2025年3月17日月曜日

回転窓/大地震と近代造船の先駆け

 かつて大地震が日本に新たな造船技術をもたらしたことは、知る人ぞ知る史実だろう。話は江戸時代末期の安政元(1854)年にさかのぼる▼同年11月4日、安政東海地震で太平洋沿岸など広い範囲に甚大な被害が発生した。ちょうど日露和親条約締結のため下田港(静岡県)に停泊していたのがロシアの軍艦ディアナ号。大津波で大破し、戸田港へ修理に向かう途中で突風に見舞われて沈没する▼そこで両国が共同して代替船を建造することになり、幕府から韮山代官・江川坦庵が責任者の命を受けた。この造船で日本は洋式帆船の近代技術を習得でき「日本海運史上に大きな足跡を残すこととなった」(沖田正之著『江川坦庵』)という▼安政東海地震の翌日に安政南海地震が起き、翌2年には江戸を直下型の大地震が襲う(安政江戸地震)。これら災害史から現代に生かせる教訓は多い▼坦庵は蘭学や兵学、芸術にも造詣が深く、世界遺産「韮山反射炉」(伊豆の国市)の築造でも知られる。日本で近代洋式造船の先駆けとなった代替船「ヘダ号」だが、坦庵は完成を見ずに亡くなってしまう。今年は没後170年に当たる。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172226 via 日刊建設工業...

中部整備局ら/津駅周辺道路空間再編検討委開く、官民連携で複合施設の可能性検討

 中部地方整備局三重河川国道事務所と三重県、津市などで構成する「津駅周辺道路空間再編検討委員会」(委員長・小野寺一成三重短期大学生活科学科教授)は14日、本年度第2回会合を津市のアスト津で開いた=写真。本年度の検討状況を共有するとともに、策定作業を進めている「津駅周辺基盤整備の方向性(ビジョン)」の中間報告を提示。東口は交通ターミナルと一体となった官民連携による複合建築物の可能性を検討することが初めて示された。ビジョンはパブリックコメントを経て2025年7月末ごろの公表を目指す。  JRや近鉄が乗り入れる津駅周辺は、施設の老朽化や駅前広場の混雑といった課題を抱えている。このため国や県市、交通事業者、経済関係者が連携し、課題解決につながる基盤整備について検討を進めている。  本年度は、歩道空間拡張案の作成や東口広場周辺道路空間の使われ方調査を実施。国土交通省の官民連携基盤整備推進調査として、津駅周辺空間の面的・一体的利活用などについてPPP/PFI導入可能性も検討。民間事業者へのプレサウンディング(対話)調査などを行い、駅周辺空間に対する民間事業者の印象や官民連携事業の可能性を高める条件などについて確認した。  これらを踏まえたビジョン中間報告によると、基本理念は、県都の顔となるとともに地域の活力を引き出し、災害にも強い空間とする。そのための目標として、▽交通結節機能の充実▽防災機能の確保▽にぎわい・滞留空間の創出▽東西連携の強化▽回遊性の向上-の五つを掲げた。  整備の方向性として、東口は商業や居住、オフィス機能などを備える複合建築物の可能性検討、ペデストリアンデッキの整備、土地利用促進の起爆剤となる市街地再開発事業の促進、必要に応じた都市計画の見直しなどを盛り込んだ。西口はペデストリアンデッキの整備などを予定する。立体構造による東西自由通路の整備なども示した。  委員からは「津駅は県庁に近接するが魅力に乏しい。交通結節点など再整備を前向きに検討してほしい」などの意見が出された。5月上旬の会合でビジョン案を示す。パブリックコメントを経て7月にビジョンとして公表する予定。 from...

大阪府病院新増設部会/近大病院跡地の新病院計画を承認、26年1月着工へ弾み

 大阪府医療審議会病院新増設部会はせいわ会(大阪市生野区)が近畿大学病院跡地(大阪狭山市大野東)に計画している新病院の開設を「事業実施は適当である」と判断し、承認した。2026年1月の着工へ向けた準備が本格化する。せいわ会の担当者は「今後、建設計画の具体化や関係機関との調整を進める」と述べた。  同計画は近畿大学病院の堺市への移転に伴い、跡地の医療機能を継承するもの。新病院は回復期機能を中心とし、病床119床を整備する。診療科目はリハビリテーション科と内科を予定し、主に入院患者の回復支援に特化した医療体制を構築する方針だ。設計は大和ハウス工業が担当しており、現在、基本設計を進めている。せいわ会は11月の近畿大学病院移転を受け、26年1月に新病院を着工し、27年4月の開院を目指す。  部会では医療スタッフの確保や地域医療機関との連携なども議論。せいわ会側はグループ内の既存病院からの異動や新卒者の採用を通じて人員を確保する方針を示した。  南河内地域では回復期医療の充実が課題とされており、跡地の新病院がその役割を果たすことが期待される。委員らからは「医療機能の分担と地域医療の維持に十分配慮しつつ、適切に進めてほしい」との意見が出された。  部会は13日に開かれ、同議案のほか、地域医療支援病院の名称承認、病床機能再編支援事業の実施医療機関の承認、特例有床診療所の基準改正案を審議。特例有床診療所は医療型短期入所の病床を新たに認める方向で議論が交わされたが、「事業の適正な運用に懸念がある」との意見もあり、さらなる検討を条件に承認した。 from...

鉄建建設/高架橋建設にPCa部材採用、最短5日で1ブロック構築

 鉄建建設が東京都品川区で施工中の「東京貨物ターミナル改良工事」で、プレキャスト(PCa)部材を採用した高架橋の建設を進めている。構造物のフルPCa化に加え、柱と梁の架設を効率化する新たな工法を導入。柱と梁を1日に6~8本ずつ架設し、高架橋1ブロックを最短5日間で構築できるようにした。工期短縮と現場作業の削減を両立し、働き方改革を強力に推し進めている。  柱部材と基礎の接合には、柱部材から突出した複数の鉄筋を、基礎部に設けた鋼管に差し込んで建てる「鋼管拘束型鉄筋継手」を採用している。柱の設置直前に鋼管や接合面に無収縮モルタルを充填し、接合時の密着性を確保。柱の建て込み後は転倒防止用の仮固定を行い、モルタルの硬化後に撤去する。接合に特殊な材料は必要なく、1本の柱部材を短時間で建てられる。  柱部材と梁部材の接合には、「閉合鉄筋継ぎ手」を導入している。両部材の継ぎ手部分にコの字形に突き出した鉄筋を設け、くしの歯状に交錯させて接合する。梁は柱に設置した仮設のブラケットが受け止める仕組みで、重い梁を垂直方向に架設できるメリットがある。  梁を水平方向に差し込む従来工法と比べ、仮設足場や支保工を省略できるため、作業効率の向上につながっている。両部材の継ぎ手の重複部分は鉄筋径の2倍以上の長さがあれば十分な強度を維持する。施工誤差が生じた場合も継ぎ手部分で柔軟に対応できる。  施工内容を広く周知するため、鉄道総合技術研究所(鉄道総研)や鉄道事業者、設計コンサルなど業界関係者を対象とした現場見学会を2月19日と3月3日に開いた。柱と基礎、柱と梁の接合作業を公開した。参加者からは作業の効率性や精度の高さを評価する意見が出た。型枠の製作費など施工コストの増加を懸念する声もあった。  鉄建建設は「型枠を多く転用できれば、部材の単価も下がる。まとまった工事量を確保し、コスト面の優位性を高めていきたい」とした。 from...

2025年3月14日金曜日

回転窓/ロボットランナーへの期待

 2日の東京マラソン、9日の名古屋ウィメンズマラソンを終えて、男女とも9月の東京世界陸上競技選手権大会(世界陸上)の代表選考レースがすべて終了した。男女各三つの狭き代表枠をつかみ取った選手には最高のコンディションで世界陸上を迎えてもらいたい▼新華社電などによると、中国・北京市が同市郊外の産業団地で4月13日に開催されるハーフマラソン大会に人型ロボットが参戦すると発表した。安全上の理由で一般ランナーとは別のレーンを走るが、マラソン大会で人型ロボットが走るのは世界初という▼世界中の企業や研究機関、大学などから人型ロボットを大会に招待。二足で歩行し、遠隔操作あるいは自律走行できるロボットだけが参加でき、レース中にバッテリー交換も可能だ▼3時間半の時間制限も課すそう。ぎこちなくゆっくり歩くのではなく、人間と対等な条件・状況下でレースを行えるようになっていることに驚く▼マラソンはもっぱらテレビ観戦だが、レース展開の駆け引きが面白く、ゴールを目指し健脚を競い合うランナーの姿に心打たれる。ロボットランナーらの技術競争からも目が離せない。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172145 via 日刊建設工業...

東急建設、東京都市大学/建築現場で人協調型ロボ実装、竣工後もサービス支援

 東急建設と東京都市大学は、建築物に適用する「人協調型ロボティクスの社会実装技術開発」の共同研究に乗りだす。人とロボット建物が連携し、建築現場の作業や竣工後のさまざまなサービスを支援するロボットが動作しやすい「ロボットフレンドリー環境」の設計、実装に取り組む。共同研究開発では同大学の横浜キャンパス(横浜市都筑区)に建設する新研究棟を活用。ロボットとエレベーターが連携する機能とともに、ロボットが利用するIoT無線ネットワークをロボットフレンドリー環境の基本機能として実装する。  共同研究開発は、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期の「人協調型ロボティクスの拡大に向けた基盤技術・ルールの整備」の採択事業として展開する。  東急建設と東京都市大学は「住宅・ビル等の人協調型ロボティクスの社会実装技術開発」を提案。同大学横浜キャンパスの建設期間中、IoTネットワークを現場のセンシングや建設ロボットの通信ネットワークとして用いる。現場ではパワーアシストスーツや建設用ロボットを活用し、IoTネットワークを利用した作業員のモニタリングやロボットとの連携による生産性向上を目指す。  竣工後は照明や空調などの設備とロボットが有用レベルで連携できるよう、東急建設が大阪大学と共同開発した建物デジタルプラットホーム「Building OS」(建物OS)を導入。スマートビルとして人やロボット、建物が連携したサービスを建物OS上で動くアプリケーションとして提供する。ロボットを活用した屋内の自動巡視や清掃、ビル機械室の遠隔監視などを実現する。 from...

大阪市/長居障がい者スポーツセンター、BTO方式で建て替え

 大阪市は、老朽化が進んでいる「長居障がい者スポーツセンター」(東住吉区長居公園)について、BTO(建設・移管・運営)方式のPFIで建て替えることを決めた。既存施設の南側の敷地に延べ床面積1万2990平方メートルの規模で建設する。アリーナやプールなどが入り、近隣の早川福祉会館(東住吉区南田辺)の機能も備える。2025年度はアドバイザリー業務を委託し、PFI事業者の選定準備を進めるほか、先行して運営予定事業者を決定する。27年度にPFI事業者を選定し、28年度に設計を始める。  既存施設の規模は別館を含めて延べ約8500平方メートル。バスケットボールコート1面分が取れるアリーナや温水プール(25メートル×6コース)、ボウリング室などを備え、アーチェリーもできる。  基本計画によると、障害者がスポーツやレクリエーション、読書など文化活動を楽しめる施設を目指すとともに、早川福祉会館の機能を移す。  建て替え場所は道路を挟んだ南側。敷地面積は1万1600平方メートル。規模は地下1階地上3階建てを想定し、1階に競泳プール(25メートル×8コース)やボウリング室、民間活用スペースなどを配置。2階にバスケットボールコート2面分が取れるアリーナやサブアリーナ、トレーニング室、多目的室、卓球場、3階に点字図書館や会議室、和室を設ける。  アリーナは吹き抜けで3階に観覧エリアとランニングコースを設置する。屋上にはアーチェリー場と屋外広場を整備する。概算整備費は100億円程度と試算している。  25年度予算案にはPFIアドバイザリー業務委託費などに2099万8000円を計上しており、同年度早期に委託先の選定手続きを始める見通し。運営予定事業者は25年度中に募集を開始し、同年度内に選定する。いずれも事業者の選定方法は検討中。  障害者施設の運営に専門的なノウハウを持つ事業者を先に決めることで要求水準書案などの検討に反映する方針だ。  27年度にPFI事業者の選定を始め、同年度内に事業者を決めて契約を締結する。設計・建設期間は4年6カ月を見込み、開館準備を経て、33年度の開館を予定。維持管理・運営期間は15年程度。  スポーツセンターの跡地は緑地を基本に新施設が完成した後に検討する。早川福祉会館は当面の間は継続して保有し、用途転用などを検討する。 from...

DIC、国際文化会館/川村記念美術館を東京・六本木へ移転、設計はSANAA

 ◇新常設展示も開設  DICと公益財団法人国際文化会館(近藤正晃ジェームス理事長)は12日、DIC川村記念美術館(千葉県佐倉市)を東京・六本木にある同会館に移転すると発表した。法人の同会館が建設する新西館に常設展示室を新設。設計は建築ユニットのSANAA(妹島和世氏、西沢立衛氏)が手掛ける。DICは2024年12月の取締役会で、規模を縮小した上で都内に移転する方針を決定していた。  同日、両者は理念と戦略的目標が合致したとし、アート・建築分野を起点とした協業に合意した。民間外交、国際文化交流を推進する公益プログラムの充実を図り、幅広い分野で連携していくという。  戦後アメリカ美術をはじめとする20世紀美術品を中心に移設する。マーク・ロスコの「シーグラム壁画」全7点は、新たに開設する常設展示室「ロスコ・ルーム」に移す。展示室の運営は両者が共同で行う。  DICは24年8月に資産効率の改善などを理由に現美術館の運営見直しを発表。同12月の取締役会で保有作品数は4分の1程度に減らし、継続して保有しない美術品は売却する方針を決定。移転費用は数億円規模に抑えるという。  現美術館の所在地は佐倉市坂戸631。DIC総合研究所の敷地内に立地している。最終営業日は31日。4月1日に閉館する。休館後の施設の利用可能性などはDICと同市で協議を進める。  DICの池田尚志社長執行役員は「民間企業と公益財団による新たな価値の創造に向けて鋭意努力していく」と熱意を語った。「国際文化会館の近藤理事長は民間外交や国際文化交流の重要性が高まっている。公益プログラムをDICさまと共同運営できることに心から感謝している」と期待を寄せた。  建築ユニットSANAAは、新西館を設計する上で「自然と建築の融合、歴史の継承と新しい風景、知的対話・文化交流を生み出す空間という三つのコンセプトを具現化できるようにしてきた」とコメントした上で、「ロスコ・ルームの設計という機会に巡り会うことができ、大変光栄に思う」と気持ちを語った。 from...

2025年3月13日木曜日

福島国営追悼・祈念施設で震災追悼の会/工事関係者が犠牲者の冥福祈る

 東日本大震災の発生から14年を迎えた11日、東北各地で犠牲者を追悼する式典が開かれた。福島県の浪江、双葉両町にまたがるエリアに建設している福島県復興祈念公園では、国営追悼・祈念施設の管理棟整備に関わる発注者や設計者、施工者が追悼の会を開き、祈りをささげた。建築工事を指揮する大林組の熊谷敦所長は「復興を後世に伝える大変意義深い仕事を担っている」などと話した。  追悼の会には東北地方整備局東北国営公園事務所、アール・アイ・エー、大林組、第一設備工業、ユアテック、植留緑化土木から約100人が参列した。地震が発生した午後2時46分に全員で黙とうした後、東北国営公園事務所の岩崎健所長は「福島の再生を発信するとともに被災者の心のよりどころになる施設だ。工事に関わる一人一人が大きな役割を感じ完成まで力を尽くしてほしい」と述べた。  管理棟は福島国営追悼・祈念施設のシンボルになる建物で、「追悼と鎮魂の丘」と名付けた場所に造っている。逆円すい状の空間に震災を経験した人の思いを集め「3・11」に意識を向け続ける場所になるよう、完成後は丘の中に埋まるような姿になる。竣工は2026年1月末を予定する。福島国営追悼・祈念施設は県が整備する復興祈念公園と合わせ、震災発生から15年の節目を迎える26年3月の完成を計画している。 from...

回転窓/思い出のブランコ

 大勢の子どもたちが遊んできた近所の公園のブランコ。幼児が「一人で乗れるようになった」と得意げな顔を見せてくれたり、サッカーの全国大会で負けてしまったという小学生が暗くなっても座り続けていたりしたこともあった▼そのブランコが交換されることになり、昨年10月に工事のための仮囲いが設置されて使えなくなった。コンクリートの基礎や鋼製の部材などもすべて新しくするそうで、工期が3月11日までに設定されていた▼同日には新しいブランコで遊べるかもしれないと楽しみにしていた子どもたちも多かったが、12日になっても仮囲いで覆われたまま。完了検査がまだ先なのだと聞いた▼どうやら交換工事を五つの公園で行っており、一つの工程をすべての公園で終えてから次の工程に進む計画になっている。完了検査は全公園の作業を終えてからになるという▼公園は登校前の小学生の集合場所。「まだかな」と毎朝そわそわしている子どもたちと遊べるのをブランコも楽しみにしているだろう。施工者によると完了検査までは「もう少し」。新しいブランコからもたくさんの思い出が生まれるといい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172114 via 日刊建設工業...

関東整備局/老朽管や路面を確実に補修、3カ年国債活用したフレームワークモデル試行

 関東地方整備局が、道路下にある老朽管路や路面を素早く確実に補修するための取り組みを始める。3カ年国債を活用した「フレームワークモデル工事」を、大宮国道事務所が国道4号で実施する横断管補修と路面復旧工事に初めて試行。施工体制など長期間の見通しが可能となるため、入札不調・不落の抑制にもつながる。工事発注は4月以降を予定する。  フレームワークモデル工事は、複数工事(フレームワーク)に参加を希望する事業者を事前に「特定工事参加企業名簿」として登録。その中から複数の工事参加者を指名する。これまでは単年度の発注工事に適用していた。  見通しを鮮明な状態にするため、整備局は通常のフレームワーク工事に3カ年国債を活用したモデル工事を試行する。3年先の施工量が把握できるため、受注者は余裕を持った施工体制を組める。さらに施工箇所の近傍で突発的な事態が発生した場合、受発注者間で「パートナーシップ協定」を締結した他の企業に対応してもらう。緊急性の高い工事が着実に推進できる環境を整える。  初弾は大宮国道事務所が発注する「R7~R9国道4号強靱化フレームワークモデル工事」で行う。複数の工事を発注する考えで、3月末にパートナーシップ協定の締結先を決める。4月以降に公募型指名競争入札(総合評価方式)する予定だ。  同様の工事はこれまで一般競争入札で受注者を決めていたが、関係機関との調整が煩雑な上に工事の利益率も低く「なり手が少なかった」(企画部)という。ライフラインや道路の老朽化対策が急務となる中、整備局は「不調・不落を理由にした補修工事の遅れ回避」(同)を期待する。 from...

静岡県磐田市/新消防庁舎基本設計まとまる、防災アミューズメント機能を導入

 静岡県磐田市は、新消防庁舎の基本設計をまとめた。迅速に出動するため幹線道路と建物、車庫の配置に配慮したほか、高層住宅や山岳救助などを想定した実践的な訓練設備を整備する。市民の防災力や防災意識を向上するため、活動を見学できる専用通路や展示スペースを設けるなど「防災アミューズメント」としての機能も持たせる。2025年度は10月までに実施設計を終えるとともに用地取得、造成準備工事に入る。当初予算案に約6億円を計上した。基本・実施設計は佐藤総合計画が担当。  新消防庁舎はRC造3階建ての庁舎棟、車庫棟、訓練棟、補助訓練棟などで構成。施設の総延べ床面積は約7200平方メートル。市消防署のほか東部分遣所、消防本部の機能が入る。建設地は大藤地区(大久保)の敷地約2・5ヘクタール。  設計方針は▽迅速な出動と実践的な訓練を実現する防災拠点▽環境親和型庁舎と健康で快適な環境の実現▽市民の防災力を育む、庁舎内外に展開する防災アミューズメント-とした。このうち防災アミューズメントは、市民が消防活動を見学できる専用通路を敷地内に整備するほか、訓練エリアや建物内の展示スペースが見学できるようにした。  25年度は、消防庁舎等整備検討部会を随時開催し意見を設計に反映、10月までに実施設計を完了させる。造成工事も進め、建築工事は27年3月に着工し28年10月に完了予定。29年4月の供用開始を目指す。総工事費は約75億円。 from...

鹿島ら/大気中CO2活用しコンクリ製造に成功、大阪・関西万博に舗装ブロック導入

 鹿島と川崎重工業は、大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収・固定するコンクリートの製造に成功した。1日5キロ以上のCO2を99%以上の高純度で回収できるCO2分離・回収装置と、コンクリートにCO2を吸収・固定させるための炭酸化養生槽を組み合わせたシステムを構築。実証実験の結果、所定のCO2固定量と十分な曲げ強度を確保した。  大気中のCO2を直接回収するDAC(ダイレクト・エア・キャプチャー、直接空気回収技術)を、CO2を吸収・固定する環境配慮型コンクリート「CO2-SUICOM」の製造に利用。開発したDAC装置は、付帯設備も含めコンテナに収納し、大気から1日5キロ以上のCO2を分離回収して高濃度CO2を完全自動で供給できる。  コンテナ型とすることで搬送や設置が容易になるため、さまざまな利用先に適用可能。大気中の約400ppmのCO2を回収・濃縮し、約99%と高純度なCO2を生成する。新システムをプレキャスト(PCa)コンクリート製品工場に設置して実証実験した結果、製造した舗装ブロック「CUCO-SUICOMブロック」が、CO2-SUICOM製のブロックと同等のCO2固定量と曲げ強度があることを確認した。  両社はCUCO-SUICOMブロックを製造し、大阪・関西万博の「CUCO-SUICOMドーム(通称サステナドーム)」のエントランスに敷設した。  両社は今後、PCaコンクリート製品工場でのCO2-SUICOMの本格的な製造に向けて、必要なCO2量を踏まえたDAC装置の検討を進める。システムの高度化を図り、コンクリートに吸収・固定させるCO2の地産地消を目指す。 from...

2025年3月12日水曜日

東日本大震災から14年/宮城県庁で式典、村井嘉浩知事らが献花・黙とう

 東日本大震災の発生から14年を迎えた11日、東北の被災各地で犠牲者を追悼する式典などが開かれた。宮城県では仙台市青葉区の県庁に設置された献花台に村井嘉浩知事らが花を供え、黙とうをささげた=写真。  青森、岩手、宮城、福島の被災各県では同日、困難と各地から寄せられた支援への感謝を忘れず、経験と教訓、記憶を後世に伝える追悼行事が開かれた。 from 行事 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172075 via 日刊建設工業...

回転窓/授業料無償化の行く先は

 12日に実施される大阪府の2025年度公立高校一般選抜入試で、全日制128校のうち65校で倍率が1倍を下回る「定員割れ」となった。有名大学への合格者を多数輩出してきた伝統校も複数含まれる▼吉村洋文知事は10日の会見で少子化の影響を指摘。「定員割れはいずれ来る道。行きたい学校に行けるという選択肢を保ちつつ、高校の再編を通じ公立も私立も切磋琢磨(せっさたくま)しながら教育の質を高めていくべきだ」と所見を述べた▼定員割れが相次いだ背景には、府が24年度から国に先駆け導入した高校授業料の無償化に伴い、私立の専願率が高くなっていることも影響しているとみられる▼府では3年連続で定員を満たせず、改善の見込みがない高校は再編整備の対象にすることが条例で定められており、実際に閉校した学校もある▼吉村氏はタブレット教育の導入や海外留学の支援を列挙して「公立高校にももっと投資をしていく」方針を打ち出す。私立とは予算や運営の自由度が大きく異なる状況にあり、これからの公立は知名度だけでない魅力も求められる。府の動向は全国的なモデルとしても注目される。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172085 via 日刊建設工業...

