2024年1月31日水曜日

回転窓/被災地の雪

 石川県能登半島には地形から雪が降りにくい地域もあり、金沢地方気象台が「冬は比較的積雪も少ない」と気象特性を紹介している▼普段は降雪量が多くないとはいえ、今冬一番とされる強い寒気が日本列島を覆った先週、能登半島地震の被災地でも断続的に雪が降った。現地の行政機関担当者や利用したタクシーの運転手に聞くと、「ここまで強く、積もるのは結構珍しい」という▼被災地では24日、損壊した道路の緊急復旧や土砂崩壊箇所の応急対策といった作業を一時中断した現場が少なくなかった。「視界が悪く、現場に行きたくても行かれない」ともどかしそうに話した工事関係者が印象に残っている▼それでも翌日の作業再開に備え、降雪の合間に現場とその周辺を除雪する建設会社も。災害対応の要請を受けている中でも、平常時の業務である除雪を続けて担った建設会社も多い▼復旧現場は厳しい真冬の作業が続く。「今は闇夜のど真ん中。でもいずれ夜は明ける。寒い中でも頑張りたい」(平櫻保石川県建設業協会会長)。あと4日で二十四節気の立春。冬を越え、作業環境が少しでも改善されていってほしい。

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2024年1月30日火曜日

回転窓/立ち呑み文化で復興支援

 2024年を迎え、業界団体の交流会が各地で行われている。元日の能登半島地震の発生で新年を祝う雰囲気はないものの、久々にマスクを気にせず対面での開催となり、参加した関係者らの会話も弾むようだ▼立食スタイルのパーティーは着座より出席者同士の交流が深まり、新たな出会いの場ともなる。料理や飲み物をゆっくり楽しむこと以上に、「人との交流」を楽しむ場と言える▼金沢駅周辺にある立食形式の飲食店のグループが、能登半島地震の被災者とその支援者らに向けて定食など一部メニューを300円たらずで提供している。証明書等は不要。創業店舗「串酒場 大笑」の店長は「災害で大変な時に少しでも元気になってもらえれば」と話す▼グループのホームページによると、代表者は修業時代の大阪で立ち呑み文化の豊かさに触れ、金沢で立食形式の店舗を展開することに。「のれんの先にある笑顔を絶やさない、誰もが平等に笑うことのできるまち」をコンセプトに掲げる▼被災地では発災直後から建設業界をはじめ、多くの人たちが支援活動を展開している。被災者が一日も早く笑って暮らせるよう願う。

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2024年1月29日月曜日

回転窓/それぞれの応援ソング

 受験や仕事で追い込まれた時など、これまで心に響き励まされるいくつもの音楽に出会ってきた。そんな自分の背中を押してくれた曲はこれからも大切にしたい▼アーティストが故郷のためにつくった応援ソングもある。千葉県野田市ではシンガー・ソングライター、ナオト・インティライミさんの曲「The Day」が、東武野田線野田市駅の発車案内で流れることになった▼野田市で2歳から15歳まで過ごしたナオトさん。市長からの「明るく幸せな家庭を築ける野田市」をイメージした曲づくりのリクエストに応え、一昨年にこの作品を完成させた▼何げない1日が本当は特別な1日のはずであり、そうした日々を大切にできる曲にしたかったという。住んでいた当時の「食卓を思い返しながら書いた曲」ともナオトさんがユーチューブでコンセプトを語っている▼能登半島地震の被災地で懸命に緊急復旧作業を続けている建設業。小欄には応援ソングをつくり届けることはできないが、日々奮闘する国土と地域の守り手を心からねぎらい、そして早期復旧・復興への願いを託したい。きょうの作業もどうかご安全に。

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2024年1月26日金曜日

回転窓/賃上げに向けた価格転嫁

 シンクタンクの日本経済研究センターが民間エコノミストによる賃上げ率予測を集計した。2024年春闘の賃上げ率予測は平均3・85%--。実現すれば31年ぶりの高水準となった昨年春闘を上回る▼「成長と分配の好循環」を掲げる政府も、賃上げに力を注いでいる。岸田文雄首相は23日、春闘スタートのタイミングで、政府と労働界、経済界のトップによる政労使会議を開催。物価上昇を上回る構造的な賃上げの必要性を強調した▼労務費の価格転嫁を通じて、中小企業が賃上げの原資を確保することが鍵になるとも。それは中小企業の現状が厳しいことの裏返しでもある▼同会議で全国中小企業団体中央会が提出した資料によれば、総合工事業と設備工事業の約2割が、価格転嫁について「実現しなかった」「対応未定」と回答。原材料費や人件費の上昇を転嫁できなければ従業員の処遇改善は難しい▼新4K(給与・休暇・希望・かっこいい)を目指す建設業。求められる第1の要素が給与だ。国民の安全・安心な暮らしを支え続けるためにも、発注者や社会の理解を得て、若者を引き付ける処遇を実現していきたい。

