2024年10月16日水曜日

防災・減災/オオバ、西日本豪雨復興のシンボル岡山県倉敷市に完成

 ◇まちづくりで被災地支援
 オオバが、災害からの復興プロジェクトへの貢献に力を入れている。2018年7月に発生した西日本豪雨では、岡山県倉敷市が整備を進めてきた「まびふれあい公園」の設計をオオバ・隈研吾建築都市設計事務所JVとして手掛けた。同公園は7月にオープンし、復興のシンボルとして市民が利用している。非常時にも広い視野と高い視点を持って対応できる技術者を育成し、まちづくりを得意とするコンサルタントの立場から被災地を支援していく。
 オオバは、東日本大震災から復興事業への取り組みを本格化し、熊本地震などでも復興業務を手掛けた。西日本豪雨では、倉敷市真備地区で約1200ヘクタールが水没するなど甚大な被害が生じた。市は復興のシンボルとなる公園の整備へ向け、21年に実施設計等業務の公募型プロポーザルを実施。復興を後押ししたいとの思いから、建築家の隈研吾氏とともにプロポーザルに参加して選定された。河川敷部分を含めた全体の面積は約4・5ヘクタール。このうち約2・8ヘクタールの公園に携わった。
 市は、防災教育や魅力発信などを含めて平常時と災害時の両面で活用できる公園を目指す方針を掲げた。こうした意向を踏まえ、中央に配置したのがシンボルとなる施設「竹のゲート」。隈氏が設計し、地域を取り囲む山並みに調和した大屋根と、真備らしさとして竹を生かした意匠が特徴だ。
 防災備蓄倉庫とともに、災害の教訓を伝える「まなびのへや」も備える。市民の憩いの場として芝生のスペースやアスレチックがある遊びの広場などを設けた。災害時にも利用できるようマンホールトイレや、太陽光発電によるワイファイ(Wi-Fi)環境も整えた。
 オオバは、まちづくりやランドスケープなど多彩な得意領域を持つメンバーでチームを編成。同社の野中敏幸執行役員大阪支店長は「被災者の思いに寄り添いシンプルでメモリアルな物を作ることと、防災機能の両立に注力した」と話す。品質と安全、コストのバランスに配慮しながら細部を詰めていった。
 市の主導の下、地元関係者らとワークショップ等を開催し、丁寧に合意形成を進めていった。辻本茂社長は「伊東香織市長をはじめとする行政が明確にコンセプトを持っていたことが素晴らしかった」と振り返る。
 施工は、地元業者のカザケン(倉敷市、渡邉普介社長)ら32社が担当。無事完成に至り、5月26日には天皇皇后両陛下が訪問された。7月3日に開園式を実施し、同13日に地元の祭りである「真備・船穂総おどり」が盛大に開かれ、市民ら多数が集った。
 オオバの野中支店長は「行政や地域の方と共にどう一体感を作るのかが重要だった。かなり貴重なモデルケースになった。ノウハウを水平展開する」との姿勢を示す。赤川俊哉執行役員技術本部副本部長兼震災復興統括室長は、大規模災害への備えの重要性に言及し「初めての担当者と経験者が組むことで技術を継承する」と話す。大場俊憲取締役兼専務執行役員は「事前防災も必要だ。知識や経験をしっかりとフィードバックしていきたい」と先を見通す。

 □辻本茂社長に聞く/視野が広く視点の高い技術者で地道に貢献□
 どのような思いで事業に取り組んでいるのか。オオバの辻本社長に聞いた。
 --まびふれあい公園が開園を迎えた。
 「地域の防災拠点になる大変意義深いプロジェクトを手掛けられたことを光栄に思っている。隈研吾建築都市設計事務所との協業が非常に良く機能した。東日本大震災などでの復興まちづくりの経験を生かして良い提案をさせていただいた。まちづくりソリューションのナンバーワン企業として培ってきたノウハウが役立った」
 --復興に貢献していく上で重要な点は。
 「まちづくりの世界では、広い視野を持って調整する能力が求められる。専門分野を深掘りすると同時に、周辺分野も勉強することで視点の高い技術者になれる。複数の分野をこなせるポリバレントなプレーヤー(多能工化)が求められるが、経験していないことに対しても応用問題として解決できる技術者が育っている」
 --今後に向けて。
 「東日本大震災など復興業務を経験した技術者が87人いる。難しい業務が多いが、苦労が糧になり、平時の業務にも生かせている。能登半島地震の被災地でもお手伝いさせていただくこととなった。派手さは全くないが、黒子として貢献し『よくやってくれた』と言ってもらえることを、われわれは誇りに思う。有事にも迅速にお役に立てるように技術を継承し研鑽(けんさん)を重ねていきたい」。




