2024年8月30日金曜日

回転窓/強靱化を加速する姿勢で

 非常に強い台風10号が日本列島を縦断する懸念が高まっている。気象庁は28日の会見で「比較的最強に近い。めったにないような台風」と危機感を示した▼高潮や洪水の浸水想定区域や土砂災害警戒区域などは特に危険性が高い。暴風が吹き始める前の早めの避難が重要だ。岸田文雄首相は、事前対策に万全を期すことや、被害発生時には政府一体で応急対策に全力で取り組むよう指示した▼九州地方では29日、線状降水帯による大雨が発生。完成したインフラに守られた地域でも予断を許さない状況が続く。施工中の建設現場では、さらに高いレベルで警戒が求められる。工事関係者の無事を願ってやまない▼国土交通省が27日、2025年度予算の概算要求を発表した。能登半島地震の復旧・復興とともに、防災・減災や国土強靱化を着実に推進し、国民の生命・財産・暮らしを守り抜く姿勢を強調。公共事業関係費は前年度比18・9%増の6兆2899億円を要求した▼災害復旧よりも事前対策の方が効率的。何より国民の命を守ることにつながる。被災者を増やさないためにも、防災への備えをさらに加速していきたい。




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2024年8月29日木曜日

万博協会/「未来の都市」パビリオンの出展内容発表

 未来の施工技術や素材を体感--。2025年日本国際博覧会協会(十倉雅和会長)は28日、大阪・関西万博で「未来の都市」をテーマに設けるパビリオンの協賛企業・団体による出展内容を発表した。建設関係では青木あすなろ建設とコマツが未来の水中工事をテーマに、誰もが遠隔操作できる水中施工ロボットの精緻な巨大模型を展示して発信。安藤ハザマが幹事社を務めるCPコンクリートコンソーシアムは、二酸化炭素(CO2)を封じ込めるカーボンプールコンクリ(CPコンクリ)の優位性を紹介する。
 同パビリオンは大阪市此花区夢洲の大阪湾に面した会場西側に建設する。展示スペースの大部分を「個者展示」用に活用。▽日立製作所▽KDDI▽クボタ▽川崎重工業▽神戸製鋼所▽日本特殊陶業▽商船三井▽日立造船▽IHI▽青木あすなろ建設▽コマツ▽CPコンクリコンソーシアム▽関西電力送配電-の各協賛企業・団体が出展する。
 同日に東京都内で開いた会見で、各担当者が出展内容を説明した。青木あすなろ建設とコマツは精緻な巨大模型を製作し、実証中の自動制御機能やICTを搭載した水中施工ロボを紹介。担い手不足を補完し、平時の工事や災害対応などさまざまなケースで安全性や効率化を両立させる。
 青木あすなろ建設の担当者は「安全快適なオフィスなどから遠隔操作できる水中ロボットが活躍する『未来の水中工事』の実現に取り組んでいる。誰もが活躍できるよう工事現場を一新する」と述べた。海洋生態系が吸収する炭素(ブルーカーボン)を活用した地球温暖化対策の貢献にも意欲を示した。
 CPコンクリートコンソーシアムは、来場者用にCPコンクリで造った椅子を用意。AIが案内役を務める映像を見てもらい、飛行船の乗客という設定で地球温暖化が進んでしまった未来都市と、CPコンクリが鍵となる地球温暖化の危機を乗り越えた未来都市を滑空しながら体感してもらう。
 安藤ハザマの担当者は「(CPコンクリの採用で)世界中どこにでもある建物や道路などのコンクリがCO2を吸収し、都市そのものが温暖化を防止する切り札になる」と訴えた。




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2024年8月28日水曜日

荒天の影響で新聞発送が一部地域で遅れています。8月28日の紙面を電子版で公開しています。日刊建設工業新聞 https://t.co/waXnjZSZtb


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August 28, 2024 at 09:43AM
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社会福祉法人慈生会聖ヨゼフ老人ホーム改築工事 公告詳細 https://t.co/LsIcgaKIv9


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August 28, 2024 at 06:21AM
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回転窓/開かずの防災倉庫に

 この前の日曜日、近所の公園にある防災備蓄倉庫の清掃が行われた。9月1日の防災の日が近づくと実施される町内会の恒例行事。実際に倉庫内の備蓄品を使う事態には直面していないが、掃除に併せて照明器具の動作を確認したり、住民に期限の迫った保存食を配ったりする▼今回は清掃後に「ボールをぶつけないで」と書いた紙が倉庫にはられた。「元気なのはいいことなのだけどね」と話してくれたのは民生委員の男性。子どもたちにこうした備えがいかに大切かを知ってもらうのも地域社会の役割だろう▼台風10号が発達を続けながら、27日昼時点で奄美や九州に近づきつつある。猛烈な風が吹く恐れがあり、進路の予想範囲は本州も広く覆う▼関係省庁は警戒会議を26日に早くも開催した。国土交通省と気象庁は同日緊急会見し、厳重な警戒を呼び掛けている。動きが遅く、大雨や強風が長引く地域が出る公算が大きいという。早め早めの対応が必要だ▼各地の防災備蓄倉庫が開けられる事態にならないよう願わずにいられない。時同じくして話題の自民党総裁選立候補者には、国土強靱化の考えを聞かせてほしい。




