2024年3月29日金曜日

回転窓/上昇の新年度へ

 親子連れや杖をついた高齢者、車いすの人たちがすいすいと乗り込んでいく。宇都宮市などで昨年8月に開業した次世代型路面電車(LRT)の光景だ。予測を上回るペースで利用され、2月に200万人を突破した▼国土交通省が26日発表した2024年の公示地価では、LRT沿線の居住環境が良好な住宅地を中心に高い上昇となった。ウオーカブルな街のシンボルとして全国の注目を集める▼全用途で上昇率1位は熊本県大津町の商業地の地点。台湾積体電路製造(TSMC)が同県菊陽町に半導体工場を建設した影響で、隣接地域を含め多岐にわたる需要が盛り上がっている▼ただ、すべてが右肩上がりではない。石川県珠洲市の地点は、商業地で最も下落率が高かった。能登半島地震の影響は反映されておらず、人口減少などもともとの厳しい状況が背景にある▼地域の魅力向上は容易ではないが、戦略的な取り組みが花開いていることも事実。値段が上がることに翻弄(ほんろう)されるのではなく、価値と共に価格を上げていくのがあるべき姿。成長が当たり前の時代を目指し、前向きな気持ちで新年度を迎えたい。

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2024年3月28日木曜日

回転窓/イカキングの価値

 動画を2倍速で視聴する人が増えているという。短い時間でより多くの情報を得たい気持ちは分かるが、話し方や会話の間を「無駄」として省くようでどうも馴染めない▼石川県能登町の海沿いにあるスルメイカの巨大なモニュメント「イカキング」は、1月の能登半島地震で津波にさらされながらもほぼ無傷で残った。かつて「無駄遣い」と批判を浴びたが、復興に向け住民の心を支えている▼同町の能登小木港は「日本三大イカ釣り漁港」で知られる。盛んなイカ漁をPRしようと、特産のスルメイカを全長13メートル×幅9メートル×高さ4メートルの大きさでリアルに再現した▼観光施設「イカの駅つくモール」に設置されたのは2021年3月。製作費に新型コロナウイルス対策の臨時交付金約2500万円が充てられたため、コロナ対策とは無関係な支出として国内外で報じられた。だが多くのメディアに取り上げられたことで観光客が増え、予想以上の経済効果が生まれたそうだ▼限られた財源を有効に活用するのは大前提だが、一見無駄のように見えるものにも代えがたい価値があったりする。無駄を楽しむ豊かさにも目を向けたい。

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2024年3月27日水曜日

回転窓/北アの山小屋のインフラ投資

 北アルプス(北ア)の南部にそそり立つ槍ケ岳の山域にある民営の山小屋が、公衆無線LANの導入を検討している。有料サービスを想定し、登山者などへの意向調査を開始した▼3000メートル級の山がそびえ立つ北ア。大手キャリアが基地局を設けているものの、大勢が行き交う盛夏は電波が飛びながらも通信が難しくなることが少なくない。非常時の連絡手段が補完されることにもなり、既にサービスの導入を期待する声が挙がっていると聞いた▼国土交通省が地方整備局舎や出先事務所などに設置された通信鉄塔の耐震強化に取り組んでいる。耐震性が不足する施設が確認され、ある整備局は鉄塔の廃止・統合を含めて対策を検討していくという▼鉄塔は、大規模災害の被害状況などをデータの送受信で確認・収集する多重無線回線を保つ役割を担っている。電話回線や光ファイバーが遮断されるような深刻な事態への備えになるだけに、対応を急ぐそう▼雪に閉ざされてきた北アも4月に入れば山小屋が次々に運営を再開する。地上も山も通信機能が増強されるに越したことはない。必要なインフラ整備の進展を期待したい。

