2025年1月31日金曜日

回転窓/試される建築の力

 トランプ米大統領が20日に2期目の政権をスタートさせ、1週間で30を超える大統領令に署名した。その一つで公共建築に関するものがあると建築団体の賀詞交歓会で話題になった▼「美しい連邦公共建築」と題した大統領令で市民社会の美しい建築を、連邦政府の建築がリードしていくことを目的としている。素晴らしい内容に思えるが、「美しい建築」を米国の古典的伝統に沿った建築様式と規定。公共建築に画一的なスタイルを強いるものとなっている▼この大統領令は1期目の2020年12月に発令され、21年2月にバイデン氏が就任早々に廃止した。前回は米国建築家協会(AIA)が柔軟性に欠ける好みを押し付け、創造性を抑制するものだと批判。今回も反対表明が出るだろう▼米国第一主義の具体化により国内外で対立や分断が激化すると見られる。公共建築も一つの様式が望ましいとすることで、賛成反対が入り乱れる分断につながりかねない▼米国の哲学者マイケル・サンデル氏は公園や文化施設、図書館など人が集まる公共空間・建築が分断を乗り越えるのに必要と説く。社会問題の解決へ建築の力が試される。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171035 via 日刊建設工業...

国交省/自治体に下水管路の緊急点検要請、埼玉県八潮市の道路陥没受け

 国土交通省は29日、都道府県、政令市、市町村の下水道担当者に対し、下水道管路施設の緊急点検を行い、2月7日までに結果を提出するよう要請した。流域下水道管理者が管理している晴天時1日最大処理量30万立方メートル以上の大規模下水処理場に接続する口径2000ミリメートル以上の管路が対象。腐食などがないか目視などで点検し、異常を把握した場合は道路管理者と連携し補修などの措置を検討することも求めた。  28日に埼玉県八潮市の県道交差点で発生した道路陥没の事故を受けた措置。国交省は日本下水道協会の下水道維持管理指針実務編に基づいた緊急点検を要請した。  全国の下水道管理者には、2015年の下水道法改正で創設した維持修理基準を踏まえ適切な時期に点検し、補修をはじめ適切な施設管理を徹底することで下水道の破損からの道路陥没を未然に防止することも通知した。  事故は、道路の下約10メートルに埋設されている管径4・75メートルの流域下水道幹線の腐食による破損が原因と考えられている。1983年に整備された。土砂の崩落が続き、穴が拡大。転落したトラックの運転士の救助が30日も難航した。29日からはドローンや地中レーダーで陥没状況を確認している。復旧作業の検討も行われている。  国交省などは下水の量を減らすため、河川への緊急放流に踏み切った。県は周辺12市町の住民約120万人に風呂などの排水を含め、下水道の使用を控えるよう依頼している。 from...

奈良県/南部防災中核拠点基本計画、ゴルフ場跡に3段階で整備

 奈良県は30日、広域的な防災拠点の在り方などを議論する「災害応急対策(防災拠点)検討部会」(部会長・河田惠昭関西大学特別任命教授)を開き、五條市の県有地に整備する南部中核拠点の基本計画について中間報告を行った。南海トラフ地震などの大規模災害に備え、3段階で施設を整備する方針で、2025年度にヘリコプターの離着陸場などを先行整備する。同年度は造成計画の検討も始め、38年度中の全体供用を目指す。  中間報告案によると、南部中核拠点は同市黒駒町762ほかのゴルフ場跡地に整備する。敷地面積は約64ヘクタール。谷を挟んで東エリア(約45ヘクタール)と西エリア(約19ヘクタール)に分かれ、橋で両エリアを結ぶ。京奈和自動車道や国道24号など幹線道路にも近い。  東側は主要な施設を配置するコアゾーンとし、救助活動の拠点となるベースキャンプや駐車場の用地(7・7ヘクタール)を設けるほか、支援物資保管庫(1600平方メートル)、駐機場4カ所、格納庫(500平方メートル)、給油施設(800平方メートル)を整備する。全体の面積は約9・5ヘクタールを想定。西側のコース部は支援ゾーンに位置付け、隣接府県などの応援部隊を受け入れるベースキャンプや駐車場などに活用する。  防災効果を早期に発現するため、3段階に分けて整備する方針で、第1段階は旧ゴルフ場のグリーン部や管理用通路を活用し、ヘリコプターの離着陸場(約1400平方メートル)や通路(約180メートル)を整備。クラブハウス跡地や平らなコース部の一部(約1・1ヘクタール)はベースキャンプや駐車場にする。今後、実施設計を行い、25年度中に工事を終える予定。  第2段階ではコアゾーンの施設整備、第3段階では旧ゴルフ場の地形を活用して支援ゾーンを整備するとともに、外周道路などを設置し、防災機能をさらに強化させる。両ゾーンの造成に当たっては、切り土と盛り土の高さを抑えることで建設コストを削減し、各エリアごとに土工量のバランスを取る。  今後、コアゾーンの施設配置を検討し、造成範囲を精査。支援ゾーンの整備は精査を踏まえ、旧ゴルフ場のコース部を活用した造成を検討し、基本計画に盛り込む。順調にいけば29年度にコアゾーンの整備に着手する。 from...

千葉市、炎重工/雨水管点検にカメラ搭載水陸両用ドローン、作業効率化など実証実験

 千葉市は、カメラを搭載した水陸両用走行型ドローンを使った雨水管点検の実証実験を16日に行った。水上ドローンの開発などを手掛ける炎重工(岩手県滝沢市、古澤洋将代表取締役)と共同で実施。高水位や流量の多い場所を苦手とする従来の自走式カメラに代わり、ゼロ水位から高水位まで対応できる同社開発の水陸両用ドローンを使用。作業効率化やコスト面を含めた実現可能性などを検証した。  実証実験は、国土交通省の「令和6年度海の次世代モビリティの利活用に関する実証事業」に採択された、炎重工の「水陸両用ドローンを活用した沿岸部治水施設の点検実証」を、市内(美浜区若葉3)の地下雨水管を利用して実施するもの。水陸両用ドローンの開発が進めば、人が直接点検できない狭い管内や有毒ガスの発生場所でも、水位に関係なく劣化部位の早期発見が可能となる。  使用したドローン機体は、サイズが幅54センチ×奥行き55センチ×高さ43センチで、バッテリーを含む重量が17キロ。点検箇所を明るく照らすライトやフルHDカメラを搭載している。最高速度は水上が時速2キロ、陸上が時速1キロ。バッテリーは3時間持続するという。  カメラで撮影した動画は地上のモニターなどでリアルタイムで確認できる。地上との通信は、コンクリートで覆われた雨水管は電波が届かないため、モバイルワイファイ(Wi-Fi)を用いて無線ネットワークを構築しているという。  実験は市内を流れる花見川の護岸で行った。機体の水上、陸上走行テストや、マンホール内部の点検デモンストレーションを実施。搭載カメラで撮影した映像を、地上のモニターに映し出した。  実験でドローン操作を担当した炎重工の白坂智之氏によると、使用機体の開発期間は2024年10月から約2カ月。製品化はしないものの、「要望に合わせて搭載機能などをカスタマイズして提供していきたい。各自治体の雨水管点検作業に使ってもらえれば」と展望した。 from...

2025年1月30日木曜日

回転窓/楽しい日本、今年の新語・流行語の行方は

 職場近くのサラダ専門店がにぎわっている。好みの野菜を盛り付けられるサービスが楽しく、好評のよう。この時期は真冬が旬のカリフラワーやブロッコリーを選ぶ人が多いと聞いた▼店側の推しは、アンチエイジングにも効くスーパーフードとして知られるアサイーのトッピング。ちまたではアサイーブームが再燃しているらしく、昨年の「ユーキャン新語・流行語大賞」で液状などのアサイーを盛り付ける「アサイーボウル」がノミネートされた▼今年の注目キーワードを考えるには気が早いが、「楽しい日本」はその一つだろう。石破茂首相が年頭の記者会見や通常国会の施政方針演説に盛り込んだ▼肝いりの「地方創生」や「新時代のインフラ整備」に取り組むと表明。産業・生活拠点の再配置やGX投資の促進も建設需要を喚起するとみられ、市場の活性化に期待が高まる▼価値観が多様化する中、「楽しい」をどう捉えるかは人それぞれ。政治家は国民一人一人が「楽しい」を実感できるよう、世の中のブームにも目を向ける必要があろう。変化の激しい時代を生きる上で、何事も前向きに楽しむ心の余裕を持ちたい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170997 via 日刊建設工業...

JACIC/コブリス・プラス5月運用、建設副産物・発生土情報システム一体化

 日本建設情報総合センター(JACIC、山田邦博理事長)は、建設副産物や建設発生土の情報交換サービスを一体化した新システム「コブリス・プラス」を5月に運用開始する。既存の三つのシステムを使い分ける必要がなくなり、使い勝手が高まる。=1面参照  既存の「建設副産物情報交換システム(コブリス)」と「建設発生土情報交換システム」、さらに国土交通省が実施主体となりJACICが運営する「建設発生土の官民有効利用マッチングシステム」のサービスを一体化し、一つの利用契約・IDで利用できるようにする。公共工事の受発注者への支援を想定。操作性向上や作業効率化にも寄与する。  新システムでは受発注者間のデータの受け渡し経緯を見えるようにする。登録前のデータチェック機能も付与し、データ精度も向上させる。  官民マッチングも画面に従って入力するだけで簡単に工事を登録でき、絞り込み機能や地図画面で相手先工事を探しやすくなるという。 from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171005 via 日刊建設工業...

四国整備局/山鳥坂ダム本体建設1期工事、3月にWTO入札公告

 四国地方整備局は29日、「令和7-11年度山鳥坂ダム本体建設(第1期)工事」の一般競争入札(WTO対象)を3月頃に公告すると発表した。山鳥坂ダムは愛媛県大洲市を流れる1級河川肱川の支川である河辺川に計画している高さ約96メートル、堤頂長約279メートル、堤体積約53万立方メートルの重力式コンクリートダムで、本体初弾工事となる。工事発注規模は50億円以上としている。  工事概要は基礎掘削工約40万立方メートル、堤体コンクリート打設工約40万立方メートル、コンソリデーショングラウチング工約4000メートル、カーテングラウチング工約1万2000メートル、仮設備設置工一式。主要建設資材需要としてセメント約9万トン、鋼材(棒鋼)約2000トンを見込む。工期は55カ月。完全週休2日(土日祝日)の現場閉所とする。  入札参加資格は単体または2~3社JV。単体とJVの代表者は2009年度以降に堤高60メートル以上のコンクリートダム本体工事の施工実績が必要となる。配置予定技術者の専任開始時期は10月下旬。  24年度発注見通しで第4四半期に追加した。「令和6年度山鳥坂ダム本体設計外業務」は建設技術研究所が担当している。延長約682メートルの仮排水トンネルを掘削し呑口躯体と吐口水路を構築、呑口下流に仮締切を設けて河辺川を転流させる「令和5-7年度山鳥坂ダム仮排水トンネル工事」(工期は23年7月25日~25年6月30日)を鹿島が施工している。 from...

戸田建設/自律飛行ドローンによる切羽自動監視システム開発、切羽観察作業自動化

 戸田建設は山岳トンネル工事で自律飛行ドローンを活用した切羽自動監視システムを開発した。GNSS(全球測位衛星システム)が利用できない環境下でも自律飛行を可能とする「非SLAM型自律飛行ドローン」に切羽の検知とAIでの評価機能を付加。切羽観察の一連の作業を自動化した。施工中のトンネル工事で技術検証に成功し、切羽観察作業の自動化を実現した。これまで写真の撮影から帳票作成まで2時間程度かかっていた作業が17分に短縮されたという。  同システムは、Spiral(東京都葛飾区、石川知寛代表取締役兼最高経営責任者〈CEO〉)、GreenBee(同中央区、岩本定則代表取締役)との共同開発。▽切羽検知アプリ▽メンテナンスフリーの充電ポート▽AI切羽評価機能-で構成する。  同アプリは飛行計画、ライブビュー、切羽検知、画像検出の四つのモードを搭載し、障害物の回避や切羽の自動検知ができる自律飛行を可能とした。事前にセットした飛行計画を選択するだけで適切な飛行を指示し、ドローンのリアルタイムな飛行ルートやストリーミング動画を確認できる。対象とする切羽測点を入力するだけで、適正な位置で切羽写真を自動で撮影し、AIが評価に適切な写真を自動的に検出する。  戸田建設は山岳トンネル工事で飛行安定性から画像取得、AIの切羽評価まで一連のシステムの効果を検証した。結果、充電ポートから自律で離陸し、トンネル坑内を撮影しながら重機などの障害物を回避できることを確認。適切な位置で切羽を撮影後帰還し、充電ポートへの着陸まで完全自動で運用した。  さらに数百枚の切羽写真からAIが切羽監視に適切な写真を選定し、適切に評価を行えた。  今後、トンネル坑内での自律飛行で故障が発生した場合でも、システムが安全に動作し続けるようにする「フェールセーフ機能」の向上を行う。2025年度中に本格運用を開始する。 from...

2025年1月29日水曜日

海洋研究開発機構ら/高松市で南海トラフ地震調査研究プロジェクトの成果報告会開く

 ◇海陸統合3D地下構造モデル構築  文部科学省の科学技術試験研究委託事業として海洋研究開発機構が代表を務めるチームが進めてきた「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」の成果報告会が27日、高松市で開かれた=写真。2020年度から5年間の研究成果を第一線の研究者が紹介。成果を基に地域の防災にどう貢献していくか産学官のさまざまな立場から議論した。約170人が聴講した。  文科省地震調査研究推進本部のフラッグシップに位置付ける研究開発で、海洋研究開発機構以外のメンバーは防災科学技術研究所と東北大学、東京大学、産業技術総合研究所、京都大学、名古屋大学、香川大学、徳島大学。南海トラフ地震の活動を把握・予測し、社会を守る仕組みを作り、地域への情報発信による減災を目指し▽地震を知る(地殻活動情報創成研究)▽社会を守る(地震防災情報創成研究)▽発信する(創成情報発信研究)-の三つのサブ課題を設けた。  24年1月の能登半島地震では地震や津波による被害に加え、土砂災害、液状化など地震複合災害への対応の重要性が明らかになった。同8月の日向灘地震では南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が初めて発表され、情報発信の迅速化や発表が社会に与える影響が課題として浮き彫りとなった。  冒頭、文科省研究開発局地震火山防災研究課の黒川典俊氏は「最新の研究成果は日向灘地震の際に発生からわずか2時間後、気象庁の臨時会議に提示された資料の作成に活用されるなど政府の地震活動の評価にも貢献している」と研究の意義を強調した。  報告会は2部構成で行われた。第1部では研究代表の小平秀一海洋研究開発機構理事がサブ課題の全体概要を説明した上で、地殻活動情報創成研究でプロジェクトの基盤的情報となる「海陸統合3D地下構造モデル」を構築したことなどを紹介した。「開始時に計画していたほぼすべての研究テーマで予定通りの成果を上げられた」と報告。「南海トラフ地震防災研究はこれで終わりではない。研究のさらなる進展、地域や社会と連携し、防災対策をより一層進めるのが重要だ」と力を込めた。  豊口佳之四国地方整備局長は「能登半島が半島ゆえに復旧が困難だったということを考えると、四国は半島ではなく島であり、全国からの応援のルートも限られ厳しい環境にある。ハード、ソフト両面で関係機関と連携し万全の防災対策に取り組む。こうした研究が進んでいるのは心強い」と期待を示した。  池田豊人香川県知事のあいさつで始まった第2部では、金田義行香川大学特任教授をファシリテーターにパネルディスカッションが行われ、石川恵市香川県危機管理総局長や和泉雅春四国整備局統括防災官らが地殻活動やリスク評価、被災イメージ、人材育成をキーワードに活発に意見を交わした。  南海トラフ地震対策ではリアルタイムの観測データが重要となる。文科省は高知県沖から日向灘にかけ、南海トラフ海底地震津波観測網「N-net」を整備し、今年から本格運用を開始。南海トラフ沿いの地震を最大20秒、津波を最大20分程度早く直接検知できるようになる。緊急地震速報や津波情報の発表などへの活用が見込まれる。南海トラフ地震などの巨大地震の被害最少化や迅速な復旧・復興につながる研究プロジェクトを25年度から予算を増額して開始する予定だ。 from...

回転窓/10時間30分の意味

 異例ずくめの10時間30分だった。元タレントのトラブルを巡り、フジテレビが27日午後4時に開始した記者会見は日付をまたいで28日午前2時20分過ぎに終了した▼前回17日の会見は、動画撮影の禁止やクラブ加盟社に限定して開いたために世論の反感を呼ぶことに。それから一転し今回はメディアを制限せず191媒体・約450人が参加した▼結果的には非常に後味の悪さが残った会見と言えよう。前回に続き歯切れの悪い回答が目立ち、質問側も意図が不明確で私見を延々と述べたり、大声で叫んだりする記者も見受けられた▼最も印象的だったのは、フジテレビの社会部記者が一連の問題や自社の対応について「社員としてがくぜんとした」と訴えたシーン。予定していた番組をすべて休止、延期して会見を中継したことでも現場の最前線で奮闘する社員たちの危機感が伝わってくる▼こうした会見で、質問する側や視聴者らが納得する回答を引き出すのは難しいのかもしれないが、今後のありようが大きく問われたのは間違いない。メディアが起こした不祥事を、メディアがどう追及し報じていくのか。問題の根は深い。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170971 via 日刊建設工業...

全国建産連/都内で理事会・協議員会開く、組織内の一層連携確認

 全国建設産業団体連合会(全国建産連、石津健光会長)は28日、2024年度の理事会・協議員会合同会議を東京都千代田区のルポール麹町で開いた。24年度の事業経過を中間報告し、25年度の主要行事日程を決定。6月26日に東京都内で通常総会、9月25日に富山市内で会長会議、12月3日に東京都内で専門工事業全国会議を開く。  冒頭あいさつした石津会長は、政府・与党に安定的な公共事業量の確保などを引き続き要望していく必要性を強調。業種の違いを超えて地域の建設産業を支える企業が集合した組織特性を生かし「建設産業の再生に向け、各業種間が良きパートナーとして一層の連携、協調を図りながら希望と活力ある建設産業を築く」と決意を示した=写真。  来賓として自民党の佐藤信秋参院議員らが出席。2月にも決定する新しい公共工事設計労務単価について、佐藤氏は過去2年と合わせた3年間の合計で「20%引き上げないといけない」と改めて主張した。  佐藤氏は、技能者の賃金が働き方改革の影響で1割減ることを加味しつつ、実質的に1割の賃上げを実現するには2割上昇が必要と説明。過去2年は6%程度の上昇幅となったことから、新しい設計労務単価は最低でも7%は上昇させるべきとした。働き方改革の影響で企業の売り上げも減少するとして、予定価格の積算で経費の算入率などを引き上げることも訴えた。  会合では国土交通省不動産・建設経済局建設業課の渡邊哲至課長が「最近の建設業を巡る諸問題について」と題して講演を行った。 from...

鹿島/自社保養所でサーキュラーエコノミー実現、社有林材活用で新築・改修

 鹿島は、環境保全と経済活動が両立する持続可能な社会の実現に向け取り組んでいる。2024年秋に完成した自社保養所「KX-FOREST KARUIZAWA鹿島軽井沢泉の里保養所」(長野県軽井沢町)で社有林材と現地伐採木を活用した木造施設の新築、改修を実施。製造時に二酸化炭素(CO2)を吸収・固定する環境配慮型コンクリート「CO2-SUICOM」で人道橋も構築した。木材のサーキュラーエコノミー(循環経済)やCO2-SUICOMの適用拡大を図った。  同保養所でのサーキュラーエコノミー実現とCO2-SUICOMの適用拡大に向けて▽社有山林と現地伐採木を活用した木造宿泊施設の新築、既存木造施設の改修▽国内宿泊施設初の国際的な環境認証(SITES)の予備認証取得▽3Dプリンティングでの人道橋構築-を実施した。  鹿島はグループ全体で全国約5500ヘクタールの山林を100年以上保有しており、木造・木質建築の技術開発や木材サプライチェーン(供給網)構築に取り組んでいる。今回、社有林と建設地現地で伐採した樹木を建築資材や家具の材料として活用。自社施設に社有林を活用することで木材サプライチェーンの上流(山主)から下流(建設)までを一貫して行い、今後、伐採後に再び造林して育てる循環型の取り組みを進める。併せて既存木造建築物の効率的な改修による長寿命化も図った。  人道橋は、CO2-SUICOMを材料に3Dプリンティング技術で敷地内に長さ7メートル、幅1・86~1・92メートルの規模で構築した。鹿島が同技術を人が通行する構造物に適用したのは初めてで、自由度の高い造形製造や生産性などの有効性を確認した。  鹿島は今後、社有施設を活用した取り組みで得た知見を基に、技術の高度化と深度化を図る。同保養所は環境認証(SITES)で最高認証ランク「プラチナ」の予備認証を取得している。宿泊部門では国内初のことで、25年に本認証の取得を目指す。 from...