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2024年8月27日火曜日

回転窓/奇跡のお守り

 肌身離さず付けて神仏の加護をいただくお守り。最近はアニメのキャラクターなどとのコラボレーションもよく見かけ、デザインも豊富だ。かばんにお気に入りのお守りを複数付けている若者も目立つ▼いろいろなお守りを持っていると、神様同士が争うのではと心配になるが、特に問題はないそう。日本古来の神道には「やおよろずの神」という言葉があり、それぞれの神徳を持って協力し守ってくれるのだという▼会社近くの日比谷神社(東京・東新橋)では独自の「奇跡の御守」が人気を集める。同神社のウェブサイトによると、古くは旧麹町区日比谷公園の大塚山に鎮座し、400余年前の江戸城築城に伴う御門造営で芝口に移動。これまで3度の遷座を経ても廃れることなく、地域の氏神として崇敬を集め続けていることが奇跡なのだとか▼奇跡の御利益にあやかろうと、お守りは品薄状態。観光スポットとしてインバウンドがお参りする姿も見られ、新たなにぎわいを見せている▼信仰は自由だが、苦しい時だけの神頼みでは加護も期待できまい。途中で投げ出さず、たゆまぬ努力を続けることが奇跡を起こすのだろう。




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2024年8月26日月曜日

回転窓/戦後80年の節目を前に

 第42代首相の鈴木貫太郎(1868~1948年)は、日本を終戦に導いた功績が広く知られる。小説や映画でもその人物像が描かれてきた▼軍部が徹底抗戦を主張する中、戦争終結にこぎ着けた鈴木首相。作家の志賀直哉が当時の日本を今にも沈みそうなボロ船にたとえ、「軍はそれで沖へ乗出せといふ。鈴木さんは舳(へさき)だけを沖に向けて置き、不意に終戦といふ港に船を入れて了(しま)つた」と書いている(『志賀直哉全集 第七巻』岩波書店)▼幼少期と晩年を過ごした現在の千葉県野田市関宿町に「鈴木貫太郎記念館」が開館したのは60年代。愛用品や書簡、「最後の御前会議」の油彩画などを展示する施設だが、台風被害や耐震強度不足で5年前から臨時休館が続く▼管理運営に当たる市は、博物館機能を備えた施設への再建準備に入っている。基本構想では2028年度に着工し、30年度の開館を目指す▼来年は戦後80年の節目を迎える。戦後に鈴木がよく揮毫(きごう)した言葉は、終戦の詔書から引用した〈為萬世開太平〉。何世代も続く世のために平和な世をつくるというこの意志を、日本は世界へ発し続けなければならない。




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2024年8月23日金曜日

建築へ/関東整備局と東京・文京区、全国初の合同庁舎と認定こども園合築プロジェクト

 国土交通省関東地方整備局と東京・文京区が、国の合同庁舎と認定こども園などを合築する全国初のプロジェクトを進めている。国の特別史跡および特別名勝に指定されている小石川後楽園の隣接地で「小石川地方合同庁舎」(仮称)を建設中。敷地要件や建築制限など厳しい条件下で、諸官庁が入居する十分な広さを確保するとともに、認定こども園の設置基準を満たすため、設計にBIMなどを積極的に取り入れている。合築による公共建築が増える中、新たな“カタチ”が生まれる。
 小石川地方合同庁舎は、旧労働会館と後楽幼稚園の敷地を一体として整備する。敷地面積は約4700平方メートル。東側に小石川後楽園、西側に住宅地があり、オフィスビルや高層マンションなども林立している。そこで配置計画では敷地南端に東西を結ぶ緑道を設け、小石川後楽園から市街地へと延びる緑の連続性を考慮した。
 敷地内は東側に庁舎、西側に園庭を配置した。庁舎は22メートルという厳しい高さ制限と日影規制に対応するため、建物を5階建て(約21・5メートル)に抑え地下階(2階)を設定。床面積を確保するとともに、高層部をセットバックさせている。園庭は認定こども園として十分な広さを確保した。
 建物はS・SRC造地下2階地上5階建て延べ9437平方メートルの規模。平面・立面的にバランス良く座屈拘束ブレースを配置し、全体のブレース数を減らすことにつなげた。
 外観は5層の大きな「ひさし」が特徴だ。見上げた時、そり上がったように見えるよう緩やかな曲線を付けることで圧迫感を軽減する。1階は開放感のあるガラス面とし、緑道のある南側の低層部は柔らかな曲線形状を採用。小石川後楽園のある東側壁面には木立様のファサードを設け、奥行きのあるひさしとともに周辺の風景に溶け込ませる工夫を施した。隣接する集合住宅に近い北側には、エレベーターやトイレなどのコア機能を配置する。
 庁舎内部は低層階が区の施設、高層階が国の官署となる。低層階に入る認定こども園は1、2階の西側約半分を占め、庁舎側と動線を分けるよう西側に専用の入り口を設ける。認定こども園として必要な設備や機能を持たせるため、余裕を持った床面積と広い園庭を確保した。
 1階東側には文京区の清掃事務所を置く。時間外対応が必要となるため、1階東側の主エントランスとは別に南東側に専用の出入り口を設けるほか、プライバシーに配慮して更衣室や休憩室、浴室などを地下1階に配置した。地下2階には駐車場を設ける。
 国の官署は2階東側に自衛隊東京地方協力本部台東出張所、3、4階に東京国税局小石川税務署、5階に総務省東京行政評価事務所と関東整備局東京第一営繕事務所が入る計画。基本的に出入りの多い官署を低い階に配置している。
 施工面では狭い敷地を考慮して旧労働会館地下躯体の一部を土留めに残置し、仮設を合理化するなど多くの工夫を取り入れた。BIMを積極的に活用し、小石川後楽園からの景観や認定こども園の内外装の確認、合同庁舎として多岐にわたる関係者間の合意形成などに効果を発揮している。

