衝動買いした洋服がクローゼットの肥やしになっている。評判だけを頼りに人気店に並んでしまう。そんな経験は誰にでもあるだろう▼人は、金銭や労力を費やしたことを、なかなか無駄だと認められない。これを「サンクコスト効果」という。費やしたものを惜しむあまり、合理的な判断ができなくなる認知バイアスだ▼“やめられない、とまらない”が記憶に残るスナック菓子のCMではないが、人は一度始めたことを、やめるのが苦手だ。日常のささいなことなら笑って済む。だが、採算の合わない投資や成果の見えない事柄まで、「ここまでやったのだから」と続ければ、それはいつか笑い事では済まなくなる▼「いまさら引き返せない」という言葉の裏にあるのは、根拠に乏しい執着だ。損失を取り戻そうとして、さらに損失を重ねる。冷静に判断しているつもりが、実は過去の判断に首根っこをつかまれている。なんとも人間らしい、そして厄介な性癖だ▼過去に費やしたものではなく、これから得るものを見て決める。そういう人に私はなりたい。もっとも、そう思って買った洋服が、またクローゼットに一着増えている。
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from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=187665
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