2025年1月28日火曜日

書評/『夢のつなげ方 建築から学ぶことIII』(佐野吉彦著)建築史家・和田菜穂子

 ◇前向きによそ見しながら綴る  「夢を見ること」は誰でもできる。「夢を叶えること」はその人自身の努力次第。運もあるかもしれない。では「夢をつなぐこと」とは?タイトルを見て、著者の伝えたいこと、意図は何なのか、考えながら読み進めた。  本書は安井建築設計事務所社長の佐野吉彦が綴(つづ)った論考を厳選してまとめたものである。それぞれの論考は見開き1ページでまとめられており、建築を専門としていない一般の人にとっても読みやすく、エッセー風に仕立てられている。  佐野は2005年から事務所のウェブサイトで週1回のペースで連載「建築から学ぶこと」を続けてきた。過去にそれらをまとめた書籍『建築から学ぶこと』『つなぐことで、何かが起こる』が出版されているが、3冊目に当たる本書はこの12年間に執筆した論考を四つの章に分類し、再編集している。  1章「建築にある使命」は、建築家として、組織のリーダーとしての想いを綴ったものを中心に取り上げている。2章「想像力を喚起するために」は、地域のこと、まちのことなど建築を取り巻く環境や文化について述べている。3章「課題の中に未来がある」は、自然災害、環境問題、コロナウイルスのまん延、働き方改革など、現代社会が直面する諸問題に照射し、未来を語っている。4章「新しいページをめくる」は、BIMやデジタル化の導入など世界の最新動向を見据えた視点で次世代のあり方を考察している。そして章と章の間に「夢のつなげ方」と題した論考が四つ収録されている。  安井建築設計事務所は創業者安井武雄から女婿・佐野正一、そして佐野吉彦へとバトンをつなげてきた。24年は創業100周年に当たり、過去と現在、そしてこれからの未来へつなげることに対して、より強く意識した年だったであろう。  本書によると、どの時代のリーダーも共通して「前例のないこと」に果敢に挑み続けてきた。それぞれの時代によって「前例のないこと」の内容は異なり、建築家の性格等によってそれに取り組む姿勢やプロセスも異なる。佐野吉彦は特に「何かと何かをつなげること」にたけていた。それは「人と人」だったり、「過去と現在のデザイン」だったり、時には具体的なモノではなく「目に見えないもの」だったりする。今回の「夢をつなぐこと」もそうだ。  それでは「夢」とは一体何を指すのだろうか?おそらく、安井武雄、佐野正一、佐野吉彦らが夢みて挑戦してきたものは「建築の持つ力を最大限に発揮させること」なのではないだろうか。いずれの建築家も建築は社会を変える力を持っていると信じて、「前例のないこと」に挑んできた。つまり各リーダーは共通して「建築を信じる心」を持ち合わせているのである。  建築によって人やまちが元気になり、そうすることで社会全体が豊かになる。人が安心して暮らしていくための明るい未来の実現にはどうしたらよいのだろうか?いま建築家が果たすべき使命や役割は何だろうか?著者はそうした「問い」に対する「答え」を常に模索し続けてきた。そして建築分野だけでなくその周縁にある社会の動向を好奇心旺盛に「前向きによそ見」しながら、日々の関心事として「建築から学ぶこと」に論じてきた。  そして会社が創業100周年を迎えたいま、自分が受け継いできた先人たちの願いや夢を整理し、次世代につなぐためのバトンとして本書をまとめたのではないだろうか。夢は叶えたら終わりであるが、つなぐことで続いていく。本書は著者・佐野吉彦の夢や願いを託した1冊であり、建築家としての「問い」はこれからも続いていく。 from...

大阪・関西万博/経産省が日本館を公開、CLT560枚使用・2月末に完成

 経済産業省は26日、大阪・関西万博に政府が出展する「日本館」を報道陣に初めて公開した。国産杉で作られたCLT(直交集成板)と鉄骨を組み合わせた複合構造が特徴で、円を描くように560枚のCLTを使った。会場で発生する生ごみを使って浄水や発電を行うプラントも設置され、循環型社会の実現に向けた最新のバイオ技術などを展示する。内装や展示工事は順調に進んでおり、2月末に完成する予定だ。建物の基本・実施設計は日建設計、施工は清水建設が担当。  日本館は2階建てで1周が約250メートル、直径が約80メートル。敷地面積は約1万3000平方メートルと会場内で最大のパビリオン。展示と建築を融合し、日本館のテーマとなる「いのちと、いのちの、あいだに」を効果的に表現する。CLTは閉幕後に再利用する予定。  館内は三つのエリアで構成し、同日はプラントエリアとファームエリアを公開した。プラントエリアに設置したバイオガスプラントは微生物の力を使って生ごみを水やバイオガスなどに分解する設備で、水は建物中央の水盤(直径19メートル)にため、バイオガスはプラントの電力に使用する。プラント設備工事はカナデビアが担当した。発酵槽展示コーナーでは微生物の発酵の働きを約700枚の発光パネルで表現する。  ファームエリアは藻類を活用したバイオテクノロジーを紹介。人気キャラクター「ハローキティ」がワカメなど32種類の藻類にふんしたコーナーや、藻類を育てる総延長1457メートルのチューブをつり下げ、光合成で酸素やでんぷんなどを生み出す装置を設置。世界最大級の重さ12・7キロの火星隕石(いんせき)「火星の石」も展示する。展示制作は丹青社・乃村工芸社JVが担当。  日本館の黒田紀幸館長は「地球環境問題を自分事として捉え、循環型社会の実現に向けて、具体的なアクションを取っていただくことを期待している」と話した。 from...

回転窓/アメリカン・ドリームの道

 日米の野球界で長年にわたり第一線で活躍し、走攻守で数々の記録を打ち立ててきたイチローさんがアジア勢初の米野球殿堂入りを果たした▼大リーグに挑戦する日本人選手は、それまで投手やホームランが期待される強打者が中心というイメージが強かった。アベレージヒッターの野手として海を渡り、新たな道を切り開いてきた姿に魅了されたファンも多かろう▼選手時代から日々の生活を含めてストイックな人で知られるイチローさん。引退後もトレーニングを欠かさず、先日の記者会見で殿堂ユニホームを着る際に見せた現役時代と変わらぬ体形には驚かされた▼多くのメディアがその偉業をたたえ、イチローさんのコメントを報じる中、メンタル面の鍛え方についても言及。楽な方に行くとメンタルは弱くなり、体も怠けて駄目になる。いかに厳しい道を選ぶことができるか。発した言葉には自ら実践し、体現してきた重みを感じる▼チャンスを生かし、勤勉と努力によって成功を勝ち取るアメリカン・ドリーム。自由と平等の国で夢を追い求める人にとって、先人が歩いてきた道と残した言葉は大きな励みとなろう。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170921 via 日刊建設工業...

横浜市、戸田建設ら5者/洋上風力グリーン電力供給検討で覚書

 横浜市と戸田建設、東京電力パワーグリッド(東電PG)、海上パワーグリッド、三菱UFJ銀行の5者は、横浜港で洋上風力発電を活用するための検討に着手する。24日に都内で「洋上風力発電によるグリーン電力を横浜市臨海部を起点として供給する方法の検討に関する覚書」を交わした。供給方法と並行して洋上風力発電事業に関する産業の地域共創についても検討する。  横浜市は臨海部の電力需要の増加が見込まれることに加え、脱炭素化の進展に伴う電力需給バランスの変動予想などから、新たな電力供給拠点の確立を目指す。戸田建設は洋上風力発電によるウインドファームの建設を検討する。東電PGは横浜市臨海部の電力供給バランスの安定化を図る。海上パワーグリッドは電気運搬船利活用の検討を促進する。三菱UFJ銀行は同事業の資金調達手法などを検討する。  戸田建設は浮体式洋上風力発電施設を国内で初めて実用化した知見を生かし、電気運搬船を活用した「浮体式洋上風力ウインドファーム」の建設を目指す。洋上ウインドファームは風力発電施設、運転監視施設、送電線、海底送電ケーブル、港湾施設、洋上変電所などで構成するイメージ。  締結式には横浜市の平原敏英副市長、戸田建設の中井智巳執行役員GX統括部長、東電PGの佐藤育子常務執行役員、海上パワーグリッドの伊藤正裕代表取締役会長、三菱UFJ銀行の吉田泰介東京公務部長が出席し、覚書を交わした。 from...

五洋建設/シンガポール造船会社と大型基礎施工船建造契約を締結

 五洋建設は27日、洋上風力建設に活用する大型基礎施工船(HLV)の建造契約をシンガポールの造船所Seatriumと締結した。15~20メガワットクラスの風車の大型基礎(モノパイル)を安全で効率的に施工するため、5000トンつり全旋回式クレーンを搭載。自航式で世界最大級の新しいコンセプトのHLVとなる。船尾をU字型に切り欠いた形にし、船体の長手方向に置かれたモノパイルを5000トンつりクレーンとグリッパー付きの装置で建て起こし、そのまま打設できる。  HLVは20メガワットの風車建設を想定し、重量3000トンクラスのモノパイルに対応できる。モノパイルの打設位置が船尾で、波や流れを受けても動揺を小さくできる。船体の自動船位保持装置(DPS2)が装備されているため、気象海象条件の厳しい外洋でも、モノパイルを安全で効率的に施工できる。  カーボンニュートラルへの対応として、バッテリー蓄電システムを搭載。大きな改造をすることなく、燃料をメタノールに切り替え可能な「メタノールレディー仕様」にもなっている。  船体設計は大型起重機の設計に豊富な実績を持つUIstein Design&Solution(オランダ)、デッキ装置はオフショアクレーンのトップメーカーであるHuisman Equipment(同)が担う。船体建造はオフショア作業船の建造実績が豊富な世界有数のSeatrium Group(シンガポール)が担当する。2028年5月に完成、28年秋からの稼働を予定する。  五洋建設はHLVに加え、ケーブル敷設船(CLV)も整備中。将来の排他的経済水域(EEZ)での洋上風力建設を見据え、着床式だけでなく浮体式洋上風力、さらには海底直流送電の電力ケーブルの敷設工事で稼働が期待できる。CLVは、PaxOcean Group(シンガポール)と造船契約を締結し建造する。  五洋建設と芙蓉総合リースは基本協定書を締結。建造中の役割分担を明確にし、完成後の円滑で適切な管理、運営などを行う。完成後、五洋建設が設立予定の子会社と芙蓉総合リースが共同所有(各保有比率50%)する。 from...

2025年1月27日月曜日

近畿整備局/大戸川ダム建設事業が始動、長年の停滞越え着工へ

 近畿地方整備局は大戸川ダム建設に向けた準備工事として、2025年度に付け替え道路と工事用道路の工事に着手する。25年度当初予算に関連工事費を要望しており、認められれば入札公告から契約までを速やかに進める計画だ。長年にわたり停滞していた事業がいよいよ動き出す。  22日に地質調査中の現場を報道機関に公開。大戸川ダム工事事務所の宮川仁所長が事業概要と今後のスケジュールを説明した。  大戸川ダムは大津市上田上牧町(左岸)、上田上桐生町(右岸)に建設する高さ67・5メートル、貯水容量約2210万立方メートルの重力式コンクリートダム。洪水調節専用の流水型ダムとして、平常時は自然な河川の流れを保ちながら、大雨時に水を一時的にためることで下流域の洪水被害の軽減を目指す。総事業費は約1163億円。  ダム本体の実施設計はニュージェックで作成中。納期は3月。本体工事は26年度後半に着手し、転流工、本体掘削、堤体工、閉塞(へいそく)工などを順次施工し、33年度の完成を目指す。  付け替え道路は県道栗東信楽線で、大津信楽線との合流部の北側(延長約2・3キロ)から工事に着手する。ダム貯水池に影響を受けない高所へ移設する計画で、補償工事として既存道路を付け替える。工事用道路の整備も並行し、ダム本体工事への準備工事となる。  大戸川ダムは1968年に計画が始まったものの、一時事業が凍結されるなど停滞を余儀なくされた。しかし、気候変動に伴う豪雨災害の増加などを背景に治水対策の必要性が再認識され、21年に淀川水系河川整備計画に位置付けられ、事業再開が決まった。完成すれば淀川水系全体の治水能力も向上し、琵琶湖や天ケ瀬ダムと連携し、浸水被害を大幅に軽減する効果がある。  宮川所長は「治水事業は『国家100年の計』。紆余(うよ)曲折があったが国民の豊かな暮らしを守るためには必要な整備だと思う。移転していただいた集落の方々がかつてあった地域の文化を復元し、地域振興につなげるお手伝いもしていきたい」とした。 from...

回転窓/米有力紙が選んだ旅先

 「越中富山の薬売り」で知られる薬都の富山には、薬瓶の製造から生まれたガラス文化が継承されている▼伝統も踏まえ富山の新たな街づくりのシンボルとして、2015年に市立図書館などを併設する富山市ガラス美術館(TOYAMAキラリ)がオープン。隈研吾氏を擁する共同体が設計した建物で、美しいガラスアートのような外観が目を引き、内部には地元産の木材を使った開放的でぬくもりのある空間が広がる▼米ニューヨーク・タイムズ紙は「2025年に行くべき52カ所」を7日発表し、日本から富山市が大阪市とともに選ばれた。富山は混雑を避けながら文化的な感動と美食が楽しめ、そして能登半島地震からの復興で観光客誘致に積極的なことなどが評価された▼記事では伝統行事「おわら風の盆」や地元グルメなどが富山の魅力に挙げられ、ガラス美術館は〈木と光が織り成す大聖堂〉と評されている。外国メディアが選んだ世界の旅先で、日本の美術館建築が紹介されたのは誇らしい▼ガラス美術館は8月に開館10周年を迎える。米有力紙の記事は大きな反響を呼び、これからも多くの訪れる人を魅了するだろう。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170900 via 日刊建設工業...

凜/地理空間情報推進協会専務理事・和具麻里子さん、初心を忘れず走り続けたい

 後悔しないよう、全力で走り続けてきた。やりたいことを見つけたら、すぐに行動に移す。転職をしたりドローン関係団体を設立したりと、常に新しいフィールドに踏み出して自分の可能性を切り開いてきた。大学在学中からの夢がある。「なにか一つ、事業を興してみたい」。  大学院修了後、大手建設コンサルタント会社に3年間勤めた。育児休暇を終えたタイミングで心機一転し、転職した。仕事に没頭したい一方で、育児との両立に悩み、「時間管理に面を食らった」と振り返る。休むこともできたが、大手建設コンサル時代、多くの男性管理職がいる中で、たった一人で戦う女性管理職の姿を見てきたため、「ここで引いてはいけない」という怖さがあった。  時間とともに見え方が変わってきた。「助けてくれる人がたくさんいること」に気付き、モチベーションを取り戻した後は、社会に貢献したい思いから地理空間情報推進協会を設立。専務理事としてUAV(無人航空機)操縦士の民間資格の発行などの活動をしている。協会の登録操縦士には学生もいる。「一つでも多くの経験を渡したい。その子の人生のスパイスになれば」と期待を込める。  やりたいことはたくさんあるが「事業を立ち上げたい」という初心を忘れない。今は家庭を大切にしつつ、準備を進めていくつもりだ。その時が来たら、すぐにまた走り出せるように。  (わぐ・まりこ) from...

長谷工コーポレーション/熊野聡次期社長が会見、建設・不動産・管理運営で競争力強化

 長谷工コーポレーションの経営トップが4月1日付で交代する。次期社長に就任する熊野聡代表取締役兼専務執行役員が23日、東京都港区の本社で会見し、社長就任後の方針などを明らかにした。「建設、不動産、管理運営の三つの輪で競争力を付け、地方都市や海外にもフィールドを広げる」と表明し「継続と変革で会社を進化させていく」と力を込めた。=3面に関連記事  同社の社長交代は2020年4月以来5年ぶり。営業畑が長い熊野氏は人事など管理部門のほか、住宅の分譲や管理といったサービス関連事業など幅広く経験してきた。熊野氏は「これまで資本の充実に取り組み、これからは積み上がった資本をどう生かすかが課題だ」と認識し、カネ・モノ・人・情報といった経営資源によって収益向上を目指す。  国内のマンション建設市場については「縮小気味」と展望しつつ、さらなる成長に向けて「非住宅部門のほか、住宅と親和性のある賃貸住宅、ホテル、高齢者住宅などの領域拡大、受注量の確保に努める」との考えを示した。  25年度には新中期経営計画が始まる。2年後の創業90周年、その先の100周年に向け、「住まいと暮らしのリーディングカンパニー」として企業価値を高めると意気込みを語った。  25年3月期の連結経常利益800億円を見込み、現中期計画期間の5年間累計で連結経常利益4000億円を達成する見通しだ。  同席した池上一夫社長は「24年の秋ごろから(現中計の)目標数字の達成が見え、次の世代へのバトンタッチを考えた」と社長交代の経緯を説明。熊野氏を「幅広い業務の知識があり、バランス感覚が良い」と評価し「技術系社員からの信頼もあり、次の社長には一番適している人材だ」と述べた。 from...

国交省/重層下請構造の調査着手、賃金しわ寄せなど実態把握し対応検討

 国土交通省は、建設業界の重層下請構造の実態を把握する新たな調査に着手する。現場単位で元請と下請にアンケートやヒアリングを実施。重層化に起因する非効率や、技能者の賃金へのしわ寄せなどの不利益が発生していないかどうか確認する。担い手不足が続く業界の将来を見据え、持続可能で適正な請負構造に転換するための制度的な対応を検討する。地方自治体発注工事で導入事例があり、一部のゼネコンも自発的に取り組む下請階層の「次数制限」を対象に、実際の運用で得られた効果や課題も検証する見込み。  建設業団体に協力を依頼し、会員各社が元請として手掛ける現場からサンプルを抽出し施工体制を確認する。主な調査項目は▽土木や建築など各分野の請負次数▽各許可業種の業務実態▽各次数の業者同士の役割分担▽技能者の賃金や労働時間への影響-など。調査項目によっては下請にも回答を求める。関連費用は2024年度補正予算で確保しており、調査業務の委託先を近く決める。  国交省は過去の同種調査で、重層化の要因を▽専属型(建設投資の減少などによる直用技能者の外注化)▽繁忙期型(繁忙期の労務確保のための下請発注)▽代理店型(資材調達を行う商社などの介在)-などに類型化。うち代理店型では実質的な施工を伴わない一括下請負(丸投げ)の禁止を徹底している。繁閑の波がなく安定的な仕事量を確保できる環境が整えば、直用化や社員化が進むとの見方もある。  今回の実態調査では専門性の高さなどから重層化が許容されるケースも明らかにしながら、適正な請負構造に誘導していく方向を視野に入れる。次数制限などの先行事例に加え、重層化が慣習となっていない海外事例の調査も検討。中央建設業審議会(中建審)の議論で中長期的な検討課題に挙がった「重層下請構造の実態を踏まえた建設業許可の合理化」にどう対応すべきか方向性も探る。 from...

