2025年4月25日金曜日

大阪IR/30年開業へ大規模計画が始動、夢洲を国際観光拠点に

 IR(統合型リゾート)の整備が進められている大阪市此花区の人工島・夢洲で24日、事業主体の大阪IRが建設本体工事の起工式を行った。来賓のあいさつでは祓川直也国土交通省観光庁長官や吉村洋文大阪府知事らが登壇し無事の完成を祝った。2030年夏ごろの開業を目指し、大阪の成長につながる国際観光拠点を構築する大規模プロジェクトが動き出した。                  =1面参照  主催者のあいさつでは、大阪IRの代表取締役で日本MGMリゾーツのエドワード・バウワーズ代表執行役員社長兼最高経営責任者(CEO)が「大阪、関西、そして日本と世界をつなぐ新たなゲートウエーを築き、ここで生まれる出会いや感動が未来の活力につながる場としたい」と力を込めた。  共同代表を努めるオリックスの高橋豊典執行役グループ関西代表は「日本初の統合型リゾートとして世界最高水準の施設を実現し、驚きと感動を届ける。行政や株主、設計・施工関係者と力を合わせて取り組む」と決意を示した。  来賓のあいさつでは祓川観光庁長官が「5年後に多くの人が楽しめる素晴らしい施設が完成することを期待している」と語った。  続いて吉村知事は「IRは圧倒的な非日常空間を生み出す。観光やビジネスの新たな需要を創出し、大阪の経済成長をけん引する起爆剤となる」と強調した。  横山英幸大阪市長は「1兆円超の投資が行われ、年間2000万人が訪れる国際観光拠点となる。ベイエリア全体のまちづくりと一体で、未来の大阪を形づくる柱にしたい」とした。  大阪IRと大阪府、市が策定した整備計画によると、IR全体の施設総床面積は約73万1000~84万8000平方メートル。MICE(国際的なイベント)施設やホテル、劇場、商業施設、パビリオン、カジノ、緑地・水辺空間を整備する。  カジノが入るホテル「MGM大阪」を配置するエリア(Bブロック)の工事は竹中工務店・竹中土木・錢高組・南海辰村建設・淺沼組・松村組・森組JVが担当。他ブロックの「MUSUBIホテル」や「関西ツーリズムセンター」「エネルギーセンター」「フェリーターミナル」「結びの庭」の工事は大林組・大鉄工業・TUCHIYA・富国建設JVが行う。  大阪IRは日本MGMリゾーツとオリックスが各41%を出資し、竹中工務店、大林組、関西電力、JR西日本など22社が参画している。  最後に吉村知事と横山市長は「夢洲の開発を含む今後の大阪の成長に建設業界の力が不可欠」と述べ、引き続きの協力を呼び掛けた。 from...

回転窓/幾多の困難乗り越え再建

 つつじの名所で知られる根津神社(東京都文京区)で「文京つつじまつり」が30日まで開かれている。今は早咲きの花が終わり遅咲きの花が見頃。まつりの期期中に根津権現太鼓や奉納演芸など多彩な催し物も行われる▼境内では現在、築130年以上たつ木造建築の移築工事が進む。森鴎外が小説「舞姫」などを執筆した旧邸であり、2020年閉館した台東区の旅館「水月ホテル鴎外荘」に保存されていた▼くぎを使わない組み込み式で柱には節のない木をぜいたくに使い、大黒柱のような太い柱を用いず全体で支えるという構法で頑丈な造り。宮大工のこだわりが詰まった明治期の貴重な建築物だ。これが江戸期の建造物を残す根津神社に移築されることになった▼ただ困難も多く、その一つが現行法規への適用。旧邸は文化財指定されていないため、当時の面影を残しつつ、構造や耐火など各種基準を満たして移築しなければならない。価格高騰にも直面するが3度のクラウドファンディングで乗り切った▼22年秋に始動した移築プロジェクトが6月に終わる。邸宅、旅館を経て再生された名建築を見るのが楽しみでならない。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=173385 via 日刊建設工業...

国交省/官民連携基盤整備推進調査費配分、中部整備局管内から岐阜県高山市が選定

 国土交通省が進める「官民連携による地域活性化のための基盤整備推進支援事業(官民連携基盤整備推進調査費)」の2025年度第1回配分で、中部地方整備局管内から岐阜県高山市の広域観光拠点形成のための基盤整備検討調査が選ばれた。公園・広場の整備・運営に向けたPPP/PFI導入可能性検討費1600万円のうち、800万円を助成する。  対象地は上ノ町・丹生川町新張地区。高山市街地から南東へ約5キロの位置で、広域観光周遊ルートのモデルコースのエリア内にある。山岳眺望に恵まれた広い土地、良好な自然環境を持つが、観光資源を十分に生かし切れていない。  周辺では長野県松本市方面へ続く中部縦貫自動車道(高山清見道路)の延伸事業が進んでおり、中間ICの設置も予定されている。中間ICに隣接して公園・広場を整備することで周辺への民間投資を誘発し、地域活性化や観光・交流人口の拡大が期待できる。  市は本年度、現地測量などの基礎調査、概略設計、PPP/PFI導入可能性検討を実施する。今後、業務を委託するための手続きを進める。2027年以降にPPP/PFI事業者による公園・広場施設の整備・管理運営を行う予定。 from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=173390 via...

川崎市/新川崎・創造のもり(幸区)機能更新基本計画、イノベーションパーク形成へ

 川崎市は「新川崎・創造のもりの機能更新に向けたイノベーション拠点整備基本計画」を策定した。幸区の新川崎・創造のもり地区で、2023年に慶応大学と締結した連携協定に基づいた量子イノベーションパークの形成を目指す。エリア内のケイスクエアタウンキャンパスの既存5棟を解体し、延べ約4・9万平方メートルの施設を新設する計画。事業手法は定期借地権方式で、25年度に事業者を選定する。26、27年度に設計、27年度に工事着手し、29年度末の供用開始を予定。概算施設整備費は約255億円と見積もっている。  事業手法は市の財政負担が少なく、将来的な行政需要に応じた土地利用が可能となる定期借地権方式を採用する。計画敷地は現在、市と川崎市まちづくり公社が事業用定期借地権契約を設定している。契約期間が30年3月となっているため、新たな事業者を選定後、両者合意の上で契約を前倒し解除し、新事業者と定期借地権契約を締結する予定。  イメージプランによると新施設は建築面積約6400平方メートル、延べ床面積約4万9000平方メートル。高さはラボ棟約44・5メートル、商業・住宅棟約19メートル。既存建物の解体は、新事業者が施設の建築工事と一体的に行い、工期短縮と整備費の圧縮を図る。  導入機能はオープンファクトリーやコワーキングスペースなどの研究・開発機能に加えて、国内外の研究者とその家族が滞在できるスペースも備える。就業者や来訪者、地元住民が利用できるカフェ、レストラン、ショップなども配置する。施設の整備・運営は民間主体とする。市はコワーキングスペースとオープンファクトリーなど、1000~1200平方メートルの整備・運営を担う考えだ。  新川崎地区(幸区新川崎)は旧国鉄操車場跡地を中心としたエリア(33・2ヘクタール)。創造のもりはD地区に位置し、産学官連携の研究開発拠点形成に向けて段階的な施設整備を進めている。 from...

大林組/複合災害を再現する実験装置開発、被害軽減に有効な工法や災害対策の検証可能

 大林組は、地震と降雨の複合作用を考慮した実験が可能な装置「遠心場(えんしんば)降雨発生システム」を開発した。地震と降雨が発生した時の地盤状況をシミュレーションすることで検証可能。大林組技術研究所(東京都清瀬市)の遠心模型実験装置に搭載し、既存の実験設備では再現できなかった複合災害の状況を作る。複合災害による被害軽減に有効な工法の検討や災害対策に役立てる。  同装置は複合災害に対する影響評価や対策効果の検証に活用。遠心模型実験装置の回転で動的バケットが振り上がり、システムが横向き状態で遠心力が作用することで実際の土構造物と同じ力関係で被害を再現。縮小模型に対して遠心力を作用させて、地震動や構造物に働く力を与え実物と同等の挙動を再現できる。  実際の降雨を再現し、地中の水分量が増加して不安定化した地盤が崩壊するまでの現象を再現できる。弱雨~強雨のさまざまな降雨強度や、最大2000ミリの総雨量など条件を設定でき、現状の土構造物の健全性評価や新工法の効果検証が可能になる。  地震動を再現した実験も可能。降雨後に地盤内の水分量が増加した状態で地震動が作用する現象や、地震動でダメージが蓄積した状態で降雨が作用する現象を再現する。従来はなかった降雨と地震の複合作用を考慮した評価手法の構築や新工法の効果を検証できる。高速道路や鉄道の盛り土構造物だけでなく、斜面や河川堤防、ダムなどの土構造物に対しても、同様に健全性評価や新工法の効果検証が可能。降雨や地震発生後の警戒レベルの設定検討にも役立てる。  今後、遠心場降雨発生システムを活用して、降雨と地震の複合災害に強い土構造物を構築する工法を開発する。安全・安心なインフラの提供に貢献していく。 from...

2025年4月24日木曜日

回転窓/夏の前の気配り

 家族でたまに訪れるイチゴ農園は併設するカフェも人気で、摘んだばかりのイチゴを添えたパフェがたまらなく美味だ▼農園は今月半ばからイチゴ狩りの料金を200円下げた。「少しずつ旬を過ぎるから」というオーナーのこだわりなのだそう。今年も甘さと酸味、香りもコクも絶妙だったイチゴ。かき氷の提供も始まったらしいので、旬の時期が過ぎる前にもう一度だけ、味わいたい▼環境省が熱中症の警戒アラート/特別警戒アラートの運用を23日から始めた。2024年は警戒アラートが1722回出たが、特に危険と呼びかける特別警戒アラートは一度もなかった▼特別警戒は暑さ指数(WBGT)がすべての提供地点で35以上になると予測される都道府県に出る。高温なだけでは指数が上がらず、一部でも指数が低い地域があれば出ない。「出にくい地域がある」として、同省は運用方法を検討するという▼話は戻って農園カフェのメニュー、イチゴの次はメロンやマンゴーが控える。二十四節気の立夏もある大型連休を前に寒暖差の大きな日が増えてきた。旬の味覚をしっかり楽しむためにも、どうか皆さんご自愛を。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=173348 via 日刊建設工業...

国交省/砂防工事の遠隔施工要領案策定、災害復旧以外の平時でも活用へ

 国土交通省は砂防工事の発注者向けに「砂防工事における遠隔施工要領(案)」を策定した。災害復旧工事が中心だった遠隔施工を、平時でも活用できるよう検討フローなどを整理。適用可能な工種、必要な資機材や通信環境をまとめたほか、事前準備や計画立案、施工管理などで考慮すべきポイントも分かりやすく記載した。安全確保や省人化に効果を発揮する遠隔施工の普及拡大を図り、砂防工事の生産性向上につなげる。  要領案はこれまでの試行工事で培った知見を整理した。対象工種は▽除石工▽大型土のう積み工▽構造物工▽砂防堰堤工-の四つ。それぞれ概要や使用する建設機械、出来形管理のポイントなどを示した。遠隔施工の肝となる通信や映像関連の記載も充実。直接目視、有線、無線の各方式や、機材のメリットとデメリット、使い分けを説明している。  発注に当たり事前準備やオペレーターの確保、有人建設機械との混在といった注意点も盛り込んだ。具体的な日作業時間や工程表の策定、特記仕様書の記載例なども示し、発注の担当職員が使いやすいよう工夫している。要領案は3月17日付で地方整備局などに送付した。  国交省のi-Construction2・0のロードマップ(24年度策定)によると、遠隔施工分野は今後5年程度で取り組む短期目標に「砂防現場における活用拡大」を掲げている。砂防分野の遠隔施工は雲仙・普賢岳噴火時の火砕流、土石流対策工事で本格的な適用が始まり、有珠山噴火や紀伊半島豪雨、熊本地震など大規模災害を経験しながら技術開発が進んだ。  最近は地域建設会社による遠隔施工事例も出始めている。ただ施工例は多くなく、災害以外の活用は一部の直轄試行工事にとどまっているのが実情だ。 from...

LIXIL/愛知県常滑市に「トイレの文化館」開設、発展の歴史を世界に発信

 LIXILは運営する文化施設「INAXライブミュージアム」(愛知県常滑市)に、日本のトイレ文化を発信する展示館「トイレの文化館」を17日開設した。各時代を代表するトイレの実物や図版、資料などを通じて、西洋の進んだ技術を取り入れながら独自に発展してきた日本のトイレ文化を紹介する。衛生面や技術面で世界中から注目を集めている日本のトイレ。その背景にある精神文化をひもときながら、日本のトイレの発展の歴史を世界に発信する。  展示室には、江戸時代の絵図面を基に復元した木製の樋箱(ひばこ)や、白地に青で美しい絵付けを施した染付古便器、世界に先駆けて発明された19世紀イギリスの水洗トイレなどの貴重なコレクションを展示する。国産初の温水洗浄機能付き便器(シャワートイレ)など、日本のトイレ史を飾るエポックメーキングとなった製品も紹介する。  同館は昨年、LIXILの水まわり・タイル国内事業が100周年の節目を迎えたことを記念して開設された。LIXILの源流の一つである旧伊奈製陶は1924年に発足。トイレなどの衛生陶器は太平洋戦争終結直後の45年から製造し、今年で80周年を迎える。  INAXライブミュージアムの尾之内明美館長は「改めて、日本のトイレが世界に誇れる文化だと感じてもらいたい。常滑を訪れる多くの外国人にも日本のトイレ文化への理解を深めてほしい」とPRする。 from...

神戸市/ウォーターフロントグランドデザイン策定、LRT導入など目指す

 神戸市は、2040年ごろを目標年次とする「神戸ウォーターフロントグランドデザイン」を策定した。25年度に迎えた神戸空港の国際化などで今後変化する社会情勢を見据え、ウオーターフロント地区(中央区)の魅力向上に向けてソフト・ハード面で取り組む戦略をまとめた。LRT(次世代型路面電車)の導入やウオーカブル空間の構築などを描く。  「海・山・空を感じられる海辺空間で、港の歴史と新たな価値が交わり、国内外の来訪者を魅了する街」を全体コンセプトに掲げる。▽移動・回遊▽緑とオープンスペース▽夜景・ナイトタイムエコノミー▽民間投資による街づくり-の4分野に戦略を設定する。  ウオーターフロント地区は、港街神戸のシンボル・ポートタワーやメリケンパークがある中突堤周辺、波止場地区の京橋、民間再開発が進む新港突堤西の3エリアにゾーニング。中突堤周辺は「港街を感じるエンターテインメント空間」をコンセプトに、中突堤中央ビルなど誘客施設の再整備を行い、ウオーカブル空間の形成を目指す。  京橋では船だまりを一部埋め立てた上で緑地を整備し、にぎわい施設を誘致。水際のプロムナードに沿ってLRTなど次世代モビリティを走行させる。北側の旧居留地エリアと連携し回遊性の向上を目指す。  新港突堤西では、水域空間にマリーナを誘致し上質な親水空間を形成。次期再開発で宿泊・商業機能の導入を目指すほか、倉庫など歴史的建造物を活用したにぎわい拠点の整備を図る。 from...

清水建設/溶接ロボの機能を大幅改良、作業量10%超増大・熟練技能者に迫る動作も

 清水建設は、溶接ロボットの機能を大幅に改良した。原型タイプで6軸をベースとしているアームを7軸に見直し作業範囲を拡大。溶接技能者と同様のトーチ動作を可能にし、品質チェックで技能者との協業もできるようにした。溶接能力は1時間当たり10~12メートル。1日当たりの溶接作業量は改良前に比べ10%超増大する。今後は早期に同社施工の現場で活用していく。  改良版「Robo-Welder」として開発、実用化。東京都内の大規模複合施設現場で実証した。  原形タイプと同様、開先形状(溶接部)のセンシング機能と溶接トーチを搭載した6軸のロボットアームをベースとする。新たにロボットアームを旋回式台座(ピボット型台座)に据えて7軸化し作業範囲を倍増。大断面の鉄骨柱に対しても柱の両側に1台ずつ設置することで、設置替えすることなく全周溶接できる。  ロボットアームを改良し、熟練の溶接技能者に近いトーチ動作も実現。溶接線を対称軸にしたトーチの反復(ウィービング)移動スムーズ化や溶接点に対するトーチの角度調整を可能にした。トーチの移動速度やワイヤ(溶接材料)の送り出し速度を自動制御できるようにし、ボックス柱のコーナー部や反対側に設置した溶接ロボットとの継ぎ目部分(会合部)について溶接品質も確実に確保できるようにした。  手持ち時間が多くなる溶接技能者とロボットの協業体制も確立。技能者が溶接作業に欠かせない品質チェックとスラグの除去作業を担うことにより、ロボットとの協業による生産性向上や品質確保といった効果を最大限引き出せる。  溶接技能者1人でロボット2台の操作が可能。1日当たりの溶接作業量は技能者1人当たりの1・75倍に向上する。習熟すると「技能者1人・ロボット4台体制」が可能になる。 from...

2025年4月23日水曜日

回転窓/真に必要な物価高対策

 東京・新橋に勤めるサラリーマンの多くが利用する駅前ビル内の飲食店街。和洋中なんでもそろい、平日昼は1000円以下のランチメニューが充実している▼ご飯お代わり自由というありがたい店も多かったが、そのほとんどで先週から無料の場合は1回までという制限が設けられた。店員に聞くと、「米の高騰」が理由という▼農林水産省によると米の価格は13週連続で上がっている。3月末には5キロ当たりの平均販売価格が4206円に高騰し、2000円程度だった1年前から倍増した。背景には猛暑による収穫量の減少やインバウンドも含めた消費の増加がある▼政府は新米が出回る前の7月まで毎月一定の備蓄米を放出し、流通の安定化により価格の引き下げ方針を打ち出す。ここにきて米国産米の輸入拡大案も浮上する▼生活必需品のガソリンも1リットル200円超のエリアが出ている。猛暑が予想される夏は電気代も大きな負担になるだろう。国会では夏の参院選を前に減税、補助金、給付金といった聞こえの良いキーワードが連日躍る。国民にとって真に必要な物価高対策とは…。政治の覚悟とセンスが問われる。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=173313 via 日刊建設工業...

利根沼田テクノアカデミー/「板金村構想会議」立ち上げ、メーカーらと人材育成で連携

 利根沼田テクノアカデミー(群馬県沼田市、桑原敏彦校長)は板金工を対象に、外国人材の職業訓練と、ドローンなど新技術の資格取得を組み合わせた技能者育成の枠組みを整える。地域の板金施工業者と関連資機材メーカー、職業訓練校が人材育成で連携。「全国板金村構想会議」を立ち上げ、取り組みを全国に広げる。  国土交通省幹部との意見交換を18日に同アカデミーで開き、桑原校長が「板金村構想」を打ち出した。個別企業での人材確保が限界に達しつつある中、外国人技能者を会社の枠を超え育成する体制を築き、人材確保の切り札にする考え。  職業訓練と並行し、技能実習生の受け入れ団体と連携した日本語教育やマナー教育を実施。ドローン操縦技能の認定取得やコンテナハウスの組み立て訓練も行い、一人前の職人を育てる。  板金資機材メーカーのセキノ興産(富山市、関野洋平社長)と連携し、同社の顧客網を生かして同構想を全国にも波及させる。建設産業人材確保・育成推進協議会(人材協、事務局・建設業振興基金)の若年者入職促進タスクフォースの機能を活用し、同会議を立ち上げる。会議は年2回程度開く予定だ。 from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=173320 via 日刊建設工...

三重県鳥羽市/鳥羽駅周辺エリア再生ビジョン策定へ、40年の目指すべき姿示す

 三重県鳥羽市は本年度、鳥羽駅周辺エリア再生ビジョンを策定する。昨年度に立ち上げた再生ビジョン策定委員会と検討部会で引き続き検討を進め、自然や観光、防災などの視点も踏まえ2040年を目標とした目指すべき方向性を示す。エリアの魅力と価値を高めるための施策や実現に向けたロードマップ、推進体制などを盛り込む。11月にビジョン素案をまとめ、市民意見を募るパブリックコメントを経て26年3月の策定を目指す。  JRや近畿日本鉄道が乗り入れる鳥羽駅(鳥羽1)の周辺は、ミキモト真珠島や鳥羽水族館、鳥羽マリンターミナルなど観光資源が豊富で、地域経済の重要エリア。市役所や鳥羽城跡なども近接するが、観光施設や店舗の老朽化が進み、高いポテンシャルを生かし切れていない。大規模地震や台風など自然災害への対策も課題となっている。  このため市は、鳥羽駅周辺エリアの再生を目指し昨年、ビジョンの策定作業に着手した。エリアの現況を整理し、将来像や再生まちづくりのテーマ・目標を検討した。目標案にはにぎわい創出や防災強化、文化継承などを挙げ、そのための取り組みとしてにぎわい拠点となる公共空間の整備や集客施設の防災拠点性の向上、鳥羽城、旧鳥羽小学校跡の利活用、交通広場の再編とエリア内交通拠点の連携強化、鳥羽マリンパークの再整備などの可能性を示した。  本年度は、海側の「鳥羽駅、佐田浜地区」、岩崎通りや錦町通りを含む「中心市街地地区」、「城山公園・鳥羽城址地区」の3地区の将来イメージを具体化し、実現に向けた施策を議論。ロードマップや施策の推進体制を検討する。  ビジョン策定業務は日建設計、事業マネジメント支援業務はURリンケージが担当している。 from...

2025年4月22日火曜日

回転窓/何でもない日のちょっとした行動

 環境への関心を高める活動として1970年4月22日に米国で「アースデイ(地球の日)」が産声を上げた。同日を選んだ理由は特段なく、「何でもない日にできることをする」というスタイルが事の始まりだとか▼社会・経済活動の全般で環境問題を意識するのが当たり前になっている。多少の不自由は我慢しても環境に優しい行動を心掛けるのが当世流。アースデイのイベントは世界各国で開かれ、日本でも各地でイベントやセッション、マルシェなどの予定があるそうだ▼アースデイが誕生した3年後、民間シンクタンクのローマクラブは「人口増加や環境汚染が続けば100年以内に地球上の成長は限界に達する」と警鐘を鳴らした▼成長の限界論が世に出て半世紀、ブレークスルーの一手はいまだ見えていない。へそ曲がりな小欄としては、エコ意識は高まったけれども行動が伴っていないのでは…と、重箱の隅をつつきたくなる▼米トランプ政権が打ち出した相互関税は世界貿易戦争の引き金になるかもしれず、駆け引きが激化すれば環境行動は脇に追いやられる可能性もある。経済と環境は相いれない関係なのか…。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=173290 via 日刊建設工業...

元鹿島副社長・田代民治氏が死去/第104代土木学会会長、生産現場の変革に注力

 鹿島の元代表取締役副社長で土木学会会長を務めた田代民治(たしろ・たみはる)氏が13日、千葉県内の病院で病気のため死去した。76歳だった。通夜・告別式は近親者で済ませた。喪主は妻の睦美(むつみ)さん、長男の一洋(かずひろ)氏。福岡県出身。  1971年に東京大学工学部土木工学科を卒業し鹿島に入社した。川治(栃木県日光市)、厳木(佐賀県唐津市)、宮ケ瀬(相模原市)、温井(広島県安芸太田町)の各ダムで建設工事の最前線に立ち、技術指導の立場で7カ所のプロジェクトに関わるなど、ダム建設に精通する技術者として活躍した。  執行役員東京土木支店長、常務執行役員土木管理本部長、取締役兼専務執行役員、2010年代表取締役副社長執行役員、常任顧問を経て21年顧問。  経営幹部として重責を担いながら16年3月には「コンクリートダムにおける施工の高速化に関する研究」で東大から博士(工学)の学位を取得。同6月、土木学会の第104代会長に就任した。「国土の安全・安心の確保は土木技術者が担う大事な役目」とし、若い世代や女性が活躍できる環境を整えるため「生産現場のイノベーション」に心血を注いだ。長い現場経験をベースに生産性と安全性の向上にも取り組み、日本建設業連合会(日建連)の公共工事委員長としてプレキャスト(PCa)工法などの採用拡大に尽力した。  大胆な行動力と繊細な心遣いを兼ね備えた“胆大心小”のリーダーとして多くの人に慕われた。 from...