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日建連/木造建築の普及後押し、会員企業のプロジェクトデータ298件公開

 日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は木造建築の普及や木材の活用を後押しする。15日、会員企業が施工した木造・木質建築プロジェクトのデータを公式ホームページに公開した。プロジェクトごとに木造を採用した部分や木材の使用量、木造部材メーカーなどをまとめており、市場分析などに活用できる。同時に木造情報をまとめたパンフレット「もくネタ!」も公開。木材活用に関する行政の指針などをQRコードで容易に確認できるようにした。
 脱炭素化の広がりや木材活用を促進する行政の動きなどを背景に、会員企業による木造・木質建築プロジェクトの情報を共有し、さらなる木材利用の推進につなげるのが狙い。会員企業が施工した木造・木質建築プロジェクトのうち、公開可能な298件をエクセルデータにまとめた。2000年の建築基準法改正以降に設計され、構造部材に木質材料を使用したものが対象となる。今後は毎年情報を更新し、プロジェクトを追加していく。
 公表したデータは、建物規模や建設地の用途地域といった建設に関わる基本的な情報から、耐火性能や仕上げ材、構造材別の使用木材量など木造・木質に関する情報までを網羅した。エクセルデータで公表することで任意の加工が可能。市場分析などに役立てられる。
 木造情報パンフレット「もくネタ!」では木材活用に関する基本的な情報のほか、木造・木質建築に関する技術や法律、メリットをまとめた国や地方自治体、団体が発行する冊子を紹介。「法解釈」「防耐火」「経済効果」など分野別にも資料を分類した。冊子はQRコードで確認できる。




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西日暮里駅前地区再開発(東京都荒川区)/組合設立の認可申請、総事業費1341億円

 東京都荒川区で活動する西日暮里駅前地区市街地再開発準備組合が東京都に対し、本組合の設立認可を申請した。事業計画書によると再開発施設は延べ16・4万平方メートルの規模。商業・文化交流機能や住宅(979戸)などで構成する。総事業費は約1341億円(税込み、以下同)と見積もる。2027年4月の着工、31年3月の竣工を目指す。
 15日に荒川区役所などで事業計画書の縦覧手続きを開始した。事業は21年度に都市計画決定(区決定)を受けている。24年度の本組合の設立認可後は25年度の権利変換計画認可、26年度以降の解体着手を予定する。準備組合には参加組合員予定者として東急不動産が参画している。
 計画地は西日暮里5(区域面積約2・3ヘクタール)。JR・東京メトロ西日暮里駅と日暮里・舎人ライナー西日暮里駅の中間に位置する。建物はRC・S一部SRC造地下3階地上46階建て塔屋2階延べ16万4150平方メートルの規模で計画。高さは約170メートル。完成すればステーションガーデンタワー(西日暮里2、高さ約145メートル)を抜き、荒川区内最高の建築物になる見通しだ。
 地下は駐車場(約520台)や駐輪場(約2900台)に充てる。1~10階には商業機能や子育て支援施設、コンベンション施設、文化交流施設などが入る。11階以上は全て分譲マンション。
 再開発と合わせ、交通広場(約1800平方メートル)やペデストリアンデッキ、道路などの都市基盤も整備する。デッキはJR・東京メトロと日暮里・舎人ライナーの駅間を接続。乗り換え利便性や回遊性を高める。
 総事業費は1341億7600万円と見積もる。内訳は▽調査設計計画費64億9400万円▽土地整備費31億7500万円▽補償費178億3900万円▽工事費1028万9400万円▽事務費11億5400万円▽借入金利子など26億2000万円。補助金で260億5600万円を賄う。