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2024年1月24日水曜日

回転窓/SLIMの偉業

 鹿児島・大隅半島で肝付町や南大隅町の名産に香酸かんきつ類「辺塚だいだい」がある。自生種があって集落ごとに栽培もされているが、出荷量が年間数十トンと少なく、希少な果実と呼ばれている▼独特の果汁と香りにファンが多く、しょうゆにひと搾りしたり、焼酎に輪切りを浮かべたりする人も。酒類を含めた缶飲料としても出回り、存在が広く知られるようになってきているという▼宇宙航空研究開発機構(JAXA)が小型月着陸実証機(SLIM)を2023年9月7日に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げて約4カ月。20日午前0時20分に月面に軟着陸する偉業を達成し、関係者らが歓喜に沸いた▼JAXAが目指すのは「降りやすいところに降りる時代から、降りたいところへ降りる時代」。月への降下中にSLIMが送信したデータの解析が進行中で、詳細が25日に明らかにされる▼降下の準備開始が決まった10日以降、JAXAには辺塚だいだいのソーダ飲料の差し入れが届いたそう。宇宙関連の技術開発を急いでいる建設業などの産業界とともに地域の期待も背負ったSLIM。朗報を楽しみに待ちたい。

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2024年1月23日火曜日

回転窓/土裂けて水湧き出る

 平安時代末ごろの作家・鴨長明は、随筆「方丈記」に京都で起きた元暦の大地震(1185年)について書いている▼〈山は崩れて河を埋み、海は傾きて陸地をひたせり。土裂けて水湧き出で、巌割れて谷にまろび入る〉。この中で〈土裂けて水湧き出で〉は液状化現象を表現したものと言われ、現代にも貴重な地震被害の記録として伝えられる▼1日の能登半島地震では新潟市内で液状化被害が相次いだ。西区などを中心とした地域の被害は大きく、多くの建物や塀、電柱が傾き、道路の至るところに陥没や亀裂が生じた▼地震から11日後、被災した住宅街を訪れた。水浸しの道路の脇には土砂が盛られ、広い範囲に噴砂の跡が。その日はすれ違う人がほとんどいなく、工事関係者らが作業に当たっていた。地元の人の話によると、被害に見舞われたのは旧河道の地域だという▼地面が裂けて水と土砂が噴出し、建物も横倒しになるなど甚大な被害を及ぼす液状化。この研究は60年前の新潟地震(1964年)を契機に本格化した。地震国の日本で繰り返される液状化被害をどう防いでいくのか。依然難しい課題と言わざるを得ない。

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2024年1月22日月曜日

回転窓/メディアと生成AIの未来

 18世紀後半の産業革命以降で最大級の変革をもたらすと目される生成AI。社会実装の取り組みは多分野に広がり、建設産業も例外ではない▼年頭の建設関連各社のトップインタビューでも、業務の効率化や省力化などで生成AIを積極的に導入しようと考える企業が目立つ。生産年齢人口の減少が続き、働き方改革と生産性向上を両立させることに苦心する中、革新的技術への期待は高まる一方だ▼国も生成AIの研究開発や人材育成支援などの関連施策に予算を重点配分する。国土交通省はインフラ管理の高度化に向け、2023年度補正予算措置で生成AIを活用する試みを推進。24年度内に一定の成果をまとめ、次年度以降の実運用につなげるという▼社会にとって良いことばかりではなく、権利侵害や誤情報拡散のリスクも指摘される。昨年末には米大手メディアが記事の無断利用で開発企業を訴えた。初の訴訟案件として動向が注目される▼デジタル技術の恩恵を享受する上で、情報やデータの安全性・信頼性の担保は欠かせない。悪用を防ぐためのルールやシステムが必要だ。メディアと生成AIの未来が気になる。

