2024年8月23日金曜日

建築へ/関東整備局と東京・文京区、全国初の合同庁舎と認定こども園合築プロジェクト

 国土交通省関東地方整備局と東京・文京区が、国の合同庁舎と認定こども園などを合築する全国初のプロジェクトを進めている。国の特別史跡および特別名勝に指定されている小石川後楽園の隣接地で「小石川地方合同庁舎」(仮称)を建設中。敷地要件や建築制限など厳しい条件下で、諸官庁が入居する十分な広さを確保するとともに、認定こども園の設置基準を満たすため、設計にBIMなどを積極的に取り入れている。合築による公共建築が増える中、新たな“カタチ”が生まれる。
 小石川地方合同庁舎は、旧労働会館と後楽幼稚園の敷地を一体として整備する。敷地面積は約4700平方メートル。東側に小石川後楽園、西側に住宅地があり、オフィスビルや高層マンションなども林立している。そこで配置計画では敷地南端に東西を結ぶ緑道を設け、小石川後楽園から市街地へと延びる緑の連続性を考慮した。
 敷地内は東側に庁舎、西側に園庭を配置した。庁舎は22メートルという厳しい高さ制限と日影規制に対応するため、建物を5階建て(約21・5メートル)に抑え地下階(2階)を設定。床面積を確保するとともに、高層部をセットバックさせている。園庭は認定こども園として十分な広さを確保した。
 建物はS・SRC造地下2階地上5階建て延べ9437平方メートルの規模。平面・立面的にバランス良く座屈拘束ブレースを配置し、全体のブレース数を減らすことにつなげた。
 外観は5層の大きな「ひさし」が特徴だ。見上げた時、そり上がったように見えるよう緩やかな曲線を付けることで圧迫感を軽減する。1階は開放感のあるガラス面とし、緑道のある南側の低層部は柔らかな曲線形状を採用。小石川後楽園のある東側壁面には木立様のファサードを設け、奥行きのあるひさしとともに周辺の風景に溶け込ませる工夫を施した。隣接する集合住宅に近い北側には、エレベーターやトイレなどのコア機能を配置する。
 庁舎内部は低層階が区の施設、高層階が国の官署となる。低層階に入る認定こども園は1、2階の西側約半分を占め、庁舎側と動線を分けるよう西側に専用の入り口を設ける。認定こども園として必要な設備や機能を持たせるため、余裕を持った床面積と広い園庭を確保した。
 1階東側には文京区の清掃事務所を置く。時間外対応が必要となるため、1階東側の主エントランスとは別に南東側に専用の出入り口を設けるほか、プライバシーに配慮して更衣室や休憩室、浴室などを地下1階に配置した。地下2階には駐車場を設ける。
 国の官署は2階東側に自衛隊東京地方協力本部台東出張所、3、4階に東京国税局小石川税務署、5階に総務省東京行政評価事務所と関東整備局東京第一営繕事務所が入る計画。基本的に出入りの多い官署を低い階に配置している。
 施工面では狭い敷地を考慮して旧労働会館地下躯体の一部を土留めに残置し、仮設を合理化するなど多くの工夫を取り入れた。BIMを積極的に活用し、小石川後楽園からの景観や認定こども園の内外装の確認、合同庁舎として多岐にわたる関係者間の合意形成などに効果を発揮している。

 □建築概要□
 ▽建物名=小石川地方合同庁舎(仮称)
 ▽建設地=東京都文京区
 ▽発注者=国土交通省関東地方整備局営繕部
 ▽設計者=安井建築設計事務所
 ▽施工者=〈建築〉東急建設〈電気〉栗原工業〈機械〉川崎設備工業
 ▽構造・規模=S・SRC造地下2階地上5階建て延べ9437m2
 ▽工期=2022年11月~27年3月




from トップニュース – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=166420
via 日刊建設工業新聞

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