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大成建設/自律走行ロボに壁や床から無線給電、26年度の実案件適用目指す

 大成建設は横浜市戸塚区にある同社技術センターで、建物内外を走行する自律走行ロボットや汎用(はんよう)小型車両向けワイヤレス給電床「T-iPower Floor」の実証を始めた。同技術で普及している基本方式の床面給電に加え、新たに壁側面から給電する方式も実証。ワイヤレス給電床を技術センターの屋内通路床約5メートルと屋外通路側壁約20メートルに設置し、走行中のロボットに床面や側面から給電する。ロボットの連続稼働が求められる工場や物流施設を念頭に、2026年度の実プロジェクト適用を目指す。
 ワイヤレス給電床は、厚さ4ミリの薄型樹脂パネルを連続して敷設する「薄型パネル工法」を採用。薄型樹脂パネルにテープ上の送電電極を採用することにより、従来の塗床工法で施工される給電床に比べ半分程度の床厚で施工できる。ビーグルなどの車両が送電レーンを乗り上げて横断することも可能。送電レーンのレイアウト変更も容易に対応し、安価に構築できる。
 今回の実証では1台の電源回路で長い区間に電力供給できる電界結合方式によるワイヤレス給電床を採用し、ロボット稼働率の向上効果や送電ユニットの耐久性を検証する。同社によると、新たにワイヤレス給電床を応用する形で開発した壁側面から給電する方式では、ロボットが走行中に電力約70ワット消費するのに対し、ワイヤレス給電中は約100ワットを受け取ることができ、余剰分の約30ワットはバッテリーに充電される。その結果、ロボット走行路の約70%に送電壁を設置すると24時間無休で運転できる。
 情報通信審議会(総務相の諮問機関)電波利用環境委員会の試算によると、ワイヤレス給電適用が有効と見込まれるロボット(受電システム)の施設分野別台数は工場20万台、物流72万台、商業30・6万台、建設1・8万台。送電システムは工場3万台、物流と商業各10万台、建設現場0・45万台。いずれも建設分野は現場での清掃用ロボットなどを想定している。




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2024年10月15日火曜日

回転窓/働き方改革の本質

 本紙電子版記事検索システムで調べると、「働き方改革」のワードを初めて掲載したのは2008年1月にさかのぼる。大手建設コンサルタント会社社長が年頭あいさつに盛り込んだ▼「長時間労働を解消し、魅力ある職業、会社とするため働き方改革にも本気で取り組む」。今から16年前はまだなじみの薄いワードであったが、経営トップの言葉から改革に挑む強い意志が伝わってくる▼紙面上で働き方改革を巡る状況が一変したのは17年。年間ワード掲載数が前年の約50件から1000件超へと急増する。労働基準法改正を含めた働き方改革関連法案が議論され、民間ではワーク・ライフ・バランスの実現へ取り組みが本格化していた年である▼建設産業は資材価格高騰などに直面しながらも、当時と比べて時間外労働の削減が進み、現場の週休2日も着実に増えている。やりがいを持って生き生きと働き続けられるために--。そうした働き方改革の本質も広く認識されてきたと言えよう▼本日発行の本紙提言特集(別刷り)テーマは「人材マネジメントの潮流」。人材があってこそ持続可能な魅力ある産業に変わっていける。




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幸せな働き方/画家・塩谷歩波さん、失敗を繰り返した先にこそ価値あるものがある