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2024年3月26日火曜日

回転窓/新たな聖地誕生

 世界的にも高く評価される日本のマンガやアニメ。無数の人気作品を世に出してきたマンガ雑誌『週刊少年ジャンプ』(集英社)の中でも、「Dr.スランプ」「ドラゴンボール」を描いた鳥山明さんの知名度は群を抜く▼多くの国で作品が翻訳され、ファンは世界中に広がる。今月1日に急逝した鳥山さんの訃報を、国内外のメディアが大きく取り上げた。国を越えて老若男女を魅了し、社会・文化にも大きな影響を与えた希代のクリエーターの死を悼んだ▼数十年前に中国で知り合った大学生の中に、鳥山作品の熱烈なファンがいた。ストーリーを深く理解するために日本語を学んでいるのだと熱く語っていたのが懐かしい▼「ドラゴンボール」のテーマパークがサウジアラビアのエンターテインメント都市に建設される。先週22日に東映アニメーションが発表。作品に登場する建物やキャラクター「神龍(シェンロン)」をモチーフにしたアトラクションが造られるという▼日本発のサブカルが他国でも観光資源として注目され、絶大な人気を誇る作品の集客効果への期待は大きい。ファンが集う新たな聖地が中東に誕生する。

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2024年3月25日月曜日

回転窓/ゴルフを通じた学び

 プロゴルファーの青木功氏には「自分の先生」と信頼し親交を深めたアマチュアゴルファーがいる。「プロより強いアマチュア」と呼ばれた中部銀次郎氏(1942~2001年)である▼中部氏は日本アマチュアゴルフ選手権で優勝6度など輝かしい戦績を残し、ゴルフに向き合う姿勢や考え方が今も多くの人に支持されている。亡くなって20年以上たつが、自著を含めた関連書籍などでその人物像を知ることができる▼プロとして駆け出しのころ、試合の大詰めでボールが曲がり勝てないでいた青木氏は、同い年生まれの中部氏からアドバイスを受ける。これがきっかけとなって初優勝を飾り、日本を代表する名プレーヤーとなっていく▼コロナ禍を契機にゴルフ人気が高まっている。なかでも若い世代にゴルフを楽しむ人が増えたと言われ、関連業界には明るい話題だ。これからも人気継続のためにさまざまな取り組みが求められよう▼中部氏の語録や文章を読むと、普段の仕事などにも通じるものが多い。〈もっと深く、もっと楽しく〉は自著のタイトル。ゴルフに限らず、そうした心持ちが大切であると教えてくれる。

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2024年3月22日金曜日

回転窓/マイナス金利解除

 日銀が19日、マイナス金利政策の解除を決めた。2007年以来17年ぶりの利上げであり、日本経済の再生を後押しすることになるのか。大きな正念場を迎えている▼24年春闘では、大企業を中心に賃上げが進む方向となった。日銀は、賃金と物価がともに上昇する好循環を確認し、2%の物価上昇目標の持続的・安定的な実現が見通せると判断。大規模な金融緩和は役割を果たしたと評価した▼三菱UFJ銀行らは同日、普通預金金利を引き上げると発表した。預金者からすればメリットになる一方、借り手側には負担増になる。帝国データバンクの分析によれば、借入金利が1%まで引き上げられたとすると企業の7%が赤字転落する見通しという▼方針転換による影響は当然生じるが、異例の金融緩和をずっと続けるわけにはいかない。「今後到来する金利のある世界に備えた意識の変革が企業にも強く求められる」と同社は訴える▼岸田文雄首相は、「デフレからの完全脱却と新たな成長型経済への移行に向けてあらゆる手段を総動員したい」と強調した。前向きの変化と捉え、好循環の歩みを強めていかなかればならない。

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2024年3月21日木曜日

回転窓/2011年生まれの卒業式

 近所の小学生と保護者らが登校前に、公園で写真を撮影していた。卒業式を間近に控えた6年生の思い出の写真を残そうとのこと。卒業する児童を兄弟姉妹らが囲み、「おめでとう」と声を掛ける姿がほほ笑ましかった▼成長して6年間背負い続けたランドセル姿もこれで見納めかと感傷に浸る保護者のそばで、子供たちは卒業式の髪形や進学先の中学校の制服の話で盛り上がっていた▼卒業式が近づく中で、小学校の校長や担任の先生が児童らに災害の話をよくしてくれたという。能登半島地震が発生した年に卒業するだけでなく、6年生の多くが東日本大震災のあった2011年生まれのためだ▼先生たちは災害への備えに加え、「思いやり」や「感謝の気持ち」を持つことに言及。マスクを着用し、周りとの会話が制限されたコロナ禍も経験した卒業生らに、人とのつながりの大切さを伝えて送り出したかったようだ▼公園で写真を撮り終えた6年生が「今日までありがとう。みんな頑張れ!」と発した言葉から、恩師の教えがしっかり伝わっていることがうかがえる。これから出会う人たちとのつながりも大事にしてほしい。