大成建設/工事進捗確認システムを本格運用、AIが施工状況や資機材位置を自動図面化

 大成建設は360度カメラで撮影した工事現場の映像をAIで解析し、施工の進行状況や資機材の位置を自動で図面化する「工事進捗確認システム」を今月から本格運用する。現地の確認を行う作業員の業務負担を減らし、施工管理の効率を高める。階層間の移動に時間がかかる中高層建築物の建築現場を中心に導入し、生産性向上につなげる。  作業員が現場を巡回する際に360度カメラで撮影した映像を画像認識AIが分析し、図面を作成する。スマートフォンなどの情報端末は不要。各フロアの柱や壁に貼り付けた2次元コードマーカーをAIが読み取り、階数や現在位置を正確に認識できる仕組みになっている。  壁や天井、床など内装工事の進捗状況を判断し、色分けして表示する機能を設けた。現場を見なくても工事の状況を把握でき、報告書の作成にも活用できる。コンクリート床の水濡れといった異常も検出し、即座に対応できるようにした。撮影時の歩行ルートはシステムに記録し、図面で位置を指定すると360度写真で現場を確認できる。  足場板や平台車など、現場で使用機会の多い24種類の資機材を判別する機能も備える。検出した資機材はリスト形式にまとめ、名前を選択すると所在位置を図面上で確認できる。高層ビルの建設現場では資機材の探索に時間がかかる課題があった。迅速に所在を確認できるようにし、余分な搬入や残置を減らす。  本格運用を前に、全国30カ所以上の現場で試行し効果を検証した。1人の作業員が現場確認にかける時間を1日当たり1時間以上減らせる効果を確認した。大成建設の担当者は「将来的には、ドローンやロボットが現場を自動的に巡回し、結果を上げてくれる運用を目指していきたい」と話す。  AIの解析結果は、同社のデジタル情報標準基盤「T-BasisX」でも閲覧できる。現場の状況を可視化するプラットフォームとして運用。今後は人やモノの所在をリアルタイムで把握したり、作業員のバイタルデータや熱中症指数といった環境データを可視化したりする機能を実装していく方針だ。 from...

丸源ビルシリーズ/銀座エリア(東京都中央区)で建替が次々始動

 東京・中央区の銀座エリアで、「丸源ビル」シリーズの建て替えが次々に始動している。エス・ケー・アイ(東京都港区)が「丸源53ビル」の解体に2024年10月着手したのを皮切りに、同12月には東京都港区内の個人が「同14ビル」、霞ケ関キャピタルも「同54ビル」の解体に着手した。銀座エリアには八つの物件があり、残る物件でも今後建て替えが進展する可能性がある。  丸源ビルは実業家の川本源司郎氏が1960~80年代に開発した。多くは飲食ビルで、バブル期には多くのテナントが入居してにぎわった。川本氏は24年2月に亡くなり、所有物件が不動産会社などの手に渡っている。銀座には八つの物件がある。  エス・ケー・アイが解体している丸源53ビルの所在地は銀座7の5の14。JR有楽町駅と同新橋駅の間に広がる繁華街の中にある。建物はSRC造9階建て延べ2001平方メートルの規模。木谷工業(千葉県流山市)の施工で7月末の解体完了を目指す。  同14ビルの所在地は銀座7の3の9。外堀通りに面している。建物はSRC造地下1階地上10階建て延べ1450平方メートルの規模で、1974年に竣工した。サン・アライズ(東京都中央区、向山健一代表取締役)の施工で9月末の解体完了を目指す。  同54ビルも外堀通りに面し、同14ビルよりも新橋駅側にある。建物はRC造地下2階地上8階建て延べ1934平方メートルの規模。オクダ大阪(大阪市西区)の施工で6月末の解体完了を予定する。  銀座エリアには他にも▽同15ビル▽同21ビル▽同24ビル▽同25ビル▽同31ビル-の5棟がある。川本氏が保有していた同シリーズのビルは全国に61棟。シリーズ外も合わせると約70棟ある。港区赤坂、新宿区歌舞伎町各エリアや、静岡県熱海市、福岡市博多区の中洲エリア、北九州市小倉北区などに多い。 from...

2025年1月24日金曜日

回転窓/うなぎと梅の地のまちづくり

 ラムサール条約の登録湿地としても名高い福井県の三方五湖。若狭町と美浜町にある塩分の異なった五つの湖の呼称で、そこで捕れる天然ウナギは地域内外から「口細青うなぎ」として珍重されてきた▼若狭町は果肉が多いながら種が小さい「福井梅」の産地でもある。湖畔には、うな重に梅干しを添える店が少なくない。その食べ合わせについて、ある店主の話では梅干しから胃酸の分泌が促され、脂分の消化を助けてくれるのだという▼若狭町は官民連携による道の駅「三方五湖」周辺の再編整備を検討中。国土交通省の官民連携支援事業に採択され、民間活力の導入可能性調査を行っている▼同町は異なる施設の管理者がまとまる事業スキームなどを検討したい考え。大学とも調査研究に熱心に取り組んでおり、16日にはPPPのノウハウが豊富な岩手県紫波町の担当者と意見を交わした▼江戸時代、若狭のうなぎはいけすを街道沿いに置き、当時としては画期的な手法で京の都に送られた。北陸新幹線敦賀駅までの延伸開業からまもなく1年。多方面からさまざまなアイデアを呼び込み、地域を潤す新たな一手を期待したい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170828 via 日刊建設工業...

長谷工コーポレーション/社長に熊野聡代表取締役専務執行役員昇格、4月1日就任

 長谷工コーポレーションは23日に開いた取締役会で、熊野聡代表取締役兼専務執行役員が4月1日付で社長に昇格する人事を決めた。新たな経営体制の下、持続的な企業価値の向上に向けて、次期中期経営計画を強力に推進するため社長を交代する。池上一夫社長は同日付で代表取締役兼副会長執行役員に就く。  熊野 聡氏(くまの・さとし)1985年神戸大学経済学部経済学科卒、長谷川工務店(現長谷工コーポレーション)入社。2013年執行役員、20年4月常務執行役員、同6月取締役兼常務執行役員、23年同兼専務執行役員、24年代表取締役兼専務執行役員。奈良県出身、63歳。 from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170822 via 日刊建設工業...

国交省/道路法・港湾法の改正案を通常国会提出へ、能登教訓踏まえ新制度創出

 国土交通省は24日召集の第217回通常国会に道路法と港湾法の改正案を提出する。能登半島地震の教訓を受け止め、災害復旧を円滑化するための権限代行や特例制度を創設するほか、環境分野でも新制度を設ける。道路法改正案では道路啓開計画を法定化するほか、地方自治体をまたぐ連携協力道路の規定を新設。港湾分野では、官民の協働防護を港湾法に位置付け、災害時の復旧工事に第三者の土石を使用できる規定をつくる。両法案は2月上旬に国会へ提出する。=2面に関連記事  道路法改正案は▽道路啓開計画(仮称)の法定化▽道路駐車場の占用許可基準緩和▽連携協力道路(仮称)の管理特例創設▽道路脱炭素化推進計画(仮称)の策定-など。このうち道路啓開計画は、道路法に改めて位置付けることで地域ごとの内容を統一するとともに、啓開計画の指定路線で国が権限代行により復旧工事する際、道路管理者の承認手続きを簡略化する。  連携協力道路は、市町村をまたぐ道路を両自治体が協力して一体的に維持管理する仕組み。環境分野では国が今後策定する道路脱炭素基本方針を参考に、各道路管理者が独自の道路脱炭素化計画を策定できるようにする。道路駐車場の占用許可基準緩和では、災害時に道の駅などにコンテナトイレなどの設置を想定し、設置時の手続きを円滑化する。  港湾法改正案では気候変動による高潮の激甚化に備えるための、官民が協力して協働防護計画を策定するよう各港湾管理者に促す。計画に位置付けられた改良工事では、個別工事での港湾管理者の許可が不要になる。  このほか交通網が寸断された能登半島地震の教訓から、大規模災害時に第三者の土砂や石を復旧に活用できる仕組みを創設。復旧後の補償規定を盛り込む。老朽化した港湾施設の改良工事を、港湾管理者からの要請に応じて国が権限代行する仕組みも新たに設ける。  再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電が増加し、複数の事業者による拠点港湾の利用期間が重複することが課題となっていた。このため港湾法で事業者間の利用調整制度を新たに規定する。 from...

川崎市/京急大師線連立1期第2区間、26年度末にも着工へ事業費は990億円

 川崎市は23日、京急大師線連続立体交差事業の1期第2区間について、2026年度末にも着工する見通しであることを明らかにした。完成は38年度(工期13年間)を予定し、事業費は約990億円を見込む。市は引き続き京浜急行電鉄と事業費と工期の縮減に向けた協議を行う。25、26年度に事業認可変更手続きや詳細設計を進め、26年度下旬の都市計画変更を目指す。  同日の市議会まちづくり委員会で報告した。1期第2区間は「鈴木町~東門前駅間」(約1・2キロ)。鈴木町駅~川崎大師駅先までの約0・5キロを仮線工法、そこから東門前駅までの約0・7キロを現線直下工法で施工する計画。1期第1区間は24年度中に完成予定。  同事業については23年2月、市公共事業評価審査委員会の具申を受けて「1期区間全体の事業継続」を決めたが、第2区間の工事着手時期などは検討を続けていた。同事業による便益は約2020億円と試算している。  事業費・工期の縮減対策として第1区間で採用した現場打ちボックスカルバートに代わり、部分プレキャストボックスカルバートを採用するなど新技術を活用する。工事は道路を全面通行止めにした「夜間施工」を予定しているが、現線の跡地を使い車両の通行を確保することにより「昼間施工」を実現し、事業費と工期の縮減を図る。  同事業は川崎市が事業主体。市が京急電鉄と協定を締結して行う鉄道委託工事。受託者の京急電鉄が工事の発注や工事監理を担当している。1期第2区間では6カ所の踏切を除却する計画。第2区間は当初20年度の着工を予定していたが、市が大規模投資的事業を見直し、工事着手を見送っていた。鉄道本線の用地取得は終えており、仮線工法の採用による事業費縮減や、第1区間の工事費増額要因対策なども反映している。 from...

2025年1月23日木曜日

回転窓/開幕まで3カ月を切る

 大阪・関西万博の開幕まで3カ月を切った。会場の最寄り駅となる新駅の夢洲駅が19日に開業し、参加国や企業・団体のパビリオンなどの建設も急ピッチに進んでいるようだ▼万博会場では世界最大級の木造建築物「大屋根リング」を中心に、独創的なデザインのパビリオンや休憩所、トイレなどが姿を現し始めている。どのような建築空間が広がっているのか楽しみだが、やはり万博の魅力は展示されるモノや体験できるコトだろう▼日本館でお披露目する世界最大級の「火星の石」は、2000年に南極で日本の観測隊が発見したもの。火星に水があったことを示す粘土鉱物が含まれ、科学的に重要な資料を初めて一般公開する▼石川県輪島市の伝統工芸、輪島塗の地球儀も出展され、直径約1メートル、重さ215キロとその大きさに驚く。日本の伝統文化を世界に発信するとともに、地震と豪雨の爪痕が残る能登半島の復旧・復興を後押しすることになろう▼前売り入場券の販売枚数は目標の半分程度にとどまるが、これから展示内容が詳報されれば機運も高まるはず。知的好奇心を刺激する国際イベントの開催を心待ちにしたい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170788 via 日刊建設工業...

中部整備局/菊川水系黒沢川流域の特定都市河川指定へ手続き、関係機関へ意見聴取

 中部地方整備局は、静岡県の菊川水系黒沢川流域の特定都市河川の指定に向けた手続きを開始した。直轄管理河川では県内で初。県や菊川市への意見聴取を経て3月に特定都市河川・流域に指定する予定。その後、流域水害対策協議会(仮称)を設置し、流域水害対策計画の策定を目指す。  菊川市内を流れる菊川水系黒沢川の河川延長は1・3キロ(大臣管理区間0・45キロ、県管理区間0・85キロ)。流域面積は3・3平方キロメートル。黒沢川流域は、菊川支川の牛淵川と丹野川の堤防に囲まれ、雨が流域内にとどまりやすく内水氾濫が発生しやすい。2019年東日本台風(台風19号)では、床上浸水22戸、床下浸水59戸の被害が発生した。  国は20年から、合流先の牛淵川の河道掘削を実施。市は24年1月に「菊川市防災対策強靱化事業基本計画」を策定し、校庭貯留や雨水貯留施設の建設などを行っている。  これらの取り組みに加え、黒沢川流域の地形的な特徴や近年の気候変動の影響による水害の激甚化・頻発化に対応するため、特定都市河川の指定を目指す。流域のあらゆる関係者が連携して対策を進める「流域治水」を推進。想定される浸水被害に対し、おおむね20~30年間で実施する取り組みを盛り込んだ流域水害対策計画を策定する。 from 行政・団体...

愛媛FC/新スタジアム整備へ検討着手、サポーターと意見交換

 松山市に本拠地を置くサッカーJ2・愛媛FCは、新スタジアムの整備に向けた検討に着手した。クラブ側がサポーターから事前に集めた候補地アイデアでは、松山市の城山公園内が最も多く、再開発が進むJR松山駅周辺やエミフルMASAKI(愛媛県松前町)周辺などの意見もあった。  サポーター60人と19日に情報交換会を開き、村上茉利江取締役が表明した。「話が進んでいるわけではない」としつつも、「勇気を持って話すことで建設の確率が上がる」と話した。資金調達の手法として観戦チケットへの上乗せやふるさと納税、クラウドファンディングなどの案を示した。  現在のホームグラウンドは愛媛県総合運動公園の陸上競技場(ニンジニアスタジアム)。敷地面積は約3万3590平方メートル(芝張り106メートル×69・5メートル)で観客収容人員は2万0919人となっている。 from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170798 via 日刊建設工業...

竹中工務店/樹木配置最適化技術を開発、従来の100倍速でシミュレーション可能に

 竹中工務店は、建物外構の樹木配置を最適化するシミュレーション技術「Optree(オプツリー)」を開発した。樹木の本数や種類、温度、日照などの条件を分析。優れた住環境や景観、生物多様性の確保などを実現できる案を選定する。従来の設計手法と比べ100倍の速さでシミュレーションができ、設計者の負担も軽減する。同社が設計を手掛ける案件で、年間10件程度をめどに展開したい考えだ。  オプツリーではまず、木の大きさや植樹場所などを反映した3Dモデルを生成し、温度や風、景観などへの効果を、同社の技術研究所が保有するスーパーコンピューターで計算。良い結果が出たパターンを基に最適化アルゴリズムで樹木配置を導き出す。このプロセスをスーパーコンピューターで繰り返し、効率的な配置となるように改良を重ねる。担当者は「これまで設計者の経験値でしか測れなかった環境条件を数値化でき、誰でも効果が確認できる」と説く。  千葉県印西市にある技術研究所「調の森 SHI-RA-BE」のビオトープで実証実験を実施。日射や温度を考慮すると藻類の保全などにも貢献できることが分かった。景観だけでなく、生物多様性などプラスアルファの条件を踏まえた選択肢を顧客に提示できる。  同社が設計・施工した「朝日生命国立社宅計画」(2024年11月竣工)でオプツリーを初めて導入。1000本を超える樹木の配置パターンを約500ケース検討し、10日間で最適解を導き出した。最適化を行わない場合と比べ緑視率が15%増、居住者用菜園の日射量が7%増、植栽コストが2・2%減という結果を達成できた。 from...

2025年1月22日水曜日

兵庫県明石市ら/西明石駅南地区まちづくり起工、施工は大鉄工業

 兵庫県明石市とJR西日本、JR西日本不動産開発は21日、西明石駅南側エリア(西明石駅南町)の開発着手に当たり、起工式を現地で開いた。市とJR西日本は同駅周辺まちづくりで2019年に連携協定、20年に協定書を締結。商業施設を含む駅ビルや駅前広場、アクセス道路、公共施設、分譲マンションを順次整備する。国会議員や県議会議員など来賓が多数出席。鍬入れを行い、プロジェクトの無事成功を祈願した。  主催者代表の丸谷聡子明石市長は「JR西日本と共に計画を進めてきたまちづくりがいよいよ始動するのだと実感している。新幹線や在来線新快速が停車する利便性の高い西明石駅で周辺エリアの価値がさらに向上すると期待している」とあいさつ。JR西日本近畿統括本部の國弘正治兵庫支社長は「このプロジェクトは当社が手掛ける沿線まちづくりの目玉事業の一つ。市との連携で地域課題を解決し、住民に広域移動ライフスタイルを提供したい」と述べた。  新駅ビルは商業施設などで構成し、規模がS造3階建て延べ2403平方メートル。南改札口を新設し乗降者の動線を改善する。設計をジェイアール西日本コンサルタンツ、施工を大鉄工業が担当。近く着工し、26年度の開業を目指す。  市は駅前広場・ロータリーや駐輪場、南北アクセス動線となる「西明石南線」(延長約440メートル)を整備。南側のJR西日本社宅跡地の一部に図書館を含む地域交流センター「icotto(イコット)」を整備する。施設規模はRC一部S造4階建て延べ3909平方メートルで、基本・実施設計を安井建築設計事務所が担当。2月に設計完了した後、7月に着工し26年度に開館する予定。  イコットの西隣にJR西日本不動産開発と三井不動産レジデンシャル、野村不動産、関電不動産開発の4者がファミリー向け分譲マンションI期を建設する。規模はRC一部S造20階建て延べ約3万5000平方メートル(340戸)。敷地内にイコットと一体利用できるイベント広場を開放するほか、住民間の交流棟(2階建て)を別途整備するなどコミュニティーの醸成促進を図る。設計をジェイアール西日本コンサルタンツとIAO竹田設計、施工を大鉄工業が担当。2月に本体着工し27年6月の竣工を目指す。  I期の完成後はイコットを挟んだ東側敷地でII期の建設を計画。2棟で総戸数800戸以上となる予定。  市とJR西日本は駅東側の未利用地・旧国鉄清算事業団用地(約6900平方メートル)の将来的な利活用も検討していく。 from...

回転窓/新しい相棒とともに

 会社の机を整理し、数年前に取材でお世話になった広報担当者からいただいた手紙を見つけた。記事掲載に対するお礼の言葉がつづられてあり、その丁寧な字を目で追うと取材のことなど当時の記憶がよみがえる▼パソコン(PC)やスマートフォンの普及で字を書くことが少なくなっている。ノートPCで取材メモを取る機会も増えたとはいえ、記者としてとっさの時に簡単な漢字も出てこず書けなくなっては情けないと、新しいボールペンを先日購入した▼店頭でいろいろなペンを試し書きさせてもらい、手になじむ一本と出会えた。これまでの格安ペンも役に立ってきたが、書き味は比べようもないほど良く気に入っている▼建築をCADなどのツールも使って設計するとしても、常にペンを携えて手で書くことを大切にしていると、ある建築家が話されていた。フリーハンドだからこその〈味わい〉を表現するためだという▼同じ一本のペンであってもプロ意識を持って使いこなせるかどうか。話を聞いた建築家には遠く及ばないが、いつか〈味わい〉のある文章を書くことができるように、新しいペンを相棒に励もう。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170749 via 日刊建設工業...

昭和設計/社長に鳥居久人氏就任、1月20日付

 昭和設計の社長に20日付で鳥居久人取締役兼副社長執行役員が就任した。同日開催の定時株主総会後の取締役会で決定した。梶山卓二社長は取締役兼顧問に就いた。  鳥居 久人氏(とりい・ひさと)1985年広島大学工学部第四類(建築学課程)卒、92年昭和設計入社。2009年執行役員、20年取締役、24年副社長。兵庫県出身、63歳。 from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170753 via 日刊建設工業...

宮城県/第4期建設産業振興プラン中間案、持続可能な建設産業へ施策展開

 宮城県は2025年度から3カ年を計画期間とする「第4期みやぎ建設産業振興プラン」の中間案をまとめた。地域の守り手で県土づくりを担う地元建設産業の持続可能性を高めるため、建設業団体と連携し担い手確保、生産性向上、安定経営、地域力強化の4項目で施策を展開する。27年度までに達成する目標には4週8休達成率100%、売上高経常利益率2・5%以上などを掲げた。  担い手の確保・育成では適切な賃金水準の確保に向け、新たに「スライド条項の適用による労務費の価格転嫁推進」と「標準労務費の勧告を踏まえた著しく低い労務費などへの指導」に取り組む。計画的な休暇の取得も重要になるため、週休2日制の普及拡大に力を注ぐ。時間外労働の罰則付き上限規制を踏まえ、書類の簡素化と統一を推し進める。外国人材の活躍にも目を向けマッチングイベントや経営支援セミナーへの参加などを地元企業に促す。  生産性の向上は新技術の活用やDX推進などに加え、建設業許可関係の申請と届け出で電子化やキャッシュレス化のアクセルを踏み込む。安定経営の実現では入札契約制度改革として技術提案チャレンジ型の適切な運用、入札参加条件の改善などを新規施策に掲げた。地域力強化の取り組みとして既存インフラの維持管理に携わる技術者の表彰制度を創設する。事業継承支援、地域建設産業の防災対応力を高める支援の強化などにも注力する。  新規、継続を含めた76項目の施策を展開することで▽完全週休2日導入率60%以上(23年度実績42・9%)▽県発注工事の4週8休達成率100%(32・2%)▽ICT施工実施率100%(68・9%)▽売上高経常利益率2・5%以上(1・11%)▽BCP(事業継続計画)策定率50%以上(24年度16・4%)-などの27年度達成を目指す。  県や仙台市、業界団体、東日本建設業保証で構成する「みやぎ建設産業振興プラン推進会議」で施策の成果を評価し、取り組み内容をブラッシュアップしていく。2月20日まで中間案への意見を募り年度内に次期プランを決定。4月から施策を順次実行し持続可能な地元建設産業の実現を目指す。 from...

