2025年3月31日月曜日

回転窓/初一念を失わないで

 直木賞作家・山口瞳さんの作品には、自らの経験からサラリーマンの心得などをつづったエッセーも多い。そんな中に新入社員へ向けた「十二章」がある▼伝えたい教訓の一つは、会社に入ったら勉強しなくてもいいといった考えを持たないこと。要領良くやれば何とかなると思うのは甘く、〈社会生活はもうちょっとオッカナイところだと承知してほしい〉(『新入社員諸君!』角川書店)と厳しくも熱いエールを送る▼本紙が主要ゼネコン35社を対象にしたアンケートで、今春の新卒採用者数は3年連続の増加に。だが目標人数には20社以上が達せず、厳しさを増す人材獲得の状況がうかがえる▼柔軟な発想力と行動力、変化への適応力もある人材をどう育成していくのか。企業の持続的発展と個人の成長へさまざまな取り組みが展開されている▼〈あくまでも“素朴な気持”“初一念”を失わないでほしい〉(同)。エッセーが書かれてからだいぶたつが、時代が変わっても大切な新入社員へ期待することに大きな違いはないだろう。今年もあすの入社式で、建設産業の各社トップがそれぞれの思いをメッセージに込めて発する。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172645 via 日刊建設工業...

新社長/清水建設・新村達也氏、原点回帰し建設事業強化

 創業220年超の歴史で培ってきた技術力を生かし、誠実にものづくりと向き合いながら「安全と品質は絶対に譲れない」という原点回帰の方針を示す。業績の回復基調をより確かなものとするため、適正なコストや工期の確保に徹底してこだわる。2年目を迎える3カ年中期経営計画の目標達成を目指す。  --就任の抱負を。  「職責の重さに身が引き締まる思いだ。中期経営計画をきちんと実現することがミッションになる。業績は回復基調にあるが満足できるところには達していない。221年の歴史がある当社の強みは時々の顧客ニーズに応え、満足していただける誠実なものづくりを積み重ねて信頼を得てきたことだ。その流れは絶対になくしてはいけない。再び原点回帰して本業である建設事業を強化し、幹が太く根っこの強い会社にする」  --原点回帰による具体的な取り組みは。  「受注判断を厳格にしてから、顧客にはきちんとした施工計画に基づく見積もりを伝える。その上で4週8閉所+αの適正工期を確保するため、コストや工期のリスクをすべて提示する。この方針を緩めることなく貫いていく」  --建設事業で注視、注力する分野は。  「土木を中心とする公共投資は国土強靱化対策やインフラの維持管理、老朽化対策などがある。建築はリニューアルやリノベーション、AIの普及などに対応したデータセンター(DC)、電気自動車(EV)のバッテリー工場などが増えるとみている。国内外の需要や発注者の考えをきちんと見極めていく。市場が好調な今だからこそ、環境が変わることに準備をしていかないといけない」  --海外事業は。  「拠点を集中、自立化する国を選定し展開していくことが基本になる。引き続きシンガポールやインドネシア、ベトナム、メキシコも含めた北米などに注力する」  --中長期的な課題は。  「コロナ禍前の2019年に策定した30年を見据えた長期ビジョンの目標達成には厳しい道筋だ。必要に応じM&A(企業合併・買収)や緩やかなアライアンスを検討する。地方には後継者確保に悩む建設会社もある。開発事業やエンジニアリング事業ももう少し大きくできる」  --人的資本投資は。  「対話をしながら社員一人一人に寄り添い、前向きに仕事ができる環境を構築する。建設だけでなく営業や技術開発などさまざまな現場に足を運び、実際にやっていることや空気感を知りたい。人事制度も見直し、頑張った人がよりきちんと評価され実感できる仕組みを作っていかないといけない」。  (4月1日就任予定)  (しんむら・たつや)1984年早稲田大学理工学部卒、清水建設入社。常務執行役員名古屋支店長、専務執行役員東京支店長、副社長執行役員建築総本部長などを経て2024年6月から代表取締役副社長。座右の銘は「失意泰然、得意冷然」。常に謙虚に冷静沈着でいる心構えを大切にする。趣味はミュージカル鑑賞。石川県出身、63歳。 from...

凜/日本下水道事業団事業統括部計画課・田中喬子さん、苦労した経験が実を結ぶ

 小学生の頃、理科の授業が楽しくて身の回りの環境に興味を持った。大学や大学院では環境学などを専攻し大気環境を研究。「自分の生活と密接につながる水に関する仕事をしたい」との思いで日本下水道事業団を就職先に選んだ。入社後6年間は大学院までに学んだ経験を生かし技術職として下水処理技術の開発・調査、海外展開支援に携わった。  7年目でプロジェクトマネジメント室に配属。地方自治体の下水道施設の設計や工事などプロジェクト全体の管理を任されることに。入社以来携わってきた業務から全く異なる未経験分野への異動は苦労が多かった。  土木、建築、機械、電気、各職種の技術的内容はもちろん発注のルールや契約の手続きなど知らないことが多い中、自治体職員と予算や工事内容を調整し工事の発注から完成まで各担当者を取りまとめなければならなかった。分からないことは担当の技術者に積極的に質問し、仕事をしながら学び続けた。自治体職員と同じ目線でプロジェクトを進めることで本来弱みだった経験不足を強みに変えた。  現在はこれらの経験を生かしプロジェクトマネジャーが業務を行う際、参考にする内部マニュアルの作成に従事。「今まで苦労した経験が確実に役立っている」と感じている。1歳の双子の子育てにも奮闘中。「趣味のホルンとスキーはお休み中だがまたいつか楽しみたい」と笑顔で話す。  (たなか・きょうこ) from...

電気・情報通信設備工事13社25年春の採用計画、5社が100人超/本紙調査

 主要な電気・情報通信設備工事13社の今春(4月)入社する新卒採用数(短大・大学卒、大学院修了)は合計1193人になる見込みだ。前年実績比では192人増加。100人以上を確保したのは5社、目標値を満たしたのは公表した10社中4社だった。技術系は公表した12社で合計860人(前年比99人増)となる見通しだ。各社は人手不足や事業拡大に備えて技術系人材の積極採用を続ける。しかし、工学系学生が減少する中で他業界との競争が激しい新卒採用では、求人に興味を持つ母集団の形成に苦戦。各社は中途採用に活路を見いだす。  アンケートは日刊建設工業新聞社が1~3月に実施した。今春の新卒採用で100人以上確保するのは▽きんでん198人(24年度実績比21人増)▽九電工158人(34人増)▽トーエネック113人(17人増)▽ミライト・ワン112人(65人増)▽関電工111人(19人増)-の5社。前年実績から採用数を増やしたのは10社だった。  大きく増やしたミライト・ワンは24年度から採用専門部署を設け、SNS展開や短期インターンシップの強化に取り組む。来春(26年4月)の採用計画数は10社が公表した。「増やす」とした企業は4社で、日本コムシスや住友電設は事業拡大を理由に挙げた。  一方、「採用市況から難しい」(富士電機E&C)として「横ばい」とする企業も少なくない。各社は応募者を増やそうと、SNSやCMを駆使して認知度向上を図る。  待遇面では「採用競争力を強化する」(エクシオグループなど)として、25年度は4社が初任給の引き上げに踏み切った。奨学金返還支援制度(日本電設工業など)や入社後の勤務地保証制度(住友電設など)といった福利厚生の拡充も活発だ。多岐にわたる採用戦略に「効果を見極めにくい」(ユアテック)といった指摘もある。  技術者の確保へ、中途採用の重要性が高まっている。24年度は、全13社が622人(前年度実績比250人増)と大幅な増加を見込む。25年度は6社が増やす方針。即戦力として「資格や前職での知識・経験」(ユアテックなど)に加え、「協調性やリーダーシップなどチームで働く上で必要な能力」(東芝プラントシステムなど)といった付加価値を期待する声も多い。  業界全体では新卒を含め増員が進んでいるものの、個別には想定ほど増やせていない実情がうかがえる。  電工系5社の高専卒・高卒採用数を比較すると、きんでん254人(前年度比13人増)、九電工240人(35人増)、関電工230人(9人減)と3社が200人以上の採用を維持。トーエネックは115人(13人減)、ユアテックは66人(8人減)となった。両社と関電工の3社は目標人数に達しなかった。 from...

J2いわきFC/新スタジアム建設の候補地決定、福島県いわき市小名浜に

 ◇27年6月までに着工  サッカーJ2いわきFCを運営するいわきスポーツクラブ(福島県いわき市 大倉智社長)は、新ホームスタジアム「IWAKI STADIAM LAB(仮称)」の建設候補地を福島県いわき市小名浜とすると発表した。小名浜湾に面し、水族館・アクアマリンふくしまの北西に位置する約2・8ヘクタールの県有地に整備する。2027年6月までに着工し、完成は31年の開幕を目指す。  候補地は現在、小名浜湾3号埠頭緑地公園や駐車場がある。新スタジアムは収容人数8000~1万人規模を見込み、J1ライセンスに必要な5000人以上の基準を満たす。グラウンドの四方を観客席スタンド2面、多目的な用途のビルディング棟(5階建て)、多目的広場で囲む構想となっている。県との交渉を進めて建設地を決定し、6月末のJ2ライセンス申請時までに具体的な新スタジアムの整備計画を提出する。「まちの構造が変わる345日の居場所」をコンセプトに掲げた。  いわき市の都市計画や「既存の地域資源と掛け合わせ、より経済効果を生み出す場所が望ましい」とするJリーグの考えを踏まえ候補地を検討してきた。周辺に商業施設などが集まる一大観光拠点で、基本理念に掲げる「人が集い『偶然の出会い』が生まれるスタジアム」につながることも選定の要因となった。現在は「ハワイアンズスタジアムいわき」(いわき市常磐水野谷町竜ケ沢308)ホームスタジアムとしている。 from...

政府/国土強靱化実施中期計画の素案公表、重点推進116施策・金額は明示せず

 政府は28日、2026年度から30年度までの5年間を計画期間とする国土強靱化実施中期計画の素案を公表した。各省庁からの意見を踏まえ324施策を列挙。このうち予防保全型インフラメンテナンスへの転換、建築物の耐震化など116施策を重点的に推進する。事業規模は資材費や人件費の上昇を予算編成過程で適切に反映させると明記したものの、金額の明示は見送った。  同日に有識者でつくる「国土強靱化推進会議」の第13回会合を東京都内で開き=写真、素案を示した。今後、素案に対する一般意見を4月上旬に募り、6月ごろに開く次回会合で計画案を示す見通し。同推進会議で計画案が承認されると、石破茂首相を本部長とする国土強靱化推進本部に提出し、閣議決定する。法定計画として名称は「第1次国土強靱化実施中期計画」とする。  素案では施策を▽防災インフラの整備・管理▽ライフラインの強靱化▽デジタル等新技術の活用▽官民連携強化▽地域防災力強化-の5分野に整理。324施策のうち重点推進施策とした116施策については、南海トラフ地震が今後30年以内に起きる確率が80%程度であることを踏まえ、20~30年先を目標に設定。計画実施に当たっては「財源確保策の具体的な検討を開始する」とも明記した。  重点推進施策のうち、防災インフラの整備・管理では、必要な防災インフラを着実に整備するとともに、AIやドローンなど新技術の活用しインフラ管理の高度化、老朽化対策に取り組む。主な施策として「洪水・内水ハザードマップ等の水災害リスク情報の充実」「関係省庁の枠を越えた流域治水対策等の推進」「発災後の残存リスクの管理」など28施策を盛り込んだ。  ライフライン強靱化では交通、上下水道、通信・電力などのライフライン機能の維持を図るため、点検の着実な実施や急所となる施設の耐災害性を強化する。具体的には埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を踏まえた上下水道の戦略的維持管理・更新や、港湾施設の耐震化・耐波性能強化など107施策に取り組む。  デジタル技術活用についてはテックフォース(緊急災害対策派遣隊)の機能強化や自動施工技術を活用した建設現場の省人化など55施策を提示。官民連携強化の分野は、住宅建築物の耐震化や立地適正化計画を通じた災害に強い市街地形成など直接的に人命につながる14施策を掲げた。  地域防災力強化では能登半島地震の教訓から公立学校の耐震性強化、避難所への分散自立型再エネ設備の導入促進など17施策を進める。 from...

築地地区まちづくり(東京都中央区)/複数のデッキ整備を検討、区が検討状況公表

 東京・中央区は三井不動産らが進める築地地区まちづくり事業に関し、最新の検討状況を公表した。歩行者ネットワークの強化に向け、事業者は新大橋通り沿いで複数のデッキ整備を検討。加えて環状2号線をまたぐデッキの整備も必須と捉える。実現には広域的な都市計画との調整が必要で、事業者は関係機関と協議中。このほか計画地内は完全な歩車分離の構造とし、駐車場は敷地西側に設ける「ライフサイエンス・商業複合棟」の低層部などに集約する考えだ。  検討状況は18日に区内で開催したまちづくり協議会に示した。  区は計画地と銀座・新橋エリアを結ぶ重層的な歩行者ネットワークの整備を要望していた。事業者はこれに応え、説明資料に「安全安心の歩行者動線確保の観点から、新大橋通り沿いに複数のデッキ整備を検討」と明記した。  計画地周辺では首都高速道路築地川区間や、東京高速道路(KK線)の歩行者空間化が進展。事業者もこうしたネットワークとの連携が重要と捉えており、説明資料にも相関関係を図示した。  計画地は環状2号線を境に南北に分かれる。事業者は同線をまたぐ歩行者デッキを2カ所に整備し、明確な歩車分離とバリアフリーを実現するとした。  計画地内は地上レベルを車道とし、2階レベルのデッキを歩行者空間に充てる。地上レベルには大規模集客・交流施設を囲むように環状道路を設ける。駐車場と駐輪場は朝日新聞社に面した「ライフサイエンス・商業複合棟」と、区域の最も東にある「オフィス棟」に集約する考え。新大橋通りや晴海通りに接していることが理由で、築地場外市場など計画地以外を訪れる人の利用も見込む。 from...

奈良県、橿原市、近鉄/医科大付属病院南まちづくり、新駅設置で基本協定

 奈良県と同県橿原市、近畿日本鉄道の3者は28日、奈良県立医科大学付属病院南側地区まちづくりの一環で計画している「(仮称)医大新駅」の設置に関し、基本協定を結んだ。新駅は橿原市の近鉄橿原線八木西口駅~畝傍御陵前駅間に計画。医科大付属病院に近接し事業を県、工事施工を近鉄が担う。3者間で費用負担や役割分担など基本事項の合意に至り、事業が本格始動する。2025年度に基本設計、26~27年度に実施設計を進め、28年度の着工、30年度の完成を目指す。  新駅設置を含むまちづくり事業は医科大の一部キャンパス移転に伴い、県と医科大、市、近鉄の4者で連携し検討を重ねてきた。まちづくりエリアは医科大付属病院南側の約12ヘクタール。新駅はエリアのほぼ中央部に計画されている。  新駅の西側には県が新しいアリーナの建設を計画。東側には渋滞対策として付属病院第1駐車場を拡張整備する。北東側では付属病院外来棟の建て替え事業も予定され、このほど県と医科大で協議がまとまり、今後設計など事業が本格的に動き出す。  28日に奈良県庁で行われた協定締結式で、山下真奈良県知事は「新駅と新アリーナ、医科大学の三つが核となったにぎわい拠点となることを期待している。3者の強い信頼関係の下でスムーズに事業を進めていきたい」と話した。  亀田忠彦橿原市長は「市の真ん中に新駅ができることを本当にうれしく思う。周辺のまちづくりの可能性が大きく広がっていく」と期待を込め、近鉄の原恭社長は「この協定がまちづくりの大きな第一歩になる。新駅が地域の利便性向上、活性化につながるよう、今後もご協力をいただきながら役割を果たしていきたい」と語った。 from...

高知県/建設現場にクールワークタイム導入、午前11時~午後2時は作業休止

 高知県が建設工事に「クールワークタイム」を導入する。期間は6月1日~9月30日。原則午前11時~午後2時は作業を止めて休憩時間とする。夏季の高温時間帯の作業を回避することで、作業員の健康と安全の確保につなげる。土木部土木政策課の担当者は「こうした取り組みは全国の自治体で初めてではないか」としている。  受注者は工事着手時またはクールワークタイムを導入する1週間前に発注者と協議する。工種が屋内作業でも空調設備がなく屋外と同等の状況と認められる場合は協議の対象とする。  作業時間の短縮(1日当たり2時間)を補うため、工期を延長できる。延長日数は短縮した時間数に基づき算出する。工期延長に伴う現場維持費の計上は行わないが、熱中症対策の現場管理費の補正対象とするなどの対応を取る。 from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172644 via 日刊建設工業...