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2024年1月19日金曜日

回転窓/2025年問題も見据えて

 「業務の多様化で忙しくなっているが、なかなか増員が認められない」。建設関連企業の管理部門の部長が嘆いていた。建設業への時間外労働の上限規制適用が迫る中、現場の対応を最優先とする会社は多いが、管理部門も厳しい状況が続く▼人手不足の深刻度が年々高まっている。帝国データバンクの調査によれば、2023年における人手不足を要因とした倒産は過去最多の260件。建設業が91件と最も多く、前年比約2・7倍と大幅に増えている▼労働人口は流入減と流出増が顕著だ。総務省統計では、1日時点の18歳人口は、前年比6万人減の106万人と過去最低に。団塊の世代が後期高齢者となり大量離職が見込まれる「2025年問題」も近づく▼ある企業は、自ら学生にアプローチするスカウトサービスに注力し新卒採用を確保。別の企業は定年制を撤廃するとともに、年齢に限らず週の勤務日数を自由に決められるようにした▼人手不足の解決は難しいが、予見可能性の高い問題であることも忘れてはなるまい。危機回避へ先手を打てるかどうかが、将来の組織力の差につながる。そうした意識がより一層求められる。

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2024年1月17日水曜日

回転窓/被災地の同業者へ

 近所のガソリンスタンド(GS)で、車の色あせを遅らせ、汚れを落ちやすくする保護塗装を若い男性店員から熱心に勧められたことがある。塗装技能のお墨付きとなる民間資格を取得したばかりとも話していた▼その彼に保護塗装を任せてから7年ほどがたつ。先日、同じGSに車検のため預けた車を取りに行くと、店長に昇進したと教えてくれた。少し照れた感じがほほ笑ましくもあり、いつも仕事が丁寧な彼と職場のGSをこれからも応援したいと思った▼GSは一般的な建物と比べ、耐震や耐火の性能に優れる。地下の貯蔵タンクは引火しにくく、整備工場も備えていれば非常時に避難や救援の拠点として機能する▼能登半島地震の被災地では、営業可能なGSが地域の被災者や県外から来て立ち往生した車両を支援。燃料の確保が難しい中、給油量を制限しながら1台でも多くの車両に燃料を供給しようと奔走した▼そうした同業の仲間をおもんぱかり、「被災地のGSが大変な思いをしている」となじみのGS店長は心配そう。懸命な復旧作業を続ける建設会社だけでなく、支援に当たる多くの人にエールを送りたい。

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2024年1月15日月曜日

回転窓/無駄にしないDNA

 日本で一般的な1日3回の食事が広まり始めたのは、江戸中期と言われる。それ以前は体力を使う仕事の人たち以外、朝と夕の1日2食だったようだ▼江戸時代に多くの食に関する本も刊行され、その数は180冊を超えるという(『お江戸ごはんの献立帖』ホビージャパン発行)。当時どんな料理が好まれていたのか興味をそそられる▼そうした関心に応えてくれる料理家・福田浩氏監修の同書は、疲れが癒やされる元気レシピの一つに「鯛(たい)の青淵汁(とろろじる)」を紹介している。だし汁にみそを溶いて冷まし、これを素焼きした後にすり鉢ですった鯛の身と山芋のとろろに加える。酒も入れて最後にこしょうを少々。シンプルな一品だが江戸っ子のグルメっぷりが分かる▼現代の日本では食品ロスが大きな問題に。政府が昨年末まとめた削減対策には賞味期限の延長などが盛り込まれた。来年度中に賞味期限の計算方法などが定められた現行指針を見直す方針だ▼循環型社会を構築していた江戸時代に、いずれ食品ロス問題が生じることなど予想できただろうか。食べ物は無駄にしない、そんな日本のDNAを活性化させなければ…。

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2024年1月12日金曜日

回転窓/外交力問われる年

 フランスのマクロン大統領が、国民教育相を務めていたガブリエル・アタル氏を新首相に任命した。歴代最年少の34歳。国民の人気が高く、政権浮揚につなげる狙いもあるとみられる▼2024年は世界のリーダーが民意を問われる年。13日に台湾で総統選の投開票が行われる。3月にロシアで、11月には米国で大統領選が実施される見通し。このほかにも欧州連合(EU)欧州議会選挙など注目される選挙が目白押しだ▼これら選挙の結果は、当該地域のみならず、国際社会の行く末にも影響する。ロシアのウクライナ侵攻やイスラエル・パレスチナ情勢など混迷の度を増す世界。リーダー同士が連携しながら、協調路線を歩んでいく必要がある▼日本にとっては外交力がより一層問われていくことになろう。今年は政府開発援助(ODA)を始めてから70年の節目に当たる。開発途上国の貧困削減や経済成長などを後押ししてきたことが、国際社会からの信頼獲得につながってきた▼質の高いインフラは地域の安全・安心を支え、国際社会の安定に貢献する。地道な取り組みを通じて世界の平和を先導していく立場で歩み続けたい。