東北整備局/25年度事故防止目標、予定外作業・省略行動の根絶を

 東北地方整備局は2025年度の工事事故防止目標を公表した。全治1カ月以上3カ月未満の中傷事故が約半数に上る実態を重く見て、危険要因を踏まえ対策を強化。発生要因の大半を占める「予定外作業」と「省略行動」の根絶を目指す。件数が大幅に増加した「物損公衆災害」の防止など5項目を重点取り組み方針に設定し、工事事故を撲滅する。  重点取り組み方針には▽「墜落・転落」「機械・工具など取り扱い」「建設機械」事故の危険性がある現場の対策徹底▽「予定外作業」「省略行動」の排除に向けた取り組み徹底▽新規入場者と下請業者の安全教育徹底▽物損公衆災害防止のための事前対策の徹底▽DXを活用した事故対策の取り組み推進-の5項目を掲げた。  死亡災害につながる危険性が高い墜落・転落、機械・工具など取り扱い、建設機械について施工計画の段階で事故発生の要因を抽出し、対策を徹底する。併せて、作業手順書にない予定外作業や準備不足による省略行動をなくすため、現場ごとのルールを設定し、KY活動などにより下請作業員にも禁止事項を浸透させる。  新規入場から1カ月以内の作業員が事故に遭うケースが3割を占める。このうち入場2週間以内が7割と高い傾向を踏まえ、新規入場者と下請業者への安全巡視を強化するとともに、具体的な危険作業の事例も伝える。  埋設物損傷による物損公衆災害が前年度に比べ増加したことを受け対策を徹底する。発注者は地下埋設物の位置を設計図書に明示し、受注者は臨場確認などを確実に行うことで災害防止につなげる。安全性向上へDXを積極的に活用する。建設機械接近警報システムによる重機接触防止対策やウェブカメラでの監視、VR(仮想現実)技術を駆使した安全訓練、IoT機器による熱中症対策など最新の技術や機器を導入する。  同局の事務所ごとに事故防止の目標と取り組みを定め、安全点検などを展開する。昨今の気候変動を踏まえ熱中症対策にも取り組む。  同局管内の24年度事故発生状況(速報値)は121件と23年度に比べ28件増加した。内訳は労働災害39件(1件増)、物損公衆79件(25件増)、死傷公衆3件(2件増)で、死傷者数は39人(2人増)だった。 from...

熊谷組の「華熊営造」創立50周年/台湾で記念式典開く、「なくてはならない企業」に

 熊谷組の台湾グループ会社「華熊営造」(台北市)が2024年12月10日で創立50周年を迎えた。18日に記念式典を現地で開催。熊谷組の上田真社長や山崎英樹執行役員国際本部長ら役員のほか、華熊営造の新屋忠彦董事長など約400人が出席した。大阪・関西万博の台湾パビリオン「TECH WORLD館」も紹介。鏡開きで50年の節目を祝った。  華熊営造は1974年に設立し、この50年でコンベンション・商業施設「台北世界貿易センター」、超高層ビル「新光摩天大楼」、超高層ビル「国際金融センター101ビル」(通称・台北101)、二重らせん構造の共同住宅「陶朱隠園住宅」などを施工。現在も超高層複合ビル「台北ツインタワー」や商業施設「京華廣場商辨大樓新築工事」など新たなランドマークの建設工事が続いている。  上田社長は「50周年を迎えることができたのは皆さまの支援のおかげ。熊谷組グループは『安全・品質NO.1』をスローガンに、建設を通じて地域社会の発展に寄与し、多くのランドマークとなるプロジェクトを手掛けてきた。今後も次の100周年に向かって、新屋董事長が目指す『台湾になくてはならない企業』として台湾社会に貢献できるよう、グループ一丸で尽力していく」とあいさつした。  新屋董事長は「これからの50年は台湾の建設会社として一段階上のレベル、脱・日系建設会社を目指し台湾社会になくてはならない企業、台湾社会に必要とされる企業として活動したい」と意気込んだ。 from...

2025年4月21日月曜日

回転窓/知らない街の図書館に

 高校生の頃までよく利用していた公立図書館は、戦前に建てられた古い木造の建物であった。木の床を歩いて出るきしんだ音が、静かな館内に響いて困ったのも今では懐かしい思い出だ▼その図書館が移転新築されて久しい。2代目の建物には市民ホールや生涯学習センターが併設され、座席数の多い図書閲覧コーナーを設けるなど利便性は大きく向上した▼統計資料によると国内の図書館数は増加傾向にあり、蔵書数も増えている。一方で老朽化や建て替えなどの課題を抱えた施設は多く、地方財政の悪化から図書購入費が減少。貸出数も伸び悩んでいるのが現状という▼図書館はさまざまな情報を発信する〈地域密着型施設〉と言える。旅先のそうした図書館を訪ね歩くのがエッセイストのオラシオさん。旅行者なので本を借りられないが、建築や内装などのデザインを見て楽しむこともできるとつづっている(『図書館ウォーカー』日外アソシエーツ)▼75年前に図書館の設置や運営について定める図書館法が制定された4月30日は「図書館記念日」。大型連休を利用し、知らない街の知らない図書館に行ってみるのもいい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=173231 via 日刊建設工業...

復建技術コンサル/社長に田澤光治専務昇格、6月20日就任

 復建技術コンサルタント(仙台市青葉区)は、18日に開いた取締役会で田澤光治専務が社長に昇格する人事を内定した。6月20日に開催を予定する株主総会後の取締役会で正式決定する。菅原稔郎社長は代表権のある会長に就く予定だ。  田澤 光治氏(たざわ・こうじ)1998年東北大学大学院情報科学研究科修了、復建技術コンサルタント入社。2020年執行役員都市事業部長、22年取締役交通都市事業本部長兼都市事業部長、24年専務管理統括本部副本部長兼経営企画部長。青森県出身、52歳。 from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=173229 via 日刊建設工業...

24年度のアス合材製造量、2・6%減の3360万トンで4年連続減/日合協

 日本アスファルト合材協会(日合協、今泉保彦会長)の調査結果(速報値)によると、2024年度に会員企業の工場836カ所で製造したアスファルト合材は、前年度比2・6%減の3360万トンだった。会員以外の企業を含む製造数量(予想値)は2・6%減の3540万トンと過去最低を見込む。道路工事予算は横ばいでも各種コストの上昇を背景に実質的な工事量が減り、合材製造量も減少。ピークの1992年度(8083万トン)の半分以下となっている。  会員企業の製造数量の内訳を見ると、高規格道路など向けの新規材が0・9%減の822万トン、一般道が多い再生材は3・1%減の2537万トン。製造数量に占める再生材の割合(再生合材製造率)は0・4ポイント低下の75・5%だった。製造量を地域別でみると、全10地区のうち能登半島地震で復興需要のある北陸、日本国際博覧会(大阪・関西万博)で工事需要が高まった近畿など4地区が前年度から増加した。  合材工場の稼働率は全国平均が0・4ポイント低下の32・8%。全国平均を上回ったのは関東(43・6%)と中部(36・4%)の2地区にとどまる。最も低い沖縄は19・1%だった。5地区が前年度と比べ低下した。  都道府県別の合材製造量を見ると、増加したのは前年度の反動増があった滋賀県(41・6%増)、能登半島地震で復興需要がある石川県(19・9%増)など。一方、前年度の製造量が多かった山形県(24・9%減)は反動減で減少幅が最も大きかった。  資材価格の高騰や人件費の上昇で道路建設にかかるコストも上昇している。道路工事予算が横ばいだと相対的に工事量が減少。合材製造量も減少傾向が続いている。日合協は「橋梁やトンネルだけでなく一般道路の老朽化にも目を向け、修繕していかないと、埼玉県八潮市で発生した陥没事故のようなことが他の地域でも起きてしまうのでは」と道路工事の減少に危機感を募らせる。 from...

Arent/建設業界のアジャイル開発実態調査、認知と実践に大きなギャップ

 建設DXを推進するArentがゼネコンらを対象にアジャイル開発の現状を調査した結果、アジャイル開発手法の認知と実践で大きなギャップが存在していることが分かった。回答企業の約半数がアジャイルを認知しているものの、業務やシステム開発にアジャイル手法を取り入れているのは3割以下にとどまった。多くの企業が導入に慎重な姿勢を示した。  アジャイル開発はソフトウエアやシステムの開発で短期間を一つのサイクルとし、必要な機能ごとに開発を進め、実際にリリースすることを繰り返す手法。短いサイクルで開発を進められるため、現場のフィードバックを反映しながら改善を繰り返すことができる。  暗黙知を徐々に形式知へと変換し、最適なシステム構築を実現する。一般的な開発手法では、初期段階で仕様を確定させる必要があるため、言語化されていない暗黙知を前提としたシステム開発は難しかった。  調査は2024年7~12月に同社が登壇したセミナーや展示会に来場した建設業の従事者を対象に実施。AIの導入状況や活用実態に関するアンケートで、有効回答数299件をまとめた。  「アジャイルという思想(手法)を知っている」と回答した割合は49・6%、「知らない」と回答した企業が50・4%と差は少なかったものの、業務でのアジャイル手法の活用状況では、「全面的に取り入れている」と回答した企業はわずか1・9%だった。「一部取り入れている」と回答した企業は28・2%となり、取り入れている企業は計30・1%にとどまる。「取り入れていないが検討中」5・8%、「取り入れていない」18・1%、「わからない」45・9%だった。  社内のシステム開発でアジャイル手法を「全面的に取り入れている」と回答した企業は1・5%、「一部取り入れている」と回答した企業は21・8%だった。「取り入れていないが検討中」は5・4%、「取り入れていない」が16・9%、「わからない」が54・4%となった。  Arentは「建設業界の技術やノウハウは、長年の経験や職人の勘に依存する『暗黙知』として蓄積されている。この暗黙知をデジタル化し、再現性のある形でシステム化するには、従来の開発手法では対応が難しく、アジャイル開発が不可欠だ」と指摘している。 from...

山梨県/新たな御坂トンネル整備25年度は地質調査、明かり区間予備設計など

 国道137号に「新たな御坂トンネル」の整備を計画する山梨県は2025年度、地質調査や明かり区間の予備設計などを進めるとともに住民説明会などで周知に努める。着工時期などは未定だが、用地買収に見通しが立った段階で想定スケジュールなども示す考えだ。現在の御坂トンネルの約100メートル低い位置に新たなトンネルを建設する計画。県は引き続き専門家などを交えて技術的課題などについての検討も続ける。  現トンネルが竣工から50年以上経過し老朽化が著しいことや、トンネル前後の急カーブ区間を含め大型化が進む物流トラックの通行を円滑化することなどが目的。県は20年3月にルート案を公表した。  路線名は国道137号。計画区間は富士河口湖町河口~笛吹市御坂町藤野木。計画延長は約5・5キロ、トンネル延長は約4・6キロ(現トンネルは延長2778メートル)。トンネル内縦勾配は1%程度。整備済み区間である富士河口湖町側の山宮トンネルから、笛吹市側のカムイ御坂スキー場入り口付近をほぼ直線で結ぶ計画。完成すると当該区間の通過所要時間が約10分から約5分に半減する見通しだ。  技術面では国道137号新たな御坂トンネル整備検討会議(座長・砂金伸治東京都立大学教授)がこれまで5回にわたり課題を整理してきた。断層破砕帯との交差・高圧・多量湧水への対応や大土被り区間対策、水文・地質調査結果などについて意見を交わし、詳細設計時の留意点などを確認している。既に明かり区間の予備設計に着手しており、県は事業の具体化を加速する。  ルート案公表時に長崎幸太郎知事は「新たなトンネルの整備で凍結や積雪による不安が軽減できる。グローバル化する物流への対応や、富士山噴火などの大規模災害時の避難路・救援路として強靱な道路の確保が期待できる」とコメントしている。 from...

2025年4月18日金曜日

建築へ/第34回村野藤吾賞選定/記念会

 ◇大西麻貴、百田有希両氏の「シェルターインクルーシブプレイス コパル」  村野藤吾記念会(古谷誠章代表)は、第34回「村野藤吾賞」に大西麻貴、百田有希両氏(大西麻貴+百田有希/o+h共同主宰)が設計した「シェルターインクルーシブプレイス コパル(山形市南部児童遊戯施設)」(山形市、2022年4月開館)を選んだ。5月15日に東京都内で授賞式、6月7日に兵庫県宝塚市内で講演会が行われる。  受賞作は山形市による子育て環境整備の一環として、PFI事業で建設、運営を行う児童遊戯施設。雨天時や冬期間に子どもたちが生き生きと遊べる施設であるとともに、子育て相談や保護者交流の機能を備える子育て支援の拠点として整備された。  テーマは「インクルーシブ」。障害者を含むすべての子どもたちに開かれた場づくりを目指し、車いすに対応したスロープにより体育館と大型遊戯場をひとつながりの空間として回遊できる。なだらかなドーム天井の下に広がる建築全体が遊具となり、多様な子どもたちが走り回る遊び空間を生み出している。  同賞の選考委員会は3月20日に開かれ、建築家の青木淳氏ら4人の選考委員が審査を行った。授賞式と記念パーティーは5月15日に東京・六本木の国際文化会館で、受賞記念講演会は6月7日に宝塚市役所本庁舎で行われる。 from...

大阪府/中間前金払い制度を見直し/年度繰越時の部分払い容認

 大阪府は受注者が中間前金払いを選択した工事契約案件で、やむを得ず年度を越えた場合でも出来高に応じて部分払いできるよう制度を改めた。併せて、前金払いの際に必要としていた着工届の添付も不要にした。建設工事請負契約書などの関連書類を改正し、1日以降の公告案件で適用を始めた。  対象は府が発注する全ての工事。中間前金払いでは出来高が年度内に達せず繰り越しとなった債務負担工事(複数年度にわたる工事契約案件)について、繰り越し分が完了した段階でその出来高分を部分払いできるようにした。こうしたケースで中間前金払い適用案件では原則部分払いを認めてこなかったが、適正な予算執行や受注者の資金繰り改善などを目的に見直しを図った。部分払いを行う際は、部分払い回数1回分を追加する変更契約を結ぶ必要がある。  担当課は「1日以前の契約案件でも申し出があれば部分払いを認めるよう対応する」としている。  一方、前金払いの着工届はこれまで発注部局ごとの対応とし、都市整備部発注の土木工事に限って不要としてきたが、今回の見直しにより全ての部局・工事に対象を拡大した形だ。  府はこれまでも国のやり方にならい、公共工事での中間前金払いなどの活用促進や手続きの簡素化・迅速化に取り組んできた。中間前金払いでは「出来高報告書」を不要とし、「工事履行報告書」の提出だけで認定請求を可能とする運用を導入済み。既済部分払いでは中間技術検査を既済部分検査と見なすなど、現場の負担軽減と検査手続きの効率化が進められており、今回の改正もこうした流れの一環となる。 from...

TOPPANHDら/東北4エリアでオフサイト型PPAサービスを導入

 TOPPANホールディングス(HD)は、東北エリアの4事業所(新潟県、宮城県、福島県)を対象に風力・水力発電を活用したオフサイト型コーポレートPPA(電力購入契約)サービスを導入した。電力調達と契約を東北電力が支援。1年当たり約2700万キロワット時の電力を20年にわたり供給する。地域に根差した再生可能エネルギーの利用促進と脱炭素社会の実現を目指す。  供給元は風力1カ所、水力2カ所の計3カ所。風力発電は新潟市北区にある「海辺の森風力発電所」(出力6000キロワット)で、HSE(茨城県日立市)の子会社・くろしお風力発電が運営している。1年当たりの発電量は約1300万キロワット時に上る。水力発電はいずれも農業用水設備を活用した施設となる。岩手県一戸町の大志田ダム水力発電所(出力810キロワット)は、馬淵川沿岸土地改良区が所有し、1年当たり約500万キロワット時を発電。福島県郡山市の安積疎水管理用水力発電所(出力2230キロワット)は、安積疎水土地改良区が所有し、発電量は約1000万キロワット時を見込む。  サービスの導入で、対象4事業所での電力使用量のうち約25%を再エネに切り替える。将来的には再エネ比率を30年までにグループ全体で25%以上に引き上げる計画を掲げている。東北電力は、企業の二酸化炭素(CO2)排出削減ニーズに応じ、再エネ由来のPPAやグリーン電力を提案。地域社会のカーボンニュートラル(CN)実現を後押ししていく方針だ。 from...

越谷アルファーズ(埼玉県越谷市)/新アリーナを計画/デロイトトーマツが検討支援

 男子プロバスケットボールリーグ(Bリーグ)の越谷アルファーズ(埼玉県越谷市)が、上位リーグ「B.PREMIER」の参入条件を満たす観客席5000席以上の新アリーナの建設を計画している。2029~30年シーズンの参入を目指している。27年度には着工が必要になるため、地元の越谷市や関係企業などと調整中。検討を支援する業務をデロイトトーマツに委託している。  越谷アルファーズは現在、越谷市立総合体育館(増林2の33)を本拠地としている。収容人数は約4472人でB.PREMIERの参入条件を満たしていないため、新アリーナを検討している。  越谷アルファーズは24年3月27日、市に新ホームアリーナ実現を目指すための要望書を提出。市が所有する越谷レイクタウン内の水辺のまちづくり館(レイクタウン4の1の4)と隣接地、約1万平方メートルの土地の使用と支援への配慮を求めた。  要望書では「エンターテインメント性の高い日常的な体験ができる場所」とし、地域経済の活性化につながる施設のイメージを提示。防災施設としての機能も提案した。  福田晃市長は「新アリーナの建設に当たっては多くのハードルがあり、用地の確保もその一つと認識している。詳細を伺いながらしっかりと協議、検討をさせていただきたい」と回答。その後、協議を重ねている。  基本計画では▽建設主体、施設の規模・概要▽整備手法▽土地の使用方法-などを総合的に固める。現時点で設計には着手していない。 from...

清水建設/耐火被覆吹き付けを半自動化/生産性2・5倍に、簡易操作で作業完結

 清水建設は、タッチパネルによる簡易操作で半乾き式耐火被覆の吹き付け作業を代替するロボット「Robo-SprayII」=写真(報道発表資料から)=を開発した。試作タイプを機能拡張し、自動走行機能やセンシング結果に基づくロボットの自動位置補正機能を搭載。一連の吹き付け作業を実質的に半自動化できるようになり、材料吐出量を人手による作業から1・5倍増量、生産性は試作タイプの2・5倍に向上した。  今回開発したロボットは、アーム部とアーム部の高さを調整するリフター、リフターを搭載した台車で構成。6軸のアームを駆使して吹き付けノズルを自在に操りながら、被覆材を満遍なく吹き付ける。  ロボットによる作業は作業位置への横移動、センシング・位置合わせ、ロボットを固定するアウトリガーの張り出し、被覆吹き付け、アウトリガーの折り畳みといった手順で進む。作業員は最初に耐火被覆を吹き付けるS梁の形状をタッチパネルから選択した後、画面に表示される作業ボタンを都度タッチするだけで一連の作業が完結する。  作業の半自動化で多大な時間を要していた人手によるロボットの移設・位置合わせ作業がなくなり、吹き付け作業に充てる時間の割合が増加。吹き付けのスピードもアップし、生産性が大幅に向上した。  東京都内の大規模病院現場で実証した施工では、手作業による従来の吹き付けと同じように作業員3人1組でロボットを操作。1台で1日約150平方メートルを安定的に吹き付けることができ、生産性が試作タイプの約2・5倍に向上。同じ3人1組で2台を操作した場合、生産性が約3倍に向上することも確認した。  同社は引き続き生産性を高める建設ロボットの開発や、既設ロボットのコスト低減に注力する。 from...

2025年4月17日木曜日

回転窓/避難所の備え

 避難所に必要な資機材を48時間以内に届け、被災地での支援を開始するとされるイタリア。衛生、食事、睡眠に必要な機能をセットで提供する支援は「イタリア式避難所システム」と呼ばれる▼同システムを採用した初の実動訓練が3月20、21日に長野県諏訪市で行われた。長野県災害時支援ネットワークなどが中心となり、趣旨に賛同した清水建設などが協力。視察した坂井学防災担当相が避難所の環境改善に意欲を示した▼2024年に発生した地震と豪雨で石川県内に設置された避難所が13日までにすべて閉鎖された。ピーク時には4万人が避難所に身を寄せたそう。不安で不自由な生活を強いられた避難所を離れても多くの人は依然として仮設住宅での暮らしを余儀なくされる。住まいの悩みを抱える人は7割を超えると配信記事が伝えていた▼地震を教訓に備えを議論してきた政府のチームは、避難所支援から避難者支援に考えを転換するよう提言した。温かい食事や入浴機会の提供などに民間と連携して取り組むことを求めている▼不安を少しでも軽くして落ち着けるように、避難者に寄り添った支援の広がりが必要だ。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=173118 via 日刊建設工業...

東北整備局/管内新規着手4事業に補助、上下水道の対策強化

 東北管内で上下水道の耐震化や豪雨災害の被害軽減に向けた取り組みが注目される中、東北地方整備局は補助事業で新規着手する4事業に総額9億4800万円を自治体に配分する。管路更新、雨水ポンプ場整備などを進める。昨今の激甚・頻発化する自然災害に備え、強靱な上下水道ネットワーク構築を目指す。  新規の下水道事業をみると青森県鰺ケ沢町が「事業間連携下水道事業」(5億2900万円)に着手する。昨年8月の豪雨で氾濫した町内を流れる中村川で県が実施する外水氾濫対策と連携し、内水氾濫防止、軽減に向けた雨水ポンプ場を整備。25年度は上冨田、蒲生の両雨水ポンプ場の建設や測量、用地補償を進める。  秋田県で取り組む「下水道基幹施設耐震化事業」(2億7000万円)は、男鹿市の水管橋耐震化や三種町、大館市、大仙市、横手市の管路の機能を強化する2条化を実施する。大規模地震発生時などに汚水処理への影響を減らす。  上水道事業に関しては、宮城県名取市で東北電力の検針ネットワークを活用した「スマート水道メーター」を導入する費用に1億1900万円を充てる。東北電力の「電力スマートメーターネットワーク」を活用する共同検針で効率化を図る。秋田県能代市で「水道総合地震対策事業(重要施設配水管)」に着手。3000万円を予算化し、地震発生時に断水の恐れがある向能代地区の配水管を更新する。  東北整備局は上下水道に関する自治体からの各種相談に応じるとともに対応が困難な場合の本省との連絡役を担う。  このほか、上下水道関連施設では▽丸森地区大規模雨水処理施設(宮城県丸森町)▽古川流域大規模雨水処理施設(秋田市)▽大河原地区大規模雨水処理施設(福島県郡山市)▽樋の口浄水場(青森県弘前市)▽仁井田浄水場(秋田市)-の5カ所の完成を予定している。  老朽化対策も喫緊の課題だ。今年1月には埼玉県八潮市で下水道管の破損が原因とみられる道路陥没事故が発生した。3月18日に国土交通省が下水道の幹線管路の重点調査を地方自治体に要請。「最優先」に位置付けた▽八潮市と類似の条件▽構造的に腐食しやすい、過去の調査で腐食が見つかったものの未対策▽緊急輸送道路直下で下水道起因の陥没履歴がある▽沈砂地の堆積土砂が顕著に増加した処理場やポンプ場につながる管路-のいずれかに当てはまる箇所は夏頃までの対応を求めている。 from...

日空衛/理事会でCCUSの推進方策決定、25年度の新規現場登録2000カ所目標

 日本空調衛生工事業協会(日空衛、藤澤一郎会長)は16日に東京都内で理事会を開き、2025年度の建設キャリアアップシステム(CCUS)推進方策を固めた。就業履歴の登録目標数は、24年度と同様に110万件に設定した。契約額4500万円以上の元請現場で現場登録を原則化し、導入増につなげる。新規現場の登録数を、24年度実績比10%増の2000カ所とする目標も新たに掲げた。  24年度の会員企業の就業履歴登録数は約71万件となり、目標値の約65%にとどまった。25年度は現場登録の基準を契約額1億円以上から4500万円以上に引き下げ、より多くの現場への普及を促す。  日空衛は24年10、11月に空調衛生工事の協力会社を対象としたアンケートを実施した。CCUSの登録状況は186社のうち175社が「登録済み」と回答した。雇用する技能労働者については157社が「全員登録完了」とした。  一方、現場での実用化には課題を残した。技能労働者1人当たりの月平均の就業履歴の蓄積数を「20日以上」と回答した企業は57社。18社は「5日未満」、16社は「5日以上10日未満」。「把握していない」との回答も37社に上った。  理事会後に開いた会見で、藤澤会長は「CCUSへ登録するメリットが技能者に行き渡る環境が重要だ」と指摘し、適用現場のさらなる増加に意欲を見せた。 from...

