天城山麓の静岡県上大見村(現伊豆市)を流れる川でヤマメ釣りをしていた老人が、ワサビ泥棒と遭遇する。消防団員らと協力して捕らえた泥棒はこう言い放つ。「ちかごろ、ワサビの値が高いから悪いんだ」▼井伏鱒二の短編集『川釣り』(1952年刊)に収められた「ワサビ盗人(ぬすびと)」の一節である。この地蔵堂地域で作るワサビは高価だったようで「ここの沢のワサビは一本につき時価五百円もします」と書かれている▼いつの時代も高価なものは狙われやすい。近年急増しているのは太陽光発電施設から銅線ケーブルが盗まれる事件。銅の価格高騰が背景にあり、1件の被害額が時価1000万円を超えることも珍しくない▼各地の設備で防犯カメラやフェンスを設置するなどの対策も講じられているが、窃盗被害は後を絶たない。銅線ケーブルの供給不足から、被害を受けた施設の早期復旧も難しい状況だという▼このままでは再生可能エネルギーの拡大に影響が出てしまうとも懸念されている。引き続き警戒を強化し、ハード・ソフト両面からの対策が必要だ。「値が高いから…」と、こんな開き直りが許されるはずもない。
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