建退共/複数掛け金制度導入検討、段階的にアップし退職金1000万円超実現へ

 勤労者退職金共済機構(勤退共、梅森徹理事長)の建設業退職金共済事業本部(建退共本部、大澤一夫本部長)は、退職金1000万円超の実現に向け1人につき複数の掛け金を納付する「複数掛け金制度」の導入を検討する。現在の掛け金日額320円を3段階で徐々にアップさせ、掛け金を40年程度納付した場合の退職金を1000万円超にする。インターネットで掛け金を納める電子申請方式の拡大に向けては、退職金ポイントを還元するなどのインセンティブ付与を検討する。  11日に東京都内で運営委員会・評議員会を開き、2025年度事業計画とともに当面の事業方針などを説明した。退職金額の増額に向けた複数掛け金制度の導入はこれまでも業界団体などから要望が上がっていた。このほど初めて具体的な目安として1000万円を掲げた。  現在の退職金は、日額320円で37年間納付した場合で388万円。これに対し、東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情」(2024年版)によると全産業の退職金額は842万円と大きく上回る。「将来の安心につながる制度にする」(建退共本部)ため、日額320円に上乗せした複数掛け金制度を検討する。検討に当たっては建設キャリアアップシステム(CCUS)の能力評価を参考にする。  電子申請方式の拡大に向けては、ポイント還元などによるインセンティブの付与を検討する。建退共の掛け金として利用できる「退職金ポイント」を証紙に代え、ペイジー(電子決済)で購入した掛け金負担者に対し、一定割合の退職金ポイントを還元して次回以降の退職金ポイントに充当できるようにするなどの運用を想定。インセンティブの付与は、今秋予定している電子申請システムの大規模改修の後に始める。25年度は電子申請方式による掛け金納付率12%以上(24年度目標9%以上)を目指す。 from...

主要ゼネコン35社の23年度採用社員、5社が離職率ゼロ/本社調べ

 日刊建設工業新聞社が主要ゼネコン35社を対象に実施したアンケートによると、2023年度に採用した社員の離職率(24年3月末時点)は回答33社の平均で4・5%だった。企業別に見ると19社が平均値を下回った。安藤ハザマ、竹中工務店、東亜建設工業、飛島建設、前田建設の5社がゼロを達成。いずれも働き方改革の推進やきめ細かな研修、フォロー体制の構築などが成果に結び付いたようだ。  アンケートは1~2月に実施し、企業別に21~23年度に採用した社員の離職率(同時点)を調べた。  23年度採用社員の離職率が平均値を下回った企業は、ゼロだった5社と合わせて▽大林組(離職率0・6%)▽鹿島(0・6%)▽熊谷組(2%)▽五洋建設(2・7%)▽清水建設(0・3%)▽大成建設(1・3%)▽竹中土木(2・6%)▽東洋建設(2・7%)▽西松建設(1・8%)▽日本国土開発(2・6%)▽長谷工コーポレーション(1・5%)▽フジタ(2・8%)▽松井建設(3・5%)▽三井住友建設(4%)-の各社。  23年度入社の離職率がゼロだった5社では、採用選考段階から自社のニーズや方針に合った学生との「マッチングを高める」(竹中工務店)、「ミスマッチを減らす」(東亜建設工業)といった企業が目立つ。教育制度を充実させる動きも相次ぎ、「1年間の研修・自己申告制度によるキャリアや個性の引き出し」(前田建設)、「キャリアデザインを描き、技術力だけでなく人間力を高められる研修制度の確立」(飛島建設)といった回答もあった。  研修では若手に寄り添ったフォロー体制の構築にも注力。鹿島や清水建設、大成建設、戸田建設、奥村組、東鉄工業、淺沼組、大日本土木などはメンター制を導入・拡充し、年齢の近い先輩社員が仕事の相談や指導に対応する。若手が前向きな気持ちで仕事に取り組めるような心のケアにも気を配る。定期的に人事担当者や上司らが若手との面談を設け状況把握などに努める企業も多く見られる。  フレックスタイムの導入などによる柔軟な働き方や、初任給や各種手当による処遇改善の取り組みを定着率の改善や向上につなげるようとする企業も少なくない。大成建設や前田建設は服装のオフィスカジュアル化を推進。西松建設や安藤ハザマは独身者向けの帰省交通費を支給する。 from...

福島県/双葉地域中核病院基本計画を策定、4月以降に設計プロポ公告

 福島県病院局は、浜通り・双葉地域の医療体制で中核になる新病院の整備に向けた基本計画を策定した。東日本大震災の福島第1原発事故で休止した大野病院の解体後、跡地に延べ2万5400平方メートルの新病院を建設する。各工程で仕様や設計額が見直せ、物価の変動などにも対応が容易な設計・施工分離発注方式で整備する。4月以降に基本・実施設計業務の委託先を決める公募型プロポーザルを公告。2029年度以降をめどに、整備工程などを精査し早期の開院を目指す。  計画地は大熊町下野上大野98の1(敷地面積2万6000平方メートル)。JR大野駅から約200メートルに位置する。新病院のコンセプトは▽地域に密着し、住民が安心して生活するための連携の核になる▽地域の発展に貢献し、医療従事者に魅力ある病院。診療科は20科、病床数は250床前後を想定する。  大野病院は1951年に開設し、72年に現在地へ移転した。本館の施設規模はSRC造4階建て延べ1万0427平方メートル。病床150床、診療科目は9科。20年3月に敷地を含む区域の避難指示が解除され、地元を含めた周辺自治体から病院再開の期待が高まっている。 from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172087 via...

2025年3月11日火曜日

中部整備局ら/蒲郡BP開通式開く、名豊道路全線つながる

 中部地方整備局が愛知県内で整備を進めていた国道23号蒲郡バイパス(BP)の豊川為当~蒲郡ICが8日、開通を迎えた。これにより、名古屋市から豊橋市までを結ぶ延長約72・7キロの高規格道路「名豊道路」が、1972年度の事業着手から半世紀の時を経て全線開通となった。同日、蒲郡市内で行われた開通式典やセレモニー、パレードには、地元関係者や施工者、設計者、自治体関係者、国会議員など約430人が参加。事業の節目を盛大に祝った。  式典やセレモニー、パレードは、中部整備局名四国道事務所や愛知県、豊川市、蒲郡市、名豊道路建設推進協議会、国道23号蒲郡BP建設促進協議会で構成する実行委員会が主催した。  蒲郡市民会館で行われた式典で鈴木寿明蒲郡市長は「さまざまな関係者のおかげで開通を迎えることができた。道路を活用し、物流や人流、産業、観光による地域活性化、防災などにつなげたい」、大村秀章知事は「名古屋港や三河港へのアクセス性を飛躍的に高め、県の重要な東西軸になる。開通効果を最大限に生かすため、イノベーションを創出する取り組みなどを加速し、日本の成長をリードしたい」とあいさつ。佐藤寿延中部整備局長は「連綿と多くの方が事業に携わり、きょうを迎えることができた。開通を機に地域、圏域がますます発展し、つながることを祈念する」と話した。来賓の今枝宗一郎衆院議員は「皆さんと一緒に盛り上げ、地方創生につなげたい。今後の4車線化に向けても力を尽くす」と述べた。その後、蒲郡IC周辺の道路現地に移動し、セレモニーとして鋏入れやくす玉開披が行われた。  豊川為当~蒲郡ICの延長は9・1キロ。蒲郡BPを形成する。  名豊道路は知立、岡崎、蒲郡、豊橋、豊橋東の5BPで構成。8市1町を通過する。物流効率化や災害に強い道路機能の確保など、さまざまな効果が期待される。 from...

回転窓/記念日への思い

 いつまでも忘れず、思い出すきっかけとして作られるものに記念碑や記念誌などがある。企業や団体、個人らが制定する記念日にも人々の記憶にとどめようと、さまざまな思いや願いが込められている▼日本記念日協会が認定・登録した記念日はホームページで検索・閲覧できる。きょう3月11日を見ると、東日本大震災関連の記念日が目立つ▼「防災意識を育てる日」はネットテレビやラジオ局の運営会社が制定していたのを防災士の社長が継承して登録。関東大震災に由来する「防災の日(9月1日)」に行われる防災訓練が台風シーズンで中止となることも鑑み、震災の教訓を次世代につなぐための話し合いや行動を促す日とした▼メディアコマースが制定した「おくる防災の日」は、防災用品を大切な人に贈る・送る習慣を根付かせるのが目的。NPOが定めた「いのちの日」には多くの命を失った震災の教訓を風化させず、災害時医療を考える機会とする思いがこもる▼本紙でも早期の復旧・復興や防災・減災対策の重要性を訴えてきた。これからも安全・安心な国土づくり、それを支える建設産業の取り組みを報じていく。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172050 via 日刊建設工業...

東日本大震災から14年/福島第1原発廃炉へ一歩ずつ、デブリ試験的採取に成功

 廃炉への道として大きな前進だった--。2024年11月、東京電力ホールディングス(HD)は福島第1原子力発電所(福島県大熊町、双葉町)2号機の溶融燃料(デブリ)の試験的採取に成功した。当初計画より数年ずれ込んだが、本格的なデブリ取り出しへの道が見え始めた。デブリ保管施設の整備に向け、ALPS(アルプス、多核種除去設備)処理水貯蔵タンクの解体も始まった。長い時間をかけながらも、廃炉作業は着実に進んでいる。  同社は1月14日、福島第1原発構内を報道機関に公開した。1~4号機を見渡せる「ブルーデッキ」からは、1号機を覆う大型カバーの設置工事の様子がうかがえた。がれき撤去時のダスト飛散や雨水の流入を抑えるためのもので、今夏ごろまでに設置を終える見通しだ。1、2号機の原子炉建屋内部のプールには、使用済み燃料が残る。1号機の使用済み燃料取り出しは27、28年度の開始を予定している。  2号機は、建屋上部にあるプールにアクセスするため、建屋南側に使用済み燃料搬出用の構台と前室を設置。建屋と前室を行き来するブーム型クレーンを遠隔操作して使用済み燃料を取り出す。構台の鉄骨組み立ては24年6月に完了し、現在はクレーン走行レールの基礎(ランウェイガーダ)を設置している。26年度までに使用済み燃料の取り出しに着手する。既に使用済み燃料の取り出しを終えている3、4号機を含め、31年内に1~6号機すべてで作業完了を目指す。  1~3号機と形や大きさがほぼ同じという5号機の原子炉内部は非常に狭く、天井も低い。全身防護服を身に着けて、圧力容器直下部へ進入すると、天井部一面に制御棒の駆動設備などが配列されていた。  廃炉の最難関とされているのが、燃料デブリの取り出し作業だ。事故当時、運転中だった1~3号機は、津波で電源を喪失した。燃料の過熱を免れず原子炉内の構造物と燃料が溶融し、デブリとなって今も原子炉内部に残っている。1、3号機は格納容器内、2号機は圧力容器底部に多く溶け落ちたと見られている。  原子炉内部は放射線量が高く、人間は近づけない。除去するための装置や用具を開発しようにも、デブリは重さや硬さ、成分が不明なため、まずはサンプルを採取し、分析する必要がある。  試験的なデブリ取り出しは2号機から着手した。23年度に実施予定だったが、新型コロナウイルスの影響や作業の安全性、確実性を高めるために工程を見直した。取り出し作業は24年9月に開始。同11月、大きさ約9ミリ×約7ミリ、重量約0・7グラムの採取に成功した。  採取できたサンプルは1グラムにも満たないが、東京電力HD担当者は「2~3年遅れたものの、結果として取り出せたのは大きな前進だった。廃炉の道として一歩進めた」と採取成功の意義を語った。春ごろにも、2回目の試験的採取に着手する見込み。取り出し作業は段階的に規模を拡大していく。  取り出したデブリは金属製の密閉容器に収め、新たに整備する保管施設に移す。新施設の計画地は、ALPS処理水などのタンク設置エリア(E、J8・J9)にあるタンクを解体した跡地。Eエリアには2号機の、J8・J9エリアには3号機の燃料デブリ取り出し関連施設を設ける。  2月3日、東京電力HDは原子力規制委員会からJ8・J9エリアのタンク解体に関する実施計画の認可を受けた。ALPS処理水の海洋放出で水抜きが先行しているJ9エリアのタンク12基は、同14日に解体を始めた。今月4日に1基の解体が完了。速やかに2基目の解体に取りかかる。  処理途上水を貯留しているJ8エリアのタンク9基は、空のタンク群に処理途上水を移送後、解体に着手する。溶接型タンクの解体は初の事例となるため、知見を蓄えつつ、安全最優先で作業を実施していくという。  事故から14年。現場に立つことで新たな進展を目の当たりにした。廃炉作業が本格化しつつある中、課題も残る。現場に入る作業員の安全管理や作業環境の向上、改善は不可欠だ。現在、構内では1日当たり約4000~4500人が働いているという。多重下請構造のため、東電HD担当者は、「協働者と対話し、さまざまな意見をキャッチアップしていかないとならない」と気を引き締める。 from...

関東整備局ら/首都圏外郭放水路でパワーアップ計画、見学者10万人達成へ

 ◇防災を自分事に  関東地方整備局ら3者が、首都圏外郭放水路(埼玉県春日部市)で見学者10万人を達成するための八つのパワーアップ計画をまとめた。「防災地下神殿」の異名を持つ同施設を巡る四つの見学コースに加え、さらにもう2コースを用意。防災コンシェルジュも配置し、見学者に防災の「自分事化」を啓発する。観光しながら防災知識が身につけられる防災ツーリズムがスタートする。  パワーアップ計画は関東整備局と埼玉県春日部市、外郭放水路の見学会を運営する東武トップツアーズ(東京都墨田区、百木田康二社長)が作成した。一つ目は全長6・3キロに上る地下トンネルのほぼ中間に位置する第3立坑を見て回るコース「地下河川を歩くアドベンチャー体験コース」を16日に始める。年間で限定100人を招待し、地下50~60メートルの世界を体感できる。  二つ目はプレーヤーが自由にブロックを配置して構造物を体験できるマインクラフト(マイクラ)を活用した防災学習コースも立ち上げる。外郭放水路をマイクラで再現し、ゲーム感覚で防災を学べる。6月以降開始する予定だ。  関東整備局の江戸川河川事務所が認定した防災コンシェルジュ(現在13人)を配置。自然災害への備えを解説した「災害から命を守る自分事化カード」も配布する。21言語対応の翻訳システムなども用意する。  10日には「地底探検ミュージアム龍Q館」で3者共同の記者会見を開催。岩谷一弘春日部市長、小池聖彦江戸川河川事務所長、望月康紀東武トップツアーズ東武沿線事業推進部長が出席した。  小池所長は「災害から命を守る『災害の自分事化』を広げるための防災ツーリズムをスタートさせる」と宣言。岩谷市長は「外郭放水路の新たな取り組みを盛り上げていきたい」、望月部長は「(外郭放水路の)認知度向上などを通じ、東武沿線の新たな観光地づくりを進める」と述べた。  外郭放水路は倉松川など地域の河川から地下に水を取り込む立坑と地下で水を送り込むトンネル、スムーズな排水を促す調圧水槽、水を江戸川に吐き出すポンプ設備などで構成する。貯水容量はサンシャイン60(東京・池袋)1棟分に相当する約67万立方メートルを見込む。23年度時点で約6万3000人が見学に訪れている。 from...

国交省/直轄工事で賃金・労働時間「見える化」、受注者側の理解得て試行を

 国土交通省が直轄工事で試行する方針を示した技能者の賃金や労働時間の実態把握について、受注者となる元請や下請への丁寧な説明と十分な理解を踏まえ試行に取り組むことを7日の有識者会議でほぼ了承した。元請団体を中心に、技能者を雇用する下請にもデータ提出を求める難しさや、試行のメリットを問う声も挙がった。試行の中で元請と下請のそれぞれに依頼する事項を明確にし、将来的に実現を目指す受注者側のメリットについても理解を得ていく必要がありそうだ。  有識者会議「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会」の「建設生産・管理システム部会」(部会長・小澤一雅政策研究大学院大学教授)が7日開いた会合で、国交省が提示した試行の方向性について議論した。  試行工事では受注者の元請と、技能者を雇用する下請に支払い賃金と労働時間、労務費の三つのデータを発注者に提出してもらい「見える化」する。各工事で実態把握の対象工種をあらかじめ決めた上で、雇用主の下請は賃金台帳に記載された技能者の賃金総額と総労働時間を発注者に直接提出。元請は下請に支払った労務費と、試行工事で技能者が実際に働いた作業時間を把握し提出する。  この実態把握により企業単位では労働時間に対し賃金が、工事単位では作業時間に対し労務費が、適切に支払われているかどうか判断する材料になる。ただ下請の賃金開示には抵抗感が強いとの指摘もある。そこで試行では提出してもらう賃金を技能者個人ごとではなく全員の合算値とし、なおかつ元請を通さない提出方法とすることで下請に配慮する。  小澤部会長は試行に当たって把握するデータの定義や提出主体を明確化し、受注者側に誤解が生まれないよう国交省に対応を要請。データ把握で何が明らかになり何が実現できるか、具体的なモデルケースを示すことで理解も深まると助言した。国交省は丁寧な説明により試行への協力に理解を得ていく考えを示した。  このほか有識者からは、試行の開始以降も必要に応じ実施方法を改良すべきとの意見があった。今回の試行が建設業の生産性向上と働き方改革を実現する制度の設計につながる可能性を指摘し、受注者側へのメリット訴求に期待する声もあった。 from...

東日本大震災から14年/伊藤復興相インタビュー、被災地に寄り添い責任全う

 伊藤忠彦復興相は、東日本大震災から14年を迎えるに当たり、報道各社の共同インタビューに応じた。原子力発電所の廃炉や、原発事故から発生した「除去土壌」の処分・再生利用に関する取り組みが進む中で、「現場主義を徹底し、被災地に寄り添い、責任を全うするつもりで復興が進むよう取り組む」と決意を述べた。  復旧・復興の現状についは、「岩手県、宮城県はハードの整備、復興が進んだ」としながらも、被災者の心のケアをはじめ「必要な課題がある」と指摘した。2025年度までの第2期復興・創生期間の後も「必要な支援が行えるよう関係省庁、自治体と連携し、丁寧に取り組む」と話した。  福島県は被災地域の訪問を踏まえ「(廃炉、除去土壌の対応など)ステージが進むにつれて、多様なニーズに国が対応しないといけないと心に刻んだ」と受け止めを話した。住民の帰還に向けた特定帰還居住区域の除染などを進めながら、帰還困難区域にある土地や家屋の在り方を巡り地元自治体と協議していく考えも示した。  帰還や移住の環境整備、既存ストックを生かしたまちづくりなどに投じている福島再生加速化交付金に関し、「帰還困難地域を抱えている地域があり、復興の状況は異なる」と被災地の現状を説明した。安全で着実な廃炉、除去土壌の県外最終処分、帰還困難区域の解除、生活再建などを課題に挙げ、「生活環境、にぎわい創出に引き続き取り組み、安心して暮らせるまちづくりをしっかり支援していく」と述べた。  除去土壌の県外最終処分に関し、福島県双葉町の伊沢史朗町長が町内での再生利用を検討する考えを示したことについては「心配するのは当然。広い場所に(除染で出た)土砂がある。しっかり対応することがわれわれの責任」と述べた。政府は除去土壌の県外最終処分と再生利用について、今春に基本方針をまとめ、今夏にロードマップを策定することにしており「きっちりやり遂げたい」と強調した。  施設設計が進んでいる福島国際研究教育機構(F-REI)は「造成工事に着手する。集まれる場所を確保して夢のある課題が議論されればいい」と述べ、早期の供用開始に意欲を見せた。首都直下地震や南海トラフ地震の発生が懸念されていることについては「起きた時に立ち上がる方法を共有することが必要なことだと認識している」と話した。 from...

内閣府/自治体のPPP・PFI事業、分野横断・広域連携推進へ手引策定

 内閣府民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)は10日、分野横断型・広域型のPPP/PFI事業の実施を促すための手引を発表した。複数分野や複数の公共施設などを一括して事業化する「分野横断型」と、複数の地方自治体が管理者などになった「広域型」の事業の導入検討、事業者募集・選定、事業推進のポイントなどをまとめた。事例も多く示した。  「分野横断型・広域型のPPP/PFI事業導入の手引」を公表した。公共施設やインフラの老朽化、技術職員の減少といった公共施設やインフラの管理者が直面する課題への対応を支援し、PPP/PFI事業の裾野を拡大するのが狙い。  社会情勢の変化から、公共サービスを従来の所管範囲を超えて提供したり、複数の分野や施設をまとめることでスケールメリットを働かせたりすることの必要性を強調している。分野横断型、広域型の事業とも、多様な民間事業者の参画が促され、事業機会の創出になることなどを効果に挙げた。  手引は分野横断型、広域型の事業を進めるための合意形成、庁内外との調整、発注体制・方法、民間事業者の選定・審査・コミュニケーションなどを対象に、要点を分かりやすく示した。分野横断型は上水道・下水道・工業用水道一体や公立学校など、広域型は水道、廃棄物処理などの事業を例に挙げた。  先行事例で導入のきっかけや、重視した事項なども紹介。国や都道府県が主導的な立ち位置となる「垂直連携」や、発注者の権限を特定の市区町村に集約するような「共同発注」などの事業手法と、その考え方を記載。モニタリングの体制や、民間事業者に過度な負担をかけない工夫といった留意点も示している。  手引をまとめるに当たって調査した分野横断型・広域型の29事例で事業化に至った動機、連携方法、期待している効果、留意点などが参考となるよう掲載。事業化までの工程とポイントも整理してある。 from...

国交省/技術提案評価SI型の試行実施要領案まとめる、配点や費用の考え方提示

 国土交通省は直轄工事で2025年度から試行する総合評価方式の新タイプ「技術提案評価型(SI型)」の実施要領を固めた。月内に策定・公表し、適切な運用を各地方整備局に要請する。SI型ではVFM(バリュー・フォー・マネー)の考え方に基づき、仕様や工法の変更で安全性や生産性、品質の向上などが期待できる事項について「技術向上提案」を求める。技術向上提案の評価点は当面、現行のS型で技術提案に充てている配点の合計の2分の1から3分の1のウエートで設定する。  7日開いた有識者会議「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会」の「建設生産・管理システム部会」で試行の実施要領案を明らかにした。  SI型は、S型で発注する工事のうち仮設物や工法、目的物の比較的軽微な変更で効果が期待できる場合や、新技術・工法の活用が期待できる場合に適用。コスト面で分が悪い省人化などに寄与する工法や資材の採用を促す。大規模工事ほど効果的な提案が得られやすいことを踏まえ試行対象を選定。発注手続きの期間はS型より長く設定する。  技術向上提案のテーマは、通常の技術提案テーマとは別に一つ設定する。施工性の高い工法への変更、交通渋滞・事故防止や作業員の危険防止、維持管理性の高い工法の採用といった具体例を示す。特定の工種・箇所・段階でのテーマ明示を推奨。コスト縮減は提案に含めず、資材の一部を既製品に置き換えるだけの提案も評価しない。  競争参加者には提案実施の概算費用の明示を求める一方、入札はその費用を含めず当初仕様で行う。第三者に諮った上で提案を採用する場合、当初契約後に契約変更を行う。  増額変更の上限は、公告時点の予定価格の5%を超過しない範囲で発注者が設定。受注者から提案部分の見積もりを徴収し、協議を経て請負代金の変更額を決定する。新工種を提案する場合を除き、変更時に落札率がかかる。  試行開始後、提案に基づく実際の効果や配点の妥当性などをフォローアップする。将来的に直轄工事の総合評価方式のガイドラインに明記し本格運用する。同部会では建設業団体から、同じような技術向上提案テーマが続けば一部の技術を持った企業に継続的に有利に働く可能性があるとして、テーマ設定の是非について透明性ある制度運用を求める声があった。 from...

鹿児島県/志布志港(志布志市)長期構想を策定、新バルク貨物ターミナル整備など

 鹿児島県は志布志港(志布志市)のおおむね20~30年後の目指すべき姿とその実現に向けた空間利用計画や施策などを取りまとめた長期構想を策定した。物流やにぎわい、エネルギーなど四つの分野で目指すべき将来像を提示。新バルク貨物ターミナルの整備や高付加価値型産業の誘致、新たな交流拠点の創出などを盛り込んだ。  構想では「地域のポテンシャルと稼ぐ力を引き出す、世界に開かれた志あふれる志布志港」を基本理念に、▽物流・産業▽人流・にぎわい▽安全・安心▽環境・エネルギー-の四つの分野で目指す将来像を示した。  主な取り組みについては、物流・産業では▽新若浜地区でのコンテナターミナルの拡張と新バルク貨物ターミナルの整備▽輸送方法を環境負荷の少ない船舶などに転換するモーダルシフトを促進する次世代高規格ユニットロードターミナルの形成▽大型穀物船に対応するための耐震強化岸壁の整備▽若浜地区の緑地公園移設による新たな産業用地の確保▽企業用地を活用した流通加工機能などを有する付加価値型の物流施設誘致-などに取り組む。  人流・にぎわいでは、若浜地区の緑地公園をフェリー機能の移転に合わせて外港地区に移し、志布志港の景観を一望できる緑地を整備。みなと緑地PPP制度を活用した新たな交流拠点の創出も検討する。  安全・安心では、コンテナターミナルやフェリー・RORO船(貨物車両をそのまま運搬できる船舶)ターミナルの耐震化、外港地区での港湾機能の維持や早期回復に必要な作業船の係留場所の確保、コンテナなどの流出防止対策といった取り組みを進める。  環境・エネルギーでは、若浜地区での次世代エネルギー関連産業誘致や脱炭素化の推進に向けた港湾機能の高度化、環境に配慮したブルーインフラとして藻場や干潟の造成を検討していく。  今後は長期構想に基づき、早期に取り組むべき施策は港湾計画を改定して反映させる。 from...