BA-plus/建設業特化型人材サービス展開、BIM活用のエキスパート育成

 野原グループ(東京都新宿区、野原弘輔社長)の子会社BA-plus(ビーエープラス、東京都新宿区、塩谷元宏社長)が、建設業に特化した総合人材サービスを展開している。野原グループが提供するBIM活用ソリューション「BuildApp」の業務をサポートするBA-plus社員の派遣と求職者の紹介、図面作成の受託を柱に事業を展開。現在約50社のゼネコンと取引し、約30人の人材を派遣している。  BA-plusは人材面でBuildAppの活用を下支えし、ゼネコン業務の仕組みや流れの効率化をサポートするため、2024年3月に設立。BuildAppをより多くのゼネコンに活用してもらうため、エキスパートを育てることをミッションに掲げる。  同社によると、ゼネコンのBIM活用が進むのに合わせ、スキルの高い人材を求める傾向が高まっているという。図面受託事業も好調で、サービス開始から約10カ月で年間計画を超える受注を獲得している。  未経験者の研修や人材育成は、野原グループのリソースを活用する。建材商社としてさまざまなゼネコンと取引がある同グループの発信力が強み。同グループが建設DXを推進していることが、BA-plusの人材獲得でもプラスに働いている。  同グループは業務の効率化などの提案を行う際、BA-plusの人材も紹介できるのが特徴。今後派遣した人材を入り口にBuildAppの普及が期待できるという。  塩谷社長は「図面作成などの部分をわれわれがサポートし、ゼネコンの方にはそのチェック業務に専念してもらうのが理想。人手不足でさまざまな業務に人を割けない中、生産性向上の一助になれば」と思いを語る。 from...

名古屋市/久屋大通・南エリア再整備構想案、4ゾーンに区分し昇降機能導入など

 名古屋市は、久屋大通(南エリア)再整備構想案をまとめた。「新たな創造が生まれるウォーカブルタウンのコア」を実現するため、錦通から若宮大通までの延長約800メートル区間を四つのゾーンに分け、地下と地上をつなぐ昇降機能や南北を回遊できる動線、新たな交流を生み出す集客施設などの整備を盛り込んだ。地上部は歩きやすい歩行者空間を確保する。今後は市民意見を踏まえ3月までに構想を策定するとともに、民間企業との対話調査や事業化に向けた技術的検討などを進める。  市の中心部である栄地区を南北に貫く久屋大通公園の再整備について、市はPark-PFIを導入し北エリアとテレビ塔エリアの整備を先行。2020年9月にオープンした「Hisaya-odori Park(ヒサヤオオドオリパーク)」は、多くの市民や観光客が訪れる公園として再生し、栄地区の活性化と魅力向上に寄与してる。  これに続く計画が南エリアの再生。南エリアは大規模イベントや市民活動などに利用されているが、平日や夜間は閑散としている。地下と地上を結ぶ昇降施設も不足し、各広場は東西方向の道路で分断され南北に連なる公園としての一体感が弱い。  再整備構想案では、南エリアをA~Dの4ゾーンに分け特性に応じて再整備する。最も北側のゾーンAは水景施設を生かした親水空間とし、SRT(スマート・ロードウエー・トランジット)の乗降・待合空間として整備する。ゾーンBは南エリアの起点となるメインゲート空間に位置付け、地下街と地上を結ぶ昇降機能を導入し、人の流れを地上に誘導する。  ゾーンCは大規模なイベント空間として活用する。周辺にはオープンカフェなどの休憩スペースを設け広場の日常利用を促す。最も南側のゾーンDは、新たな来訪者を呼び込む魅力的な集客施設を整備するほか、矢場町駅とのアクセス性を見直し、周辺のまちとのつながりの起点を形成する。  栄地区と大須地区の人の流れを結び付けるため、若宮大通公園の再生や堀留水処理センターの上部空間活用、新堀川の水辺空間としての活用なども検討する。  市は現在、久屋大通(南エリア)再整備に関する民間活力導入可能性調査を委託するため、公募型プロポーザルの手続きを進めている。調査の中で民間企業との対話調査なども実施する考えだ。 from...

関東整備局荒川調節池工事/低炭素コンクリ試行導入、CO2排出量半減

 関東地方整備局荒川調節池工事事務所が、洪水予防を目的に整備を進めている荒川第二調節池の工事で低炭素コンクリートを試行導入している。高炉スラグを混ぜた製品を排水門工事などに使用する根固めブロックや護岸ブロックとして使用。二酸化炭素(CO2)排出量を半分に低減する。同事務所は導入効果を踏まえ、今後発注する工事でも低炭素コンクリを使用する考えだ。  低炭素コンクリは、▽R4荒川第二調節池排水門及び囲ぎょう堤新設工事(施工=飛島建設)▽R6荒川第二調節池池内水路整備その1工事(戸邊建設)▽同その2工事(ユーディケー)▽同その3工事(ケージーエム)-の計4工事に適用している。工期は排水門工事が2026年3月、水路整備がいずれも25年3月まで。  排水門工事では現場で製作する根固めブロック約5300基に対して低炭素コンクリを約400基使用している。水路整備は3件とも護岸用の連結ブロックが約3100平方メートルで、うち約130平方メートルで低炭素コンクリを用いる。  コンクリを構成するセメントは製造時に焼く工程があり、大量のCO2が発生する。脱炭素化を推進する一環で建設現場でもフライアッシュや高炉スラグを使用した低炭素コンクリが普及している。同事務所によると、従来品に比べて高炉スラグを75%配合したコンクリを使用するとCO2排出量を40~52%削減できるという。  荒川第二調節池は治水安全度の向上を目的に第三調節池と一体で整備している。計画地はさいたま市、埼玉県川越、上尾の各市。全体事業費は約1670億円、治水容量は約5100万立方メートルを見込む。30年度の完成を目指している。 from...

2025年1月21日火曜日

全中建が60周年記念祝賀会開く/地域の主要産業の役割果たす、歴代会長2氏を表彰

 全国中小建設業協会(全中建、土志田領司会長)は17日、東京都中央区のコートヤード・マリオット銀座東武ホテルで創立60周年記念祝賀会を開いた。会員や業界団体関係者、国土交通省幹部など約160人が参加し、60年の節目を祝った。全中建会長を務めた2氏に対する表彰も行われた。=2面に関連記事  冒頭あいさつした土志田会長は「設立当時は東京オリンピック景気により公共投資が積極的に行われ、大手建設業と中小建設業の格差が拡大した。このような状況の下、健全な中小建設業の育成と社会的地位の向上を目的に全中建が設立された」と設立経緯を振り返り、「今後も中小建設業を育て守る業界団体として、諸課題の解決に取り組み、地域の主要産業として役割を果たしていく」と意気込みを語った。  祝賀会では60周年記念会長表彰として、会長を務めた松井守夫、豊田剛の2氏を表彰。両氏の代理人に対して土志田会長から表彰状を手渡した。  来賓として出席した佐藤信秋参院議員は全中建の節目に当たり祝辞を述べた上で、国土強靱化実施中期計画の策定にも言及。「3月中にはアウトラインを示し、6月には計画を固めたい」とした。  国交省の吉岡幹夫事務次官は「地域建設業は災害時に重要な地域の担い手だ。担い手の確保のためにも第3次担い手3法を進め、事業量を確保し、給与を高くしていかなくてはいけない」と強調した。 from...

大阪メトロ/中央線延伸・夢洲駅が開業、人の流れを生むにぎわい拠点へ

 大阪メトロ中央線の延伸区間(コスモスクエア駅~夢洲駅)が19日に開業した。18日には大阪・関西万博会場の最寄りとなる夢洲駅(大阪市此花区)で開業セレモニーが開かれ、多くの関係者や来賓が新たな歴史の幕開けを祝った。  冒頭、主催者として横山英幸大阪市長が「当初の目標より2カ月前倒しで開業を迎えることができた」と述べるとともに、「夢洲駅は物流拠点だったエリアを人の流れを生むにぎわいの拠点へと変えていく象徴となる」と期待を寄せた。  河井英明大阪メトロ社長は「夢洲駅を起点にAIや自動運転技術の導入を進め、安全・安心の輸送を実現する」と強調した。  来賓のあいさつでは中野洋昌国土交通相が「夢洲駅の開業は人流と物流の両面での円滑化を促進し日本全体の経済発展にも寄与する」と述べた。  吉村洋文大阪府知事は「夢洲駅は万博のファーストパビリオン。訪れる人々がワクワクし、子どもたちの心に残り未来につながる」と語った。関西経済連合会の松本正義会長も登壇し、地域の新たなシンボルとして発展することを祈念した。  延伸区間は既設のコスモスクエア駅から夢咲トンネルを経由し、新設した夢洲駅に至る約3・2キロ。大阪港トランスポートシステム(OTS)が第1種鉄道事業者として運営する。夢洲駅は顔認証専用機を含む16レーンの改札や地下空間では世界最大級となる長さ55メートルの大型サイネージを備える。大林組・熊谷組・東急建設・東洋建設JVが施工した。総工事費は約520億円。  セレモニーでは大型サイネージに「夢洲駅開業までの軌跡」を振り返る映像が流され、橋爪紳也大阪公立大学特別教授が「移世界劇場」と題した駅コンセプトを説明。その後、主催者と来賓によるテープカットが行われた。  セレモニー後に会見した横山市長と河井社長は万博会場整備も含めた建設業界の協力に触れ、「資材高騰や人手不足という厳しい状況の中で新しいレガシー(遺産)を大阪に残していく大きな役割を果たしてもらった」と感謝した。 from...

新町西地区再開発組合(徳島市)、A工区施設の安全祈願祭開く/施工は株木建設JV

 徳島市中心部で第1種市街地再開発事業を計画する新町西地区市街地再開発組合(高木俊治理事長)は、ホテル棟などA工区施設建築物の新築工事に先立ち、20日に徳島市の春日神社で安全祈願祭を開いた。施工を担当する株木建設・美土利建設工業JVから株木康吉株木建設社長らが出席し、玉串をささげて工事の無事完成を祈願した。2月に着工し、2026年6月の完成を目指す。  24年4月から既存施設の解体工事を進めていた。ホテル棟の規模はS造11階建て延べ4932平方メートルを想定。A工区では川の駅も整備する。神事の後、高木理事長は「多くの人に愛され、街が元気になる施設になれば」と期待を述べた。現場を率いる株木建設の藤崎智史総合所長は「周辺に配慮し、安全に工事を進めたい」と意気込みを語った。  B工区の施工は鳳建設・司工務店JVが担当。同工区はRC造14階建て延べ3908平方メートル(38戸)、同15階建て延べ9680平方メートル(110戸)の住宅商業棟などを建設する。27年9月の竣工を予定している。  再開発事業の施行区域は徳島市西新町1ほか約1・3ヘクタール。参加組合員は住宅・商業棟がフージャースコーポレーション・長谷工不動産JV、ホテル棟はさくら不動産。一般業務代行は松田平田設計・アーレックスJVが担当している。 from...

回転窓/受験シーズンに思う

 今春の進学に向け受験シーズンが本格化してきた。この土日に行われた大学入学共通テストの志願者数は約49万5100人と前年から約3200人増えた。テスト結果は国公私立大など838校で利用されるという▼今回は新たな学習指導要領を受け、グラフ・表のデータ活用やプログラミングなどの知識を問う「情報」を初めて実施。出題教科・科目も6教科30科目から7教科21科目に再編した▼さまざまな課題や社会的背景を踏まえ、教育方針や指導要領は適宜見直されてきた。ゆとり教育が始まった2002年度に公立学校では週休2日制が完全実施されている▼時間的・精神的な余裕を持たせつつ、子供が自ら考え行動できる資質や能力を育み、生きる力を身に付けることに重きが置かれたゆとり教育。総合的な学習に力を入れる改革だったが、学力低下を招いたと指摘され、2010年代に入ると授業時間数の増加など「脱ゆとり」へと転換した▼学校教育は移り変わり、企業が求める人材像も変わってきたと言われる。受験生たちが社会人となる頃には、多様な価値観がもっと受け入れられる社会になっているだろう。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170719 via 日刊建設工業...

政府/中小建設業の省力化投資促進へ国交省がプラン検討、現行補助金は対象拡充

 政府は特に人手不足が深刻な業種の一つに「建設業」を挙げ、中小企業の省力化への投資促進策を一段と強化する方針だ。国土交通省が建設業向けの「省力化投資促進プラン」を3月中にも策定。AIやロボットなどの自動化技術の活用をはじめ、DXを加速する投資を推進する。まずは「中小企業省力化投資補助金」など既存施策を徹底的に運用。業種特有の課題を把握しながら、無駄が多い業務の標準化などサプライチェーン(供給網)全体で省力化に寄与する仕組みの構築も含めた検討にも乗り出す。  石破茂首相が16日、製造業などの中小企業経営者と車座で意見を交わした場で、建設業など12業種でのプラン策定を表明した。人材確保のためやむを得ず行う「防衛的賃上げ」ではなく、「生産性を上げ、それを原資に賃上げしないと意味がない」と強調。中小企業まで省力化投資を普及させる体制を整え、現場従事者のスキル向上や適正評価の制度化にも取り組む意向を示した。17日にはプラン策定へのキックオフとなる関係府省連絡会議を開いた。  既存施策の一つの中小企業省力化投資補助金では、省力化に寄与する汎用(はんよう)製品をカタログから選ぶ方法で、その導入費用を補助する。中小企業庁が、国交省と協議し建設業向けに補助対象となる製品カテゴリーを順次拡充。16日には▽シンダーコンクリート解体機▽チルトローテータ付ショベル▽建設現場作業ロボット(鉄筋組み立て作業ロボット)-の3件を追加した。  建設業向けは▽測量機(自動視準・自動追尾機能付き高機能トータルステーション)▽地上型3Dレーザースキャナー▽GNSS測量機(RTK)▽清掃ロボット▽マシンコントロール(MC)・マシンガイダンス(MG)機能付きショベル-の5件などもカテゴリーに登録済み。メーカーによる個別製品の応募を踏まえ各製品のカタログ登録や販売店登録が進めば、建設業者による補助金の交付申請を受け付ける段階に入る。現時点で個別製品がカタログ登録されているのはトータルステーションだけだ。  政府はプラン策定に当たって関係府省に▽各業界の実態把握の深掘り▽多面的な投資促進策の検討▽全国的なサポート体制整備の検討-の三つを指示している。  例えば物流業界で進むパレット標準化など、業界慣習の見直しで省力化を促す方策も検討課題になるとみられる。 from...

丸藤シートパイル/覆工板やシートパイル整備を自動化、脱3Kの働き方へ

 丸藤シートパイルは、リースから戻ってきた覆工板などの再整備のオートメーション化に乗り出す。2025年度に茨城工場(茨城県阿見町)に新たな建屋を設置し、覆工板の自動整備機を導入する。名古屋工場(愛知県武豊町)では、3月からシートパイルやH形鋼の自動洗浄ラインを稼働させる。今後、基幹工場である千葉工場(千葉県市原市)を含めて計4~5工場に同様のラインを設ける予定だ。3K(きつい、汚い、危険)作業を減らし、多様な人材が活躍できるようにする。  覆工板整備の自動化では、所定の位置にセットすると、洗浄から塗装、乾燥までを自動的に行う機械を導入する。現状では4人で行っている作業が半分程度の人員で対応できるようになる見通しだ。シートパイルやH形鋼の自動洗浄では、継ぎ手部分もきれいにすることができる。同一の機械を用いるため、ニーズに応じて使い分けることが可能だ。  現状では、現場での利用が終わって戻ってくると、ハイウォッシャーやケレン棒で付着した土などを除去したり、重量物の揚重作業で危険が生じたりすることが課題となっている。高齢化が進む中で、働き方改革や作業環境の改善が必要になっていた。  羽生成夫社長は「自動化により『きつい・汚い・危険』がなくなり、違う働き方になる。多様な人がもっと働けるようになる」と話す。将来的には、全ての作業を建屋内で行えるようにして、自動化により生産効率を高めることも見据える。 from...

大阪府/対馬江大利線街路事業未整備区間、今春にも認可取得

 大阪府は京阪寝屋川市駅前から府道八尾茨木線に至る都市計画道路「対馬江大利線」街路事業の未整備区間について、今春にも国から事業認可を取得し、道路や電線共同溝の設計、用地測量に順次着手していく。2025年度から事業を本格化させ、33年度の完成を目指す。総事業費は47億円を概算する。  未整備区間は寝屋川市宝町(対馬江東町東交差点)から高柳栄町(高柳交差点)までの全長約0・6キロ。東側で隣接し先行する寝屋川市施行区間約0・9キロの完成にめどが立ったことから、引き続き府施行区間に着手する。狭いことで危険な状態となっている現道を拡幅するとともに無電柱化し、交通利便性・安全性の向上や防災機能の強化につなげる。  事業費は総額46億0900万円を見込む。うち用地費が31億3000万円(補償費22億0900円含む)、工事費は13億5000万円。道路築造や電線共同溝の整備。道路幅員は20メートル(現6・7メートル)。車道(3メートル×2)、自転車専用通行帯(1・5メートル×2)、歩道(4メートル×2)などを整備する。  26年度までに測量・設計を終え、26~30年度に物件調査や用地買収を実施する。着工は28年度の予定。  府議会で谷口友英都市整備部長は「春ごろに事業認可取得を目指し、地元説明会の開催、道路や電線共同溝の設計、用地測量を計画通り進める。寝屋川市施行区間の完成に続き、切れ目なく事業に着手し、地域住民の安全確保と利便性向上を実現する」とした。寝屋川市との連携を強化しながら、地域の住環境改善と北河内地域の道路ネットワーク強化を進める。 from...

2025年1月20日月曜日

阪神・淡路大震災から30年/1・17のつどい、経験と教訓を次世代に

 6434人が犠牲となった阪神・淡路大震災は17日、発生から30年が経過した。兵庫県内では被災した各地で追悼行事が行われ、県などが主催する「ひょうご安全の日 1・17のつどい」には天皇・皇后両陛下をはじめ国や県、被災市町や一般来場者などが参列。震災の経験と教訓を次世代につなぎ、安全・安心な社会の実現に向かって心を一つにすることを誓い合った。  安全の日のつどいのテーマは「震災を風化させない-『忘れない』『伝える』『活かす』『備える』」。兵庫県公館(神戸市中央区)とHAT神戸「人と未来防災センター」慰霊モニュメント前(同)の2カ所で映像中継され、両会場合わせて約1000人が出席した。震災未経験の世代が増え、記憶の風化が懸念される中、小中高生や大学生ら若い世代の参列も目立った。  式典は午前11時45分に始まり、地元高校生らがモニュメント前の「追悼の灯り」に点灯。浜田知昭兵庫県議会議長が開会の言葉を述べた後、正午の時報とともになぎさ小学校の児童が「カリオンの鐘」を打ち鳴らし、犠牲者に黙とうをささげた。  主催者を代表して齋藤元彦兵庫県知事は「この30年の間、日本列島を数々の大災害が襲った。われわれは悲しみに耐えながら、復旧・復興に立ち上がり、経験と教訓を次の災害対策につなげてきた。兵庫県で提唱された『創造的復興』は国内外の災害復興の基本理念になった。防災・減災の取り組みは着実に前進しつつある。この歩みを止める事なく、より災害に強い社会を実現していかなければいけない」と力強く語った。  来賓の天皇陛下は「震災を経験していない若い方々が自主的に震災について学び、次世代につなごうと発信されている姿を心強く思います。知見が国内外に広がり受け継がれることを期待しています」と述べられた。坂井学内閣府防災担当相は「度重なる災害から得られた経験と教訓を生かし、世界有数の災害大国であるわが国を世界一の防災大国とするため力を尽くしていく」と述べた。遺族代表者の言葉に続いて、小学生が被災者を勇気付ける曲「しあわせ運べるように」を合唱。小中高生らが「教訓のバトンを受け取り、後世まで伝え続けることが私たち若い世代にできることです」と、メッセージを披露した。  最後に河田惠昭人と防災未来センター長が「震災の教訓はすべての災害に通じる知恵だから」と、「ひょうご安全の日宣言」を読み上げ、参列者が献花台に花をささげた。  HAT神戸のなぎさ公園などでは恒例のメモリアルウオークや防災展示、音楽ステージ、体験学習などが行われた。  神戸市中央区の東遊園地でも未明から追悼の集いが行われ、灯籠で「よりそう 1・17」の文字をつくった。被災者同士が寄り添い、神戸の復興を進めてきたことを踏まえ、東日本大震災や能登半島地震の被災地を支えようという思いが込められた。 from...