全建/地域建設業の生産性向上後押し、ICT機器購入補助の申請受付

 全国建設業協会(全建、今井雅則会長)は地域建設業などの生産性向上を後押しする。ICT機器の購入などにかかる費用の補助金事業で、交付の申請受け付けを17日に始める。時間外労働上限規制の適用を受け生産性向上が課題となる中、ドローンやウエアラブルカメラといったICT機器の普及を通じて、生産性向上や自然災害発生時の応災力強化につなげる。  国土交通省の「建設市場整備推進事業費補助金」を全建が代行して執行する。予算額は約2億4000万円。ICT機器の購入やICT機器を活用した防災訓練にかかる費用の2分の1を補助する。5月30日まで申請を受け付ける。対象は建設業に関連した団体や建設会社など。全建傘下の団体や企業でなくても申請できる。募集要領の詳細は全建ホームページから確認できる。  申請を締め切った後、補助対象を審査・決定して交付対象者に通知する。補助対象となるのは災害時の応急復旧を想定した防災訓練に当たり、作業員の技術習得や対応強化につながるICT機器。具体的には▽ウエアラブルカメラ▽ドローン▽遠隔操縦装置▽四足歩行ロボット▽レーザースキャナー(LS)-など。防災拠点となる業界団体の連絡体制構築を目的とした次世代衛星通信サービス「スターリンク」の導入も対象となる。  全建が傘下の建設業協会や会員企業などを対象に実施したアンケートでは、重点課題として生産性向上を指摘する回答が多い。2月に首相官邸で行った石破茂首相、中野洋昌国土交通相、業界団体との車座対話の場で全建は生産性の向上に取り組み、定期的にフォローアップすることなどを申し合わせている。 from...

静岡県/ペロブスカイト太陽電池の導入実証開始、鈴与商事ら協力・耐久性など検証

 静岡県は、県内初となるペロブスカイト太陽電池の導入実証をスタートした。鈴与商事と積水化学工業、積水ソーラーフィルムが協力し、清水港の県有施設屋上に設置。1年かけて耐風圧や塩害環境下での耐久性などを検証する。県はペロブスカイト太陽電池をはじめとした次世代型太陽電池の普及促進を図るため、民間企業や研究機関などで組織する「県創エネ・蓄エネ技術開発推進協議会」の下部組織となる部会を6月までに設置し、技術支援やモデル導入実証に取り組む方針。  ペロブスカイト太陽電池は軽量で柔軟性があるため、従来は設置が困難だったビルの壁面や耐荷重が低い屋根にも設置できる。製造工程も従来より少ないためコスト削減が可能。  県初の導入実証は、積水ソーラーフィルムが設計・製造・販売を行っているフィルム型ペロブスカイト太陽電池14枚を、興津13号上屋(静岡市清水区)の屋上に設置。1年かけて発電量や劣化状況などのデータを取得し、耐久性や製造技術の確立に向けた開発に生かすとともに関連ビジネスへの参入促進を目指す。  今回の導入実証は、次世代型太陽電池の普及促進に向けた取り組みの第1弾。県は取り組みを加速するため、産学官民で組織する創エネ・蓄エネ技術開発推進協議会に、ペロブスカイト太陽電池をはじめとした次世代型太陽電池分野に特化した部会を新たに立ち上げる。開発の現状や課題などの情報共有、技術支援などを行う。モデル導入実証にも積極的に取り組む考えだ。 from...

登録基幹技能者に「道路等法面保護」追加/6月に初回講習

 登録基幹技能者の新たな職種に「道路等法面保護」が追加された。登録基幹技能者講習の実施機関となる全国特定法面保護協会(川村公平会長)が6月に初回の講習を開く。次のステップとして2025年度内にも、のり面工を対象とした建設キャリアアップシステム(CCUS)の能力評価基準の策定を目指す。のり面工を専門とする技能者をCCUSで評価できる枠組みを新たにつくり、処遇改善や技能向上につなげる。  国土交通省から講習実施機関の認定を14日付で取得した。初年度の講習は6月17~18日に東京都千代田区のJA共済ビル、同25~26日に福岡市中央区の電気ビルみらいホールで行う。5月14日まで申し込みを受け付ける。両会場で計500人の受講を想定する。  受講要件として一定の実務経験・職長経験と、のり面工事に関する資格保有を求める。同協会が運営する「のり面施工管理技術者」や「のり面ノズルマン技能者」の資格保有も要件の一つとする。道路や鉄道の線形構造物やダムを造成する際の切り土・盛り土工事で人工的に形成された「特定のり面」の工事に専門的な知識と豊富な経験を持つ技能者を適正に評価する。 from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=173126 via ...

高松市/塩江道の駅エリア地域振興施設整備、PPP/PFI導入可能性調査に着手

 高松市は、塩江温泉郷のシンボルとなる新たな交流拠点として再整備中の「塩江道の駅エリア」(塩江町安原上東390の21)に計画している地域振興施設の建設に向け、PPP/PFI導入可能性調査に着手した。導入可能な事業手法を整理する。調査業務は12月26日までの履行期間で百十四経済研究所が担当。2月14日に契約した。契約額は1650万円(税込み)。  2024年12月に再整備に伴い建設する施設群から医療施設を外す方針を決めた。近隣に立地する市民病院塩江分院敷地内にある塩江地域保健活動センターを全面改修する。百十四経済研究所に委託した業務では、当初予定していた事業地での民間提案に基づく収益事業の可否、利用要件なども調査する。  24年8月の建築実施設計完了時点で想定している地域振興施設の導入施設と面積は温浴施設が894平方メートル、レストランとカフェは320平方メートル、物販販売コーナーは359平方メートルなどで総延べ2240平方メートル程度。温浴施設を含めた地域振興施設の建設費は32億9000万円を見込む。  基本・実施設計はオリエンタルコンサルタンツ・東洋コンサルタント・タカネ設計JVが手掛けた。 from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=173127 via...

大成建設/VR切羽観察システムの機能拡張、亀裂面計測し肌落ちリスク可視化

 大成建設は山岳トンネル工事の安全対策として、VR(仮想現実)を用いた切羽観察システム「T-KIRIHA VR」を機能拡張した。新たにVR空間内で岩盤の亀裂面や地層面を計測する機能を追加。切羽前方の落石が懸念される不安定な岩塊の位置や規模を的確に予測し、肌落ちの災害リスクを可視化する。今後は実際のトンネル現場に適用し、安全性のさらなる向上や工程の遅延防止に役立てる。  同システムは2023年に開発した。3Dレーザースキャナーで切羽を計測、取得した点群データに基づき、10分の測定でVR空間上に再現する高精度の切羽を近接観察することで、いつどこでも地山状況を正確かつ詳細に把握できる。ウェブ会議システムを通じて発注者や現場作業所と共有し、同社の地質専門家が遠隔でも適切な支保工を選定しやすくなる。  今回の機能拡張では、VRを用いた切羽観察の精度を高めた。新たに地層面や岩盤に生じる亀裂面の走向傾斜(方位や傾斜角)データが計測できる機能を追加。計測した亀裂面を仮想の円盤モデルで表示し、複数の亀裂面を組み合わせて可視化する。  亀裂面の計測データを踏まえ、崩壊リスクが高いくさび状岩塊の出現位置や規模、安定度を解析する「キーブロック解析」も取り入れた。切羽前方の不安定な岩塊を事前に把握し、掘削による肌落ち災害リスクの回避につなげる。  今後は機能拡張した同システムの現場適用を推進しながら、継続して不安定な岩塊の予測精度向上など機能改善に取り組む。現場から離れた場所で施工状況を確認したり立ち会ったりするような遠隔臨場のツールとしても活用し、発注者や工事関係者間の円滑な合意形成を図る。 from...

2025年4月16日水曜日

大成建設/東京・新宿駅西口広場で4月22~25日に設計作品展、建築設計の魅力発信

 大成建設の設計本部が主催する「設計作品展」が22日から25日までの4日間、東京都新宿区の新宿駅構内にある西口広場イベントコーナーで開かれる。自社で設計・施工を手掛けた優れた建築を紹介し、建築設計の魅力や奥深さを広く発信する。設計本部の設立100周年を記念し、初めて本社屋以外で開催する。社員や建築関係者だけでなく一般の来場者も呼び込み、例年の約3倍となる7000人の来場を目指す。  設計作品展は、設計本部に所属する入社5年目までの若手社員が中心となり毎年開催している。前年に完成した設計・施工物件の中から、社内投票で選ばれた14件の優秀作品を展示する。模型や図面、竣工写真に加え、検討過程の資料も並べ、設計のコンセプトや背景を伝える。100周年を記念し、過去5年の選抜作品を映像で振り返るコーナーも併設する。  展示空間には、設計者が建築の検討過程で使用したクロスや化粧板、吸音材などの建材約200種を再利用し、再生和紙として壁面素材に活用。透過光を取り込む「光の壁」が会場全体を覆い、幻想的な展示空間を演出する。  入場無料。開催時間は午前8時~午後8時。大成建設の担当者は「人が忙しく行き交う新宿駅で、対比的な光の塊を置き、記憶に残る鑑賞体験を提供したい」と話している。 from 行事...

回転窓/もったいないを世界に

 古来、日本人は万物に精霊「つくも神」が宿ると信じてきた。室町時代に描かれた百鬼夜行図には鍋や琴などに宿るつくも神が妖怪に化けた姿で登場しており、物を大切に扱うことを教えている▼愛着のある装飾品などはずっと手元に置いておきたいもの。筆者も長年履き続けている靴を捨てるのが惜しく修理を頼んだ。きれいになった靴を履くだけで気分がいい▼無駄遣いを惜しむ時に使う〈もったいない〉。女性環境保護活動家でノーベル平和賞受賞者の故ワンガリ・マータイ氏は、この言葉を世界共通言語として広めることを提唱した▼建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を受賞した建築家・坂茂氏は、廃材を極力出さないよう建築資材として現地調達できる紙に目をつけた。1995年に発生した阪神・淡路大震災では避難所の間仕切りに紙製の管(紙管)を使った▼13日に開幕した日本国際博覧会(大阪・関西万博)で海をテーマにした民間パビリオンの設計を手掛けた坂氏。大小3棟のドームがつながった建物は竹や紙管などを採用している。万博会場から再び〈もったいない〉精神が世界へ広まるだろう。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=173090 via 日刊建設工業...

内閣官房/GX事業創出を支援、有識者WGが産業立地の在り方検討開始

 脱炭素と経済成長を同時に進める政府のGXの取り組みで、産業立地の在り方を検討する内閣官房の有識者ワーキンググループ(WG)が15日始動した。革新技術を生かすGX事業の創出に向けた支援策として産業立地や投資の促進策を検討する。脱炭素電源の近くに産業を集積するための条件や制度、調達面からの支援策などを議論する。夏ころに政策の方向性を固める。  「GX産業構造実現のためのGX産業立地WG」が会合を開き、座長に大橋弘東京大学副学長が就いた。国内投資の加速、海外とのエネルギー価格差の縮小、脱炭素電力の活用に関する方策などを検討する。産業立地を巡っては、既存の産業集積やインフラ整備などを踏まえた集積のための条件、産業集積を進める融資、規制緩和、支援制度などを詰める。産業の創出につながる公共調達の在り方も議題にする。  電力消費の大きいデータセンター(DC)などのデジタルインフラの整備を検討しているワット・ビット連携官民懇談会が成果をまとめる6月ころに合わせて、WGも政策の方向性などを明らかにする。  経済産業省などの調査によると、分譲可能な産業用地の24年度ストックは1996年度の約半分となる約1万ヘクタールにとどまり、需要に対応できている都道府県は1割未満とされる。都道府県・政令市の半数が用地造成を予定・検討しているものの、用地と資金が課題となっている。  一方で、フランスはAIに関する国家戦略を踏まえ、DCの用地候補にいずれも原子力発電所に近い35カ所を国が地域指定している。 from...

兵庫県加古川市/日岡山公園再整備Park-PFI・DB事業者を再公募

 兵庫県加古川市は、Park-PFI(公募設置管理制度)と設計・施工一括(DB)方式を採用する「日岡山公園再整備賑わい拠点創出・管理運営事業」の公募設置等指針を再公表した。事業区域は市内最大の総合公園「日岡山公園」(加古川町大野、約36・3ヘクタール)のうち、南側の「第1期整備エリア」(約3・2ヘクタール)。Park-PFIで公募対象公園施設と特定公園施設など、DB方式で広場や園路、遊具などを整備し、指定管理者制度で公園全体の維持管理・運営を行う。指定管理期間は20年。  22日まで公園緑地課で説明会(24日開催)の参加申し込みをメール(kouenseibi@city.kakogawa.lg.jp)で受け付ける。9月8~12日に参加表明書など、10月14~17日に提案書類を受け付け、プレゼンテーション審査を踏まえ12月中に選定結果を通知する。  参加できるのはPark-PFIとDB、指定管理業務のそれぞれを担当する事業者代表によるグループ。指定管理業務の代表者が事業代表者となる。  DBの参加資格は建設(代表企業)と設計・工事監理の各担当企業でつくるコンソーシアム。建設企業は単体か2~3者JVで、単体とJV代表者・構成員は土木一式工事の総合評定値が750点以上。設計・工事監理企業は建設コンサルタントの「造園部門」または「都市計画及び地方計画部門」で登録する1級建築士事務所。2015年度以降に国や自治体などが発注した都市公園の設計業務の元請履行実績があること。  Park-PFIで整備する公募対象公園施設は飲食・物販施設など。特定公園施設として大屋根、利便増進施設として情報提供用の広告塔などを整備する。市が負担する特定公園施設整備費の上限は6900万円(税抜き、以下同)。  DB対象施設は▽大芝生広場▽園路・広場▽遊具▽エントランス▽サービスセンター-など。市の負担額の上限は15億4500万円。指定管理業務では既存のスポーツ施設を除いて維持管理と運営を担当する。  指定管理料の提案上限額は25億4500万円。  28年度末までにPark-PFIの設計・施工とDB事業を完了し、29年4月に供用開始する。 from...

スコープ/日本工営が打音検査の技術継承にアプリ活用、音の特徴を数値化

 日本工営が、ミドル世代の技術者不足や働き方改革に対応する技術継承ツールを開発し、業務に取り入れている。岩石などをハンマーでたたいた音で品質を判断する打音検査で、音の特徴を数値化するアプリケーション「DAOOON」を開発し現場で活用。さらに数値を生かしたAI判定アプリや、打撃音に熟練者の判断を織り込んだシステムの開発も進む。ベテランが感覚的に伝えてきた「暗黙知」を可視化し、若手に引き継いでいく。  1990年代後半~2000年代前半の就職氷河期の影響で、40代前後のミドル層が手薄な年齢構成の企業は多く、日本工営も例外ではない。「技術者のボリュームゾーンである50~60代の『暗黙知』は膨大だが、今のままでは若手にバトンを渡しきれない」。そう危機感を募らせるのは、DAOOONの開発責任者で同社中央研究所先端研究センターAI研究室の古木宏和スペシャリスト。入社20年目のミドル世代で、若手の指導も多く経験してきた。  建設業の「2024年問題」に先駆け、建設コンサルタント業界は19年から時間外労働規制が適用されている。古木氏は「私たちの世代より、(若手は)スピード感を持ってベテランの技術や感覚を身に付けなければいけない。社会貢献といった建設コンサルタントの本質に向き合うだけのベースを築いてほしい」と話す。  岩盤や擁壁の強度や乾湿状況を測る打音検査は、とりわけ技術者の感覚に依存する部分が大きい。質が良い石をハンマーで打つと「キンキン」と金属音がし、悪い石は「ボコボコ」と濁音が響く。金属音と濁音の度合いを耳で聞き、石の良しあしを決めていく。  ベテランや中堅の技術者は「現場で音を聞き比べ、感覚を体にたたき込んだ」と古木氏は振り返る。残業規制などにより実地で学ぶ時間が限られる中、若手には「感覚を数値で表せる補助ツールが必要」と考え、開発に取り掛かった。  DAOOONアプリをインストールしたiPhoneの前で岩石をたたくと、音の周波数が波形のグラフで表示される。グラフは横軸が時間、縦軸が振幅。品質が良い石は800~1500ヘルツ、悪い石は100ヘルツ前後といったように振幅で岩石の状態を判断する仕組み。100件の音データを3秒弱でグラフ化できる。  GPS(衛星利用測位システム)とひも付け岩石の材質の分布が一目で分かるのも特徴だ。古木氏は「これまでの検査では石を300回たたいていたが、DAOOONを使えば10回に減らせるようなイメージだ」と手応えを語る。  DAOOONは同社が手掛ける擁壁の調査業務4件で使われている。「音を使った検査はコンクリートや鉄鋼、木材などさまざまな素材で行われており、その全てで使える」(古木氏)。鉄道や建築などの調査にも応用できると見ている。  適用場面をより広げるため、AIや3Dデータと組み合わせた機能改良にも取り組んでいる。ある現場では岩石を打つ音ごとに、1人の熟練技術者による良しあしの判断をラベルとして付与。このデータをAIに学習させ、AIが判断するツールをつくる。  AI研究室の菅田大輔研究員は「(将来的に)若手、中堅、熟練層と、さまざまな年齢の技術者の判断サンプルを反映させたい」と語る。5~10人分の判断パターンをAIでつくり、それらで多数決を取って公平な判断に近づけていく。  目視での材質判断を数値にできるようなシステムの構築も検討中。現場で岩肌の目視検査などを行う技術者にヘッドマウントディスプレーを装着してもらい、視界の3Dデータを共有するような形を想定している。  AIや3Dデータに関わる技術は日進月歩で進化していく。「早ければ1年、遅くとも3年くらいで開発しなければ、現場のニーズに追い付けない」と菅田氏。現場感覚の可視化に向け、DAOOONと新技術の連携を急ぐ。  古木氏は「DAOOONが蓄えたクオリティーの高いデータを、若手の気付きにつなげていきたい」と将来を見据える。「石をたたいた時の自分の判断と、AIツールの判断が異なる時に『AIはなぜそう判断したのか』を調べれば、それが本人の学びになる」。ベテランの知見を継承するだけでなく、新しい発想につながるツールとしてDAOOONを進化させていく。 from...

2025年4月15日火曜日

回転窓/自由の刑と向き合うすべ

 新年度が始まって2週間余り、進学や就職などで環境が変わった人は生活のリズムを徐々につかみ始めた頃だろう。一方で比較的自由が利いた学生時代の習慣からなかなか抜け出せず、四苦八苦している新社会人もいるのでは▼辞書を引くと、自由は「他から束縛されず自分の思うままに振る舞える状態」とある。制限を受けず自分自身があらゆる行動を決め、決断に伴う責任を受け入れる。仏の哲学者で小説家や劇作家としても知られるジャン=ポール・サルトルはこのような状況を「自由の刑」と表現した▼入社式で「自由な発想に期待する」と呼び掛ける経営トップが少なからずいたと思う。その通りと相づちを打ちつつ組織の一員になると、いつの間にか自由を忘れ画一的で安全運転な思考回路になりがちだ▼自由を謳歌(おうか)しつつ孤独や不安を乗り越え自分磨きに精を出す。現実を大切することが自由の刑と向き合うすべか▼自由に伴う責任を自覚して行動してこそ自分のありようが見いだせる--。要らぬ世話とは重々承知の上で、サルトルの言葉を借りてシニア世代から新社会人にこっそりとアドバイスを。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=173055 via 日刊建設工業...

大阪府/建築にも余裕期間制度導入、突貫工事避け品質確保

 大阪府は公共工事の受注者が工事着手前に余裕を持って資材を確保し、施工体制を整えられるようにする「余裕期間制度」を、これまでの土木工事に加えて建築工事にも導入した。人手不足や資材の調達遅れが工事の遅延や不調・不落につながる恐れがあることから、現場に入る前の準備期間を制度として設けることで、無理のない施工を促す。4月1日以降の契約分から適用している。  余裕期間制度では契約から工事開始までの間に「余裕期間」と呼ばれる準備のための期間を設けることで、受注者が無理なく施工体制を整えられるようにする。  府が採用するのは「発注者指定方式」で、あらかじめ実工期の開始日を定めた上で、原則2カ月の余裕期間を設定する。この余裕期間中は、現地での工事作業はできないが、自社敷地での資材準備や発注者との打ち合わせなどは可能となる。現場代理人の配置は求められるものの、常駐は不要。監理技術者の専任義務もこの期間中は除かれる。  府は土木工事部門で同制度を導入済みで、その運用実績を踏まえ、建築部門(住宅建築局)に広げた形だ。国土交通省が直轄工事で原則導入していることも後押しとなった。全国的にも導入が進みつつあり、24年度時点で余裕期間制度を取り入れている都道府県・政令市は土木部門で59団体、建築部門で45団体となっている。  建設業では2024年4月から時間外労働の上限規制が適用され、週休2日を実現しながらも品質と工程を両立するためには、着工前の準備時間の確保が欠かせない。余裕期間を設けることで、突貫的な工程を避け、結果的に品質向上にもつながるとされる。 from...

五洋建設/週1回サステナビリティ朝礼を実施、現場から取り組み共有

 五洋建設がサステナビリティの取り組みを全社で共有しようと注力している。2024年9月から国内の現場の朝礼で毎週1回、サステナビリティ経営の具体的な取り組みを紹介する「サステナビリティ朝礼」を始めた。サステナビリティ経営を同社グループだけでなく協力会社や取引先に浸透させるため、経営理念、ビジョン、マテリアリティ(重要課題)、行動規範を国内外の全事業所と現場に掲示。国内グループ会社、海外の現場へと展開し、「サステナビリティの取り組みは現場から」を推進する。  サステナビリティ朝礼は週1回、朝礼時に所長や担当者が、人権尊重や環境配慮などサステナビリティ経営の具体的な取り組みを紹介し、現場での浸透と実践につなげるのが狙い。  同社グループの▽気候変動問題への対応▽豊かな環境の創造▽良質な社会インフラ・建築物の建設▽技術開発・技術力の強化(DXの推進、GXの推進)▽ダイバーシティー&インクルージョン(D&I)の推進▽人権の尊重と持続可能なサプライチェーン(供給網)▽労働安全衛生の確保▽実効あるガバナンスの推進-の八つのマテリアリティから毎月テーマを選定。四つの事例のポスターと説明用の参考資料を事務局が作成し提供する。朝礼看板にポスターを掲示し説明することで、サステナビリティ経営を全ての現場に根付かせる。  海外ではシンガポールで現場のサステナビリティの取り組みを表彰する「サステナビリティ・アワード」を始めた。24年12月5日に現地で表彰式を行い、現場における環境配慮や地域社会への貢献、DXによる効率化などの内容を共有。国内でも25年から実施し、「サステナビリティの自発的な取り組みを後押ししたい」(清水琢三社長)考え。常にサステナビリティを考えた事業活動、企業行動を実践することを当たり前にする方針だ。  清水社長は「サステナビリティの取り組みを現場の最前線まで意識してもらう。サステナビリティについて何が大事なのか、自分たちでできることは何かを考えることで、職場環境の向上や誠実な企業活動の徹底につなげたい」と期待を込める。 from...