2025年3月28日金曜日

香川県/さぬき浜街道五色台トンネルが開通、施工は安藤ハザマJVと村上組JV

 香川県が進める一般県道高松坂出線(さぬき浜街道)五色台工区(高松市生島町~坂出市青海町間の約6・6キロ)の4車線化事業の一環として建設してきた五色台トンネルが完成し、27日に高松側坑口で開通式が開かれた。池田豊人知事ら関係者約40人が出席し、テープカットとくす玉開披で開通を祝った。28日午前11時に供用を開始する。  さぬき浜街道は高松市と中讃、西讃地域の臨海部を結ぶ重要路線。五色台工区は2019年度に拡幅工事に着手した。対面通行の五色台トンネルの南隣に新しいトンネルを通した。全長1370メートルで施工は高松側工区600メートルを村上組・青葉工業・城北建設JV、坂出側工区770メートルを安藤ハザマ・真部組JVが担当した。  坂出側工区は22年3月、高松側工区は同10月にトンネル工事を開始した。24年2月の貫通後、同8月に本体工事が完成し、坑内の照明設備や舗装工事などを進めてきた。中央分離帯工事などが完了していないため、当面は新トンネルを含め片側1車線の暫定2車線での通行となる。25年中の完全4車線化を目指す。  池田知事は「県のこれからの発展に大きな役割を果たす。多くの県民に利用してもらい、愛されるトンネルになってほしい」と述べた。 from 行事 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172561 via...

JR東日本/高輪ゲートウェイシティーがまちびらき、ファンファーレで開業祝う

 JR東日本が開発を進めている高輪ゲートウェイシティー(東京都港区)が27日にまちびらきを迎えた。セレモニーではNHK交響楽団のファンファーレが鳴り響く中、関係者や来賓がテープカットに臨み、開業を祝った=写真。会場となったJR高輪ゲートウェイ駅前には多くの人が詰めかけ、オープンした施設に列を作ったり、記念撮影をしたりする様子が見られた。  セレモニーには同社の喜勢陽一社長のほか、菅義偉元首相や森昌文首相補佐官、谷崎馨一東京都技監、清家愛港区長らが出席した。  喜勢社長は「未来への夢と情熱を傾けたプロジェクトが、こうして最初の大きな一歩を記せたのも、ご指導を賜った関係者の支援・理解のたまものだ」と感謝を表明。「『地球益』の実現に向け共創し、成果をさまざまなアセットで実証し、グローバルに発信していく地にしていきたい」と抱負を述べた。  同シティーの南端から、JR東日本と京浜急行電鉄が共同開発する「品川駅街区地区」までの間には、開発構想が未公表のエリアがある。喜勢社長は「品川駅に向けてウイングを延ばし、歩行者デッキでつながる一体としたまちを造っていく」と開発に意欲を示した。  森首相補佐官は石破茂首相のメッセージを代読。石破首相は「整備効果が最大限発揮されるよう、周辺の官民連携による都市基盤整備を全面的に支援していく」との方針を示した。  谷崎技監は小池百合子東京都知事のメッセージを代読した。小池知事は都の未来ビジョンを定める「2050東京戦略」に触れ、「高輪ゲートウェイシティーがいち早く具現化する先駆者になると期待している」と応援の言葉を贈った。  同シティーはTHE LINKPILLAR1(ザ・リンクピラー1)と同2、文化創造棟、レジデンス棟の大きく4施設に分かれる。27日に開業したのはザ・リンクピラー1。残る施設は今後も建設を続け、2026年春の全面開業を目指す。 from...

回転窓/自分の色で輝く

 東京都心では桜の開花が24日に発表された。例年は開花から満開になるまで1週間程度が目安だが、今週は春本番を通り越え初夏の陽気が続いたため、開花から1週間を待たず満開になる可能性があるそうだ▼4月上旬の入学式まで桜が散らないかと気が気でない方も多かろう。間もなく入学シーズンを迎えるが、早くも来年の新入生向けランドセル商戦が百貨店などで始まっている▼近年のランドセル選びは子ども自身に最終決定を委ねる家庭が主流という。子どもは「好きな色」を基準に選ぶことが多いため、各社は豊富なカラーバリエーションにこだわり、自分好みにカスタマイズできる商品を取りそろえる▼日本鞄協会ランドセル工業会の調査によると、今春に入学する児童のランドセルの色は、女児では紫・薄紫が最多で約3割を占めた。桃、水色に続き、赤は1割未満。男児は黒が約5割に上ったが、2020年の約7割から大きく減少した。男女問わず特定色に集中せず、好きな色に分散する傾向が続いているという▼来週には建設業界も新たな仲間を迎える。次代を担う皆さんには自分の色を出して輝いてほしい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172555 via 日刊建設工業...

国交省/公共建築工事標準仕様書を改定、工期変更の受発注者協議促進

 国土交通省は、国の一般的な事務庁舎への適用を想定した「公共建築工事標準仕様書」を改定した。働き方改革や生産性向上に配慮した規定を拡充。受注者の責任ではない理由で全体工期に影響を及ぼす場合に監督職員へ報告する規定を追加し、工期変更の円滑な受発注者間の協議につなげる。国交省直轄営繕工事で適用を広げてきた情報共有システム(ASP)による書面の提出や、遠隔臨場の実施も新たに明記し、標準的な対応と位置付ける。  3年周期の改定で「令和7年版」を制定した。新築・増築と改修それぞれで▽建築工事編▽電気設備工事編▽機械設備工事編-の計6編を用意。木造工事の標準仕様書も改定した。いずれも関係省庁と全国営繕主管課長会議に参画する都道府県・政令市に周知した。  工期に影響を及ぼす事象の報告規定は、改正建設業法・公共工事入札契約適正化法(入契法)による「恐れ(リスク)情報」に基づく変更協議対応の義務化を念頭に盛り込んだ。改正法の義務事項に入札契約段階で対応しつつ、加えて工期途中などに生じる事象にも変更協議を適切に行う。  実施工程表で「総合設備試運転調整」に要する工程を明記することも追加。以前から「概成工期」の記載を求めていたが、後工程になる設備工事の作業期間を確保するため設備機器の試運転期間を考慮するよう明確化する狙いがある。  木造工事では「都市(まち)の木造化推進法」を踏まえ、混構造に対応した形に標準仕様書を見直した。 from...

戸田建設/長崎スタジアムシティで自動運搬ロボ活躍、モンストレーション報道公開

 戸田建設が導入などをコンサルティングした荷物の自動運搬ロボット「DeliRo Truck(デリロ トラック)」が、長崎市の複合施設「長崎スタジアムシティ」で活躍している。サッカースタジアム上空を滑走するジップラインのハーネスを、ゴールからスタートまで約380メートル自動で運搬するロボット。人とぶつかりそうになると自動で停止し、音声で伝える。人手不足の解消だけでなく、施設利用者を楽しませるなどエンターテインメントにもつながっている。  26日に現地でのデモンストレーションを報道陣らに公開した。デリロは同施設が開業した2024年10月14日から稼働。左折時は「左に曲がります」と音声を出し、進行方向に目線を送る。障害物を見つけると避けるほか、人が近づくと徐行し、「すみませんが道をお譲りください」とアナウンスすることで安全に走行する。  戸田建設は、ロボットフレンドリーな環境構築の実現に向けた計画と運用のコンサルティング事業に取り組んでいる。今回のロボット導入は、経済産業省の「令和6年度革新的ロボット研究開発等基盤構築事業(ロボットフレンドリーな環境構築支援事業)」の一環。ジャパネットグループのリージョナルクリエーション長崎(長崎市、岩下英樹社長)と共同で採択された。  戸田建設は引き続き施設内で実証実験を推進。同施設をモデルにロボットと人が共存できる「ロボットフレンドリーな環境」の実現を目指す。 from...

奈良県/平城宮跡歴史公園在り方、飲食・物販施設など誘致

 奈良県は平城宮跡歴史公園(奈良市)の県営公園区域の在り方をまとめ、県観光戦略本部の平城宮跡周辺エリア部会(委員長・内藤廣東京大名誉教授)で了承された。「食」と「クリエーティブな活動」をコンセプトに、飲食・物販施設や集客施設、宿泊施設などを誘致するほか、駐車場の整備や公共交通サービスの充実に取り組む。短期から長期に分けて整備を進め、飲食施設や宿泊施設などは2031年度にも完成する見通しだ。  平城宮跡歴史公園は国が整備を進める国営公園区域(約122ヘクタール)と県営公園区域(約15ヘクタール)で構成し、国営公園では建物の復元や遺構の保存整備が行われている。県営公園では展示館や観光案内所、交通ターミナル、物販施設などを整備している。  同部会では県営公園区域のうち、朱雀大路の西側地区(約3・1ヘクタール)と東側地区(約0・9ヘクタール)、南側地区(約5ヘクタール)を対象に既存施設の活用や民間活力の導入を含めて公園の整備方針を検討した。第5回会合は21日に開かれた。  平城京は「シルクロードを通じて世界のさまざまな文化が伝えられ、日本の食文化のルーツが築かれた」ことや「奈良でみそなどの発酵食品が生まれ、その技術が全国各地に広がった」などとして「食のハブ拠点」の創出を目指す。  レストランやカフェなどの飲食・物販施設、宿泊施設は中期的な取り組みに位置付け、民間事業者を選定した上で、28~31年度に整備する予定。短期的な取り組みでは食に関するイベントの開催や次世代型モビリティを試行。中長期的な取り組みでは平城京の広がりを感じられる景観づくりや遊歩道、自転車道などを整備する。 from...

鹿島/覆工全自動打設多様な現場で対応可能に、流動化コンクリでコスト低減

 鹿島は建設現場で流動化させる低コストの覆工用高流動コンクリートを開発し、既存の「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」と組み合わせる形で実工事に初導入した。生コン工場で製造したスランプ15センチ程度の普通コンクリをベースに新開発の現場添加型混和剤を用いて流動化させ、工場製品と比べ製造コストを大幅に低減する。現場流動化の高流動コンクリを組み合わせることにより、さまざまな施工条件や断面のトンネル工事に対応可能な全自動打設システムを構築した。  初導入したのは中日本高速道路会社が建設する「東海環状自動車道養老トンネル南工事」(三重県いなべ市)の現場。現場での流動化によって締め固めを不要とする高流動コンクリの製造コストを低減し、全自動打設システムの省人化効果を最大化する。  新開発の覆工用高流動コンクリは工場製品と同等の品質を確保。既存の覆工コンクリ用繊維投入機に混和剤の自動添加装置を組み合わせ、混和剤と繊維をベースコンクリに同時投入する仕組みとした。添加剤を基に自動計量された混和剤はタンクからノズルを通してアジテータ車に投入。その量は自動で記録され、計量や投入、管理の作業を省力化する。  全自動打設システムは2020年に開発した。これまでに覆工用高流動コンクリから中流動コンクリまで導入範囲を広げ、3車線の大断面トンネル工事2件に導入。現場で流動化させる高流動コンクリと組み合わせた今回の現場では2車線の標準断面トンネル工事に導入したことで、あらゆるニーズに対応できる同システムが完成した。  今後は新開発の高流動コンクリ導入を推進し、施工のさらなる合理化を目指す。 from...

2025年3月27日木曜日

回転窓/泰山木の花言葉を

 小学校の教科書にも載る「さよならの学校」は、白い杯のような花を咲かせる泰山木(タイサンボク)を巡る祖父と孫の物語。木の根元に毎年プレゼントを置いてくれた祖父は、亡くなる前にその泰山木をプレゼントしたいと話す▼昔の記憶を紡ぎながら孫の祖父への思いが伝わってくる。小学生が書いた感想文を読ませてもらうと、家族や仲間をいたわり、思い出を大切にしたいという気持ちがあふれていた▼取材先でも異動や退職であいさつに回る方々を見かけるようになってきた。一緒に仕事をしてきた仲間として「ありがとう」「お元気で」と相手を思いやる言葉に、こちらも温かい気持ちになる▼国土交通省と全日本トラック協会がまとめた引っ越しの予約状況によると、29~31日が非常に混雑する。同省は2月前半から分散への協力を呼び掛けてきたが、さまざまな事情・事由から応じにくい人も多かろう▼泰山木の苗木は1メートルくらいの背丈が多く、贈り物として手渡すには難がある。それなら「前途洋々」の花言葉にあやかり、赴任先での健康と活躍を心から願いたい。これまで十分に伝えられなかった感謝を込めて。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172506 via 日刊建設工業...

東北6県ら/25年度の入契制度改正、公平受注機会確保など盛り込む

 ◇「地域の守り手」維持へ  東北6県や仙台市は工事・関連業務の入札契約制度を見直し、建設業の健全な競争環境の構築や働き方改革の推進などに取り組んでいる。2025年度の制度改正を見ると総合評価方式の見直しや地域要件の緩和・強化などが目立つ。事業量の減少や受注競争の激化を背景に、地域建設会社を取り巻く経営環境は厳しさを増す。「地域の守り手」としての役割を今後も果たし続ける上で、公共発注機関の対応は不可欠といえる。  青森県は4月以降に入札を公告する案件で、ICT活用証明書の発行対象工事を全工種(港湾工事を含む)に拡大する。「週休2日確保工事」の証明書発行要件も完全週休2日や月単位の4週8休などに変更。県土整備部の発注工事は元請に施工体制を自己点検するよう求めていく。  岩手県は新年度のスタートを機に、総合評価方式で「チャレンジ型」を試行導入する。技術的工夫の余地が小さい工事を対象に、工事成績評定や施工経験、配置予定技術者の工事成績評定などの審査項目を減らし受発注者の負担を軽減する。建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用や「ユースエールの認定」を評価項目に追加。国の施策や「いわて建設業振興中期プラン2023」などに基づき、経営や若者育成、雇用管理に優れた企業を評価していく。  秋田県は一般土木A等級に当たる土工量3000立方メートル以上の土工を原則発注者指定型のICT施工実践活用モデル工事で発注する。舗装や一般土木A等級の舗装(路盤工)は3000平方メートル以上がモデル工事の対象になる。土工と舗装工以外のICT施工実践工種は引き続き規模の大きい案件に指定型を適用する。  宮城県は新たな入札方式として「一抜け入札方式」を試行する。規模や条件が同程度の複数工事・業務で予定価格が高い順に開札し、上位工事の落札者が次回以降の入札に参加できなくなる仕組みだ。「地域ブロック限定型」の工事は、適用上限を1億円から1・5億円に引き上げるとともに、入札条件を満たす企業数の要件を30者以上から20者以上に緩和する。業務は総合評価方式の評価内容を見直し、企業と技術者評価の対象期間を「過去2年」から「過去5年」に拡大する。  山形県は昨年7月に総合評価方式のガイドラインを一部変更した。これまでICTの「全面的な活用」に加点していたが、新たに施工者希望型の2プロセス以上で使用する「部分的な活用」も加点対象にした。担い手確保の観点から、土木一式工事に限定していた「若手女性技術者評価型」の適用範囲も全工種に拡大している。  福島県は品質と技術力向上を目的に、総合評価方式の「工事成績」評定区分を改める。これまで一律に加点していた80点以上の工事成績を、新たに「80点以上85点未満」と「85点以上」の2区分に変更。評価基準として85点以上の場合、標準型・簡易型は1・5点、特別簡易型・地域密着型では0・75点を加点し、80点以上85点未満合はそれぞれ1・0点、0・5点を加点する。  仙台市は災害時の迅速な初動対応を目的に、総合評価方式の評価項目「協定に基づく防災訓練実績」で「複数実績あり」の評価基準を設ける。防災訓練への継続的な取り組みを促し防災力を強化する狙いがある。  各自治体の制度改定は施工者の技術力向上や担い手・人材確保、DXの活用推進、地域内の公平な受注機会の確保などが基軸になっている。工事と業務で改正公共工事品質確保促進法に基づく新しい運用指針の適用が始まる。発注者には「多様な入札契約方式の選択・活用」など同法の趣旨をより理解し適切な対応が求められる。 from...