 □建築概要□
 ▽建物名=小石川地方合同庁舎(仮称)
 ▽建設地=東京都文京区
 ▽発注者=国土交通省関東地方整備局営繕部
 ▽設計者=安井建築設計事務所
 ▽施工者=〈建築〉東急建設〈電気〉栗原工業〈機械〉川崎設備工業
 ▽構造・規模=S・SRC造地下2階地上5階建て延べ9437m2
 ▽工期=2022年11月~27年3月




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2024年8月22日木曜日

回転窓/まちに眠るお宝

 自宅に眠っていた骨董(こっとう)品や絵画などを鑑定するテレビ番組「開運!なんでも鑑定団」が好きで視聴している。一般人や芸能人が「お宝」と称して専門家に鑑定を依頼する内容が受け、今年で放送開始30周年を迎えた▼先日、不動産情報サイトで「お宝物件」という宣伝文句を目にした。新築よりも安く手に入る優良中古物件や古民家を指すらしい。レトロな雰囲気が持ち味の飲食店などに利用されている▼まちの魅力を高めようと、建設業でも加和太建設(静岡県三島市)が不動産仲介業を営むエンジョイワークス(神奈川県鎌倉市)と共同で、三島市街にある空き家を起業したい人に紹介する創業支援を展開している。応募してきた起業家の悩みに先輩経営者がアドバイスするのが特徴だ▼応募受け付けは8月末まで。審査を通過した起業家は、築100年の古民家や料亭だった居抜き物件で事業を始められる▼後継者不足や電子商取引の需要増などが市街地の衰退に拍車をかけている。まちに活気を取り戻すため、未利用不動産をうまく活用するのも一つの手。地域に精通する建設業が貢献できる余地は十分ある。




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2024年8月21日水曜日

JR東日本、初のインドネシア人入社・技能実習制度の対象国拡大

 JR東日本は外国人技能実習制度「JR東日本Technical Intern Training(テクニカル・インターン・トレーニング)」の対象国を広げ、9月1日に研修を開始する。インドネシアの鉄道会社などに勤務する6人を予定。同社が同国から人材を受け入れるのは初めて。実習生は鉄道車両整備職種に関連した研修を3年間受ける。10月には2期目となるベトナム人技能実習生も入社する予定だ。
 同制度は、JR東日本グループの経営ビジョン「変革2027」に掲げるESG(環境・社会・企業統治)経営の一環として2019年4月に開始した。鉄道人材の育成を通じて各国と友好関係を構築するのが目的で、これまでベトナムやタイから技能実習生を受け入れている。
 9月1日に入社するのはインドネシア国鉄の職員2人と鉄道車両メーカーの社員1人、送り出し機関が公募した3人の計6人。東京都品川区の東京総合車両センターで鉄道車両整備職種(走行装置の検修、解ぎ装作業)を経験する。
 10月1日にはベトナム人技能実習生4人を迎え、福島県郡山市の郡山総合車両センターで同様の実習を行う。同国の人材を受け入れるのは、22年に実施した冷凍空気調和機器施工職種の実習に続く2期目となる。
 JR東日本はテクニカル・インターン・トレーニングを特定技能に先行する初期トレーニングと位置付けている。現在は軌道整備や電気設備整備などを対象に特定技能人材の受け入れ準備を進めている。技能実習制度の対象外となっている電気分野を特定技能制度によって研修できるようスキームの検討も行っている。