大成建設/トンネル坑内で10tダンプ自動運転、位置情報取得技術を高度化

 大成建設はGNSS(全球測位衛星システム)の電波が届かないトンネル坑内で、掘削土砂を搬出する10トン積みダンプトラックの自動運転を実用速度(時速20キロ)で実証した。車両に搭載したセンシング装置の計測情報に基づき、車体の周辺環境を示す「環境地図作成」と「自己位置推定」を3Dで同時に行うSLAM技術を用いた位置情報取得技術「T-iDrawMap」で実現。自動運転で運転手が不要となりトンネル施工の生産性向上に貢献し、操作ミス防止による事故リスクを低減する。  茨城県つくば市にある国土交通省国土技術政策総合研究所の実大トンネル実験施設と、富山県南砺市で国交省北陸地方整備局が建設している「利賀トンネル(2工区)工事」の現場で実証し、性能を確認した。  実証では、タイヤ式車両の10トン積みダンプトラックにT-iDrawMapを適用。トンネル坑内の周辺環境を示すデータを基に車体の位置情報を取得しながら、あらかじめ設定したルートを自動走行することを確認した。GNSSを利用できない坑内や地下でも実用速度の時速20キロで自動運転が可能になることも確認。移動式鋼製型枠(セントル)を設置している狭い区間でも通過速度を減速し、安全に走行する。  大成建設は2021年に時速7キロの無限軌道式建設機械(クローラダンプ)を対象に、T-iDrawMapを適用してトンネル坑内の自動運転を実現した。今回の実証によってT-iDrawMapの適用範囲を、実用性の高い時速20キロで走るタイヤ式車両の10トン積みダンプトラックにも広げた。今後は早期の実用化を目指す。  同社はT-iDrawMapを活用し、将来的には屋内・地下空間での自動運転も想定している。災害時の探査や点検での適用とともに、無人・有人の建設機械が協調稼働する「T-iCraft」との連携も視野に入れる。 from...

2025年3月10日月曜日

回転窓/やっぱり!マイ・ユニホーム

 本紙最終面の企画欄「やっぱり! マイ・ユニホーム」は2019年に掲載がスタートした。建設会社などの作業服を紹介するシリーズで、これまでに180以上の企業・団体が登場している▼多くが作業服をリニューアルしたタイミングでの掲載であり、数十年ぶりにデザインを刷新したという会社も少なくない。それぞれの顔とも言える作業服は企業イメージにつながるだけに、記事を読むとブランディング戦略の一環であることがよく分かる▼新しい作業服はデザイン性や機能性だけでなく、愛着を持って着用できることも重要なコンセプトとなる。スポーツメーカーやデザイン専門学校とタイアップしたり、社員の意見を反映させた複数案から社内投票で決めたりするなど、さまざまな取り組みが見られる▼作業服を一新したある地域建設会社の広報担当者は「建設業を憧れのナンバーワン職業とするためイメージアップに貢献したい」と話す。作業服を通じた魅力向上に期待したい▼今年も4月に多くの若者が建設業界に仲間入りする。職場や仕事に早く慣れ、マイ・ユニホームを着た姿が板に付くのを楽しみにしよう。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172023 via 日刊建設工業...

大林道路/社長に安孫子敬美氏、4月1日就任

 大林道路は7日、安孫子敬美代表取締役兼専務執行役員が4月1日付で社長に昇格する人事を発表した。黒川修治社長は同日付で代表権のない取締役となり、6月下旬に取締役を退任し特別顧問に就く予定。  安孫子 敬美氏(あびこ・ひろみつ)1986年日本大学工学部土木工学科卒、大林道路入社。2018年執行役員、20年本店営業部長、21年常務執行役員、22年4月プロジェクト推進部長、同6月取締役を経て、24年4月から現職。北海道出身、61歳。 from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172024 via 日刊建設工業...

凜/佐藤機工・安齊優翔さん、一人前のクレーンオペレーターに

 「ものづくりに携わりたい」という思いを抱いて神奈川県立磯子工業高等学校に入学した。在学中に神奈川建設重機協同組合(大平道成理事長)が実施した出前授業で初めてクレーン車に触れた。実際にクレーン操作を体験して「クレーンオペレーターの仕事に就きたい」と強く意識するようになった。  高校卒業後、佐藤機工に入社が決まり、クレーンオペレーター資格に必要な大型特殊、移動式クレーン免許を取得するために「神奈川クレーン塾」に入塾。開講期間約1カ月の間に免許取得だけでなく、建設業界の基礎知識や安全教育、コミュニケーションのためのマナー研修を受講し、見事試験に合格してクレーンオペレーターになる資格を手に入れた。現在は、12トンラフタークレーンオペレーターとして県内の現場を担当している。  「安全に作業を進めていくため、現場環境と周りに気を配るように心掛けている」とし、周囲への顧慮を怠らず業務にまい進している。  「各現場に行き、さまざまな職人さんたちと一緒に仕事し、いろいろと学びながら仕事を覚えられる今が楽しい」と笑みがこぼれる。クレーンオペレーターは力仕事ではなくて、性別も関係なく仕事をすることができる。これからも技術を磨いて頑張っていく。  (あんざい・ゆいか) from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞...

国交省/賃金や労働時間「見える化」直轄工事で25年度試行、生産性競う環境目指す

 国土交通省は直轄工事に従事する技能者に支払われた賃金や労働時間を、受発注者間で「見える化」する試みに乗り出す。2025年度に全国の地方整備局で試行工事を始める。受注者の元請と、技能者を雇用する下請に協力を依頼し、支払い賃金と労働時間、労務費の三つのデータを発注者に提出してもらう。見える化の浸透により工事入札などで適正な労務費が確保される環境が創出され、生産性向上による健全な競争も促されると期待する。  有識者会議「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会」の「建設生産・管理システム部会」が7日開いた会合で説明し、学識者や建設業の元請団体などに意見を聞いた。  公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の運用指針では、発注者に賃金・労働時間の実態把握を努力義務化している。建設業従事者の処遇や労働環境の改善の必要性から設けられたこの規定を実行に移す。23年9月から試行に取り組む四国整備局徳島河川国道事務所の先行事例で受注者から挙がった意見も踏まえ、試行内容を改善・拡充し全国へ展開する。  会合では、試行工事で元請と下請に対応を求める実態把握の方法などを提示した=表参照。試行案件は受注者の希望も踏まえ選ぶ。鉄筋や型枠などの工種ごとに実態把握する方法とし、技能者を雇用する下請の理解も得て元請が最低一つの対象工種を決定。従事する技能者の賃金・労働時間を把握する。雇用主の下請には個人特定を避ける観点で賃金・労働時間の合計値の提出を求める。元請には下請に支払った労務費と、試行工事での技能者の作業時間を把握してもらう。  国交省が将来的に目指すのは、こうしたデータの見える化による健全な競争環境の実現だ。賃金・労務費の適正額が実質的に確保されることで、工事入札や元下間の工事契約で価格競争の原資として生産性の高さを競わざるを得ない環境になるという絵姿を描く。  小規模な維持工事などで積算上の歩掛かり・経費が現場実態と合わないとの声があることも念頭に置く。見える化されたデータに基づく歩掛かり・経費の設定や見積もりの活用で現場条件に即した積算方法を採用できる可能性も指摘する。  会合では受発注者双方がアクセス可能な「データ共有システム」を国交省が用意する考えも示した。データ入力・格納・出力のルールを決め、データを扱う余計な手間を省く。発注者による現場の状況把握、元請・下請による労務関係のマネジメント、技能者による賃金の確認など、それぞれの立場に応じメリットがあるデータの使い方ができる仕組みを検討する。 from...

大気社ら/新たなDACシステム開発着手、大気中のCO2大量回収可能に

 東京都立大学や大気社ら6者でつくる研究グループが、大気中の二酸化炭素(CO2)を大量回収可能にする「DAC(ダイレクト・エア・キャプチャー)システム」の開発プロジェクトに着手した。DAC技術でこれまでネックとなっていた送風エネルギーを使わず、自然風や走行風を利用した「パッシブDAC」を開発する。大量のCO2を回収可能な低エネルギーシステムを新たに構築・実証する。  研究グループは▽東京都立大▽大気社▽パンタレイ▽長岡技術科学大学▽小島プレス工業▽九州大学-の6者。開発プロジェクトは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公募事業「ムーンショット型研究開発事業/2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」に採択されている。事業総額は約19億円。事業実施期間は29年度まで。  研究達成に向けて、▽固定型パッシブDACシステムの開発▽移動型パッシブDACシステムの確立▽マイクロ波によるCO2脱離回収システムの開発-に取り組む。トラックや船舶などの走行風を利用し、無動力で大気中のCO2を吸収・回収する技術を確立する。パッシブDACで生成した固体カルバミン酸をエネルギー効率の高いマイクロ波で直接加熱することでCO2の脱離・回収を行うシステムも開発する。  29年度までに年間1・2トンのCO2を空気から回収し、1トンのCO2に対してエネルギー消費を4・5ギガジュール以下に抑える計画。将来的には、回収したCO2を有用な炭化水素に変換する技術と組み合わせ、2050年までに1・5億トンのCO2を回収し、0・5億トンを貯蔵、1億トンを資源化することで、カーボンネガティブな社会を目指す。 from...

甲府市/リニア山梨県駅前エリア基盤整備方針、26年度にも検討パートナー公募

 甲府市は「リニア山梨県駅前エリアの基盤整備方針」をまとめた。2023年度に策定した「(仮称)リニア山梨県駅前エリアのまちづくり基本方針」の具現化に向け、主に公共が担う都市基盤施設整備の配置や事業スケジュールなどを示している。市は駅南側エリアの交通広場と南側アクセス道路の事業主体となる。官民連携ゾーンについては山梨県、民間事業者などと連携する。  26年度にも基本計画づくりに参画可能な検討パートナーを公募する。27年度以降にまちづくり基本計画を策定し、34年度以降の基盤整備完了を目指す。リニア事業の進捗を見ながら適時スケジュールを見直す考えだ。  甲府市大津町内に整備予定の「(仮称)リニア中央新幹線山梨県駅」の駅前エリア全体(約24・5ヘクタール)が対象。同方針はこのうち市が事業主体となる同駅南側エリア(約11・5ヘクタール)を主な対象とする。南側交通広場と南側アクセス道路の事業主体は甲府市で、民間活力の導入も検討する。南側に広がる官民連携ゾーンは市と県、民間事業者が連携し、施設の整備・運営などを検討する。27年度以降に予定する都市計画決定・事業認可を経て、官民連携ゾーンの事業者を決定する見通しだ。  このほかの事業主体は山梨県駅(仮称)がJR東海、(仮称)甲府中央スマートICが山梨県と中日本高速道路会社。メイン道路と1号線アクセス道路、北側交通広場、パーク&ライド駐車場は山梨県。基盤整備の概算事業費は約40億円を見込む。官民連携ゾーンの事業推進費は含まれていない。  市はリニア中央新幹線南アルプストンネル静岡工区の工期などを注視しながらスケジュールを調整する。25年度に「まちの将来像」を提案する。26年度にコンセプトブックを公表し、基本計画づくりに参画可能な検討パートナーを公募する。29年度以降のまちづくり基本計画策定、都市計画決定を目指すとしている。 from...

2025年3月7日金曜日

建築設計事務所16社25年春の採用計画、新卒採用10社増/本社調べ

 主要建築設計事務所16社の今春(2025年4月)の新卒採用者数(大卒、高卒などすべてを含む)が前年よりも1割以上増加することが、日刊建設工業新聞社の調査で分かった。総数は前年より75人多い449人。前年に比べ10社が増加、3社は減少、3社が同数だった。増加した10社のうち、4社が15人以上増やす見通し。今後の採用方針は、12社が「横ばい」、2社が「増やす」と回答。「減らす」との回答はゼロで安定的に人材を確保し、社会ニーズに対応できる人員体制を整える企業が目立った。  1~2月に主要な設計事務所16社にアンケートを行い、新卒・中途採用の人数や人材戦略などを尋ねた。今春入社する新卒者の中で、技術系は16社で合計421人(24年4月は361人)。11社が前年実績を上回り、3社が減少、2社は同数となった。前年に比べ採用数を大幅に確保するのは3社。日建設計が18人、久米設計が16人、大建設計が14人をそれぞれ増やす。  新卒採用では組織体制の維持や適正規模の採用を理由に「横ばい」と回答する企業が目立つ中、設計業務の効率化や業容拡大を狙う企業もあった。松田平田設計は「業務受嘱状況やDX化への対応を含めた中長期の経営視点から増やす」と回答した。  高専卒を採用する動きも見られた。回答した企業のうち、日建設計は今春に1人の採用を見込む。「(高専卒は)育成枠として将来技術者を見込み今後採用を検討中」とした。梓設計は「高専出身の方の技術力、向上心に着目している。組織の活性化という観点からも、具体的な目標値の設定はないが、採用を増やす方針」と回答。石本建築事務所も「採用を増やす検討を行っている」とした。  AI関連など建築系以外の人材を積極的に採用する動きも出ている。課題には「機械・電気・電子系学生の募集・獲得」(NTTファシリティーズ)や「DX人材の獲得」(日建設計)が挙がった。  24年度の中途採用は、16社の合計が427人で、前年度と比べ104人増える見通しだ。増加を見込む企業からは「成長・注力分野での即戦力人材の積極的な採用」(NTTファシリティーズ)、「環境設備、ビジネス分野で実績のあるキャリア人材を積極的に採用する方向」(安井建築設計事務所)との声が上がる。既存領域にとどまらず新規事業を開拓する場合に実務経験で得た知識、スキルを求める傾向は今後も強くなりそうだ。  他産業を含め人材獲得競争が過熱する中、シニア層の活躍に期待する向きもある。三菱地所設計は「25年度から(定年を)60歳到達月末から60歳到達後年度末まで延伸し、75歳まで就業可能な職種の新設を実施予定」と回答。日建設計は1月に定年延長を行い、60歳から65歳に引き上げた。今後、定年延長を「計画している」「検討中」と答えたのは6社あった。  25年度新卒初任給(大学・総合職)引き上げについて回答した15社のうち、5社が「引き上げた」、4社が「検討中」。残る6社は昨年度引き上げを実施したなどから「据え置いた」と答えた。新入社員の2年目、3年目の離職率が1~2割の企業もあり、優秀な人材を獲得し維持していくため、今後も処遇や制度の見直しや改善が求められそうだ。 from...

中部整備局長島ダム管理所/3月13日にレベル3・5のドローン飛行試験

 中部地方整備局長島ダム管理所は13日、長時間ドローンの飛行試験を静岡県川根本町の長島ダム湖面上で実施する。飛行方法はカテゴリーIIのレベル3・5。機体に搭載したカメラで飛行経路下に歩行者などがいない無人地帯であることを確認しながら飛行する。ダムの維持管理を目的としたレベル3・5飛行は全国初。安全、効率的な施設点検を目指し、効果や課題を検証する。  従来、同ダムの施設点検は作業員2~3人が船に乗り、堤体やゲートのコンクリートの状態や周辺の林道が崩れていないか、湖面に異常がないかなどを目視で確かめる。出水、非出水期で差はあるが、半日程度時間がかかることもある。  飛行試験はダムを発着地点とし、北東方向に伸びる接岨湖を回るルートで実施。飛行速度は時速18キロ以下、飛行距離は約17キロ、飛行時間は約2時間を想定する。  使用する機体は、小型の発電機を搭載して内蔵バッテリーを充電しながら飛行できるハイブリッドドローン「GLOW.H」。カメラなどを搭載した状態で2時間ほどの飛行が可能。通信方式は従来の2・4ギガヘルツに加えLTE通信にも対応し、操縦者と機体の距離が離れても通信圏内であれば遠隔操作できる。  飛行試験ではこれらの特徴を生かし、操縦者がダムにとどまり、飛行中のドローンのカメラによる映像をモニターで確認しながら操作する。施設の変状などを確認できるか検証し、点検の省人化や効率化、安全性の向上などの効果を確かめる。  飛行試験は「令和6年度無人航空機を活用した河川等の施設点検調査検討業務」の一環。パスコが受注している。  ドローンのレベル3飛行では、補助者や周知看板を配置するなどの立ち入り管理措置が求められていた。2023年に新設されたレベル3・5飛行ではこれを撤廃した。 from...

建設コンサル17社25年春の採用計画、新卒総数59人増/本社調べ

 日刊建設工業新聞社が主要建設コンサルタント17社を対象に実施した人材採用アンケートによると、2025年4月の新卒採用総数(大卒、高卒などすべてを含む)は前年比59人増の計978人となった。技術系は59人増の907人。企業別に見ると前年から増加したのは8社で、実際の採用数が当初の計画値を上回った企業は5社にとどまる。売り手市場が続く中、多くの企業が事業規模の維持・拡大に向け新たな採用方法を取り入れたり、処遇改善に注力したりするなど工夫を凝らす。  調査は1~2月に実施した。前年に続き最多の新卒採用者数を確保した建設技術研究所は「積極的にインターンシップを受け入れた成果が出て採用の裾野が広がった」としている。前年と比べ26人増となったエイト日本技術開発は「50代以上がボリュームゾーンの年齢構成を見直すため、ここ数年若手採用を強化してきた」ことを理由に挙げる。このほか採用総数が増えたのはアジア航測(前年比23人増)、八千代エンジニヤリング(16人増)、ニュージェック(12人増)、日本工営(10人増)、中央復建コンサルタンツ(7人増)、国際航業(6人増)、オリエンタルコンサルタンツ(1人増)だった。  26年4月の新卒採用総数は17社合計で50人増の1028人を計画しているものの、技術系の採用数を回答した12社の合計は32人減の643人と微減となった。背景には「市場に人がおらず必要なスキルを有する人材が集まらない」(建設技術研究所)、「土木やIT分野など特定分野の学生の応募数確保」(いであ)などの課題が影響しているようだ。  このため即戦力となる中途採用を拡大する社も多い。日本工営、八千代エンジ、オリコンサル、アジア航測、長大、いであ、応用地質、日水コン、中央復建コンサルタンツ、オオバの10社が「増やす」と回答。退職者や内定辞退者を対象にした「アルムナイ採用」や、社員から紹介された人材を採用する「リファラル採用」に取り組む企業が目立つ。  処遇改善も進む。大卒総合職の初任給について、日本工営、パシコン、国際航業、オリコンサル、パスコ、長大、いであ、応用地質、中央復建コンサルタンツ、オオバの10社が「引き上げた」と回答。人材獲得競争が激化する中、事業規模の維持や向上に向け人的資本投資を重点化する。 from...

高知県/香美市で新産業団地開発、25年度に実施設計と用地測量着手

 高知県は、香美市土佐山田町楠目で新たな産業団地の開発に乗り出す。2025年度当初予算案に事業費7610万円を計上した。実施設計、用地測量業務を委託する。同市内では高知工科大学に隣接する「高知テクノパーク」(土佐山田町テクノパーク)に続き2カ所目の産業団地となる。  名称は「(仮称)香美楠目産業団地」。想定する開発面積は約7・8ヘクタール。26~27年度に用地を取得後、28年度に工事に着手し、31年度の完成を目指す。香美市は25年度当初予算案に関連事業費5835万円を計上している。県が発注する業務委託費を一部賄う。  人口減少下でも持続的に成長していく商工業の実現に向けた施策の一環。県は安全・安心な工業団地の計画的な開発により、企業誘致の受け皿を確保する。製造業などをターゲットに据えるが、香美市商工観光班の担当によると、水を大量に使う半導体関連の工場は難しいとみている。産業団地の開発は地域の産業振興や雇用の増加、税収増につながるため、県と市が連携しながら事業を推進していく。  高知テクノパークは総面積約11・6ヘクタール。04年4月に分譲を開始した。全7区画のうち6区画を分譲済み。半導体ウエハー搬送用ロボット・液晶ガラス基板搬送用ロボットメーカーのジェーイーエル(広島県福山市)などが立地している。残る1区画(分譲面積5565平方メートル、分譲価格9257万6610円)の早期分譲を目指している。 from...

2025年3月6日木曜日

東北整備局仙台河川国道ら/大規模災害時の緊急輸送道路確保、応急対応訓練実施

 ◇がれき処理など連携確認  東北地方整備局仙台河川国道事務所と北上川下流河川事務所は4日、大規模災害時の応急対応に必要な緊急輸送道路の早期確保を目的に地元建設業界と関係機関合同で災害時応急対応訓練を実施した。2024年12月に策定した「東北道路啓開計画」(宮城版)に基づき、啓開作業の実働を担う東北建設業協会連合会(千葉嘉春会長)、宮城県建設業協会(同会長)と連携体制を確認。宮城県、宮城県警察も参加し、啓開路線に関する情報を共有しながら人命救助や車両移動で必要な調整を図った。  訓練はがれき撤去による道路啓開など東日本大震災で得た教訓を継承するとともに官民連携の応急対応力を高めるのが目的。仙台河川国道事務所(仙台市太白区)と現地(亘理町逢隈神宮寺)、宮城県庁(仙台市青葉区)、宮城県建設産業会館(同青葉区)をウェブ会議システムで結び、リアルタイムに映像やドローンによる画像から被災状況や対応状況を共有した。  最大震度6強の地震が宮城県石巻市で発生し、最重要防災拠点となる石巻市役所までの到達経路を確保するとの想定で訓練した。ドローン班による広域にわたる現地調査で東北整備局から道路管理者の県に被災状況を情報提供。災害協定に基づき宮城建協会長に緊急応急対応を要請する手順を確認した。このほか河川堤防のり面崩落や路面陥没の復旧作業を現地で訓練。ウェブ会議システムを通じ、指示を出し安全に作業を終えたことを確認した。  仙台河川国道事務所の田中誠柳所長は「東日本大震災から間もなく14年たつ。人材育成の面からも震災を経験してない若い職員や地域建設会社の皆さんに訓練を通じ得られた教訓を伝えていく必要がある」と話した。 from...