大阪府、大阪市/新大阪駅エリア交通結節機能向上へ、検討会設置で議論本格化

 新大阪駅の広域的な交通結節機能を高める議論が動き出す。大阪府と大阪市は25日、関係機関と連携して交通や空間の再編方針を検討する「新大阪駅エリア交通結節機能強化検討会」の設置を正式に決定した。北陸新幹線延伸の新大阪駅乗り入れを見据え、2025年度以降、南広場を含めた三つの駅前広場の機能分担や歩行者動線の在り方を探る。延伸着工までにまとめ、エリア計画に反映する。  同日に開いた「第6回新大阪駅周辺地域まちづくり検討部会」で設置が了承された=写真。  検討会は国、自治体、鉄道事業者、学識経験者ら11者で構成する。国から近畿地方整備局と近畿運輸局、地方公共団体は大阪府と大阪市、民間事業者はJR西日本、JR東海、阪急電鉄、大阪メトロ、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が参加。学識経験者として森川高行名古屋大学特任教授が座長を務め、吉田長裕大阪公立大学准教授が加わる。  検討項目は「広域交通結節施設などの周辺駅前広場の機能向上」や「駅とまちをつなぐ歩行者動線の確保」など。具体的には▽各広場(南広場、北西広場、東口広場)の役割整理▽人中心の空間形成を意識した南広場の再編▽駅と広場、周辺市街地をつなぐ歩行者動線の考え方-を柱に据える。検討結果は順次、まちづくり検討部会に報告し、最終的にエリア計画へと反映させる。  新大阪駅の設置が予定される北陸新幹線敦賀~新大阪間の延伸区間は現在、環境影響評価(環境アセス)の手続きが進められており、南広場付近の地下に2面4線の地下駅を設ける案が示されている。  JR西日本は「南広場は鉄道と密接に関わる場所であり、北陸新幹線の整備スケジュールを踏まえて早期に計画を具体化すべき。積極的に検討に加わっていく」とした。  会合を欠席した森川座長は「広域交通アクセスの強みを生かし、駅周辺の広場や動線の在り方を利用者目線で具体的に検討することが重要。早期に体制を構築したことは意義深い」とコメントを寄せた。 from...

国内建築用木材、半世紀ぶり自給率50%超に/中高層の木質化促進

 2023年度の国内建築用木材の自給率が半世紀ぶりに50%を上回ったことが、政府の集計で分かった。総需要約2926万立方メートルに対し、国内生産量が55・3%に当たる約1618万立方メートルとなった。政府は4階建て以上の中高層建築物の木造・木質化を促すため、建築基準法の構造規制を4月に緩和するなど木材利用促進策をさらに展開する。  農林水産省ら関係省庁でつくる木材利用促進本部(本部長・江藤拓農水相)が26日に東京都内で会合を開き、「建築物の木材の利用の促進に向けた措置の実施状況」を取りまとめた。国と建設関係団体や民間企業などとの「建築物木材利用促進協定」は24年12月末時点で、大成建設グループや安藤ハザマ、前田建設、鹿島・かたばみグループなど25社・グループと締結した。協定に基づき木造・木質化した建物は632棟。木材使用量は計3万1453立方メートル、炭素貯蔵量は2万1207トン相当に上った。  24年度の木材利用状況を見ると、低層住宅は約8割が木造だが、低層非住宅は15・5%、中高層建物は0・1%未満にとどまり、非住宅分野の木造化は依然として進んでいない。同年度に完成した中高層木造建築の総床面積は約3・1万平方メートルだった。  同本部は、4階建て以上の中高層建築物を「積極的に木造化を促進する公共建築物」に追加。国土交通省は建築基準法を改正し、防火規制を24年4月に緩和。構造規制は4月に緩和する。林野庁と共同で木造4階建ての事務所や共同住宅をモデルにした構法と部材供給の枠組みを26日に公表した。法令、基準などの面での木質化促進の環境づくりを進める。 from...

全建・今井雅則会長/自民新しい資本主義実行本部で講演、労働市場改革テーマ

 全国建設業協会(全建)の今井雅則会長は25日、東京・永田町の自民党本部で「労働市場改革」をテーマに建設業の人手不足や働き方改革について講演した。新しい資本主義実行本部(本部長・岸田文雄前首相)主催の会合に招かれた。今井会長は猛暑日に1日当たりの労働時間を十分確保できなかったり、積雪寒冷地で作業が不可能な日があったりする建設現場の実態を示し、柔軟な働き方の実現に理解を求めた。  今井会長は建設業が抱える深刻な問題として担い手不足を挙げ、「古い3Kである『きつい、汚い、危険』のイメージが担い手の確保を阻んでおり、イメージの打破が必要だ」と指摘。新4K(給与、休暇、希望、かっこいい)の実現に向け働き方改革や安定した収入の確保が必要と訴えた。  働き方改革の具体的な取り組みでは、週休2日と時間外労働年間360時間以内を目指す「2+360(ツープラスサンロクマル)運動」や「目指せ!建設現場土日一斉閉所運動」などを紹介した。  時間外労働の上限規制に伴う課題にも言及した。夏季に熱中症リスクを避けて涼しい時間帯だけ作業する場合、規制の範囲内で働こうとすると1日当たりの労働時間が減り、結果として工期の遅れやコストの増大につながると指摘。「仕事ができない時はしっかり休み、仕事ができる時に頑張って働く。それが可能な柔軟な規制を期待する」と呼び掛けた。 from...

国交省/入札段階で労務費内訳調査、公共工事ダンピング対策強化へ方針

 国土交通省は第3次担い手3法の趣旨を踏まえ、公共工事で適正な労務費を確保する目的でダンピング対策を強化する。元請が提出する入札金額内訳書で労務費の明示を新たに求めるのに合わせ、現行の低入札価格調査制度・最低制限価格制度にプラスして「労務費ダンピング調査(仮称)」を導入する方針だ。地方自治体を含む公共工事全体での展開を視野に、発注者向けに調査方法などの指針を用意。発注者の積算に照らし、見積もられた労務費が適正かどうかを判断できるよう、直轄工事などの積算システムの改修も見込む。=2面に関連記事  26日に開いた中央建設業審議会(中建審)の「労務費に関する基準(標準労務費)」に関するワーキンググループで、公共工事にフォーカスして労務費・賃金の確保・行き渡り担保策を提案した。入札契約段階の「入り口」でダンピング対策を強化。実際に支払う「出口」の段階で建設Gメンの運用や、契約当事者間で賃金支払いを約束する「コミットメント」の活用、直轄工事で試行する賃金支払いの確認などに当たる。  労務費の見積もり規制の年内施行と同時に、改正公共工事入札契約適正化法(入契法)で建設業者に労務費や必要経費を記載した入札金額内訳書の提出を義務化する。労務費ダンピング調査では、内訳明示された労務費が著しく低いかどうか発注者として確認。労務費額が一定水準を下回り、省人化による効率化などの正当な理由がない場合、建設Gメンに通報する流れを想定する。  現状では発注者の積算システムが工種ごとの労務費内訳まで見える形となっていない。そこで労務費を把握できるよう積算システムを改修し、確認を簡素化する方向で検討する。最終的には材工分離の見積もりが定着することで入札・契約時に労務費が可視化され、入札参加者が自ら実態に即して積算単価や工期を算定するような絵姿を描く。  自治体発注工事を念頭に、適正な予定価格の設定も徹底する。設計金額の一部を切り下げて予定価格にする「歩切り」の実態をフォローアップする考え。資材単価に不透明な乗率を設定する「単価歩切り」や設計など業務発注も含めた調査に乗り出す。直轄工事と比べて発注ロットが小さいことや地域特有の事情から、独自の歩掛かりを設定している自治体の調査にも着手。予定価格の正確な算出につながる好事例を周知、水平展開する。 from...

東京都/一時保護所の整備加速、入所需要の増加に対応

 東京都は虐待や置き去りなどの理由により子どもを一時的に預かる「一時保護所」に関して、入所定員数をオーバーして受け入れている状況が続いていることから、新たな一時保護所の整備を加速する。2026年度に大田区と立川市、28年度に練馬区、29年度に町田市で一時保護所を開設する。施設数を増やす一方、既存の児童養護施設や民間一時保護施設なども活用し、保護ニーズに対応する。  26年度は「大田児童相談所(仮称)」と「立川一時保護所」を開設する。大田児童相談所は児童相談所と一時保護所を同時に開設する。29年度に町田市で開設する予定の「町田児童相談所(仮称)一時保護所付設」は、町田市教育センター(木曽東3)の敷地に造る。  このほか福生市の都有地で一時保護所を含めた「西多摩児童相談所(仮称)」を建設し、31年度に運営を始める。30~36年度に八王子市と目黒区で一時保護所を開設する。  3月時点で都内の一時保護施設は官民合わせて11カ所(都8カ所、民間3カ所)展開している。都によると、25年度の都区の一時保護所の入所定員は441人。これに対し、需要推計総数は534人で93人が入所できない見込みだ。28年には121人分が不足するが、一時保護所の新設などにより、同年以降は不足分が減少する見通しだ。  都は一時保護所の拡充策などを盛り込んだ「東京都社会的養育推進計画(案)」(25~29年度)を年度内に正式決定する。ハード対策に加え、国の基準を上回る職員配置で児童を手厚くケアするなど、ソフト面での対策も強化する。 from...

熊本県/サイエンスパーク推進ビジョン公表、産学官連携拠点を形成

 熊本県は半導体関連産業や研究機関のさらなる集積に向けた方針となる「くまもとサイエンスパーク推進ビジョン」を公表した。東アジアでの代表的な産学官連携拠点の形成を目指し、セミコンテクノパーク(合志市、菊陽町)などの複数の工業団地を軸に、企業や研究機関が共同利用できる拠点施設などを整備。人口増加に対応する住環境、交通インフラの充実なども中心施策として盛り込んだ。  台湾のサイエンスパークを参考に、セミコンテクノパークなどの複数拠点で産学官連携に必要な機能を分担した「分散型サイエンスパーク」の形成を目指す。  半導体関連産業などの集積では、装置メーカーなどを含めた半導体製造に必要なサプライチェーン(供給網)を構成する幅広い企業をバランス良く誘致。これにとどまらず、自動運転、遠隔医療といった将来的な社会実装が期待される分野の半導体ユーザー企業も呼び込み、新産業の創出につながる研究開発、人材育成を図る。  人材育成については、半導体製造の基本を手作業を通し、実践的に学ぶことができるクリーンルームなどを備えた施設を整備。学生と企業、研究機関の関係者の共同利用を想定する。  サイエンスパーク推進に当たっては産業集積に加え、生活・住環境、交通インフラなどの充実や、物流機能のさらなる向上、水循環やスマート農業といった地域のための共同研究にも取り組む。  生活・住環境の充実では、JR豊肥本線や県が計画する阿蘇くまもと空港アクセス鉄道の沿線などに、住宅やホテル、商業施設などの立地を推進。具体的な立地場所として、土地区画整理事業が計画されているJR原水駅などの周辺(菊陽町)、御代志駅周辺(合志市)、JR肥後大津駅周辺、空港アクセス鉄道の中間駅周辺(いずれも大津町)を挙げている。  交通インフラでは国が中九州横断道路の整備を進めているが、さらなる企業集積の推進により現在の想定を超える交通需要の増加が懸念されるため、交通需要の変化などを注視した道路ネットワークの強化に取り組むとした。自動車から公共交通機関にシフトするよう、BRT(バス高速輸送システム)や新たな大量輸送システムの導入、豊肥本線の輸送力強化にも力を入れる。 from...

昇降機4社25年春の採用計画83人増、3社が中途採用100人超/本社調査

 日刊建設工業新聞社が昇降機関連4社を対象に行った人材採用アンケートによると、4月の新卒総数(大卒、高卒などすべてを含む)は804人を見込む。前年度実績よりも3社が増加、1社が減少。全体では83人のプラスとなる見通しだ。最多の三菱電機ビルソリューションズは、新しいスキルや視点を持った人材を積極的に迎え入れ組織力を高める観点から、今後も採用人数を増やす方針。東芝エレベータと日立ビルシステムも採用人数を増やすと回答した。  25年度の中途採用は三菱電機ビルソリューションズと日立ビルシステム、フジテックの3社が100人以上を見込む。三菱電機ビルソリューションズは他業界で培った知見に期待し、新しい発想やスキルを取り入れることで組織強化とサービス向上を図る。日立ビルシステムはキャリア採用の割合を緩やかに増やす考えだ。  若手社員の定着にも注力。4社とも個人面談や研修を充実し、処遇改善なども進める。東芝エレベータは、若手社員の横のつながりを生み出し団結力を高めるために「成人記念式典」を開催。三菱電機ビルソリューションズは4月、従前より賃金の引き上げを早め、若手優秀層へのめりはりのある処遇を目指す等級、評価制度に移行する。  採用活動では、現場への興味付けやメーカー希望学生の減少が課題に挙がった。三菱電機ビルソリューションズは工場見学会、日立ビルシステムはインターンシップ期間の拡大に取り組む。学生との接触機会を増やし、魅力を発信する取り組みがますます重要になりそうだ。 from...

2025年3月26日水曜日

大阪大学/感染症センターが竣工、藤忠雄氏が監修・宇宙船地球号」イメージ

 大阪大学が設計・施工一括(DB)方式で吹田キャンパス(大阪府吹田市山田丘)に建設を進めてきた「大阪大学・日本財団感染症センター」が完成し、24日に竣工式典が開かれた。コロナ禍を踏まえ、産学で感染症研究に取り組み、世界から知見と人材を集め教育・情報発信を行う施設。設計・施工は大成建設・日建設計JVが担当した。工期は2023年9月~25年2月。基本計画策定支援は明豊ファシリティワークスが担当し、建物のデザイン監修を建築家の安藤忠雄氏が手掛けた。  感染症センターは日本財団(笹川陽平会長)と全国モーターボート競走施行者協議会(高野律雄代表理事)の助成を受けて整備した。規模はRC造(免震構造)10階建て延べ1万7619平方メートル。安藤氏の「世界中の優秀な研究者が集結し感染症問題に取り組んでほしい」という思いから、「宇宙船地球号」をイメージした楕円(だえん)形の建物形状が特徴。外壁に100段のアルミダイキャストルーバーを採用したほか、延べ1万平方メートル以上の新築研究棟では国立大学で初となるZEB Ready認証を取得した。  同センターは感染症の基礎研究を行う感染症総合教育研究拠点(CiDER)と、応用・臨床研究を行うワクチン開発研究拠点(CAMaD)のほか、4~6階に民間研究機関などが入居する。7階は高性能分析機器を集積した共用実験室とし、7~9階の吹き抜け空間に協働を促す「共創スペース」を設置。感染症総合知のハブとして、社会課題の解決を目指す。  式典には関係者や来賓など約100人が出席。大阪大学の西尾章治郎総長は「感染症対策の国際的な研究・人材育成の拠点となることを目指していく。わが国の感染症研究の開拓者である緒方洪庵が開いた適塾の精神を受け継ぎ、学問の垣根を越えた英知を結集し、人類の健康と幸福に貢献したい」と話した。安藤氏は「この施設が世界中の研究者の出会いの場になり、感染症研究を世界に発信し続けてほしい」と語った。  最後にテープカットを行い、施設の完成を盛大に祝った。 from...

回転窓/国際平和文化都市の新玄関口

 広島駅の新しい駅ビル「minamoa」(ミナモア)が24日に開業した。同駅の建て替えは60年ぶり。旧駅ビルの解体から約5年間かけて装いを一新した▼JR西日本の駅では大阪、京都両駅に次ぐ規模。中四国初出店のブランドを多く含む217店が入る。初日は開店前から約400人の長蛇の列ができオープンを1時間早めたという▼コンセプトは「品格とシンボル性」「平和」「川と海」。新たなシンボルとして新駅ビルの前面に設ける予定の大屋根を支える2基の巨大な柱は、平和を願う折り鶴の形をイメージする▼西日本を代表する巨大ターミナル駅だけに、新築工事は鉄道を止めず駅ビルの南北通路を順次切り替えながら、乗客らが行き交うすぐそばで進められてきた。駅の2階部分に広島電鉄の路面電車を乗り入れるようにするための工事も大詰めを迎えており、今夏の開通を予定している▼戦後80周年を迎える今年は、例年以上に多くの人が原爆ドームや平和記念公園を訪れるだろう。国際平和文化都市・広島にふさわしい世界に誇れる新たな玄関口として、にぎわいや交流、感動を生み出すことが期待される。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172460 via 日刊建設工業...