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2024年3月19日火曜日

回転窓/能登の春遠からじ

 冬の寒さが和らぎ、外出時の服装は防寒の厚着から薄着に変わりつつある。気温が上がり、各地では春の訪れを告げるサクラの開花がこれから本格的に進む▼春の陽気で身も心も軽くなると、うちにこもらず、外に出かけたくなるのが人の行動心理だろう。花見の名所などの観光地には、待ちに待った行楽シーズンが到来する▼先週末の16日、北陸新幹線で富山・石川方面に出張で訪れた。始発の東京駅から乗車すると、連休でもないいつもの土日ながら自由席はすぐ満席に。途中駅の上野、大宮からの乗客も加わり、通路には人があふれ、車両内を行き来するのも大変な状態だった▼金沢~敦賀の延伸区間開業に加え、旅行代金が割り引かれる「北陸応援割」が始まった効果かと思いきや、半分以上の乗客は途中の長野辺りまでに降車。他の車両の状況は分からないが、服装や荷物などからスキー・スノボーや登山が目的の方が多かったようだ▼冬来たりなば春遠からじ--。厳しい冬が来ても、暖かな春は必ず訪れる。今はつらく、大変な状況が続く能登半島地震の被災地だが、この先には復興という明るい未来が待っている。

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2024年3月18日月曜日

回転窓/点字ブロックの歴史を知る

 きょう3月18日は「点字ブロックの日」。1967年のこの日、岡山市内に世界で初めて敷設されたことにちなんだ記念日である▼発明者は三宅精一氏(26~82年)。視覚障害者が交差点で道路を横断しようとしていた時、車が横を勢いよく走っていくのを見て「はっ」とし、点字ブロックの構想が浮かんだという▼開発経緯や普及への歩みは安全交通試験研究センター発行『白浪に向いて 三宅精一を語る』(83年、岩橋英行著)に詳しい。三宅氏は中途失明する著者との親交を通じて、視覚障害者が安全に歩けるための構想実現へ試行錯誤し開発に成功する▼それから半世紀以上がたち、歩道や駅ホームなどに設置された点字ブロックは、視覚障害者の歩行に欠かせない社会インフラとなっている。だがその上に荷物や自転車などが置かれていたらどうなるのか。誰もが容易に想像できよう▼著者は発行前年に亡くなった三宅氏にヘレン・ケラーの言葉を手向けている。「あなたのランプの灯を、今少し高く掲げて下さい。見えぬ方々の行く手を照らすために」。後世に伝えていかなければならない点字ブロック誕生の歴史がある。

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2024年3月14日木曜日

回転窓/食物繊維25グラムに挑む

 朝食は野菜から食べ始める「ベジファースト」を実践している。最初に野菜を食べるだけで、食事内容を変えず手軽にダイエットできるとの触れ込みで始めたが、現実はそう甘くないようだ▼厚生労働省の有識者検討会が2025年に改定する「日本人の食事摂取基準」案で、新たな栄養素などの摂取基準量を示した。この中で「少なくとも1日当たり25~29グラムの食物繊維の摂取が、さまざまな生活習慣病のリスク低下に寄与する」と指摘している▼より多くの摂取で病気になるリスクを減らせるとの研究もあり、成人には現行基準より1グラム多い1日当たり25グラム以上の摂取を推奨した。これは一般的なトマトで約17個分、食物繊維が多いゴボウでも約2・5本分に当たる▼毎日の食事だけで推奨値をクリアし続けるのは難しい。食物繊維が豊富な食材を摂るだけでなく、健康食品やサプリメントの適切な活用なども求められる▼国民の健康や栄養調査に基づき食事摂取基準は5年ごとに改正される。体を大切にしてこそ仕事や遊びも楽しめる。ベジファーストは続けつつ、新年度を前に健康維持への日々の取り組みについて考えよう。