 自分に合った仕事や幸せな働き方とはどういうものなのか--。フリーランスの画家として活躍する塩谷歩波さんは学生時代に建築を学んで設計事務所に就職し、休職期間を経て東京・高円寺の小杉湯の番頭兼イラストレーターへと転身した異色の経歴の持ち主です。「失敗を繰り返した先にこそ価値あるものがある」と話す塩谷さん。これまでのキャリアを振り返りつつ、仕事や働き方への思いを語っていただきました。
 家族とよく出掛けた美術館での絵画鑑賞などを通じて、絵を描くことへの思いが強まりました。学生時代は建築を学び、設計事務所へと就職。設計事務所で働いていた時は、クライアントの方と親交を深め、新しい建物を共に考え出す時間が好きでした。
 反対に会社という組織が私にとって合わないとも感じていました。アイデアが採用されるまでにいくつもの会議を重ねる必要があり、意思決定にも時間がかかります。若手のうちはやりたいことをなかなか任せてもらえず、雑務が多いなど、縦社会への苦手意識もありました。
 企業人として働き続けられませんでしたが、今でも建築を続けていたらと思うこともあります。建築界には優秀な人がたくさんいて、その環境で働くということはとても勉強になりますし、いろいろな力が付くと思います。
 銭湯によく通うようになったのは設計事務所を休職していた頃です。名前も知らないおばあさんとふとした時に交わす会話など、ちょうど良い距離感が人とのつながりを感じさせ、ほっとできる銭湯が癒やしの場でした。
 そんな銭湯の空間やそこにいる人々をアイソメトリックという図法で立体的に描いてみようと思いました。発表したイラスト集『銭湯図解』では、建物だけでなく、そこにいる人たちも一緒に空間全体を俯瞰(ふかん)して見ているように描き、銭湯の魅力を伝えています。
 この描き方は、大学時代の恩師である入江正之先生の「人がいない建物は死んでいる」という教えが強く影響しています。実際にその場所に滞在し、その建物を研究することもあります。空間の使い方を人のいる位置や立ち振る舞い、表情などで説明的に表すことも意識して描いています。
 その後、小杉湯さんにお声掛けいただき、番頭に転職しました。番頭をしていると、今まで接する機会がなかった幅広い年代の方たちとお話しする機会が多くありました。特にうれしかったのはいつも番台越しに挨拶(あいさつ)をしてくれるおじいさん、おばあさんたちとのやりとりを通じて、人とのつながりを強く感じることができたことでした。設計事務所にいた頃に好きだな、向いているなと思っていたことと、つながっていると思います。
 仕事も含めて居心地が良いと思える場所と出会うためには、とにかくいろいろな場所に行ってみる、失敗をたくさんして、トライ&エラーを繰り返すことが大切だと思います。失敗を経験しないとその場所や人、環境の価値に気付けないと思います。失敗はできるだけした方が良いと考えており、失敗を繰り返しながら手に入れたものはとても尊く、価値があると思うのです。
 仕事をする上で大切にしていることは謙虚。30歳前後で『銭湯図解』を出版してテレビにも出演し、フリーランスとなりました。こんな生き方をするなんてそれまで想像もしていなかったので、仕事だけでなく私生活でもうまくいかないことがありました。それを友人に相談すると、「歩波さんは少し傲慢(ごうまん)になっているよね」と言われました。この言葉によって、一人で何でもできると思っていたこと、また無意識に人を見下していたと反省しました。
 自分はできないことの方が多いということに気付かされました。それ以降、すごく気持ちが楽になったのです。自分自身の価値観や考え方を変えてみたり、柔軟にしてみたりすることで良い方向に物事が進んでいったのだと思います。
 何か壁にぶつかった時、基本的には一人で解決しようとしません。友人に相談したり、いろいろなことを話したりすることで乗り越えたこともあります。解決できず、逃げたこともあります。一人で抱え込んで誰にも相談しないで決めると、心の負担が大きくて後々大変になってしまう。どんな問題でも解決方法は一つじゃないですし、経験もないのに一人で解決できるわけない。いろいろな人から話を聞いた方が多角的に考えられると思うのです。
 転職や休職で悩んでいる人には、違う逃げ道もあるということを伝えたいと思います。私は会社という組織自体に自分が向いていないと考えていました。そう感じる人は少なくないでしょうし、単にその会社とその人が合わなかったということもあるかと思います。それは必ずしも、自分自身に問題があるというわけではありません。
 休職をしていると、どうしても自分が悪いと思い込んでしまいます。休んでいることに罪悪感を抱いたり、頼まれた仕事もできず社会人失格だと思ったりすると、視野がものすごく狭まります。私自身、転職後の方が面白い人生を歩めており、休職をして悩んでいる人たちはあまり自分を責めないでほしいです。
 何か決断をする時に大切にしているのは、しっかり悩むこと。休職していた時は、無理やり悩まないようにしていました。人は悩める時にはしっかり悩んだ方が良い方向に向かい、時間をかけて悩んだ上で出てくる答えの方がより大切なものになると思います。
 これからもっとたくさんの建物を描いていきたいです。『銭湯図解』や『純喫茶図解』といった発表作品のように、『○○図解』シリーズを続けたいと考えています。失ってほしくないものを書き残すということが、私の創作意欲の根幹にあるのだと最近気付きました。お寺などの古い建築物、地方にある小さい映画館や寄席、市が運営しているような公衆浴場のほか、海外の建物や誰かが残したいと思っている建物も描いてみたいと思っています。消失した建物でも写真と図面があれば描けますから、作品の中でその空間を復元するということにも挑戦したいです。
 絵以外では自分のアトリエを持ちたいという夢もあり、仕事場だけでなく半分はカフェのように人が集まる場所にしたいと考えています。小さい頃から家族で美術館へ行くのが好きだったので、自分の絵もどこかの美術館に飾ってもらえたらうれしいです。
 作品を描き始める時はいつも面倒くさいと思ってしまいますが、始めてしまえば楽しくなり、やる気が出てきます。創作過程で一番好きな作業は色塗り。私の手で美しいものを創っているのだと実感でき、気持ちがすごく良いのです。この最高の瞬間があるから、大変なことがあっても続けられるのだと思います。