横浜市/横浜港港湾脱炭素化推進計画公表、グリーンメタノールや中小企業金融支援など

 横浜市は25日、「横浜港港湾脱炭素化推進計画」を公表した。2050年の脱炭素社会実現を見据え、温室効果ガス排出量を全体としてゼロにするカーボンニュートラルポート(CNP)の形成を図る。グリーンメタノールを利用したコンテナ船燃料の脱炭素化や、中小企業も金融支援の対象とする「横浜港サステナブルファイナンス・フレームワーク」の創設など、全国の先頭を走る独自の計画となっている。  市は22年8月に企業・団体、学識経験者、関東整備局らと横浜港CNP協議会(座長・橘川武郎国際大学学長)を立ち上げ、検討を行ってきた。計画の対象範囲は横浜港の臨港地区と港湾区域、みなとみらい21地区、金沢産業団地などを加えた臨海部。  計画期間と目標値を短中期(30年度)、中期(40年度)、長期(50年度)の3段階に分けて設定した。市臨海部からの二酸化炭素(CO2)排出量は短中期が年間480万トン(13年比47%減)、中期が同240万トン(同74%減)、長期が実質ゼロ。ブルーインフラの保全・再生・創出によるCO2吸収量は、短中期が年間約150万トン、中期が同約200トン、長期が同約250万トンを目指す。  市は港湾脱炭素化促進事業として42主体121事業を定めている(3月時点)。具体的な脱炭素の取り組みとしては照明、空調・熱源、生産設備などの省エネ化、発電機の更新、水素・アンモニア利用、次世代燃料バンガリング、合成メタン供給、脱炭素電力・燃料の使用、液化天然ガス(LNG)火力・石炭火力発電の水素利用、ブルーインフラの保全・再生・創出などを挙げた。  CNPサステナブルファイナンス・フレームワークは、みずほ銀行と横浜銀行の支援を受け作成した。大企業だけでなく中小企業も含め、市が港湾脱炭素化促進事業として位置付けた取り組みの資金調達を金融面から後押しする。  グリーンメタノールをコンテナ船燃料として利用し、脱炭素化を目指す取り組みは他港ではほとんど取り上げられていないという。東京湾沖合に建設予定の浮体式洋上風力の発生電力受け入れ拠点としての構想も検討する。 from...

CCUS登録データ、共同利用解禁/連携する民間システムで

 建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録された技能者や事業者のデータを、API連携する民間システムで共通して使えるようにする「共同利用」の基本方針が固まった。共同利用を認めるデータの範囲や運用方法を関係者間で合意した。労務・安全管理に用いるシステムが現場ごとに異なる場合も、CCUSに蓄積されたデータを直接反映できるようになり現場管理の効率化が期待できる。各システム事業者と2025年度当初から共同利用の契約を順次締結し、サービスを開始する予定だ。  API連携の認定を受ける民間システムは「グリーンサイト」や「Buildee(ビルディー)」など現時点で17システム。各システムの入退場管理のデータがCCUSの就業履歴の蓄積に活用されている。  民間システム側で作成した労務・安全書類のデータをCCUSに反映することも可能。ただCCUS側からのデータ提供は技能者IDに限られる。現場ごとに別の民間システムを利用する場合はデータ登録の二度手間が発生し、その解消を求める声がユーザーの建設会社から上がっていた。  共同利用の基本方針は官民で構成するCCUS運営協議会運営委員会で合意した。CCUSから提供するデータは「技能者基本情報」のうち元請・上位下請がCCUS画面で閲覧可能な28項目に加え、民間システム事業者へのヒアリングを踏まえ運営委で決めた6項目=表参照。「事業者情報」は元請・上位下請が閲覧可能な24項目を対象とする。現場での社会保険の加入確認や建設業退職金共済(建退共)制度の運用などにも活用でき、元請などの適切な現場管理につながる。  ユーザーが民間システムを介しCCUSに登録された自社雇用の技能者などのデータ提供を依頼し、そのデータをCCUS側から民間システムに提供する流れを基本とする。各システム事業者とはAPI連携の既存の契約に加え、共同利用の契約を別途締結する。  技能者本人の同意を前提にCCUSのデータを関係団体に提供する仕組みも構築する。まずは建設業労働災害防止協会(建災防)の「ずい道等建設労働者健康情報管理システム」に提供する方向で準備している。 from...

日建連/下請取引適正化の自主行動計画改定、発注者への全額転嫁を前提

 日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は下請取引適正化の自主行動計画を改定した。原材料費などの高騰が生じた際の価格転嫁に当たり、発注者への全額転嫁を前提にすると規定。下請代金に充てる約束手形の支払いサイト(期間)は「60日以内とするよう努める」から「60日以内とする」に表現を改めた。  日建連の井上和幸総合企画委員長が24日、国土交通省の平田研不動産・建設経済局長を訪ね、改定した同計画と会長名の要望書を提出した。要望書には元請企業に対し、民間発注者が竣工まで代金を一切支払わない事例があると明記し、制度改正も含めて民間発注者からの早期支払いが実現するよう訴えた。  主な改正点は4点。「合理的な請負代金と工期の決定」に関する実施事項では、適切なコスト増加分の全額転嫁に当たり、その出発点は発注者であると強調。発注者への全額転嫁を前提に、元下請を問わずサプライチェーン(供給網)全体で取り組むとした。下請から労務費の転嫁の求めがなくても、協力会社組織などを通じて呼び掛け、定期的に協議することを追記した。  内閣官房と公正取引委員会が策定した「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」も反映し、「指針に掲げられた行動を適切にとる」と盛り込んだ。手形等のサイトの徹底では、60日以内を努力義務としていた表現を「60日以内とする」に直した。  このほか「労務費見積もり尊重宣言」に基づく下請との適正取引の実施や、「適正工期確保宣言」に基づく発注者との適正取引の取り組み、改正建設業法を踏まえ「恐れ(リスク)情報」などが顕在化した場合の変更協議などを加えた。 from...

人材協/25年度事業計画で小中学生への広報に重点、自主宣言企業公表も

 国土交通省や建設業団体などでつくる建設産業人材確保・育成推進協議会(人材協、事務局・建設業振興基金〈振興基金〉)は24日、運営委員会(委員長・古阪秀三立命館大学客員教授)をオンライン形式で開き=写真、2025年度事業計画などを決めた。小中学生にもアプローチする戦略的な広報活動を積極的に展開。国交省が検討している「技能者を大切にする企業」の自主宣言制度に人材協が運営主体として関わり、宣言企業を公表するシステムの構築に取り掛かることも決めた。  若年層の入職促進に向け、実際に求人の対象となる高校生だけでなく、小学生や中学生にも業界の魅力を伝えることに事業全体で重点を置く。ウェブサイトの「建設現場へGO!」のコンテンツである「建設業職種メーカー」などの活用を引き続き促進。教育現場で建設業の必要性や魅力を伝える方策の一つとして、民間企業が制作予定の「インフラ」がテーマの教育アニメ映画の広報に協力する。  自主宣言制度は国交省が詳しい制度内容を検討中。人材協は運営を担う立場で、企業からの申請受け付けや審査手続き、ウェブ上での企業一覧の公表を含めた一連の仕組みづくりを検討する。国交省がウェブサイトで公開している技能者向け研修プログラム「建設技能トレーニングプログラム(建トレ)」のニーズ調査にも人材協として新たに取り組み、外国人技能者向けの多言語化や新たなコンテンツの検討に生かす。 from...

セメント関連3社25年春の採用計画31人増加、全社が目標に届かず/本社調査

 日刊建設工業新聞社がセメント関連メーカー3社を対象に実施した人材採用アンケートによると、4月の新卒総数(大卒、高卒などすべてを含む)は200人で、前年度実績から31人増加する見通しだ。売り手市場に伴う母集団形成の苦戦や生産現場を志望する学生の減少などを背景に、3社とも採用目標人数には届かなかった。2社が2026年度も定年退職者の補充などを勘案し採用者数を増やすと回答した。  太平洋セメントは93人の新卒を採用する予定。採用人数は今後も増やす方針だが、機電系など特定系統採用が難しくなっていることに加え、転勤や入社後の配属が希望通りになるか分からない「配属ガチャ」を忌避する学生の増加を課題に挙げた。  住友大阪セメントは65人の新卒を採用し、毎年の必要数として設定している60人をクリアした。半導体関連事業の拡大とカーボンニュートラル(CN)関連の新規事業の立ち上げに備える。一方、総合職と地域限定職ともに工場などの生産現場を志望する学生の減少が目標人数の達成への課題になっているという。  UBE三菱セメントは前年より20人多い42人を採用する予定だ。技術職の採用にはオファー型のスカウトサービスを活用した。採用活動をさらに強化するため、会社概要や若手職員による座談会などをまとめた動画も作成する。  25年度の中途採用目標に関しては3社とも未定と回答した。太平洋セメントとUBE三菱セメントは今後も中途採用者を増やす方針。横ばいと回答した住友大阪セメントも事業拡大を担う人材の確保を図る考えだ。  定着率向上に向けたきめ細かなフォローや待遇改善にも注力する。各社とも若手や新入社員を対象とする研修や面談などを実施。太平洋セメントは3年連続で4月入社の新卒採用者の初任給を引き上げる。エリア非限定職種は大学院修了で3万7000円増の32万円、大卒は30万円の大台に乗せた。UBE三菱セメントも、2年連続で初任給を引き上げる予定だ。 from...

JR東日本/高輪ゲートウェイシティー(東京都港区)が3月27日まちびらき

 JR東日本が開発している高輪ゲートウェイシティー(東京都港区)が、27日にまちびらきを迎える。超高層ツインタワー「THE LINKPILLAR1(ザ・リンクピラー1)」が稼働するほか、JR高輪ゲートウェイ駅も全面開業。施設は「100年先の心豊かな暮らしのための実験場」をコンセプトに、企業の枠を越えて共創や技術革新が生まれるよう、多様な仕掛けを用意した。ツインタワー以外の施設は現在も建設中で、2026年春の全面開業を目指す。  25日に先行開業エリアを報道陣に公開した。冒頭あいさつした同社の出川智之マーケティング本部まちづくり部門マネージャーは「さまざまな共創パートナーが持つアイデアやサービス、知を掛け合わせ、よりよい未来に資する新たなソリューションを生み出し、フィードバックを得てさらに進化させ、多様な社会課題を解決し、未来に向かって共創し続けるまちでありたい」と展望した。  先行開業するザ・リンクピラー1は南北に連なるツインタワーで、延べ46万平方メートルの規模。高さは161メートル。設計をJR東日本建築設計・JR東日本コンサルタンツ・日本設計・日建設計JV、施工は大林組が手掛けた。  エリアの顔となる駅前広場「ゲートウェイ・パーク」は実証実験やイベントの開催に対応。水素由来の電力で動く自動走行モビリティーが行き交い、移動の未来像を発信する。施設内にはビジネス創造施設「LiSH(リッシュ)」を開設。スタートアップ(SU)への人的・資金的な支援制度を設け、まち全体を実証実験場として提供することで新技術の社会実装を後押しする。  商業施設「NEWoMan(ニューマン)高輪」では飲食・物販の2店舗が先行開業する。駅内でも4店舗がオープン。ニューマン高輪は26年春までに段階的に開業し、約200店舗の規模になる。  ザ・リンクピラー1のリーシングは、KDDIの本社移転をはじめ順調に進展し、ほぼ満床で稼働する予定。北側では大林組が同2、鹿島が文化創造棟、フジタがタワーマンションを施工中。タワーマンションは全て賃貸になる。 from...

2025年3月25日火曜日

東京都葛飾区/こち亀記念館の開館記念式典開く/施工はトーヨー冨士工

 東京都葛飾区に建設した「こち亀記念館」が22日オープンし、区が開館記念式典を開いた。同記念館は漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所(こち亀)』をテーマにした5階建ての観光拠点で、内部では作品の世界観を楽しめる。青木克徳区長や作者の秋本治氏、国会議員、区議会議員ら関係者が出席し、施設の門出を祝った。  冒頭あいさつで青木区長は「作品のファンや地元の住民から強い要望を受けてようやく完成した。ぜひ多くの方にご覧いただきたい」と祝辞を述べた。秋本氏は「作品を見て育った人が本当に愛情を込めて造ってくれた。国内のほか、海外からも見に来てほしい」と語った。  同記念館は「主人公が漫画の舞台となる派出所を勝手に自分の記念館にしてしまった」というコンセプト。内部には漫画の原画を展示し、デジタルコンテンツなどを用意している。  同記念館の所在地は亀有3の32の17。建物はRC・S造5階建て延べ540平方メートルの規模。設計は久米設計、施工はトーヨー冨士工が担当した。 from 行事 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172427 via 日刊建設工業...

回転窓/平穏への願い

 江戸時代前期に日本各地を修行し、木肌とノミ痕を生かした神仏像を残した円空。特別展「魂を込めた 円空仏-飛騨・千光寺を中心にして-」が今月30日まで三井記念美術館(東京都中央区)で開かれている▼荒々しくも温かみのある木彫像を眺めていると、自然と心が穏やかになる。人気マンガで認知度が高まった「両面宿儺(すくな)坐像」が見どころの一つ。憤怒の中にも慈悲がにじみ出てくる姿に目を奪われた▼山林修行僧の円空は庶民救済を目的に愛知、岐阜を中心に関東、北陸から北海道までを巡り、12万体の仏像を刻もうと誓願を立てた。30歳ごろから彫り始めたという円空仏は当初、古典的な造りで丁寧に彫られていたが次第に簡素な仏像に。作風はたくさん彫ることで多くの人たちを救おうとした願いの表れだろう▼昨年の訪日外国人数は歴史的な円安の影響などで過去最多を更新。世界的ヒットのドラマ「SHOGUN将軍」で注目を集める岐阜県では、千光寺のある高山市も観光ハブとして一段とにぎわいを見せているようだ▼今も昔も人々の苦しみを和らげる円空仏。平穏への願いを多くの人と共有したい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172424 via 日刊建設工業...

国交省/CNPコンテナターミナル認証制度を創設、各港湾の脱炭素施策を客観的に評価

 国土交通省は脱炭素化と港湾機能の高度化を図るカーボンニュートラルポート(CNP)形成の一環で、コンテナターミナルを対象に脱炭素施策を客観的に評価する「CNP認証(コンテナターミナル)制度」の本格運用を2025年度に始める。二酸化炭素(CO2)排出量削減の程度に応じ、レベル1~5の5段階で認証する。申請の受付開始は6月ごろを見込む。  サプライチェーン(供給網)全体で脱炭素化が求められる中、供給結節点のコンテナターミナルでも排出するCO2の削減が重要課題になっている。国交省は同制度を通じて、各港湾の脱炭素施策を客観的に評価し「見える化」。環境意識の高い荷主への訴求力を強め、港湾の国際競争力の強化につなげる。  各港湾管理者やコンテナターミナルの運営者が、国交省港湾局に申請し審査を受ける。審査では▽貨物取り扱いの脱炭素化(ターミナル照明や倉庫照明のLED化、低炭素型荷役機械の導入など)▽ターミナルを利用する車両、船舶の脱炭素化(ゲート予約システムによる搬出入トラックの渋滞解消、液化天然ガス〈LNG〉など次世代燃料船への対応)-の二つの分野で取り組みを評価する。  審査結果により国交省は5段階で認証を与え、申請者に通知。認証したターミナルの情報を公開する。認証期間は3年間。更新時にレベルアップの申請も可能だ。  国交省は当面、同省で審査を行うが、第三者機関への委託も視野に入れている。 from...

