店の前などに置かれた〈たぬき〉と言えば、頭に編み笠、手には徳利(とっくり)と通帳、そして大きなおなかが定番であろう。有名なのが信楽焼のたぬき。街で見掛ける多くが信楽産のようだ▼現スタイルの原型となる置物は、明治期に陶芸家・藤原銕造が制作した。ある日竹林でたぬきたちが踊るのを見たのが始まりという。こうして誕生した信楽焼たぬきは、昭和天皇が信楽町(滋賀県甲賀市)を訪問されたことがきっかけで全国に広まる▼昔から人々の暮らしに身近な存在だったせいか、たぬきには人を化かすなどのイメージも伴う。だがたぬきの置物は商売繁盛や開運の縁起物として重宝されてきた▼では街にどれくらいの置物があるのか。村田哲郎氏らの共著『たぬきの本 里山から街角まで』(共和国)にSNS(インターネット交流サイト)を利用した調査結果が紹介されている。県別の最多は滋賀。信楽焼の産地であり納得がいく▼会社近くの店先に立ち、毎朝の通勤時にも会うたぬきとは30年以上の付き合いとなる。もうすぐ秋の彼岸。まだ暑さに耐える日々だが、今朝はどこか季節の変わり目を感じている表情に見えた。
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