いであ/高輝度放射光施設で研究へ、生命科学分野皮切り新たな価値創造へ

 いであは、東北大学青葉山新キャンパス(仙台市青葉区)に整備された世界最高水準の高輝度放射光施設「ナノテラス」を利用した研究に乗り出す。太陽光の約10億倍にも及ぶ非常に明るいX線で物質を照らし、従来は観察できなかった物質の構造を可視化する「巨大な顕微鏡」と言われる施設。強みとする健康・生命科学分野から活用を始め、新たな価値創造につなげる。幅広い産業分野で利用可能性があるとみており、外部パートナーとも積極的に連携していく。
 同施設は、量子科学技術研究開発機構(QST、小安重夫理事長)や光科学イノベーションセンター(PhoSIC、高田昌樹理事長)、宮城県、仙台市、東北大学らが官民で整備し、4月に稼働を開始した。放射光とは、加速した電子ビームを磁石で曲げた時に放射される非常に輝度の高い電磁波のこと。同施設は高輝度の軟X線により、物質の機能に影響を与える電子状態を可視化できる。物質の電子状態や化学状態の解析に強みがあるとされる。
 同社は有害化学物質分析や健康リスク評価、遺伝子解析に関連する技術開発に注力しており、こうした分野への応用を目指す。このため年間最大200時間使える1口(10年間5000万円)の利用権購入を2019年に決定。全て成果を専有して利用できる会員となっている。
 例えば、水中の有害化学物質が生物に取り込まれた場合、体内に存在していることは分かっているが、状態変化や体内での動態メカニズムは解明されていないことが多い。ナノテラスを用いて、有害化学物質が環境中にどのような状態で存在し変化していくのかを把握して、解析や対策立案などに活用するイメージだ。初弾では、マイクロプラスチックの表面に付着した有害化学物質を調査する方針で、年内の開始を予定する。
 東北大らはナノテラスを活用する利用者らと連携したイノベーションエコシステム形成にも力を入れている。田畑彰久社長は「自社の研究を進めることはもちろんだが、エコシステムに入る意味が大きい。オープンイノベーションの大きな入り口になる。共に社会貢献していくパートナーと共同研究していきたい」と話す。

回転窓/政策論に焦点を

 2024年は世界的な選挙イヤーであり、国際情勢に大きな影響を及ぼす国で首脳を決める選挙が相次ぎ行われている▼そうした選挙は日本にとって対岸の火事ではない。結果次第では経済停滞を招いたり安全保障を脅かしたりする可能性も。中でも注目されるのが11月の米大統領選だろう▼ハリス副大統領とトランプ前大統領が激しく火花を散らしている。ハリス氏は生活必需品の値下げや住宅建設への税制優遇を柱とする経済政策を発表。これに対しトランプ氏は競争を阻害する価格統制だとして批判する▼日本では岸田文雄首相が不出馬を表明した9月の自民党総裁選が、事実上の次期首相が決まる戦いとして注目を集めている。ただ連日報道されるのは「出馬に必要な推薦人が集まったかどうか」「誰と会合を開いたか」といった内輪の出来事ばかり。政策の話題はほとんど発信されていない▼不確実性を増す経済や今夏も頻発する豪雨災害、緊張が高まる周辺国との関係など、日本を取り巻く状況は依然、予断を許さない。首相候補者たちは政策論をしっかり戦わせる責任がある。国民が向ける目はこれまで以上に厳しい。

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2024年8月20日火曜日

国交省/災害対応でICT活用有効、地域建設業の課題と対応策整理

 国土交通省は地域建設会社が抱える災害対応時の課題を調査し、平時の備えを強固にしてさらなる迅速対応につなげるための方策をまとめた。発災直後の状況把握の難しさを打開するため、遠隔・無人で現地状況を確認できる装備(ウエアラブルカメラやドローン)の有効性を指摘。行政機関からの指示待ちや情報の錯綜(さくそう)で初動対応が遅れる実態があることを踏まえ、建設会社や建設業団体として災害情報の共有・提供システムを活用したり、行政機関に技術者を派遣・常駐させたりする方策を提案した。
 調査は全国建設業協会(全建)、全国中小建設業協会(全中建)、建設産業専門団体連合会(建専連)の会員企業に依頼。2023年10、11月に988社が回答を寄せた。併せて収集した好事例も含めてホームページなどで公開し建設会社などに取り組みの参考にしてもらう。
 多くの会社は平時の対応として企業規模を問わずブルーシートや土のう袋などの資材を備蓄し、現場配置可能な建設機械を用意している。ただ、それらの調達や維持管理のコスト負担を課題に挙げる声が多かった。国交省は災害対応力を強化するため自治体などが用意する補助制度の活用とともに、地域建設会社自らが購入・管理コストの低減策を検討する必要性を指摘。他業種も含めた備蓄コストの低減につながる事例を建設業団体などを通じ収集する取り組みなどを提案した。
 事前に設定した判断基準がうまく機能せず初動対応に遅れが生じたケースや、被災状況が十分に確認できず現地対応や安全確保に時間を要したとの意見も多い。ドローンなどを活用すればリアルタイムで現地状況を把握でき、行政機関と共有することで災害対応方針の検討にも有効とする。
 災害協定や維持工事契約を結ぶ行政機関による判断の遅れや、複数の行政機関から対応要請を受けることによる混乱も課題に挙がる。デジタル庁が公開する「防災DXサービスマップ」など災害情報の共有・提供システムの活用を促し、災害対応の予測能力の向上などを図ることを期待。行政機関との連携強化に向け、技術者を派遣・常駐し支援することも提案する。



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大成建設ら/山岳トンネル吹付厚と出来形一括管理、アーチ面を定量計測・可視化

