江戸時代の僧侶で歌人の良寛には、落とし物を巡ってこんな話が伝わる。誰かに落とした金を拾うのは楽しいものだと聞き、それなら試そうと自ら金を地面に捨てては拾った▼ところが一向に楽しくない。すると何度も繰り返しているうちに、金が草むらにでも入ったのか、本当になくなってしまう。苦労してようやく見つけた時、楽しいものだと喜んだという▼この逸話は、小説家・小沼丹(1918~96年)の随筆「落とし物」にも登場する。小沼は二度ばかり財布を落とし、いずれも手元に戻ってきた経験をつづっている。一度は近所の人が拾い、中に入っていた名刺を手掛かりに、奥さんを通じて知らせてくれた▼ACジャパンが本年度、「3128万の思いやり」と題した全国キャンペーンを展開している。1年間で警察に届けられた落とし物は3000万点を超え、それら一つ一つに人の思いやりがある▼全国キャンペーンのCMは実際に届けた人たちの言葉を重ね、最後に「ありがとう。あなたのおかげで、この国は優しい」のナレーションが入る。この優しさを受け継いでいける、この国でありますように。
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from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=186391
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