名鉄/名鉄名古屋駅を再整備/延べ52万平米のビル建設、事業費5400億円

 名古屋鉄道は24日、名古屋市にある名鉄名古屋駅を再整備する「名古屋駅地区再開発計画」の事業化を決定したと発表した。約5400億円を投じ、オフィスやホテル、商業施設などが入る延べ約52万平方メートルのビルを建設する。中部国際空港(愛知県常滑市)へのアクセス強化を図るとともに、リニア中央新幹線の開業効果を幅広く波及させる。2027年度に新たなビルの建設に着手する。  工事現場は名古屋市中村区名駅1の2ほか(敷地面積3万2700平方メートル)。建物の下層部には鉄道駅が入る。建物内には十分な駐車スペースも確保する方針だ。共同事業者は▽名古屋鉄道▽名鉄都市開発▽日本生命保険▽近畿日本鉄道▽近鉄不動産。  鉄道は線路を4線化し、「空港アクセスホーム」を設置。利用者のスムーズな移動を後押しする。駅空間にはゆとりを持たせるとともに段差を解消し、誰もが快適に使える施設にする。  名古屋市が整備する名古屋駅駅前広場を経由し、リニアをはじめ他の交通機関にスムーズに乗り換えできる環境を創出する。乗客の安全確保のため、ホームドアの整備も推進する。ホームやコンコースは拡張し、大規模災害発生時の対応力を高める。  今後は25年度に名鉄百貨店本店や名鉄グランドホテルなどが営業を終了し、26年度に既存建物を解体する。27年度に新築着工後、33年度に1期本工事を竣工し、オフィスや一部商業施設、ホテル、バスターミナルを開業する。40年代前半に2期本工事を竣工し、商業施設が全面開業。鉄道施設も全てのリニューアルが完了する。 from...

安藤ハザマら/遠隔操作移動式コンベヤを開発/掘削~ずり出し無人化へ

 安藤ハザマらは、トンネル掘削工事の連続ベルトコンベヤー工法の効率化に向け「遠隔操作移動式コンベヤ」を開発した。作業中の建機の間隔を柔軟に調整し、ずり出しの作業効率を高める。ベルトコンベヤーを連続的に延伸する「日々延伸テールピース台車」と組み合わせ、掘削からずり出しまでの無人化を実現する。  建設機械販売・レンタルのリョーキ(広島市西区、森川英樹代表取締役)と共同で開発した。タッチパネル式の遠隔操作装置を採用し現場の詰め所などから操縦できる。周囲確認用のカメラや衝突防止用のミリ波レーダーも装備し、安全な作業を実現する。大きさや形が異なるずりを受け入れる大型ホッパーも装備した。  施工中の山岳トンネル現場で実証試験を実施した。自動で切削を行う「AIロードヘッダ」や「移動式クラッシャー」など、遠隔操作システムを導入済みの建機との連動性を確認した。  切羽作業は危険性が高く、大量の粉じんが発生するため、重機オペレーターの健康リスクも高い。安藤ハザマは連続ベルトコンベヤー工法の遠隔操作システムを開発し、作業の省人化と効率化を目指す。 from 技術・商品 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172432 via 日刊建設工業...

2025年3月24日月曜日

長崎県/大亀矢代トンネルが貫通し早期開通へ弾み、施工は熊谷・門田・中島JV

 長崎県が主要地方道小浜北有馬線の改良工事の一環で計画する「大亀矢代トンネル」(雲仙市小浜町大亀~南島原市北有馬町乙、延長896メートル)の掘削工事が完了し、21日に坑内で貫通式が開かれた。施工は熊谷組・門田建設・中島建設JVが担当。関係者が出席して貫通を祝い、改良区間の早期開通を祈念した。  式典では県の近藤和彦島原振興局長、徳永達也県議会議長、金澤秀三郎雲仙市長、松本政博南島原市長、熊谷組の岡市光司代表取締役兼執行役員副社長が貫通発破のスイッチを点火。爆破音の後、無事に貫通したことを確認すると、続けて貫通点清めの儀、通り初めの儀、樽(たる)みこしの入場、鏡開きなどが行われた。  発注者あいさつで近藤局長は「主要な構造物であるトンネルが無事に貫通を迎えられたことは大変喜ばしい。軟質な地質や転石を多く含み、トンネル掘削はとても難儀したと思うが、豊富な経験と卓越した技術で無事に貫通していただけた」と施工者に感謝を伝えた。  施工者を代表し岡市副社長は雲仙普賢岳の火砕流があった地層が横断しており、「掘削では湧水の発生や掘削面の崩壊といった想定以上の困難に直面したが、最新の技術を駆使しながら、無事故で貫通させることができた」と話し、「残る工事についても安全、品質、環境を第一に取り組んでいく」と意気込みを語った。  同トンネルは幅員5・5メートルの2車線で工法はNATM(機械掘削)、内空断面積は52~56平方メートル。2023年5月末に起点側から掘削を開始し昼夜2交代で工事を進め、約20カ月かけて貫通させた。工期は26年11月30日まで。  トンネルを含む改良区間の開通は27年春ごろを目指しており、開通すれば現道の連続する急カーブや変則交差点を通行する必要がなくなり、県央地域とのアクセス強化、通行時の安全性向上などの効果が期待される。 from...

回転窓/髪の悩みに強い味方

 今週は寒さが和らぎ、晴天に恵まれ気温も上昇する地域が多いよう。陽気が良くなり新しい環境での生活も始まることなどに合わせ、春はヘアスタイルを変える人が多いと言われる▼日本の美容業界で約20年前に開発され、海外にも展開されているヘアカット技術「ヘアリセッター」をご存じだろうか。人の頭髪は一つの毛穴から数本が生えていて、これらが根元で絡み合っているのを特殊なハサミで切りほどき、人によって異なる生え癖などを改善する▼美容師の神山伸彦氏が開発した。施術は1回当たりわずか15分ほどで済み、期間を置いて何回か繰り返すことで、髪がつむじで割れにくい、前髪が割れにくい、髪にボリューム感を出せる、寝癖が付きにくい、抜け毛が少なくなるなどの効果が持続するようだ▼講習で技術習得した理美容師が施術を行える。神山氏に聞くと、ヘルメットで圧迫されて髪に付く癖などに対しても緩和効果を期待できるという▼季節はもうすぐ春本番から初夏へ。新しいヘアスタイルにするほどの変化はないかもしれないが、自身で髪の悩みが改善されていくのを実感できるなら心持ちも軽くなる。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172398 via 日刊建設工業...

凜/国土交通省中部地方整備局・小寺朱華さん、自分から疑問を持つ

 新卒で国土交通省に入省し中部地方整備局に配属、3年がたつ。道路事業に関心を抱いたきっかけは、建設が進む東海環状自動車道。出身地の岐阜県大野町では2019年、大野神戸ICが開通した。付近の道の駅「パレットピアおおの」でアルバイトをしていたこともあり、大規模な道路が建設される様子を間近で見て、「自分も人々の生活を豊かにする仕事がしたいと思った」と語る。  1年目は浜松河川国道事務所の計画課で、「三遠南信自動車道水窪佐久間道路」の調査・設計を担当。「受注者との打ち合わせは土木専門用語が多く、慣れるまで苦労した。分からないことは丁寧に調べて解消した」と振り返る。事務所全体でBIM/CIMの取り組みに力を入れており、設計時に作成したBIM/CIMモデルが工事や管理へ活用できるような仕組みづくりの一環として、事務所独自の要領作成にも携わった。  現在は、名古屋都市圏と中部国際空港を結ぶ「西知多道路」の工事発注に携わっている。「都市部のため、ヤード確保や現道との兼ね合いなど、山間部とは異なる難しさがある」と日々奮闘中だ。  目標は「地域から信頼される職員」。品質の良いインフラ整備には、的確な計画・設計が必要。「判断材料となる知識を蓄えるためにも、『なぜ?』と疑問を持ち、解決する習慣を大切にしたい」と成長を目指す。  国土交通省中部地方整備局愛知国道事務所工務課技官(こでら・しゅか) from...

安井建築設計事務所/ビジュアル・アイデンティティーを刷新

 安井建築設計事務所は4月、ビジュアル・アイデンティティー(VI、企業ロゴとコーポレートカラー)を刷新する。2024年4月に創業100年を迎えたのを一つの節目に、次なる高みを目指すため、新しいVIを設定する。  コーポレートメッセージの「人やまちを元気にする」という強い情熱を、コーポレートカラーで表現した。新しい企業ロゴは、世界中の企業やパートナーとの協業を視野に入れた際に、認知度と発信力を高めやすい英文表記とした。  同社は刷新したVIを旗印に、多様な業種・規模の顧客や関係者との連携をさらに強化し、地域社会と人々の豊かさの実現に貢献していく。 from 企業・経営 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172387 via 日刊建設工業...

国交省/外国人技術者採用後押し、中堅・中小建設会社向けハンドブック作成

 国土交通省は建設現場に従事する技術者の確保を目指す中堅・中小企業向けに、外国人技術者の実務的な採用手順などを解説するハンドブックを作成し、4月に公表、配布を始める。技術者採用には特定技能のような制度的な枠組みがなく、各企業が持つノウハウにも差がある。未経験の中小企業であっても外国人技術者採用に踏み出せるよう、企業側の受け入れ体制の整備など採用準備の段階から取り組むべき事項を細かに指南する。先行的な受け入れ企業の好事例も参考として紹介する。  国交省が作成したのは「外国人建設技術者の採用・定着に向けたハンドブック」。24日にオンラインで開くセミナーで内容を紹介する。インドネシアとベトナムで中堅・中小建設会社と現地学生とのマッチングを支援する「ジョブフェア」を本年度開くなど、外国人技術者の採用支援に本腰を入れている一環でハンドブックの活用を促していく。  厚生労働省の「外国人雇用状況」の集計によると、主に技術者が対象の「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の在留資格で建設業に従事する外国人は24年10月末時点で1万6161人。15年の1958人から急増している。優秀な人材の確保だけでなく、海外展開や新規顧客の獲得、組織の多様化、社員の意識改革につながる観点もあり、採用を求めるニーズは今後も高まるとみられる。  ハンドブックでは技人国の資格取得を前提に、主に施工管理技術者の採用を念頭に置く。採用ステップとして▽経営課題整理▽採用計画▽準備・環境整備▽募集・選考▽雇用手続き▽活躍・定着支援-という流れで必要事項をチェックしながら進めるよう提案する。  まずは自社の課題から採用ターゲットを定める必要性を指摘。採用ルートとして口コミや人材コンサル、インターンシップ、合同企業説明会を活用する具体例を挙げる。選考のポイントや内定後のフォロー、入社後のキャリア形成支援などで注意すべき点も解説。こうした流れに沿って先行企業が実際の取り組みを、さまざまなパターンで紹介する。 from...

選ばれる産業へ・1/東京地区生コンクリート協同組合理事長・森秀樹氏

 コストアップや人材不足への対応など、大きな転換期にある生コンクリート業界。日刊建設工業新聞は東京地区生コンクリート協同組合、埼玉中央生コン協同組合、神奈川生コンクリート協同組合、千葉県生コンクリート工業組合の各理事長にインタビュー取材し、各エリアの市場動向や事業発展への課題などを聞いた。持続可能な生コン業界への転換を急ぐ各組合の取り組みを紹介する。  ◇若手人材獲得へ大きな一歩  東京地区の2024年度の生コン需要は、255万立方メートルで落ち着きそうだ。需要は底堅く、次年度の需要を270万立方メートルと見ているが、大型の工事案件で工期遅れが発生しないか懸念している。  社会貢献として生コンを継続的に供給することが使命だが、骨材の安定供給が続くか不安だ。骨材業者の大多数が中小企業で、運搬するトラック運転手や後継者の不足、プラントの老朽化などの課題を抱える。万が一廃業などが増えれば影響が非常に大きい。骨材の値上げにはできる限り応えなければならない。  東京地区では、軽量骨材不足が大きな問題になっている。生産しているのが1社だけという状況の中で、都内の再開発工事の工期遅れなどによって需要が集中しているのが原因だ。月に約3万立方メートル必要なところ、約1万立方メートルしか用意できない状況が続いている。最近は他の骨材を使用して設計をしてもらえるようになったが、28年までこの状況が続くと見ている。  こうした問題への対応とともに、出荷ベース契約の定着も進める。東京は他地域に比べ工期の長い案件が多く、諸資材の値上げを適宜生コン価格に転嫁する必要がある。4月1日から生コン価格を1立方メートル当たり3000円引き上げるが、旧契約価格との差額負担を繰り返す余裕はなく、過去において原価が大きく変動しない中で築いてきた商慣習も変革する時期に来ていると感じている。  残コン・戻りコンが減少しないことも課題だ。廃棄物処理費用の上昇に加え、処理施設の不足による受け入れ停止も起こりそうな状況になっている。出荷量の約3%を占める残コン・戻りコンをゼロにするため、1立方メートル当たり1万円の有償化も行ったが状況は変わらず、4月1日からは3万5000円に値上げする。  生コン業界を若い人の就職先として選択してもらえるようにすることも喫緊の課題だ。東京協組では、4月1日から完全週休2日制を導入する。東京都生コンクリート工業組合が青年部を設立するのも、若手人材獲得の大きな一歩になるだろう。全国生コンクリート工業組合連合会主催のコンクリート甲子園などを通じ、PR活動の拡大も図る。コンクリートに触れる機会を創出するとともに、社会貢献も行っている業界であることをもっと広く周知したい。東京は就職の選択肢が多いので地方からも人材を広く求めることも必要だ。 from...

大阪府、大阪市/新大阪駅南側広場再編整備、検討体制構築急ぐ

 大阪府と大阪市は北陸新幹線の新大阪駅への接続計画を踏まえた駅南側広場(大阪市淀川区西中島5)の再編整備に向けて、国や府市、鉄道事業者などの関係機関による検討体制を早期に構築する。25日に大阪市内で開く「第6回新大阪駅周辺地域まちづくり検討部会」で了承を得たい考えだ。  南側広場は新大阪駅南口の地上部に位置する。JRの新幹線や在来線、大阪メトロの乗り換え拠点の一角を担い、多くの利用者が行き交う交通の要所となっている=写真。面積は約2ヘクタール。一方で、ロータリーはタクシーやバスの乗降場の収容能力が十分とは言えず、ピーク時の混雑が課題となっている。  こうした中、南側広場を含む新大阪駅周辺地域は2022年に都市機能の向上を目的とする都市再生緊急整備地域に指定。24年11月には国土交通省と鉄道建設・運輸施設整備支援機構が南側広場付近の地下に北陸新幹線の新大阪駅を設置する計画を提示した。  府、市はこれを契機に、新大阪駅エリアの交通結節機能のさらなる強化に向け、関係機関と連携した検討を進める。乗り換え利便性の向上や魅力の高い人中心の空間形成、新技術を活用した多様な交通サービスの実現を目指す。  17日の府議会(常任委員会)では杉江ゆうすけ議員が新大阪駅の将来像について「リニア中央新幹線の駅位置の早期確定を国やJRに求めていくべきだ」と述べたほか、「駅前空間の具体的な検討に際しては空飛ぶクルマや自動運転バスなど次世代交通の導入も視野に入れ、大阪・関西の玄関口にふさわしい魅力的な場所にしてほしい」と要望した。  まちづくり部会では新大阪駅周辺地域のほか、十三駅・淡路駅エリア計画の検討、まちづくり方針の更新なども審議する。 from...

土日閉所定着へ、6団体で強力に推進/新たに日空衛と電設協が参加

 日本建設業連合会(日建連)ら建設業4団体が2024年度から取り組んでいる「目指せ!建設現場 土日一斉閉所」運動に、新たに設備系2団体が加わる。25年度は日本空調衛生工事業協会(日空衛、藤澤一郎会長)、日本電設工業協会(電設協、文挾誠一会長)とも連携。時間外労働の上限規制適用から1年が経過するタイミングで団体数を6団体に増やし、土日閉所の定着をより強力に推進する。  土日一斉閉所運動は24年4月の時間外労働上限規制適用を受け、週休2日(土日閉所)の定着を目的とした運動。日建連、全国建設業協会(全建)、全国中小建設業協会(全中建)、建設産業専門団体連合会(建専連)の4団体が初めて共同による全国運動として24年度に開始した。  25年度は新たに設備系2団体が加わり、大手や中小を問わず業界を挙げて官民の原則全ての建設現場で土日閉所を推進する。具体的な活動内容は発注機関への要請活動や、ポスター作成などによるPR活動など。運動は25年4月からの1年間。国土交通省、厚生労働省、総務省などの後援を予定している。  建設業では技能労働者の高齢化や将来予測される大量離職などに備え、若い世代の入職促進が課題となっている。建設業団体は労働基準法に基づく時間外労働の上限規制を順守するには週休2日の定着が不可欠と判断し、複数団体の連携による運動を展開している。 from...