 大成建設とマック(千葉県市原市、宮原宏史社長)は山岳トンネル工事の生産性向上策として、切羽アーチ面のコンクリート吹き付け厚計測システム「Tショットマーカーアーチ」を開発した。3D状に光を照射し高速処理する「3D-LiDAR」2台をコンクリ吹き付け機に搭載して連携制御。吹き付け作業中にアーチ面の吹き付け厚と出来形を面的かつ定量的に計測、可視化し一括管理できるようになった。品質向上にも貢献する。
 大成建設によると、一般的な山岳トンネル工事で切羽面へのコンクリ吹き付け作業はオペレーターが切羽近傍で吹き付け厚さを目視確認しながら施工している。この方法はオペレーターによってバラツキが生じやすく、吹き付け厚の定量的な管理方法が課題だった。
 同社は3D-LiDARを活用し、切羽前面の鏡面に限定してコンクリ吹き付け厚をリアルタイム計測する「Tショットマーカーフェイス」を23年に先行開発。今回開発したTショットマーカーアーチは鏡面周囲のアーチ面の吹き付け厚計測を実現した。両システムを併用することにより切羽全体の吹き付け厚を一括して計測、管理する。
 吹き付け機のモニター画面にアーチ面の吹き付け厚と出来形の展開図を可視化。計測対象の吹き付け面を座標化することで設計断面と3Dでの比較が可能となり、作業中に面的な吹き付け厚の過不足を把握しながらトンネル内空断面の出来形を正確に確認できる。吹き付け時のリバウンド量から必要となるコンクリ量も自動算出。生コン注文量の適正化に役立てる。
 同社は新システムを全国の山岳トンネル工事で展開。現場状況に合わせて改良しながら、吹き付け作業のさらなる効率化や安全性の向上を目指す。



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下北医療センター/むつ総合病院新病棟建設I期工事入札公告、9月27日まで参加受付

 一部事務組合下北医療センター(管理者・山本知也青森県むつ市長)は19日、「むつ総合病院新病棟建設事業I期工事(病棟建設工事)」の制限付き一般競争入札を公告した。技術提案型の総合評価方式を採用。下北半島の広域基幹病院として延べ2万4539平方メートルの新病棟(330床)などを整備する。参加申請を9月27日まで受け付ける。開札日は10月15日までに通知する。技術提案書の提出期限は11月22日。ヒアリングを経て12月17日に落札者に結果を通知する。
 全体工期は2030年2月28日まで(実工期36カ月)。施工体制や建設資材の確保を目的に余裕期間制度を活用。着工期限は27年3月1日に設定する。
 指名競争入札参加有資格者名簿で建築一式工事に登録がある単体か2~3者で構成するJVが参加できる。東北6県のいずれかに本店、支店、営業所があること。単体とJVの代表者は総合評定値が1800点(構成員は1600点、電気工事、管工事は1400点)以上が必要。過去10年に一般病床300床以上、延べ2万平方メートル以上の病院新築工事を元請で施工した実績を求める。
 工事場所は青森県むつ市金谷1、小川町1(敷地面積4万7673平方メートル)。1期工事で整備する新病棟はS造地下1階地上6階建て(免震構造)延べ2万4539平方メートル。渡り廊下A(S造地下1階地上1階建て延べ616平方メートル)など新築総面積は2万5420平方メートルを見込む。西診療棟(SRC造地下1階地上4階建て延べ6207平方メートル)、東診療棟(同地下1階地上4階建て延べ6659平方メートル)は2期工事で改修する。
 実施設計の見直しで総事業費は6月時点で350億円(税込み、以下同)と試算した。内訳は建設工事費が321億円、設備費は27億円。1期が265億円、2期は24億円、3期(解体・外構工事)が21億円となっている。
 むつ市が策定した「金谷都市拠点地区都市再生整備計画」に基づき、同市と横浜町、大間町、東通村、風間浦村、佐井村の「下北半島都市圏広域的な立地適正化の方針」で「基幹的誘導施設」に位置付けられている。
 基本・実施設計は内藤建築設計事務所が担当した。CM業務は病院システムに任せる。



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熊本県/くまもと空港アクセス鉄道/環境アセス方法書縦覧、8月20日から地元説明会

 熊本県は「(仮称)都市高速鉄道阿蘇くまもと空港アクセス鉄道整備事業」について、環境影響評価(環境アセス)の方法書の縦覧を開始した。縦覧期間は9月12日まで。地元説明会を20~23日に開催し、意見書の提出を9月26日まで受け付ける。2027年度以降に用地取得を含めた具体的な鉄道整備に着手することを目指しており、整備期間は約8年を予定している。
 アクセス鉄道の計画ルートはJR豊肥本線の肥後大津駅(大津町)から分岐する単線の延長約6・8キロ。構造形式はかさ上げ式(高架橋)、地表式、掘削式、地下式を採用する。アセス方法書の段階ではルートについては具体的な複数案を設定せず、幅を持たせた「ルート帯」とし、今後のアセス手続きの中で環境影響の回避・低減を考慮し、具体的なルートを絞り込む。
 起点の肥後大津駅とその周辺の市街地、中間部の水田耕作地域や白川河川部はかさ上げ(高架橋)を基本に検討していく。一方、高遊原台地の端部から空港付近は地下式(トンネル)を基本に検討する。トンネルの施工方法は未定。地下水に影響を及ぼさないよう、地下式を採用する区間は帯水層の上部にトンネルを設置する考え。
 アクセス鉄道が開業すると、同空港から熊本駅までの所要時間は約40分になると見込んでいる。空港リムジンバスや自家用車などを使う現行のアクセス方法に比べて約20分短縮される。22年9月時点の概算事業費は約410億円(税込み)。
 アセス方法書の作成は長大が担当。



