋浚協)など多くの建設関連団体が参加した。
 開会式で斉藤鉄夫国交相は「南海トラフ地震が発生すれば、紀伊半島を含めて広域的に甚大な被害が発生し、国難とも言える極めて深刻な影響が生じる。訓練の成果を踏まえ、今後も関係機関との連携を一層強化させる。国民一人一人が防災・減災対策の取り組みを強化してほしい」と呼び掛けた。
 訓練は午前9時50分ごろに遠州灘沖でマグニチュード(M)8の地震が発生し、その35分後に四国沖でM8超の地震が発生、太平洋側の広い範囲で大津波警報が発令されたと想定した。訓練が始まると、津波警報のサイレンとともに防災行政無線スピーカーやヘリコプターなどで高台への避難を呼び掛け、水門の閉鎖や高速道路の通行を規制。航空自衛隊や和歌山県などは航空機やヘリコプターで被災状況を調査し、気象台は津波情報を発表した。
 能登半島地震の教訓を踏まえ、バイク隊や全天候型ドローンによる被害状況調査訓練、人工衛星通信機器を使った現場映像の伝送訓練、巡視船から陸上の給水車への給水支援訓練などを実施。クレーン船で重機を輸送し、道路啓開を行う訓練も行われた。




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回転窓/身近な国土強靱化

 学生と一緒に災害時の支援活動を行っている民間団体の宮崎猛志さんが、「被災地で最初にするのは信頼してもらうこと」と話していた。「だから災害が起きる前からの情報の共有が大切」とも▼宮崎さんは「せたがや防災NPOアクション」(東京都)の代表者。内閣官房国土強靱化室が先月始めた2024年度国土強靱化ワークショップに講師として招かれた。学生と被災地入りするのは「経験を生かして(非常時の)リーダーになってほしいから」と説明する▼同団体は、地域で活動する市民団体のネットワークづくりに取り組んでいる。被災を想定し防災分野から始めた活動は、生活支援や子育てなどの領域にも広がった。さまざまな団体や関係者とのコミュニティーが複数組成されている▼この取り組みは、同室がまとめた24年版「国土強靱化民間の取組事例集」に掲載されている。毎年作成される事例集は今年が記念の10冊目となり、53の事例を紹介する▼ハードもソフトも重要になる国土強靱化。「防災と肩肘張らずに地域の人と付き合ってほしい」と宮崎さん。事例を参考に、身近にできることから備えを進めたい。




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改正業法で契約前通知義務化/資機材・労務のリスク対象に、12月中旬施行

 改正建設業法で規定する契約変更協議の円滑化措置などが12月中旬に施行されるのを前に、受注者から注文者への事前通知を義務化する「恐れ(リスク)情報」の対象とする事象や通知方法を国土交通省が提示した。主要な「資機材」と特定工種の「労務」の二つを対象に価格高騰や供給不足・遅延が生じるリスク情報を書面に記載し、契約前に提出する見積書に添付するなどの対応を求める。同じく12月施行分として創設する現場配置技術者の兼任制度とともに、関係規定の政省令案の意見募集を開始した。=2面に関連記事
 業法施行令・施行規則を改定し規定する。意見の受け付けは12月1日まで。明確な施行日は決まっていないが、同13日の期限前には公布・施行となる。
 改正業法ではリスク情報の通知を受注者に義務付け、それに基づく契約変更の協議の申し出に注文者が誠実に応じる努力義務を課す。資機材や労務のリスクが契約後に顕在化した場合、請負金額や工期の変更協議が円滑に行えるようにする。法施行に合わせ「建設業法令順守ガイドライン」を改定し、具体的な運用上の留意点をまとめる。通知内容は既に把握する範囲で足り、根拠は公表資料を用いることなどを明記する方向だ。
 監理技術者や主任技術者の兼任制度は、同省の有識者会議が2022年5月に策定した「技術者制度の見直し方針」をそのまま踏襲し要件を定める。請負金額1億円(建築一式2億円)未満の工事を2現場に限り兼任可能。現場状況の遠隔監視や施工体制の確認が可能なICTの導入なども要件とし、これらを満たすレベル感や留意点を「監理技術者制度運用マニュアル」に法施行まで整理する。営業所専任技術者も同条件で1現場を兼任可能とする。
 公共工事で義務化されている施工体制台帳の提出をICTで代替可能とする改正公共工事入札契約適正化法(入契法)の措置も同時施行。入契法施行規則の改定案では台帳記載事項を閲覧できる適切なシステムを利用し発注者が施工体制を確認する場合に適用すると規定し、具体例として建設キャリアアップシステム(CCUS)を明記した。




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三井不/東京都日野市のDC3棟総延べ16・2万平米に、設計は鹿島

 三井不動産が東京都日野市の日野自動車日野工場跡地で計画しているデータセンター(DC)の概要が明らかになった。建物は3棟総延べ16・2万平方メートルの規模で計画。設計を鹿島が担当している。施工者や着工・竣工の見通しは明らかにしていない。三井不は現在、同市と相模原市の2カ所でDCの開発を計画。受電容量は合計260メガワットの規模になる予定だ。
 計画地は日野台3の1の32ほか(地名地番、敷地面積11万4118平方メートル)。JR中央線日野駅から約1・2キロに位置する。過去には日野自動車日野工場を構成する敷地で、三井不が2023年に取得していた。日野自動車が計上した譲渡益は約500億円。
 敷地で「(仮称)日野市日野台3丁目計画」を推進する。建物はS造5階建て延べ6万3620平方メートルの規模が2棟、S造3階建て延べ3万3620平方メートルの規模が1棟となる。計画は三井不のロジスティクス本部が担当している。
 同本部は7月、現在計画している開発8件を発表した。内訳は物流施設6件、DC2件。
 発表会で篠塚寛之執行役員兼ロジスティクス本部長は、DCに関し「かなり大きい開発になる」と表現した。AIや5Gが普及する中、「さらなる大きな需要を感じ取っている」とも言い、今後も積極的に用地取得を続けていく姿勢を示した。




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竹中工務店/大規模・高層建物に導入できる木質耐震壁を開発、波形鋼板×CLT

 竹中工務店は、CLT(直交集成板)と波形鋼板を組み合わせた耐震壁「KiPLUS WAVY」を開発した。波形鋼板をCLTとL字形の補剛材(山形鋼)で挟むように取り付けることで地震時の座屈や変形を抑え、従来と同等の耐震性能を実現。10月に日本建築総合試験所の技術性能証明を取得した。大規模・高層建物や壁の配置場所が限られる建物に適用しやすく、需要が高まる中高層建物の木造化の可能性を広げる。
 RC造やS造の架構の一部に木をあらわしで使いながら、遮音・耐震性能などを補完する設計技術体系「KiPLUS」シリーズの第4弾。これまでの技術と同様に、建物の用途や構造にかかわらず導入できる。「WAVY」は波形鋼板と周辺の柱・梁フレームで構成する耐震壁で、2007年の開発以降に70件超の採用実績がある。
 新技術では波形鋼板の片面にCLTをランスクリューボルトで固定し、CLTが傷んだ際には表面だけを交換可能。CLTを木のあらわしとして使うため、これまで見栄えに優れず目に触れない位置に設けていた波形鋼板の耐震壁を、居室空間や建物外観に配置し、豊かな木質空間を創出できる。現在、特許を出願中。
 「KiPLUS WAVY」は、竹中工務店が設計・施工する「神戸学院大学有瀬キャンパス1号館計画」(神戸市西区)に適用予定。建物規模はS造3階建て、工期は10月15日~26年3月31日。今後、別物件にも採用を検討している。




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