 (えんや・ほなみ)東京都出身。早稲田大学大学院(建築学専攻)修了。設計事務所を経て小杉湯の番頭兼イラストレーターに。現在はフリーランスの画家として活躍中。趣味は読書、茶道、料理など。『塩谷歩波作品集』(玄光社)を8月27日に出版した。




from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=167904
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日事連/福井市で全国大会開催、未来に向けた「まち・ひと・建築」テーマに

 日本建築士事務所協会連合会(日事連、上野浩也会長)は11日、第46回建築士事務所全国大会(福井大会)の記念式典を、福井市のフェニックス・プラザで開いた=写真。大会テーマは「未来を拓く まち・ひと・建築」。北陸新幹線の開業を起爆剤にまちづくりが活性化している福井を舞台に、未来に向けた議論を行った。
 大会に先立って開いた記者会見で上野会長は「地方はまだまだ疲弊している。地方の活性化なくしては日事連の発展はない」と表明。事務所登録の手数料見直しの必要性にも言及し、「来年4月に事務所登録の電子化がスタートする。これをターゲットに単位会から都道府県にお願いしている。良い成果が出ると思う」と語った。
 「若い人たちや女性たち、これからを担う皆さんのために、汗をかいただけ報われる業界にしたい」との方針も語った。6月に女性活躍推進ワーキンググループ(WG)を立ち上げており、「できれば1年くらいで提言をまとめて、そのテーマの下で、来年(の全国大会で)女性交流会を開催したい」との考えを示した。
 福井県建築士事務所協会の木下賀之会長は「地方の現状を変えていきたい。福井は新幹線が起爆剤になって変われるかもしれない。建築士がもっと勉強して力量を高めて、新しいまちづくりに生かしていきたい」と述べた。
 大会に合わせて、建築家の隈研吾氏による基調講演も行われた。




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大分県別府市/新湯治・ウェルネス研究施設、扇山ふもとに建設25年度に基本計画