中日本高速会社/イノベーション交流会の技術実証、3件を実用段階に移行

 中日本高速道路会社は、イノベーション交流会で取り組んでいる技術実証のうち「規制作業現場監視における高度遠隔運用プラットフォームの構築」と「防護柵支柱点検の効率化検討」「センシングカー撮影データの精度検証」の3件を実用段階に移行することを決めた。課題はあるが効果は確認できたことから、今後は幅広く実証メニューを打ち出し、業務への導入可能性を検討しながら実用化を目指す。  規制作業現場監視における高度遠隔運用プラットフォームの構築は、将来的な監視員不足を見据え現場作業の無人化・自動化を目指す。3Dマップなどを搭載した自律走行ロボットで規制材転倒などの異常検知、位置・状態の把握、アームによる原状復帰などが実施できることを確認。煩雑な監視制御環境も一元化できた。先進技術保有企業は沖電気工業。  防護柵支柱点検の効率化検討は、走行車両による撮影データをAI解析し支柱腐食状況を事前に洗い出すことで点検の省人化、点検時間の短縮につなげる。実証では支柱135本のうち草の繁茂などで撮影できなかった5本を除き、すべての支柱でさびを検出。さびの場所の誤差も少なく、短時間で定量的な判断が可能であることを確認した。先進技術保有企業はケー・エフ・シー、イクシス、TOPPAN。  センシングカー撮影データの精度検証は、高速道路の巡回点検について、目視点検から複数のカメラ映像を活用した手法に置き換えて実施しているが、複数のカメラで撮影する際に位置情報の取得に差異が生じている。このため、カメラの位置情報を自動同期する技術を搭載した車両で走行した。その結果、トンネル内と出口周辺を除く区間で高水準の位置情報取得が可能であることを確認した。先進技術保有企業はナカシャクリエイテブ。  イノベーション交流会は、同社が抱える課題をコンソーシアム方式で解決するため2019年7月に設立された。133の企業・団体が保有する先端技術を組み合わせ、さまざまな技術実証を進めている。新規入会を検討している企業・団体向けのオンライン公募説明会を16日午後2時~4時に開催する。参加希望者は15日までに申し込むことが必要。 from...

2025年4月14日月曜日

回転窓/頼もしい最強の色は…

 1週間の仕事が始まる月曜の朝は、どうも体が重くてだるい。そんな多くの人が経験する「ブルーマンデー」の解消に色が役立つという▼日曜の夜は身近な何かしらに緑を取り入れてリラックスし、月曜の朝に赤でテンションを上げる。例えば赤いスリッパやマグカップを意識して使うことも有効のようだ▼こうしたさまざまな色の効用を紹介するカラーキュレーターの七江亜紀さんが、最強の色に挙げるのはオレンジ。情熱的な赤と開放的な黄が混ざり合う色であり、コミュニケーションが円滑になる雰囲気づくりなどに効力を発揮する(『オレンジこそ最強の色である』マイナビ新書)▼きょう4月14日は柑橘(かんきつ)王国・愛媛が発祥の「オレンジデー」で、大切な人とオレンジを贈り合おうと制定された。いつしかオレンジ色の物も対象となり、日頃の感謝を伝える日として広がりを見せる▼週初めの朝に赤よりトーンが強くないオレンジ色を選び、少しずつ体や頭を温めて「会社に着く頃に充電完了!という状態に持っていくのもアリです」(同)と七江さん。カラーマネジメントをうまく駆使すれば、生活や仕事に彩りを添えられる。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=173018 via 日刊建設工業...

凜/都市再生機構・福井恵莉薫さん、最適なまちづくりを考え抜く

 まちづくりに関わる新事業を提案する部署で働いている。現在は東京都豊島区の池袋駅東口エリアに対する区のまちづくり検討支援などを担当。地元関係者と対話する機会もある。その時に使う資料は自身で作成。図を多用するなど分かりやすさにこだわっている。地元関係者からは「よく分かったよ」と声を掛けられたことがあり、ものすごくうれしかった。  大阪府出身で都市再生機構に入り9年目。今の部署には5年在籍しているが、異動当初はかなり苦労した。以前の部署は団地の管理・修繕業務がメインで、主に社内で確立されたルールに沿って仕事をしていた。  異動後は環境が一変。社外の人と話す時はまちづくりの専門家として見られ、都市再生の制度や行政手続き、法律など幅広い知識が求められた。「もっと勉強しないと」という思いに駆られた。  日々の仕事をこなしつつ、時間を見つけては勉強を続け、再開発プランナーの資格を取得。外部の人と詳細な会話もできるようになった。今では異動してきた職員をサポートしている。  都心と地方で抱えている課題は大きく異なる。その地域に合ったまちづくりを提案するためには、思考力や発想力がより求められる場面も多く「まだまだ勉強不足」とも感じている。住環境の改善や地域の魅力向上に向け、「まちづくりの最適な手法を考え抜いて提案する今の業務を極めたい」と熱意を燃やす。  都市再生機構東日本都市再生本部事業企画部事業企画第2課(ふくい・えりか) from...

建築学会/次期会長候補に東北大学・小野田泰明教授選出、5月30日就任

 日本建築学会(竹内徹会長)は11日に選挙管理委員会を開き、次期会長候補として東北大学の小野田泰明教授を選出した。5月30日の通常総会を経て就任する。副会長候補には、東京大学地震研究所の楠浩一副所長・教授、京都大学生存圏研究所の五十田博教授、清水建設の藤本裕之常務執行役員建築総本部設計本部長が選出された。  小野田 泰明氏(おのだ・やすあき)1986年東北大学工学部建築学科卒、同大助手。96年助教授、2007年教授。専門分野は建築計画学。21~23年に同学会副会長を務めた。62歳。 from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=173016 via 日刊建設工業...

鹿島ら/規格外フライアッシュCSGを開発、成瀬ダム堤体に7250立米導入

 鹿島ら4者は、現場発生土材(石や砂れき)やセメント、水などを混合した材料(CSG)にJIS規格外のフライアッシュ(石炭灰)を活用した「フライアッシュCSG」を開発した。CSGの原料となる普通セメントの一部をJIS規格外フライアッシュに置き換えた。従来のCSGと同等の強度特性を確認し、成瀬ダム堤体打設工事(秋田県東成瀬村)で計7250立方メートルをダム堤体の一部に導入した。フライアッシュCSGの大規模なダム堤体への導入は国内で初めてという。  フライアッシュCSGは東北電力の協力の下、国土交通省東北地方整備局、東京大学、ダム技術センター(泊宏理事長)、鹿島で共同開発した。従来のCSGと比較すると、経時変化が小さくなるため、締め固められたCSGの密実性が向上し、同等以上の品質が確保できる。材料分離抵抗性の向上や水和熱の低減、アルカリ骨材反応の抑制といった効果を発揮する。  鹿島らは、フライアッシュCSG計7250立方メートルをダム堤体の一部に導入した。産業廃棄物として処理されるJIS規格外フライアッシュ435トンを有効利用。フライアッシュCSGと従来のCSGを活用した場合を比較すると、フライアッシュCSGの強度特性は従来のCSGと同等となり、品質は同等以上であることを確認した。  CSGの原料となる普通セメントの一部をJIS規格外フライアッシュに置き換えているため、従来CSGを使用した場合と比べ二酸化炭素(CO2)排出量を28%削減した。  4者は今後、フライアッシュCSGだけではなく、JIS規格外フライアッシュを有効利用したコンクリートを開発し、ダムなどのさまざまな構造物へ積極的に展開する。ゼロエミッションや環境負荷の少ない持続可能な循環型社会の実現に貢献していく。 from...

成田空港会社/C滑走路北・南の造成工事を本格化、北側は477億円で西松建設JV

 成田国際空港会社は、同空港3本目となるC滑走路の新設工事を本格化する。「北側造成工事」の落札者を477億5100万円(税込み、以下同)で、西松建設・大林組・東亜建設工業JVに決めた。「南側造成工事(その1)」は大林組・熊谷組・鴻池組・飛島建設・青木あすなろ建設JVと125億6750万円で随意契約を結んだ。同JVは、ECI方式で南側造成設計の技術協力をしている。  11日、3月の契約実績を公表した。「C滑走路北側造成工事」は、一般競争入札(総合評価方式、WTO対象)を2月7日に開札し、5者が参加した(うち1者が辞退)。3月18日に契約した。工期は2029年3月23日まで。制限価格は805億8946万5000円だった。  「C滑走路南側造成工事(その1)」は3月6日に大林組ら5者JVと随意契約した。工期は27年5月31日まで。制限価格は125億7220万8000円。同JVは、ECI方式を採用する「C滑走路南側造成設計技術協力業務」を受注しており、施工者として工事契約を結んだ。設計業務はパシフィックコンサルタンツ・京葉測量JVが担当している。  成田空港会社は、空港機能の拡大を図る「更なる機能強化」事業の一環で、新たにC滑走路(延長3500メートル、幅員45メートル)を整備する。5月から本格的な工事に入る。必要な用地は3月時点で8割以上を確保したという。25年度中に用地確保を急ぐ方針。  主な工事内容は次の通り。  【C滑走路北側造成工事】空港土工=切り土(掘削)工400万立方メートル、盛り土(埋め戻し)工1000万立方メートル▽地盤改良工=固結工法270万立方メートル、圧密促進工法10万本▽共同溝・GSEトンネル=共同溝延長4キロ、GSEトンネル延長0・2キロ▽排水工=表面排水・盛り土内排水=一式▽その他  【C滑走路南側造成工事(その1)】ベルトコンベヤー設置(設計を含む)=2キロ▽地盤改良工=3万3000立方メートル▽仮設工(土留め)一式。 from...

2025年4月11日金曜日

回転窓/宇宙でおいしいみそ汁を

 賞味期限が近づいた非常用の備蓄食料を少しずつ食べながら、入れ替えを進めている。しっかり栄養補給ができて味もよく、市販されている商品の豊富なバリエーションには驚く▼店舗の防災コーナーで長期保存が可能な宇宙食を購入した。フリーズドライ製法の加工品が多く、早速試しに食べてみるとこれがうまい。宇宙でもおいしい食事が心を癒やすのだろう▼国際宇宙ステーションでみそ造りに成功したと、米マサチューセッツ工科大などのチームが科学誌「アイサイエンス」に先日発表した。地球よりやや暖かい環境で30日間発酵させたため色が濃く、ナッツのような風味で安全性も問題ない▼今回は地上に持ち帰ってみそを調べた。次に実験する機会があればできたてのみそをステーション内で宇宙飛行士が食べ、その反応を見たいという。宇宙で新鮮な発酵食品が作れることで、食べる楽しみが増え健康維持にも役立つだろう▼近い将来、宇宙飛行士でなくても無重量空間の宇宙で生活できるようになるかもしれない。日本人にはおいしいみそ汁が飲めるのはありがたく、食の面でも夢の宇宙生活が近づいてきた。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172964 via 日刊建設工業...

東保証24年度の取扱実績/請負額は7・8%増、4年ぶり8兆円台に

 東日本建設業保証(東保証、栗田卓也社長)が10日に発表した公共工事の動向によると、2024年度に前払金保証を扱った工事の請負金額は前年度比7・8%増の8兆3678億円と4年ぶりに8兆円台に乗った。取扱件数が減少した一方で請負金額が増加しており、工事1件当たりの大型化傾向が強まっている。能登半島地震からの復興で北陸エリアでは国、地方自治体ともに災害復旧工事が発注され、請負金額の増加につながった。  前払金保証の取扱件数は1・9%減の11万9364件。保証金額は7・0%増の3兆1751億円だった。  発注者別の請負金額は、▽国=1兆0787億円(前年度比1・4%減)▽独立行政法人等=8974億円(11・0%増)▽都道府県=2兆6280億円(3・7%増)▽市区町村=3兆0867億円(12・6%増)▽地方公社=1737億円(22・7%増)▽その他=5030億円(13・3%増)。  国は能登半島地震の復旧工事で国土交通省北陸地方整備局を中心に増加したものの、東日本大震災の中間貯蔵施設事業が減少するなどし全体では減少した。都道府県は石川県で能登半島地震の被災地の復旧工事、東京都で環状七号線地下調節池などがあり増加した。  請負金額の内訳を東保証所管の5地区(東北、関東、甲信越、北陸、東海)別に見ると、▽東北=1兆3533億円(1・1%減)▽関東=4兆0387億円(7・8%増)▽甲信越=6810億円(1・7%増)▽北陸=5835億円(38・8%増)▽東海=1兆4702億円(10・4%増)。東保証が所管していない「その他」地区は2409億円(5・5%増)だった。中間貯蔵施設関係で福島県を中心に減少した東北を除き、全ての地区で増加した。 from...

東京都/臨海部地域公共交通計画改定へ、現計画の目標達成状況など調査

 東京都は鉄道やBRT(バス高速輸送システム)など複数の公共交通が存在する臨海地域で、一層の移動の円滑化を図る。同地域のまちづくりとバランスの取れた公共交通網構築を目指す「東京都臨海部地域公共交通計画」(2021年3月策定)の達成状況などを調査した上で、改定案を策定する業務を10日に公告した。BRTの事業計画も検証し、地域内の交通網充実につなげる。  都都市整備局は同日、「令和7年度臨海部地域公共交通計画等に係る調査検討」業務の委託先を決める希望制指名競争入札を公告した。参加申請を15日まで電子調達システムで受け付け、5月13日に開札する。  「都市計画・交通等計画業務」のAかB等級に格付けされ、「道路・交通計画」に登録のある者が入札に参加できる。  業務では臨海部公共交通計画と「都心と臨海地域とを結ぶBRTに関する事業計画」に掲げている目標や事業内容の達成状況を調べる。臨海部公共交通計画の期間は25年度末まで。このため、調査結果のほか「地域公共交通協議会」がまとめた改定計画の基本方針や目標、数値指標を踏まえ、改定計画案を作成する。  BRTに関しては、事業計画に記載している「検討路線」の費用便益を分析する。検討路線は、東京駅(千代田区)方面と東京国際クルーズターミナル(江東区)方面、東京ビッグサイト(同)方面の3方面。今回の委託では、東京駅方面が2ケース、東京国際クルーズターミナルと東京ビッグサイト方面が1ケースずつ、合計4ケースの需要予測を行う。  履行期間は26年3月13日まで。 from...

安藤ハザマら/現場のデジタルツイン構築、施工管理を省人化・省力化

 安藤ハザマとWorldLink&Company(京都市北区、須田信也社長)は、建設現場のデジタルツインを構築するプラットフォームを開発した。点群をベースとする仮想空間で現場の変化を3Dで捉えられる。工程情報と連携することで施工の進捗率や今後の進み方を予測し、利用者に提示する施工管理支援ツールとしても活用できる。施工中の大規模造成工事で運用しており、施工管理を省人化、省力化する有効性を確認した。  デジタルツインプラットフォームを運用する大規模造成工事では、現場計測で蓄積される点群から土量の変化(出来形)を自動算出。施工実績を管理し、現在の進捗率から今後の進捗も予想する。工事の遅延が見込まれる場合、該当工種を視覚的に目立たせ職員に対応を促すなど迅速かつ的確なリスク管理に役立つ。  現場の確認や作業の打ち合わせも大幅に効率化した。所長が遠隔地から仮想空間に再現された現場を巡回することで、1回当たりの移動時間を約80%削減。毎日の打ち合わせでは元請の職員と協力会社の職長がデジタルツインで最新の現場状況を共有し、作業の調整や指示を詳細かつスムーズに行えるようになり、作業内容の理解度も向上した。手戻りや事故の防止にも貢献する。  仮想空間に施工で日々変化する現場の地形を都度反映し、自動運用型ドローンや職員が持つスマートフォンを利用した自動データ取得システムも構築。各デバイスによる計測からデータの生成、仮想空間での可視化、解析までのフローを自動化した。利用者はわずかな操作だけで手間なくデジタルツインを活用でき、進捗管理や現場確認、作業打ち合わせを実施するための計測業務を従来比で80%程度削減した。  安藤ハザマは今後、山岳トンネル工事やシールド工事などにも適用範囲を広げ、より幅広い現場で活用できる汎用(はんよう)的なデジタルツインプラットフォームに改良していく。 from...

2025年4月10日木曜日

東京都多摩市/多摩中央公園オープン記念に中央図書館でトークイベント開く

 ◇佐藤総合計画・渡辺猛氏「図書館の枠越えつながりの場に」  東京都多摩市は5日、多摩中央公園のグランドオープン記念イベント「まちづくりトーク」を市立中央図書館で開いた。テーマは「“本のまち”の育て方」。公園内にある同図書館を設計した佐藤総合計画の渡辺猛執行役員東京オフィスディレクター、同公園の設計を長年手掛けるあい造園設計事務所の細谷恒夫代表取締役会長が登壇し、それぞれの取り組みを紹介した。多摩センター周辺の関係者とのパネルディスカッション(PD)も行われた。  阿部裕行市長は2023年7月に開館した同図書館について「環境にも優しく、都内の図書館で初めてZEB Ready認証を取得した。早朝から多くの人が並んでいる。市民と勉強しながら本の文化を育て、持続可能なまちづくりを進める」とあいさつした。  渡辺氏は歩車分離を徹底したニュータウン特有の断面構成と、まちと公園の結節点にある敷地特性を踏まえ、図書館のコンセプトを「丘に佇(たたず)むライブラリー」と説明。「斜面地に沿って建物を地中に埋め、高さを抑えるなどし、風景や姿を変えないようデザインした」と述べた。  同図書館はRC・S一部SRC造地下2階地上2階建て延べ5439平方メートルの規模。知の地域創造に向けた図書館を目指し、「静寂的開架」(専門的な資料を蓄え、静けさや落ち着きのある空間)と「広場的開架」(市民に身近で親しみやすく、にぎわいや活気に包まれた空間)の対照的な空間が求められた。  渡辺氏は「地形にフィットする建築にし、周辺の環境や活動とつなげた」と解説。「2階は広場系開架にし、公園と一体となった広場のような空間。緩やかにゾーニングした書架とともに、人的サポートの拠点を点在させ、コモンズの機能を高めた。まちとつながる1階は静寂系開架。半地下で生まれる壁面書架に専門書などが高密度に集積する書庫のような場とした」。  機能が拡張する書架や可変性のある家具もデザイン。「従来の図書館の枠を超えたつながりの場所になっている。図書館の活動が公園へと広がり、公園での活動を図書館に引き込む。こうした試みが起点となり、さまざまなイベントとの連携に発展し、本のまちへとつながっていく」と話した。  あい造園設計事務所の細谷氏は、公園の改修設計に当たり▽できるだけ現況改変せず、景観を継承する▽“緑ファースト”で進める▽市民意見を反映する-の三つを重視。具体的な取り組みを解説しながら「公園を緑の回廊(林環)で包む。七つのプレストと二つのコア施設が、人とまちを育てる」との考えを示した。  PDは渡辺、細谷両氏に加え▽常世田良(多摩市立図書館本館再整備基本計画検討委員会委員長)▽成瀬恵宏(都市設計工房代表、元都市再生機構職員)▽佐々木紘未(啓文堂書店多摩センター店店長)▽水澤正毅(丸善多摩センター店店長)▽渡邊哲也(多摩市立中央図書館館長)-の5氏が参加した。 from...

回転窓/楽しみなトッテン祭りの報告

 融解すると世界の海面水位が約4メートル上昇すると言われる南極のトッテン氷河。その集中海洋観測などに取り組んできた南極地域観測隊の第65次越冬隊と第66次夏隊が、6日までに全員無事に帰国した▼融解のメカニズムやもたらす影響などを明らかにするため精力的に活動し、これらの成果は海面上昇の予測技術などに生かされる。隊員は家族らとの再会を喜び、共に過ごした仲間をねぎらった▼第66次隊の活動には、観測船「しらせ」が寄港地と南極を1シーズンに2往復する「2レグ制」が初めて導入された。オーストラリアのフリーマントルに寄港したしらせは、一部の隊員を入れ替えて再び南極に向かった▼観測隊には建設会社や設備会社が技術者を隊員として引き続き派遣。日本の夜空とは上下左右さかさまのオリオン座やオーロラが見える地で、宿舎工事や設備整備などを担った▼トッテン氷河の調査は、隊員が親しみを込めて「トッテン祭り」と呼んできたそう。国立極地研究所による観測隊帰国報告会が12日午後2時からライブ配信される。SNSに届いた質問への回答もあるという報告会を楽しみにしたい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172936 via 日刊建設工業...

建設技能人材機構/外国人材の資格取得支援、2号評価・検定1級合格で10万円支給

 建設技能人材機構(JAC、三野輪賢二理事長)は、特定技能外国人などの資格取得やキャリア形成の支援に一段と力を入れる。「資格取得等奨励金制度」を創設し、2号評価試験または建設関係の技能検定1級に合格した場合、外国人と合格時の受け入れ建設会社にそれぞれ10万円を支給する。建設キャリアアップシステム(CCUS)の就業履歴の蓄積を促すために元請企業向けの支援を手厚くする。一時帰国の支援も拡充し、労働市場としての日本の魅力を高める。  2027年度に予定されている育成就労制度の施行と特定技能制度の一体運用を見据え、特定技能外国人が日本で長く活躍できる環境の構築を急ぐ考え。資格取得等奨励金制度は、スキルアップの意欲を喚起するためのインセンティブとして実施を決めた。CCUSの履歴蓄積の支援を組み合わせ、キャリア形成に弾みを付ける。  資格取得等奨励金制度は、19年4月1日以降に評価試験・技能検定に合格した者までさかのぼって適用する。すべての1号特定技能外国人の受け入れ負担金を支払っている企業が対象。5人が合格すると労働者個人にそれぞれ10万円、企業に50万円が支給される。1600人への適用を想定。ウェブからの申請を予定している。  技能や経験が評価され、長く働いてもらうためにもCCUSに関する資格・就業履歴の蓄積促進支援制度を設ける。元請会社となる日本建設業連合会(日建連)、全国建設業協会(全建)、全国中小建設業協会(全中建)の会員企業による事業者登録の更新、カードリーダー購入などを支援する。  具体的には、更新料を上限4万8000円、ID利用料は一つのIDを対象、カードリーダー購入は上限6万円(台数制限なし)の範囲で経費を出す。現場利用料(タッチ費用)は、外国人技能労働者を対象に25万円を上限に支援する。就業履歴の確認などを巡る関係機関との調整を経て、夏ころにウェブで支援の申請を受け付ける。  既存の一時帰国支援事業は、利用や支援額についての調査や要望を踏まえ、大幅に拡充する。利用できる回数を2回に増やし、支援金の5万円を1回8万円に引き上げ、最大16万円にする。4月1日以降、日本に再入国する1号・2号の特定技能外国人が対象。5月上旬にウェブ申請を始める予定。24年度は3798件の一時帰国を支援した。 from...

旧青森国際ホテル跡地再開発/年度内の事業認可取得へ、青森市が施行区域を公告

 JR青森駅前にある旧青森国際ホテル跡地地区(新町1)の第1種市街地再開発事業で、施行主体の再開発準備組合(代表・神克行城ケ倉観光社長)は2025年度内の事業認可取得を目指している。青森市は施行区域の公告と未登記の借地権申告の受け付けを9日に開始。再開発組合の設立に必要な土地所有者や借地権者の同意取得段階に入る。年度内に現地調査や基本設計を進め、年度末までに組合を設立する。  24年3月の都市計画決定後、資材高騰などを理由に県からの認可が延期されていた。再開発準備組合は2月にスケジュールの延伸を発表。28年度を予定していた事業完了時期は現在調整している。市は24年度予算に計上していた補助金5億7015万円は3月補正で7210万円に減額した上で繰り越し設定。年度内に準備組合への補助金(事業計画作成費)として執行する予定だ。  再開発では、市中心街の約0・8ヘクタールの敷地に商業・業務機能や集合住宅(約200戸)を含む複合施設を整備する。地権者は20人。建物規模は22階建て延べ約3万6000平方メートル(容積対象約2万4800平方メートル)程度を想定している。  20年に運営会社の破産で閉館した青森国際ホテルの跡地と建物を城ケ倉観光(青森市)が買い取っていた。青森国際ホテルをはじめ老朽化した中小小売・飲食店舗、空地を集約し、複合施設と駐車場を一体に整備。にぎわいの創出や歩行者の回遊性向上を図る。  基本設計は久米設計が担当する。フージャースコーポレーション、旭化成不動産レジデンス、NTT都市開発の3者が再開発に協力する。 from...