回転窓/食のユニバーサルデザイン

 世間には面白い川柳コンテストがあるもので、松山市水産市場運営協議会が隔年で募集していた「魚嫌い川柳」もその一つだろう。魚に興味を持ってもらおうと2022年度までに7回実施され、「魚の食わず嫌い」などをテーマとするユニークな作品が毎回寄せられてきた▼第6回ジュニアの部佳作に好きな句がある。〈焼き魚骨を取るのに骨折れる〉(うのさん)。魚を食べない理由に「骨を取るのが面倒」を挙げる人も多く、作者のセンスが光る▼魚の骨が苦手な子供や大人に強い味方が、スーパーなどで売られている骨を丁寧に取り除いた「骨なし魚」「骨取り魚」。低脂肪で良質な動物性タンパク質の魚を、病院でも安心して食べられるようにと商品化され広く人気が高まったようだ▼日本介護食品協議会は日常食から介護食まで使え、食べやすさに配慮した食品を「ユニバーサルデザインフード」に認定している。ウェブサイトでは骨なし魚に限らず素材やかたさなどに応じたさまざまな商品を検索できる▼誰もが分かりやすく、使いやすいのがユニバーサルデザイン。食の分野でも大切なコンセプトに他ならない。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170682 via 日刊建設工業...

凜/日本工営コンサルティング事業統括本部・工藤晶子さん、やりがい感じながら仕事を

 国内の農業インフラを担当する農村整備部で、用水路やポンプ場などの整備や修繕に関する計画を作成している。施設の経済効果の地域住民への説明や、河川管理者との協議なども担う。施設を整備する地域について「誰よりも詳しくなれる」のが魅力と話す。  入社11年目。経験を重ね、顧客から頼りにされることが増えてきた。自分の仕事の次の段階について尋ねられたり、他地区の事例を聞かれたりする時に信頼を実感するという。  後輩に仕事を振る場面も。単年度の小規模案件が多いが、一つ一つの事業がどうつながり、自分の仕事がどこで役立つかを知ってもらえるよう心掛けている。「意図がきちんと伝わったと思えるようなアウトプットが上がってきたときはうれしい」と頬を緩ませ、「やりがいを感じながら仕事に取り組んでほしい」とエールを送る。  大学で農学を学び、大学院では国際開発工学を専攻した。初めに興味を持ったのは発展途上国の農村開発といった国際協力分野だったが、学ぶ中でわが国の農業も課題が山積していると感じるようになった。建設コンサルタント業界ならば「日本と発展途上国の両方で農村インフラに関われる」と入社を決めた。  国内事業での知見を生かし、「日本の農業水利施設の技術や維持管理体制を、発展途上国に広めたい」と将来を見据える。  日本工営コンサルティング事業統括本部流域水管理事業本部農村整備部技師(くどう・あきこ) from...

梓設計/仏アリーナ運営会社とMOU交換、計画段階からノウハウ反映

 梓設計は17日、アリーナ運営を展開するフランスのパリ・エンターテイメント・カンパニー(PEC、ニコラ・デゥプゥ最高経営責任者〈CEO〉)と協業の覚書(MOU)を交わした。計画段階から設計事務所と運営会社のノウハウを同時に取り入れることで、アスリートや観客らの満足度が高い付加価値を創出する。国内では改修案件の増加も見込まれる中、PECの知見を参考にして国内外で持続可能なアリーナ運営のモデル構築を目指す。  同日に東京都内で梓設計の有吉匡社長とデゥプゥCEOが会見し、MOUの交換によって期待するシナジー(相乗効果)を説明した。有吉社長は「PECが持つマーケティングや顧客視点に立った運営のノウハウを仕事に生かしたい」と述べ、デゥプゥCEOは「梓設計は日本のスポーツ施設設計をけん引し、当社はフランスでアリーナ運営を引っ張っている。互いの強みやできることを補い合いたい」と話した。  梓設計によると、MOUに基づく協業により両国の新規アリーナ案件を発掘していく。計画段階から両社のノウハウを持ち寄ることで、アスリートファーストを前提に観客やスタッフも満足するような付加価値を創出。国内ではアリーナ運営の民営化の加速も予想される中、PECがフランスで積み上げてきた実績やノウハウを参考にしていく。 from...

青森県/25年内に防災基本条例制定、防災・減災強化行動計画

 青森県は、今後5年で重点的に取り組む事前防災の方向性を示す「Aomori防災・減災強化Action Program」を策定した。県や市町村、県内事業者、団体が災害時に果たす役割と対応事項を明確にする防災基本条例(仮称)を2025年内に制定。能登半島地震の教訓を踏まえ、災害関連死を防ぐプログラム策定などに取り組む。市町村と連携した防災備蓄品の共同調達業務も県主導で25年度から開始する。  アクションプログラムは▽防災じぶんごと▽避難所TKB(トイレ、キッチン、ベッド)向上▽危機管理向上-の3本柱を防災DX推進プログラムで支援しながら展開する。28年度までの期間で自助・共助・公助の取り組みを強化。能登半島地震で半島地域特性の課題が顕在化したことを踏まえ、三方を海に囲まれた青森の防災力強化を図る。  防災じぶんごとプログラムでは事業者などを含めた県民が連携して取り組むための防災基本条例をまとめる。防災士資格を持つ県民を中心に据えた地域防災力の強化や自主防災組織の設立なども推進。避難場所の環境整備では、避難所運営マニュアルを策定していない17市町村の策定を支援。県全体で防災備蓄を購入することで費用を低減し効率も向上する共同調達をスタートする。  危機管理向上プログラムとして、防災担当職員が不足する自治体の地域防災力を強化する。民間と締結している災害応援協定の推進や災害対応拠点になる県庁舎の強靱化も継続。防災DXでは訓練用の防災VR(仮想現実)などの導入や、ICTを活用した県庁リエゾン(現地情報連絡員)チームの強化などに取り組む。  17日の記者会見で、宮下宗一郎知事は「大きな災害では自分の身を自分で守るのが大前提だ。防災を『自分事』として捉え、県民一丸で取り組む」と強調した。 from...

東千石町12、13番街区と千日町15番街区(鹿児島市)で市街地再開発事業計画

 ◇高さ100mの複合施設想定  鹿児島市の繁華街の天文館地区にある東千石町12・13番街区と千日町15番街区で第1種市街地再開発事業が計画されている。街区を合わせた総面積は約1万平方メートル。400戸規模のマンションや商業機能などが入る高さ100メートル規模の高層複合施設を想定している。鹿児島商工会議所(岩崎芳太郎会頭)が主体となって、市街地再開発事業の勉強会を2024年にスタートし既に2回実施している。今後も勉強会を重ね、事業化に向けた検討を進める。  複合商業施設のセンテラス天文館からアーケードを挟んで東側が千日町15番街区、大通りである天文館電車通りを挟んで北側が東千石町12、13番街区。用途地域はいずれも商業地域で、建ぺい率80%、容積率700%。地権者は観光・交通事業などを手掛けるいわさきグループなど約20者。  商議所によると、同グループの最高経営責任者(CEO)でもある岩崎会頭は新型コロナウイルス感染症の影響で天文館地区の交流人口が激減した経験から、恒久的な発展には定住人口増加が必要として事業を計画。高度利用も考え市のシンボルとなるよう、鹿児島県内で最も高い鹿児島中央タワー(鹿児島市中央町、高さ99・98メートル)を上回る規模を視野入れている。 from 工事・計画...

東映/丸の内TOEI(東京都中央区)を7月閉館、商業施設に建替

 ◇映画界から別れ惜しむ声  東映は16日、東京都中央区にある映画館「丸の内TOEI」を7月27日に閉館すると発表した。映画館や本社機能が入る「東映会館」=写真=の建て替えに着手する。新たな建物はホテルや店舗を中心とした商業施設になる予定。開発期間は2025~29年度を予定している。  同会館の所在地は銀座3の2の17(敷地面積1100平方メートル)。用途地域は商業地域。建ぺい率は80%、容積率は800%。JR有楽町駅の南東側で、東京高速道路を挟んだ向かい側に位置する。建物は1960年に建てられ、設計を久米建築事務所(現久米設計)、施工は清水建設が手掛けた。  建物や設備の老朽化に伴い、今後多額の修繕費や改修費が必要になるため建て替えを決めた。収益不動産として敷地を最大限有効活用する。東映の本社は今夏に京橋エドグラン(中央区京橋2の2の1)に移転する。  16日の発表に際し、映画界で長年活躍する俳優たちも閉館を惜しむコメントを寄せた。  北大路欣也さんは「作品を通して劇場の舞台でファンの皆さまと交流をさせていただき、楽しい時間を共有できたことはうれしい思い出です」とコメント。吉永小百合さんは同会館で20本以上の映画の初日を迎えた思い出に触れ、「大切な直営の劇場がなくなってしまう……悲しいです。感謝の思いでいっぱいです」と別れを惜しんだ。舘ひろしさんも「たくさんの思い出と感動をいただき、感謝しております」とつづった。 from...

2025年1月17日金曜日

本社事務所移転のお知らせ

日刊建設工業新聞社、2月25日業務開始 日刊建設工業新聞社は本社事務所を移転し、2月25日に新本社事務所で業務を開始します。これまで東京都港区東新橋に本社事務所を置いてきましたが、2028年の創刊100周年に向けた業務拡大のため、新本社事務所に移転することにいたしました。関東支社、横浜支社、千葉総局も同事務所に移転します。 今後も持続可能な建設産業の発展に向けて、有益な情報の発信を通じた読者サービスの向上に努めてまいります。引き続きのご愛読をお願いいたします。 新本社事務所の所在地と連絡先は次の通りです。 〒104-0045 東京都中央区築地5‐6‐10 浜離宮パークサイドプレイス13階 電話03-4361-2090(代表)/FAX03-6697-4401(代表) 新電話番号 新FAX番号 本社(代表) 03-4361-2090 03-6697-4401 総務局 03-4361-2090 03-6697-4401 編集局(編集部、情報システム部) 03-6778-4614 03-6697-4404 編集局(整理部) 03-6778-4676 03-6697-4405 編集局(メディア出版部) 03-6778-4457 03-6697-4401 ...

回転窓/この30年の経験を今後30年へ

 13日午後9時過ぎに宮崎県沖の日向灘を震源とする地震の発生に緊張が走った。日向灘では昨年8月にマグニチュード(M)7・1の地震が発生したばかり。南海トラフ地震が起きる前兆かと肝を冷やした方も多いだろう▼今回の地震について気象庁は評価検討会で分析した結果、現在のところ南海トラフ地震発生の可能性が平常時と比べ相対的に高まっていないと結論付けている。巨大地震警戒などにも当てはまらない現象と評価した▼政府の地震調査委員会は15日、M8~9クラスの南海トラフ地震が今後30年以内に起きる確率を従来の「70~80%」から「80%程度」に引き上げた。南関東地域に目を転じると、今後30年以内に70%の確率でM7クラスの首都直下地震が発生するとの予測だ▼各地で巨大地震が起きる可能性は十分に高く、いつ起きてもおかしくないのが普段の状態といえよう。あらゆる事態を想定し被害の最小化に努めなければならない▼阪神・淡路大震災からきょうで30年。この間、東日本大震災や能登半島地震など災害が続く。その経験や教訓を一つでも多く伝え、これから起こる災害への備えを徹底したい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170610 via 日刊建設工業...

鉄建建設会長・林康雄氏が死去/鉄道インフラの建設・保守けん引

 鉄建建設会長で元土木学会会長の林康雄(はやし・やすお)氏が13日、死去した。72歳だった。通夜・告別式は近親者で行う。後日、お別れの会を開く予定。  神奈川県出身。1975年に東京大学工学部土木工学科を卒業し、日本国有鉄道(国鉄)入社。民営化で発足したJR東日本の理事八王子支社長、取締役建設工事部長、常務鉄道事業本部副本部長などを経て、2013年鉄建建設代表取締役兼執行役員副社長、14年社長に就任した。  鉄建建設では社是に掲げる「信用と技術」の基本に徹し、技術力の向上や財務体質の強化に向けた施策を推進。経営幹部と現場職員との意見交換会をスタートさせるなど、全社一丸となって働く企業風土づくりにも積極的に取り組んだ。18年に代表取締役会長就任。約50年にわたり鉄道インフラの建設、保守をけん引した。  19年6月に土木学会の第107代会長に就任し、土木工学の発展や土木技術者の育成にも尽力した。インフラメンテナンス(鉄道)がテーマの会長特別委員会を発足させ、鉄道インフラと維持管理体制の現状を分析・評価した上で、将来にわたる鉄道メンテナンスのあるべき方向性を提言した。21年5月には20年度土木学会賞功績賞を受賞した。  林氏をJR時代から知る人は「いつも太陽のように明るい方だった」と話す。周囲の意見も聞きながら率先して物事を前に進めるリーダーであった。 from...

関東整備局/「半島防災」強化へ千葉県と共同でGIS構築、孤立エリアの復旧迅速に

 関東地方整備局が半島地域の防災力強化に乗り出した。能登半島地震では、地理的条件などが理由で被災地の状況把握や初動対応が遅れた。整備局は能登半島に地形が似ている房総半島で迅速な復旧復興を実現しようと、千葉県と対応策を検討。検討成果としてインフラの位置などを可視化する地理情報システム(GIS)を構築した。孤立が予想される地域での素早い初動や復旧に役立てる。  整備局は2024年6月に千葉県の防災担当部署と共同で災害対応検討ワーキンググループ(WG)を設置し、活動を始めた。約半年の検討を経て構築したGISには県内に点在する公共施設や避難場所、水道施設と応急給水地点の位置などを表示する。  能登半島地震では道路が寸断され、多くの集落で住民が孤立した。構築したGISによって、房総半島内で孤立が予想されるエリアへの迅速な応急復旧につなげるなど「メリハリの付いた対応」(同局防災室)が期待できるという。  整備局はWGの検討を通じて緊急時の行動マニュアルとなる「災害対策運営要領」に、半島特有の地形や社会的条件を踏まえた支援内容や行動などを盛り込みたいとしている。  能登半島地震では社会的、地理的条件が原因で災害対応や自治体への支援などさまざまな面で課題が浮き彫りとなった。  平地が少なく三方を海に囲まれた地域を中心に災害への備えを強化する半島防災の機運が高まる中、千葉県では24年9月に道路啓開計画を策定した。県内の防災拠点と被災箇所を連絡する199路線(総延長1676キロ)を「啓開候補路線」として選定し、迅速な復旧に役立てるとしている。整備局と県は房総半島での災害対応を円滑に進めるための連携強化に努める。 from...

東宝/新たな帝国劇場の概要発表、コンセプトはザ・ベール

 三菱地所と東宝が計画している国際ビル・帝劇ビル(東京都千代田区)の一体的な建て替えに関連し、東宝は16日、新たな帝国劇場の概要を発表した。コンセプトは「THE VEIL(ザ・ベール)」。薄い布をまとったような、曲線を多用した外観が特徴だ。エントランスから客席、舞台まで幾重ものベールをくぐるような空間構成とし、神秘性や格式を高める。設計は指名型プロポーザルで選ばれた建築家の小堀哲夫氏が担当している。  同日現地で記者発表会を開いた。東宝の池田篤郎常務執行役員エンタテインメントユニット演劇本部長は「これまで根底を流れていた『芸術性と大衆性の融合』という精神を受け継ぎ、『オーセンティック(本物であること)』を旨とし、新しい世紀に向かって歩みを進めていく」と意気込みを語った。  小堀氏は、西側に皇居の緑やお堀の水面といった自然が豊富にある一方、東側には丸の内のビル街が広がる立地環境を説明。「唯一無二の場所だということを分かっていただける建築の作り方が大事だと思った」とし、「皇居側は自然をまとったベール、まち側はにぎわいがにじみ出すようなベールであるべきだと考えた。新しい空間体験を実現したい」と話した。空間構成に当たっては自然光の効果的な導入も鍵になると捉えている。  新たな劇場はエントランスを入って真正面に客席や舞台を配置する。舞台装置には、コンピューター制御の「オートメーション機構」を採用。舞台面と奈落が連動し、複雑な演出にも対応する。客席の傾斜は現状より高くし、舞台を見やすくする。地下街とつながる部分にも大規模なエントランスを設け、エスカレーターなどで地上に接続する。  建築費が高騰している状況に対し、池田氏は「帝劇は東宝にとって一大ブランド、ランドマークで、造ることには強い意志で臨んでいる」と強調。「小堀氏や施工者と協業しながら、費用コントロールを詰めていきたい」と述べた。 from...

鹿島/無響室をリニューアル極限まで性能アップ、つり構造で理想的な無響状態実現

 鹿島は技術研究所(東京都調布市)西調布実験場内の無響室をリニューアルし、極限まで無響性能を高めた。無響性能の妨げとなっていた測定対象を支える装置や床などの反射物をなくし、測定機器や測定対象物をワイヤで空中に浮かせる構造を確立。理想的な無響状態で音響計測できる。より高品位な音響空間構築の技術開発を進める。英サウサンプトン大学と共同開発した立体音響技術「OPSODIS」(オプソーディス)の性能向上に向けた開発に活用する。  リニューアルした無響室は壁や床、天井の吸音材料をグラスウールから、ポリエステル系の吸音材料でできた「吸音くさび」に変更。室内の反射音を減衰させる。無響室の天井裏(吸音くさびの外側)には、十分な荷重に耐えるキャットウオークを設けた。  キャットウオークから音をほとんど反射しない細いワイヤやシャフトを貫通させ、測定対象や測定機器を天井からつり下げて空中に浮いた状態を構築する。測定時は照明や測定準備に使用した足場も撤去できるため、反射物となる大掛かりな測定装置を床面に設置せず、測定対象物だけが無響室内に浮かぶ理想的な無響状態の中で音響を測定できる。  機器をつるすワイヤは、四方の壁の奥に仕込まれた装置でミリ単位の位置調整が可能。さらにキャットウオークに設置した回転装置によって0・1度単位で回転調整でき、さまざまな条件での測定を可能にした。  鹿島はこれまで音楽ホールやスタジオの設計・施工でOPSODISを搭載した音響解析シミュレーターを活用し、優れた音響性能の施設を提供してきた。今後、高性能無響室を積極的に活用し、さまざまな形状や材質の壁、床、天井面の音響特性を詳細に把握することでより高品位な音響空間の構築を目指す。さらに高精細なデータを数多く取得し、オーディオ分野など建設業の枠を超えたOPSODISの活用、普及に挑戦していく。  OPSODISを活用した小型スピーカーも開発している。建築環境グループの矢入幹記上席研究員は「小型から大型まで対応できる。スピーカーが認知されれば、オフィスやサウンドスケープなど建築分野にも展開できる」という。 from...

2025年1月16日木曜日

大阪・関西万博/姫路市内で国際参加者会議始まる、開幕に向けて課題解消

 大阪・関西万博に参加する国や地域、国際機関を対象にした「国際参加者会議(IPM)」が15日、兵庫県姫路市で始まった=写真。開幕まで残り3カ月を切る中、パビリオンの建設や運営面の課題の解消に向けて16日まで協議する。2025年日本国際博覧会協会では機運の醸成を含め4月13日の開幕に向けた準備を加速させる。  会議は参加国などに情報を提供し、開幕前の準備や開幕後の運営に向けた課題を解消するのが目的。万博に参加を予定する約160の国・地域や国際機関から約600人の関係者が参加した。今回が開幕前最後の国際会議となる。  開会あいさつで日本国際博覧会協会の十倉雅和会長は「世界中が手を取り合い、いのち輝く未来社会のデザインを共に考える私たちの大きなチャレンジが今年の春に実を結ぶ。私たちの万博を実現するために、話し合い、解決策を見いださなければならない課題はまだ残り少なくない。さまざまな側面から課題を検証し、共通のゴールを目指し、さらに一歩踏み出そう」と呼び掛けた。  博覧会政府代表の羽田浩二氏は「国内外で万博開催に向けた機運が盛り上がりつつある。万博への期待と関心がますます高まっていると確信しており、さらに機運を高めるためにも積極的なPR活動に協力してほしい」と述べた。博覧会国際事務局(BIE)のディミトリ・ケルケンツェス事務局長は「万博は単なる展示場ではない。対話と私たち全員が貢献するエネルギーによって動かされる、生きて呼吸する有機体だ。私たちが共に未来をデザインし、行動する場であり、違いを超え、団結と目的を共有する道を切り開く場だ」と訴え、一丸となって課題の解決に取り組むとした。  会議では関係者の場内への出入りなど開幕に向けた準備に加え、開幕後の従業員の入場方法や商品の搬入など運営面、イベントの手続きなどについて詳しく説明した。15日は公式レセプションが開催された。16日はシグネチャーパビリオンの展示内容やイベントについて発表する。  両日はポルトガルやスイス、カナダなど10カ国のパビリオンの記者発表も行われる。 from...