関東整備局/入札不調・不落発生状況24年度は9・9%、設備工事は30%超

 関東地方整備局は2024年度の入札・契約、総合評価の実施状況をまとめた。予定価格が250万円未満を除く発注件数は606件。発注総数に占める入札不調・不落の発生率は9・9%で昨年度と横ばいだった。工種別では設備工事が30%を超えた。入札参加企業が配置予定技術者を確保できないことなどが要因とみられ、整備局は引き続き対策に力を入れる。  実施状況は24年12月時点の発注件数を基に算定した。内訳は▽一般競争495件(81・7%)▽指名競争88件(14・5%)▽随意契約23件(3・8%)。随意契約を除く583件に総合評価方式を適用した。落札率は93・6%と13年度以降、90%台を維持している。低入札の発生率は0・9%だった。  入札不調・不落件数は64件。うち不調52件、不落12件。工種別の不調件数は一般土木の14件が最多。電気8件、暖冷房6件、維持修繕5件と続く。不落は通信の3件が最も多く、建築と機械、暖冷房が2件ずつだった。発生率に換算するとトップは暖冷房の40%、次いで電気が36%、機械が33%と設備工事の不調・不落が目立った。  設備工事で不調・不落が多発した背景には民間を中心とする旺盛な建築需要が影響したとみられる。設備工事を発注する営繕部では「配置予定技術者が確保できない」点を理由に挙げている。  今後は入札者が提出した見積書の内容を予定価格に反映する「見積活用方式」を取り入れるなどの対策を講じる。公募型指名競争入札などに適用する企業実績評価型総合評価方式で、配置予定技術者に求める過去の実績を緩和して発生を抑制する取り組みにも注力する。 from...

西松建設ら/山岳トンネルで複数重機が自動施工、ずり出し作業を大幅効率化

 西松建設とジオマシンエンジニアリング(東京都荒川区、塚田純一社長)、アラヤ(東京都千代田区、金井良太社長)は、山岳トンネル施工の1次ずり搬出作業に使用するホイールローダーとバックホウの自動施工システムを共同開発した。同作業で高度な操作技術が要求される複数重機による自動運転、自動施工が可能となり、施工の大幅な省力化や省人化を実現する。今後は自動化施工技術のさらなる高度化を目指す。  栃木県那須塩原市にある西松建設の山岳トンネル技術開発拠点「N-フィールド」で実証に成功した。  同社は山岳トンネル無人化・自動化施工システム「Tunnel RemOS(トンネルリモス)」の開発を推進中。オペレーターが重機に搭乗せずに遠隔操作する技術を中心に開発してきた。新たに開発した自動化施工技術は遠隔施工技術をベースに、ホイールローダーやバックホウの運転とずりのすくい上げといった一連のずり出し作業を自動化する。  自動化したホイールローダーは、ずり出し作業に関連した走行動作やバケット動作を自動で行うことが可能になる。すくい上げるずりの対象は、あらかじめ制御プログラム上で設定した走行レーンによって管理され、遠隔コックピットに配置したタブレットなどの制御プログラム操作端末で任意に指定できる。  バックホウの動作は駐機場所から切羽までの走行と、切羽でのずり集積作業を自動化した。機体に搭載した複数のセンサーを用いてSLAMなどの技術により周囲壁面や障害物を検知することで走行の自動化も実現。側壁との距離を一定に保ちながら駐機場所と切羽の間を自動運転する。  切羽でのずり集積作業は、ずりの形状を認識しながら機体のブーム、アーム、バケット各関節の角度を制御することでずりをすくい上げ、ホイールローダーがすくいやすい位置まで旋回してずりを集積する。作業中にホイールローダーの接近を検知した場合、旋回範囲を制限して衝突を防止する機能を搭載。両重機による狭隘(きょうあい)な切羽での同時作業で安全性を確保した自動化施工が可能になる。 from...

2025年3月21日金曜日

安藤忠雄氏/永遠の青春テーマの展覧会が大阪市で開幕、建築人生の集大成を展示

 建築家の安藤忠雄氏による大規模展覧会が20日、グラングリーン大阪うめきた公園(大阪市北区)内の文化施設「VS.(ヴイエス)」で開幕した。タイトルは「安藤忠雄展-青春」(主催=VS.共同事業体〈トータルメディア開発研究所・野村卓也事務所〉)。第一線を走り続ける安藤氏が描く「永遠の青春」をテーマに、建築人生の集大成となる作品群を映像演出と共に展示する。会期は7月21日まで(月曜日休館)。開館時間は午前10時~午後6時。入場料は大人一般1800円。  同展では安藤氏が手掛けたプロジェクトのスケッチやドローイング、模型など約230点をモニター映像と共に展示。出展する建築プロジェクト数は約60件に及ぶ。  会場は「挑戦の軌跡」と「安藤忠雄の現在」にゾーニング。初期作品「住吉の長屋」(大阪市住吉区)から「表参道ヒルズ」(東京都渋谷区)、「ブルス・ドゥ・コメルス」(仏パリ)など国内外の代表作品を展示する。原寸大に再現した「水の教会」(北海道占冠村)や、天井高15メートルのダイナミック空間など最新の映像技術を駆使したフロアも設けている。会場外にはシンボルとなる「青いリンゴ」も設置した。  開幕に先立ち、19日に報道関係者に会場内を公開した。安藤氏は「人々に100歳まで青春のように目標を持って走り続けてほしいという思いで名付けた。私自身も変わらず仕事を頑張っていく」と力強く語った。 from...

CCUS中期的な運営指針に官民合意/システム更新、コスト上振れないよう着実に

 建設キャリアアップシステム(CCUS)の収支見通しを含めた中期的な運営の方向性が、官民双方の関係者間でまとまった。CCUS開始当初の赤字がかさんで運営主体の建設業振興基金(振興基金)に生じた約53億円の累積欠損を2025年度以降の一定期間で解消する方向を示す。建設業団体側は25年度に始まる次期システムへの更新作業でコストが想定以上に上振れすることがないようくぎを刺す。今後は単年度の黒字を着実に確保しながら、関係者の合意を踏まえ欠損への充当などを毎年度判断する手続きを取る方針で、CCUSの安定的な運営に万全を期す。  CCUS運営協議会(会長=平田研国土交通省不動産・建設経済局長)が東京都内で19日に開いた総会=写真=で、振興基金が25年度から5年程度を対象期間とした「CCUSの中期的な事業運営のための指針」の案を説明し了承を得た。  新たな指針は、収入の安定確保を見込める登録技能者・事業者数や就業履歴数の取り組み目標を設定する現行の「低位推計」の代わりになる指標として定める。  新規の技能者・事業者登録数は少しずつ減少すると想定し、30年度に登録技能者は231万人、一人親方を除く登録事業者は19・4万社と予測。就業履歴数は25年度に1億1200万件、26年度以降は年1億2000万件を見込む。  システム運営にかかる支出は物価・人件費の上昇を加味する。システム更新は5~10年程度のスパンで必要となるため、次期システムのさらに先の更新を見据えた金額の積み立ても25年度に始める。  日本建設業連合会(日建連)や全国建設業協会(全建)など建設業団体側は、システム開発費に追加の出えん金を各団体が負担した過去の例を繰り返さないよう念を押した。  振興基金はシステム更新費として積み立てた約47億円で収まると想定。現在は複数のベンダーの提案書を審査中で、4月以降に契約先を決定する。システム開発の不確実性も念頭に置きながら、発注者支援業務も活用し専門家も入れた検討体制を敷いていることに理解を求めた。  指針ではシステム更新を着実に実施していくことを前提に、技能者の能力向上の促進などの観点でさらなる担い手の確保・育成につながる事業の実施を検討していく方針も掲げた。 from...

東北6県/建設業の振興・担い手確保策、バックオフィスの導入支援

 ◇外国人材の定着促進に補助  担い手確保や時間外労働の罰則付き上限規制の適用に対応するため建設業の働き方が大きく変わろうとしている。さまざまな課題解決に向けて東北6県の公共発注機関は、支援事業を相次ぎ打ち出している。特に生産性向上へバックオフィスの導入を支援するなど業界のDX推進が各県で活発化。若年層や女性の担い手確保とともに、人手不足の解決策として期待される外国人材の定着促進へ資格取得費用を補助する動きもある。  DX推進に向けては、福島県が約7000万円を2025年度予算に計上した。新たにバックオフィス導入に必要な費用を支援。2024年問題を踏まえ工事の生産性向上に加え、書類作成といった現場内勤業務でITツールなどの活用を促す。従来通り電子納品保管管理システムの改修や公共土木施設の各種情報を一元化するデータベースの構築などにも取り組む。岩手県も「建設DX推進事業」でバックオフィスのDXを進める。ICT機器の導入経費も最大で半額補助する。  担い手確保では、山形県が本年度から「建設業人手不足対策事業」として411万円を充当した。人材育成セミナーの開催に加え、県内建設会社に行ったアンケートで要望が多かった外国人材の定着促進へ資格取得費用を一部補助。女性のキャリア形成に向けた講習会も開くなど多様な人材の確保・育成につなげる。青森県は「未来の担い手・建設業魅力体感事業費」で、小・中学生への職業体験や高校で課題研究授業などに力を注ぐ。  全国でも人口減少が顕著な秋田県では、引き続き「建設産業魅力発信事業」を推進する。主に▽未来を創るコンストラクター育成支援=学校や企業・団体と連携した出前説明会、企業の経営者向けセミナーなど開催▽建設産業イメージアップ推進=小中学生等を対象としたインフラ資産の社会見学など実施▽人材確保対策加速化支援=業界団体が行う技術者育成、離職防止・定着促進、女性活躍促進費用の補助-などに取り組む方針だ。  宮城県は、地域建設産業災害対応力強化支援事業を継続する。地域建設産業が取り組む防災体制の構築や災害対応力強化に向けた費用の一部を負担する。加えて、4月からは業界の振興に向けた「みやぎ建設業振興プラン」に基づいた施策を展開。新たに若手の奨学金返還や資格取得費用の一部支援や外国人労働者とのマッチングイベント開催、現場とバックオフィスの分業を推進など、業界のイメージ向上につながる案を列挙している。 from...

東京都/25年度予算案のTOKYO強靱化プロジェクト、地震対策に4486億円

 防災対策のレベルを上げる「TOKYO強靱化プロジェクト」を推進している東京都は2025年度予算案で、地震対策に24年度比84億円増となる4486億円を計上する。建物の耐震化促進のほか、延焼遮断の効果がある特定整備路線の整備などを進める。風水害対策では419億円増の1996億円を投じる。調節池を含めた河川施設の建設を加速し、浸水被害を軽減する。  同プロジェクトでは40年代に▽地震▽風水害▽火山噴火▽電力・通信等の途絶▽感染症-の五つの危機に対応できるよう東京の強靱化に取り組んでいる。40年代までの総事業規模は17兆円で、このうち7兆円を23年度から10年間に投じる。  地震対策では、緊急輸送道路の沿道に立つ建物の耐震化に30億円を充てる。1981年以前に完成し、道路をふさぐ恐れのある建築物が対象。耐震アドバイザーの派遣や耐震改修などに必要な費用をサポートする。  市街地の延焼を遮断し、避難路にもなる都市計画道路(幅員15メートル以上)の建設には458億円を計上した。公園の整備や老朽建築物の建て替え促進などを展開する区市に対し、財政面で支援する「木造住宅密集地域整備事業」には16億円を確保。515億円を使い、無電柱化も推進する。  風水害関連では、771億円を投じ中小河川の護岸整備のほか調節池、分水路の建設を継続する。  地下河川の実現に向け、地下調節池を連結するトンネルの基本構造の検討に入る。複数の調節池を地下トンネルで連結し、調節池容量を相互に融通するネットワーク化に向けた調査も行う。  内水氾濫防止に向け、下水道の幹線や貯留施設も造る。整備に当たっては浸水リスクが高い地区を「重点地区」に選定し、優先的に着手する。関連経費に356億円を計上した。  富士山の噴火対策では火山灰にどう対応するかがポイントになる。主要交通網に降った灰の除却の迅速化に向けた防災訓練や、道路除灰マニュアルを策定する。噴火に伴って発生する土砂災害の被害軽減に向けたシステムも構築する。  電力・通信を途絶させないため、地産地消型の再生可能エネルギー設備や蓄エネルギー設備の導入を促進。通信事業者による携帯基地局の強靱化も支援する。感染症対策では舟運など、交通手段の多様化を進める。 from...

回転窓/現場の花と香り

 白や赤、紫など花色が鮮やかなゼラニウムは欧米で窓辺を飾る花の定番として知られる。日本でも春の足音が近づいてくる時期に寄せ植えなどを楽しんでいる人が多く、街歩きなどで見かけるとほっこりした気持ちになる▼ふんわりとして心地よい匂いは香水のようでもあり、スズランやバラと並び室内などに置く芳香剤でも人気のある香りなのだという▼建設産業で働く女性がより働きやすく活躍できる環境を整えようと国土交通省らが新しい実行計画を策定した。工事の最前線で活躍する女性を右肩上がりで増やすことなどを目標に設定。快適で清潔なトイレや更衣室の整備、働き手の側に立った産休・育休制度の運用などハードとソフトの両面で手を尽くしていく▼目標達成のポイントは建設産業に関わる全ての人の「意識改革と理解醸成」。ハードに目が向きがちだがより大切なのは一人一人の心持ちで、国交省は「全ての人が働きやすい現場」にすることが重要と説く▼寄り添うように花が咲くゼラニウムの花言葉は「真の友情」「尊敬」「信頼」。仲間を思いやり、力を合わせてものづくりに励む現場にぴったりな花だと思う。 from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172326 via 日刊建設工業...

電設協/25年度事業計画承認、土日一斉閉所で元請団体とも連携へ

 日本電設工業協会(電設協、文挾誠一会長)は東京都内で19日に理事会を開き、2025年度の事業計画を決定した。働き方改革や多様な人材の確保などを目指す第4次アクションプランの実効性をさらに高めていく。学生向けの情報発信や外国人技能者の受け入れ拡大に力を注ぐ。元請団体らによる時間外労働の上限規制順守に向けた土日閉所一斉運動にも積極参加する意向を示した。6月9日に開く定時総会で会員企業に報告する。  5月28~30日に大阪市住之江区のインテックス大阪で開く第73回電設工業展(JECA FAIR2025)では、新企画として会員6社(関電工、住友電設、中電工、トーエネック、日本電設工業、四電工)が電設業界の働きがいなどをPRする。学校単位の見学会で交通費を補助するなど学生の来場促進策も検討する。  外国人技能者は、受け入れ企業を正会員の1次協力会社まで広げる。対象職種として屋内線工事に付帯する電気土木工事や通信工事などの追加を検討する。会員企業の要望を踏まえ「周辺工事も受け入れていかないと厳しい」(文挾会長)という現場の実情に応える。関係規定の見直しなども考える。  発注者への周知活動など土日一斉閉所運動への参画は「(元請団体から)一緒にやろうと声を掛けてもらえるのはありがたい」(同)と述べ、前向きに取り組む姿勢だ。 from...