竹中工務店/WLC可視化し評価、CO2排出量削減や情報開示支援

 竹中工務店らは、建築物のホール・ライフ・カーボン(WLC)を可視化、評価するプラットフォーム「Z-CARBO(ジカーボ)」を開発した。これまでに設計・施工一括(DB)などで手掛けた100件以上の物件情報を蓄積している見積もりシステムと連携し、AIが分析したデータを用いて建築物のライフ・サイクル(LC)を通じた二酸化炭素(CO2)排出量を定量的に評価。建設業界トップのZEB認証実績や脱炭素の技術力を生かし、顧客の事業活動で排出されるCO2削減や情報開示を総合的に支援する。  プラットフォームはゴーレムと共同で開発。資材製造から解体まで建築物のLCを通じて排出されるCO2を可視化し、LC全体で一貫して運用することで評価しやすくなる。日本建築学会が定める建物のライフ・サイクル・アセスメント(LCA)指針や、さまざまな団体が推進する算定ツールの計算方法に準拠している。  AIが竹中工務店の見積積算書から建築や設備といった項目や数量を自動判別し、項目ごとにCO2排出量を算定する。具体的にはAIが既設建築物の見積もりデータを学習。今後、DBで新築や改築、改修を計画する建築物の見積もりデータとCO2排出原単位を自動で連携させる。豊富なZEB認証実績を生かした独自のデータベースも構築。計画初期段階から顧客のCO2削減目標に合わせた計画の提案やWLCの予測、実績に基づく具体的な削減方法の提案などが可能となる。  DBの強みを生かしたデータの継続的な管理により、LC全体のCO2排出量可視化や脱炭素化を支援。設計段階から実運用までのデータをプラットフォームに収集、分析し、効率的かつ的確なCO2マネジメントを後押しする。同社はプラットフォームの活用や普及に伴い、今後DBなどで計画に携わる全建築物のWLC削減を目指す。 from...

2025年4月9日水曜日

ワールドワイド/メッセ・フランクフルトが冷暖房・空調設備国際見本市

 ◇持続可能な未来へ最新技術発信  メッセ・フランクフルトが主催する世界最大級の冷暖房・空調・衛生設備専門国際見本市「ISH」が、ドイツのフランクフルトで3月17~21日の5日間にわたり開催された。「持続可能な未来へのソリューション」をテーマに、冷暖房設備や空調機器など54カ国・地域から2183社が出展。業界最先端の技術やトレンドを発信した。日本企業はTOTOが大規模ブースを出展し、来場者の注目を集めた。  ISHは1960年から2年に1度の頻度で開催している。設備業界の最新技術が一堂に介し、グローバルトレンドや技術動向を見定める場として国内外から関心を集める。期間中は150カ国・地域から16万3157人が来場。全体の45%がドイツ国外からの来場者で、国際的な注目度の高さを物語っていた。  世界中から多くのバイヤーが集まるため、企業にとっても海外市場開拓の絶好の機会となっている。出展した日本企業関係者からは「実質的な商談の場となるため、念入りな出展準備を進めてきた」との声もあった。ブースを2階建てにしたり、バーカウンターを設けたりしてデザインを意識したブースも多く、各社のこだわりが感じられた。  展示会は衛生設備や配管設備、熱供給システム、ソフトウエアなど8ジャンルに分かれて行った。各社ともスマートホーム技術やIoT関連製品の展示が目立ち、今後の住宅設備業界のトレンドが垣間見えた。再生可能エネルギーや高耐久性素材など環境に配慮した製品も注目度が高かった。電気ではなく木材を熱源に使用する暖房や、排水の熱を再利用するシステムなど、日本国内ではなじみの薄い技術も多く見られた。  会場で大きな存在感を示していたのはTOTOだ。玄関口にある展示ホール「フォーラム0」に、前回に続いて1社で単独出展した。出展面積は約1500平方メートル。独自の洗浄技術や環境負荷を減らす取り組みを伝えるコーナーを設け、企業イメージを発信した。  ブースではホワイトに加え、ブラックやベージュ、グレーの4色の衛生陶器を展示した。素材や加工が異なる水洗金具や洗面台も設置され、多くの見学者でにぎわっていた。グローバル事業推進本部でプロモーションを担当する佐藤克仁氏(グローバルプロモーション推進グループリーダー)は「インテリア性を重視する欧州の文化を踏まえ、空間に調和する製品を選べる楽しさをアピールした」と展示の狙いを説明する。  ウォシュレット(温水洗浄便座)の販売拡大に向け、水道工事業者が設置作業を体験できるコーナーも設けた。「取り付けの簡易性を体感してもらい、リフォーム需要の獲得につなげたい」と佐藤氏。施工時間を計測するタイマーを設置するなど、展示方法にも工夫を凝らした。  1社の単独ブースとなるフォーラム0への出展は、製品の宣伝だけでなく、ブランドの地位を確立する上でも重要な意義を持つ。田村信也取締役兼専務執行役員(取材当時、現社長)は「世界的な影響力の大きい欧州市場で、世界のコアとなるブランドに肩を並べたことを証明できた」と話す。市場への波及効果も大きく「取り扱い先が自信を持ってTOTOの製品を提案できるブランドイメージが育った」と手応えを語った。  少子高齢化が進む欧州では、将来的な職人不足への危機感が日本同様に高い。こうしたニーズを捉え、海外での販路拡大を目指す日本企業も出展していた。ステンレス配管製品の販売を手掛けるオーエヌ工業(岡山県津山市)は、配管用ステンレス鋼鋼管の管継ぎ手「ナイスジョイント」を展示。複雑なねじ切りを省略できる施工効率の高さをアピールした。営業本部の江原泰道部長は「誰でも一定の品質を保って施工できる技術は、日本だけでなく海外でも非常に評価が高い」とし、さらなる事業成長に自信を見せた。  産業・業務用加湿器の製造を手掛けるユーキャン(東京都八王子市)も欧州での需要拡大を目指す。冷蔵室からクリーンルームまで幅広く使用できる超音波加湿器を展示。国内外の製造ラインを統一し、コスト削減と納期短縮を実現した。現在は国内が売り上げの中心だが、棚見修一社長は「欧州市場ではフードロス対策や鮮度管理の分野で潜在的な需要が大きい」と分析する。出展を足掛かりに「海外取引量を倍増させたい」と意気込んだ。  日本GT(東京都目黒区)はバイメタルサーモスタット(自動温度調節器、温度過昇防止装置)を展示した。熱関連の家電製品や自動車、通信機器分野など幅広い用途での活用を提案し、海外市場の拡大を狙う。3度目の出展となり、営業部営業課の今藤稜係長は「展示会の規模が大きく、実際の売り上げとつながってきている」と手応えを語った。  新たな市場の開拓を目指す企業もいる。初出展となった因幡電機産業は、空調の室内配線を隠す化粧カバー「スリムダクトMD」を展示した。ドイツは電材用のラバーで室内配線を覆うのが一般的で、化粧カバーが普及していない。美観の高さや維持管理の手軽さを売り込み、新たな需要を掘り起こす。因幡電工カンパニー企画室製品企画グループの鹿嶽智史主事は「まずは新たな選択肢を提示し、業界の反応を見定めていきたい」と話す。  最新の技術やトレンドを求め、展示会場は連日多くの関係者でにぎわっていた。メッセ・フランクフルトの調査によると、来場者の約96%が「出展者の展示に満足した」と回答したという。次回のISHは2027年3月15~19日に開催される。市場ニーズの高い効率化と持続可能性を両立した製品はどのように進化していくのか。さらなる技術革新と業界の発展が期待される。 from...

シンガポールと五洋建設-60年の歩みと戦略・4/実績認められ受注した鉄道施設工事

 シンガポールとマレーシアの国境鉄道施設工事「T232」(発注・シンガポール陸上交通庁〈LTA〉)は建築・土木の複合工事。両国を結ぶ高速輸送システムのうち、五洋建設はシンガポール側の新駅舎、鉄道軌道トンネル、税関・出入国管理・検疫所棟の建設工事などを担う。既存の地下鉄であるトムソン・イーストコースト・ライン(TEL)のウッドランド・ノース駅(2019年竣工、五洋建設単独施工)に隣接した約30ヘクタールの土地に建設する。既存駅舎と地下で直結し、シンガポール中心部へアクセスできるようにする。  両国を結ぶ道路は1日に25万~30万人が行き交い、慢性的な交通渋滞が問題になっている。新線を設けると15~16分で往来できるようになり渋滞解消が期待できる。受注金額は約714億円(受注当時)。単純な価格競争ではなく、隣接駅を建設した経験や品質が重視され20年11月26日に受注に至った。  同工事の特徴は土砂掘削の量が約135万立方メートルに上り、さらに現場には固い岩盤層があり、約25万立方メートルの岩盤を火薬で発破し取り除くことであった。現場周辺には公共住宅、学校、地下鉄の駅などが存在しており、それらの建物に影響を与えないように発破の際は振動をできるだけ抑えるために火薬量を調整するなど細心な作業を強いられた。  場所打ち杭では、硬い岩盤や転石が多く存在する厳しい条件下で1500本を超える杭を打設した。  内田桂司総括所長(国際部門国際土木本部専門副本部長)は「一つの工事でこれだけの掘削量や杭の数量はなかなかない。非常に苦労した工種だった」と振り返る。  同工事は新型コロナウイルス感染症発生後に発注され、同工事に従事する作業員が外部でコロナに感染することを避けるため、作業員専用の宿舎を現場内に設けるなどさまざまなリスクを考慮しながら工事を開始した。  24年12月時点で日本人6人、ローカル職員120人が従事しており、今後、建築内装工や設備工の最盛期には約2000人が働くという。内田総括所長は「シンガポールでは今後もLTA発注の地下鉄工事などが多く計画されている。同国での信頼をさらに高め続けたい」と話す。 from...

新社長/UBE三菱セメント・平野和人氏、組織成熟のステージに

 最終年度に入った中期経営戦略で掲げた目標達成に向け、より強固な国内事業を確立しつつ、海外事業のさらなる成長とカーボンニュートラル(CN)対応に注力する。製販一体の体制が整い「多様な人材がいる」という強みを最大化し、「組織を成熟させる次のステージ」への移行でアクセルを踏み込む。  --業績が順調に推移している。  「本年度は次の中期戦略を策定する大事な年になる。キーワードはビジネスモデルの再構築だ。国内事業をより確実にしつつ、海外事業を大きく成長させる。社会貢献としてCN対策も進める。現在の中期戦略で掲げた営業利益の目標は前倒しで達成した。次期戦略の期間中に30年度が目標だった営業利益750億円の達成を目指す。バイオマス関連などの事業化も進める」  --主力のセメント事業で将来像をどう描く。  「国内は事業基盤の強化とCN対策が重要になる。セメント需要は落ち込んでいるが、いずれ下げ止まるとみている。当面は1トン当たり2000円の値上げをしっかりとやり切る。生産体制は見直しを終えたが、燃料コストなどに工夫の余地がある。聖域なくコストダウンの努力を続けなければならない」  「海外は石灰石の採掘からセメントの生産と出荷、生コン工場の運営までを一体的に手掛ける『垂直統合モデル』を米・南カリフォルニアで展開している。米国は骨材の価格が高く鉱山を所有していれば事業が有利に展開できる。骨材鉱山の買収や鉱区の開発を含め事業基盤をより強化する。M&A(企業合併・買収)を基軸に北米、オセアニアなど環太平洋エリアで新拠点の開拓を進めていく」  --CN対応は待ったなしだ。  「セメント製造でのアンモニア混焼試験は、技術的に世界で最も進んでいると自負している。実証に取り組みながらビジネスモデルを構築するのが重要になる。セメント事業はインフラ整備や産業廃棄物処理で社会的使命をしっかり果たしている。二酸化炭素(CO2)は対応が不可避な課題であり、採算、需要ベースに乗せることが大切。他業種との協業も必要だ」  --改革の歩みは止まらない。  「セメント事業の物流改革は1日付で営業部にあった物流担当部署を物流部として独立させた。運送会社とのコミュニケーションを深め、ドライバー不足などの問題に備える。輸送に精通している人材も増強する。産廃処理は関西に新しい廃プラスチック集積施設を整備する。品質を維持しながらセメント製造でより多くの産廃が活用できるよう工場の設備を増強する」。  (4月1日就任)  (ひらの・かずと)1985年上智大学法学部卒、三菱鉱業セメント(現三菱マテリアル)入社。2022年4月にUBE三菱セメントの代表取締役副社長に就任。「100年以上セメント製造を行ってきた宇部興産(現UBE)と三菱マテリアルのDNAを受け継ぎ、会社を発展させていく」と力を込める。神奈川県出身、63歳。 from...

日建連/公明党・西田実仁幹事長に要望書、強靱化実施中期計画で十分な事業量確保を

 日本建設業連合会(日建連)の宮本洋一会長と押味至一、蓮輪賢治両副会長は8日、公明党の西田実仁幹事長を訪ね、政府が6月に策定予定の国土強靱化実施中期計画について十分な事業量の確保などを要望した。政府の素案では5年間で「おおむね20兆円強程度」との規模感が示されており、西田幹事長は「25兆円の要望に添えるよう努めたい」と応じた。  日建連側は資材価格の高騰や労務費の上昇を背景に、実質的な公共事業費が目減りしている状況を指摘。建設業界に施工余力があることを強調した上で、実施中期計画では5年間で25兆円程度の事業規模の確保が必要と訴えた。  西田幹事長は事業規模について、素案で示した20兆円強から「資材価格の高騰等でプラスαする記載となっている」と説明し、日建連の要望に対しては「理にかなっている」と理解を示した。能登半島地震の被災状況や埼玉県八潮市での道路陥没事故、南海トラフ地震の被害想定見直しなどでインフラの老朽化に対する国民の不安が高まっている状況についても言及。「国民の不安を解消する必要がある」とインフラ対策の重要性を強調した。 from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172885 via 日刊建設工業...

福島県双葉町/JR双葉駅東地区でにぎわい再生へ、事業化検討支援を公募

 福島県双葉町は東日本大震災前に町の中心市街地だったJR双葉駅東地区の再生に向け、にぎわいを取り戻す方策の検討に着手する。まちづくり中核事業の具体化に向けた「双葉駅東地区事業化検討支援業務」の委託先を決める公募型プロポーザルを公告した。駅周辺の3エリアで再整備や公共複合施設の複合化、官民連携手法の検討などを任せる。参加申請を5月2日まで受け付ける。2回の審査を経て、同28日に契約候補者を選定する。契約上限額は2996万4000円(税込み)。履行期間は2026年3月31日まで。  プロポには、過去3年(22~24年度)に市町村が発注したまちづくり基本構想や計画などの策定業務を元請で完了した実績がある単体が参加できる。  町は24年度に策定した「双葉駅東地区まちづくり基本構想」で、各エリアの特性に合わせた先行整備を検討する重点エリアに▽駅前・駅前通り周辺▽新山▽旧国道・町民グラウンド周辺-の3カ所を設定した。復興の各段階に応じた拠点づくりを検討。このうち公共施設が集積する駅前・駅前通りエリアでは、商業・公共・居住機能の導入と街路整備の連携などで、歩行者が回遊しやすく出歩きたくなるまちづくりを目指す。  学校教育施設に近接する新山エリアは緑と河川に囲まれた環境を生かし、区画道路の再整備や居住環境の創出を図る。旧国道・町民グラウンド周辺エリアでは、町有地を核にした運動広場・公共施設を整備。町民グラウンドへの入り口になる旧国道沿いには商業施設を計画する。26年度の予算化に向け、事業目的や事業概要、事業手法・スケジュール、概算事業費などを整理し「双葉駅東地区事業計画」案としてまとめる。  双葉駅東地区は、22年8月に双葉駅を中心とする特定復興再生拠点区域の避難指示が解除され、再定住が可能になった。公共・商業機能が集積し、居住機能の拡充も見込まれる中、段階的な復興にあわせた都市サービス機能などを再配置する。  基本構想策定業務は建設技術研究所が担当した。 from...

大林組ら/低炭素型の高性能セメント複合材料を開発、大阪・関西万博会場に適用

 大林組と太平洋マテリアルは、低炭素型の高性能セメント複合材料「ユニバーサルクリートGX」を共同開発した。材料のセメントの一部を高炉スラグ微粉末などの産業副産物に置き換え、従来の高性能セメント複合材料と比較して、製造時の二酸化炭素(CO2)排出量を約50%低減。磁気を持たない特徴と耐久性を生かし、大阪・関西万博で来場者が移動に使う電気自動車(EV)バスが走るワイヤレス給電システムの道路設備に適用した。  ユニバーサルクリートGXは、モルタルとポリプロピレン短繊維で構成。磁気を持つ素材を使用せず、繊維による補強効果により0・5%程度の引っ張りひずみでも引っ張り強度を保持する性能を持つ。一般のセメント系材料と比べ高い耐久性を実現した。  大阪・関西万博のEVバス用道路設備にも適用。大林組は「来場者移動EVバス」事業に協賛しており、ワイヤレス給電システムの構築に向け、送電コイルの埋設工事を担当した。  EVバスが走行しながらワイヤレス給電を実現するには、送電コイルの上面を被覆する材料が非磁性であることや、通行車両の荷重に耐えられる耐久性を持たせる必要がある。給電効率を高めるため道路表面のごく浅い位置に送電コイルを埋設。送電コイルの上面にユニバーサルクリートGXを被覆したプレキャストコイルユニットで舗装した。送電コイル上面を覆うユニバーサルクリートGXの舗装厚さは約25ミリで、通行車両の重量に耐えることができる。  大林組は今後、ユニバーサルクリートGXの特徴を生かし、ワイヤレス給電システムの道路設備をはじめ、非磁性と耐久性が求められる分野への適用を進める。さらにセメント材料の低炭素化を推進することで、脱炭素社会の実現に貢献していく。 from...

2025年4月8日火曜日

森ビル/虎ノ門ヒルズグラスロックを公開、社会課題解決へ共創促進

 森ビルは7日、虎ノ門ヒルズ(東京都港区)を構成する施設「グラスロック」を報道陣に公開した。中には共創プラットフォーム「Glass Rock」を開設。霞が関の官庁街や丸の内・新橋などのオフィス街に近い立地を生かし、官民や法人・個人の枠を越えたコミュニティーの形成を促す。少子高齢化や気候変動といった幅広い社会課題を視野に、解決に向けた取り組みが具体化するよう後押しする。9日に開業する。  共創プラットフォームは地下1階と地上4階に入る。コワーキングスペースやラウンジ、キッチンなどで構成。地下1階には活動を社会に発信するギャラリーも設けた。  企業や行政機関、研究機関、NPO、NGO、個人など幅広い主体に利用してもらい、セクターを越えた協働を促す。それぞれがテーマにする社会課題の解決に向け、知恵を出し合って実践的な取り組みにつなげてもらう。  コミュニティーの活性化やマッチングの促進に向け、外部のコーディネーターも入れる。森ビルは100社・1000人規模への拡大を目標に掲げている。  地上2、3階には丸善ジュンク堂書店が、新業態店舗「magma books」をオープンする。地下2階~地上2階には飲食・物販店舗も入る。  建設地は虎ノ門1(敷地面積2445平方メートル)。同ヒルズの森タワーとステーションタワーの中間に位置し、東京メトロ日比谷線虎ノ門ヒルズ駅に直結している。建物は地下3階地上4階建て延べ8800平方メートルの規模。デザインをOMA、基本・実施設計を森ビル、施工は鹿島ときんでん、三建設備工業、日立ビルシステムの4社が手掛けた。 from...

シンガポールと五洋建設-60年の歩みと戦略・3/市街地地下に整備する大型トンネル

 ◇難工事を日本の技術で効率施工  シンガポール陸上交通庁(LTA)発注の「N105」は大型道路トンネル工事。同国の南北を縦断する全長約21・5キロのノースサウスコリドー(NSC)高速道路のN105工区に当たる。2018年8月1日に着工し、10月末で約50%の進捗率となっている。受注金額は642億円(受注当時)。  NSC高速道路工事は北側に高架橋を架け、南側に市街地の一般道路の下にトンネルを整備する。五洋建設が担当するN105工区は南側の地下高速道路(全長約1キロ)。片側4車線、上下2連のボックスカルバート構造で地下高速道路を造る。地上部は病院や学校、ショッピングセンターなどの建物が隣接している交通量の多い繁華街に位置する。地下部分は工区内を既設のMRT(都市高速鉄道)が横断しており、高速道路と交差する箇所がある。  既存MRTを上下に挟んで施工する。高速道路とMRTの最小離隔は1・5メートルしかない。慎重な施工が必要になるため、日本の特許技術である函体推進工法を代替案として提案し採用された。  上越しのトンネル部で採用されるSFT工法(Simple Faceless Tunnel工法)は切羽掘削を行わず、ところてんのようにボックスカルバート(函体)を押し出すのが特徴。ボックスカルバート外周部に設置した箱形ルーフ(矩形推進管、1・2メートル角)を地盤とともに本体構造物であるボックスカルバートで水平に押し出し、置き換えることにより、地下構造物を非開削で構築する施工法である。  荒木俊雄総括所長(取材時・国際部門国際土木本部土木事業部長)は「供用中の地下鉄の上下を横断するのが最大の特徴だ。技術的に難度の高い工事」と話す。  同工事の入札は、価格よりも設計や施工方法など技術面に高い評価を与える選考方法が採用された。五洋建設は、最も技術的に困難な既設MRTとの交差箇所で日本の技術を用いた施工方法を提案。これまでの実績が認められ、競争入札で勝ち取った。  荒木総括所長は「注目度の高い工事だ。期待に応えられるように業務を遂行する。日本人や日本の技術がすごいことを示したい」と力を込める。入社7年目の田島涼主任は同工事が初めての現場。国際部門を志願し、シンガポール勤務は5年目となる。田島主任は「安全第一で現場を自分の目で危険を察知し仕事を全うしたい」と意気込む。 from...

回転窓/玉手箱、開ける?開けない?

 日本古来の文学として知られる「御伽草子」は鎌倉時代末から江戸時代にかけて編さんされた短編文学で、現存する作品は300編を超えるという▼物語の主人公は高僧や公家、武士、庶民など多種多様。親しみやすい文章が特徴で、単純な筋書きを通じて人生の教訓や知識を読み手に教えてくれる。多くの人が幼い頃、一寸法師などを読んだり聞いたりした経験があるだろう▼浦島太郎は御伽草子の中でも特に有名な物語。いじめられている亀を助け、お礼に竜宮城で歓待された後、乙姫と約束したにもかかわらず玉手箱を開け、あっという間に年老いてしまう。子どもの頃は分からなかったが、改めて考えると良い行いを心掛ける、約束を守るのは大切、快楽に溺れてはいけないなど、読み取れる教訓が多いことに気付く▼新年度に入り企業や行政機関で新しい職場や部署に異動した人も多いと思う。たった数年離れていただけなのに事情が分からず戸惑ってしまう。組織の動きに取り残された心境を「浦島状態」と呼ぶ▼小欄も3年ぶりで東京に戻った。玉手箱を開けようか開けまいか…。太郎の迷いが少しだけ分かる気がする。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172857 via 日刊建設工業...