トヨタ不ら/トヨタアリーナ東京(東京都江東区)建設現場を公開、設計・施工は鹿島

 トヨタ不動産らは15日、東京都江東区のお台場・青海エリアで建設している複合アリーナ「トヨタアリーナ東京」の建設現場を報道陣に公開した。広大な無柱空間の実現に当たり、設計・施工に当たる鹿島が技術を結集。約2年間という短工期で施設を仕上げるため、協力会社との緊密な連携の下で工事に当たっている。同社の辻岡展宏副所長は「難工事で工期も短いが、残る5・5カ月を無事故で竣工させたい」と気を引き締める。  事業はトヨタ不とトヨタ自動車、トヨタアルバルク東京(東京都文京区、林邦彦社長)の3社で推進している。  建設地は青海1(敷地面積約2・7万平方メートル)。トヨタ自動車のテーマパーク「メガウェブ」の跡地に当たる。建物はS造地下1階地上6階建て延べ3・7万平方メートルの規模。最大1万人収容のメインアリーナや、練習用のサブアリーナ、広場などで構成する。  施設は6月の竣工、今秋の開業を予定。開業後はプロバスケットボールのチーム「アルバルク東京」の本拠地として使うほか、コンサートやMICE(大規模なイベント)にも貸し出す。外構部には豊富な植栽を施し、青海エリアの環境向上にも一役買う。  工事の進捗率は同日時点で約75%。建物はおおむね完成し、設備工事や屋上緑化、外構工事などを残す。設備工事では今後、天井からつり下げて全方位から見られる「センタービジョン」や、アリーナを一周する「リボンビジョン」などを設置する。  辻岡副所長は「アリーナは設備の塊で、設備量も通常のビルの5割増しくらいの印象だ。短工期の中、鉄骨工事と同じタイミングで照明や機械を設置するなど、施工の平準化に力を入れた」と工夫点を説明。「今後は外構部へと戦線が広がる。そこをチームワークよくコントロールしていくのが鍵だ」と語った。  トヨタアルバルク東京の林社長は、メガウェブの跡地という特性を踏まえ「にぎわいを継承する形で、スポーツも含めた情報発信拠点にしていきたい」と話した。 from...

回転窓/海業からのにぎわいに期待

 この前の3連休に「初売り」を行った港の朝市が大勢の人でにぎわっていた。マグロが看板の地域であり、冷凍マグロ一本が当たる恒例の大抽選会が今年も催された▼景品は、遠洋のはえ縄漁で捕ってすぐに急速冷凍された重さ48キログラムのメバチマグロ。主催者によると、さくにすれば200人前になるそう。そのまま持ち帰れもするけれど、解体と搬送を主催者に任せることもできると聞いた▼水産庁は、昨年4月施行の改正漁港漁場整備法に基づき、地域の所得向上や雇用機会の創出を目指す「海業」を本格展開する。漁業組合などによる海業の検討や立ち上げを支援する経費を2025年度予算案に盛り込んだ▼老朽化した施設や、使われなくなった多くの漁具が残る港は少なくない。海業は港の再配置や解体といった建設工事との組み合わせも想定。能登半島地震の被災地での事業化にも期待が集まる▼冷凍マグロを当てたのは横浜市から来たご夫婦。「皆さんのマグロを持っていくのはこの人です」と冗談交じりに紹介されながら、大きな拍手と歓声で祝福されていた。年始のこんなにぎわいが海業から広がったらうれしい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170556 via 日刊建設工業...

静岡県、浜松市/遠州灘海浜公園・篠原地区利活用推進協が発足、構想具体化へ議論開始

 静岡県と浜松市は、遠州灘海浜公園(篠原地区)利活用推進協議会(会長・増井浩二副知事)を設置、28日に県庁別館で初会合を開く。浜松市内に計画している野球場を中心とした公園と周辺エリアも含めた利活用構想や具体的な計画、野球場の規模や事業手法などを検討する。昨年7月に策定した基本計画を踏まえ、実現に向けた両者の協議がスタートする。協議会は2025年度も継続するとし、丁寧な議論を重ねる方針。  浜松市沿岸部に位置する遠州灘海浜公園(篠原地区)は、市総合水泳場(ToBiO)を含めた面積が約36ヘクタール。場所は中央区篠原町。基本計画では、中核となる野球場は屋外型(照明あり、なし)、ドーム型など複数案を示し、収容人数も1万3000~2万2000人と幅を持たせた。第2野球場や多目的広場、健康広場などの整備も盛り込んだ。  協議会は県の交通基盤部、スポーツ・文化観光部、経済産業部、教育委員会など、市の企画調整部、都市整備部などで構成し、幅広い視点で議論する。民間のノウハウなどを最大限に取り入れ、野球場だけでなく公園周辺や交通アクセスを含めたエリア一体の利活用構想、構想に基づく具体的な計画、野球場の規模や構造を検討する。県と市、民間の役割分担、費用負担、事業手法も検討する。  県はこれと並行し、篠原地区の利活用構想策定を進めている。業務はPwCアドバイザリーが担当。本年度の業務では野球場の規模や構造など3案程度に絞り込む。25年度は改めて業務を委託し、内容の熟度を高めていく予定。 from...

竹中工務店ら/スギCLTの木目生かす準不燃材を開発、高透明性塗料を塗布

 竹中工務店らは、スギを加工したCLT(直交集成板)に透明性と耐久性に優れた難燃化塗料を塗布した内装向けの準不燃材料を開発した。このほど同社単独で準不燃材料の国土交通大臣認定を取得。建築基準法の内装制限を受ける天井や壁の仕上げで、スギCLT表面の木目がきれいに見える温かみのあるデザイン空間を実現する。当面は同社が設計、施工する物件に適用を検討し、将来的には他社のゼネコンなどが施工する物件にも適用拡大する方針だ。  カシュー(さいたま市北区、戸次強社長)、長瀬産業(東京都千代田区、上島宏之社長)、ナガセケミカル(東京都中央区、荒島憲明社長)と共同で開発した。竹中工務店は防火性の実証と施工性の評価、カシューは新規塗料の配合設計や塗装作業性向上に向けた検討、長瀬産業とナガセケミカルは新規塗料を開発するための材料提案、調達をそれぞれ担った。  建築基準法では可燃物の木材を内装材として壁や天井に使用する場合、同法の内装制限に適合させる必要がある。一般的に木材表面に難燃化材料を塗装し対応しているものの、従来の難燃化塗料に含まれる無機系難燃剤は透明性を低下させる場合があり、木目を長期間きれいな状態で見せることに課題があった。  今回開発した準不燃材料には無機系難燃剤を含まない水ガラス系塗料を用いることにより、従来の難燃化材料に比べ透明性を高めた。さらに木材と塗膜の追従性を高める下塗り塗料と、耐水性に優れた上塗り塗料を組み合わせて耐久性も改善。スギCLTに塗布することで高い透明性と耐久性を持ち、難燃性も兼ね備える準不燃材料を実現した。  施工性も向上し、準不燃材料とするための塗装は工場だけでなく建設現場でも可能となる。  竹中工務店はスギCLTに塗装するための「燃エンヌール」工法も確立。自社で設計、施工する延べ3000平方メートル程度のオフィスや店舗、病院に適用を目指す。将来的には用途を拡大し、他社が施工する物件への適用も視野に入れる。 from...

2025年1月15日水曜日

回転窓/大相撲聖地の行方

 大相撲人気が再燃している。チケットは2023年九州場所12日目から今年の初場所千秋楽まで連続完売中。若貴ブームで666日間の満員御礼が続いた平成初期の記録更新が期待される▼日本相撲協会は「相撲好き女子(スー女)」と呼ばれる若い女性を意識したSNSの広報や、推し力士の応援グッズ販売に注力しファン層を拡大した。大相撲を題材にしたネットフリックス配信ドラマ「サンクチュアリ-聖域-」の世界的ヒットもあり訪日外国人旅行者の観戦も目立つ▼今年は協会にとって財団法人設立100周年の節目となる。初場所2日目の13日には年末までにさまざまな記念事業を行っていくことが発表された▼注目すべきは昨年11月に竣工40年を迎えた両国国技館。八角理事長は年初にスポーツ紙の取材で、建て替えるか維持するか在任中に道筋を付けると明言した▼体育館や武道館、アリーナと名の付く屋内スポーツ施設は多いものの、国技館は一つしかない。協会による検討の行方が気になるが、どんな形になったとしても大相撲の聖地にふさわしい厳粛さと熱狂の名勝負を生み続ける空間であり続けてほしい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170512 via 日刊建設工業...

東亜建設工業ら/バイオ燃料FAMEの製造・販売に向け検討、異業種連携で脱炭素化

 東亜建設工業と石油製品販売の三和エナジー(横浜市港北区、高松克行社長)は、廃食用油からバイオディーゼル燃料(FAME)を製造・販売する共同事業の検討を始めた。三和エナジーの製造・供給のノウハウと、東亜建設工業の臨海地区でのプラント整備などの知見を持ち寄る。両社はバイオ燃料事業の立ち上げに向けたFS(事業化可能性調査)を始め、製造から販売までワンストップ体制の構築を目指す。東亜建設工業は異業種連携により燃料分野の脱炭素化を促進する。  今回のFS検討は、異業種連携の第3弾となる。三和エナジーは埼玉県狭山市に日本最大級のバイオ燃料製造工場(新狭山工場)を保有。バイオ燃料の大量製造に関する知見を持ち、建設現場への燃料配送事業の豊富な経験を生かし、バイオ燃料の製造・供給を担うことができる。  両社は事業確立に向け横浜市の臨海部に、海上出荷設備を備えた国内最大規模のバイオディーゼル製造工場を稼働させる方針。製造能力は1カ月当たり500~600キロリットル。供給開始時期は2026年度を予定している。東京湾を中心に陸上・海上を問わずバイオ燃料の供給網を確立する。  海洋土木工事で使用する作業船は、化石燃料由来の二酸化炭素(CO2)を多く排出しており、省エネ施工の推進とともに、代替燃料の活用に取り組む必要がある。  現在、船舶への代替燃料の供給体制が十分ではなく、CO2排出量の削減の進捗に課題が多いことから、東亜建設工業は代替燃料の製造・供給の可能性を検討していた。 from...

全建協連/自民・森山裕幹事長に要望活動、持続可能な地域建設業実現へ

 全国建設業協同組合連合会(全建協連)の青柳剛会長ら幹部は10日、東京・永田町の自民党本部に森山裕幹事長を訪ね、持続可能な地域建設業の実現を要望した。▽公共事業予算の確保▽柔軟な働き方改革と働き方特区の創設▽全国建設研修センターを活用した外国人の受け入れ-の3点を求めた。地域の守り手の役割が大きくなる中、持続可能な働き方や人材の確保・育成の在り方を訴えた。=2面に関連記事  公共事業予算の確保では、国土強靱化実施中期計画の年度内の策定を要望。予算規模は5カ年の場合25兆円程度とした。実施中期計画を踏まえた2025年度補正予算の早期編成も求め、24年度を大きく上回る予算の確保と地方への重点配分を訴えた。  働き方改革は地域ごとに異なる事情を踏まえた柔軟な取り組みの重要性を強調した。天候による影響を受けやすい建設現場では月単位の完全週休2日の実現が困難とも指摘。工期内での通期週休2日を基本とした上で、全体的に工期を伸ばす工夫が必要と提言した。  国の直轄工事で一律に行われている月ごとの週休2日制を実施した場合の工事成績への加点は、公平性に欠けるとして改善を訴えた。猛暑日の生産量の低下を考慮した歩掛かりの修正や共通仮設費・現場管理費の改善も求めた。  外国人材の受け入れについて建設業は、技能実習生や特定技能者といった外国人材の活用が不可欠になるとし、外国人材向けの教育体制の整備を要望。全国建設研修センターに「外国人技術者等向け日本語研修コース」を設置するなど、積極的な施策展開を訴えた。  青柳会長は「地方はさまざまな問題を抱えており、熱中症対策を踏まえた工期設定も必要だ。これらの問題も踏まえて地域建設業の担い手の確保・育成に向けた取り組みをお願いしたい」と森山幹事長に要望書を手渡した。森山幹事長は「皆さんには地域を守っていただいている」と応じた。  要望には全建協連の二瓶重信、木下修、安藤繁之、藤田護各副会長と蔵谷伸一政策参与が同席。佐藤信秋参院議員も同行した。 from...

三田小山町西地区再開発(東京都港区)/戸田建設、大成建設で新築着工

 東京都港区で活動する三田小山町西地区市街地再開発組合(宮川昭理事長)は11日、再開発施設の新築工事に着手した。組合関係者や設計・施工者らが集まり、工事の無事完成を祈願した。設計をアール・アイ・エー、施工は戸田建設と大成建設が担当している。施設は総延べ17・7万平方メートルの規模になり、2028年度の竣工を目指す。  同日現地で起工式を開いた。神事ではアール・アイ・エーの梅澤隆社長が鎌入れ、宮川理事長が鍬入れ、戸田建設の大谷清介社長と大成建設の土屋弘志副社長執行役員営業総本部長が鋤入れに臨んだ。  起工式に続いて開いた祝賀会で宮川理事長は、まちづくりに向けた地元組織の設立から着工まで約40年かかった経緯に触れ、「長い道のりは山あり谷ありだったが、ようやく着工に至り、感無量だ」と述べた。区域内ではお祭りなど古くからの行事が続いているとも語り、「愛され続ける、愛着を持ってもらえる三田小山町のまちづくりを進めていきたい」と展望を話した。祝賀会に出席した清家愛港区長は「大規模災害に備え、防災備蓄倉庫の設置や帰宅困難者対策など、地域への貢献が期待される」と述べた。  計画地は三田1(区域面積約2・5ヘクタール)。東京メトロ・都営地下鉄麻布十番駅の南東に位置する。区域内を南北の2街区に分け、北街区に地下1階地上42階建てのA棟と、地下1階地上8階建てのオフィス棟を建てる。総延べ床面積は約10・7万平方メートル。  南街区には地下1階地上31階建てのB棟と、地下1階地上16階建てのC棟を設ける。総延べ床面積は約7万平方メートル。南北両街区を合わせ、共同住宅(1409戸)やオフィス、店舗、保育園などを整備する。駐車台数は506台。  事業を可能にする都市計画は16年度に決定され、20年度に本組合の設立、22年度に権利変換計画が認可された。組合には参加組合員として▽三井不動産レジデンシャル▽日鉄興和不動産▽三菱地所レジデンス▽首都圏不燃建築公社-の4社が参画している。 from...

2025年1月14日火曜日

関西鉄筋工業協組/絵本で伝える鉄筋の魅力、梅花女子大の学生4人に表彰状

 関西鉄筋工業協同組合(岩田正吾理事長)と梅花女子大学(河村圭子学長)の産学連携による絵本制作プロジェクトの成果をたたえる表彰式が9日に大阪府茨木市内の同大学キャンパスで行われた。4人の女子大学生が制作した絵本『3びきのこぶたとつよいおうちのひみつ』は子どもやその保護者に鉄筋工事の重要性を伝えるユニークな試み。昨年11月に開かれた子ども向けキャリア体験イベント「みらいのたからばこ2024大阪」で配布された。  冒頭、河村学長は「学生の皆さんの感性が生きた素晴らしい作品だ。鉄筋とコンクリートを人間の骨と筋肉に例えた発想は秀逸で、大変感激した」と述べた。  続いて岩田理事長があいさつに立ち「われわれにはない発想で重要なメッセージを端的に伝えている。未来の担い手育成の第一歩として意義深い取り組みだった」と称賛。業界が直面する人材不足の課題にも触れ「こうした活動が建設業界の魅力を広く伝える大きな力になる」と語った。  学生たちもそれぞれ感想を語り、テナ愛子さんは「鉄筋工事について何も知らなかったが制作を通じて重要さを学んだ」と振り返り、出村彩乃さんは「この活動が子どもたちの将来の夢のきっかけの一つになったらすごく素敵なこと」と語った。藤村優姫さんは「父が絵本を見て『いいじゃん』と褒めてくれたことが一番うれしかった」と個人的なエピソードを交え、渡邉なごみさんは「子どもたちもきっと喜んでくれたはず。制作に関わったことを誇りに思う」と話した。  学科長の藤井奈津子教授は「なじみ深い物語を鉄筋の仕組みと組み合わせたことで幅広い世代が楽しめる作品が生まれた」と述べた。指導教員の目久田純一准教授も「学生たちが未知の業界と向き合い新たな価値を生み出したことに大きな意義がある」と振り返った。  国土交通省不動産・建設経済局の職員は「こども霞が関見学デー」での絵本の活用を提案し、絵本の教育的価値と分かりやすさを高く評価した。  最後に岩田理事長は絵本の続編制作に関して、学生たちの感性を生かしつつ、他の専門工事業種も含めた新しいストーリー展開の可能性にも言及。大阪・関西万博で予定される「みらいのたからばこ」への出展も見据え、さらなる連携を大学側に呼び掛けた。  絵本では3匹の子豚が鉄筋を使って「オオカミにも壊されない強い家」を造る方法を学ぶ姿が描かれている。キャラクターのデザインも学生自ら考案した。 from...

回転窓/メリケン波止場の30年

 神戸のメリケン波止場は1860年代に第三波止場として造られた。一説では近くに米国領事館があり、当時の人々が「アメリカ」を「メリケン」と聞き間違えて波止場の名称になったという▼時代は移り変わり、1987年に中突堤との間を埋め立てて造成されたメリケンパークが完成。その東端に位置するメリケン波止場は、95年1月の阪神・淡路大震災で護岸が崩れるなど大きな被害を受けた。現在は被災した波止場の一部がそのままの状態で保存され見学できる▼震災発生の数日後、先輩記者らと取材先の船に乗せてもらい神戸港に着いた。陸路の交通渋滞を避けるためで、記事を読み返すと新港第一突堤に着岸している▼被災地に急ぎ向かったものの都市直下型地震のすさまじい被害を目の当たりにし、一体何から取材したらいいのか途方に暮れてしまった。そんな中で懸命に救援物資の調達や復旧工事を進める建設業の人たちがどれほど頼もしく見えたことか▼先日久しぶりに神戸を訪れ、波止場の震災遺構を見学した。震災から30年。復興を遂げ繁栄する神戸で、崩れた波止場はこれからも貴重な教訓を伝えてくれる。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170484 via 日刊建設工業...

堺市/入札契約制度見直し、低入札調査基準額を1・5億円以上に引き上げ

 堺市は入札契約制度を見直し、低入札価格調査制度の適用対象工事の基準額を予定価格(税込み)1億1000万円以上から1億5000万円以上に引き上げる方針を示した。これに伴い原則として1億5000万円以上の案件では総合評価方式を導入し、1億5000万円未満の案件には最低制限価格制度を適用する。さらに低入札価格調査を経て契約する際の履行確保措置を追加し、国土交通省の施策に準じた制度強化を進める。  見直しはダンピング受注の防止や地域建設業の維持、生産性向上を目的としており、公共工事の品質確保と持続可能な建設業の発展を後押しする。正式な制度改正は4月1日以降の発注案件から適用する予定で、関連要綱の改正内容は2月ごろに公表する。  国交省では低入札価格調査の実効性を確保するため、失格基準価格や特別重点調査制度、施工体制確認型総合評価制度などを組み合わせた運用を働き掛けている。いずれも低価格での応札が不利となったり、一定規模以上の工事などで調査に対応する負担が増したりする仕組みで、ダンピング受注の防止に効果的とみている。  具体的には調査基準価格を下回る受注でも、手抜き工事、下請しわ寄せ、契約不履行にならないよう、工事品質、下請代金、契約履行徹底のための五つの措置は▽監督・検査の強化▽技術者の増員▽下請業者への公正・透明(クリア)な支払いの確認▽契約保証額の引き上げ等▽工事請負契約に係る指名停止措置の強化-の五つの措置「かきくけこ」を推奨している。 from...