スコープ/省エネ基準適合義務化で計算対象急増、計算代行会社が対応急ぐ

 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)に基づく省エネ基準への適合が4月に義務化されるのを控え、適合判定のための計算需要の急増が見込まれる。国土交通省の試算によると新たに計算対象に加わるのは小規模非住宅・住宅の年間約42・7万棟。既に対象になっている中・大規模非住宅など(年間約3・3万棟)と比べ、著しく増加する見通しだ。着工難民が出かねない状況を前に、計算を担う代行会社は、人員の増強やシステムの導入といった体制強化を急ぐ。  これまで適合義務を課していたのは、大規模(延べ2000平方メートル以上)と中規模(同300平方メートル以上)の非住宅。大規模・中規模の住宅には適合は求めず、計算と届け出だけを課していた。延べ300平方メートル未満の小規模非住宅・住宅は、施主への説明だけでよく、計算は任意だった。  こうした中、2022年公布の改正建築物省エネ法で、原則全ての新築を対象に基準適合が義務付けられた。25年4月1日に施行する。非住宅・住宅を問わず、小規模から大規模まで全ての新築が対象。政府は今後、義務基準を随時引き上げ、30年ころにはZEB・ZEH水準に高める方針も示している。  今回の適合義務化で浮上しているのが、計算需要の処理の問題だ。20年の着工棟数を基に整理すると、既に適合義務が課されているのは▽大規模非住宅約3000棟▽中規模非住宅約1・1万棟-の約1・4万棟。これに▽小規模非住宅約3・2万棟▽大規模住宅2000棟▽中規模住宅約1・7万棟▽小規模住宅39・5万棟-の計約44・5万棟が加わる。既に計算・届け出義務が課されていた大規模・中規模住宅を除けば、小規模非住宅と小規模住宅を合わせた約42・7万棟が、新たに計算や適合に取り組むことになる。  省エネ計算を手掛ける「環境・省エネルギー計算センター」(東京都豊島区)の尾熨斗啓介代表取締役は地方の工務店などを念頭に、「ほとんど省エネ計算になじみのない人が、一気に適合義務を課されることになる。混乱が予測される」と指摘する。同社は年間約1000棟の省エネ計算をこなし、国内には同規模の団体が10~15団体程度あるとされるが、尾熨斗氏は「現状では受注しきれない。省エネ計算会社や民間検査機関がパンクし、着工難民が出るのではないか」と警鐘を鳴らす。  適合判定は建築確認と合わせて実施する。建築主は省エネ計画を所管行政庁か登録省エネ判定機関に提出。交付された適合判定通知書を、建築主事か指定確認検査機関に提出し、確認済証の交付を受ける流れとなる。省エネ計画の作成が滞れば、建築確認の手続きに遅れが出かねない。尾熨斗氏は24年度内に駆け込み着工の動きが出始めているとした上で、25年度以降の業務量増加を見据え「省エネ計算会社などに発注予約をかけてほしい」と呼び掛ける。  省エネ基準への適合義務化は建築費や住宅価格のさらなる高騰を招く可能性もある。基準を満たすため、外皮性能や設備性能を底上げする必要があるためだ。一戸建て住宅の場合、外皮性能と1次エネルギー消費性能の両方で基準を満たす必要がある。外皮では躯体や開口部の遮熱、日射の遮蔽(しゃへい)などが必要。1次エネルギー消費性能を高めるには空調や照明、換気、給湯といった設備類の性能を上げたり、再エネ設備を導入したりするのが有効だ。いずれもコストは建築費や住宅価格に跳ね返る。  共同住宅の場合、外皮性能は住戸ごとに基準を満たせばよい。1次エネルギー消費性能は住棟全体での基準達成が要件。非住宅だと外皮性能は基準適合の必要はなく、1次エネルギー消費性能だけでの適合を求める。ただ空調の効きやすさなどは1次エネルギー消費性能に直結するため、外皮性能を高めた方が適合は容易と言える。  市場環境が大きく変わるのを前に、同社など省エネ計算を手掛ける企業が対応を急いでいる。尾熨斗氏は状況を注視するとした上で「人員を増やしていくなどの対応も必要だろう」と先を読む。業務効率化に向けたシステムの開発にも取り組んでおり、手計算より3、4割程度効率化できる可能性があるという。「当社で使ってみて有効性を確認し、需要があれば(他社への)水平展開にも応じたい」と方針を明かした。 from...

日建連/PCa工法と設計変更の事例検索システム開発、生産性向上を後押し

 日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は、土木工事のプレキャスト(PCa)工法と設計変更の事例を検索できるシステムを開発し、ホームページ(HP)に公開した。生産性向上や働き方改革の取り組み、建設業の適正な利潤確保などを後押しするのが目的。会員企業を含む建設会社や各発注機関による活用を想定している。  PCa工法事例の検索システムは、2022年に日建連と国土交通省が作成した「土木工事におけるプレキャスト工法の活用事例集(第2版)」をベースに、新たに民間工事の事例を追加して開発した。直轄以外の公共工事の活用事例も含め190事例を集約。キーワード検索のほか、「工事情報」「構造情報」「施工条件」「導入の目的・効果」といった項目でも検索できる。工種はボックスカルバート115事例、L型擁壁75事例。  事例には工事の概要やPCa工法導入による効果などをまとめた。導入による効果は数値やキーワードなどで分かりやすく表現した。現場打ちと比べた削減効果などを工程、労務、初期コストの3項目別に数値化。「働き方改革」「工期短縮」「コスト」などのワード別では導入効果を「あり」「なし」で示した。  設計変更事例の検索システムでは、施工段階の設計変更で適正な契約変更につなげた優良事例を検索できる。受注者による適正な利潤の確保に役立ててもらうと同時に、公共工事の品質確保や担い手の確保・育成にもつなげる狙い。  日建連会員企業が受注した各種工事が対象。発注機関は▽国交省▽高速道路会社▽鉄道建設・運輸施設整備支援機構▽鉄道会社▽地方自治体▽電力会社▽その他機構・事業団▽その他民間▽その他発注者-の中から選べる。  キーワードや発注者、契約年などで検索すると設計変更事例報告書を閲覧できる。報告書には設計変更に至った問題点や設計変更の内容、受発注者の協議状況とその結果、受注者側の要望が認められたポイントなどをまとめている。 from...

ミズノ/ワークビジネス事業を拡大、建設業界の需要取り込む

 大手スポーツ用品メーカーのミズノが、産業分野を対象にした「ワークビジネス」を拡大させている。2016年のワークシューズ製作から始まり、現在までバッグやオーダーメード作業服などに商品展開を拡大。スポーツ用品の知見を生かした機能を取り付け、順調に売り上げを伸ばしている。建設業界からの注文も増えているといい、ワークビジネスのこだわりをキーマンの2人に尋ねた。  ミズノが産業分野の製品に本格的に進出したのは16年。それまで企業の要望に応じたアパレル品には個別に対応していたが、少子化などで国内のスポーツ市場の縮小が見込まれる中で事業の多角化を狙った。  専門の事業部は19年度に発足し、現在は25人体制規模まで拡大した。売上高もほぼ毎年2桁成長を達成し、23年度は国内で113・1億円を記録。27年度には売上高180億円の目標を掲げる。  ワークビジネス事業部の宇野秀和事業部長は「われわれが培っていたノウハウに、ワーク市場でも使えるものがたくさんあり、差別化もしやすかった」と分析する。例えばシューズでは軽さと耐久性を両立するため、サッカーのスパイクシューズやランニングシューズの知見が生かされている。「スポーツメーカーとして顧客の困りごとを解決し、求めるものをきっちりつくる」とこだわりを語る。  近年注文が増えている作業服では、素材やカッティング、カラーなど数千通りの組み合わせを数量や予算に応じて選べる生産体制を整えている。同部の箕輪陽一次長によると、特に暑熱対策やオーダーシステムに「スポーツで培ったノウハウが生きている」という。  「他社の動向は100%見ていない。わが道を行く」と宇野氏。24年にはスポーツ用ヘルメットの知見を生かした安全ヘルメットを発売するなど、さらなる事業拡大に意欲を見せる。 from...

神奈川県横須賀市/若松町など8地区市街地再開発後押し、市内6地区の準備組織も支援

 神奈川県横須賀市は横須賀中央駅周辺と京急久里浜駅周辺、追浜駅前など8地区の市街地再開発事業を後押しする。2025年度予算案に再開発促進費として3億81百万円を計上した。中心市街地・拠点市街地の活性化と防災性向上、都市機能更新などを支援する。  支援対象は8地区。このうち追浜駅前第2地区と若松町1丁目地区の2地区は再開発組合に補助金を交付する。追浜駅前第2街区市街地再開発組合(織田俊美理事長)は、追浜駅前に2棟総延べ4・8万平方メートル規模の店舗・住宅複合施設を建設する。公共機能として図書館を併設する。5月初頭に着工し、28年3月末の完成を目指す。三菱地所レジデンスが事業協力者として参画している。事業推進コンサルタントはINA新建築研究所。資金計画によると事業費は254億2000万円。  若松町1丁目地区市街地再開発組合(小勝太郎理事長)は、横須賀中央駅前に33階建て延べ約4・7万平方メートルの店舗・ホテル・住宅など複合施設を建設する。10月中旬に着工し、29年5月末の完成予定。資金計画によると事業費は304億2600万円。事業協力者として戸田建設が参画している。  このほか6地区の準備組織の活動を支援する。横須賀中央駅前地区では1994年4月に横須賀中央駅前地区再開発協議会(斉藤愼太郎会長)が発足した。三笠ビル地区は20年1月に三笠ビル地区市街地再開発準備組合(小佐野圭三理事長)を設立し、現在事業協力者の選定を進めている。  大滝町1丁目地区では14年9月に大滝町1丁目地区再開発協議会(山野井輝夫会長)が発足した。若松町2丁目地区では21年1月に若松町2丁目地区市街地再開発準備組合(石田裕樹会長)が発足した。若松町1丁目北地区では17年10月に若松町1丁目北地区まちづくり協議会(織茂明彦会長)が発足した。  久里浜第1地区は20年7月に発足した久里浜第1地区再開発協議会(橋本篤一郎会長)と、24年4月に発足した京急久里浜駅前地区市街地再開発準備組合(島田敏孝理事長)の両組織が検討を進めている。  市はこれらの支援に加えて追浜駅前再開発施設内に入る予定の(仮称)追浜駅前図書館の整備検討や、横須賀中央駅周辺のソフト・ハード両面からのまちづくり検討なども行う。 from...

西松建設ら/床版撤去を高速施工、自動水圧制御で作業時間15%短縮

 西松建設とコンクリートコーリング(東京都練馬区、小澤純社長)は、橋梁に合成桁形式で設置された床版の取り換えをさらに高速施工する「自動水圧制御システム」を共同開発した。従来の板ジャッキで床版を切断、撤去する工法を高度化。これまでは板ジャッキを膨らませるための送水を自動制御できず、板ジャッキを破損させないための目視確認や送水ポンプ稼働者への合図が必要だった。新技術によって板ジャッキへの送水量を自動制御できるようになり、床版撤去全体の作業時間が約15%短縮可能となった。  新技術では水圧制御ユニットを板ジャッキと水圧ポンプの間に配置し、分岐部には水圧の減圧を検知した場合にバルブを閉める電磁弁を配置。これに伴いひび割れが発生した際に送水を自動停止する。全バルブが閉じたことを検知後、自動的に全バルブを開放し再送水するプログラムを構築したことで、床版と主桁を均等にリフトアップ、破断する。操作も別途開発したタッチ式操作盤で施工場所から最大30メートル離れた位置からでも可能になる。  このほど実大供試体を用いた実証で施工の省人化、省力化を確認。切断後の主桁部の残コンクリートは従来に比べ約40%削減でき、主桁上のつり作業を低減することも確認した。 from 技術・商品 – 日刊建設工業新聞...

2025年3月5日水曜日

日本型枠/型枠大工雇用実態調査5人に1人が外国人材、技能継承に危機感

 日本型枠工事業協会(日本型枠、三野輪賢二会長)が行った2024年度「型枠大工雇用実態調査」で、調査対象となった型枠大工のおよそ5人に1人を外国人材が占める現状が明らかになった。20代の新規入職者は外国人材の占有率が8割を超える。調査結果を受け、日本型枠の担当者は「外国人材が日本に永住しない場合、業界全体の高齢化も相まって型枠大工の技能継承が困難な状況になる可能性がある」と危機感をにじませる。  調査は全国の型枠工事会社228社(会員222社、非会員6社)を対象に、24年11月30日時点の実態を調べた。ウェブ形式で初めて行い、回答者が前回調査(120社)を大幅に上回った。  調査対象の型枠大工は8474人。うち21%となる1762人が外国人材だった。ここ3年の調査結果を見ると、20~24歳に占める外国人材の割合は22年が28%、23年が55%、24年が71%となり、若年層での増加度合いが著しい。直近1年の新規入職者を見ると、20~24歳の85%、20~29歳の83%が外国人材となっている。  型枠解体工は、調査対象2771人のうち26%となる2053人が外国人材だった。  技能者の標準日給は、型枠大工の職長が前年度比10・6%増の1万9860円、一般技能工は6・3%増の1万5778円となり、10年の調査開始以来最高額を記録した。  業界の高齢化も進む。23年度調査まで、型枠大工の年齢で最もボリュームが厚い層は45~49歳だったが、今回の調査では50~54歳が最多となった。  日本型枠の担当者は、若手人材の外国人割合の増加と、業界の高齢化を踏まえ「型枠工事は外国人材なしには成り立たなくなっている」と指摘。日本人の若手人材に選ばれる業界になるためには、賃上げに加え、建設キャリアアップシステム(CCUS)で集積したデータを活用した専門工事会社の施工能力の見える化や、現場労働者の体に負担がかかる夏季の長期休暇制度などが有効と見ている。 from...

北海道佐呂間町/新庁舎建設基本設計策定、工事費28億円・26年度着工目指す

 北海道佐呂間町は、老朽化が進む役場庁舎の改築に向け、新庁舎建設基本設計を策定した。新庁舎はRC造2階建て延べ約2680平方メートル、概算工事費に28億1700万円を見込む。2026年4月までに事業者を決め、同5月に着工するスケジュールを見込んでいる。  永代町3の1にある現役場庁舎は、RC一部S造2階建て延べ2446平方メートルの規模で1965年に完成した。89年から3カ年で大規模改修や外壁補修などを行ってきたが、築後年が経過し老朽化が進行している。また17年に実施した耐震診断では、耐震基準を満たしていないため、大きな地震が発生した際に倒壊する危険性が高いと診断されている。  基本設計を見ると、新庁舎の建設地は現庁舎の東側に隣接する役場駐車場(敷地面積約1万2000平方メートル)。建物はRC造2階建て延べ約2680平方メートルの規模とし、1階に町民利用の窓口機能を全て集約したワンフロアサービスとする。建物中央を東西に貫くように待合スペースを設け、上部が吹き抜けの開放的な空間とする。  2階には議会機能を集約し、中央に配置する議場に隣接した大会議室は、緊急時には災害対策本部として機能転換する計画。2階共用部には、議場のホワイエを兼ねた町民開放スペースを設ける。  概算工事費に28億1700万円を試算。内訳は建築主体が16億0100万円、電気設備工事が3億7900万円、機械設備工事が3億7400万円、外構工事が3億1300万円、解体工事が1億7000万円となっている。  新庁舎の規模、概算工事費は今後の実施設計で精査する。  現時点でのスケジュールは25年度に実施設計を進め、26年3、4月に事業者を選定する予定。同5月に新庁舎の建設工事に着手し、28年2月末の完成、同5月末の供用開始を目指す。 from...

清水建設、東洋アルミ/コンクリート型枠の超撥水剤を外販、気泡や色むら抑制

 清水建設と東洋アルミニウムは、コンクリート型枠の表面に塗って水をはじく「超撥水(はっすい)剤」の外部向けの販売を開始した。杉板型枠の表面に微細な凹凸形状をつくり、撥水性能を付与する。打ち放しコンクリートの製造過程で発生する気泡や色むらを抑え、品質と美観を高める。型枠の40~60平方メートルを塗工できる1セットを26万4000円で販売する。年間50件程度の適用を目指す。  下地層と超撥水層をつくる2種類のコート剤で構成する。型枠面との密着性を高める下地に、超撥水剤を重ね塗りして使用する。コンクリートの締め固め時に内部から界面へ押し出された気泡を除去し、表層の美観を保つ。型枠を離れやすくしてコンクリートの付着を防ぎ、表層の肌荒れも防止する。  施工ニーズが高まっている「木目調コンクリート」への活用を想定する。杉板の木目をコンクリート表面に転写するため、施工の難易度が高い。超撥水剤を杉板型枠に塗布した「アート型枠」をコンクリート成形に活用し、気泡痕や肌荒れといった施工課題を解決する。  清水建設は超撥水型枠を自社施工の物件40件に適用してきた。外部販売を通じてアート型枠の導入事例を広げ、木目調コンクリート構造物の普及につなげる。 from 技術・商品 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171896 via...

2025年3月4日火曜日

堺市/堺旧港交流空間創出事業/RETOWNを選定

 堺市は堺旧港を魅力ある交流拠点へと再生する「交流空間創出事業」の優先交渉権者に、まちづくり事業を手掛けるRETOWNを選定した。今後、事業協定を締結し、2026年3月の施設開業を目指す。飲食・物販施設の整備に加え、水辺の活用を進めることで、地域のにぎわい創出と観光誘致を後押しする。  事業対象地は堺区戎島町5周辺で南海本線堺駅から西へ約500メートルに位置する「後背地A」「後背地B」「護岸」「水面」の四つのエリア。後背地Aにカフェや屋台村(2階建て延べ1558平方メートル)、同Bにバーベキュー場(3階建て延べ2310平方メートル)を設置する。  護岸エリアにはテラス席を備えた親水空間を設け、イベントスペースとしても活用する。水面エリアでは新たに桟橋を整備し、「海の駅」登録を目指す。船舶の係留サービスや桟橋ステージを活用したイベント開催も計画している。  選定に当たっては期待できる点として「地域住民の利用を起点に、段階的に観光客を呼び込む実現性の高い計画」「広域的な視点での堺旧港の活性化」「水辺の先進的な事例を取り入れた発信力」を評価。堺東エリアとの回遊性を高める狙いも盛り込まれており、大浜北町市有地活用事業との相乗効果が期待できるとした。  具体化へは市と優先交渉権者で景観やデザインの具体化を進め、大阪港湾局や地元関係者との協議を重ねる。地域飲食店との連携やエリアマネジメントの仕組みづくりも推進し、収益還元モデルを活用した護岸・水面エリアでのイベント開催など、持続的なにぎわいの創出にも取り組む。  土地の使用期間は30年間。1立方メートル当たりの月額使用単価は後背地Aが143円、同Bが147円。3月に事業協定を締結、8月に土地の使用を開始する。 from...

スコープ/川崎地質が洋上風力海底調査で新技術、安価なボーリングや船上SPTを実現

 川崎地質が、洋上風力発電の海底調査に関する新技術を開発している。着床式洋上風力発電の地質調査で鋼製櫓(やぐら)を海底に水平に置ける装置を製作し、よりコストを抑えた調査を実現。浮体式洋上風力発電では海底に装置を据え付けて行う標準貫入試験(SPT)を船から実施可能にして、固い地盤を効率良く調べられるようにした。「ボーリングと音波探査の両方を行う唯一の会社」(海洋・エネルギー事業部担当者)としての強みを生かした取り組みが進む。  着床式洋上風力発電の風車基礎のボーリング調査では、施工足場として鋼製櫓が多く使われている。櫓を水平に設置する不陸調整装置は、8カ所のスパッド(脚部)が海底に貼り付く形から、タコの脚に例えて「オクトパス」の愛称で呼ばれる。櫓の底盤の四隅などにオクトパスを複数付けることで、海底の凹凸や傾斜を補正する。海底地形に最大5メートル程度の不陸があっても鋼製櫓を安定的に設置できるようにした。櫓のサイズに合わせ、12カ所にスパッドを付けたものもある。  オクトパスを開発した背景には「調査コストを抑える狙いがあった」と海洋・エネルギー事業部の担当者は語る。海上調査で普及している鋼製櫓は安価だが、凹凸がある海底では安定性を保てない弱点がある。そうした場合は、台船を足で支えるSEP(自己昇降式作業台)が用いられる。  かつては水深30メートル以内の港湾区域での調査が主だったが、洋上風力発電の需要により、港湾区域外を対象とするものが増えている。川崎地質は2021年に最大水深50メートルまで対応できる鋼製櫓を開発した。しかし、凸凹地形では深場に対応できるサイズのSEPを組み立てなければならず、費用の跳ね上がりが著しい。そのため、深場の凹凸地形でも櫓による調査を行えるように解決策を探ってきた。  最近は広い海域を対象とした浮体式洋上風力発電への期待の高まりを受け、より深い海底の調査技術も求められるようになってきた。音波探査に使う船を多く持つ川崎地質は、船による調査の幅を広げようと模索する。海底に土台を据え付け、そこに固定した棒を通して重りを底に落とすSPTを船から行うため、実証実験に取り組んでいる。  海底の固さを調べるには、船から調査用の棒を海底に押し込んで抵抗力を測るコーン貫入試験(CPT)と、櫓などを設置して実施するSPTの両方が使われている。SPTは設計に用いるN値を直接求められるが、CPTの場合は他の数値から推定せざるを得ない。また、CPTは固い地盤に押し込めない場合もある。  そうした課題がある中、海洋・エネルギー事業部の担当者は「小回りが利く船からSPTを行えば、確実なデータを短時間で取得できる」と話す。地質にワイヤを差し込んでサンプルを採取する「ワイヤーライン工法」を応用してSPTのツールを海底に下ろす技術を開発し、現在は陸上で実証実験を行っている。実験データは、今夏の全国地質調査業協会連合会(全地連)の発表会で公表する予定だ。  実験データを基に、SPT設備を現在保有している船に適合するように整え、実装につなげる。ワイヤーライン工法を活用し、他の調査会社とコラボレーションした海底地質のサンプル採取も計画中。ボーリング調査の技術と、音波探査に使う船などを生かし、拡大する洋上風力発電関連の需要を取り込める体制の確立を目指す。 from...

NTT都市開発ら/ジーライオン・アリーナ・コウベが竣工、設計・施工は大林組

 神戸市中央区のウオーターフロント地区で進められてきた「神戸アリーナプロジェクト」(新港突堤西地区〈第二突堤〉再開発事業)が完成し、3日に竣工式が開かれた。NTT都市開発とスマートバリュー、NTTドコモの3社コンソーシアムが神戸市から借地し、民設民営のアリーナを整備。4月に開業し、ワン・ブライト・コウベ(神戸市中央区、渋谷順社長)が50年間の施設運営を手掛ける。設計・施工を大林組、CM(コンストラクションマネジメント)業務を山下PMCが担当した。  建設地は新港第2突堤(新港町2の1)。施設名称は「GLION ARENA KOBE(ジーライオン・アリーナ・コウベ)」で、S・SRC造7階建て延べ約3万2000平方メートルの規模。突堤の敷地条件を生かし3方向を水辺に囲まれた、港町・神戸を象徴する施設となる。関西最大級の約1万人を収容し、プロバスケットボールBリーグの神戸ストークスの本拠地や音楽イベント、MICE(国際的なイベント)の開催などに対応する。  式典では池田康NTT都市開発社長と渋谷社長、久元喜造神戸市長、木下雅幸山下PMC取締役兼専務執行役員、蓮輪賢治大林組社長が玉串をささげ、新たな施設の完成を祝った。  池田社長は「アリーナは当社で初めての物件。当初予定通りに完成し、感無量の思いだ」、渋谷社長は「この素晴らしいアリーナに恥じないよう、神戸ストークスのチーム強化を図っていきたい。安全・安心の施設運営に努め、市民のコミュニティーを育む拠点を形成していく」と話した。久元市長は「アリーナ内部に広がる壮大な非現実空間に圧倒された。神戸空港の国際チャーター便の就航開始という絶好のタイミングで開業できることに感謝している」と述べた。 from...

2025年3月3日月曜日

回転窓/聞くことの大切さ

 職場の業務効率化などに円滑なコミュニケーションは欠かせない。そのために組織内でさまざまな取り組みを行っているものの、なかなか思う通りにはいかないのが現実かもしれない▼避けなければいけないのは伝えたい内容が正しく伝わらず、ミスや事故につながってしまうこと。いわゆるコミュニケーションエラーをどう防ぐかは大きな課題だ▼例えば聞き間違いを防ぐには、言われたことを繰り返し唱える復唱が有効な方法の一つとされる。簡単にできる確認方法だが、復唱を有効に機能させるポイントは、指示や情報の受け手ではなく伝える側にあるようだ▼指示者は自分からの指示が終わると他に注意が向き、受け手が誤った復唱をしていても気付かないケースがある。指示を出すだけでなく、復唱された内容を注意して聞くことが重要という。そうした復唱などコミュニケーションエラー対策は鉄道総合技術研究所「人間科学ニュース」(第206号)に解説されている▼きょう3月3日は数字の語呂合わせで「み・み(耳)」の日。ミスの防止や安全確保にしっかり聞くことが大切と改めて認識する一日にもしたい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171834 via 日刊建設工業...

凜/丸本組土木部土木課工事主任・加藤宏江さん、気持ち強く持ってチャレンジを

 東日本大震災の発生から約2年後の2013年、現場事務の担当として入社した。持ち前の明るい性格と高いコミュニケーション能力で事務所の運営をテキパキとこなす姿が評判になり、現場監督の先輩社員から土木技術者になることを勧められた。  専門教育を受けた経験はなく「初めは興味本位だった」のが正直な気持ち。ただ「やるからには負けたくない」と一念発起して努力を重ね、社内初の女性土木技術者として工事を切り盛りする立場になった。  事務職から技術職への転身は決して平たんな道のりではなかった。写真撮影や生コンクリートの品質チェックなど施工管理の基本を一から学び、土木施工管理技士など資格取得もコツコツと続けた。陸上だけでなく海上の工事にも携わり「現場の経験を積めば積むほど自分が関わる仕事の重要性を実感した」。艱難(かんなん)辛苦を乗り越え、一線級の技術者として一目置かれる存在になった。  技術者として歩み始めたばかりの頃、現場で活躍する女性はまれな存在だった。時は流れて現在、工事現場は年齢や性別に関係なく誰もが活躍できる環境になってきた。次代を担う若手の指導も大切な役目になっている。胸に秘めるのは「より多くの女性に建設業へ興味を持ってもらい、チャレンジしてほしい」という思い。4月には女性技術者が土木部に配属予定といい、対面できる日を楽しみにしている。  (かとう・ひろえ) from...