 大分県別府市は新たな観光の形として推進する「新湯治・ウェルネスツーリズム事業」の中心的な役割を担う研究・実践拠点施設について、建設予定地を大平山(扇山)のふもとにある市有地約4ヘクタールとする方針を発表した。事業手法はPFIなど公民連携を検討しており、2025年度に策定する基本計画の中で最適な手法を決定。25年1月に基本計画策定業務の委託先選定の手続きに着手し、同3月中に業務委託する。
 研究・実践拠点施設は入浴が腸内細菌にもたらす効能について解析・分析を行う「ラボエリア」、市民の日常利用を想定した「市民エリア」、観光客をターゲットにした「ゲストエリア」、民間事業者による「民間提案ゾーン」の4機能と駐車場で構成する考え。
 周辺インフラについては現在は大型バスの通行が厳しい状況であるため、歩道整備を含めた道路拡幅を実施する。
 事業手法は従来方式のほか、PFIや設計・施工一括(DB)方式、DBO(設計・建設・運営)方式などを視野に幅広く検討していく。基本計画の策定段階では施設規模やスケジュールの検討、事業費の算定なども進める。基本計画策定の業務委託費を24年度12月補正予算案で盛り込む。
 長野恭紘市長は10日の記者会見で、「研究・実践拠点施設がハブの役割を果たし、市民や地元事業者がしっかりと潤うようにしていかなくてはならない」と述べた。今後の市民らへの説明用に建築家の坂茂氏が作成した施設のデザインイメージも公表した。
 坂氏のデザインイメージでは扇山の傾斜に沿う形で施設を設けることで地形を大きく変えず、石や樹木といった自然素材を活用して景観にも十分に配慮する案が示された。長野市長は「現段階での予想図で、今後民間事業者との議論を進める中で大幅に変わる可能性はある」とした。
 建設予定地は阿蘇くじゅう国立公園内の鶴見大平4550の1ほか。東九州自動車道別府ICの北西約2・5キロに位置する。国立公園内での施設整備になることについて、長野市長は環境省と協議を行う中で「おおむね問題はないと理解している」と話し、今後も関係団体を含めた調整に努めるとした。
 同施設は長野市長がアイスランドにある世界最大の露天風呂を備えた温浴施設を参考に、市内に大規模温浴施設を整備する「東洋のブルーラグーン構想」に由来する。同構想は新規の温泉採掘による周辺泉源への影響を懸念する声もあり断念。これに代わるものとして新型コロナウイルスの感染拡大に伴う健康増進に関する社会的ニーズの高まりに対応することを目指して新たに検討を開始した。
 ブルーラグーン構想で不安視された泉源への影響について長野市長は「新規の掘削はしない。今ある泉源、廃棄している温泉を有効活用し、全体的なマネジメント計画の中で研究・実践拠点施設にも温泉を供給する」と環境面への問題はないと説明した。
 同事業の調査業務はパシフィックコンサルタンツが担当。




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日本工営/東大らとグローバル水リスクを評価、オンラインプラットフォーム公開

 東京大学大学院工学系研究科とサントリーホールディングス、ID&Eホールディングス傘下の日本工営は、グローバルに水リスクを評価するためのオンラインプラットフォーム「Water Security Compass」(試用版)の公開を開始した。世界各地の水需給を踏まえた水不足リスクを将来にわたって用途別に把握できる。世界初のオンラインプラットフォームになるという。ホームページ(https://watersc.diasjp.net/)から無料で見ることができる。
 東大社会連携講座「グローバル水循環社会連携講座」を通じた取り組み。データや機能の改良・修正を順次実施し、2025年に正式版を公開する予定だ。日本域では、約2キロ四方でのシミュレーションを実現している。現在は西日本だけを公開している。
 季節の変化やダムなどのインフラによる水量への影響を反映し、世界各地で必要とされる水の量と供給される量を的確に把握する。人間や生き物が必要とする水資源に対する不足の程度を可視化するとともに、農業用水や工業用水、生活用水など用途別に水が不足する可能性の高い地域を特定。これらの結果を踏まえ、実際に水不足が懸念される地域を特定し、対策につなげることが可能という。
 得られた知見や実績を基に、より広範囲なグローバル規模での活用につなげていく考え。国際的に議論され始めている水に関するルール形成などへの貢献も目指す。




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働き方改革/人材関連アンケート・ゼネコン、民間発注者のさらなる理解不可欠

 ◇土木と建築で労働時間に差
 時間外労働の罰則付き上限規制が建設業に適用され、1日で半年を迎えた。総合建設業や道路建設業、設備工事業の各社は人材確保や働き方改革の取り組みを強力に推進。企業単体だけではく、業界団体を通じて発注者などへの理解促進にも努めている。人的リソースが限られる中、各社は社員一人一人の能力を最大限引き出す「人材マネジメント」を経営戦略の柱に据える。業種別のアンケートを通じて人材マネジメントの今後の展開や課題を探る。
 日刊建設工業新聞社は主要ゼネコン34社を対象に、人材マネジメントに関するアンケートを9月2日~10月7日に行った。「人材確保や人材マネジメントで重視する事項」や「適正工期の状況」「働き方改革を推進する上での不安や課題」を複数回答で聞いた。