東京都/西武新宿線・井荻駅~西武柳沢駅連立事業、用地取得を推進

 東京都が主体となって進めている西武新宿線の連続立体交差(連立)事業が新たな段階に入った。井荻駅(杉並区)~西武柳沢駅(西東京市)の高架化に向け、2024年12月に用地補償説明会を実施。高架橋沿いの側道や駅前広場などとして活用する土地を取得する方針だ。今後は土地や建物所有者などとの交渉を続け、まとまった用地が確保できた時点で、次の段階である工事説明会を開く。  連立事業では▽東伏見駅(西東京市)▽武蔵関駅(練馬区)▽上石神井駅(練馬区)▽上井草駅(杉並区)-も高架化する。同12月の用地補償説明会は18日に東伏見駅、19日上石神井駅、20日武蔵関駅、21日上井草駅の近くの小中学校で開いた。駅前広場として使う土地は地元区市が取得し、整備する。  都は工事着手に向け、これまで21年11月に都市計画決定し、24年3月に国から都市計画事業認可を取得した。都建設局は事業認可取得時点の事業費として2660億円と見積もった。ただ、建設費の上昇局面が続いていることもあり、建設局の担当者は「今後の物価動向を踏まえて変動する可能性もある」との見通しを示した。  事業区間は杉並区上井草1から西東京市東伏見1までの東西方向に伸びる5・1キロで、立体化により1時間当たり約40分以上閉まる「開かずの踏切」12カ所を含む19カ所の踏切を除去する。区間内の5カ所で交差している都市計画道路のスムーズな通行も実現する。  高架後の一般部の高さは5~12メートルで、駅部は15~19メートルとなる予定。側道は線路の北側で延長約3キロ整備する。24年3月の事業認可時取得時に示した事業期間は37年度までとなっている。 from...

福岡県苅田町/新庁舎建設基本計画素案を公表、事業手法はDB・概算事業費92億円

 福岡県苅田町は新庁舎建設基本計画の素案を公表した。老朽化に伴う本庁舎の現在地(富久町)建て替えに向け、事業手法として設計・施工一括(DB)方式を採用することを決定。別棟や車庫、倉庫棟などを含めた概算事業費は約92億円(税込み、以下同)と試算した。早ければ2025年度にDB事業者選定に向けたアドバイザリー業務を委託し、26年度後半~27年度で事業者を選定する。同年度末に設計に着手し、30年度中の供用開始を目指す。  現庁舎の建物規模はRC造6階建て塔屋1階延べ5975平方メートル。老朽化とともにバリアフリー化や防災拠点としての機能拡充などが求められ、改修ではなく全面建て替えとする方針を固めた。  建て替えに当たっては公共施設全体の効率化の観点から、庁舎敷地内にある三原文化会館(RC造2階建て延べ1718平方メートル)などと複合化。小波瀬水防倉庫(与原)や失業対策事業詰め所・勤労者休憩所(磯浜町)といった町内各地の行政系施設は庁舎機能に含める形で再編する。  新庁舎の必要面積は、庁舎機能が延べ約8200平方メートル、文化会館など複合化する機能が延べ約1800平方メートルとし、基本構想と同程度の総延べ約1万平方メートルに設定した。  施設配置については敷地の西側に庁舎棟、中央寄りに別棟を整備。別棟の北東側に車庫・倉庫棟を設け、東側一帯を駐車場(448台収容)とする。国指定史跡「石塚山古墳」の隣接地であるため、25年度以降に文化会館などを解体した後、文化財調査を実施。この結果、敷地西側への庁舎配置が厳しいと判断した場合は、全体の配置計画を見直す考え。  概算事業費のうち、本体工事費は庁舎棟が約58億6000万円、別棟が約12億9000万円。設計監理費は庁舎棟が約3億1000万円、別棟が約7000万円を見込む。  24日まで素案に対する一般からの意見を募集し、24年度内の計画を策定する。  基本構想・基本計画策定業務はニュージェックが担当している。 from...

若築建設/1万t級ケーソン積載のFD建造、外郭施設を含む港湾整備事業に活用

 若築建設はケーソンを安全確実に製作・進水させる作業船、フローティングドック(FD)を新造する。積載能力は1万トン級。既存のFDと比べジブクレーンの性能を50%程度アップさせ、鉄筋のユニット化や鋼製型枠の大型化などに柔軟に対応できる。施工現場の生産性向上や労働安全性の確保、環境負荷の低減につなげる。国土強靱化や防災・減災対策など社会資本整備、外郭施設を含む港湾整備事業に活用する。2027年度中の完成を目指す。  巨大なコンクリート製ケーソンの製作スペースが、陸上に確保しにくい場合も多い。FDは海に浮かぶ製作場としての役割を果たす。さらに、完成したケーソンを海上に浮かべて設置場所までえい航し、安全に進水させる。  新造船はジブクレーンの性能を高めたほか、遠隔操作機能も付加。つり荷の玉掛けとクレーンの操作を兼務できるため、省人化と労働安全性を確保する。コンクリート打設装置「ディストリビューター」を搭載でき、コンクリ打設作業の時間短縮、省人化、省力化が期待できる。ランプウェイ(船と岸壁を橋渡しする貨物用の出入り口)を常備しており、ポンプ車や資材運搬車がFDに直接乗降できるため、特に低階層での作業効率が確実に向上する。  注排水ポンプの能力は既存FDと比べて60%程度向上。ケーソン進水時の作業時間が短縮され、海象条件の急変にも柔軟に対応できる。注排水を遠隔集中制御(管理)することで、常に適正な船体姿勢を自動で保ち安全性を確保する。  環境負荷低減のため、蓄電システムを導入する。クレーンやポンプが稼働していない低負荷時の余剰電力を蓄電し、発電機とハイブリッドで電力供給する。将来FD係留岸壁に外部電源が導入されれば、ジブクレーンの動力源を外部電源にするのも可能。二酸化炭素(CO2)の排出を大幅に削減できる。 from...

2025年1月10日金曜日

回転窓/定点観察者として

 「あなたの役割は定点観察ではないか。人の集う復興が進むよう報道し続けてほしい」。20年余の記者生活で一番突き刺さったひと言だ。東日本大震災に伴う東京電力福島第1原子力発電所事故で混乱の最中にあった2011年5月。福島県南相馬市で知人女性の父に言われた▼商業店舗の経営者として仕事を続けていたが、娘の帰郷は拒んでいた。同市での取材後に知人から託された近況写真を持参した。うれしさや寂しさ、悔しさが入り交じった表情を前に、かける言葉が見つからなかった▼専門紙は定点観察メディアだと思う。本紙は、安全・安心な国土づくりやそれを支える関係者にとって有益な情報を扱うのが基本。変わることと変えてはいけないことを書き続けてきたが、反省点も多い▼00年代に建設投資が先細りし多くの人が去った。あの時に国土強靱化を加速していれば現場対応力は違っていたはず。担い手不足もインフラ老朽化も予見可能な未来であったが、訴える力が足りなかった▼ぶれない姿勢を大事にしつつ、目指すべき社会に向かって鋭く発信しなければならない。そうした役割と覚悟が求められる。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170407 via 日刊建設工業...

全建/改正労働基準法Q&Aを改訂、復旧作業時の移動など追加

 全国建設業協会(全建、今井雅則会長)は、2024年4月に時間外労働の罰則付き上限規制が適用された建設業の実務者向け解説書を改訂した。「増訂版全建の改正労働基準法Q&A100+27~2024年時間外労働の上限規制対応」=写真は表紙=は23年の初版刊行以降、24年3月までに厚生労働省が発出したQ&Aの事例を追加記載。災害復旧時の移動や除雪作業に関連した労働時間などについて解説している。  初版は時間外労働規制の適用前、建設業界の実務者が最も留意すべき運用の解釈を中心に、上限規制に関する疑問点など100項目をQ&A形式で解説していた。今回これに27項目を追加。Q&Aを通じて会員企業の上限規制の確認や研修用資料などとしての活用を促す。  追加したのは「建設現場のクレーンオペレーターの移動は『自動車の運転の業務』の対象となるか」「被災地における災害復旧工事のための重機での移動時間は、法第33条第1項の対象となるか」「自治体等から災害協定に基づく要請を受けて労働者を自宅待機させる場合は法第33条第1項の対象となるか」といった疑問とそれに対する回答。交通誘導員の労働に関する解釈なども盛り込んだ。  増訂版の購入は全建の特設ホームページ(https://www.zenken-net.or.jp/book/index.php)で受け付ける。価格は送料別で1300円(税込み)。 from...

TKP/サッカー専用スタジアム整備、大分市に陸上競技場改修案など提案

 サッカーJ2・大分トリニータの運営会社の筆頭株主で、貸し会議室大手のTKPは、大分市中心部へのサッカー専用スタジアムの整備を検討している。TKPの河野貴輝社長が足立信也市長に中心市街地の活性化に向けたプランとして提案し、PFIを導入して市営陸上競技場「ジェイリーススタジアム」(西浜)を改修する案などを示した。  TKPによると同市出身の河野社長と足立市長が昨秋から複数回、中心市街地の活性化に関する意見交換を重ねる中で、河野社長がサッカー専用スタジアムの整備を提案したという。  現在の市営陸上競技場の収容人数は1万6000人程度。西側のメインスタント(延べ約5200平方メートル)のほかに芝生スタンドがある。全体の敷地面積は約3万平方メートル。  市営陸上競技場は日本陸上競技連盟の公認競技場であるが、2028年2月に公認期限を迎える。期限後には老朽化対策などの設備投資の在り方を考える必要があり、TKPの強みである既存施設の有効活用としてプランが示された。改修費用もチケット収入で十分にまかなえる範囲と見込んでいる。  大分トリニータの現在のホームスタジアムである大分スポーツ公園総合競技場「クラサスドーム大分」(横尾)は中心部から大きく離れた丘陵地に位置する。  市営陸上競技場は立地面では総合競技場に比べて中心市街地に近いものの、大分駅から徒歩40分程度とアクセスに大きな課題を残す。またサッカー専用化には陸上関係者との丁寧な協議も必要となる。そのためTKPは改修案をあくまで一つの候補とし、これ以外にも市中心部の未利用地への整備など複数のプランを提案したと説明している。  サッカー専用スタジアムを実際に整備するかは市側の判断次第だが、TKPはスタジアム周辺だけでなく市街地全体へにぎわいが波及するような形を目指したいとし、市街地活性化で同じ思いを持つ他企業がいればコンソーシアムを組むなど「積極的に連携したい」としている。 from...

大成建設ら/セメント不要のグラウト材開発、製造時CO2を8割削減

 大成建設とブイ・エス・エル・ジャパン(東京都新宿区、山村徹社長)は、環境配慮型のグラウト材「T-eCon/アンカーグラウト」を共同開発した。セメントを使わない結合材を使用することで、セメントと水の結合材に混和剤を混合した従来のグラウト材に比べ、製造時の二酸化炭素(CO2)排出量を約80%削減する。今後は仮設アンカーの山留め工で積極的に適用。数年以内に砂防・地すべり技術センターの認証取得を目指し、永久アンカーの斜面安定工や地山補強工でも適用を図る。  環境配慮型のグラウト材はVSLグラウンドアンカー工法に用いるグラウト材の環境負荷を低減するため、大成建設が開発した環境配慮コンクリート「T-eConcrete/セメント・ゼロ型」を応用して開発。セメントの代わりに高炉スラグ微粉末を主とする粉体などで構成する。  製造時のCO2排出量を約80%削減する通常型に加え、多様な施工環境に備え少量のセメントを添加する早強型も用意。通常型が緊張に必要な基準強度に達するまで施工後1週間程度かかるのに対し、早強型は3日に短縮する。製造時のCO2排出量も約75%削減できる。  名古屋市上下水道局が発注した「春日井浄水場沈澱池整備事業」の山留め壁に採用。仮設アンカー工の一部に早強型を約38立方メートル適用し、従来のグラウト材を用いた場合と同様の施工性や性能を確認した。 from...

2025年1月9日木曜日

回転窓/令和の列島改造論

 石破茂首相が6日の会見で「令和の日本列島改造」と銘打ち、地方創生の深化により「大胆な変革を起こす」と語った▼政府機関の地方移転を皮切りに、スタートアップの地域創業や大都市に立地する企業の本社機能移転を推進。デジタルを用いて交通や医療・介護などの利便性も高めるという▼コロナ禍以降、東京圏在住者の地方移住への関心は高まっている。内閣府が2023年4月に約1万人に実施したインターネット調査では、同3月時点で35・1%が「関心がある」と答え、20年5月から4・9ポイント上昇した▼テレワークが浸透し、場所を選ばない多様な生活や働き方も広がった。都市部の住民が同時に地方部にも生活拠点を持つ「二地域居住」や、普段の職場や自宅を離れ旅先でリフレッシュしながら仕事をする「ワーケーション」の増加も見込まれる▼首相が師事した田中角栄元首相の「日本列島改造論」では国土の均衡ある発展を提唱し、各地で集中して整備された高速道路や新幹線などが社会経済を支えてきた。ハードだけでないソフトの魅力に着目した令和の列島改造も、インフラが基盤であることに変わりはない。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170364 via 日刊建設工業...

愛知県/矢作川・豊川CNプロジェクト、堤防のり面活用し太陽光発電へ実証実験

 愛知県は、矢作川・豊川流域で「水循環」をキーワードに流域一体でカーボンニュートラル(CN)実現を目指す「矢作川・豊川CNプロジェクト」について、水インフラ空間をフィールドとする第1弾の官民連携実証実験に取り組む。堤防のり面へ設置する太陽光発電設備の開発(代表企業・パシフィックコンサルタンツ)とマイクロ水力発電システムを活用した環境学習(同・トヨタ自動車)の2件。河川(遊水地)堤防のり面に、のり面ブロックと一体となった太陽光発電設備を設置するのは全国初。  堤防のり面へ設置する太陽光発電設備の開発の提案者はパシフィックコンサルタンツ、積水化学工業、丸栄コンクリート工業。  再生可能エネルギーをさらに普及させるには、太陽光発電設備が設置可能なフィールドを拡大する必要がある。実証実験では、これまで設置検討がなされていなかった河川堤防ののり面を活用する。  従来型の太陽光発電設備の設置は困難なため、ペロブスカイト太陽電池などとのり面ブロックを一体化した製品を開発し設置。堤防機能を損なわない設置方法、発電効率やメンテナンス方法などを確認する。ブロックは低炭素型製品を使用する予定。河川以外ののり面への展開も期待する。場所は幸田町の菱池遊水地の周囲堤。実施期間は4月から2026年3月ごろまで。  マイクロ水力発電システムを活用した環境学習の提案者はトヨタ自動車、岡谷鋼機、川本製作所、オキナヤ、リバー・ヴィレッジ。未来を担う子どもたちに、再生エネルギーの創電体験を通じCNの意識や創電技術に関する興味や関心を持ってもらうため体験型の環境学習を行う。豊田市内の小学校に屋内モデルを設置する。21日に体験学習を開き、継続的に実施する。 from...

奈良県/新天辻工区第1号トンネル詳細設計など2件入札公告

 奈良県は、国土交通省と整備を進めている国道168号「五條新宮道路」(延長130キロ)の内、県が施工する「新天辻工区」(7・2キロ)のトンネル詳細設計業務を委託する。約5キロの長大トンネルなど3本のトンネルを整備する。16日まで一般競争入札(総合評価方式)の参加申込書、29日まで技術提案書を受け付ける。入札書の提出期間は2月20~28日。開札は3月3日。落札候補者から事後の提案書の提出を受け、参加資格を確認した上で落札決定する。  7日に公告したのは「一般国道168号新天辻工区(仮称)第1号トンネル詳細設計業務」「同工区(仮称)第2号・第3号トンネル詳細設計業務」。  参加資格は建設コンサルタントの「道路」「トンネル」、「地質」または「道路」「トンネル」、「土質及び地質」部門の資格を持ち、県内に本店または営業所を置くこと。国や地方自治体、高速道路会社などが発注した山岳トンネル詳細設計業務の元請履行実績があること。  入札価格の評価点は最高60点、配置予定技術者の経験や能力、業務の実施方針などに対する技術評価点は最高60点とし、合算して評価値を算定する。  新天辻工区は五條市大塔町阪本から西吉野町阪巻までの7・2キロ。設計速度は時速60キロ。片側1車線で幅員8・5メートル。北側の第1号トンネルは延長4970メートル、第2号トンネルは1099メートル、第3号トンネルは265メートル。いずれも幅員は10メートル。  業務内容は第1号トンネルが本体工設計(トンネル断面と支保工設計、掘削方式と工法の検討)、坑門工設計、防水工設計、排水工設計、舗装工設計、非常用施設設計、施工計画・仮設備計画の検討など。業務場所は大塔町阪本~西吉野町立川渡。業務期間は2026年3月19日まで。予定価格は1億4386万9000円(税込み)。  第2号・第3号トンネルは本体工設計(支保工、掘削工法などの修正設計)、坑門工設計、排水工設計、舗装工設計、非常用施設設計、施工計画・仮設備計画の検討など。業務場所は西吉野町立川渡~阪巻。業務期間は26年3月19日まで。予定価格は1億1022万円(同)。 from...

東京都/山間部でコンクリート舗装を推進、災害時の被害軽減へ

 東京都は多摩地区の山間部を中心に、コンクリート舗装をさらに採用していく。トンネル舗装の新設や改修、急勾配道路の舗装敷き直しといったタイミングで積極的に取り入れる。耐熱性や耐久性に優れるコンクリート舗装は、能登半島地震でも被害の軽減などが見られたという。こうした特性を生かし、災害時の被害低減につなげる考えだ。  コンクリート舗装は耐久性が高く、地震の揺れにも耐える効果が見込まれる。耐熱性があるため、火災時にも燃えにくく、特にトンネル内では安全性も向上する。急勾配の道路では、アスファルト舗装に必要な転圧作業などが困難なため、従来コンクリート舗装で対応している。  コンクリート舗装にはアスファルト舗装と比べ、打設後の養生期間が長いという課題もある。加えて、水道管やガス管など地下埋設物があると、管を別のルートに接続する作業が必要となり、通行止めの期間がさらに長くなる。交通量の多い都心部では、通行止めの時間が長いと経済活動などに影響を与える。  都はコンクリート舗装のメリットとデメリットを踏まえ、山間部を中心に採用を一層進める。山岳部のトンネルは地下に埋設物が少なく、コンクリート舗装に向いている。都はこれまでも山間部のトンネル内の道路にコンクリート舗装を採用してきた。現在、都内の山間部にあるトンネルは約20カ所。今後トンネルの新設だけでなく、道路舗装を改修する時もコンクリート舗装を適用する方針だ。 from...

東亜建設工業/常滑港(愛知県常滑市)で藻場造成事業、物流企業と業務提携

 東亜建設工業は、愛知県常滑市沖の常滑港樽水地区でアマモ場造成プロジェクトを始めた。名古屋港を基盤とする総合物流企業のフジトランスコーポレーション(名古屋市港区、系井辰夫社長)と業務提携契約を締結。伊勢湾内でアマモ場の造成事業を共同推進し、豊かな伊勢湾の再生に貢献する。施工フィールドとして建設事業を展開してきた伊勢湾の環境改善に貢献し、二酸化炭素(CO2)排出量の削減などカーボンゼロ社会の実現を目指す。履行期間は2029年3月末まで。  アマモ場造成プロジェクトは、同湾内の水質浄化能力の向上や水産資源の維持増大、生産の安定化を図り、豊かな伊勢湾再生につなげるのが目的。フジトランスコーポレーションは、航行中に排出するCO2をアマモ場で吸収することを計画する。生物多様性の保全にも貢献していく。  Jブルークレジット(海洋生物の作用によってCO2を海中に固定する取り組みを促進する制度)も創出する。カーボン・クレジットの創出で得た収益は、さらなるアマモ場造成事業に充てることで、持続的な海域環境改善につなげていく。 from 企業・経営 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170366 via 日刊建設工業...