国交省/増額変更の適正性チェック導入、直轄本官工事で試行

 国土交通省は直轄工事の契約変更手続きの透明性を確保するため、契約変更前に受発注者以外の第三者が適正性をチェックする新たな仕組みを2025年度に導入する。工事規模が比較的大きな支出負担行為担当官(本官)発注工事を対象に、設計変更で大幅な増額や工事区分・場所の追加を伴うケースについて第三者の視点から適正かどうか事前確認する。当面は各地方整備局などで試行的に運用し、第三者の関与による進行中の工事への影響などを見極めながら、継続的な課題抽出と改善に取り組む。  土木や営繕、港湾・空港関係を含む直轄工事のすべての分野で試行する。個別工事の契約変更で請負代金が当初額の2倍以上となるケースに加え、例えばトンネル工事に橋台工事を付加するような工事区分の追加があったり、工事場所に隣接地などが追加されたりするケースを漏れなくチェック対象とする。  第三者となる学識者や有識者は、各地域の実情を考慮し整備局などの発注者が選定する。委員会形式や個別ヒアリングなど意見の聴取方法は発注者に委ねるが、必ず複数人をチェックに介在させる。適正性の判断基準として、まずは変更理由の妥当性を確認する。工事区分・場所を追加するケースでは、既契約の工事内容と分離した施工が著しく困難かどうかも確認する。意見聴取の結果は、契約変更の内容とともにインターネットで公表する。  一連のチェックのプロセスで、受注者に通常業務と異なる負担がかかることは想定していない。ただし進行中の工事が滞るなどの影響は避ける必要があり、試行課程で第三者や受発注者双方の意見を踏まえ仕組みの改善を図っていく。  こうした仕組みの導入の背景には、公共事業の全体事業費と個別工事の契約額の大幅な増額変更が話題に上がった24年の国会審議がある。公共工事品質確保促進法(公共工事促進法)改正案の採決に併せて、第三者が適正性をチェックする仕組みの導入で適切な措置を講じるよう、衆参両院の国土交通委員会で決議されていた。 from...

三河島駅前北地区再開発(東京都荒川区)、特定業務代行者を募集/組合

 東京都荒川区の三河島駅前北地区第一種市街地再開発組合(松本香理事長)は3日、特定業務代行者の募集を始める。施設の実施設計や施工、未処分保留床の処分、事業推進のための支援などを任せる。応募書類を14日までに三河島駅前北地区特定業務代行候補者選定審査委員会事務局(全国市街地再開発協会内、港区新橋6の14の5)に持参する。組合は2026年4月の着工、29年12月の竣工を見込んでいる。=発注公告別掲  募集には単体かJVが参加できる。応募書類の様式は同協会のホームページ(https://www.uraja.or.jp/)で配布する。  計画地はJR常磐線三河島駅の北側に位置する西日暮里1の4ほか(区域面積約1・5ヘクタール)。再開発ビルは地下1階地上43階建て延べ8万9900平方メートルの規模。  共同住宅や店舗、公益施設(多目的アリーナ)が入る予定。1階から3階までは地域の生活利便性を高める商業施設や生活サービス施設、子育て支援施設などに充てる。4~43階の共同住宅のうち、4~7階には高齢者向けの住宅を整備する。  防災計画の一環として、施設共用部分に帰宅困難者の受け入れスペースや防災備品の備蓄場所を設ける。参加組合員は▽三井不動産レジデンシャル▽野村不動産▽三菱地所レジデンス▽コスモスイニシア-の4社。事業コンサルタントはポリテック・エイディディと都市ぷろ計画事務所のJV。基本設計は日建ハウジングシステムが担う。 from...

NTT、鹿島ら/手術の遠隔支援を実証、大容量・高速通信技術を活用

 NTT、鹿島ら5者は通信容量が大きく遅延も少ない「IOWN APN接続」を使い、青森県津軽地方の約30キロ離れた2カ所の病院間で手術を遠隔支援する技術を実証した。オールフォトニクスネットワーク(APN)と従来のギャランティー型回線を比較し伝送遅延性能は約4倍、最大遅延ゆらぎ性能では120倍以上となり良好な通信品質を保てることを確かめた。APNの特性上、さらに長距離でも効果を期待できる。  NTT、NTT東日本、弘前大学医学部付属病院、メディカロイド、鹿島による共同実証。鹿島は自社開発した立体音響スピーカー「OPSODIS1」の提供と技術協力を担った。  実証では五所川原市のつがる西北五広域連合つがる総合病院と、弘前市の弘前大病院を、NTT東日本のAPNで接続。つがる総合病院にいる医師が手術ロボットを遠隔操作し、弘前大病院の患者に見立てた人工臓器モデルを「手術」。安定した通信品質により、臨場感のある円滑なコミュニケーション環境を実現した。  弘前大病院の袴田健一院長は「距離を感じないほどの臨場感に驚いた。日本全体が一つの手術室のようになれば、患者さんはどこにいても質の高い医療を受けられ、若手医師も場所を選ばずに手術指導を受けられる」とコメントした。 from 技術・商品 –...

主要ゼネコン35社25年度新卒採用、3年連続増も競争激化/本社調べ

 日刊建設工業新聞社が主要ゼネコン35社を対象に実施した人材採用アンケートによると、今春入社予定の新卒採用者数(大卒、高卒などすべてを含む)は前年度比678人増の4757人と3年連続で増加した。技術系は603人増の3981人となった。ただ採用目標の達成度を示す充足率が100%を上回ったのは14社にとどまる。売り手市場が続く中、各社とも優秀な人材確保に心血を注ぐ。  アンケートは1~2月に実施した。旺盛な建設需要が追い風となり、27社の採用数が前年を上回った。一方、21社が採用目標を達成できなかった。多くの社が他産業や同業他社との採用競争が激化している状況を指摘した。  各社は待遇改善で働きがいを高め、採用の競争力を強化する。初任給は21社が今春に「引き上げた」と回答した。大卒総合職の初任給は、鹿島、大林組、大成建設、清水建設、竹中工務店、奥村組、西松建設、東洋建設、ピーエス・コンストラクションの9社が30万円の大台に乗せる。大林組は賃金のベースアップや賞与の増額分を中堅と若手に手厚く配分し、入社後の定着率向上につなげる。  2026年春以降を見据えた今後の採用方針は「技術系職員(特に施工管理)の人員が不足している」(熊谷組)、「今後定年退職者の増加が見込まれる」(鉄建建設)などを理由に16社が「増やす」と回答した。「横ばい」とした企業では「事業計画に即した採用人数を計画している」(五洋建設)、「各年の採用数を一定にし、バランスの良い社内人数の構成にしたい」(戸田建設)などの理由が挙がった。  採用活動では、各社ともあの手この手で工夫を凝らす。東急建設は文系学部から技術職を採用。奥村組は施工管理職の募集対象を建築・土木系学科に限定せず、採用の門戸を広げる取り組みを試行した。テレビCMの放映やSNSの積極活用によって学生の認知度向上を目指す企業も多い。  中途採用も積極的に行う。従業員が求職中の友人を企業に紹介する「リファラル採用」や、退職者を再雇用する「アルムナイ採用」を取り入れる社が増えている。 from...

2025年2月28日金曜日

回転窓/観光客のスムーズな移動

 日本の上空に長く居座っていた強烈な寒波から一転、今週末は全国的に気温が上昇し4月ごろの陽気になるところもあるそうだ。再び寒さが戻るとの予報だが、春の足音が聞こえ始め旅行を計画する方もおられよう▼観光シーズンは車の利用者が増え、交通渋滞に悩まされることも少なくない。国土交通省が平日と比べ休日に車で訪れる人が多いエリアを対象に、都道府県別の立ち寄り客数ランキングや交通状況が示された見える化マップを提供している▼ETC2・0のデータを分析したランキングで、例えば静岡県は東伊豆エリアが休日に車で訪れる人が最も多く、富士山や浜名湖のエリアもランクイン。見える化マップでは伊豆、富士山のエリアで混雑の区間・地域があり、休日に目的地への移動に要する時間の増加傾向が現れている▼ランキングに入ったエリアは魅力があり多くの人を引き寄せるが、混雑する区間・地域とも重なる。交通インフラの整備拡充が進めば観光地の活性化にもつながるだろう▼全国各地には雄大な山河やおいしい食べ物など多様な観光資源が存在する。観光客のスムーズな移動もその一つになる。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171746 via 日刊建設工業...

中建審WGで業界団体らが意見/賃金確認の第三者機関検討を、対応コスト増に懸念も

 改正建設業法で定める「労務費に関する基準(標準労務費)」の実効性確保策の一環として適正な労務費・賃金の行き渡り方策を議論した26日の中央建設業審議会(中建審)のワーキンググループ(WG)で、技能者への賃金支払いの確認や適正化指導の実施主体として第三者機関の設立が適切との意見が複数の建設業団体からあった。各団体は建設業者全体をカバーした調査・指導の必要性を強調しつつも、国土交通省の建設Gメンを補完するような役割を既存の業団体が担うことは困難との見方を示した。=2面に関連記事  国交省が適正な賃金支払いを促進する業団体などの自主的な活動を提案したことに、日本建設業連合会(日建連)や全国建設業協会(全建)が返答した。  日建連の白石一尚人材確保・育成部会長の代理で出席した相良天章賃金・社会保険加入推進専門部会座長は、調査・指導の実施主体に「適切な権限と体制が必要で既存の業団体にはふさわしくない」と指摘。適正な労務費を行き渡らせる観点で最上流の発注者を含めた支払い状況の確認が必要な場合、「業団体の立場で民間発注者を指導するのは現実的ではない」とも話し、中立的機関への委託などが望ましいとした。  全建を代表し出席した荒木雷太岡山県建設業協会会長は、各都道府県協会では会員企業数や体制面から「建設Gメンを補完する役割を担う効果は見込めない」との見解を示し、代替策として「Gメンを補完する組織を国交省から外部委託するか、建設業者全体を指導できる第三者機関の設立を検討してほしい」と要望した。岡山建協で昨年12月から「Gメン通報制度」を運用しているが、業団体の関与がリスクと認識され通報件数が少ない可能性があるとし「別団体で運用する方がいいと思う」と話した。  WGでは第三者機関などの設置をコスト面などから懸念する声も上がった。岩田正吾建設産業専門団体連合会(建専連)会長は「契約当事者間の納得が最優先」と強調。例えば下請が賃金台帳や就業規則を開示して元請に説明し、適切な行き渡りを担保すべきとした。  学識者から西野佐弥香京都大学大学院工学研究科准教授も、賃金支払いを確認する組織の新設や制度の導入が「書類作成の経費の増加を招き、ひいては工事費上昇に拍車を掛ける」可能性を指摘。契約当事者間で賃金支払いを約束する「コミットメント」などの取り組みに重きを置き、行政主体が支援する方法が望ましいとした。 from...

大阪市/国際見本市会場インテックス大阪、改修方針等検討業務プロポ公告

 大阪市は、老朽化が進んでいる国際見本市会場「インテックス大阪」(住之江区)の改修を検討する。IR(統合型リゾート)が立地する夢洲(此花区)ではMICE(国際的なイベント)施設の整備計画が進んでおり、今後の展示会や見本市開催の動向、MICE施設との役割の違いを分析し、施設機能や必要規模を検討する。26日に「国際見本市会場(インテックス大阪)の改修方針等の検討業務」の公募型プロポーザルを公告した。3月21日まで参加申請を受け付け、4月下旬に選定結果を通知する予定だ。  インテックス大阪は1985年に開業した西日本最大の見本市会場。今年で40年を迎えるが、建物や設備の経年劣化が進み、機能面でも陳腐化している。他都市では次々と新たな展示館の建設が進んでおり、都市間競争力の低下が懸念されている。  一方、夢洲ではIRが開業する2030年に2万平方メートルの展示施設が整備され、その後も段階的に拡張が予定されている。  今回の業務ではIRのMICE施設の拡張計画を踏まえ、見本市会場に求められる施設機能や必要規模を整理し、改修方法を比較するとともに、調査結果を踏まえ、最適な事業手法を検討する。  プロポーザルは単体かJVが参加可能。参加資格はMICE施設の整備を目的とした基本構想や調査検討業務、地方自治体が策定した行政計画策定支援業務の履行実績がそれぞれ1件以上あること。3月28日に資格審査結果を通知し、4月4日まで企画提案書を受け付ける。プレゼンテーション審査は同23日に実施する予定。  業務内容は▽現状のインテックス大阪の課題と主催者ニーズの整理▽今後25年間の府内展示会などの開催見込み件数の算出▽IRのMICE施設と公的展示施設で開催される展示会の違いの分析▽MICE施設開業後のインテックス大阪の催事開催動向と収支予測▽MICE施設開業後を見据えた必要規模▽最適な事業手法の検討-など。事業手法は指定管理者制度やDBO(設計・建設・運営)方式、コンセッション(公共施設等運営権)方式のPFIなどを含めて検討を進める。  契約期間は12月1日まで。契約上限額は1650万円(税込み)を予定。 from...

鹿島/PCaPC床版の3Dモデル自動生成システムを開発、道路橋更新で時間短縮

 鹿島は、道路橋の床版取り換え工事でプレキャスト・プレストレストコンクリート(PCaPC)床版の3Dモデル自動生成システムを開発した。道路線形(道路全体の座標、長さ、角度)や、鉄筋などの数値情報を入力するだけでPCaPC床版の3Dモデルを生成。部材同士が干渉しないよう自動で配置する。生成した3Dモデルに床版取り換え前の3D測量点群データを取り込むことで、現況と設計値のずれを容易に把握。このため設計に関するシミュレーションが数値の再入力だけで短時間で行える。  同システムは床版の3Dモデル生成だけでなく、鋼桁の3Dモデルの生成や測量データの取り込みによる現況と設計の差分解析・修正も可能。システムに建設当初の鋼桁手書き図面から読み取った部材厚・幅などの数値を入力することで、さまざまな鋼桁の3Dモデルを生成できる。  床版と鋼桁の干渉チェックは、2Dの図面で行う場合と比べ設計業務の生産性が大幅に向上する。3Dモデル上に測量データ(点群情報)を取り込めば、差分解析により橋梁全体の現況と図面のずれを瞬時に数値で把握。数値を打ち換えるだけで、現況に合わせた微調整を瞬時に設計へ反映できる。  同社は、同システムを「阪和自動車道(特定更新等)雄の山第1橋他16橋橋梁更新工事(設計業務その1)」に適用した結果、これまで熟練のCADオペレーターが手作業で実施していた繰り返し検討の時間が10分の1程度に短縮した。BIM/CIMモデルが同時に完成するため、施工方法の検討や発注者などとの協議にも期待できる。  同社は今後、同システムを複雑な道路線形の橋梁や、PCaPC床版の製作と架設の施工計画に展開。同社開発の「スマート床版更新(SDR)システム」と連携させた情報化施工の技術開発も進める。 from...

2025年2月27日木曜日

回転窓/万博のおにぎり

 伝統食のおにぎり。米どころの一つ新潟県村上市が「種類は無限大」と広報紙で紹介していた▼市は「鮭(サケ)のまち」としても知られる。同市を含む岩船地方産のごはんを丸め、具には代表料理の「塩ひき鮭」のほぐし身、薄口しょうゆを霧吹きでかけてから岩のりをまとわせる。アルミホイルでくるんだ同市の「岩のりおにぎり」は、国内外にファンがいると聞いた▼大阪・関西万博の開幕が近づいてきた。迎える日本側の取り組みが活発化し、万博を地域の魅力発信やインバウンドの増加にもつなげようと、全国でさまざまな会合が行われている▼内閣官房は14日に「万博地方創生シンポジウム」を東京都内で開いた。「地方の決起集会」として、自治体担当者が期待を話すパネルディスカッションや、地域の魅力を伝えるポスター展示などを実施し、開催の機運を高めた▼村上市は「共創おにぎり」と銘打った活動をシンポジウムでアピールした。大阪府松原市など4市と連携し、各地のおにぎりを万博会場で提供。味とともに地域の文化や歴史を知ってもらうという。おにぎりで良縁が結ばれ世界に魅力が伝わるといい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171712 via 日刊建設工業...

川崎市/臨海部交通機能強化、扇島大規模土地利用転換など受け実施方針改定へ

 川崎市は「臨海部の交通機能強化に向けた実施方針」を改定する。JFEスチールの高炉休止に伴う大規模土地利用転換などを受け、アクセス道路や幹線道路整備などを新規に盛り込む。市総合計画や総合都市交通計画など上位計画との整合をとりながら、10月にも素案をまとめ、2026年3月の改定を目指す。  10日の市議会総務委員会で中間取りまとめを報告した。21年3月に策定後、大規模土地利用転換や新たな企業立地など、取り巻く環境の変化を踏まえた改定。23年6月に改定した臨海部ビジョンの実現に向けた中長期的な方向性と、今後5年間の取り組みなどを新規事業に加える。  中間取りまとめによると、道路機能強化で新規に4項目を盛り込む。臨海部幹線道路の検討ではJFEスチール東日本製鉄所京浜地区(川崎区扇島、約222ヘクタール)の大規模土地利用転換の機会を捉え、臨海部幹線道路の実現を目指す。臨海部地域内や羽田空港方面へのアクセス向上と周辺道路の交通分散を図る。  扇島地区土地利用転換に伴う道路整備では、一部土地利用開始に向けた道路整備を進めるとともに、段階的に島内の道路機能を強化する。扇島と東扇島をつなぐアクセス道路、島内を移動するための幹線道路、バースと幹線道路をつなぐ臨海道路などの整備を検討する。  関連する国道357号(扇島内)早期事業化では関係機関との調整を進める。対象となる路線は臨港道路東扇島水江町線、国道357号(多摩川トンネル)、首都高速湾岸線扇島出入り口、国道357号(扇島内)、国道357号(未着手)、内陸部アクセス道路(扇島~扇町間)(構想)など。  このほか路上駐停車対策など既存道路を効果的に活用するための取り組みも進める。 from...

土木学会・佐々木葉会長、八潮陥没事故受けメッセージ/広い視点で議論へ対話の場準備

 土木学会(佐々木葉会長)は26日、埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受け、佐々木会長による会員向けのメッセージ動画=写真=をユーチューブに公開した。佐々木会長はインフラの老朽化などによるリスクについて「広い視点からの議論が必要」と指摘。今後、インフラメンテナンスとマネジメントに取り組むに当たり「対話と議論の場を準備する」考えを示した。  佐々木会長は2012年に発生した笹子トンネル天井板崩落事故にも言及し、今回の事故について「それに匹敵する衝撃を社会に与えた」と事故の深刻さを強調。「現在も続く事故への対応や構造物の健全性確保にとどまらず、より広い観点からの議論が必要」と提言した。  議論に当たって必要な視点として、道路の地下には目に見えないインフラが存在することや、これらのインフラの整備や維持管理には費用がかかり、その費用負担の仕組みが分かりづらくなっていること、インフラ整備には幅広い人の理解と合意が必要であることなど6点を列挙した。  六つの視点からの議論には幅広い分野の土木技術者の力を生かす必要があるとし、「インフラメンテナンスとマネジメントのための広い意味での技術に取り組むため、対話と議論の場をこれから準備する」考えを示した。  会員に対しては「『自分ごと』として下水道などの身近なインフラとどう向き合うか、職場、家族、近所などの身近な人と話してほしい」と呼び掛けた。 from...

JR四国/旧研修センター跡地開発(高松市)、学生会館など5棟建設

 JR四国は、旧研修センター跡地(高松市西宝町2の375の2ほか、敷地面積約1万平方メートル)の開発に乗り出す。多世代型の居住エリアとして、学生専用食事付き賃貸マンション(学生会館)とサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、一般賃貸住宅の全5棟(総延べ約1万1000平方メートル)を建設する。2025年度中の完成を目指す。  学生会館の「(仮称)ドーミー高松西宝町」はRC造5階建て延べ3898平方メートル、139戸。26年2月末の完成を予定する。設計監理は共立エステート、運営管理は共立メンテナンス。サ高住の「(仮称)ココファン高松西宝町」はRC造6階建て延べ4295平方メートル、80戸。26年3月末の完成予定。設計監理はシスケア、運営管理は学研ココファン。施工はいずれも合田工務店が担う。  一般賃貸住宅は「(仮称)J.リヴェール高松西宝町」のA、B、C棟。軽量S造3階建て延べ849~1166平方メートルで各棟とも18戸。設計・施工は大和ハウス工業、運営管理は大和リビング。12月末の完成を予定している。  同社は非鉄道事業の収益拡大に取り組んでおり、東京都品川区で首都圏2棟目となる収益用不動産を取得し1月末に運営を開始した。 from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171715 via...

熊谷組/アースドリル評価技術26年度にも実装へ、瞬時に支持層到達を確認

 熊谷組が雄正工業(東京都新宿区、二川和雄社長)と共同開発したアースドリル工法の評価測定技術の現場実装に向け動いている。場所打ちコンクリート杭が支持層に達したかどうかを、掘削データから算出した数値と建物計画時の試験値とを比べて確認する技術だ。両社は施工管理者がパソコンを使いリアルタイムに確認できるシステムを、2026年度の現場実装を目指し開発している。  場所打ちコンクリート杭のアースドリル工法は、ドリリングバケットを回転させて掘削し、バケット内に収められた土砂を引き上げて地上に排出する仕組み。両社が開発した「熊谷式アースドリル工法掘削抵抗測定技術」は、ドリリングバケットの掘削深度と回転トルク、回転数を計測し掘削抵抗値を随時算出する。掘削抵抗値を建物計画時の標準貫入試験で測ったN値と定量的に比べ、支持層への到達度合いを測る。  両社は22年に技術を開発し、日本建築センターの建設技術審査証明(建築技術)を取得。これにより掘削深度と回転トルクの計測結果から算出した積算回転トルクによる掘削抵抗値と、地盤調査結果で得たN値を比較し、回転数の計測装置を搭載しない重機でも適用できるようになった。24年12月24日付で建設技術審査証明(建築技術)を更新した。  両社は今後、支持層に傾斜や不落が予想される地盤などでの活用を想定。評価技術の現場実装によりデータを蓄積し、施工品質を高めていく。 from...

2025年2月26日水曜日

ID&EHD/東京海上HDの子会社化で新ビジネスモデル、民間防災コンサル本格展開

 ID&Eホールディングス(HD)が東京海上HDの子会社となり、建設コンサルタント分野で培った経験・技術と損害保険サービスを掛け合わせた新ビジネスモデル「民間防災コンサルティング」を本格展開する。東京海上HDによるTOB(株式公開買い付け)が5日に成立、13日に連結子会社となり5月にも臨時株主総会を経て完全子会社となる見通しだ。今後、両HDの経営資源や顧客ネットワークを積極活用し、発災前の防災・減災の取り組みや発災後の復旧・復興対応で新たな商機を探る。既にHDの事業会社らで構成する分科会を中心にサービスモデルの検討に入った。市場や顧客のニーズを見定めつつ、潜在需要の掘り起こしを進める。  民間防災コンサルティングでは、顧客が展開する事業や保有施設などの災害リスクの分析評価や点検といった事前領域から、発災後の保険金支払いや復旧などの事後領域にわたるサービスを一貫して提供する考え。日刊建設工業新聞の取材に応じたID&EHDの新屋浩明社長は「数年先まではある程度の事業量が見込まれ、現在の体制でもやっていけるだろうが、2030年以降は成長していけるか見通せない」と分析。公共分野など従来事業に引き続き注力する一方、民間顧客との接点を増やし新事業の拡大で中長期的な成長ビジョンを描く。  現在、損保会社の災害関連サービスの中心となっているのは、発災後の保険金の支払いだ。「津波や液状化などのリスク評価、被害を防ぐための点検といった発災前の対策までカバーすれば、より顧客のニーズに寄り添った保険サービスを提供できる」と新屋社長。「当社グループには災害の事前領域に対応した多種多様な工学技術があり、発災後の復旧に関するノウハウも生かせる」と自社の強みをアピールする。  ID&EHDは民間防災コンサル分野での事業化を主導するビジネス協業全体会議の下にビジネス協業分科会を設置。現在、分科会は防災(構成企業・日本工営)、都市空間(日本工営都市空間、日本工営)、エネルギー(日本工営エナジーソリューションズ、日本工営)の三つで構成する。東京海上HDと協力連携し提案内容を擦り合わせながら互いの強みを生かしたサービスを検討していく。  ID&EHDは東京海上HDが国内外に持つ顧客ネットワークを生かし民間市場への参入拡大を目指す。人口減少や社会保障費の増大などで公共事業関連予算の増加が期待できない中、民需の開拓を急ぐ。新屋社長は「民間事業へのアクセスは公共事業よりもはるかに難しい」とし、完全子会社化がデータや人材を共有しながら仕事をするための最善策になると判断。今回のTOBに当たり「行動できるのは業界に余力がある今しかなく、『やらないリスク』を考えた。私たちは技術を、東京海上HDは保険を通じて、世のため、人のため、同じ目線で社会貢献に取り組んでいる企業であることを確認できた」と振り返る。  民間市場では公共発注のような仕様書などはなく、提案力とスピードがより問われる。これまでにないソリューションの提供に向け、まずは両HDで互いのことをより深く知りながらシナジー(相乗効果)を追求していく方針だ。 from...