 □エンゲージメント向上の動きも□

 人材確保やマネジメントで重視する事項では、「新卒採用の増加」(33社)、「施工体制の確保・人材の最適配置」(32社)、「中途採用の増加」(28社)と採用面に注力する回答に集中した。採用活動ではネットでの広報などを強化している。ただ、新卒や中途の採用が難しいため、「バックオフィスの最適化」(15社)や「業務アウトソーシングの増加」(14社)で足りないリソースを補う傾向も見て取れる。
 人材の確保や定着の観点から社員のエンゲージメント向上に向けた動きも加速している。休暇の取得促進やテレワークの推進など働きやすい環境を整備したり、初任給を含む賃金を引き上げたりするなど、離職防止対策を講じる。マネジメント力の向上には教育システムの再構築も欠かせない。次世代を担う人材の育成を後押しする一環で「DX、デジタル技術などに強い人材育成」(11社)を重要視する。
 4週8閉所などを踏まえた適正な工期で工事が実施できているかどうか調べたところ、土木と建築で状況が異なった。「土木工事の大部分で4週8閉所ができている」と答えたのは21社に対し、「建築工事の大部分で4週8閉所ができている」のは10社にとどまった=グラフ〈1〉参照。働き方改革を後押しする官公庁が発注する案件の多い土木工事で4週8閉所が進んでいることがうかがえる。
 技術者の人数など施工体制・能力を考慮した結果、土木工事でも「4週8閉所を確保できない工事は原則受注しない」との方針を掲げる会社が一定数あった。「建築工事で4週8閉所を確保できない工事は原則受注しない」と答えたのは17社だった。

 □法規制の抜本見直しが必要□

 日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は2023年7月、「適正工期確保宣言」を行った。会員企業は民間建築を中心とする発注者に見積もりを提出する際、4週8閉所や法定労働時間の週40時間稼働を原則とする「真に適切な工期」に基づき見積もりを行い、適切な工期・工程資料を添付している。
 あるゼネコンは「発注者には『適正工期確保宣言』を理解していただき、提出された工期および見積もりを尊重してほしい」と訴える。別のゼネコンは「4週8閉所相当の104日以上とする閉所カレンダーを作成し、土曜日や祝日の閉所指定日を定めて推進する。併せて閉所が難しい場合でも、所員が104日以上の休日を取得できる取り組みを進める」と休日確保に努める。
 上限規制適用を踏まえ働き方改革を推進する上での課題や不安を聞いたところ、「発注者(民間企業)の理解や対応」が33社と最多だった=グラフ〈2〉参照。一方、「発注者(国、都道府県・政令市)の理解や対応」(11社)「発注者(市町村)の理解や対応」(14社)が半数以下にとどまり、民間発注者と公共発注者で建設業の働き方改革に対する理解度に開きがあることがうかがえた。
 あるゼネコンは「官庁発注工事では土曜閉所が進んでいるが、民間工事ではなかなか難しい」と実態を明かす。さらに「土木と建築の労働時間の差に現れている。(技術者や技能者らの)交代制で週休2日を目指す方法もあるが、人員の問題から一斉に閉所するのが望ましいのは明確だ。民間の発注者に対し、国からの指導を今以上に推し進めてほしい」と求める。
 各社は法令を順守するためさまざまな施策や工夫を講じているが、特有の施工条件によって難しい対応を余儀なくされるケースも少なくない。出水期の作業制約が大きい河川工事や、運行時間外の深夜に作業が制限される都市部の鉄道工事などが代表例。これらの工事は4週8閉所が難しく、個人単位の4週8休に努めることになる。
 他産業の多くは土日の週休2日が当たり前なのに対し、あるゼネコンは「4週8閉所(完全週休2日制)を実現しない以上は、建設業の人材確保がままならない。プライベートの時間や、家族との時間を大切にする現在、このような労働環境(の業界)へ入職希望するはずもなく、法規制による大改造を強く期待する」と主張。労働規制の抜本見直しに踏み込む必要性を提起する。




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