2025年1月8日水曜日

阪神・淡路大震災30年/防災学術連携体、社会と科学の新たな関係テーマにシンポ

 防災学術連携体(渦岡良介代表幹事、米田雅子代表幹事)は7日、「阪神・淡路大震災30年、社会と科学の新たな関係」と題したシンポジウムを開いた。オンラインで配信した。  渦岡代表幹事は「今年、阪神・淡路大震災30年の節目を迎える。震災以降防災に関する科学技術や社会制度は進歩している。この30年を振り返りながら、社会と科学の新たな関係を築くための課題を考えたい」と話した。  日本学術会議22・23期会長の大西隆東京大学名誉教授は「阪神・淡路大震災は、復興の在り方を議論するきっかけになった。このシンポジウムでは、不可避な自然災害を社会がどう受け止めて命と暮らしを守るのかを皆で議論する機会としたい」と語った。  基調講演では和田章東京工業大学名誉教授が「脆弱(ぜいじゃく)な社会が生んだ大震災」をテーマに基調講演を実施。兵庫県内の地震の歴史や阪神・淡路大震災発生後の現地の様子、動向などを振り返った。  その後、建物・インフラなどの被害と対策や救援・医療・避難といった応急対応の変化と課題などの4セッションを開催。関係学協会からの発表も行われ、識者らが意見を交わした。 from 行事 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170339 via 日刊建設...

回転窓/半島の名所と防災力

 今年の正月はのんびり実家で過ごそうと、家族を連れて静岡県の伊豆に里帰りした▼伊豆半島には風光明媚(めいび)な観光スポットが数多く存在する。季節ごとにさまざまな顔を見せ、作家・川端康成も小説「伊豆の旅」の中で絶賛している▼メディアで取り上げられることの多い伊豆だが、地元でもあまり知られていない隠れた名所も。この時期は半島のほぼ南端に位置する下田市の爪木崎で、野生の水仙が見頃を迎えている。海岸に自生する300万本の白い水仙と赤い花を咲かせるアロエとのコントラストが美しく、目の前に広がる光景にとても感動した▼爪木崎と最寄りの伊豆急下田駅を結ぶ道路は山道を除くと県道のみ。災害で市街に通じる道路が寸断される恐れがある。平地が少なく三方を海に囲まれた地域で、災害への備えを強化する「半島防災」の機運が一段と高まる▼10年ごとに見直される議員立法の半島振興法の改正が2024年度末に控える。自民党は能登半島地震の教訓を踏まえ、同法改正案の大綱に住民の孤立防止対策を推進することを明記した。地域の振興と併せ、防災力の強化も忘れてはならない。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170337 via 日刊建設工業...

高松市/25年度予算要求、ことでん太田駅~仏生山駅間に新駅整備

 高松市は、まちづくりプランに関連する重点取り組み対象事業の2025年度予算要求状況をまとめた。地域公共交通再編事業に6億13百万円を要求。高松琴平電気鉄道(ことでん)琴平線の太田駅~仏生山駅間の新駅整備や、鉄道を基軸としてバスが担う最適な圏域を構築する運行路線の再編に取り組みたい考えだ。  付属医療施設(塩江分院)整備事業の要求額は17百万円。みんなの病院との機能分化や連携強化を図り、外来や訪問診療、訪問看護など在宅療養支援を行う無床の診療所整備を計画している。  サンクリスタル高松リニューアル事業には2億39百万円を要求している。図書館システムの改修、菊池寛記念館と歴史資料館の展示室設備の改修などを予定している。犬猫一時保管施設整備事業の要求額は2億75百万円。  民間活力の導入による中央公園再整備事業は5億98百万円、次期ごみ処理施設整備事業は4億51百万円、ウォーカブルシティ推進事業は58百万円、地理空間データ基盤整備事業は17百万円を要求した。 from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170344 via 日刊建設工業...

東日本高速東北支社/25年事業計画、利府しらかし台IC~富谷JCT間4車線化着手

 東日本高速道路会社は10月、2005年の設立から20周年の節目を迎える。21年度にスタートした中期経営計画で、東北支社は25年度には中核事業の床版取り換えに26カ所で新規着手する。進行中の工事と合わせて5カ年で計94橋をリニューアルする。社会的使命である「快適で便利な高速道路の提供」に注力。老朽化が進む高速道路の安全・安心を確保するため、確実に工事を推進していく。  中期経営計画で方針の一つに掲げている「高速道路の整備・強化と4車線化の推進によるネットワーク機能の充実」関連で、仙台北部道路・利府しらかし台(宮城県利府町)~富谷JCT(富谷市)区間の延長6・6キロで4車線化事業に着手する。秋田自動車道の湯田IC(岩手県西和賀町)~横手IC(秋田県横手市)区間、常磐自動車道の浪江IC(福島県浪江町)~南相馬IC(南相馬市)区間では4車線化工事を全面展開。同・相馬IC(福島県相馬市)~新地IC(新地町)区間は工事を公告中だ。磐越自動車道・会津坂下IC(福島県会津坂下町)~西会津IC(西会津町)区間は付帯工工事を施工している。  3月には常磐道が全線開通から10年目を迎える。福島県浜通りの高規格道路として、復興や地域活性化などに貢献。仙台圏と首都圏を東北道自動車道とのダブルネットワークで結び、道路網の確保や沿線の振興などに寄与してきた。10周年を記念し、利用者や地域住民への感謝の気持ちを込めたさまざまなイベントを予定している。 from...

2025年1月7日火曜日

回転窓/忘れてはならないこと

 「人は忘れる生き物」と言われるが、甚大な被害が発生した自然災害で得た教訓や知見は決して忘れず、防災・減災につなげていかなくてはならない▼本紙は元日特集号「安全・安心な国土づくり」を発行した。阪神・淡路大震災から30年の防災・減災や国土強靱化の取り組みを振り返りつつ、今後の施策などを展望している▼能登半島地震から1年がたつ1日、3カ月前の豪雨での犠牲者を含めた追悼式が石川県輪島市で開かれた。石破茂首相は式典で「世界有数の災害大国であるわが国を世界一の防災大国にすべく力を尽くす」と決意を新たにした▼防災大国の実現に向け、政官民の多くの人たちが日々奔走している。その一人で建設職域代表の足立敏之参院議員が昨年末に亡くなられた。建設省(現国土交通省)時代は土木技術者としてダムなど治水事業に従事。国会議員となってからは公共投資やインフラ再生の重要性を訴え、被災地にも頻繁に足を運んで復旧・復興を後押ししてきた人である▼激甚化、頻発化する自然災害のリスクは高まるばかり。足立氏の安全・安心な国土づくりへの強い意志を引き継いでいきたい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170306 via 日刊建設工業...

建築家・原広司氏が死去/数多くの象徴的作品、代表作に京都駅ビルなど

 建築家で東京大学名誉教授の原広司(はら・ひろし)氏が3日、老衰で亡くなった。88歳だった。葬儀は近親者で行う。喪主は妻の若菜(わかな)さん。後日お別れの会を開く予定。代表作は、ランドマーク的建築で世界的にも有名な京都駅ビル(京都市下京区)、梅田スカイビル(大阪市北区)などがある。個人住宅や美術館、教育施設、高層建築、ドーム建築など幅広く設計を手掛けた。  1936年神奈川県生まれ、64年東大大学院数物系研究科建築学専攻博士課程修了(工学博士)。東大生産技術研究所で助教授、教授を務めた。97年に退官し、名誉教授となった。  70年からアトリエ・ファイ建築研究所と協働を開始し、99年に原広司+アトリエ・ファイ建築研究所に改称した。大学で教壇に立ちながら設計活動を行い、山本理顕氏、隈研吾氏など多数の建築家を輩出した。東大生産技術研究所で構えた研究室での集落調査から、家族やコミュニティーを大切にする建築を導いた。  主な受賞は、日本建築学会賞、村野藤吾賞、BCS賞など。  2017年11月の日本建築学会近畿支部講演会では「建築での素晴らしい間をつくるのが目標」と話していた。 from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170310 via...

国交省/労務費の内訳明示、専門工事業団体の標準見積書作成促進へ

 国土交通省は各専門工事業団体に労務費・必要経費を内訳明示した「標準見積書」の作成を促す方針だ。法定福利費や安全衛生経費を内訳明示する従来の標準見積書の内容を「労務費に関する基準(標準労務費)」の導入を踏まえ見直してもらう。標準労務費と比較し適正かどうか判断可能とするため、見積書には労務費の総額だけではなく、歩掛かりを合わせて明記することを標準とする。  改正法では受注者に工事種別ごとの労務費や材料費、それ以外の必要経費を内訳明示した「材料費等記載見積書」を作成するよう努力義務を課す。この規定に沿って中小規模の下請業者でも適正な見積書を作成できるよう、業界団体側で標準見積書を用意する。そのための「作成手順」を国が先んじて提示する方向だ。  見積書に記載する労務費の額は、技能者の労務の「単価×歩掛かり×作業量」で算出することを基本とする。見積額の適正性を判断できるよう、歩掛かりとともに特記すべき仕様や条件も明記することにする。  法定福利費と安全衛生経費は国が以前から示す方法で内訳を明示する。安全衛生経費のように内訳明示が浸透途上の経費は、簡便な方法による内訳の示し方も許容する。最初に注文者に提出した「当初見積書」と、価格交渉を経て契約に反映した「最終見積書」の保存ルールも明記。見積もり・契約のプロセスで不適正な減額行為があった場合、事後的な検証を可能とする。  見積書作成の努力義務は元下間だけでなく受発注者間も対象となる。ただ特に民間工事で見積書の取り交わし方にさまざまなケースがあるため、受発注者間では元請が見積書の作成で順守すべき事項を国がガイドラインなどの形で提示する方向で検討する。 from...

25年がスタート/ゼネコン各社トップが年頭あいさつ、持続可能な産業へ挑戦と成長

 2025年がスタートした。6日に仕事始めを迎えた建設関連企業の経営トップが年頭のメッセージを社員に発信。建設需要は旺盛なものの、資機材価格や労務費の高止まりなど先行きの不透明感もあり、利益の安定確保を堅持する構えだ。コスト上昇が続くことを前提に、収益を継続的に増やしていける企業が生き残る時代に入った。持続的な成長に向けゼネコンでは「挑戦」「変革」「成長」「生産性向上」を掲げる社が目立った。=2、3面に各社の年頭訓示  24年4月に時間外労働の上限規制が適用された建設業は、生産性向上策や人的投資の加速で誰もが働きやすい環境にすることが求められる。大手ゼネコンのうち、鹿島の天野裕正社長は「現状維持は後退、衰退を意味する。ナレッジの整備やデジタル化、技術開発、品質確保に絶え間ない努力が必要だ」と訴えた。  清水建設の井上和幸社長は「安全と品質の確保」の徹底を掲げ「品質のシミズという企業ブランドを確固たるものにしたい」と意気込んだ。竹中工務店の佐々木正人社長は「いま取り組むべきさまざまな課題に真剣に向き合う姿勢を崩さずリーディングカンパニーの責任を果たす」と表明した。大林組の蓮輪賢治社長と大成建設の相川善郎社長は7日に訓示を行う。  24年11月に竣工した新本社ビルで訓示した戸田建設の大谷清介社長は「収益性だけではなく、ブランド価値も判断軸に加え、協力会社の維持・拡大のために中小規模案件を確保する」方針だ。熊谷組の上田真社長は「歴史と伝統を大切にしつつ、新たな挑戦へと踏み出し、持続可能な成長を追求する」と述べた。西松建設の細川雅一社長は「ボトムアップ型で社員自らが当事者として会社の未来予想図を発信できる風通しの良い企業風土の醸成に注力する」と表明した。  ウクライナ紛争の長期化、中東情勢の変化などを受け、世界経済の見通しは不透明にある。あるゼネコントップは「国内外で正直先行きが見通せない。どこに影響するか分からない」と不安を募らせる。「世界情勢などに左右されない企業基盤を構築する」と話した。  今年の干支は「乙巳」(きのとみ)。「再生や変化を繰り返しながら柔軟に発展していく年」になると言われている。経営トップの訓示からも「変化と成長」への強い決意が感じられた。 from...

2025年1月6日月曜日

あけましておめでとうございます。

あけましておめでとうございます。 本年もよろしくおねがいしま...

回転窓/ヘビの御年始

 福島県会津美里町雀林地区で毎年1月7日、伝統行事の「ヘビの御年始」が行われる。五穀豊穣(ほうじょう)や無病息災を祈願し、法用寺仁王門に1年間祭られていたわら製のヘビを子どもたちが担いで家々を回る▼かつて水不足で苦しんだ人々が地元の神社に水の神様である五龍王神を祭った。そしてこの龍を模して作ったわらの大蛇を仁王門に飾り、お参りするようになったのがヘビの御年始の起源という。町の観光ポータルサイトから引いた▼古くから信仰と畏怖の対象であったヘビにまつわる故事や伝承は多い。脱皮を繰り返し成長するヘビは「再生」「繁栄」の象徴とも言われる。今年の干支は「乙巳(きのとみ)」。過去の巳年にはベルリンの壁崩壊(1989年)、経済政策「アベノミクス」始動(2013年)などがあった▼1日発行の本紙新年企画特集号で年男・年女の方々に聞いた「今年の目標」を掲載している。勇往邁(まい)進、挑戦、追求、日々向上…。それぞれの思いが込められたコメントから、読んでいるこちらが元気をもらえてありがたい▼きょう6日は企業や官公庁などの多くが仕事始め。成長と繁栄を期する大切な1年がスタートした。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170284 via...

能登半島地震から1年/石川県建設業協会会長・鶴山庄市氏、諦めず今しっかりと対応

 復旧工事の続く能登半島地震の被災地。石川県建設業協会(石川建協、鶴山庄市会長)は、2024年1月1日の発災直後から9地区協会の会員企業が緊急対応に入った。交通・生活インフラや、大規模な土砂災害などからの復旧は続き、今後も本復旧、復興の工事が行われていく。発災当時の平櫻保前会長の後を継ぎ、石川建協の先頭に立つ鶴山会長は「5年、10年後のためにも今が大事」と話す。  --発災から1年が過ぎた。  「会員企業も、その社員も被災者となったつらい状況で、避難所から現場に向かう仲間がいた。国道249号をはじめ、あまりにも被害が大きい。復旧を進める中で、9月には大雨に見舞われた。あれほどの大規模な土砂崩れが起きていても諦めない気持ちがあった。毎年起きる災害に対峙(たいじ)し、いとわずに関わっていく気持ちを持った会員会社、建設業界の一致団結したまとまりがある。つくろうと思ってもつくれない空気を感じる。社会的な存在感を世間が認めてくれていると思う」  --半島の各地で復旧工事が行われている。  「会員企業は高齢化や新規入職の問題と向き合っている。地震の後、子どもたちのつらい気持ちや学校教育に配慮するなど、さまざまな理由で建設業から離れざるを得なくなった人がいる。対応する力は3割ほど減ったかもしれない。『力にならなかった』と思われないように、離れた人たちに戻るきっかけにしてもらうためにも今しっかりやろうと話している。その思いを理事会で投げ掛け、馳浩石川県知事にも伝えた」  「日本建設業連合会(日建連)の存在なくして被災地の復旧は語れない。パートナーとして工事に臨んでいる会員企業は、新しい技術や働き方を目にしている。地域外の建設会社と企業体を結成する会員企業もいる。会社の規模を問わず、それぞれにとってプラスの経験になっている」  --復興への展望は。  「社員寮を建てるなど人をつなぎとめて工事に対応している建設会社がある。災害査定が進めば、本復旧の工事が本格化する。自治体発注のように地域建設業が多く担う工事がある。個社の施工能力を見れば、1億円規模が得意な建設会社もある。どう直していくかとともに、地域を見た発注を考えていただく場合もあるだろう」  「初動や連絡体制が機能し、地域が連携したことが確認できた。防災・減災に対して、どうあるべきか考える必要がある。資材のストックや重機のデータを残すような備えもいる。輪島の朝市や和倉温泉の活気が戻ったなら、分かりやすい復興の景色になる。地域なしでわれわれの存続はあり得ない。地域とのつながりを大切に活動していく」。 from...

静岡県湖西市/次世代型バイオガス発酵システム実証実験、小規模処理場向け技術実現へ

 静岡県湖西市は、下水汚泥や地域のバイオマス資源を活用して新たな資源・エネルギーを創出する「次世代型バイオガス発酵システム」の実証実験を湖西浄化センターで行う。バイオガスの生成技術や農業利用が可能な高品位濃縮バイオ液肥の製造技術を検証する。期間は10日から2月28日まで。  下水道分野では、温室効果ガス排出量削減に向け嫌気性消化技術による汚泥のエネルギー化が注目されているが、小規模な自治体では資源量の確保や事業効果などの面で課題があり取り組みが遅れている。  このため市は2024年4月、豊橋技術科学大学と同大学発のベンチャー企業である豊橋バイオマスソリューションズの3者で小規模処理場向けの高効率の次世代型メタン発酵システムを実現するため、産学官共同で実証実験に取り組む基本合意書を締結し、これまで準備を進めていた。実証実験は国土交通省の下水道応用研究委託費を活用して行う。  実験は、下水汚泥とし尿・浄化槽汚泥、豚糞を原料に微生物を利用した発酵過程で発生するアンモニア等を除去する技術を活用し、地域バイオマスからのバイオガス生成技術を検証する。ガス生成後に排出される消化液(残さ)には窒素やリンなどの肥料成分が多く含まれていることから、消化液から粒子状物質を除去し滅菌処理を行う新技術を活用し、農業利用が可能な高品位濃縮バイオ液肥を製造する技術も検証する。 from...

東京都内の25年注目プロジェクト/世界から選ばれる都市に、再開発事業の動き活発

 東京都内では2025年も再開発プロジェクトの動きが活発だ。都市間競争が激化する中、世界から選ばれるためには地域の基盤を整備し、経済や研究・開発活動などをいかに促進するかが重要になる。ただ、建設費の高騰が事業推進の足かせになるケースも出てきており、慎重な対応が求められる。25年の注目プロジェクトをまとめた。  JR東日本は港区で整備を進めている新たなまち「高輪ゲートウェイシティー」のまちびらきを3月に行う。所在地は港南2ほか(敷地面積約7・4万平方メートル)で、JR山手線高輪ゲートウェイ駅の西側に位置する。南北に細長い敷地で、北から順に▽住宅棟▽文化創造棟▽複合棟(THE LINKPILLAR2)▽同(同1)-で構成する。THE LINKPILLAR1は2棟構成のため、全体は5棟で、総延べ約85万平方メートルの規模となる。  まちびらき時に開業するのはTHE LINKPILLAR1で、オフィスのほか、2000人規模のMICE(大規模なイベント)施設、ラグジュアリーホテルなどが入る。残る施設は26年春の開業を目指す。  港区ではこのほか、JR新橋駅近辺でも再開発の動きが具体化しつつある。2月には新橋駅東口地区再開発協議会が再開発準備組合に移行する。  対象エリアは駅東側に位置する約1・7ヘクタールで、1966年竣工の新橋駅前ビル(2棟総延べ約4万平方メートル)などを一体的に建て替える。新たな建物にはオフィスや商業施設、ホテル、サービスアパートメントなどを設ける計画となっている。  JR有楽町駅の西側一帯に広がる「丸の内仲通り南周辺地区」(千代田区)では、複数の街区が連動した大規模な再開発が始まる。自由度の高いまちづくりを進めるため、同地区を都市再生特別地区に追加する。都市計画の決定・告示は6月ごろを予定している。  丸の内仲通り南周辺地区は、▽国際ビル・帝劇ビル▽新東京ビル▽新国際ビル▽新日石ビル▽有楽町ビル・新有楽町ビル-で構成している。このうち国際ビル・帝劇ビルは建て替え後、延べ17・6万平方メートル、高さ約145メートルの規模のビル建設が可能になる。  中央区にある敷地面積約19ヘクタールの築地市場跡地での施設整備を巡っては、事業予定者や有識者、東京都などが基本計画の内容を練っている。水辺に設置する広場の拡充のほか、防災拠点となるオープンスペースをどう整備するかなどを議論。25年も基本計画策定に向けて話し合う予定だ。  まちづくりに当たり、障壁になっているのが建設費の高騰だ。JR中野駅前にある中野サンプラザ跡地(中野区)を含めた再開発事業は、施行予定者が24年6月末に施行認可申請した後、工事費が約900億円上昇することが判明。同10月に認可申請を取り下げた。  専門業者の繁忙期が重なったことや、時間外労働の上限規制などが影響した。施行予定者は住宅用途の面積割合を当初の4割から6割に変更する方針で、区はおおむね受け入れる考えだ。3月に事業見直しの方針と今後の事業スケジュールを区に報告する。どのような内容になるか、注目が集まる。 from...