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2024年3月13日水曜日

回転窓/温かいお別れ

 近所の少年サッカーチームでベテランコーチとのお別れ会が先日開かれた。言葉が厳しいせいか、低学年の選手や保護者には誤解されやすい一面があったのだという▼高学年になるにつれて慕う選手が増えていくコーチで、「小さいころ嫌いだったけど今は好き。褒められるとうれしい」と話す6年生の何人かが別れを惜しんで涙を流していた。厳しくも的を射た指摘に納得してきた保護者からは感謝の言葉が相次ぎ、温かい思い出になった▼今年も季節柄、別れの連絡をいただくのが増えた。「少しのんびりするつもりです」。交通運輸系のメディアを離れる公私でお世話になった記者からのメールに、そう書き添えてあった▼異動、転職、退職など、さまざまな事情で4月から環境が変わる人は多い。身近な人には出会いに感謝し、これからの活躍を願って「どうぞお元気で」と送り出したい▼サッカーチームのお別れ会で、ベテランコーチの職業は漁師であり、早朝の仕事を終えてから指導していたことが初めて明かされた。知らない一面ばかり。いずれ別れの時が来るなら、お互いを知る機会をもっと増やしていきたい。

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2024年3月12日火曜日

回転窓/不適切な「××」

 1月からTBS系で放送中の金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』。取材先との雑談などでもよく話題に上り、特に昭和世代の視聴者の多くがはまっているという▼主人公の体育教師が1986(昭和61)年から現代へタイムスリップし、出会う人たちとの絆をコメディータッチで描く。不適切発言やハラスメント連発の「昭和のおじさん」の極論が、コンプライアンスで縛られた現代人の価値観を揺さぶるのも見どころだ▼昭和から令和へと時代が移る中で変わっていいこと、変えずに守るべきことは…。ドラマでは多様性が尊重される現代社会で、異質なものを認めようとしない矛盾も示唆する▼生まれ育った時代や社会環境の違いにより、世代間の文化や考え方などに隔たりが生じるジェネレーションギャップ。70代後半の団塊の世代から10~20代前半のZ世代まで、幅広い年齢層が交わる社会での正論は一つに収まらないだろう▼働き方改革や人材育成もしかり。働き手の考えが千差万別なのに、一律的なルール・価値観で多様な働き方や学び方に制限をかけては、人も経済も持続的成長が望めないのではないだろうか。

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2024年3月11日月曜日

回転窓/ラジオ放送の共感性

 ラジオの聴取者はリスナーと称される。テレビにはこうした聞き慣れた言葉が見当たらず、ラジオ好きな人たちを総じた呼称とも言えよう▼1925年に日本のラジオ放送が始まってから来年で100年を迎える。当時は関東大震災(23年)を契機に高まったラジオへの期待が放送開始への後押しとなった。現在も災害時のメディアとしてラジオが果たす役割は大きい▼毎日放送の大牟田智佐子さんが『大災害とラジオ』(ナカニシヤ出版)に書いている。ラジオの災害放送は被害や生活に関わる情報を伝えるだけでなく、被災者らがいつものパーソナリティーの声を聞いてほっとするなど、特性の一つに〈共感〉があるという▼AMとFMとでは違いが見られ、例えばAMはリスナーの声を拾い上げて交流し、FMが音楽や日常の話題で安心を届ける。リスナーの置かれた状況に寄り添い共感して励ましなどを提供するもので、大牟田さんはこれをラジオの〈共感放送〉と呼ぶ▼民間ラジオ放送事業者がAM放送を終了し、FM放送への転換などを検討している。災害時に限らずこれからも大切な共感性はどうか失われないでほしい。

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2024年3月6日水曜日

回転窓/隣家に来た職人

 隣の一戸建て住宅で修繕工事が始まった。前日にはベテランと若手の職人が社名入りのタオルを持ってあいさつに。作業内容とスケジュールに関する説明が丁寧で分かりやすく、隣人としてこれなら大丈夫だろうと安心できた▼現場からは板材の加工やビス打ちなどの作業の合間に、心地よいやりとりが聞こえてくる。「(板材の)7号持ってきて」「置いてあります」。「あの角は測った?」「そこに書いておきました」▼そんな二人の会話だけで生産効率は極めて高いのだろうなと思えてしまう。「木くずが飛んでしまったので拾わせてください」と話しに来た若手に聞くと、職人になって2年目なのだという▼週末に仕事をしているので「お休み取れてる?」とも尋ねると、施主宅の駐車場を部材の加工などに使うため、車のない時間が長い日を中心に作業しているのだそう。「今は平日に休みをもらってます」と教えてくれた▼新しい公共工事設計労務単価が公表された。引き上げは12年連続で民間工事への波及も期待されている。「お給料は上がりそう?」。余計なことと承知の上で、今度話せた時にこっそり取材してみよう。