ハタコンサルタント・降籏達生社長に聞く/教育充実で定着率向上へ、全国7会場で研修

 建設業界の喫緊の課題の一つである人材の確保・育成。官民一体で地道な取り組みが進められているが、離職率の高さも見逃せない問題だ。全国で企業向けのセミナーや新入社員教育などに長年携わっている降籏達生ハタコンサルタント社長に問題点などを聞いた。  --会社設立の経緯は。  「小学生の時に映画『黒部の太陽』を見て土木の道に進んだ。岐阜県養老町の排水機場の現場を皮切りにダムや橋梁などさまざまな現場を経験したが、阪神・淡路大震災で故郷の惨状にショックを受け1995年3月に会社を立ち上げた」  「当時の建設業界は、研修など体系的に学ぶ風土がなかった。学びの場は現場で私自身も非常に苦労した。入札・契約制度が変わり企業に技術力が求められるようになり、特にここ10年は技術研修の熱が高まってきたと感じる。弊社は名古屋市内に本社を置くが、全国で技術研修や技術コンサルティングを行っている」  --建設業界が抱える課題は。  「一番の問題は定着率の低さだ。入社後3年以内の離職率は大卒で3割、高卒で5割。残業が多く休日が少ないといった点は改善されつつあるが、それでも定着しないのは、社員教育を行っておらず新入社員が成長を実感できていないことが要因だ。このため、建設技術者のキャリア別能力向上システムを作成し企業に配布している。土木や建築などの業種、現場事務職、専門工事技術者を対象に、キャリアに応じて求められる能力と育成方法を体系立てて記した。新入社員を5年で一人前に育ててほしい」  「弊社では『新入社員育成2カ月コース』を設けている。社会人としての基本と現場ですぐ使える基礎知識が身に付く建設業に特化した研修だ。建設業特有の専門知識やノウハウを身に付けてもらう。今回は内容に応じA~Dの4コースに分けたが、研修で得た知識を現場で実践する建設業に合った教育方法だ。1クラス約40人で行っており、仲間ができることで定着率も上がる。今年も札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の7会場で4月から行う。オンラインでも実施する」  「動画研修受け放題システム『ハタコンムービー』も若者に好評だ。月額740円のサブスクリプションで、現場で分からないことはスマートフォンやタブレットで確認できる。企業にとっては採用ツールの一つになっている。教育経費を惜しまない企業は伸びている。新入社員も自分のスキルに応じて求められる内容、達成度が理解できると仕事の楽しさ、やりがいを感じるはずだ。全部理解すれば一人前になれる、と思うことが『希望』につながるのではないか」  --外国人技術者の活用は。  「ベトナム人技術者への支援や日本企業との橋渡しを行っている。現地の大学と提携し土木、建築、電気を学んだ後、われわれが設立した日本語学校で1年間教育を受けた優秀な人材をオンラインで面接し、紹介している。就職後、2年で2級土木施工管理技士に合格した人もいる。日本の高い技術力を学びたい人は多く、意識も高い。前向きで優秀なベトナム人技術者に触発され、会社全体の意欲が高まった企業もある。今後も積極的に支援する」  --会社が目指すものは。  「全国各地で自然災害が多発し激甚化している。自然災害は止められないが、被害は最小化できる。日本の国土や生命、財産を守ることが建設業の使命。そのための技術力を高めることがわれわれの仕事だ。建設業は不人気な業種であることは事実だが、将来は子どもたちがなりたい仕事のベスト3に建設業が入ることが私の夢であり目標だ。そのためには建設会社や働く人たちが、技術や身だしなみも含め『かっこよく』なる必要がある。世間から見てかっこ良く、子どもの憧れになるような建設業、建設技術者になるための支援を行っていきたい」。 ◇  (ふるはた・たつお)1983年大阪大学工学部土木工学科卒、熊谷組入社。阪神・淡路大震災を機に95年退社、同年ハタコンサルタントを設立。兵庫県出身、63歳。 from...

銀座6丁目エリアで建替計画が複数始動/ブリオーニ銀座ビル、銀座能楽堂飯島ビル

 JR有楽町駅の東側に位置する銀座6丁目エリアで、複数の建て替え計画が始動した。対象はブリオーニ銀座ビルと、銀座能楽堂飯島ビル本館の2棟。ブリオーニ銀座ビルはヒューリックの発注、五洋建設の施工で15日に解体着手しており、11月末の解体完了を目指す。銀座能楽堂ビルは建て替えを理由にテナントの退去が進んでいるが、工事のスケジュールは明らかになっていない。  ブリオーニ銀座ビルの所在地は銀座6の5の1。建物はSRC造地下1階地上8階建て延べ2178平方メートルの規模。1980年に建てられ、飲食店や美容室といったテナントが入っていた。  銀座能楽堂飯島ビル本館の所在地は銀座6の5の15。建物は地下1階地上9階建ての規模。個人の発注で1972年に竣工した。飲食店や物販店舗などが入っており、うち生活用品を扱う順理庵はビルの建て替えを理由に2024年11月休業した。その他のテナント退去も進み、現在は大半が空室となっている。  外堀通りを挟んだ向かいでは東京都港区内の個人が、丸源14ビル(銀座7の3の9)を解体中。霞ケ関キャピタルも丸源54ビル(銀座8の3の7)を解体している。同通りのさらにJR新橋駅側では、ヒューリックの「(仮称)G8開発計画」も進展。沿道の風景は今後数年で一変することになりそうだ。 from...

2025年2月25日火曜日

スコープ/JFEエンジ、笠岡モノパイル製作所が25年度下期から本格稼働

 国内唯一の着床式洋上風力発電施設のモノパイル(基礎構造物)製造拠点であるJFEエンジニアリングの笠岡モノパイル製作所(岡山県笠岡市)が、2025年度下期の本格稼働を予定している。24年3月の開設から1月までに、4本の実物大モックアップを試作。国内の主要な洋上風力発電プロジェクトの停滞に伴い現時点で正式な受注はないものの、上野秀治所長は「今は助走期間。作業者の育成や技術のブラッシュアップを進めている」と語る。カーボンニュートラル社会の実現へ再生可能エネルギーの需要は高まり続ける中、初の受注に備えて超重量構造物の量産体制を整えている。  モノパイル式基礎は風車タワーを海中で支えるモノパイルと、タワーとモノパイルを接続するトランジションピースで構成する。モノパイルは厚さ100ミリ以上の分厚い鋼板を加工するため、量産には高い技術力が要求される。JFEエンジニアリングは洋上風力発電市場の拡大を見据え、モノパイルの艤装(ぎそう)を担う津製作所(津市)の設備拡充を含めて約400億円を投資した。  笠岡モノパイル製作所はJFEスチール西日本製鉄所福山地区(広島県福山市)の東側敷地内にある。瀬戸内海に面した20ヘクタールの敷地には▽素管工場▽研掃・塗装工場▽長管エリア▽保管エリア▽事務所棟▽出荷バース-があり、モノパイルをつくり搬出するまで効率的に運用できるよう施設を配置している。素材となる大単重厚板「Jテラプレート」は、主に同社西日本製鉄所倉敷地区(岡山県倉敷市)から供給を受ける。  モノパイルは最大で直径12メートル、長さ約100メートル、重さ約2500トン、板の厚さ130ミリのサイズを製造可能。週1本のペースで年間約10万トン(約50本)の製造能力を持ち、初年度は約8万トンを見込む。フル稼働時には400人程度の新規雇用が期待されている。  1月30日に報道陣に内部を公開した。広い空間には洋上風力発電が盛んな欧州製の工作機械を中心に、200トンガントリークレーンや鋼板をパイプ状に巻き上げる装置で世界最大級の「ベンディングローラー」といった最新鋭装置が工程に沿って整然と並ぶ。  素管工場内はA、B、Cの各棟に分かれる。まずA・B棟で鋼板をつなぎ合わせた後、ベンディングローラーで巻き上げてリング状の「単管」を製作。C棟で複数の単管を周長溶接によりつなぎ、モノパイルを形づくる。出来上がったモノパイルは塗装工程などを経て、最後は多軸台車で出荷バースまで運び輸送船で出荷する。  製造工程のほとんどを自動化しており「いわゆる職人技は必要ない」(上野所長)が、機械の扱いには習熟を要するという。部材にはQRコードを貼り付けており、作業員がAR(拡張現実)グラスによって部材情報を確認しながら作業できる仕組みだ。公開したモックアップは最大直径9・7メートル、長さ58メートル、重さ1100トンのサイズ。最も需要が見込まれる15メガワット級風車を想定している。  「一番重要な技術は溶接」と上野所長。モノパイル1本当たりの溶接箇所は距離にして計1キロ以上。管の内外から繰り返し溶接を重ねるため、延べではフルマラソン相当に達する。溶接に欠陥があると、補修のために構内に巨大構造物が滞留してしまう。そこで工場建設と並行し、厚い鋼板を効率良く溶接する方法を開発。母材の間に設ける溝「開先」を狭めるなど、ほぼ欠陥を出さない高品質な溶接プロセスを導入した。  上野所長は先行する欧州に対し、日本は「15年分ほど経験に差がある。われわれは後発で、『たわみ』対策などやってみないと分からない課題が多い」と明かす。近年は中国製が欧州市場でもシェアを伸ばしており、「脅威」との認識も示した。一方で海外製に比べ、納入時期を調整しやすく輸送費も抑えられる国産品のメリットを強調する。日本唯一のモノパイル工場として「信頼を得られる『日本品質』を打ち出していきたい」と意気込む。  JFEホールディングスの寺畑雅史代表取締役副社長は6日に開いた25年4~12月期決算会見で、洋上風力発電の発注遅れを踏まえた上で「実際の受注に結び付くと見込む」との見通しを述べた。年間20万トンの国内需要を想定し、10万トン程度の受注を目指す方針だ。 from...

中部整備局新丸山ダム工事と大林組/堤体打設へケーブルクレーン自律運転の実証実験

 中部地方整備局新丸山ダム工事事務所と大林組・大本組・市川工務店JVは20日、施工中の新丸山ダム(右岸・岐阜県八百津町八百津、左岸・御嵩町小和沢)で、コンクリート打設のケーブルクレーン自律運転の実証実験を公開した。ローカル5Gの高速通信環境やセンサーを活用し、揺動を制御しながら運搬容器(バケット)の移動や材料の放出を行った。今春、堤体打設に着手する予定で、段階的にDX技術を導入。最終的には締め固めを行う建設機械とも連動し、一気通貫の自律型コンクリート打設の実現を目指す。  あいさつで同工事事務所の松原克彦副所長は「生産性、安全性の向上を目指して施工している。土木の現場でDXが進んでいることを伝えたい」、大林組の渋谷仁執行役員ロボティクス生産本部長は「重要なのは継続的に技術開発を進め、進化・高度化させること。国土交通省と協力し、未来の現場に一歩一歩近づきたい」と話した。  同ダムのコンクリート打設量は約130万立方メートル。運搬は、18トンつりの弧動式片側走行ケーブルクレーン2基で行う。右岸側にコンクリート製造設備やクレーン固定塔があり、バケットの発進地となる。左右岸の径間は537メートル。揚程は160メートル。  バケットは谷を渡る際、加減速で大きく横振れする。コンクリート放出時も荷重が抜けて跳ね上がり、安全面や材料の混ざり具合など品質面に影響を及ぼす。従来のオペレーター操作でこれらに対応するためには、放出地点の合図者との連携や振れを打ち消す操作など熟練した技術が必要。長時間、極度の緊張状態の作業が求められるとともに、ヒューマンエラーの課題もある。  自律運転では、ケーブルからバケットをつり下げるトロリ・フックに設置したセンサーが振れ幅や位置情報、残量を検出。システムが振れや跳ね上がりを相殺する動作を自動で加えて制御する。実験では、自動でバケットが巻き上がり発進。毎分400メートルのスピードで水平方向に移動し、左岸側に向かった。目標地点との距離を逆算しながら減速・巻き下げし、到達後に材料を放出。再度巻き上がり、右岸側に戻ってきた。一連の動作は揺動を抑制しながらスムーズに行われた。1往復の時間は3分ほど。  大林組はこれまでも同現場で、複数建機の自律運転の連携など、DX技術の実証実験に取り組んできた。今後着手する打設では、バケットの自動運搬、自律放出、放出位置の自律修正と段階的にシステムを運用。最終的には打設機械のバイバックなどとも連携し、全機械作業の自律運転を目指す。  新丸山ダムの建設では、既存の丸山ダム下流側に新たな堤体を構築する。堤高は118メートル、堤頂長は340メートル。洪水調節容量は7200万立方メートルに増強する。 from...

日建連/技能者賃金行き渡りへ会員に対応要請、設計労務単価引き上げ受け

 日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は国土交通省の公共工事設計労務単価が13年連続で引き上げられるのを受け、技能労働者の賃金引き上げに向けた取り組みをさらに進める。21日に開いた理事会で、会員企業に対し労務単価の上昇を踏まえた下請契約を結ぶなど3項目を要請することを決め、会長名で会員各社に通知した。理事会後に東京都内で会見した宮本会長は「適切な水準の労務賃金が技能者に確実に行き渡る努力を続けていく」と力を込めた。  会員企業に要請する取り組みは▽技能労働者の賃上げについておおむね6%の上昇を目標にする下請契約の締結▽技能労働者の適切な賃金支払いの徹底▽適正な受注活動の徹底-の3項目。日建連は例年、労務単価の発表を受けて趣旨に沿った取り組みの展開を会員企業に通知している。今回は、1次下請に対し労務単価の上昇分が賃金として確実に支払われるよう要請するなど、より強調した表現に改めた。  おおむね6%の上昇を目標とする下請契約の締結では「労務費見積もり尊重宣言」の運用に当たり、おおむね6%の上昇を目標とする趣旨に沿う適切な労務費を内訳明示した見積書の提出要請を徹底する。適切な賃金支払いの徹底では、適切な賃金の支払いを1次下請に確実に要請し、さらに2次以下の下請に対しても適切な賃金が支払われるよう確実に依頼する。適正な受注活動では適正価格での受注を徹底する。  14日に首相官邸で開かれた石破茂首相らとの車座対話には、日建連の宮本会長をはじめ主要建設団体の首脳が参加。民間工事も含め技能者の賃金について「おおむね6%の上昇」を目標とする申し合わせがあり、石破首相からも技能労働者の賃上げへ取り組み推進で要請があった。  宮本会長は「全業種に先駆けて建設業を取り上げてもらった。石破首相には、建設業に若い人が入らないという危機感を持ってもらえている」と車座対話での手応えを語った。 from...

東京都/インフラ整備にデジタル技術の導入拡大、ロードマップを策定

 東京都はインフラ整備へのデジタル技術の導入拡大に向けたロードマップを作成した。計画、設計、施工、維持管理の四つのフェーズで最新技術を段階的に適用する。設計フェーズではAIチャットボットを導入するほか、BIM/CIMを設計で円滑に活用する。施工フェーズではICT施工の対象工事を広げる。  20日に都庁で開いた技術会議でロードマップを示した。設計や施工など各段階で先端技術を活用することで、今後増大するインフラの更新などに対応する。ロードマップではデジタル技術を円滑に導入するため、それぞれのフェーズを3ステップに細分化した。技術革新が加速化する中、可能な限り前倒しで取り組むため、目標年次は定めなかった。  計画フェーズでは3Dデータの活用を推進する。まずは主要構造物で3Dデータを標準化し、その後、全ての構造物にも対応する。測量にはドローンを利用。当初は手動操作だが、徐々に自律飛行へと移行する。取得した点群データの精度向上にも取り組む。  設計フェーズではAIを積極的に使う。チャットボットだけでなく積算にも導入し、自動化を図る。施工フェーズは工事情報共有システムを全案件で採用。遠隔臨場はまず工事の一場面で採用し、最終的に全場面で活用できる体制を構築する。  維持管理フェーズでは、ドローンなどを使った点検を進める。自動化に向け試行や一部導入した後に本格導入する。構造物の劣化に早期に対応するため、修繕箇所の自動検出システムの構築にも取り組む。まずは基盤システムを作り、試行を経て本格適用する。  働き方改革促進に向けたロードマップも作成した。建設キャリアアップシステム(CCUS)は活用状況を確認・検証した上で方向性を検討する。工事書類は削減を加速するとともに、簡素化やデジタル化も推し進める。工事書類に代わるシステムも構築する。適切な設計変更や週休2日制確保工事などは継続して取り組む。 from...

防衛施設強靱化推進協会/防衛省と初の意見交換終了、制度・要件など協議継続で一致

 防衛施設強靱化推進協会(乘京正弘会長)は、防衛省と行ってきた2024年度意見交換会の全日程を終えた。4回の会合に延べ339社、536人が参加。ECI方式をはじめとする入札契約制度や、工期設定を含む働き方改革などについて幅広く議論。入札参加を促す取り組みなどについて引き続き協議していくことで一致するとともに、工事・業務の制度や要件などに関する検討を双方が進めることを確認した。=2面に意見交換の詳細  意見交換会は24年9月26日の第1回から2月6日の第4回まで実施。政府が防衛施設整備を推進する中、整備や維持管理を的確に行い、双方の理解を促進しようと協会から実施を求め、初めて行われた。協会からはゼネコンや設備会社、建設コンサルタント、資機材メーカーなどの会員、支部会員とが参加。現場判断の決定のある実務レベルの担当者が主体となった。  協会は契約制度・契約手続き、同省が多くの発注を計画するECI方式、建設工事、調査・設計・監理業務についてさまざまな要望を出した。防衛省の回答を受け、工事、業務それぞれの領域で意見交換した。  工事関係は、入札手続きの期間延長や提案資料の簡素化、公告時期の平準化などを要望。同省は見積活用方式の見積提出期限や技術提案書作成期間などの延長を検討し、25年度の入札に適用する考えを示した。ECI案件の説明会や駐屯地・基地の見学会を開くことも明らかにした。  業務関係のうち、技術者の同種・類似実績は、協会が要件の緩和を要請。同省は経験豊富な技術者が未経験と同列で扱われることへの意見提出を提案し、協会は契約制度委員会で評価の在り方とともに検討することにした。部分払いの検討なども進める。同省は物価下落時のスライド条項の適用について慎重に検討する考えなども示した。  協会は初の意見交換会について「ゼロ回答がなく、有益だった」(幹部)と評価。同省は「入札に参加してもらえないのが一番よくない」とし、制度変更などに前向きに対応する意向を示したという。意見交換会は25年度も行う方針。協会は契約制度、企画などの各委員会で対応を検討する。 from...

国交省/道路陥没事故対策検討委が初会合、管理の在り方など論点議論

 埼玉県八潮市の道路陥没事故を受け下水管路維持管理の在り方などを検討する国土交通省の有識者委員会が21日、東京・霞が関の同省で初会合を開いた=写真。委員会では大規模な下水道の点検手法の在り方やリスク情報の共有方法、施設更新・維持管理制度の在り方などを論点に議論。春に中間取りまとめ、夏に最終取りまとめを行う。  中野洋昌国交相は冒頭、「今回の事故を教訓にインフラメンテナンスを再建し、二度とこのような事故を起こしてはならないという強い決意を持って対策を講じていきたい」と述べた。  「下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会」は都市工学や下水道、地盤など各分野の専門家ら12人で構成。委員長は家田仁政策研究大学院大学教授が務める。  初会合では下水道など「大規模な道路陥没事故を引き起こす可能性がある地下管路」を対象に論点を整理。▽重点的に点検する対象や頻度、技術など点検の在り方▽道路管理者などとのリスク情報の共有の在り方▽事故発生時の対応方法▽今後の施設維持管理更新や再構築とそれを支える制度の在り方-などを議論する。  家田氏は「120万人が影響を受けるのは災害なら激甚災害に指定されるほどの重大な事態。中野大臣の強い決意を伺い、われわれ委員も身の引き締まる思いだ」と述べた。その上で「インフラマネジメントの状態は決して万全でないのが実情。関係省庁挙げて努力が進むことを期待したい」と述べ、国を挙げた取り組みを求めた。 from...

MM21中央地区60・61街区/SPCと横浜市が土地売買契約締結

 ケン・コーポレーションら4社が設立したMM60・61特定目的会社(SPC)は21日、横浜市と「みなとみらい21中央地区60・61街区」の土地売買契約を締結したと発表した。締結日は20日付。1月31日には市と同街区に関する基本計画協定を締結している。売買契約を結んだことで、SPCが同街区の開発事業者になった。26階建てと13階建て2棟総延べ15万6000平方メートル規模の学校、ホテル、オフィス、店舗など複合施設を建設する計画。2026年3月にも着工し、29年2月の竣工を目指す。  構成企業はSMFLみらいパートナーズ、鹿島、岩崎学園。市が23年4月から公募を行い、24年2月に開発予定者に選定した。所在地は西区みなとみらい6の2の1ほか。敷地面積は2万3129平方メートル。土地売却価格は220億4163万7695円(公募価格は214億4310万4440円)だった。  計画によると西棟はS造地下1階地上13階建て延べ約2万5000平方メートル。用途は学校。東棟はS造地下1階地上26階建て延べ約13万1000平方メートル。用途は事務所、店舗、ミュージアム、ホテル。西棟は28年8月、東棟は29年2月の竣工を予定している。用途別に建物を分けることで生まれたオープンスペースを回廊やデッキでつなぎ、連続性や回遊性でにぎわいを創出する配置計画。  同区画はMM21地区で最後の大規模市有地であり、市は地区全体の開発の総仕上げとなる重要な街区と位置付けている。MM21地区街区開発の進捗率は約98・6%(24年4月1日現在)となる。 from...

若築建設ら/クレーン作業のAI監視システム開発、作業員とつり荷の離隔確保

 若築建設らは、クレーン作業時につり荷と作業員の接近を警戒するシステムを開発した。AI画像認識技術を活用して、作業員とつり荷の外形を同時に認識するとともに、つり荷の外形と作業員の離隔を算出する。常時監視でき、離隔が事前に設定した安全距離を下回る場合、クレーンのオペレーターと作業員へ警報を発信。作業員とつり荷の離隔を確実に確保でき、安全性確保と作業効率を両立する。クレーン作業時の災害を防止する。  新システム「WIT 3rdEYE(ウィットサードアイ)」は、インフラ向けロボットの開発などを手掛けるイクシス(川崎市幸区、山崎文敬代表取締役、狩野高志代表取締役)との共同開発。▽作業員認識▽つり荷形状認識▽作業員とつり荷の隔離算出▽合図者からの信号受信▽作業指示表示と警報発信-の五つの機能を備える。  合図者からの荷物つり上げ開始の指示と、つり荷移動中での停止の指示を合図者専用のリモコンを通じて伝達するシステムも搭載した。  クレーン操縦席にモニターを設置し、人物の接近状況と合図者信号に応じて操作可否を3色で表示。設定離隔内に作業員が侵入した場合、作業員が装着している腕時計型デバイスを振動させることで危険を知らせる。合図者の確認機能を組み合わせることで、オペレーターは安全確認を確実に行える。つり荷の形状寸法に応じて警報を出せるため安全性を向上できる。  若築建設は今後、国土交通省が推進するi-Constructionの方向性に沿う形で新システムを積極的に展開。建設現場でのDXを推進し、安全性向上に貢献する。 from...