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2024年1月10日水曜日

滋賀県/医療福祉拠点人材養成機能整備(大津市)で対話調査、1月24日に見学会

 滋賀県は、大津市で計画している医療福祉拠点整備事業の人材養成機能に関するサウンディング(対話)型市場調査を実施する。24日に参加必須の事前説明会と現地見学会を開く。説明会の参加申し込みを18日まで受け付ける。参加申請を25日~4月19日、説明資料の提出を同4月26日まで受け付け、5月7~13日にヒアリングを行う。  事業場所は県庁西側の敷地7209平方メートル。多様化する医療ニーズや新たな感染症など健康危機管理に対応するため、医療福祉拠点を一体整備する。このうち県が在宅医療福祉を推進する医療福祉センター機能(〈仮称〉第二大津合同庁舎)を整備。民間事業者は人材養成機能を併せ持つ医療福祉拠点と、県庁舎周辺のにぎわい創出拠点を整備する。  人材養成機能には看護職・歯科衛生士・リハビリ専門職などの養成を行う養成機関を設置する。職種ごとの定員は看護職の4年制大学は80人程度、歯科衛生士の養成機関は40人、リハビリ専門職の大学院は5~20人程度を想定。  人材養成機能・にぎわい創出機能の対象区域は、県が整備する範囲を除いた約4700平方メートル(大津市梅林1の207の1)。用途地域は商業地域(建ぺい率80%、容積率400%)。事業方式は一般定期借地(50年以上70年未満)または事業用定期借地(30年以上50年未満)のいずれかを予定している。  対話に参加できるのは学校法人または学校法人と民間企業により構成されるJV。  対話では▽事業区域▽想定スケジュール▽事業方式▽民間整備の内容・条件▽応募者の資格要件▽事業実施の支援-などについて意向を把握する。  9月にプロポーザルによる公募手続きを開始し、12月ごろの事業者選定を想定。2027年4月の供用開始を目指している。

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回転窓/温かい支援の輪

 決勝戦が8日に行われた全国高校サッカー選手権は、今大会も多くの感動を与えてくれた。3回戦に進んだ石川県代表・星陵高校の試合は、前日の1日に起きた地震の影響で地元から応援団が来られない事態に。惜しくも敗れたが、千葉県内の試合会場は温かい雰囲気に包まれた▼同校への支援がSNS(インターネット交流サイト)で呼び掛けられ、関東在住のファンだけでなく、他校もスタンドから応援。ユニホームが同じ黄色のJリーグチームのサポーターも熱い声援を送った▼被災地を支援する輪が大きく広がっている。物資や重機を載せた九州などからの船舶が日本海を行き来し、近隣県には缶詰パンを通常の2倍規模でフル生産する工場などがある▼強い揺れが襲った珠洲市には、出雲国風土記に登場する国引き神話の縁で、姉妹都市の松江市が物資の提供や職員を派遣した。東日本大震災の被災地でも道の駅で義援金を募る活動などが進む▼建設業界は被災地の道路啓開や復旧で献身的な活動を展開している。全国からのさまざまな支援も本格化していくだろう。被災された方々の不安が少しでも和らぐよう願う。

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2024年1月9日火曜日

回転窓/波の花と朝市の地に

 海岸に舞う「波の花」は、石川県の奥能登の冬を彩る風物詩として知られる。強い季節風により岩場で砕けた波が泡状になって浮遊する。その光景はまるで花吹雪のようだという▼もう数十年前のことになる。高校時代に友人たちと寝台特急やバスを乗り継ぎ訪れたのが冬の能登。波の花を見るのが楽しみだったが、残念ながら風も弱く条件が合わない日で希望はかなわなかった▼能登半島地震の発生から9日目を迎えた。元日の穏やかなひと時が一変し、繰り返し強震に見舞われた恐怖はどれほどのものであったろう。津波の恐ろしさも改めて痛感させられた▼大規模火災が起きた輪島市の朝市通り一帯では約200棟が延焼した。10代の旅行で楽しい思い出をつくれた地であり、変わり果てたまちの姿に言葉を失う▼先週末時点でも被害の全容が分からず、発表される犠牲者数は日を追うごとに増える。道路の寸断で輪島市や珠洲市などの一部地域が孤立。県内の広い範囲で断水も続いている。災害に対する安全性を高めるためにどれだけの教訓を得ればいいのか。安全で安心できる国・地域づくりへの歩みはこれからも続く。

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