宮城県が女川町から受託し建設していた町道女川出島線の長大橋「出島(いずしま)大橋」の架橋工事が完了し、離島の出島と本土を結ぶルートが19日に全線開通した。鋼中路式アーチ橋で橋長364メートル、アーチ支間長306メートル。出島は同町の沿岸漁業拠点で、本土側との利便性が向上することで水産業や観光振興が期待されている。天候に左右されない緊急時医療経路、災害時には避難道路として島民の安全を支える「いのちの橋」が完成した。
出島は東日本大震災で一時全島避難になり、人口減少が深刻になっている。人口は11月末時点で約100人。町道女川出島線は物流機能の向上などを目的に2015年度に町事業として着手した。女川町尾浦地区の国道398号を起点に離島・出島の県道出島線(出島福合浦)に接続する延長2920メートルの路線で総事業費は約167億円。
出島大橋は海上に架設する長大橋で高度な知識と技術が要求されるため、16年度に県が発注した。事業費は約89億円。上部工(設計・製作・施工)をJFEエンジニアリング、下部工は橋本店・東日本コンクリートJVが施工した。
同日に本土、出島の2会場で開通式が開かれ、須田善明女川町長や村井嘉浩宮城県知事、国会議員、工事関係者、地域住民ら総勢157人が出席した。席上、須田町長は「橋の完成は半世紀にわたる町の宿願であり、関わられた全ての方に心からお礼申し上げたい」と謝意を表明。「町民、島民、皆さんと一緒によりよい未来を描いていくには、ここからが大切だ」と気を引き締めた。来賓の村井知事は「暮らしを守る『いのちの橋』だ。県としても観光面などで応援していく」などと述べた。
この後、須田町長、村井知事、西村明宏元環境相、徳山日出男国土技術研究センター理事長らが本土側のたもとに移動しテープカット。出島大橋の中央で島民ら出島大橋会場の参加者と合流し、くす玉開披で開通を祝った。一般車両は19日午後3時から通行を開始した。
本体工事には17年度に着手し、11月に完成した。工事のうち、下部工は橋台2基、橋脚2基。下部工形式は逆T式橋台、壁式橋脚。▽本土側・側径間の架設▽出島側・側径間の架設▽中央径間の架設-の3段階に分けて橋体を設置した。
アーチ橋の構造体をJFEエンジニアリングの津製作所(三重県)で製作し、現場近くのヤードで一括架設用の大ブロックに組み立てた。4000トン級のフローティングクレーンでつり上げ、架設地点にえい航した。海上ベント設備の設置にはSEP(自己昇降式作業台)船を使用した。
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