2025年2月21日金曜日

阪神電鉄/阪神タイガースのファーム拠点完成、環境に優しい野球文化の発信拠点に

 阪神電気鉄道が兵庫県尼崎市で整備を進めてきた阪神タイガース2軍本拠地「ゼロカーボンベースボールパーク」が完成し、20日にオープン式典が開かれた。新たな2軍球場「日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎」や選手寮、室内練習場、一般用野球場などで構成する。設計・監理を久米設計、施工を熊谷組が担当。関係者約200人を集め、環境に優しい野球文化の発信拠点の誕生を盛大に祝った。  場所は阪神電鉄大物駅東側に位置する小田南公園(杭瀬新町3、約7・4ヘクタール)。現在の鳴尾浜(兵庫県西宮市)から2軍本拠地を移転する。阪神電鉄と尼崎市が共同で、脱炭素や循環型社会に貢献する公園として再整備するプロジェクトを環境省に提案。2022年に脱炭素先行地域の選定を受けていた。  2軍野球場(RC一部S造3階建て延べ約1万1000平方メートル)のグラウンド面積は甲子園球場と同程度(両翼95メートル、中堅118メートル)を確保。LEDのナイター照明灯を6基設置し、観客席は約3600席を備える。阪神なんば線を挟んだ南側敷地に室内練習場(S造平屋6168平方メートル)と選手寮「虎風荘」(S造3階建て延べ3704平方メートル)を整備した。  脱炭素化の取り組みでは、ナイター試合を開催する野球場の年間電力使用量の80%強相当を太陽光発電と蓄電池で賄い、不足分を尼崎市のクリーンセンターの発電でカバーする。  竣工式で、阪神電鉄の久須勇介社長は「この施設が沿線活性化の起爆剤になると確信している。今後も市と連携し期待に応えたい」、阪神タイガースの秦雅夫会長が「球団創設90周年の節目に素晴らしい施設が完成し、大変感慨深い」と話した。尼崎市の松本眞市長は「環境貢献のシンボルとして多くの来場者でにぎわってほしい」と述べ、来賓の小林史明環境副大臣は「尼崎市と阪神電鉄の先進的な取り組みに敬意を表する」と語った。  続いて久須社長が久米設計の藤澤進社長と熊谷組の上田真社長に感謝状を贈呈。藤澤社長は「基本構想段階から参画し、6年を経てきょうを迎えることができた。この場所から将来のスター選手が巣立つのが楽しみだ」、上田社長は「施設を快適に利用していただくため、万全体制でアフターケアに努めていく」と述べた。  オープニングセレモニーで関係者代表らがテープカットを行い、無事完成と新たな門出を祝った。 from...

土木学会/24年度インフラメンテ賞の受賞者決定、5部門43件に栄誉

 土木学会(佐々木葉会長)は20日、2024年度「インフラメンテナンス賞」の受賞者を発表した。同賞はインフラ維持管理で優れたプロジェクトや先進的な技術、功績のあった個人や企業・団体、優秀な論文などを顕彰。21年度に創設し今回で4回目となる。  応募があった80件・編の中から5部門で43件・編を決定した。27日に東京都新宿区の同学会講堂で表彰式を開く。  受賞の内訳は▽プロジェクト賞6件▽チャレンジ賞9件▽エキスパート賞9件▽マイスター賞9▽優秀論文賞10編。  受賞件名(論文名)と受賞者は次の通り(敬称略)。  【プロジェクト賞】  ▽カチプール、メグナ並びにグムティ橋第2橋梁建設および既設橋改修工事=バングラデシュ人民共和国交通橋梁省国道・道路局、オリエンタルコンサルタンツグローバル、日本構造橋梁研究所、大日本ダイヤコンサルタント、片平インターナショナル、大林組、清水建設、JFEエンジニアリング、IHIインフラシステム  ▽線路データのプラットフォーム構築によるメンテナンス連携=日本線路技術、小田急電鉄、東急電鉄、東京メトロ、JR東日本  ▽名神高速道路における日本初の集中工事を利用した床版取替リニューアルプロジェクト=中日本高速道路名古屋支社、鹿島  ▽ベトナム技能者育成学校=日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会  ▽九州自動車道宝満川橋床版取替工事プロジェクト=大林組・大本組JV  ▽中空床版全面打換え工事の品質確保・工程管理に向けた取り組み=東日本高速道路北海道支社、戸田建設、ネクスコ・メンテナンス北海道  【チャレンジ賞】  ▽橋梁実モデルと橋梁メンテナンスVRを活用した橋梁メンテナンスの技術力向上の取組=九州地方整備局九州技術事務所  ▽住民主体型橋梁セルフメンテナンスを通じた女性技術者による次世代育成・指導者育成の取り組み=土木技術者女性の会、茨城県建設業協会建女ひばり会、石岡市道路建設課  ▽AI活用等による主要線路設備全ての劣化状態自動判定の実現=JR東日本、日本線路技術  ▽鉄筋コンクリート内部ひび割れ検出システムによる床版調査の取り組み=技建開発  ▽ポリカーボネート樹脂製透光板の飛散防止材の開発=首都高速道路会社  ▽「福国橋守マイスター会」による道路インフラメンテナンスの取組=福岡国道事務所、福国橋守マイスター会  ▽ひび割れ進行評価技術を用いた橋梁維持管理の高度化・効率化を目指す取り組み=多摩市都市整備部道路交通課、八千代エンジニヤリング、ニコン・トリンブル  ▽メンテナンスフリーと施工の効率化を目的とした補修工法の開発と導入=JR東日本東京土木設備技術センター、デンカ  ▽道路走行可能な新幹線・在来線両用のレール探傷車の開発と運用=JR東日本、JR四国、JR九州、日本線路技術  【エキスパート賞】  ▽稲田勉▽太田哲司▽黒谷努▽坂上悟▽田上敏博▽並木宏徳▽林良範▽堀雄一郎▽山口敏久  【マイスター賞】  ▽藍郷一博▽植野芳彦▽加賀山泰一▽川村昭宣▽葛目和宏▽時田英夫▽中田雅博▽横田聖哉▽吉田好孝  【優秀論文賞】  ▽中小河川に架かる橋梁を対象とした効率的な定期点検への取り組み=後藤幹尚(大田区都市基盤整備部)、藤森竣平(同)、近藤冬東(同)、岩波光保(東京科学大学)千々和伸浩(同)、津野和宏(国士館大学)  ▽橋梁定期点検の義務化をチャンスと捉えた定期点検実務のスパイラルアップとコスト縮減=木下義昭(玉名市役所建設部)  ▽空港舗装動態観測への干渉SAR解析等の新技術導入の可能性及び具体の方策の検討=山田凱登(沿岸技術研究センター)、遠藤敏雄(同)、森弘継(関東地方整備局東京空港整備事務所)、三浦幸治(同)、小野憲司(京都大学)  ▽動ひずみ計測による疲労き裂の発生原因推定とLPWAを活用した対策効果の検証=三森章太(首都高技術)、木之本剛(首都高速道路会社)、日和裕介(首都高技術)、和田尚人(同)、後藤幹尚(大田区都市基盤整備部)、岩波光保(東京科学大学)  ▽地方公共団体における橋梁の新しい再評価方法の有効性・実用性に関する検討=齋藤和也(IHI)、塩永亮介(同)、津田誠(石川工業高等専門学校)、廣井幸夫(IHI)  ▽橋梁長寿命化修繕計画における既存橋梁の撤去および継続利用の評価手法に関する検討=尾場瀬美綺(茨城大学)、原田隆郎(同)、大崎康弘(茨城県土木部)大久保克紀(同)  ▽ゴム引布製起伏堰に用いられるゴム引布の疲労破壊に関する実験的検討=川邉翔平(農業・食品産業技術総合研究機構)  ▽超音波法によるウェブ厚推定を利用したPCポストテンションT桁橋のグラウト充填調査=大野健太郎(東京都立大学)、岩野聡史(リック技術研究所)、後藤幹尚(大田区都市基盤整備部)、岩波光保(東京科学大学)  ▽既設ガードレール支柱の鉄筋コンクリート部材を用いた補強工法の提案=林和彦(香川高等専門学校)、飛鷹政亘(丸治コンクリート工業所)酒井凌(カンケン)、福山裕史(同)、渡井忍(マックストン)  ▽新幹線構造物の検査の省力化に向けたデータ取得・分類・蓄積に関する研究開発=栗林健一(JR東日本研究開発センター)、大島竜二(同)、佐藤保大(JR東日本)、久田真(東北大学)、皆川浩(同)、宮本慎太郎(同)。 from...

内閣府/PFI事業のスライド条項、標準契約に記載検討

 内閣府はPFI事業の物価変動対策として、スライド条項の適用を巡る検討を進める。PFI法に基づく直近の事業を調査したところ、47件は全体・単品・インフレの各スライド条項とも規定されていたが、いずれの規定もないのが57件あった。受注者からは、条項の運用のばらつきを指摘する意見も出ており、契約のひな型となる「PFI標準契約1」に全体スライドの記載を追加することを検討するとともに、適用の状況を注視していく。  民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)が158事業を対象に行った調査によると、全体・単品・インフレの各スライド条項のうち、全体は70件、単品は79件、インフレは64件で規定があった。規定の有無はさまざまで、緩やかな価格水準の変動に対応する全体スライドだけが規定されていたり、特定資材の急激な価格変動に対応する単品スライドや、急激な価格水準の変動に多応するインフレスライドの規定がない事業が少なくなかった。  工事などへの物価変動の影響が大きく、日本建設業連合会は2024年6月に国や地方自治体でスライド条項の適用にばらつきが見られるとも指摘した。その上でスライド条項の適用をPFI事業の関係ガイドラインに明記するとともに、すべての発注者に適用するよう申し入れていた。  スライド条項を巡っては、PFIのような官民連携の事業領域に物価高騰の影響が出ていることで、川崎市は3日公表の「民間活用(川崎版PPP)推進方針」に、通常範囲を超える物価変動の場合には市と民間事業者とで「事業手法や性質に応じて適切にリスクを分担する」と明記。物価変動に対する趣旨を明確にするのが狙いで、事業継続の必要な措置という認識も示した。一方で「通常の範囲内のインフレ・デフレについては民間事業者のリスク」とした。  PFI標準契約1は全体スライドの規定そのものがなく、単品スライドやインフレスライドの官民負担の割合を規定していない。同推進室は公共工事標準請負契約約款や国の直轄工事の規定を参考に、全体スライドの追加を検討する考え。受発注者の契約変更協議が活発になっていることで、実態を見た物価変動対策を進める。 from...

工場探訪/大林道路大分センターアスコン(大分市)、工場全体をDX・自動化

 大林道路が次世代モデルのアスファルト合材工場と位置付ける「大分センターアスコン」(大分市)。田中鉄工(佐賀県基山町、末吉文晴社長)と開発した製品事業運営を効率化、最適化するさまざまなデジタル(DX)ツールの連携により、施工現場と運搬車両の情報をひも付けた製造のプロセスの自動化による出荷を実現している。材料を貯蔵してプラント本体に供給するまでのルートも設備化し、場内で材料供給するホイールローダーの稼働も不要とした。将来的に工場従事者の半減を目指す。  大分センターアスコンは年間10万トンを製造、出荷する大林道路にとって主力工場の一つ。経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2024年6月に公表した指針を踏まえ、製造部門の業務DX化や設備の自動化に着目して最適化する「スマートマニュファクチャリングBIツール」を先行導入した。  同ツールは統合API連携サーバーやデータ保存ストレージを介し▽ウェブから工事情報を収集する受注管理▽ダンプ台数を自動算出する配車管理▽製造を自動化する出荷管理▽製造配合と出荷情報を整合させる製造管理▽製造・現場双方が車両情報を把握する運行管理▽契約情報と施工情報を統合する品質管理-などの各システムを連携させる仕組み。受注管理や出荷管理、製造管理で先行しており、残るシステムは25年度にも開発する。  時間外労働上限規制に対応して働き方改革を推進する必要があり、原材料高騰分の価格転嫁が思うように進まずコスト削減や収益性の向上が急務だったことも背景にある。そこで実現性の高いシステムから順次導入していった。  その一つが施工現場と運搬車両の情報をひも付けて製造プロセスを自動化する出荷管理システム。さまざまなDXツールでダンプの入場や受け付け、場内誘導、合材の自動積み込み、出荷伝票の受け渡し、退場までを運転手が降車せずに完結するドライブスルーのシステムを導入した。  場内での車両渋滞緩和や歩行による事故防止だけでなく、事務担当者の作業効率も向上。夜間の少量出荷を無人で行うことも可能となった。同システムによる製造情報と配合情報の一元管理に基づく出荷によって、適切な品質確保によるコンプライアンス強化にもつなげたいという。  材料の貯蔵設備として24年11月末から本格運用する新材コルゲートサイロ8基(貯蔵量1基当たり280トン)と再生骨材貯蔵サイロ4基(同120トン)も生産性向上に貢献している。いずれも雨水などの浸水による含水比率上昇を抑制。プラント本体への供給ルートも設備化、自動化しており、アスファルト合材の製造プロセスにおいて場内でのホイールローダー稼働がなくなり人件費や燃料費のコストダウン、二酸化炭素(CO2)排出量の削減も実現した。  同社によると、再生骨材貯蔵サイロは世界初で初導入した。サイロ内で石や砂など材料同士の固まりを防ぐブロッキング対策用の設備として、材料を入れ替えられる循環路を開発し採用している。  同社は大分工場での先行事例を全国に順次広げていく考えだ。当面は品質確保に向け合材の配合管理を徹底するシステム強化に万全を期す。担当者は「将来的にはAIも取り入れ、工場運営のさらなる効率化を目指す」と展望する。 from...

関東整備局/17号北本電線共同溝PFIで見積活用、NTTインフラネットグループに

 国土交通省はPFI事業の入札不調・不落対策に「見積活用方式」を取り入れた。関東地方整備局が「国道17号北本(5)電線共同溝PFI事業」の一般競争入札(WTO対象、総合評価方式)を開札し、23億7518万2529円(税込み、以下同)でNTTインフラネットを代表とするグループが落札した。不調・不落対策を目的に、入札者が提出した見積書の内容を予定価格に反映する見積活用方式を、同局が実施する工事を伴うPFI事業で初めて採用。3月の事業契約締結を目指す。  関東整備局は2024年1月に入札手続きした「国道20号西府町・谷保電線共同溝PFI事業」で発生した入札不調を踏まえ、見積活用方式を採用した。入札手続きに当たっては、電線共同溝事業への参画意欲などを確認するための市場調査を実施。標準歩掛かりではなく見積活用をした方が望ましいと考えられる工種も聴取した。市場調査の結果や現場付近の工事を受注した施工会社へのヒアリングも行った。  全46工種のうち入札者に提出を求める見積書の内容として、特殊部設置の▽縁石工(復旧)▽側溝工(同)▽路側防護柵工(同)。管路部設置の▽管路工(管路部)▽縁石工(復旧)▽側溝工(同)▽路側防護柵工(同)▽構造物取り壊し工-の8工種を選定。残りを標準歩掛かりで積算し予定価格を設定した。  落札したのはNTTインフラネットとミライト・ワン、オリエンタルコンサルタンツで構成するグループ。総合評価では価格点300点と内容点700点の合計1000点を満点として審査。その結果、同グループは763・75点(内容点463・75点、価格点300円)だった。  事業区間は埼玉県北本市本宿5~同宮内7の約800メートル。事業方式はBTO(建設・移管・運営)方式。電線共同溝と道路、道路付属物の調査設計、工事、工事管理と電線共同溝部分維持管理を一括して任せる。2034年3月の施設完成と引き渡しを目指す。契約期間は44年までの20年間。  電線共同溝整備は災害時の泥閉塞(へいそく)解消や円滑な交通確保を目的に行う。事業スピードのアップや財政負担の平準化を図るため、同局はPFI手法で整備を進める。 from...

竹中工務店/量子コンピューターで教育施設整備計画最適化、短時間で要望反映しやすく

 竹中工務店は、量子コンピューターを用いた教育施設整備計画の最適化技術を開発した。大学や高校、専門学校といった校舎などの新築や改修を想定し、複数のカリキュラム(授業と教室の最適な組み合わせ)実施案を短時間で算出、比較検討できるようにした。その結果を踏まえ最適な施設整備計画案を効率的に作成。発注者の要望をより的確に反映しやすい計画立案も可能になった。  多数の中から高速で最適な組み合わせを探し出す量子コンピューターの計算方式の一つ、量子アニーリング技術を活用。カリキュラム案を1案当たり10時間程度で作成する。  同社によると、教育施設のカリキュラム実施案は施設構成や学生数、教員数など複数の要因を考慮する必要がある。1学期を通して500以上の授業が行われるような大規模な大学の場合、一つの実施案作成に数カ月かかる。  新技術を用いた計画立案の手順は▽教育施設の現状やカリキュラム実施上の制約を確認▽教育施設から協議可能な教員の時間帯や授業計画、教室数・定員などの施設情報を入手▽教室数や定員について施設構成案を考察▽教育施設から入手したデータと竹中工務店が設定した施設構成案データを整理し、プログラムで読み取れる形式に変換▽教育施設固有の制約に対応するよう、最適な施設構成案を算出するプログラムを修正、テスト▽プログラムを実行して最適な施設構成案を算出▽算出した結果を教育施設に確認してもらいフィードバックを受けてプログラムを修正、再実行▽最終的な施設構成案を基に整備計画立案-となる。  複数のカリキュラム実施案を一つの最適案に絞る際、二つ以上の必修授業が同日に行われず教員や学生の授業間移動が減ることを評価。教室の稼働率が高いかどうかも考慮する。  同社は個別の施設整備だけでなくキャンパス全体の運用も視野に入れ、より効率的で精度の高い提案ツールとして活用していく。 from...

2025年2月20日木曜日

スコープ/茨城大学と日立建機が教育や研究開発で連携、地域発展にも貢献

 日立建機が教育・研究機関との連携を加速する。茨城大学と人材育成や研究開発などで相互協力する包括連携協定を3日に締結。共同研究をはじめさまざまな連携を通じ、顧客に寄り添う革新的なソリューションの創出に向け新たな技術を探索する。同社が教育・研究機関と包括連携協定を結ぶのは初めて。茨城県内に拠点を置く企業と大学のオープンイノベーションにより、社会価値の創出や地域の発展に貢献する。  両者は同日、水戸市の茨城大水戸キャンパスで調印式を開き、先崎正文社長と太田寛行学長が協定書に署名した。新たな価値創造のオープンイノベーションに取り組む同社と、ステークホルダーとの共創による教育や研究を進める同大学の方向性が一致した形だ。  先崎社長は建機オペレーターの減少や高齢化、環境負荷の低減、安全性向上など業界を取り巻く課題が「複雑、高度化している」と指摘。その上で建機の開発に必要な技術分野が電気電子や情報通信、ソフトウエアへと広がっていることを踏まえ「幅広い分野を総合的に扱うエンジニアの育成が急務だ」との考えを示した。  共同研究などさまざまに連携し、「われわれが目指す顧客に寄り添う革新的なソリューションの創出に向けた新たな技術探索を図る」と協定締結の狙いを説明。「茨城県に立地するわれわれが緊密に連携、協力を図ることにより、その成果を地域社会の発展へと還元する」と述べた。  茨城大は工学部と大学院理工学研究科で、地域産業に貢献する製造系の高度ITエンジニアの育成に力を注いでいる。地域企業と協力して機械や電気、電子、情報工学といった分野をまたぐ実践的カリキュラムで教育を展開。2006年からは「サステイナビリティ学」の研究や教育に取り組んでいる。  太田学長は「このタイミングで、サーキュラーエコノミー(循環経済)やカーボンニュートラル(CN)への対応を強化している日立建機と協定を結ぶことで、社会実装、社会還元の道を得られた思いだ」と今後の取り組みを展望した。  同大学は3年次に原則、必修科目を開講せず、特に学外での主体的な学びを促す期間「iOP(internship Off-campus Program)クオーター」を設けている。太田学長は「今は4年間キャンパスの中で学ぶ時代ではない。これからの大学は社会と接しながら、学生が自己実現を図る場を提供しなければならない。そういう意味で、日立建機は良いパートナーだ」との期待感を示した。  日立建機は現在、デジタル技術を含む幅広い分野を総合的に扱っており、新たな価値を創造するためのエンジニア育成に注力している。その一環で産学問わずさまざまなパートナーとオープンイノベーションの推進にも積極的に取り組んでいる。  今回の協定締結を機に、大学院修士1年を対象にした企業提携講座を25年度にも開設する。同社社員が講師となり、理工学部の学生にものづくりの基礎知識や安全、品質保証などの考え方などを講義。ものづくりに関わる企業が求める人材を育成する。土浦工場(茨城県土浦市)でインターンシップの受け入れも行う。  共同研究も始まる。研究内容は未定だが、先崎社長と太田学長は「持続可能な地球環境の構築」を研究テーマに据える。  太田学長は新しい学問として「気候変動科学」の確立を目指していると説明。「二酸化炭素(CO2)を固定化し燃料にしたり、水田で発生するメタンを活用したりする。企業がそれらを商品やサービスにどう生かすか考えることも大切。(気候変動に対し)緩和策と適応策を組み合わせた社会モデルを考える上で、建設現場のサステナビリティに取り組む日立建機のような企業との連携は重要だ」と語った。  先崎社長は「お客さまが求めるサステナブルな環境づくりをサポートする。そのため広い視野を持つ大学と連携し、オープンな関係で研究ができることはわれわれにとってもプラスになる」との考えを示した。  日立建機は企業のPRを目的に、茨城大の水戸キャンパスと日立キャンパス(茨城県日立市)にある施設のネーミングライツ(施設命名権)の取得も予定する。協定を結んだ3日、先崎社長が愛称を付ける予定の水戸キャンパスの中庭を視察。「学生が集まる動線の中にあるので、カットモデルの展示や電動ショベルを使った実演などいろいろなイベントを展開してみたい」と展望を語った。 from...

北海道企業局/経営戦略改定案、工水建設改良費に5年で273億円

 北海道企業局は、中長期的な経営目標や投資・財政計画を示す経営戦略の改定案をまとめた。2025~29年度の5カ年の建設改良費は電気事業で約98億円を見込み、岩尾内発電所の大規模改修などを実施する。室蘭、苫小牧、石狩合わせた工業用水道事業は24年11月に示した原案より約28億円増の273億円を見込み、苫小牧で新規ユーザー配水管敷設、石狩で水管橋耐震補強を盛り込んだ。経営戦略は本年度内の成案化を目指す。  現行の経営戦略は20~29年度を計画期間とするが、20年度の計画開始以降、ラピダスの次世代半導体製造工場やデータセンターの立地などを契機とした再生可能エネルギーや工業用水需要の高まり、資材費や人件費の高騰、金利の上昇による経営コストの増大、ゼロカーボンの実現などの社会的要請の高まりなど、経営環境に大きな変化が生じたため、中間年となる本年度に内容を見直す。  中長期の投資計画を見ると、電気事業では20年度から40年間の建設改良費に約744億円を試算。主な事業では計画期間内に岩尾内発電所大規模改修(21~28年度)に約67億円、ポンテシオ発電所改修(21~25年度)に約23億円を投じる計画で、25~29年度の建設改良費は約98億4500万円を見込む。このほか計画期間外の事業として、川端発電所大規模改修(31~39年度)、鷹泊発電所大規模改修(41~49年度)を計画するとともに、川端ダムと鷹泊ダムについてはダム安全性評価委員会で審議中となっており、国がダム改修を含めた老朽化対策を検討している。  工業用水道事業では、今後40年間の更新需要に室蘭工水で約160億円、苫小牧工水で約440億円、石狩工水で約60億円の総額約660億円を試算。25~29年度の建設改良費には室蘭工水が30億7600万円を投じる計画で配水管更新改修やダム放流設備耐震補強などを実施。苫小牧工水は225億6900万円で配水管更新改修や新規ユーザー配水管敷設などを計画し、25年度は約92億円、26年度は100億円超の投資を見込む。石狩工水は17億1400万円で配水管更新改修や新たに水管橋等耐震補強などに取り組む。 from...

愛媛県/東予港西条地区産業用地整備、DBで軟弱地盤対策発注2月中に入札公告

 愛媛県は、半導体や蓄電池など先端成長産業の大型投資を呼び込むため、東予港西条地区(西条市ひうち)に約30ヘクタールの大規模産業用地を整備する。県が浚渫土などによる埋め立てを進めており、産業用地として必要な軟弱地盤対策をデザインビルド(DB)方式で発注する。月内にも総合評価方式の一般競争入札を公告したい考えだ。  2025年度当初予算案に事業費29億1277万3000円を新規計上した。このうち地盤改良整備に28億6254万7000円を充てる。合わせて26年度の債務負担行為42億5628万6000円を設定した。  5000トン級の船が着岸できる水深7・5メートルの岸壁(延長130メートル)も整備する。予備設計委託費などとして3202万9000円を盛り込んだ。工業用水の配水管路を整備するための実施設計・試掘調査費1819万7000円も計上している。  進出企業は26年に公募する。用地は分割せずに一括での利用を見込む。28年度中の供用開始を見据える。 from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171556 via 日刊建設工業...