新社長/関電工・田母神博文氏、働き続けたいと思える会社に

 設備工事業界に追い風が吹くタイミングで、経営のかじ取りを任された。主に管理、営業部門を歩み、就任の打診時には「胸がざわついた」と明かす。過去に事務システムの全面刷新を取り仕切った経験などを生かし、社是である「ひといち(人間第一)」を追求していく。  --就任の抱負を。  「業績が伸びる中で重いバトンを引き継いだ。電力・通信インフラ、建築設備(屋内線・空調)の二つを事業の柱とすることは変わらない。今求められる脱炭素化などのニーズに応え、後輩にもっと輝くバトンを渡すべく業界ナンバーワンを目指す」  「(技術職として)現場で働いた経験がない点は弱みかもしれない。できる限り現場に足を運んで会話をし、どうすれば働き続けられる会社をつくれるかを考えたい。現場を知り過ぎないからこそ、思い切った業務の分業化ができる部分もあるだろう」  --どうナンバーワンを目指すのか。  「創立100周年を迎える2044年に『グリーンイノベーション企業』の実現を掲げている。鍵は省エネと電化だ。顧客のエネルギーの使い方を可視化し提案するのが第一歩であり、ニーズに技術的に応える必要がある。価値を生み出すために、今から投資していく」  「中期経営計画(24~26年度)では連結売上高6400億円を目指しているが、刻々と変化する環境を踏まえて数字は柔軟に見直す。建設コストの上昇に伴う投資抑制の動きには強い危機感がある。海外事業は将来的に売上高10%程度に伸ばしたい。M&A(企業合併・買収)も事業単位で広く検討している」  --生産性向上策は。  「そのうち設備工事の需給逼迫(ひっぱく)も解消され、また価格競争が厳しくなるだろう。同じ単価で、いかに生産性を高めるかが大事だ。特に電力は、効率化を促す新託送料金制度(レベニューキャップ制度)の期間中に量をこなす必要がある。DXやロボット化の研究開発を進める。社内の分業の仕切りを変えて事務も含め一緒にものづくりができる体制を築く。今年中に方向性をまとめたい」  --人材確保の方針は。  「できることは、なんでもやる。新卒採用では役員が出向くなどして学校や学生とつながりをつくっている。文系出身や外国出身の技術者を育てる多様な育成メニューを用意したい。定期採用の割合を見直し、中途採用も積極的に増やす」  「従業員や関係会社、協力会社を含め業務に従事する人を守らず、顧客の設備は守れない。資格手当の拡充など働き続けたいと思える福利厚生施策を打ち出していく」。  (4月1日就任)  (たもがみ・ひろふみ)1986年明治大学商学部卒、関電工入社。2020年常務執行役員、23年取締役、24年6月専務執行役員、同7月最高戦略責任者(CSO)兼最高人事責任者(CHRO)。同社がパートナーを務めるプロバスケットボールチーム「アルティーリ千葉」の観戦が趣味。座右の銘は「上善水の如し」。東京都出身、61歳。 from...

鹿児島市/いづろ交差点地区の都市再生促進、25年度に再開発基本計画策定へ

 鹿児島市は、いづろ交差点周辺地区(約7ヘクタール)を対象とした市街地総合再生基本計画をまとめた。計画期間を2044年度までのおおむね20年間に設定。第1種市街地再開発事業や共同建て替え事業などを推進し、観光客らが集う交流拠点施設の整備を目指す。同地区のうち市街地再開発事業の検討区域は約4ヘクタールで、25年度に再開発ビルの配置イメージや規模などを示す再開発基本計画を策定する。  対象区域は中町、大黒町、金生町、泉町、堀江町、住吉町の14街区。このうち市街地再開発の検討区域は金生町、泉町と堀江町の一部の8街区で、残る6街区は共同建て替えや個別建て替えなどを視野に入れる。  整備の基本方針では7ヘクタールのうち、いづろ交差点を含む西側一帯を商店街街区の機能更新を目指す「魅力向上エリア」、鹿児島港本港区寄りの東側一帯を「まちなか居住エリア」として居住推進や低層の商業施設、オフィス、ホテルといった多様な機能を誘導。両エリアの間は「拠点施設整備エリア」に設定し集約駐車場などを整備する。併せて、道路上空通路などを整備し、歩行者が快適に移動可能な空間整備にも取り組む。  市街地再開発の検討区域では月内にも地権者でつくるまちづくり協議会が設立される見通し。これを踏まえ、市は再開発基本計画の策定に向けた調査検討業務の委託先を決める一般競争入札を5月上旬ごろに公告し、6月ごろまでに開札して業務委託する予定。25年度当初予算で委託費など関連経費に567万7000円を計上した。  同地区では建物の老朽化が課題となる中、一部の地権者が市街地再開発事業を視野に都市再生の検討に取り組むことを市に提案。これを受け、市からも地区の関係者に呼び掛けを行い、24年3月に地権者約150者による研究会が設立された。勉強会開催や地域へのアンケートの結果を踏まえ、総合再生基本計画を取りまとめた。  総合再生基本計画の作成業務はアール・アイ・エーが担当。 from...

2025年4月7日月曜日

結/ナイガイ・グエンカイン・クエットさん、チョウタイン・ロンさん

 ◇キャリアアップの道開く  2024年10月、特定技能外国人で初の熱絶縁施工技能士1級に2人そろって合格した。学科試験の日本語の勉強に先輩社員が協力するなど社内全体で後押し。難関を突破し特定技能2号などキャリアアップへの展望が開けた。「技術を高め、帰国したら自分の会社を設立したい」(ロンさん)、「もっと長く日本に滞在しスキルを磨き収入も増やしていきたい」(クエットさん)と夢を語る。  ナイガイ初の技能実習生としてベトナムから17年に来日。韓国や台湾も選択肢だったが、日本を選んだのは安全面などが決め手だった。2人とも最初に苦労したのは現場でのコミュニケーション。現場特有の専門用語に苦戦し、作業中の職人にどう話し掛ければいいか迷うことも。それだけに日々の努力で仕事を覚え「チームで協力して働いていると感じることがうれしい」(ロンさん)と話す。  今では同社直用の外国人技能者が約60人在籍。多くは技能実習期間を無事に終え、うち6割以上は特定技能に移行する。キャリアを重ね、現場の主力となる2人はロールモデルと言える存在だ。「保温工として技術が向上していると感じることがうれしい。きれいに仕上がり現場が完成していく様子を見ることがやりがい」(クエットさん)。異国の地で培った自信を胸に、この先の未来を切り開く。 from...

PKSHA Technology/AIで面接スキル向上、ミスマッチ防止など

 AIサービス開発を手掛けるPKSHA Technology(パークシャテクノロジー)が、AIを使った面接官のスキル向上に取り組んでいる。AIで人事業務の効率化を実現するソリューションサービス「AI Suite for HR」を展開。AI面接や面接官トレーニングなどのサービスを累計700社以上が導入している。  AI Suite for HRは、企業側の人事担当者が抱える課題解決に向けたソリューションサービス。面接官の評価や指標などのばらつきをAIで最適化し、企業と求職者の希望に合致した採用を目指している。AIの面接官トレーニングやAI面接に加え、今回新たに「PKSHA面接コパイロット」を開発した。  PKSHA面接コパイロットは、高精度な自然言語処理技術を活用。オンライン面接時の会話内容をリアルタイムに解析し、適切な質問を表示する。候補者を知るために必要な質問の聞き漏らしを削減する。  事前に設定された評価基準に基づき、AIが候補者の能力や適性を客観的に分析するため、面接官の主観や偏見による評価のばらつきを抑え、公平な評価ができる。面接内容は自動で記録・分析し、評価リポートを生成。面接後の情報整理や共有にかかる時間を削減する。  面接終了後、面接の会話内容の要約と分析を行い、人間が最終的に評価するための前提情報を整理。面接の申し送りや評価の標準化を支援する。  面接官はAIによるフィードバックを通じて、自身の面接スキルを客観的に把握し改善できる。質問のバリエーションや候補者の反応に応じた対応を学ぶことで面接官の成長を促す。  PKSHAの大野紗和子CEO室室長は「多くの企業で人事担当者の採用面接に必要なスキルが足りていない現状がある。評価にばらつきが生じるため優秀な人材の取りこぼしや、入社後のミスマッチが課題だ。学生がしっかりと準備しているのであれば企業側や面接官もその準備に応えないといけない。そのサポートをPKSHAで担っていく」と話す。  同社は今後、人事領域全体を網羅するサービスへと展開していく予定。学生や中途向けにAIがキャリア相談を受けるサービスなども検討していく。 from...

堺市/ICT活用工事26年度から「提案評価」、証明書交付取りやめ

 堺市は総合評価方式でのICT活用工事の新たな評価方法として、2026年度から「提案評価」を導入する。詳細は今後検討し、「総合評価方式ガイドライン」に盛り込む。現行の「実績評価」は24年度末で原則廃止し、これに伴い「ICT活用証明書」の交付を取りやめた。評価方法の見直しに合わせ、ICT活用工事試行要領を改定した。  これまで市は発注工事でICT活用の取り組みを定着させるため、3D起工測量や3D設計データ作成など、所定のプロセスを実施した受注者に対し「ICT活用証明書」を交付し、総合評価での実績評価の加点対象としてきた。  一方で、国土交通省が土工や浚渫工へのICT活用を原則化する方向で検討を進めるなど、ICT施工に携わる業者層の裾野が大手にとどまらず中小企業にも広がりつつある。堺市が発注する工事でも活用実績を持つ入札参加者が増えており、証明書の有無だけでは評価の差が付きにくくなってきた。  こうした状況を踏まえ、実績に代えてより主体的な活用提案を評価する方式へ転換する。26年度は移行期間とし、実績評価と提案評価の両方を活用可能とする方針。同年度版のガイドラインに具体的な運用を盛り込む。  これに伴うICT活用工事試行要領の改定では証明書発行廃止に加え、「部分的ICT施工」の定義も一部見直す。従来は3D起工測量と3D設計データ作成を行えばICTを部分活用したとみなしてきた。本年度4月以降は、この組み合わせでの部分活用を認めないようにする。ICT建機による施工や3D出来形管理の実施が別途必要になる。  堺市の担当者は「ICT施工の導入が広がる中、実績だけでは業者の差が見えにくくなってきた。各社が現場特性に即した工夫を提案することで、より実効性のある活用が進み、生産性の向上や技術の底上げにつながるのではないか」と話す。 from...

回転窓/正しい知識得て対策を

 旅がらすの麻しん(はしか)ウイルス、その名も「はっしー」が人体に侵入して大暴れ! こんなストーリーから始まる児童向けの『うつる病気のひみつがわかる絵本2 はしかウイルスのはっしー』(おかだはるえ・文、あおきひろえ・絵/ポプラ社)は感染や予防の基礎を学べて大人にも参考になる▼ウイルスがどのように体内で増え、これらと免疫がどう戦うのか。医学博士の著者(文)がキャラクターを通じて分かりやすく解説する▼米国で2月、同国内では10年ぶりにはしかによる死者が確認された。海外で感染者が増え、日本でも増加傾向にあるという▼感染者が出た自治体では、他の人へ感染させてしまう可能性のある期間に患者が利用した公共交通機関などの情報を公表している。はしかはウイルスの中でも強い感染力を持つ▼はしかを「命定め」の病と恐れた江戸時代に数多く出版されたのが「はしか絵」。感染しないために避けることなどが描かれ、これらの錦絵がはしかに関する情報を広める役割も果たした。流行期は春から夏にかけて。予防接種の効果など正しい知識を得て感染対策に努めたい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172831 via 日刊建設工業...

北九州市/戸畑枝光線2期区間(戸畑~牧山)、25年度内に着工

 北九州市は「都市計画道路戸畑枝光線」(戸畑区戸畑~八幡東区東田、延長約4・4キロ)の2期区間(戸畑~牧山間、約1・7キロ)の工事に着手する。トンネル延長約840メートルのうち最も深い地点である明治町アンダーパスの下の約30メートル部から工事を行う。工法は推進工法で、公告時期や入札方式は未定としている。  2025年度一般会計当初予算に工事や用地買収、測量調査を行うための整備事業費10億6100万円を計上。今回着手する部分のトンネル工事について、26~28年度の限度額74億円の債務負担行為を設定した。  事業は福岡北九州高速道路公社が主体の有料道路事業と街路事業の合併施行方式。街路事業の車線数は4車線。3月に開通した牧山~枝光間の1期区間(約2・7キロ)と、戸畑~牧山間の2期区間で構成する。  2期区間のトンネル以外は土工で、トンネルのうち約810メートルは開削工法で行う。事業費は約458億円で、3月時点での事業費ベースの進捗率は10%未満。33年度の事業完了を目指す。  有料道路事業は、料金所や交通管制施設などの整備費が約90億円。若戸JCT(戸畑区川代)、牧山出入り口(同牧山海岸)、枝光出入り口(八幡東区東田)を設置するほか、北九州高速2号線(戸畑区戸畑)と同5号線(八幡東区東田5)への接続区間としてそれぞれ約0・3キロと約0・5キロを整備する。 from...

2025年4月4日金曜日

大阪広域生コン協組/先端技術研究開発プロジェクトが竣工、施工はフジタ

 大阪広域生コンクリート協同組合(木村貴洋理事長)が大阪市住之江区で建設を進めていた「(仮称)大阪広域協組先端技術研究開発プロジェクト」が完成し、2日に竣工式と定礎式が開かれた。木村理事長をはじめ、協同組合の幹部、設計・施工の関係者ら約40人が完成を祝った。施設名は「テクノ・ラボ大阪」に決めた。設計は梓設計、施工はフジタが担当。  神事では、神職による祝詞奏上、清はらいの儀に続き、木村理事長、協同組合副理事長、梓設計の杉谷文彦会長、フジタの新谷恭英常務執行役員が玉串をささげた。定礎式では紙幣や貨幣、同日付の新聞などを入れた定礎箱を壁の中に収め、木村理事長が「定礎」の文字が刻まれたプレートを所定の位置に張り付けた。  式典の後、木村理事長は「技術の粋を結集して建設した。大阪広域協同組合の覚悟がこれだけの建物を生んだ。きょうが新しい第一歩だ」と述べ、杉谷会長、新谷常務執行役員に感謝状を手渡した。  建設地は南港北1の6の2の敷地約1万3580平方メートル。建物の規模はRC造地下1階地上4階建て延べ約1万3000平方メートル。事務所棟はホールやセミナールーム、カフェのほか、大阪広域協組や関連団体の事務室、会議室などが入り、研究棟は実験プラントや最新の機器をそろえた試験室などを設け、最先端の技術研究・開発拠点として機能する。 from...

回転窓/イノベーションの種

 今月13日に大阪・関西万博の開幕を控え、ドローンなどの技術を応用した「空飛ぶクルマ」の発着拠点(ポート)が会場内に完成した。会期中(10月13日まで)に次世代モビリティーの姿を発信する計画だが、実際に乗車できる商用運航はもう少し先になりそう▼ここにきてドローン技術の進展が目覚ましい。信州大学などの研究チームは生きたカイコガの触角をセンサーに使い、ドローンの高性能化に成功した▼フェロモンを検知すると電気信号が出る触角の性質を利用した技術。においの濃度の違いなどから発生源を見つけ、その場所にドローンを向かわせる仕組みという▼10センチ四方の小型ドローンを、オスのカイコガの触角を使ったセンサーで自動制御する。最近の実験ではこれまでの2倍以上となる約5メートル先から発せられるメスのフェロモンのにおいを感知。一般的なガスセンサーと比べ10~100倍の速さでにおいに反応し、ドローンが発生源へと飛行する▼この技術を使えば人のにおいも検知でき、災害時に要救助者を探すことも可能になると期待されている。イノベーションの種は身近なところにあるのかもしれない。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172773 via 日刊建設工業...

JAC/無料技能講習・オンライン特別教育を拡充、開催回数増や科目追加

 建設技能人材機構(JAC)は2025年度、特定技能外国人などが対象の母国語による無料の技能講習、オンライン特別教育を拡充する。技能講習は建設機械関係の教習を手掛けるPCTに加えキャタピラー教習所の協力も得て、5科目で139回行う。新たにガス溶接の技能講習も始める予定。オンライン特別教育は提供科目を増やし、フルハーネスと足場組み立てで入国前に修了できる環境整備を進める。=2面に関連記事  技能講習はベトナム語、インドネシア語で1月から行っている。25年度の受講は3日に募集を始めた。JACのホームページから申し込む。3期に分け1530人(24年度〈3月14日時点〉144人)の受講を見込む。学科、実技の試験に合格すれば、その場で修了証を発行する。PCTの16カ所、キャタピラー教習所の7カ所で、車両系建設機械(整地・運搬・積み込み・掘削用)運転技能講習など5科目を行う。  開催の回数、地域の増加を求める要望が多い。英語、中国語、カンボジア語での実施も準備するという。実施予定のガス溶接技能講習は建設キャリアアップシステム(CCUS)の圧接の能力評価基準で、レベル2に必須の保有資格の一つとなっている。  オンライン特別教育は24年7月から7科目を5言語で提供してきた。3月28日開講分までで983人が受講した。  25年度は新たに▽玉掛け(1トン未満)▽ローラー運転▽小型車両系建設機械(3トン未満)▽移動式クレーン等運転(1トン未満)▽フォークリフト(同)運転▽建設機械(コンクリートポンプ車)運転▽高所作業車運転▽電気取り扱い(低圧)▽特定粉じん作業▽石綿等使用建物業務-の科目を追加する方向で準備する。  振動工具取り扱い作業者安全衛生教育などの提供も視野に入れている。学科受講後の実技教育の支援をPCT、キャタピラー教習所と検討する。入国前の特別教育はインドネシア、ベトナムなどの現地の送り出し機関と連携して行う。 from...

関東整備局/羽田空港アクセス鉄道開削部他躯体築造、鹿島JVと随契

 関東地方整備局は「令和6年度東京国際空港空港アクセス鉄道開削部(ターミナル北連絡橋部)他躯体築造工事」を118億1398万9000円(税込み、以下同)で鹿島・東亜建設工業・あおみ建設JVと随意契約した。契約日は3月25日。予定価格は118億2039万1000円だった。履行期間は2029年3月23日まで。概要は仮設工、撤去工、地盤改良工、土工、本体工、復旧工、工事場所は東京都大田区羽田空港。  23年11月に「令和5年度東京国際空港空港アクセス鉄道開削部(ターミナル北連絡橋部)他躯体築造工事に係る技術協力業務」の公募型プロポーザル(WTO対象)で、同JVを選定した。施工予定者が設計を支援するECI方式(技術協力・施工タイプ)を採用。羽田アクセス線工事のうち、道路橋直下やモノレールトンネル直上などで開削工法によりトンネル躯体を築造するための技術協力を行い、基本協定に基づく価格などの交渉を経て随意契約した。 from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172780 via 日刊建設工業...

清水建設、日本道路/BIM・CIMで道路施工のDX推進、3Dデータをシームレスに

 清水建設と日本道路が道路施工のDXを強力に推進している。検討段階で使用したBIM/CIMモデルの3Dデータをそのまま施工にも展開するシームレスなデータフローを構築。両社で組成したJVが福岡市東区で施工する「九大箱崎南地区都市計画道路築造その他工事」の現場では、舗装切削工事のマシンコントロール(MC)施工でBIM/CIMにひもづいた施工検討データを展開・活用し、高精度な切削機械の自動運転を実現した。  今回の現場で活用したBIM/CIMは、施工対象の道路舗装や施工エリアにある埋設物、路面標識の各モデルを同一の座標系で統合。モデルデータは検討段階から施工段階へのシームレスなデータ連動を見据え、最終工程のMC施工に沿ったデータ形式からバックキャストし統合モデルのデータ仕様を定義した。  このデータ仕様に基づき工事エリアの点群データを取得。設計図面から作成した構築物の3Dモデルや探査結果を反映した埋設物の3Dモデルなどに、点群データに基づく位置情報を付与し、多様な用途に活用できる統合モデルを構築した。  統合モデルに集約した3Dデータをシームレスに展開するデータフローを構築。データ変換作業が不要となり、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)による施工検討や施工スケジュールの4Dシミュレーションができる。早期の計画変更などにも柔軟に対応可能となる。  舗装切削工のMC施工では、統合モデルの検討データをMCシステムに展開し、施工指示データの作成などの準備工程を圧縮することによって大幅な省力化、省人化を実現。MC施工のコストを約25%削減した。  両社は同現場の取り組みを他の協働案件で推進していく方針。清水建設は他の土木工種にも展開し、土木工事全体の生産性向上を目指す。 from...

2025年4月3日木曜日

回転窓/防災・減災が連日話題な中で

 地域で発生した災害を分かりやすく伝え教訓をつないでいく活動や施設を国が認定する「NIPPON防災資産」。「3・11伝承ロード」(青森、岩手、宮城、福島)や「黒潮町の防災ツーリズム」(高知)などが認定されている▼認定の関係者が集まった2月の会議を踏まえ、国土技術研究センターが人や施設の連携を促す役割を担うことになった。災害を自分事にしてもらい避難につなげるためにもセンターの役割は大切になるであろう▼政府が国土強靱化実施中期計画の素案を1日に決めた。関係府省庁が所管する324施策のうち116施策の推進に必要な事業規模を2026年度から5年で「おおむね20兆円強程度」と見積もった▼資材費や人件費の高騰分が別枠となったのをはじめ事業規模の全体像はまだ見えていない。6月とされる計画の閣議決定に向け、事業規模を巡る政府・与党内の調整が注目される▼3月末に南海トラフ巨大地震の被害想定が公表されたばかり。ミャンマーやタイの地震被害も報道が続く。災害への備えをどうか進め続けてほしい--。防災や災害が連日話題になる中で、そう求めずにいられない。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172741 via 日刊建設工業...

新社長/青木あすなろ建設・望月尚幸氏、提案型営業で他社と差別化

 大手ゼネコンで長年建築現場に携わり、コンサルティング会社で建設業の問題解決に取り組んできた異色の経歴を持つ。計画立案や市場戦略に基づく提案型営業に注力する。コンサル時代に新規事業の創出や業務改革をけん引した経験を強みに経営のかじを取る。  --就任の抱負を。  「辻井靖前社長の意思を引き継ぎ、全体の調和を保ちながら会社を改革していく。コンサル時代の経験を生かし、10年後の市場を自分なりに分析している。提案型営業を積極的に行い、データセンター(DC)や物流施設などで個性を出して他社と差別化する。競争での仕事ではなく当社でしかできないことを増やす」  --経営環境をどう見る。  「価格転嫁などの対策効果も徐々に出ているが、建設費の高騰と需要のミスマッチが生まれている。今後は大規模再開発工事中心ではなくインフラの復旧や耐震工事、再生可能エネルギー、災害復興事業といった社会ニーズに即した需要が出てくるだろう。コンバージョンや全館リニューアルを中心に『リモデル事業』に特化し、建築売上高の25%を占めるようにしたい」  --注力する分野は。  「建築・土木ともに、DCや冷蔵冷凍、リニューアル、風力など市場規模の成長が期待できる再エネ、耐震、国土強靱化が中心になる。提案型営業を進め、高松コンストラクショングループ(TCG)などとの相乗効果を創出する。現在、積極的に高松建設の営業力を借りて共同受注している。それぞれの領域を補完していく。大阪・関西万博で次世代水中ブルドーザー(水中施工ロボット)を披露する。貢献度の高い事業になり得る。ダム工事の浚渫などで活用したい」  --人材確保と育成は。  「施工管理者が本来するべき業務に集中できるよう2025年度から新事業としてスマートBPO(外部委託)を展開する。写真管理やITベンダーなど7社と連携して外販も検討している。業務を『計画・管理業務』と『事務・書類業務』に分けて内勤業務のシェアードサービスセンター(SSC)化を実現する」  「海外技術者の採用や、施工計画・管理に特化したスペシャリストを育てる。オールラウンダーではなく、向き不向きを見定め能力を発揮してもらい社員のキャリアパスにつなげたい。個々人が活躍できるための組織改革を徐々に進める。人事制度・評価を変えモチベーションを上げる仕組みを26年度から運営する」  --今後の展望を。  「営業利益を確実に上げられる会社を目指して今後3年で営業利益5%以上を上げる。独自の強みを確立し、必要とされる企業を目指すことで安定した収益を確保する」。  (4月1日就任)  (もちづき・なおゆき)1987年日本大学理工学部卒、清水建設入社。PwCコンサルティング合同会社シニアマネージャーや日本国土開発取締役兼副社長執行役員、TCG顧問などを経て、2024年1月青木あすなろ建設顧問、同4月副社長執行役員、同6月代表取締役。趣味は茶道。座右の銘は「利他の心」。神奈川県出身、61歳。 from...

