2023年11月13日月曜日

回転窓/塩せんべいとこだわり

 小説家・子母澤寛(1892~1968年)の随筆集『味覚極楽』に「日本一塩煎餅〈鉄道省事務官 石川毅氏の話〉」と題した章がある。塩せんべいを好んだ石川のこだわりがよく分かり面白い▼〈舌の上でぴりっと醤油(しょうゆ)の味がして、焼いたこうばしさがそれに加わって…〉。こう話す石川は全国の塩せんべいを食べて回った。お茶を飲むのは残り味が舌の上で消えるか消えないかの時で、そのお茶もあっさりした味の番茶に限ると。酒のつまみにもしていた▼ところでしょうゆ味のせんべいが塩せんべいと称されるのはなぜか。もともと塩せんべいは雑穀に塩を加えて焼いたものだったが、米を原料にしょうゆ味で作られるようになり、これが好評で関東の塩せんべいを代表する味になったようだ(『お菓子の日本語文化史』和泉書院)▼かつてせんべいは球状の地球びんに入り1枚単位で売られていた。今もこのスタイルを守る老舗があり、そんな店を訪れて買うのは楽しい▼ちなみに地球びんは形状からせんべいをまとめてざっと入れても割れにくいのだとか。作る側も食べる側もこだわりを持ってこその食文化である。

source https://www.decn.co.jp/?p=158442

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