大成建設ら/ふるい下残さでソイルモルタル製造、最終処分量低減を実証

 大成建設と光洲産業(川崎市高津区、光田興熙社長)は、建設混合廃棄物の中間処理過程で発生する建設副産物「ふるい下残さ」をソイルモルタルの母材として有効利用する技術を確立した。建設発生土の再利用によってソイルモルタルを製造する大成建設の「TAST工法」を応用。砂質土を主体とする材料の代替としてふるい下残さ100%の再生土砂を活用し、ソイルモルタルが製造できることを室内試験や試験施工で実証した。  一般的に解体工事で発生する廃棄物はがれき類のほか木材、プラスチック、ゴムなどの有機物が混在し適切に処理することが義務付けられる。中間処理過程で再生砕石や再生資材が選別、分別された後、最終的に土が主体となる粒径2ミリ程度以下のふるい下残さが生じる。微細な異物などが混入しており再生利用が難しい。大成建設によると各地にある最終処分場は残余容量が減少傾向にあり、最終処分量の低減が課題となっている。  そこで同社らは、砂質土を主体とする建設発生土にセメントと水を混ぜてソイルモルタルを製造するTAST工法に着目。代替材としてふるい下残さをセメントと混合し固化することにより、有害物質の溶出抑制と所定強度の確保を実現した。  このほど横浜市戸塚区にある同社技術センターに建設した木造人道橋の橋台周辺空隙部を充填するため、約8トンのふるい下残さをソイルモルタルの部材として初適用した。試料の7日強度はソイルモルタルの目標品質を上回り、有害物質の溶出量も土壌環境基準値に満たしていることを実証。ふるい下残さの再生利用と最終処分量低減を実現した。 from...

2025年2月19日水曜日

回転窓/いただきますの意味

 実家から送られてきた大きな箱を開けると、地元の野菜や米が入っていた。いつも大変にありがたく、親にとっては返礼の電話でこちらの近況を聞けるのが何よりうれしいようだ▼葉物野菜を中心に軒並み値段が高くなっている。米価は顕著で、昨年に比べて倍の値を付けるスーパーも少なくない。新聞や雑誌の見出しには〈令和の米騒動〉の文字が躍る▼米価高騰は需要が供給量を上回っているのが要因とされ、昨夏の猛暑で収穫量が減少したことや国の減反政策などが影響しているという。投機目的で米をストックする業者がいるため市場に出回っていないとの指摘もあり、政府は備蓄米21万トンを3月中に放出する。これが価格低下につながるよう願いたい▼米の供給量を増やす手段として収穫期が異なる多品種栽培が挙げられる。AIで収穫適期を予測するスマート農業の推進にも期待が高まる▼就農者が減少する中、就労環境の改善や新規人材の確保などの対策が急務となっている。食卓に並ぶ食材の多くは根気強く作物を育ててきた生産者のおかげ。〈いただきます〉の言葉に込める感謝の気持ちを忘れてはいけない。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171526 via 日刊建設工業...

政府/エネ基本計画、温暖化対策計画、GX戦略を閣議決定/脱炭素で経済成長推進

 政府は18日、エネルギー政策の中長期の指針となる「第7次エネルギー基本計画(第7次エネ基)」と、温室効果ガスの新しい削減目標を盛り込んだ「地球温暖化対策計画」、脱炭素化を経済成長につなげる戦略「グリーントランスフォーメーション(GX)2040ビジョン」をそれぞれ閣議決定した。ガス排出を2040年度に13年度比で73%削減する目標を設定。再生可能エネルギーや原子力といった脱炭素電源のある地域に企業誘致を促すなどの産業政策を盛り込んでいる。  エネルギー基本計画の改定は約3年ぶり。データセンターの新増設などで電力需要が増加していくことから、第7次エネ基では再エネを最大限活用し、40年度の発電量に占める再エネ比率を23年度実績(22・9%)の倍近い4~5割程度に引き上げる。再エネは「長期安定電源化」を目指し、浮体式洋上風力やペロブスカイト太陽電池の導入などを推進する。  原発の比率は、建設中を含めた36基ほぼすべての稼働を前提に2割程度とする。再稼働は「官民を挙げて取り組む」とした。建て替えは、廃炉を決めた事業者の発電所サイト内で次世代革新炉とすることが対象。これまでの計画にあった「可能な限り依存度を低減する」の文言は削除した。温室効果ガス排出の多い火力発電は現状の約7割を3~4割に縮小する。計画案に対しては、4万件以上の一般意見が寄せられ、原発関連が多かったという。  温室効果ガスの次期削減目標(NDC)は、世界の平均気温の上昇を1・5度に抑える世界目標の実現に向け、13年度比で35年度に60%減、40年度に73%減と設定。地球温暖化対策計画は、再エネや原子力を最大限活用する一方、石炭火力を次第に減らすエネルギー転換を進めるとした。住宅や半導体工場などの省エネ対策、電力需要の大きいデータセンターの効率改善、ペロブスカイト太陽電池の導入支援などを推進する。二酸化炭素(CO2)に価格を付け、企業や人の行動を変える成長志向型の「カーボンプライシング」、高度な再資源化や太陽光パネルのリサイクルを促進するような「循環経済(サーキュラーエコノミー)」の実現に取り組む。  分野別のうち、建築物では建築物省エネ法の規制を強化し、小規模建築物の省エネ基準への適合を25年度に義務化する。30年度以降に新築する建築物は、ZEB水準の省エネ性能の確保に取り組む。道路整備は総合的なCO2削減の効果を判断しつつ、環状道路などの幹線ネットワークの強化や、道路空間への再エネの導入を進めるとしている。  NDCは同日、国連気候変動枠組条約事務局に提出した。その達成を目指す「政府実行計画」には、政府の庁舎や土地に太陽光発電設備を最大限設置することや、ペロブスカイト太陽電池の導入目標を検討することが入った。新規の建築事業は「原則ZEB Oriented相当以上」とし、30年度以降はさらに高い省エネ性能を目指すこととしている。  GX2040ビジョンでは、脱炭素、経済成長、エネルギー安定供給の「同時実現」するための方向性を示した。脱炭素電源と新たな産業用地の整備を進めていく。25年通常国会に資源有効利用促進法の改正案を提出し、再生材の供給・利活用をさらに進める。GX推進法の改正案も提出し、26年度からの排出量取引制度の本格実施、28年度の化石燃料賦課金の導入への環境整備を進める。  18日の閣議後の会見で武藤容治経済産業相は、米国のトランプ大統領が化石燃料への回帰を表明していることに関し、「動向は今後も注視が必要」とした上で、「各国が脱炭素と産業競争力強化の両立に向けた取り組みを進めている。わが国もGXを着実に進めねばならない」と述べた。 from...

大林組/ホイールローダー用の後付け自動運転装置を開発

 大林組は、ホイールローダー用の後付け自動運転装置を開発した。自動運転システムのほか、3DLiDAR(ライダー)や傾斜計などのセンサー、自動運転制御盤、レバー制御装置で構成する。ホイールローダーのメーカーや機種を選ばずに取り付けられ、経験の浅い作業員でも安全な場所から簡単に動作設定できるようになっている。実証実験を行い、燃料運搬作業の自動運転や夜間作業を実現した。  ホイールローダーは作業場所の位置を確認し、運搬物の形状から効率良くすくい込みができる位置をセンサーで判断し、作業位置まで走行する。事前に設定した経路で運搬し、積み込みや投入作業を行う。今回開発した装置は、すくい込みや運搬、積み込み、投入などの作業設定を、遠隔で安全な場所から行える。帳票機能も備え、積み込みや投入の数量を管理できる。  グループ会社の大林神栖バイオマス発電(茨城県神栖市、長瀬有弘社長)が運営する大林神栖バイオマス発電所(同市、発電容量51・5メガワット)で実証実験を行った。バイオマス発電の原料となるパームヤシ殻(PKS)をすくい込み、集積場所から燃料投入口まで運搬して投入する作業を繰り返し、同発電所の安定稼働に必要な135トンを約2時間30分で投入することに成功した。暗くても感知可能なセンサーを搭載することで夜間でも日中と同様に作動することも確認できた。 from...

大阪府市/万博跡地、4ゾーンに分け開発へ/今夏にマスプラ策定

 大阪府と大阪市は大阪市此花区にある人工島・夢洲の大阪・関西万博跡地(夢洲第2期区域約50ヘクタール)を「ゲートウエイゾーン」「グローバルエンターテインメント・レクリエーションゾーン」「IR(統合型リゾート)連携ゾーン」「大阪ヘルスケアパビリオン跡地活用ゾーン」の4ゾーンに分け、開発を進める方針を示した。今後、一般意見を募集した上で、今夏にマスタープランを策定。2025年度後半の開発事業者公募を目指す。  18日に「副首都推進本部(大阪府市)会議」(本部長=吉村洋文知事)の第15回会合を大阪市内で開き=写真、「夢洲第2期区域マスタープランVer.1・0」を提示し了承を得た。  コンセプトは「万博の理念を継承し、国際観光拠点形成を通じて『未来社会』を実現するまちづくり」。ゲートウエイゾーンでは商業・オフィス・宿泊施設を配置し、ナイトアクティビティの充実やイノベーション機能の導入を進める。グローバルエンターテインメント・レクリエーションゾーンでは国際的なモータースポーツ拠点やウオーターパーク、劇場・アリーナを整備し、非日常空間を創出。IR連携ゾーンではIR区域と連携し、MICE(国際的なイベント)施設やホテルを設ける。大阪ヘルスケアパビリオン跡地活用ゾーンでは先端医療・国際医療・ライフサイエンス関連の機能を導入する。  まちの骨格は夢洲駅前から水辺へと続くシンボルプロムナードによる「うるおい軸」と、ゾーン内を結ぶ「にぎわい軸」で構成。道路ネットワークでは既設の観光外周道路とつながる道路を整備。IR予定地の第1区域から2、3区域まで連続した回遊性の高い歩行者空間も確保する。  マスタープラン策定では2025年日本国際博覧会協会などと協議し、大屋根リングの一部活用や静けさの森の移設・再配置などを検討する。まちの管理・運営は開発事業者が主体のエリアマネジメントを想定している。  ヘルスケアパビリオン跡地活用ゾーンの開発事業者は別途先行して募集する。  会合で委員からは「開発では資材高騰の影響が考えられ、事業者が柔軟に対応できる公募条件を検討してほしい」「事業者の創意工夫を生かせるよう公募の進め方を慎重に検討すべき」といった意見が挙がった。  吉村知事は「ベイエリアの広大な敷地を生かし、夢洲でしかできない圧倒的な非日常空間を創出してほしい。50~100年先を見据え大阪の新たな拠点として成長させていく」と述べた。 from...

竹中工務店/進捗管理アプリを大幅改良/新たに5機能追加・拡充

 竹中工務店と同社グループの朝日興産(大阪市中央区、宮本靖雄社長)は、建築工事の進捗実績を部屋や部位ごとに可視化するアプリケーション「位置プラス『進捗管理』」を大幅に改良した。2020年の発売から累計約200現場で導入実績がある同アプリを活用してきた社員や作業員の要望を踏まえ、管理図表をより見やすくした。今後はゼネコンやサブコンなどの販売先を拡大し、25年に約50現場、26年に約80現場で新規導入を目指す。今秋までにさらなる改良版の開発も予定している。  今回の改良版で追加・拡充した機能は▽工程の進捗線画面をブロック矢印表記に変更▽出来高集計・出力▽作業予定日管理機能の追加▽PDF登録・閲覧機能の追加▽スマートフォン向け画面の改良-の五つ。  竹中工務店によると、特に要望が多かったのは工程の進捗線画面をブロック矢印表記に変更する機能追加。従来は線分形式で各部屋や部位の完了割合のみを表示してきたが、ブロック矢印表記への変更によって一目でどの作業に問題が生じているか視覚的に把握できるようになった。  出来高集計・出力機能の追加も要望が多かった一つ。作業者が登録した進捗実績を月ごとにまとめて作業別、協力会社別にエクセルで出力する。月ごとの集計区切り(締め日)は任意に設定でき、各現場の請求タイミングに合わせた集計が可能。出来高請求時の根拠資料として用いることで事務作業を削減し、作業者にアプリへの作業完了登録を促す効果も期待する。  これらの追加機能は特許を出願している。同社は進捗図や進捗線を印刷して現場に貼りたいという要望も踏まえ、今夏にも簡易にPDF化して印刷できる機能を追加する予定。今秋には進捗表をより分かりやすく把握できる機能の改良も視野に入れる。 from...

2025年2月18日火曜日

スコープ/新大宮上尾道路整備で大深度に橋梁基礎構築、施工は清水建設

 国土交通省関東地方整備局が埼玉県内で整備を進めている高架式の自動車専用道路「新大宮上尾道路」のうち、施工条件が厳しい区間で工事の最盛期を迎えている。国道16、17号が交差する「宮前地区」(さいたま市西区)は施工空間が十分確保できないため、ニューマチックケーソン工法を採用して橋梁の基礎工事を進めている。大深度に基礎を構築する工事に挑む清水建設の現場を取材した。  新大宮上尾道路は国道17号で発生している慢性的な交通渋滞の緩和と県央地域の発展を目的に、さいたま市中央区~鴻巣市を結ぶ延長約25・1キロの自動車専用道路として計画されている。中央区円阿弥~上尾市堤崎(与野~上尾南)の約8キロは事業化され、国道17号の上空を通る高架構造を計画している。事業主体は関東整備局と首都高速道路会社の2者となっている。  道路工事の中でも難関とされるのが国道17号の「新大宮バイパス」と「上尾道路」が分岐する宮前地区の橋梁基礎工事。2本の道路の間にある約13メートルの幅に新大宮上尾道路の橋梁基礎を計9基設ける。清水建設が5基(P87~P91)、東急建設が2基(P93、P94)施工を担当している。  基礎工事に採用したニューマチックケーソン工法は、軟弱地盤や固い地盤にも利用できる。逆さまにしたコップを水中に押しつけると、気圧が働いて水の浸入を防ぐという原理を応用して開発された。地下水の浸入を防ぎながらコンクリートの箱を構築する。  ケーソンの先端には天井走行式の掘削設備や排土設備などを使って土を掘り進める作業室が設けてある。地上では事前にリング状のケーソンを構築しておく。掘削した穴にケーソンをセットすると自重で沈下する。その後も土を掘り進めながらケーソンをセットするという作業を繰り返し行い一体化する。ケーソン1ロットは直径6メートル、高さ5メートル、厚さ1・2~1・5メートルの規模となっている。  通常、橋梁基礎工事では既成杭を使用するケースが多い。杭を打設する際は周辺地盤の崩壊を防ぐ目的で土留めや支保工を設置する。最低でも幅20メートル程度の作業ヤードが必要になる。同工事の現場ではオリエンタル白石が開発した「スリムケーソン工法」を採用。幅は8メートル程度で済み、狭い空間での施工を可能にする。  基礎の深さは最大57・5メートルを想定。ケーソンは27~28日間で5~6メートルのペースで設置する。地上から10メートルの深さまでは函内シャベルで掘削し、10メートル以深は事務所に据え付けているコントローラーで遠隔操縦する。  清水建設では既に2基(P87、P89)の基礎工事を完了し、現在は3基同時に施工を行っている。同社の佐藤元信工事長によると「3基同時に施工を進めているため、延べ労働時間が最も長い」という。時間外労働の上限規制が適用されている中、週休2日制や建設キャリアアップシステム(CCUS)を導入して働き方改革にも注力する。  基礎工事では常に高い品質確保が求められる。そこで、事務所内に設置した計測機器で施工状態を監視している。「函内圧力調整システム」を使ってケーソン内部の気圧を高め、常に地下水が浸入していないかをチェック。傾斜計でケーソンが水平を維持しているかも確認している。  完成した道路をイメージしやすくするため、MR(複合現実)も活用。タブレット画面に映し出したパースを使い、警察協議や用地交渉などに役立てている。  現場では35人の作業員が昼夜2交代制で工事に従事している。1月30日時点での進捗はP88が36・7メートル、P90は27・8メートル、P91が32メートル地点まで沈下している。  物流の円滑化や首都圏中央連絡自動車道(圏央道)沿線からのアクセス向上に貢献する新大宮上尾道路。工事を所管する大宮国道事務所の久保智史工務課長は施工会社に対し「工事の安全性を確保しつつ、高い品質を期待したい」とコメント。清水建設の佐藤工事長は「交通の妨げにならないように努め、無事竣工を迎えたい」と展望する。  宮前地区の橋梁基礎工事は2基残っており、今後工事発注する予定だ。 from...

データラボ/スマートヘルメットで出来形計測、最適なデバイスと新手法確立へ

 3Dデータの活用を手掛けるDataLabs(データラボ、東京都中央区、田尻大介代表取締役兼最高経営責任者〈CEO〉)が、ヘルメットにカメラが内蔵されている「スマートヘルメット」を活用した出来形計測の実用化に注力している。三つのデバイスを使い撮影したデータを点群化し、3D配筋検査システム「Modely(モデリー)」でモデルを検出。操作性や安全性などを比較検証した。最適なデバイスと新しい手法の確立を目指す。  実証実験は、入交建設(高知市、窪内隆志代表取締役)が施工する「令和5-6年度南国安芸道路芸西高架橋下部P1-P5工事・令和5-6年度南国安芸道路西分高架橋下部P3、P4工事の合同」(発注・国土交通省)で実施した。同現場で▽RTK測量(iPhone)▽Go Pro▽スマートヘルメット(BeeInventor社「DasLoop Video」)-の三つのカメラデバイスを使用し、橋脚フーチング部の鉄筋組み立て完了後の出来形を計測、比較検証した。  結果、スマートヘルメットが現場での作業性、安全性で一番高い評価を得た。撮影時にカメラの画角と角度に注意が必要だったが、問題なく撮影でき、主筋を点群データからモデル化できることも確認した。  一方、iPhoneは撮影時に両手がふさがるため、やや足元に注意を払う必要があり安全性で課題が残った。Go Proはヘルメットに直接装着するため突起となり、足場などの狭小箇所には不向きという結果となった。  田尻CEOは「ヘルメットは現場で必ずかぶる。両手を空けた状態で別の作業をしながら、鉄筋の状態の動画も取れて出来形検査ができる点は期待できる」とした。  入交建設の担当者からは「スマートヘルメットやヘルメットマウント型の動画撮影による出来形管理を行うには、撮影者自身がどのように映っているかの認識が難しい。自分の目線で見えているものがカメラに映っていると認識できれば、撮影漏れがなくなりさらに現実的な手法になる」と指摘。「カメラが内蔵されているため足場などの障害物を気にしなくて良い。本来の業務をしながら、出来形計測ができる」と話している。 from...

中野洋昌国交相、八潮陥没事故現場を視察/埼玉県知事が技術・財政面で支援要望

 中野洋昌国土交通相は15日、埼玉県八潮市で起きた道路陥没事故の現場を視察した。視察後記者団の取材に応じ「市街地にも近く、非常に大きな影響が及んでいることを改めて重く受け止めた。技術的支援を引き続き行うとともに、財政的な支援も検討したい」と述べた。視察後に八潮市役所で大野元裕埼玉県知事、大山忍八潮市長と会談。大野知事が救助や復旧に向け、国の技術的・財政的支援などを求める要望書を中野国交相に手渡した。  中野国交相は「事故を重く受け止め国民の安全、安心を確保するため、上下水道全体の強靱化や老朽化対策を含め必要な対策をしっかりと検討し実施していく」と強調した。  会談冒頭、大野知事は「本復旧の検討結果を待たずに仮の下水道を整備するとともに、キャビン部分に向けて掘削を始めることを決めた」と救助の現状を説明。その上で「下水道は日本全国の問題。国土強靱化の実施中期計画に盛り込むとともに、流域下水道の今後の在り方も検討いただきたい」と要望した。  大山市長は「見てもらった通り現場の環境は大変厳しい。また周辺地域にも大きな影響が出ている。国交省や自衛隊、消防、建設業のこれまでの尽力に感謝している。一刻も早くドライバーの救出と住民生活が元に戻るよう引き続き力添えをお願いしたい」と述べた。  県は要望書で救助や応急対策、抜本的な復旧に向け国による技術的、財政的な支援を求めた。陥没事故を踏まえ地下埋設物のデータベース構築の推進や、次期国土強靱化実施中期計画への下水道強靱化の明記、国が進めるウオーターPPPの再検討と下水道事業の補助要件からの除外を求めた。  大野知事によると、中野国交相は流域下水道に対し全国的な問題としてしっかり取り組んでいくとともに、ウオーターPPPは「地方自治体などに意見を聞き、より良い方法を考えていきたい」と応じたという。 from...

香川県/畜産・水産試験場建て替え、25年度に実施設計

 香川県は2025年度、試験研究機能の強化を目的に現在地で建て替えを計画している畜産試験場(三木町下高岡2706)と水産試験場(高松市屋島東町75の5)の実施設計に着手する。それぞれ当初予算案に9621万6000円、8475万2000円を計上した。実施設計の発注時期はいずれも年度後半となる見込み。指名競争入札で委託先を選定する予定だ。  畜産試験場は本館(1963年竣工、RC造2階建て延べ296平方メートル)や実験棟(56年竣工、同2階建て延べ247平方メートル)、付帯施設を建て替え、1棟に集約する。磯野建築事務所で基本設計を進めており、25年度前半に完了させる。当初予算案の事業費には造成工事の費用も含む。  水産試験場は本館(70年竣工、RC造2階建て)と増養殖実験棟(71年竣工、RC造平屋)の2棟延べ約2000平方メートルを建て替える方針。基本設計は未発注で24年度中に委託したい考えだ。 from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171496 via 日刊建設工業...

2025年2月17日月曜日

回転窓/セントレアの開港20周年

 英語で中部地方を意味する「central(セントラル)」と、空港の「airport(エアポート)」を組み合わせた造語「セントレア」。2005年に開港した中部国際空港(愛知県常滑市)の愛称であり、全国9000点を超える応募の中から選ばれた▼選定理由の一つに〈語感が優雅で美しく、中部国際空港への期待感を象徴するような新しいイメージを感じさせる〉とある。利用者の利便性を追求し、中部と世界を結ぶセントレアがきょう17日に開港20周年を迎える▼当時の本紙特集は〈成田、関西と並ぶ3番目の国際ゲートウェイが誕生〉の見出しで新空港の整備効果や建設工事、施設の特徴などを紹介。翌3月に愛・地球博(愛知万博)の開幕を控えた厳しい工程の中で整備が進められ、1990年の基本構想公表から15年を経て待望の開港であった▼中部圏の成長発展を支えるセントレアで現在、2本目となる滑走路の整備プロジェクトが進行する。2025年度に着工し、完成は27年度の予定だ▼20年前に多くの人の夢を乗せてテイクオフしたセントレア。次代に向け飛躍していくための新たな歩みが始まっている。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171472 via 日刊建設工業...

凜/東洋熱工業工事部工事課主事・藤岡杏奈さん、信用・信頼してもらえる所長へ

 入社6年目。これまでに主に3現場を経験し、設備工事の施工管理の仕事にも「ようやく慣れてきた」と感じている。「引き渡し直前までバタバタする。ちゃんと暖房や冷房が効くのか、人が使えるのかと緊張する」と明かすが、だからこそ「現場で建物がどんどん出来上がり、本当に終わった時は達成感がある」とやりがいを語る。  昔から住宅販売のチラシに描かれた間取り図が好きで、大学では建築学科に進んだ。しかし、当初志望していた建築デザイン系には入学直後に「これじゃない」と直感したという。  サブコン業界に関心を持ったのは3年次の空調設備の講義がきっかけだ。その夏には東洋熱工業のインターンシップに参加し、その後の入社につながった。  現在は東京都内で研究施設の新築現場に携わる。所長をはじめ現場には女性が多く、「男女差は感じない」と話す。工事は2月から3月にかけてピークを迎える。6月の竣工予定に遅れが出ないよう「最後までちゃんと後悔がないように、一つ一つ確認しながらやっていく」と気を引き締める。  理想の所長像は「コミュニケーションを取れる所長」。偉ぶらず、未確定の指示を出さないことを常に意識している。「現場に入る協力業者の方に信用され、信頼してもらえるようにしたい」。  (ふじおか・あんな) from...