通信社が選んだ今年の十大ニュースを見ると、この1年もいかに暗いことが多かったのかを実感させられる▼国内外それぞれの十選で明るいニュースと言えば、藤井聡太棋士の八冠制覇や米大リーグでの大谷翔平選手の活躍などわずか。年末年始くらいは腹立たしい事件もなく楽しい話題に包まれたい▼童話『100万回生きたねこ』などの名作を残した絵本作家・佐野洋子さんに、腹が立っている時について書いたエッセーがある。〈気分転換など自分でするものだと思っていない。あちらからやって来る〉(『ヨーコさんの“言葉”』講談社)▼例えば買った本が期待外れの場合、腹が立った箇所に印を付けながら読み終えるとたたきつけて、また同じ著者の別の本を買ってくる。こうしてその人の本を全部読んでしまう。そんな腹が立っている時は自分が〈実にまっとうな人間であるような気がして元気が出る〉と▼佐野さんの作品『わたしクリスマスツリー』はもみの木が主人公であり、ちょっと切なくも心温まるストーリーがいい。きょうはクリスマス。すてきな本を読み返そう。ささいなことで生まれた腹の虫ならきっとおさまる。
source https://www.decn.co.jp/?p=159729
0 comments :
コメントを投稿