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2024年3月5日火曜日

回転窓/多様な焼き鳥文化

 梅や寒桜が関東各地で見頃を迎えている。近くの公園では早咲きのオカメザクラが満開となり、肌寒い中でも花をめでながら酒宴を開く方々がおられた▼酒宴の一団はガスコンロを持ち込み、鍋や鉄板でいろいろ調理していた。おいしそうな匂いに誘われて料理の話を伺うと、ひときわ目を引いたのは鶏皮肉を甘辛のタレで焼き上げた「今治焼き鳥」。愛媛県今治市出身の方が地元料理を振る舞ったようだ▼今治焼き鳥は熱々の鉄板の上で、大きな鉄のコテを使って肉を押さえながら豪快に焼く調理スタイル。市のホームページによると、商売人が多く、せっかちで待つのが嫌いな気質と言われる今治の人を満足させることから、約50年前に考案されたという▼日本焼き鳥協会では〈1〉畜産物(野生含む)の肉・内臓等を使用〈2〉食べやすい大きさに加工し串に刺す〈3〉塩・タレ等で焼き上げる-の3条件を満たしたものを「焼き鳥」「やきとり」と定義する。串に刺さないスタイルでも、今治のように地域の文化とされる場合は認定の対象となる▼酒のお供で定番メニューの焼き鳥。今夜も1軒立ち寄り、日本文化の味を堪能しよう。

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2024年3月4日月曜日

回転窓/街の表情と舗装

 会社に近い飲食店街を歩き、いつもとの違いにすぐ気が付いた。両サイドを店に囲まれた道路が明るいカラーアスファルト舗装に打ち換えられている▼朝に通るとごみが散乱して雰囲気も暗く、普段からお世辞にもきれいとは言えない一画であった。それが新しい舗装で周囲の印象も大きく変わったように感じるから驚きだ。舗装が街の表情を豊かにしてくれた好例だろう▼中央官庁による景観施策は1980年代から本格化していく。その中で当時の通商産業省(現経済産業省)は学識者や画家、旅行ジャーナリストらで構成する景観材料研究会を設置(88年)。検討成果が『街の素材-美しい景観をめざす“もの”づくり』(90年)にまとめられている▼この頃に景観材料への関心は高まりを見せる。〈いいものは、いい材料があり、いい職人がいないと造れない〉。同研究会で委員長を務めた学識者の言葉が思い出される▼2005年6月に景観緑三法が全面施行となるが、今から30年以上前にいい景観をつくるための素材にも官民の目が向けられていた。現在は景観舗装もバリエーションが豊富で一層の普及が期待される。

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2024年3月1日金曜日

回転窓/能登半島地震から2カ月

 能登半島地震で被災した能越自動車道のうち、のと三井IC~のと里山空港IC間で2月27日、対面通行が再開された。応急復旧だが被災地に大きな力となる▼国土交通省北陸地方整備局金沢河川国道事務所は「一歩ずつ確実に」とのハッシュタグを添えて復旧状況をSNS(インターネット交流サイト)に投稿。「土砂に雪に…本当に大変。心から感謝申し上げます」とコメントが寄せられていた▼きょうで発災から2カ月。住宅再建や主要インフラの全面再開には至っておらず、復興への道のりは遠い。被災地に明るさを取り戻すため地道に歩みを進める必要がある▼土木学会は災害時に根幹的な役割を担う幹線道路について、復旧の容易さなどを考慮した構造・工法を検討すべきだと指摘している。災害が起きても機能維持できる高規格インフラがあれば安心して人が集う▼北陸新幹線の金沢~敦賀間が16日に開業する。地域活性化への寄与と同時に、安定したネットワークとしても大きな意味を持つ。石川県は開業日に観光支援策「北陸応援割」を始める。被災地の再生を願いつつ、春の北陸を訪れてみてはどうだろうか。

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