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回転窓/日常と有事のバランス

 地震や台風などの天災により、楽しみにしていた夏休みの予定を急きょ変更した方も多かろう。交通機関の計画運休のほか、海水浴場の閉鎖やイベント中止など多方面に影響が拡大。万が一に備えた安全最優先の対応では致し方ない▼宮崎県沖の日向灘を震源とする8日の地震を受け、政府は南海トラフ地震の「臨時情報(巨大地震注意)」を初めて発表。茨城から沖縄までの29都府県707市町村を対象に、大規模地震の発生に注意しながら日常生活を続けるよう呼び掛けた▼後発地震に備えた防災対応の呼び掛けは1週間後に終了したが、災害への備えやリスク管理は日々求められる。地元自治体は有事の災害対応拠点である庁舎内に職員用の備蓄品が一切なく、市内に分散された倉庫に車で取りに行く現計画を問題視。早急に計画を見直すという▼9日には神奈川県西部が震源の地震(最大震度5弱)も発生し、市民の危機意識が一段と高揚。水や非常食をこぞって購入し、品切れの店が続出した▼万全の体制を常に維持することは難しく、日常生活とのバランスが重要となる。防災・減災、国土強靱化は一日にしてならない。



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2024年8月19日月曜日

建設未来フォーラム 新・担い手3法が標榜する建設産業 ~バックオフィスが描く建設DXの最新情報

建設未来フォーラム 第33回

 新・担い手3法が可決され、建設産業の果たすべきものがより顕在化されました。その遂行のために、建設DXの重要性は高まり、建設現場のみならずバックオフィスにおける推進は欠かせないものとなっています。そして、現場支援にとどまらない役割が求められています。
 今回の建設未来フォーラムはコンカーとともに、清水建設、オリエンタル白石をお招きし、各社のDX戦略や実際のお取り組みについてお伺いします。

開催日時:2024年9月5日(木)13:30~15:30(約120分)
参加(視聴)方法:オンライン・セミナー
参加:事前登録制、先着順。参加費無料

主催:日刊建設工業新聞社
協賛:コンカー

建設未来フォーラム サイト

回転窓/記憶に残る写真

 きょう8月19日は「世界写真の日」--。185年前(1839年)のこの日、フランス・パリで新しい写真の技法「ダゲレオタイプ」が初めて公開された▼世界初の実用的な写真技法であり、日本語で銀板写真と呼ばれる。発明者はL.J.M.ダゲール。その教本は同国内外で出版されて大ベストセラーになったという(『完訳 ダゲレオタイプ教本』中崎昌雄=解説・訳、1998年)▼先週11日までパリを舞台に2024年夏季五輪が開かれ、今大会でも競技中の一瞬を捉えた躍動感あるシーンや勝利に喜びを爆発させる選手の表情など、さまざまな写真が新聞紙面などを飾った。時代とともに写真は技法や機材が大きな変遷を遂げたが、こうしたスポーツの祭典で映像とはまた違う感動を変わることなく伝えてくれる▼東京・東新橋の共同通信本社が入る汐留メディアタワーには、かつて報道の現場で使われたカメラなどが展示されている。写真好きの方なら、往年の名機たちに興味は尽きないだろう▼パリでは、パラリンピックが28日に開幕する。五輪に続き、見る人の記憶に残る多くの写真が撮られるに違いない。



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2024年8月9日金曜日

回転窓/本当の声はどれ?

 国土交通省が民間工事に焦点を当てて行った2023年度の「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査結果」(1月1日時点)が興味深い。規制強化前だが、時間外労働の上限規制で原則とされる月45時間・年360時間を超過する技術者がいる企業が36%を占めた▼長時間労働が当たり前だった時代に比べると、3分の2が規定内であることに隔世の感がある。だが若者からすればとんでもないことかも。どちらに合わせるべきかは言うまでもない▼自由回答は働き方改革を好意的に受け止める意見が目立つ。一方で「土日は休め、賃金アップしなさいと国から言われても、休みを増やしたらできる仕事も減り賃金アップしたくてもできない」と悲痛な声も▼働き方改革が進展していくにつれ、苦しい人が声を出しづらい雰囲気になる懸念がある。サイレントマジョリティーの本音はどこにあるのだろうか▼明日からお盆休みの人が多かろう。だが、この時期にしかできない建設工事もある。目立たない所で働く方の努力もあってこそ、経済は動く。すべての人が働きがいを持てる社会への変革を願ってやまない。