空調設備工事13社25年春の採用計画、新卒の目標人数確保は7社/本紙調査

 空調設備工事会社13社の今春(2025年4月)入社の新卒採用数は合計870人となり、前年実績比で154人上回る見込みだ。全体では9社が増加。7社が目標人数を確保し、全体の充足率も上向いた。100人以上の採用は3社だった。技術系は725人と前年実績比で159人増。慢性的な人手不足を背景にした「超売り手市場」(大手空調)を踏まえ、各社は人材獲得へ認知度や内定受諾率の向上に注力する。中途採用の重要性も高まっており、採用活動は新卒、中途の「二正面作戦」の様相を呈する。  アンケートは1~2月に実施した。今春の入社見込みで最多の高砂熱学工業は131人(前年比4人減)を採用。23~26年度に社員を200人以上増やす中期経営計画に基づき「今後も同水準」の採用規模を計画する。次いでダイダンが120人(34人増)、大気社が109人(29人増)を受け入れる。  新卒採用では少子化などに伴い、各社は母集団の形成に苦慮する。来春(26年4月)の新卒採用計画数には全社が回答し、合計899人の採用を目指す。特に高専卒には「目的意識が高い学生が多い」(三建設備工業など)と多くの社が熱い視線を送る。来春の採用者数を「増やす」とした日比谷総合設備は大手の採用強化を踏まえ、インターンや説明会への集客と内定者の辞退防止を重視する。  若手・中堅層を補うべく、中途採用も活発化してきた。24年度は全13社が計355人(前年度実績比66人増)の採用を見込む。25年度は7社が増やす方針で、「コミュニケーション能力」(ジョンソンコントロールズ)、「DXなど高度な専門性」(朝日工業社)に期待する。社員紹介の「リファラル採用」や、退職者を再雇用する「アルムナイ採用」を制度化する動きも加速している。  新卒・中途採用ともに目下の課題は、社名の認知度向上だ。新日本空調は新卒向けに情報発信するメタバース空間を構築。高砂熱学工業は電車内モニターにCMを放映、大気社はSNS広告や動画コンテンツの拡充を図る。  一方、終わりの見えない採用活動に人事部門からは悲鳴が上がる。新卒採用が「過剰なまでに早期化」(大手空調)しており、内定後のフォローや次期採用、中途採用を並行して進めることになる。中堅空調からは「人事部員の不足」「中途採用のスピード感に慣れない」といった声も聞こえてくる。国内の労働力不足を見据えた外国人採用も広がりつつあり、今後の採用活動はさらに複雑さを極めそうだ。 from...

名古屋市立大学/みどり市民病院建替基本計画策定支援業務入札公告、4月3日開札

 名古屋市立大学は、移転建て替えを計画している医学部付属みどり市民病院について、病床数が45床増の250床となる見込みとなったことから、2025年度はこれを踏まえ9月をめどに基本計画を策定する予定だ。業務の委託方法は早急に決定する。専門的見地から計画策定を支援するため「みどり市民病院における建て替えに係る基本計画策定支援業務委託」の入札後資格確認型一般競争入札を19日に公告した。医療コンサルタントなどを対象とした業務で4月3日に開札する。  みどり市民病院(名古屋市緑区潮見が丘1の77)は、1969年に完成した本館(延べ7783平方メートル)、88年完成の南館(延べ6920平方メートル)、98年完成の北館(延べ1563平方メートル)で構成。老朽化が進んでいるため、名鉄鳴海駅前の鳴海駅前第2種市街地再開発事業地内(緑区鳴海町ほか)で建て替える。  24年度は、建て替え後の病床を140床増の345床とする計画を前提に、基本計画検討業務を梓設計に委託し進めていた。しかし、地域全体の病床数や民間医療への影響を考慮し45床増とする計画に変更。今月14日に開かれた愛知県の医療審議会医療体制部会で了承されたことで、基本計画の策定作業を再スタートする。入札手続きを開始した支援業務の委託先と協力して計画を取りまとめる。計画策定後、基本設計に着手する場合は補正予算で事業費を計上する。 from...

2025年3月19日水曜日

建設関連各社/データセンター関連イベントに出展、サーバー管理関連技術をPR

 東京都港区の東京都立産業貿易センター浜松町館で18日に始まった「Data Center Japan2025」で、建設関連各社がサーバー管理関連の取り組みをPRしている。東急建設や大建工業、長大などが出展し、実物の展示やパネル、冊子で取り組みを紹介。多くの参加者がブースを訪れている。会期は19日まで。  東急建設は、冬季などに冷凍機の運転期間を最小限に抑えられるフリークーリングシステムを出展した。冷却塔でサーバーを冷やす水の温度を外気湿球温度に近づけるとともに、効率の高い熱交換器を取り入れることで、従来システムと比べ冷凍機の運転期間を約40%、エネルギーを約30%削減できる。  大建工業は、耐久荷重を高めた「アルミ製グリッドタイプシステム天井」の最新タイプ「DKSS-300H」を展示した。従来の天井では3750ニュートン(N)だったブレース強度を、2万Nに引き上げた。ケーブルラックのつり下げ荷重を300キロまで上げることに成功している。  長大が紹介したのは、空調設備と警備システムを自動連携させたサーバールーム。業務や簡易宿泊に使えるスペースを設けるなど、柔軟にカスタマイズできるのが特徴だ。  Data Center Japan2025は日本データセンター協会とナノオプト・メディアが主催している。 from...

回転窓/災害を自分事に

 大人気ギャグ漫画「クレヨンしんちゃん」が連載開始から今年で35周年を迎える。主人公・野原しんのすけが巻き起こすドタバタ劇が面白く、関連書籍の累計発行部数は1億4800万部に上る▼物語の舞台である埼玉県春日部市には深さ50メートル以上の地下トンネルで雨水をためる首都圏外郭放水路がある。完成は2006年。15年の台風で鬼怒川が決壊した際は1900万トン超の雨水を貯留して河川に流し、洪水から地域と人々を守った▼18年度に民間運営の見学ツアーが始まり、これまでに6万人以上が参加している。国土交通省は観光しながら防災減災を深く学べる防災ツーリズムを始動。危機意識を持ち主体的に行動する「災害の自分事化」の定着を狙う▼取り組みの一環で長さ6・3キロの地下トンネルのほぼ真ん中に位置する第3立坑内を探検できるコースも新設された。専門知識を持ったコンシェルジュが施設の役割や災害の脅威を伝えてくれる▼放水路のPR施設「龍Q館」へは市のコミュニティーバスを利用してもアクセスできる。車内に〈しんちゃん〉の声で流れる案内を聞き、防災ツーリズムの拠点を訪れるのもいい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172289 via 日刊建設工業...

国交省/下水管路の特別重点調査を自治体に要請、最優先1千kmを25年夏までに

 国土交通省は1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受け、全国特別重点調査に乗り出す。地方自治体に対し、陥没原因とされる下水道の幹線管路の調査を要請。判定基準をこれまでより厳しくした緊急点検で、ICTの積極活用も求める。八潮市の事故と類似の下水道管路を「最優先」と位置付け、夏ごろまでに調査を実施。最優先点検の対象管路は全国で1000キロ程度となる見込み。重点調査全体は1年程度で点検を完了させる。  全国特別重点調査は「発生しやすさ」と「社会的影響」の二つを考慮し、敷設から30年以上が経過した口径2メートル以上、管路延長1万メートル以上の条件に当てはまる全国約5000キロの下水道管路を対象に実施。点検では腐食、たるみ、破損の3項目で劣化状況を診断し、1年以内に点検を終えて報告を求める。  最優先の管路は▽八潮市と類似の条件(立坑接続部付近の屈曲部で地下水位が高く、地盤が砂質または緩いシルト系)▽構造的に腐食しやすい、または過去の調査で腐食が見つかったものの未対策▽緊急輸送道路直下で下水道起因の陥没履歴がある▽沈砂地の堆積土砂が顕著に増加した処理場やポンプ場につながる管路-の4条件のいずれかに当てはまる箇所とする。  点検は潜行目視(調査員が管内に入り目視で確認・調査)を基本とし、ドローンや遠隔カメラなどの積極活用を求め、コンクリート診断士など専門家に検証してもらうなど判定の質を十分に確保する。腐食などが見つかった場合は打音検査などの詳細検査と地上から路面下空洞調査や貫入試験、管路内からの空洞調査などを行い、陥没の危険がないかを調べる。  腐食、たるみ、破損の3項目をAからCランクで評価。最も重度のAランクが一つでも見つかれば緊急度Iと判定し、原則1年以内で対策工事を施す。ランクBがあれば緊急度IIとして応急対策と5年以内での本格対策の実施を求める。  検査に当たる作業員の安全性確保のため、十分な換気や流出防止装置の設置する。 from...

国交省/TSUNAG認定の初弾14件発表、4月25日に認定式

 国土交通省は18日、優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG認定)の初弾認定として14プロジェクトを発表した。都市開発事業が取り組む緑化を国交大臣が量と質の両面で評価、認定する制度で、2024年11月施行の改正都市緑化法で創設された。4月25日に認定式を開き、事業者に中野洋昌国交相が認定証を手渡す予定だ。=12面に制度の解説  TSUNAG認定では緑地の質を「気候変動対策」「生物多様性確保」「ウェルビーイング」など50項目150点満点で点数化。質が100点以上かつ緑地率30%以上で「星3」、75~99点かつ20~29%で「星2」、50~74点かつ10~19%で「星1」の認定となる。  認定されると優良緑地確保支援事業資金による無利子貸し付けや、グリーンインフラ活用型都市構築支援事業の補助を受けることができる。環境や自然などに関する国際的な枠組みとも連携。不動産などの分野でESG(環境・社会・企業統治)の取り組みを評価する「GRESB」や「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)」のガイドラインで記載項目として位置付けられている。  初弾認定された14プロジェクトは次の通り。  【星3】新柏クリニック(千葉県柏市)▽竹中技術研究所(調の森SHI-RA-BE)(千葉県印西市)▽大手町タワー(大手町の森)(東京都千代田区)▽赤坂インターシティAIR(東京都港区)▽麻布台ヒルズ(東京都港区)▽東京ポートシティ竹芝オフィスタワー(東京都港区)▽MUFG PARK(東京都西東京市)▽KX-FOREST KARUIZAWA 鹿島軽井沢泉の里保養所(長野県軽井沢町)▽グラングリーン大阪(大阪市)▽新梅田シティ(大阪市)  【星2】大丸有地区(ホトリア広場・一号館広場・丸ビル外構)(東京都千代田区)▽BLUE FRONT SHIBAURA(東京都港区)  【星1】シチズン時計東京事業所(CITIZENの森)(東京都西東京市)▽BRANCH神戸学園都市(神戸市)。 from...

関東整備局/水道行政移管から1年、防災訓練参加し災害時の体制強化

 ◇河川部に新設ポスト  水道行政が厚生労働省から国土交通省に移管されてから4月で丸1年が経過する。上下水道一体の組織体制が整備された中、関東地方整備局は2024年4月に専門部署を河川部に設置。水道事業を行う関東甲信9都県からの問い合わせに耳を傾け、国交省本省などに連絡する「橋渡し役」を担う。移管後は日本水道協会が行う防災訓練に積極的に参加し、災害時の体制強化につなげている。  水道行政の移管に伴い、関東整備局では地域河川課に「上下水道調整官」と「水道係」を新設した。業務内容は大きく分けて▽予算▽許可・立ち入り▽計画の届け出等▽事故・災害対応-など七つある。具体的には水道施設を整備する際に受けられる補助金の交付審査をしたり、国交大臣の事業認可に伴う提出書類の窓口業務を担ったりしている。  同局所管エリアである関東甲信の1都8県からは毎日、メールや電話での相談が寄せられている。例えば水道施設の耐震化や老朽化対策など技術的な相談もあり、その場合は「国土交通本省や国土技術政策総合研究所(国総研)に連絡している」(阪本敦士上下水道調整官)。  事故・災害対応では被害の情報収集やテックフォース(緊急災害対策派遣隊)による被災自治体への支援がメインとなる。直近では2月24日午後1時46分ごろに埼玉県所沢市で発生した水道管漏水事故の情報収集に当たった。  水道行政移管前ではあったが、能登半島地震の発災を受け直ちに給水機能付きの散水車を現地に派遣。水道協会や自衛隊と連携し、避難所や病院などに飲料水や雑用水を提供する給水活動を行った。  水道行政移管後は同協会関東地方支部南関東ブロックによる訓練、災害対応型大型巡視船を使った海上保安庁第三管区海上保安本部ら4機関合同の給水支援訓練などに参加。災害時にニーズの高い給水支援をスムーズに行えるようにする。被災地支援に万全な体制で臨めるよう事前の準備に努めている。 from...

東京・新宿区/マンション等まちづくり方針策定、再開発事業者に事前協議義務付け

 東京・新宿区は区内で大規模マンションや再開発ビルを建設する民間事業者に対し、区へ事前の協議を義務付ける「新宿区マンション等まちづくり方針」を策定した。区内で緩やかに増えている定住人口や、住宅ストックの量的な充足を踏まえた住宅供給を目指す。地域の実情に応じた地域コミュニティーの形成、防災や環境に配慮したまちづくりを民間事業者へ要請する。  同方針を踏まえ、「(仮称)大規模マンション及び都市開発諸制度等を活用する開発計画に係る市街地環境の整備に関する条例」を検討する。区が事前協議の際、民間事業者に求める具体的な届け出事項は、建設する建物の総住戸数(うち、ファミリー形式の住宅の戸数、ワンルーム形式の住宅の戸数)と入居時に予想される小中学校の児童数・生徒数の見込み、保育需要の見通しなど。  区は届け出を受け、周辺の小中学校や保育施設などの受け入れ対応状況を確認する。区と協議した上で開発行為の許可申請が受けられた場合、工事着手に向け都市計画手続きなどを進めることができる。  大規模マンションとして扱う建物は▽敷地面積1000平方メートル以上かつ過半の用途が共同住宅など▽延べ面積3000平方メートル以上かつ過半の用途が共同住宅など▽住戸数100戸以上の共同住宅。都市開発諸制度などを活用する開発計画は▽高度利用地区▽特定街区▽再開発等促進区を定める地区計画▽総合設計▽都市再生特別地区▽高度利用型地区計画▽その他特に区長が必要と定めるもの-が当てはまる。 from...

25年地価公示/全国平均4年連続上昇、東京・大阪で上昇拡大顕著

 国土交通省が18日公表した2025年地価公示は、全国の全用途平均で4年連続の上昇となった。前年からの上昇率は24年の2・3%増を上回る2・7%増。住宅地、商業地ともに上昇率の拡大基調が続いている。地域別で特に東京圏と大阪圏は、堅調な住宅需要や店舗・ホテル需要に支えられて上昇が著しい。大手半導体メーカーの工場が進出する地域では住宅地、商業地、工業地のいずれも高い上昇率となっている。  全国平均は前年比で住宅地2・1%増、商業地3・9%増。三大都市圏のうち東京圏は住宅地4・2%増、商業地8・2%増、大阪圏は住宅地2・1%増、商業地6・7%増、名古屋圏は住宅地2・3%増、商業地3・8%増。それ以外の地方圏は住宅地1・0%増、商業地1・6%増だが、札幌、仙台、広島、福岡の地方4市に限ると住宅地4・9%増、商業地7・4%増だった。  都道府県別に見ると、住宅地の地価変動率がプラスとなったのは30都道府県で、24年から1県増えた。商業地の地価変動率がプラスとなったのは34都道府県で、24年から5県増えた。  商業地で全国1位の50%近い上昇率となったのは北海道千歳市のJR千歳駅前の地点。ラピダスの半導体工場が進出した影響が大きい。都市部では複数の大規模な再開発事業が進展している東京・渋谷の中心部で30%超の上昇があった地点がある。インバウンド向けの需要が高いリゾート地・観光地や、大型物流施設用地に適した高速道路へのアクセスが良好な工業地の上昇も目立つ。一方、能登半島地震の被災地は大きな下落が続いている。  地価公示は全国2万6000地点を対象に1月1日時点の地価動向をまとめた。 from...

高知県須崎市/スケートパークに25年度着工、滑走面積2000平米で中四国最大級

 高知県須崎市は2025年度、スケートボードやBMXなど舗装された路面を利用するストリートスポーツの専用施設「スケートパーク」の建設に着手する。滑走面積は約2000平方メートルを見込み、中四国最大級となる。同年度中の完成、26年度の供用開始を目指す。  25年度当初予算案にスケートパーク整備事業費として総額11億8320万円を計上した。工事発注の時期や方式は未定。所有者から土地を賃借して整備する。敷地面積は約5800平方メートル。日本スケートパーク協会に監修を委託する。基本・実施設計は若竹まちづくり研究所が担当した。  21年に開催された東京五輪でスケートボードが正式種目に採用され、日本人選手が活躍した。24年のパリ五輪でもメダル獲得が相次いだ。市内では若者を中心に幅広い世代で愛好家が増えつつあり、競技場所の確保が課題となっている。  高知県内では四万十市の安並運動公園内に18年4月、スケートパークがオープンした。同施設は県西部に位置し、東部からのアクセスを考えると中央部に位置する須崎市での整備に期待が寄せられている。市は大会誘致による地域の活性化や若者の定住につなげたい考えだ。 from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172298 via...