国交省/直轄営繕でも完全週休2日、受注者選択可能にし労務費・現場管理費補正

 国土交通省は直轄営繕工事を対象に「週単位」で2日以上の休みを確保する完全週休2日を推進する。2025年度から週単位の週休2日を受注者が工事着手前に選択可能とし、これに合わせた労務費と現場管理費の補正係数を設定した。新築工事では「月単位」の週休2日を必須として発注する方針。工事全体(通期)の週休2日は改修工事も含めて全発注案件で必須となることから労務費補正を撤廃した。  直轄土木工事と同じように土日休みを原則とした完全週休2日に取り組む意向。建物内を使いながらの改修など建築・設備工事に特有の事情を考慮し、受注者との協議で平日を代替休日とすることも週単位の週休2日として認める。  週休2日の発注方式は新築工事を想定した「I型」、改修工事を想定した「II型」の二つに分けて運用。I型は月単位を必須、週単位を選択制とし、II型は通期を必須、月単位と週単位を選択制とする。施工実態の調査を踏まえ、労務費の補正係数は月単位で1・02倍(24年度1・04倍)と設定。新設となる週単位の補正係数は労務費1・02倍、現場管理費1・01倍とした。  受発注者双方の負担とならないよう既存書類で現場閉所の達成状況を確認し、当初の目標水準に満たない場合、それに応じ補正分を減額変更する。設備工事などを分離発注する場合、発注案件単位で現場作業がない状態を「現場休息」とし現場閉所と同等とみなす。  工事成績評定は、以前から標準の評価項目とする「休日・代休の確保」で適切に評価する。I型、II型ともに選択制となる部分を加点対象とする方向だ。受注者側に週休2日に取り組む姿勢が見られない場合には減点対象とする。  営繕工事の働き方改革を巡っては、国交省と都道府県、政令市でつくる全国営繕主管課長会議で「公共建築工事における工期設定の基本的考え方」の改定作業が進行中。国や自治体の週休2日工事の取り組み状況などを反映した形に見直す方針。建築・設備関連業界団体の意見も取り入れつつ、7月の策定・公表を見込む。 from...

燈/建設業界特化型AIエージェント開発、顧客企業ごとにカスタマイズ

 建設DXを手掛ける燈(東京都文京区、野呂侑希最高経営責任者〈CEO〉)が、建設業界特化型のAIエージェントを開発した。自社の大規模言語モデル(LLM)を使用した建設業界向けのAIチャットサービス「光/Hikari」の新機能として実装。建設業の業務フローに基づき構築され、顧客企業ごとにカスタマイズできるため、高度な自然言語処理技術を用い、設計図書や画像解析にも対応する。DX推進のためAIエージェントが現場業務を効率化、ノウハウの標準化を実現する。  燈が開発したAIエージェントは、数千体規模のAIエージェントがプロンプト(指示)に対して自律的に仕事を実行する。建設業界特化の知識データベースで高度な専門知識に対応し、各業務プロセスに最適化された専門エージェントが業務を遂行する。日報や帳簿・報告書作成など、現場監督や施工管理の担当者が日常的に行う業務をサポートし、施工以外で必要とする事務作業の時間を大幅に削減する。  例えば施工計画書を作成する場合、従来は一つの指示を何回も行う必要があり、複数の情報やデータを参照した後に、最終的には人がまとめていた。一方、AIエージェントを使用すると、施工計画書作成というタスクに対して特記仕様書の検索と整理、過去資料の参照、法令調査など施工計画書の作成に関わるタスクを総合的に行い生成・評価も可能となる。  技術提案や安全管理などの業務にも活用できる。AIが総合的に担当し、自立型として全てを加味して結果を出してくれる。書類作成の自動化や現場業務の効率化を実現し、ヒューマンエラーの低減、事務作業の時間削減、熟練技術者の知識継承の促進に貢献する。  AIエージェントの機能は、企業ごとにカスタマイズ可能。共通業務フローに加え独自の承認プロセスや書類テンプレート、社内システムとAPI連携できる。さらに高度な自然言語処理技術を活用し、建築・土木分野の専門用語を高精度で理解し、設計図や画像の解析も対応している。  野呂氏は「2025年はAIエージェント元年だ。これからどんどん加速するだろう」とし、「理想的なエージェントを多く作って、建設業に送り込みたい。人手不足を解消したい。エージェントが1万体いれば全ての企業が『1万人企業』ということになる。建設業のほとんどを燈が担える。高齢化対策にもつなげたい」と意気込む。 from...

2025年4月2日水曜日

回転窓/桜の下で祈る願い

 過ごしやすい陽気になってきたかと思えば、1日は真冬の寒さとなった地域もあり驚かされた。寒暖を繰り返すのは春の常だが、体調を崩さないよう注意したい▼この時期に天候が良ければ楽しみなのはお花見。きれいな桜を見ようと景勝地などに多数の花見客が訪れる。昨年よりも5日早く開花した東京都内では、目黒川沿い(目黒区)や千鳥ケ淵(千代田区)で見ごろを迎えているようだ▼春の風物詩として人気の桜も人間と同じように病気に罹(かか)る。樹齢400年を数える熊本県南阿蘇村の「一心行の大桜」は花の数が減少。今年は樹勢回復の治療に専念することを理由に、村が桜の公開を中止した。これからも多くの花を咲かせてくれるためには仕方がない▼桜は北半球に分布する。特に日本列島付近に多くの種類が集中し、薄紅色の花を咲かせるヤマザクラや白色が特徴のオオシマザクラなど9種が自生している▼花見の文化は奈良時代に貴族の間で流行し、江戸時代になり農民へ広がったとされる。豊作を祈願して木の下で宴会するスタイルが確立したのもこの頃。農業の恵みにも感謝しながら花をめでたい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172700 via 日刊建設工業...

新社長/飛島建設・築地功氏、培ったイノベーション力で変革

 入社してダムやトンネルの現場施工と、技術部門を約20年ずつ経験してきた。2024年10月に発足した飛島ホールディングス(HD)の中核事業会社として、各部門の連携強化でイノベーションを一層推進し、新しい時代を切り開いていく方針だ。これからも「顧客や地域社会からの信頼を得る」ことが何よりも重要とし、新技術・方法を積極的に取り入れ、「最前線を走り続けたい」と強調する。  --就任の抱負を。  「創業142年の歴史と築いてきた信頼を最大限に尊重し、次につないでいく。新技術をどんどん取り入れるなど、これまでの固定観念を破る。前職の技術研究所では社会課題や顧客ニーズに対するソリューションビジネスの中核として技術開発を推進してきた。技術部門で培ったイノベーション力で変革を進める。歴史と革新を両立させ、これからも存在価値のある会社にしたい」  --経営方針は。  「飛島HDグループの中でしっかりと収益を上げていくことが重要だ。建設事業とシナジー(相乗効果)を発揮できる『グロース事業』や、デジタル技術で建設生産プロセスを変革する『イノベーション事業』の展開により領域の拡充と規模の拡大を目指す。理念に掲げる『創造』『共創』『共生』を実効性のある価値として具現化し続ける。旺盛な建設需要に対応したいが、協力会社を含めて人材が不足している。生産性向上に努め、現場のノンコア業務を集約しているFSC(フィールドサクセスセンター)のシステムを多方面に水平展開していきたい」  --注力分野は。  「飛島HDのグループ間の連携を強化し、幅広い建設の形を作りたい。今後も防災技術を突き詰めて、国土強靱化や既存インフラの長寿命化などに貢献する。建築は中層階オフィスビルなどに取り組み、木造技術の研究も進める。再生可能エネルギー関連で小水力発電などに注力し、設計からマネジメントのノウハウを生かして、ダムの再開発なども狙う。社会的なニーズに対応できる二酸化炭素(CO2)の削減、カーボンニュートラルに貢献していく」  --今後の人材育成は。  「働き方の急激な変化に対応しながら、今まで常識だったことも見直し、会社が持続的に発展していける仕組みづくりを進める。熟練技術者の知見やノウハウをデータベース化して技術継承するほか、若手社員の早期育成のために複数現場でさまざまな工種を幅広く経験させていく。そして何でも話しやすい生き生きとした社内環境を作ることでエンゲージメント向上を目指す。多様な人材を生かすダイバーシティーの推進にも積極的に取り組む」。  (4月1日就任)  (つきじ・いさお)1987年京都大学工学部土木工学科卒、飛島建設入社。2016年土木事業本部土木技術部長、24年4月執行役員技術研究所長、同10月同技術戦略担当。大学時代は硬式野球部に所属。2番手キャッチャーとしてチーム力向上に貢献した経験を社長業に生かす。信条は「誠心誠意」。京都府出身、61歳。 from...

神奈川県/厚木市など3市と自走式ロープウエー導入検討、25年度に研究会設置

 神奈川県は2025年度、厚木、藤沢、三浦3市と自走式ロープウエーの導入に向けた検討に着手する。県と3市に開発事業者を加え、研究会を立ち上げる。25年度予算に新たな交通システムの展開として10百万円を計上した。需要や費用対効果などの導入可能性調査業務も委託する。県は安全性・利便性に優れた新たな公共交通の実現に期待している。  導入を予定するのはZip Infrastructure(福島県南相馬市、須知高匡最高経営責任者〈CEO〉)が開発中の自走式ロープウエー「Zippar(ジッパー)」。既存のモノレールに比べて整備コストが約5分の1(1キロ当たり15億円)、約1年での建設が可能など経済性に優れている。ロープとゴンドラが独立しているため、カーブや分岐などが自在で、柔軟な路線設計ができるなどの利点もある。県と同社は24年4月に「新たな交通サービスの実用化に向けた取組等に関する連携協定」も締結している。  県が県内自治体に導入意向などを打診した結果、秦野市、松田町、寒川町も導入検討の意向を示したが、需要者数などを勘案して今回は3市を選定した。研究会では各市の特徴なども踏まえた想定ルートや利用者数、技術上の課題などを検討する。県は実用化することで工業団地や大規模事業所への通勤、観光用途などで交通課題の解決を図ることに期待する。 from...

東急建設ら/打ち分け不要の耐震スリット材開発、打設管理効率化、品質向上

 東急建設とJSP(東京都千代田区、大久保知彦社長)、クギン(名古屋市中区、釘宮祐治社長)は、RC造建築物のコンクリート打設時に柱と壁の交互打ち分けを不要とする耐震スリット材を共同開発した。東急建設が東京都渋谷区で開発した「(仮称)宇田川町42計画新築工事」に初適用し、打設管理の効率化やコンクリートの品質向上といった効果を確認した。  耐震スリット材は一般的にRC造建築物に用いられている。地震発生時に柱や壁などの損傷を防ぎ建物の安全性を確保する。従来は打設するコンクリートの耐力を踏まえ1~1・5ミリ程度の高さで柱と壁を交互に打ち分ける必要がある。今回開発したのは従来の垂直スリット材に加え、補強材(トラストデッキ)と中間支持材によって打設時の側圧を支持することで、打設時に垂直スリット材の変形を抑制する高耐力、高剛性のスリットになる。  新たな耐震スリット材を用いることに伴い、一般的な階高の柱と雑壁がそれぞれ1回で打ち上げ可能となる。打ち重ね不良の低減や表面の色むら抑制に効果を発揮し、打設管理の効率化やコンクリートの品質向上に役立つ。  東急建設は今後、新たな耐震スリット材の適用拡大を目指す。 from 技術・商品 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172709 via...

建設各社が25年度入社式/若い視点で新しい価値を、困難乗り越え果敢に挑戦

 新年度が始まった1日、ゼネコンなど建設関連各社で入社式が開かれた。働き方改革や物価高騰など経営環境は大きく変化している。企業トップからは伝統と精神を受け継ぎつつ、若い力で新たな成長の可能性を切り開いていく主体的な挑戦を求めるメッセージが目立った。=4、5面と3、4日付に各社のトップメッセージ  同日付で社長が交代したのは大林組、清水建設、長谷工コーポレーション、飛島建設、青木あすなろ建設など。大林組の佐藤俊美社長兼最高経営責任者(CEO)は「皆さんはグループの中で最も新しい目を持っている人材だ。どうすれば新たな価値が生まれるか考え続け、その思いを実現するまで大切に育ててほしい」と呼び掛けた。  仕事への心構えとして常に「原点」に立ち返る重要性を説いたのは清水建設の新村達也社長。「迷いや不安に直面した時、答えは必ず皆さんの心の中にある。その志こそがどんな困難をも乗り越え、新たな未来を切り開く力になる」と訴えた。  長谷工コーポの熊野聡社長は、環境の変化に対応し乗り越えてきた「長谷工DNA」の精神を強調。「厳しいと思う場面を成長する機会と捉えて粘り強く挑戦し、長谷工DNAを継承していってほしい」と力を込めた。  飛島建設の築地功社長は「皆さんの『イノベーションマインド』に耳を傾ける準備はできている。若いからと遠慮せず、失敗を恐れずに変革していこう」と述べ、青木あすなろ建設の望月尚幸社長は「これまでの当たり前を踏襲するのではなく、自分で考えて行動できる、変化への適応力を持った人財に成長してほしい」と話した。  若い力の前向きな挑戦を応援し、新たな企業価値創出の原動力として期待する声が相次ぐ。  鹿島の天野裕正社長は「まずはやってみるという実践主義を大切にしてほしい」、大成建設の相川善郎社長は「会社のこれからを自らの手で創っていくという高い志を持ってほしい」、竹中工務店の佐々木正人社長は「革新への意識を持ち個性豊かで創造的な社会人に育ってほしい」とそれぞれ話した。  時代とともに多様化するニーズに対応するには、若い世代の視点が欠かせない。各社は一人一人が技能や個性を発揮できる環境を整備し、新たな成長戦略を築いていく。 from...

2025年4月1日火曜日

建設業スキー大会/竹中工務店が団体2連覇、節目の50回大会に約90人が参加

 第50回「建設業スキー大会」(主催・建設業スキー会、後援・日刊建設工業新聞社)が3月1、2の両日、長野県小諸市の高峰マウンテンパークで開かれた。9社から約90人が参加。団体戦では竹中工務店が優勝に輝いた。個人男子は清水悟選手(大成建設)が11年ぶりに栄冠を手にした。個人女子は橋本佳奈絵選手(三機工業)が悲願の1位を勝ち取った。  本戦は全長700メートル、最大斜度25度、標高差140メートルのパノラマコースで実施。仲佐俊之会長(清水建設OB)は「50回目の開催という伝統ある大会がこれからも盛り上がっていくことを期待したい」と総括した。  団体優勝した竹中工務店の市川和也主将は「昨年の初優勝に続き2連覇できて感無量だ。部で合宿をして練習を重ね、新戦力が入ったことも勝因の一つだと思う」と喜びを語った。  個人男子優勝の清水選手は、前年の大会で転倒したことを振り返り「絶対に完走して結果を出そうと思い、11年ぶりに優勝できてとてもうれしく思う」と述べた。個人女子優勝の橋本選手は「姉妹で目指して金メダルがやっと手元に来てくれた。応援し続けてくれた天国の母に感謝する」と話した。  50回目の節目を迎えた今回の大会では、特別企画としてゲスト選手による前走・後走や特別戦でのスノーボードクラス新設、本戦でのカムバック賞の新設、記念Tシャツの作成、記念アルバムや記念スライドショーの作成、過去大会の主な成績表の作成などが行われた。 from...

回転窓/勤務地は変われど

 駿河湾から静岡県の内陸部を想定震源域とするマグニチュード(M)8クラスの東海地震は、南海トラフ沿いで想定される大規模地震の一つ。この地域では1854年の安政東海地震の発生から現在まで大規模地震が発生していない▼20代前半まで同県内で過ごした。長年にわたり地震・津波を想定した避難訓練が定期的に実施されており、小学校の児童は防災頭巾をかぶって集団下校するなど、大人から子どもまで災害への危機意識が高い地域と言える▼先月28日にミャンマー中部を震源とする大規模地震が発生した。長大な断層の一部が破壊された内陸型地震で、過去からM7クラスの大規模地震が頻発していたという。だが今回の震源地周辺は、同クラスの地震が200年近く発生していない空白域だったようだ▼日本では南海トラフ巨大地震の被害想定が見直された。これまでの対策効果は一定程度あるものの、依然として強い揺れや津波で甚大な被害が広域で発生するリスクは大きい▼小欄は勤務地が変わり、きょうから東海・北陸エリアを担当。これからも紙面で防災・減災対策の重要性を発信し続けていきたい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172676 via 日刊建設工業...

新社長/大林組・佐藤俊美氏、社員の自己実現をグループの成長に

 2026年度を最終年度とする中期経営計画を新体制で着実に推進する。事業環境の変化に迅速に対応できる体制構築を最重要課題と捉える。国内建設事業を中核とし、それ以外の事業で国内建設事業と同等以上の業績を創出する体制を将来的に構築する。「社員とベクトルを合わせて企業成長する」と意気込む。  --就任の抱負を。  「大林グループの企業理念と精神を承継し、グループの持続的な成長を図る。技術面、ビジネス面でイノベーションを起こし、建設事業の生産性向上や新事業開拓に挑戦していきたい。持続的な成長とは何か、スローガンである『つくるを拓く』の意味は何かを具体的に示し、グループに共有していく。エンジニアを中心に優秀な人材がいる。国内建設事業を中核に活躍の場が大林グループにはある。社員の自己実現や成長をグループの成長につなげたい」  --事業環境をどう見る。  「収益改善が進み、業績は堅調に推移していくだろう。中期経営計画(22~26年度)の数値目標は達成できそうだが、計画策定時に想定していた事業環境とは全く様相が変わった。データセンターや半導体関連施設などの建設需要も拡大し続けるわけではない。市場変化にいかに迅速に対応できるかを考える必要がある。事業環境の変化に対応できる体制を建設、非建設の両領域で構築するシナリオ作りに着手している。同時に成長戦略を描くためのプロジェクトを立ち上げ、次期中期計画に向けて議論を始めた」  --経営方針は。  「水やエネルギー、食、廃棄物など社会課題の解決につながる領域に事業機会がある。グループの技術力と総合力を生かして社会に貢献するため、中核である建設事業のサプライチェーン(供給網)も含めた供給能力向上と、新領域を担う人材戦略を具体的に描き、他社との差別化も視野に戦略を策定する。再生可能エネルギー事業は戦略を大きく転換することになるだろう。ブラウンフィールドを含め、再エネ市場のどこに関わっていくかを検討する。さらに施工側で二酸化炭素(CO2)排出量の削減に貢献できる技術開発も継続的に行う」  「海外分野は、未進出の地域や事業領域に事業機会があれば取り組む。北米地域は、直近で23年に買収した水処理関連の建設会社をはじめ、複数子会社が収益面で貢献している。各社で成長戦略を描くが、個別最適が本当にグループの全体最適になるかを考える。一方、国内は建設周辺領域を含め、社会課題の解決による顧客提供価値の向上や持続的成長を創出する事業機会があれば、企業のM&A(企業合併・買収)も手段の一つとして検討していく」。  (4月1日就任)  (さとう・としみ)1985年早稲田大学政治経済学部経済学科卒、大林組入社。2013年財務部長、15年経営企画室長、17年執行役員、18年取締役、19年常務執行役員、22年専務執行役員、23年副社長執行役員、24年代表取締役。学生時代は野球に明け暮れた。趣味は野球観戦。妻とユニホームを着て応援している。神奈川県出身、64歳。 from...

政府WG/南海トラフ地震の被害想定見直し、あらゆる主体の総力結集を

 南海トラフ地震の被害想定や防災対策を議論してきた政府の有識者ワーキンググループ(WG)は3月31日、最終報告書を公表した。最新データに基づき被害想定を見直した結果、想定される最も規模の大きな地震が発生すると、最大で死者29・8万人、建物倒壊は約235万棟に上ると推計。資産被害は約224・9兆円、経済被害は約45・4兆円に達する。報告書では「あらゆる主体が総力を結集して災害に臨むことが必要」と訴えている。  政府は「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」策定から10年を機に、対策の進歩や最新知見を反映させた計画改定に着手。中央防災会議(会長・石破茂首相)が「南海トラフ巨大地震対策検討WG」(主査・福和伸夫名古屋大学名誉教授)を2023年4月に立ち上げ、議論を重ねてきた。  報告書ではプレートや断層域を精査し、地震や津波のモデルに変更の必要なしと結論。一方、地形・地盤データの高精度化により、津波浸水域(30センチ以上)は約3割増加。震度7の揺れに襲われる自治体数も143から149に増えた。  地震と津波による建物などの被害額は最大193・4兆円、電気・ガス・水道や交通機関、土木施設などライフラインの被害は31・5兆円に上る。被害算出式の見直しなどで単純比較できないが、10年前と比べて建物等被害は45兆円、ライフライン被害は10・4兆円増加。一方、最大死者数は2・4万人、全壊焼失棟数は15・4万棟減っており、防潮堤や津波避難タワーの整備と耐震化の進展がある程度反映された。  報告書では地震対策の基本的な考え方として▽地震・津波から命と社会を守る▽直接的被害を免れた命の保護と生命維持▽生活や社会経済活動の早期復旧-の3点を掲げた。事前防災の観点から強靱化・耐震化・早期復旧の推進を重要な対策と位置付けた。建物の耐震化は、人的・物的被害の軽減につながる「重要かつ根本的な取り組み」とし耐震診断や改修の促進、沿岸部の液状化対策などインフラ強靱化の加速を求めた。  津波だけで最大で死者21・5万人、全壊建物18・8万棟と想定した。対策として、早期避難意識の醸成などソフト対策に加え、防潮堤などハード対策の重要性も強調。高台移転や土地利用の見直しなど、事前復興準備も必要とした。  東西の震源域で時間差で発生する「半割れケース」も初めて検討した。同ケースでは繰り返しの揺れで建物倒壊が増える一方、津波の死者数は減る可能性がある。東側の先発地震の後、数日たって西側で後発地震が発生するケースでは、建物倒壊は単独で発生する場合より3・1万棟増えるが、津波による死者数は5・3万人減る。事前避難が徹底されていれば、最大で98%程度の減少が可能とした。  政府は報告書を踏まえ防災対策推進計画の改定に着手する。報告書が課題と指摘した地震対策のモニタリング体制や技術開発、広域性を考慮したリソースの確保策、地盤と建物基礎の研究など対応策の具体化にも取り組む方針だ。 from...

4月からの建設業界は/建築物省エネ基準適合が義務化、育児支援手厚く

 2025年度を迎える1日、建設関係の法令や政策による新しい措置が講じられる。改正建築基準法・建築物省エネ法が全面施行となり、同日以降に着工するすべての建築物は原則省エネ基準に適合することが義務化される。労働安全衛生法に基づく省令改正に伴い、危険箇所の作業に従事する労働者以外の人や、作業を請け負う一人親方などの保護が事業者に義務付けられる。雇用・労働関係は、柔軟な働き方や育児支援などが促される。  建築物の省エネ基準適合は、新築の住宅・非住宅すべてで義務付けられ、建築確認手続きの中で基準への適合性審査が行われる。政府の脱炭素政策の一環。建築確認、検査対象の見直し、審査省略制度(いわゆる4号特例)の縮小が措置される。小規模住宅の省エネ計算などの業務の増加が想定され、国土交通省は「建築士サポートセンター」を1月までに全都道府県に設置するなど施行に備えてきた。  入札契約関係は、予定価格が少額な場合に選択できる国の「少額随意契約」(少額随契)の基準が引き上がる。物価上昇を受けた措置で、少額随契を選択できる工事は対象の予定価格250万円以下を400万円以下に見直す。直轄土木工事は、土日休みの完全週休2日に対応した労務費や経費の新しい補正係数が適用になる。共通仮設費に率計上している現場環境改善費から避暑・避寒対策費を切り離し、現場の環境に応じた対策費を積み上げ計上できる。  改正物流効率化法・貨物自動車運送事業法の一部規定の施行により、荷主・物流事業者に物流を効率化するための努力義務が課される。トラック事業者は、運送契約の締結時に提供役務、対価を記載した書面交付などが義務化される。  雇用・労働関係のうち、労働安全衛生法の省令改正では、事業者が講じる危険箇所への立ち入り禁止、搭乗禁止、立ち入り可能箇所の限定、悪天候時の作業禁止の措置などが労働者以外の人も対象となる。下請業者や一人親方に保護具を使う必要があることの周知も義務になる。重層下請では、上位の下請業者が下位に対して必要な措置の義務を負う。事業者がすべての作業を請負人に請け負わせた場合、事業者は注文者の立場となり、措置義務の対象にはならない。  就業・育児では、両親が14日以上の育児休業を取得した場合、既存の育児休業給付と合わせて手取りの10割相当を出生後休業支援給付金から受給できる。看護休暇の対象となる子どもの年齢が現行の小学校就学前から小学校3年生までになり、男性労働者の育児休業などの取得状況を年1回公表する事業主の範囲は、常時雇用300人超の事業主にまで拡大される。 from...