source https://www.decn.co.jp/?p=166211

2024年8月8日木曜日

回転窓/適正価格に向けて

 近所のスーパーに2024年産の新米が並びだした。早場米として出荷されたものだが、驚いたのはその価格。昨夏の猛暑による生産不振で値上がりした流れは収まらず、しばらく購入を見送ることにした▼農林水産省によると、6月までの1年間の主食用コメ需要は前年から11万トン増の702万トン。近年の人口減少や食の多様化などでコメの需要量は右肩下がりだったが、10年ぶりに増加へ転じた▼おすしなど和食を楽しむインバウンドの復調に加え、パンや麺など他の主食と比べて価格高騰が緩やかだったのも需要増の要因とされる。6月末時点の民間の在庫は156万トンとなり、前年の同時期より41万トン、率にして20%の減。記録が残る1999年以降で最少になった▼需給の引き締まりが価格上昇につながっている。産地では生産コストの高止まりを踏まえつつ、消費にブレーキをかけないよう適正な価格帯を探っているそう▼ものづくりの世界では適正価格の議論が熱を帯びる。建設業も第3次担い手3法の成立を受け、入札契約制度や商慣習の見直しが本格化する。持続可能な産業に向け、課題の先送りは許されない。

from 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=166110

2024年8月7日水曜日

回転窓/10年後の笑顔を守る議論

 夏でも内陸ほど気温が高くならないといわれる海沿いだが、やはり今年の暑さは桁違いのよう。近所の少年野球チーム関係者に聞くと、先日行った海辺の夏合宿ではノックの本数を減らすなど、普段にも増して安全第一の練習内容に変更したという▼合宿中は練習だけでなく、レクリエーションもあり楽しい数日を過ごしたのだとか。仲間と思い出を増やして帰ってきた子どもたちの笑顔は、保護者にはきっと輝いて見えたことだろう▼小学校高学年の選手たちが生まれた10年前の2013、14年はさまざまな出来事があった。積極的な金融緩和や財政政策を伴うアベノミクスが始動。20年東京五輪の開催が決まり、インバウンドは初めて1000万人を超えた▼首都直下地震の被害想定が公表され、緊急対策推進基本計画が閣議決定されるに至ったのも当時のこと。それから10年がたち、政府は被害想定と対策の見直しに着手し、5日には有識者会議が被害の算定手法に関する議論を開始した▼これから10年、今の子どもたちが20歳を過ぎている頃には想定される大規模地震に対し、必要な対策が着実に進んでいると願いたい。

from 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=166110

2024年8月6日火曜日

臨時休刊のお知らせ

夏季休業のため13日(火)~16日(金)付の新聞は臨時休刊とします。19日(月)付から通常通り発刊します。 なお『日刊建設工業新聞・電子版』と『月刊工事情報』の新規会員登録は休業中も可能ですが、利用開始は19日以降となります。ご了承ください https://www.decn.co.jp/?p=166079

回転窓/夜のセミしぐれ

 〈庭の木にらんぷとゞいて夜の蝉(せみ)〉(正岡子規)。最近、最寄り駅の改札を抜けると、夜中でもセミの大合唱に出迎えられる。駅ホームを照らす電灯の明かりに加え、連日の猛暑で夜も気温が下がらず、セミも昼間と勘違いしているようだ▼国内には約30種類のセミが生息するそう。それぞれ地域差はあるが、羽化して地上で鳴き始める時期は4月下旬のハルゼミ等を除き、大半は6月下旬から7月にかけて。ツクツクボウシは10月ごろまで鳴き続けるという▼鳴く時間帯もさまざま。ニイニイゼミは早朝から宵の口まで。クマゼミは午前、アブラゼミは午後が中心だ。ヒグラシは名前の通り夕暮れ時だが、空が白けて日の出前までのわずかの間に鳴くことも▼温暖化の進展はセミだけでなく、多くの生き物に影響を与える。気象庁がまとめた7月の天候によると、平均気温は太平洋高気圧などの影響で平年を2・16度上回り、前年同月の記録(平年差プラス1・91度)を更新。1898年の統計開始以来で最も暑い7月となった▼暦の上ではあすは立秋だが、猛暑が収まる気配は感じられない。セミしぐれとともに寝苦しい夜が続く。

from 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=166073
via https://www.decn.co.jp/?p=166073

2024年8月5日月曜日

回転窓/楽しみな川柳コンテスト

 図書館の運営受託を手がけるキャリアパワー(京都市)が毎年、「私の図書館(本)」と題した川柳コンテストを開催している。これまでの受賞・入選句をみると、笑いのツボにはまる作品が多くて楽しめる▼2019年の第1回最優秀作品は「わあショック 真犯人を 囲う丸」。推理小節を読み進めている途中で、まだ分からない真犯人の名前が丸で囲まれていたら…。思わず笑ってしまう句だが、現実なら迷惑にもほどがあろう▼実際にそうした落書きを含め、図書館が困るのは貸し出した本の汚損や毀損。なかでも飲み物や雨などでぬらすトラブルが少なくないようだ▼先日訪れた公立図書館では利用者に注意を促すため、水にぬれて乾き、大きく波打った何冊もの本が「本が悲しんでいます」と書かれた張り紙と共に並んでいた。いずれも修復できずに弁償となったものだという。本を借りる時は十分に気を付けたい▼第6回の同コンテストは、今月1日に作品募集が始まった。ちなみに前回の最優秀作品は「頭良く なった気がする 来ただけで」。今年もどんな秀作が出てくるのか、選考結果の発表を楽しみに待とう。

from 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=166039
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2024年8月2日金曜日

回転窓/楽しむために能登半島へ

 8月に入りお盆休みが近づいてきた。山や海などへと出掛ける計画を立てている人も多かろう▼阪急交通社が「今、行ける能登」と銘打った能登半島への復興応援ツアーを始めた。「聖域の岬」として知られる奥能登最先端の珠洲岬などをめぐり、豊かな自然景観や食を楽しんでもらう▼「行けない能登も正直ある。でも輪島や珠洲で営業できる場所がある。奥能登全部が駄目なわけではない」。石川県の馳浩知事は先月30日の会見でこう訴えた。訪問を遠慮すべき被災地はあるが、楽しむための訪問を待ちわびている地域もある▼被災された方はもちろんのこと、行政や建設業界ら支援する側も復旧・復興の難しさを痛感しながら7カ月が過ぎた。目の前にある課題に早急に応えると同時に、後悔せずに済むような未来にしていくための取り組みを加速する必要がある▼防災学術連携体が同日開いた能登半島地震7カ月報告会で、和田章代表理事が「日本の建物や道路は造り方が弱すぎるのではないか」と改めて問題提起した。反省するだけでは責任は果たせない。行動が求められることを行政や建設業界らと発信していきたい。

source https://www.decn.co.jp/?p=165965

回転窓/楽しむために能登半島へ

 8月に入りお盆休みが近づいてきた。山や海などへと出掛ける計画を立てている人も多かろう▼阪急交通社が「今、行ける能登」と銘打った能登半島への復興応援ツアーを始めた。「聖域の岬」として知られる奥能登最先端の珠洲岬などをめぐり、豊かな自然景観や食を楽しんでもらう▼「行けない能登も正直ある。でも輪島や珠洲で営業できる場所がある。奥能登全部が駄目なわけではない」。石川県の馳浩知事は先月30日の会見でこう訴えた。訪問を遠慮すべき被災地はあるが、楽しむための訪問を待ちわびている地域もある▼被災された方はもちろんのこと、行政や建設業界ら支援する側も復旧・復興の難しさを痛感しながら7カ月が過ぎた。目の前にある課題に早急に応えると同時に、後悔せずに済むような未来にしていくための取り組みを加速する必要がある▼防災学術連携体が同日開いた能登半島地震7カ月報告会で、和田章代表理事が「日本の建物や道路は造り方が弱すぎるのではないか」と改めて問題提起した。反省するだけでは責任は果たせない。行動が求められることを行政や建設業界らと発信していきたい。

source https://www.decn.co.jp/?p=165965

2024年8月1日木曜日

回転窓/小づちに願いを込めて

 日本の夏祭りは豊作を妨げる台風や害虫を追い払うのが目的とされ、その起源は紀元前にまでさかのぼる。多くの祭りで主役を務めるのが山車で、地方によって大きさや意匠も多種多様だ▼山車巡行で有名な祭りが、八坂神社(京都市東山区)の祇園祭。牛頭天王(ごずてんのう)と同一とされるスサノオノミコトを祭っている。昨夏には1席40万円もするプレミアム観覧席が話題を呼んだ▼同神社の祭礼は各地に存在し、埼玉県越生町の夏祭りもその一つ。町制100年の節目となる1989年からは6台の山車を巡行するのがメインイベントとなっている。毎年7月20日過ぎに開催され、普段は静かな町内も大勢の観光客でにぎわう▼人形や花など細かな装飾が施された山車の上で、キツネやひょっとこの面を着けた町民が祭りばやしに合わせて踊る。別の一団では打ち出の小づちを持った大黒天が舞う▼世界に目を転じるとウクライナ侵攻やガザ地区の紛争はいまだ終息の見通しが立っていない。願い事を口に出して振ればかなうという小づち。先日の祭りで何回も振られるのを見て願った。世界が平和でありますように。

source https://www.decn.co.jp/?p=165922

回転窓/小づちに願いを込めて

 日本の夏祭りは豊作を妨げる台風や害虫を追い払うのが目的とされ、その起源は紀元前にまでさかのぼる。多くの祭りで主役を務めるのが山車で、地方によって大きさや意匠も多種多様だ▼山車巡行で有名な祭りが、八坂神社(京都市東山区)の祇園祭。牛頭天王(ごずてんのう)と同一とされるスサノオノミコトを祭っている。昨夏には1席40万円もするプレミアム観覧席が話題を呼んだ▼同神社の祭礼は各地に存在し、埼玉県越生町の夏祭りもその一つ。町制100年の節目となる1989年からは6台の山車を巡行するのがメインイベントとなっている。毎年7月20日過ぎに開催され、普段は静かな町内も大勢の観光客でにぎわう▼人形や花など細かな装飾が施された山車の上で、キツネやひょっとこの面を着けた町民が祭りばやしに合わせて踊る。別の一団では打ち出の小づちを持った大黒天が舞う▼世界に目を転じるとウクライナ侵攻やガザ地区の紛争はいまだ終息の見通しが立っていない。願い事を口に出して振ればかなうという小づち。先日の祭りで何回も振られるのを見て願った。世界が平和でありますように。

source https://www.decn.co.jp/?p=165922