時間外労働上限規制適用から1年/週休2日は着実に浸透、民間工事多い建築分野が課題

 建設業に対する時間外労働の罰則付き上限規制の適用から1日で1年になる。建設関係団体の調査によると、労働時間の削減に向けた週休2日が一段と浸透し、厚生労働省の統計でも総実労働時間が減少していた。ただ民間工事が多くを占める建築分野の課題が浮き彫りになり、上限規制の課題に対する指摘も出てきている。=各面に関連記事  厚労省がまとめた2024年の毎月勤労統計調査(事業所規模5人以上)によると、建設業の月間実労働時間は、総実労働時間が前年比1・7%減、所定外労働時間は7・6%減となった。減少は総実労働時間が2年ぶり、所定外労働時間は2年連続。同省は関係性を分析していないものの、減少の要因の一つには上限規制の適用があるとみられる。  日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)が会員企業に実施した調査では、24年度上期(4~9月)に4週8閉所以上を実現した現場の割合は61・1%と、前年同期を11・7ポイント上回った。ただ土木・建築別は、土木が73・0%(10・4ポイント上昇)に対し、建築は49・3%(13・7ポイント上昇)と差が開き、民間工事の多い建築分野が依然課題となっていることが分かった。  24年9月、日建連、全国建設業協会(全建)、全国中小建設業協会(全中建)、建設産業専門団体連合会(建専連)の4団体と国土交通省とで行われた意見交換では、同3月改定の「工期に関する基準」と、同6月成立の第3次担い手3法を受け、民間発注者に対する適切な指導を求める意見が出た。4団体は同11月、不動産協会(不動協)に現場の土日閉所運動の展開に当たっての協力を申し入れ、土日閉所可能な工期設定なども求めた。  不動協への働き方改革の協力要望は初めて。4団体は、24年度に開始した「目指せ!建設現場 土日一斉閉所」運動への協力を要請した。この運動は25年度から日本空調衛生工事業協会(日空衛)、日本電設工業協会(電設協)が加わり、6団体で強力に推進する。  第3次担い手3法を踏まえ、週休2日や適正工期の確保を巡る国交省の対応も進展している。直轄土木工事には、25年度から土日休みの完全週休2日に対応した労務費や経費の新しい補正係数を適用する。政府が2月に公表した新しい公共工事設計労務単価は、上限規制に対応するために必要な費用が引き続き反映された。  上限規制や働き方改革は、今国会でも質疑が行われており、3月14日の衆院国土交通委員会では地域の建設業協会の調査結果から「公共工事は工期に猶予をもらっているが民間はタイト」(赤羽一嘉元国交相)と指摘があった。厚労省の担当者は、都道府県ごとの「働き方改革推進支援センター」の機能や関係助成金による建設会社の支援とともに、助言、指導を行っていく考えを示した。  同委員会では、収入を増やすために働く時間を増やしたい労働者を巡るやりとりもあった。それでも労働時間の削減や週休2日の定着は、処遇の改善や若い担い手の確保・定着に影響するだけに、上限規制の適用2年目も受発注者双方の対応が活発になりそうだ。 from...

中部整備局/インフラDX行動計画更新、テックフォース活動スマート化検討

 中部地方整備局は、中部インフラDX行動計画の第4版を策定した。これまでの取り組みを踏まえ、個別進捗状況を更新。2025年度は、TECアプリを活用した被災状況調査の高度化・効率化に向けた検討や車載器からの走行情報を活用した大規模災害時通行可否情報の早期把握の本格運用開始などを予定する。  TECアプリを活用した被災状況調査の高度化・効率化では、テックフォース(緊急災害対策派遣隊)活動のスマート化を図る。被災現地の計測、記録、撮影から作業基地でのデータ整理、被災数量や被災額などの報告書の策定までの一連の作業は、人手が必要で1カ所の調査に時間がかかり、隊員の負担も大きい。  このため将来的には、AIや3D点群データなどを活用。TECアプリに入力する被災写真や点群データ、所見テキストから、被災報告の自動作成を支援する仕組みの実現を目指す。25年度は支援システムの構築に向けた検討に着手する。  大規模災害時の通行可否情報の早期把握は、ETC2・0などの走行情報を活用する。走行実績の消滅範囲をAIなどで自動判別し、通行可否情報を迅速に把握。消防や警察、自衛隊の救急救命活動につなげる。システムの評価や改良を進め、25年度中の本格運用を目指す。  このほか25年度は、映像を活用することで地権者が急傾斜地など現地に入らずに済むリモート境界確認やウェブ会議システムによるオンライン用地交渉の本格運用も予定。国営木曽三川公園の運営維持管理の効率化などに向けた検討も深める。  中部インフラDX行動計画は22年4月に策定した。最新のDXツールを活用した生産性の向上などを目指し、建設企業や関係機関と協力して取り組みを推進している。 from...

JACIC/新サービス「コブリス・プラス」を5月7日から提供開始

 日本建設情報総合センター(JACIC、山田邦博理事長)は、既存の建設副産物情報交換システム(コブリス)と建設発生土情報交換システム(発生土システム)を全面的にリニューアルし一体化した「コブリス・プラス」のサービス提供を5月7日に開始する。同時に利用者の拡大に向け、料金を引き下げる。  コブリス・プラスは、両システムに加え、建設発生土の官民有効利用マッチングシステム(官民マッチング)も一体化させる。三つのシステムを、一つのIDで利用できる。リニューアルとシステムの一体化で機能の充実を図るとともに、操作性やデータ精度などを向上させた。  具体的にはデータの受け渡し経緯が見える化され、関係書類の印刷や紙データでのやりとりを不要にした。資源有効利用促進法省令改正に伴う土壌汚染対策法などの手続き状況の確認結果票は、画面に沿って入力するだけで簡単に作成できる。工事データの登録前に受発注者で同じデータのチェックが可能で、データの精度も高まる。  新サービスの料金は▽国土交通省地方整備局・北海道開発局、内閣府沖縄総合事務局、他省庁、独立行政法人、高速道路会社など=16万5000円(1ID当たり)▽都道府県、政令市=3万3000円(ID数によらず定額)▽都道府県・政令市の外郭団体、広域水道企業団など=1万6500円(2ID以上が3万3000円)▽市町村、特別区、外郭団体=7700円(ID数によらず定額)。  JACICは新規利用の申し込みを1日に始め、操作説明会を22日に開催する。コブリスと発生土システムは30日、官民マッチングは5月2日にシステムを停止する。 from...

2025年3月31日月曜日

回転窓/初一念を失わないで

 直木賞作家・山口瞳さんの作品には、自らの経験からサラリーマンの心得などをつづったエッセーも多い。そんな中に新入社員へ向けた「十二章」がある▼伝えたい教訓の一つは、会社に入ったら勉強しなくてもいいといった考えを持たないこと。要領良くやれば何とかなると思うのは甘く、〈社会生活はもうちょっとオッカナイところだと承知してほしい〉(『新入社員諸君!』角川書店)と厳しくも熱いエールを送る▼本紙が主要ゼネコン35社を対象にしたアンケートで、今春の新卒採用者数は3年連続の増加に。だが目標人数には20社以上が達せず、厳しさを増す人材獲得の状況がうかがえる▼柔軟な発想力と行動力、変化への適応力もある人材をどう育成していくのか。企業の持続的発展と個人の成長へさまざまな取り組みが展開されている▼〈あくまでも“素朴な気持”“初一念”を失わないでほしい〉(同)。エッセーが書かれてからだいぶたつが、時代が変わっても大切な新入社員へ期待することに大きな違いはないだろう。今年もあすの入社式で、建設産業の各社トップがそれぞれの思いをメッセージに込めて発する。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172645 via 日刊建設工業...

新社長/清水建設・新村達也氏、原点回帰し建設事業強化

 創業220年超の歴史で培ってきた技術力を生かし、誠実にものづくりと向き合いながら「安全と品質は絶対に譲れない」という原点回帰の方針を示す。業績の回復基調をより確かなものとするため、適正なコストや工期の確保に徹底してこだわる。2年目を迎える3カ年中期経営計画の目標達成を目指す。  --就任の抱負を。  「職責の重さに身が引き締まる思いだ。中期経営計画をきちんと実現することがミッションになる。業績は回復基調にあるが満足できるところには達していない。221年の歴史がある当社の強みは時々の顧客ニーズに応え、満足していただける誠実なものづくりを積み重ねて信頼を得てきたことだ。その流れは絶対になくしてはいけない。再び原点回帰して本業である建設事業を強化し、幹が太く根っこの強い会社にする」  --原点回帰による具体的な取り組みは。  「受注判断を厳格にしてから、顧客にはきちんとした施工計画に基づく見積もりを伝える。その上で4週8閉所+αの適正工期を確保するため、コストや工期のリスクをすべて提示する。この方針を緩めることなく貫いていく」  --建設事業で注視、注力する分野は。  「土木を中心とする公共投資は国土強靱化対策やインフラの維持管理、老朽化対策などがある。建築はリニューアルやリノベーション、AIの普及などに対応したデータセンター(DC)、電気自動車(EV)のバッテリー工場などが増えるとみている。国内外の需要や発注者の考えをきちんと見極めていく。市場が好調な今だからこそ、環境が変わることに準備をしていかないといけない」  --海外事業は。  「拠点を集中、自立化する国を選定し展開していくことが基本になる。引き続きシンガポールやインドネシア、ベトナム、メキシコも含めた北米などに注力する」  --中長期的な課題は。  「コロナ禍前の2019年に策定した30年を見据えた長期ビジョンの目標達成には厳しい道筋だ。必要に応じM&A(企業合併・買収)や緩やかなアライアンスを検討する。地方には後継者確保に悩む建設会社もある。開発事業やエンジニアリング事業ももう少し大きくできる」  --人的資本投資は。  「対話をしながら社員一人一人に寄り添い、前向きに仕事ができる環境を構築する。建設だけでなく営業や技術開発などさまざまな現場に足を運び、実際にやっていることや空気感を知りたい。人事制度も見直し、頑張った人がよりきちんと評価され実感できる仕組みを作っていかないといけない」。  (4月1日就任予定)  (しんむら・たつや)1984年早稲田大学理工学部卒、清水建設入社。常務執行役員名古屋支店長、専務執行役員東京支店長、副社長執行役員建築総本部長などを経て2024年6月から代表取締役副社長。座右の銘は「失意泰然、得意冷然」。常に謙虚に冷静沈着でいる心構えを大切にする。趣味はミュージカル鑑賞。石川県出身、63歳。 from...

凜/日本下水道事業団事業統括部計画課・田中喬子さん、苦労した経験が実を結ぶ

 小学生の頃、理科の授業が楽しくて身の回りの環境に興味を持った。大学や大学院では環境学などを専攻し大気環境を研究。「自分の生活と密接につながる水に関する仕事をしたい」との思いで日本下水道事業団を就職先に選んだ。入社後6年間は大学院までに学んだ経験を生かし技術職として下水処理技術の開発・調査、海外展開支援に携わった。  7年目でプロジェクトマネジメント室に配属。地方自治体の下水道施設の設計や工事などプロジェクト全体の管理を任されることに。入社以来携わってきた業務から全く異なる未経験分野への異動は苦労が多かった。  土木、建築、機械、電気、各職種の技術的内容はもちろん発注のルールや契約の手続きなど知らないことが多い中、自治体職員と予算や工事内容を調整し工事の発注から完成まで各担当者を取りまとめなければならなかった。分からないことは担当の技術者に積極的に質問し、仕事をしながら学び続けた。自治体職員と同じ目線でプロジェクトを進めることで本来弱みだった経験不足を強みに変えた。  現在はこれらの経験を生かしプロジェクトマネジャーが業務を行う際、参考にする内部マニュアルの作成に従事。「今まで苦労した経験が確実に役立っている」と感じている。1歳の双子の子育てにも奮闘中。「趣味のホルンとスキーはお休み中だがまたいつか楽しみたい」と笑顔で話す。  (たなか・きょうこ) from...

電気・情報通信設備工事13社25年春の採用計画、5社が100人超/本紙調査

 主要な電気・情報通信設備工事13社の今春(4月)入社する新卒採用数(短大・大学卒、大学院修了)は合計1193人になる見込みだ。前年実績比では192人増加。100人以上を確保したのは5社、目標値を満たしたのは公表した10社中4社だった。技術系は公表した12社で合計860人(前年比99人増)となる見通しだ。各社は人手不足や事業拡大に備えて技術系人材の積極採用を続ける。しかし、工学系学生が減少する中で他業界との競争が激しい新卒採用では、求人に興味を持つ母集団の形成に苦戦。各社は中途採用に活路を見いだす。  アンケートは日刊建設工業新聞社が1~3月に実施した。今春の新卒採用で100人以上確保するのは▽きんでん198人(24年度実績比21人増)▽九電工158人(34人増)▽トーエネック113人(17人増)▽ミライト・ワン112人(65人増)▽関電工111人(19人増)-の5社。前年実績から採用数を増やしたのは10社だった。  大きく増やしたミライト・ワンは24年度から採用専門部署を設け、SNS展開や短期インターンシップの強化に取り組む。来春(26年4月)の採用計画数は10社が公表した。「増やす」とした企業は4社で、日本コムシスや住友電設は事業拡大を理由に挙げた。  一方、「採用市況から難しい」(富士電機E&C)として「横ばい」とする企業も少なくない。各社は応募者を増やそうと、SNSやCMを駆使して認知度向上を図る。  待遇面では「採用競争力を強化する」(エクシオグループなど)として、25年度は4社が初任給の引き上げに踏み切った。奨学金返還支援制度(日本電設工業など)や入社後の勤務地保証制度(住友電設など)といった福利厚生の拡充も活発だ。多岐にわたる採用戦略に「効果を見極めにくい」(ユアテック)といった指摘もある。  技術者の確保へ、中途採用の重要性が高まっている。24年度は、全13社が622人(前年度実績比250人増)と大幅な増加を見込む。25年度は6社が増やす方針。即戦力として「資格や前職での知識・経験」(ユアテックなど)に加え、「協調性やリーダーシップなどチームで働く上で必要な能力」(東芝プラントシステムなど)といった付加価値を期待する声も多い。  業界全体では新卒を含め増員が進んでいるものの、個別には想定ほど増やせていない実情がうかがえる。  電工系5社の高専卒・高卒採用数を比較すると、きんでん254人(前年度比13人増)、九電工240人(35人増)、関電工230人(9人減)と3社が200人以上の採用を維持。トーエネックは115人(13人減)、ユアテックは66人(8人減)となった。両社と関電工の3社は目標人数に達しなかった。 from...

J2いわきFC/新スタジアム建設の候補地決定、福島県いわき市小名浜に

 ◇27年6月までに着工  サッカーJ2いわきFCを運営するいわきスポーツクラブ(福島県いわき市 大倉智社長)は、新ホームスタジアム「IWAKI STADIAM LAB(仮称)」の建設候補地を福島県いわき市小名浜とすると発表した。小名浜湾に面し、水族館・アクアマリンふくしまの北西に位置する約2・8ヘクタールの県有地に整備する。2027年6月までに着工し、完成は31年の開幕を目指す。  候補地は現在、小名浜湾3号埠頭緑地公園や駐車場がある。新スタジアムは収容人数8000~1万人規模を見込み、J1ライセンスに必要な5000人以上の基準を満たす。グラウンドの四方を観客席スタンド2面、多目的な用途のビルディング棟(5階建て)、多目的広場で囲む構想となっている。県との交渉を進めて建設地を決定し、6月末のJ2ライセンス申請時までに具体的な新スタジアムの整備計画を提出する。「まちの構造が変わる345日の居場所」をコンセプトに掲げた。  いわき市の都市計画や「既存の地域資源と掛け合わせ、より経済効果を生み出す場所が望ましい」とするJリーグの考えを踏まえ候補地を検討してきた。周辺に商業施設などが集まる一大観光拠点で、基本理念に掲げる「人が集い『偶然の出会い』が生まれるスタジアム」につながることも選定の要因となった。現在は「ハワイアンズスタジアムいわき」(いわき市常磐水野谷町竜ケ沢308)ホームスタジアムとしている。 from...

政府/国土強靱化実施中期計画の素案公表、重点推進116施策・金額は明示せず

 政府は28日、2026年度から30年度までの5年間を計画期間とする国土強靱化実施中期計画の素案を公表した。各省庁からの意見を踏まえ324施策を列挙。このうち予防保全型インフラメンテナンスへの転換、建築物の耐震化など116施策を重点的に推進する。事業規模は資材費や人件費の上昇を予算編成過程で適切に反映させると明記したものの、金額の明示は見送った。  同日に有識者でつくる「国土強靱化推進会議」の第13回会合を東京都内で開き=写真、素案を示した。今後、素案に対する一般意見を4月上旬に募り、6月ごろに開く次回会合で計画案を示す見通し。同推進会議で計画案が承認されると、石破茂首相を本部長とする国土強靱化推進本部に提出し、閣議決定する。法定計画として名称は「第1次国土強靱化実施中期計画」とする。  素案では施策を▽防災インフラの整備・管理▽ライフラインの強靱化▽デジタル等新技術の活用▽官民連携強化▽地域防災力強化-の5分野に整理。324施策のうち重点推進施策とした116施策については、南海トラフ地震が今後30年以内に起きる確率が80%程度であることを踏まえ、20~30年先を目標に設定。計画実施に当たっては「財源確保策の具体的な検討を開始する」とも明記した。  重点推進施策のうち、防災インフラの整備・管理では、必要な防災インフラを着実に整備するとともに、AIやドローンなど新技術の活用しインフラ管理の高度化、老朽化対策に取り組む。主な施策として「洪水・内水ハザードマップ等の水災害リスク情報の充実」「関係省庁の枠を越えた流域治水対策等の推進」「発災後の残存リスクの管理」など28施策を盛り込んだ。  ライフライン強靱化では交通、上下水道、通信・電力などのライフライン機能の維持を図るため、点検の着実な実施や急所となる施設の耐災害性を強化する。具体的には埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を踏まえた上下水道の戦略的維持管理・更新や、港湾施設の耐震化・耐波性能強化など107施策に取り組む。  デジタル技術活用についてはテックフォース(緊急災害対策派遣隊)の機能強化や自動施工技術を活用した建設現場の省人化など55施策を提示。官民連携強化の分野は、住宅建築物の耐震化や立地適正化計画を通じた災害に強い市街地形成など直接的に人命につながる14施策を掲げた。  地域防災力強化では能登半島地震の教訓から公立学校の耐震性強化、避難所への分散自立型再エネ設備の導入促進など17施策を進める。 from...

築地地区まちづくり(東京都中央区)/複数のデッキ整備を検討、区が検討状況公表

 東京・中央区は三井不動産らが進める築地地区まちづくり事業に関し、最新の検討状況を公表した。歩行者ネットワークの強化に向け、事業者は新大橋通り沿いで複数のデッキ整備を検討。加えて環状2号線をまたぐデッキの整備も必須と捉える。実現には広域的な都市計画との調整が必要で、事業者は関係機関と協議中。このほか計画地内は完全な歩車分離の構造とし、駐車場は敷地西側に設ける「ライフサイエンス・商業複合棟」の低層部などに集約する考えだ。  検討状況は18日に区内で開催したまちづくり協議会に示した。  区は計画地と銀座・新橋エリアを結ぶ重層的な歩行者ネットワークの整備を要望していた。事業者はこれに応え、説明資料に「安全安心の歩行者動線確保の観点から、新大橋通り沿いに複数のデッキ整備を検討」と明記した。  計画地周辺では首都高速道路築地川区間や、東京高速道路(KK線)の歩行者空間化が進展。事業者もこうしたネットワークとの連携が重要と捉えており、説明資料にも相関関係を図示した。  計画地は環状2号線を境に南北に分かれる。事業者は同線をまたぐ歩行者デッキを2カ所に整備し、明確な歩車分離とバリアフリーを実現するとした。  計画地内は地上レベルを車道とし、2階レベルのデッキを歩行者空間に充てる。地上レベルには大規模集客・交流施設を囲むように環状道路を設ける。駐車場と駐輪場は朝日新聞社に面した「ライフサイエンス・商業複合棟」と、区域の最も東にある「オフィス棟」に集約する考え。新大橋通りや晴海通りに接していることが理由で、築地場外市場など計画地以外を訪れる人の利用も見込む。 from...

奈良県、橿原市、近鉄/医科大付属病院南まちづくり、新駅設置で基本協定

 奈良県と同県橿原市、近畿日本鉄道の3者は28日、奈良県立医科大学付属病院南側地区まちづくりの一環で計画している「(仮称)医大新駅」の設置に関し、基本協定を結んだ。新駅は橿原市の近鉄橿原線八木西口駅~畝傍御陵前駅間に計画。医科大付属病院に近接し事業を県、工事施工を近鉄が担う。3者間で費用負担や役割分担など基本事項の合意に至り、事業が本格始動する。2025年度に基本設計、26~27年度に実施設計を進め、28年度の着工、30年度の完成を目指す。  新駅設置を含むまちづくり事業は医科大の一部キャンパス移転に伴い、県と医科大、市、近鉄の4者で連携し検討を重ねてきた。まちづくりエリアは医科大付属病院南側の約12ヘクタール。新駅はエリアのほぼ中央部に計画されている。  新駅の西側には県が新しいアリーナの建設を計画。東側には渋滞対策として付属病院第1駐車場を拡張整備する。北東側では付属病院外来棟の建て替え事業も予定され、このほど県と医科大で協議がまとまり、今後設計など事業が本格的に動き出す。  28日に奈良県庁で行われた協定締結式で、山下真奈良県知事は「新駅と新アリーナ、医科大学の三つが核となったにぎわい拠点となることを期待している。3者の強い信頼関係の下でスムーズに事業を進めていきたい」と話した。  亀田忠彦橿原市長は「市の真ん中に新駅ができることを本当にうれしく思う。周辺のまちづくりの可能性が大きく広がっていく」と期待を込め、近鉄の原恭社長は「この協定がまちづくりの大きな第一歩になる。新駅が地域の利便性向上、活性化につながるよう、今後もご協力をいただきながら役割を果たしていきたい」と語った。 from...

高知県/建設現場にクールワークタイム導入、午前11時~午後2時は作業休止

 高知県が建設工事に「クールワークタイム」を導入する。期間は6月1日~9月30日。原則午前11時~午後2時は作業を止めて休憩時間とする。夏季の高温時間帯の作業を回避することで、作業員の健康と安全の確保につなげる。土木部土木政策課の担当者は「こうした取り組みは全国の自治体で初めてではないか」としている。  受注者は工事着手時またはクールワークタイムを導入する1週間前に発注者と協議する。工種が屋内作業でも空調設備がなく屋外と同等の状況と認められる場合は協議の対象とする。  作業時間の短縮(1日当たり2時間)を補うため、工期を延長できる。延長日数は短縮した時間数に基づき算出する。工期延長に伴う現場維持費の計上は行わないが、熱中症対策の現場管理費の補正対象とするなどの対応を取る。 from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172644 via 日刊建設工業...

2025年3月28日金曜日

香川県/さぬき浜街道五色台トンネルが開通、施工は安藤ハザマJVと村上組JV

 香川県が進める一般県道高松坂出線(さぬき浜街道)五色台工区(高松市生島町~坂出市青海町間の約6・6キロ)の4車線化事業の一環として建設してきた五色台トンネルが完成し、27日に高松側坑口で開通式が開かれた。池田豊人知事ら関係者約40人が出席し、テープカットとくす玉開披で開通を祝った。28日午前11時に供用を開始する。  さぬき浜街道は高松市と中讃、西讃地域の臨海部を結ぶ重要路線。五色台工区は2019年度に拡幅工事に着手した。対面通行の五色台トンネルの南隣に新しいトンネルを通した。全長1370メートルで施工は高松側工区600メートルを村上組・青葉工業・城北建設JV、坂出側工区770メートルを安藤ハザマ・真部組JVが担当した。  坂出側工区は22年3月、高松側工区は同10月にトンネル工事を開始した。24年2月の貫通後、同8月に本体工事が完成し、坑内の照明設備や舗装工事などを進めてきた。中央分離帯工事などが完了していないため、当面は新トンネルを含め片側1車線の暫定2車線での通行となる。25年中の完全4車線化を目指す。  池田知事は「県のこれからの発展に大きな役割を果たす。多くの県民に利用してもらい、愛されるトンネルになってほしい」と述べた。 from 行事 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172561 via...