大成建設/複数台自動化建機を協働運転、ダム現場で無人化施工実証

 大成建設は同社が開発したリジッドダンプ自動運転技術と施工管理支援基盤システムを連携し、複数台の自動化建設機械の協調運転による無人化施工を現場実証した。国土交通省東北地方整備局が発注した「成瀬ダム原石山採取工事」(秋田県東成瀬村)の現場を対象に、同省がi-Construction2・0で提唱する施工やデータ連携、施工管理をオートメーション化する観点から、現場での有効性を確認した。  現場では、同社のリジッドダンプ自動運転技術「T-iROBO Rigid Dump」と施工管理支援基盤システム「T-iDigital Field」を連携させた。2024年5月20日から6月29日までの約1カ月間、自動走行リジッドダンプ2台と、手動操作する建機と自動化建機が協調運転するためのHOGシステムを設置した遠隔操作油圧ショベル1台を使用し、オペレーター2人による最高時速約20キロの自動運転と遠隔操縦を管理。夜間作業時間帯に総量約4万7200トンに上るダム用骨材を運搬した。  運搬作業中に取得したデータは、施工管理支援基盤システムのデジタルツイン技術で建機の制御などにフィードバックさせた。遠隔操作と自動運転管理のオペレーター2人が施工状況を確認しながら建機を制御することで、協調運転による施工のオートメーション化を実現。同様の作業で従来は3人必要だったオペレーターを1人減らすとともに、制御室内からの操作や制御によって安全性や快適性も向上した。  無人化施工時に取得した運搬量や運搬効率、実運搬距離などのデジタルデータは、施工管理支援基盤システムのクラウド上でリアルタイムに収集、自動解析する。従来は1日約20分要していたデータ入力の作業が不要となり、過去のデータも簡易に検索、閲覧できる。遠隔からの作業進捗や現場の安全も確認できる。  同社はダムやトンネルなどの現場を念頭に、今後も複数台自動化建機の協調運転による生産性向上策を推進。複数台の自動化建機をよりスムーズに制御できるようなシステムの高度化も目指す。 from...

2025年3月18日火曜日

近畿整備局/淀川大堰閘門が開通、愛称は「淀川ゲートウェイ」

 近畿地方整備局が2021年度から整備を進めてきた淀川大堰閘門(大阪市都島区)が16日に開通した。愛称は「淀川ゲートウェイ」に決まり、大堰の上下流に生じる最大2メートルの水位差を調節する船舶用エレベーターの役割を担う。上流の京都方面から大阪湾まで航路がつながり、4月13日に開幕する大阪・関西万博の夢洲会場を結ぶ航路としても期待が高まっている。16日午前、淀川大堰閘門の初通航と下流側に完成した十三船着き場の供用開始を祝う記念式典が行われた。  淀川の航路分断を解消するため淀川大堰左岸側に幅約20メートル、延長約70メートルの閘室を整備した。閘室幅では国内最大となり、定員100人程度の大型観光船であれば4隻の同時通過が可能だ。閘室他整備工事を五洋建設、躯体整備工事を大成建設が手掛けた。通航は可能だが、残る上屋など全体工事の完成は25年度を予定する。総事業費は約186億円。  十三地区をはじめ淀川沿川12カ所に整備された船着き場なども活用し、舟運を核とした地域のにぎわい創出に加え、平常時は大量の土砂運搬など、さまざまな公共工事にも舟運が活用できる。災害時は緊急物資などの運搬手段として効果を発揮する。  十三船着き場(大阪市淀川区)で行われた記念式典には、近畿整備局や沿川自治体などが参画する淀川舟運活性化協議会の関係者ら約200人が出席した。  冒頭、協議会会長を務める長谷川朋弘近畿整備局長が「淀川舟運を軸とした沿川のにぎわいづくり創出に向け、協議会の構成団体が協力して万博会場を結ぶ観光船の運航や関連イベントの社会実験などを行い、一層機運を高めていきたい」とあいさつ。吉村洋文大阪府知事は「万博開催前の開通をうれしく思う。京都と大阪を結ぶ舟運が活性化し、水都大阪の魅力が広がることを期待している。今後のまちづくりにも川や水の魅力を発信していきたい」と話した。  西脇隆俊京都府知事は「京都の発展に重要な役割を担ってきた淀川舟運の復活を世界にも発信していく。京都から大阪への新たな広域周遊につなげる絶好の機会だ」と力を込めた。  近畿整備局淀川河川事務所の谷川知実所長が工事概要、横山英幸大阪市長が「淀川河川敷十三エリアかわまちづくり」の事業を報告した後、十三船着き場で関係者によるテープカットが行われ、舟運を核とした沿川地域のにぎわい創出を祈念した。 from...

回転窓/断捨離の季節

 急に暖かくなったり、寒くなったりする三寒四温のこの時期は、外出する際の服装に迷われる方も多かろう。人の体感気温はそれぞれ異なり、街を歩いていると冬のコートを着ている人がいる傍らで、半袖姿の人も▼季節の変わり目に行う衣替えは、衣類を整理する好機でもある。特に春は入学・入社や転勤など、新生活をスタートさせる時期と重なり、押し入れやクローゼットなどにしまい込んだ服を断捨離するには打って付けだ▼いざ取りかかると、「残したい服」と「捨てる服」の見極めに悩む方も多いはず。汚れが目立ち、ボロボロとなった服自体の劣化のほか、自分の体形や好みの変化も判断の目安。これらに「もったいない」や「思い出」などの個人的な感情が加わると、整理が思うように進まなくなる▼仏教用語ではなく、造語の断捨離は「ものから開放されて心も体も身軽にする」といったヨガの考え方からきているという▼断捨離成功のこつは、単にものを捨てるのではなく、「自分の持ちものを適正量にする」といった考え方もポイントの一つだとか。ものがあふれる現代人には「足るを知る」ことが必要だろう。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172272 via 日刊建設工業...

日本躯体/コンクリ打込み・締固め工検定、5月に団体検定移行・最後の社内検定開く

 日本建設躯体工事業団体連合会(日本躯体、大木勇雄会長)は、厚生労働省認定の社内検定「日本躯体コンクリート打込み・締固め工社内検定」を、5月に行う東北地区の検定から団体等検定に移行する。11日に同省から団体等検定に認定された。これにより会員以外も受検できるようになる。日本躯体は15、16の両日、最後となる社内検定を千葉県船橋市で開いた=写真。  大木会長は15日、日刊建設工業新聞社らの取材に応じ、とび・土工の年齢推移に触れ「土工の平均年齢はとびよりも10歳近く高い」と指摘。若手が入職を敬遠する原因の一つに「社会的地位が確定していない」ことを挙げ、「職人の資格優遇と工事品質の向上を両立するため、検定の制度化に向けて動いてきた」と説明した。  検定を行うことで「現場で感覚的に判断していた技術の良しあしを見える化できる」と強調。2021年に社内検定の認定を足掛かりに「(社内検定で)実績を作ってから団体等検定へ移行し、将来的には(国家資格を取得できる)技能検定としての実施を目指している」と展望した。現在250人程度の合格者を、2000人程度まで増やしたい考えだ。  関東地区で6回目となる今回の社内検定は、清水建設の教育・訓練施設「清水匠技塾」(船橋市)で開いた。15日の2級は23人、16日の1級は26人が参加。学科試験と、型枠にコンクリートを満遍なく満たす技術を測る実技試験に挑んだ。合格発表は5月2日を予定している。  実技試験は試験用の型枠に、砂と骨材を合わせた生コンの模擬材を流し込み、内部振動機でかき混ぜる。型枠の下部に設けた小窓からの模擬材の流出度合いを見て、むらなく枠内に満たせたかどうかを判定する。1級の型枠の小窓は2級より小さい仕様で、充填作業の難易度が高くなっている。 from...

東京都/25年度の調節池整備3カ所で本体工事着手、8河川で候補地検討

 東京都は2025年度、3カ所の調節池で本体工事に着手する。武蔵野市と西東京市にある石神井川上流地下調節池などで合計貯留量は65万立方メートル。同年度はこのほか、8河川で調節池の整備候補地や形式の検討に入る。昨年は夏場に1時間当たり100ミリを超える集中豪雨が発生するなど大規模水害のリスクが高まっている。調節池の整備を推し進め、浸水被害を軽減する。  都は新規事業化する調節池の総貯留量を、従来の「30年度までに約200万立方メートル」から「35年度までに250万立方メートル」に引き上げた。3月時点で27カ所、総貯留量264万立方メートル分の調節池を建設。24年は延べ115万立方メートルの洪水を取水し、調節池より下流の水位を低下させるなど整備効果を発揮している。  都は25年度に9カ所の調節池の建設工事を行う。このうち本体工事に入るのは石神井川上流地下調節池と善福寺川上流地下調節池(杉並区)、境川木曽西調節池(町田市)の3カ所。水をためるための地下トンネル、箱型構造物の建設のほか、立坑の構築などを行う。  調節池の建設候補地や形式などを検討するのは▽野川▽神田川▽渋谷川・古川▽呑川▽境川▽仙川▽奈良橋川▽白子川-の8河川の予定。  地下河川の実現に向けても取り組む。複数の地下調節池を連結し、東京湾まで洪水を流下する計画で、25年度は環状七号線地下広域調節池(中野区~練馬区)などを連結するトンネルの基本構造の検討に入る。水の放流口を確保することで、調節池が満水になった後でも河川の洪水の取水が可能になる。基本構造を検討した後は、地下河川のルートや内径、延長など、施設内容を具体化する予定だ。 from...

産総研、清水建設/汎用熱交換器で水素高速吸蔵、高性能・低コスト化を実現

 産業技術総合研究所(産総研)と清水建設は、汎用(はんよう)の熱交換器と独自の拡散構造で高速吸蔵が可能な「水素吸蔵合金タンク」を開発した。空調機器などに使う汎用の熱交換器を転用。熱媒シミュレーションの技術で熱媒流路を制御し、汎用の熱交換器でも水素の吸蔵と放出の熱管理を可能にした。タンク内は水素を面的に導入する水素拡散板を採用して高速の充填や放出を実現。高性能化と低コスト化を両立させ、持続可能なクリーンエネルギーとして都市部への導入拡大を目指す。  汎用熱交換器を転用した水素吸蔵合金への吸蔵や放出に必要な熱管理を行うため、シミュレーションによる熱媒流量などの詳細解析を熱媒制御に生かして高性能化。タンク内の合金充填層に面的に効率よく水素が導入できる水素拡散板も採用することで、高水素流量での吸蔵・放出運用が可能な低コストの水素吸蔵合金タンクを開発した。  今回開発した水素吸蔵合金タンクは、産総研と清水建設、東京都港湾局などが共同で進めている「水素を活用した臨海副都心の脱炭素化に資する共同研究」の一環で、地下熱供給プラントに導入している。この取り組みを踏まえ、2025年度からは水素混焼ボイラーによる地域熱供給の社会実装プロジェクトを推進する。 from 技術・商品 – 日刊建設工業新聞...

2025年3月17日月曜日

回転窓/大地震と近代造船の先駆け

 かつて大地震が日本に新たな造船技術をもたらしたことは、知る人ぞ知る史実だろう。話は江戸時代末期の安政元(1854)年にさかのぼる▼同年11月4日、安政東海地震で太平洋沿岸など広い範囲に甚大な被害が発生した。ちょうど日露和親条約締結のため下田港(静岡県)に停泊していたのがロシアの軍艦ディアナ号。大津波で大破し、戸田港へ修理に向かう途中で突風に見舞われて沈没する▼そこで両国が共同して代替船を建造することになり、幕府から韮山代官・江川坦庵が責任者の命を受けた。この造船で日本は洋式帆船の近代技術を習得でき「日本海運史上に大きな足跡を残すこととなった」(沖田正之著『江川坦庵』)という▼安政東海地震の翌日に安政南海地震が起き、翌2年には江戸を直下型の大地震が襲う(安政江戸地震)。これら災害史から現代に生かせる教訓は多い▼坦庵は蘭学や兵学、芸術にも造詣が深く、世界遺産「韮山反射炉」(伊豆の国市)の築造でも知られる。日本で近代洋式造船の先駆けとなった代替船「ヘダ号」だが、坦庵は完成を見ずに亡くなってしまう。今年は没後170年に当たる。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172226 via 日刊建設工業...

中部整備局ら/津駅周辺道路空間再編検討委開く、官民連携で複合施設の可能性検討

 中部地方整備局三重河川国道事務所と三重県、津市などで構成する「津駅周辺道路空間再編検討委員会」(委員長・小野寺一成三重短期大学生活科学科教授)は14日、本年度第2回会合を津市のアスト津で開いた=写真。本年度の検討状況を共有するとともに、策定作業を進めている「津駅周辺基盤整備の方向性(ビジョン)」の中間報告を提示。東口は交通ターミナルと一体となった官民連携による複合建築物の可能性を検討することが初めて示された。ビジョンはパブリックコメントを経て2025年7月末ごろの公表を目指す。  JRや近鉄が乗り入れる津駅周辺は、施設の老朽化や駅前広場の混雑といった課題を抱えている。このため国や県市、交通事業者、経済関係者が連携し、課題解決につながる基盤整備について検討を進めている。  本年度は、歩道空間拡張案の作成や東口広場周辺道路空間の使われ方調査を実施。国土交通省の官民連携基盤整備推進調査として、津駅周辺空間の面的・一体的利活用などについてPPP/PFI導入可能性も検討。民間事業者へのプレサウンディング(対話)調査などを行い、駅周辺空間に対する民間事業者の印象や官民連携事業の可能性を高める条件などについて確認した。  これらを踏まえたビジョン中間報告によると、基本理念は、県都の顔となるとともに地域の活力を引き出し、災害にも強い空間とする。そのための目標として、▽交通結節機能の充実▽防災機能の確保▽にぎわい・滞留空間の創出▽東西連携の強化▽回遊性の向上-の五つを掲げた。  整備の方向性として、東口は商業や居住、オフィス機能などを備える複合建築物の可能性検討、ペデストリアンデッキの整備、土地利用促進の起爆剤となる市街地再開発事業の促進、必要に応じた都市計画の見直しなどを盛り込んだ。西口はペデストリアンデッキの整備などを予定する。立体構造による東西自由通路の整備なども示した。  委員からは「津駅は県庁に近接するが魅力に乏しい。交通結節点など再整備を前向きに検討してほしい」などの意見が出された。5月上旬の会合でビジョン案を示す。パブリックコメントを経て7月にビジョンとして公表する予定。 from...

大阪府病院新増設部会/近大病院跡地の新病院計画を承認、26年1月着工へ弾み

 大阪府医療審議会病院新増設部会はせいわ会(大阪市生野区)が近畿大学病院跡地(大阪狭山市大野東)に計画している新病院の開設を「事業実施は適当である」と判断し、承認した。2026年1月の着工へ向けた準備が本格化する。せいわ会の担当者は「今後、建設計画の具体化や関係機関との調整を進める」と述べた。  同計画は近畿大学病院の堺市への移転に伴い、跡地の医療機能を継承するもの。新病院は回復期機能を中心とし、病床119床を整備する。診療科目はリハビリテーション科と内科を予定し、主に入院患者の回復支援に特化した医療体制を構築する方針だ。設計は大和ハウス工業が担当しており、現在、基本設計を進めている。せいわ会は11月の近畿大学病院移転を受け、26年1月に新病院を着工し、27年4月の開院を目指す。  部会では医療スタッフの確保や地域医療機関との連携なども議論。せいわ会側はグループ内の既存病院からの異動や新卒者の採用を通じて人員を確保する方針を示した。  南河内地域では回復期医療の充実が課題とされており、跡地の新病院がその役割を果たすことが期待される。委員らからは「医療機能の分担と地域医療の維持に十分配慮しつつ、適切に進めてほしい」との意見が出された。  部会は13日に開かれ、同議案のほか、地域医療支援病院の名称承認、病床機能再編支援事業の実施医療機関の承認、特例有床診療所の基準改正案を審議。特例有床診療所は医療型短期入所の病床を新たに認める方向で議論が交わされたが、「事業の適正な運用に懸念がある」との意見もあり、さらなる検討を条件に承認した。 from...

鉄建建設/高架橋建設にPCa部材採用、最短5日で1ブロック構築

 鉄建建設が東京都品川区で施工中の「東京貨物ターミナル改良工事」で、プレキャスト(PCa)部材を採用した高架橋の建設を進めている。構造物のフルPCa化に加え、柱と梁の架設を効率化する新たな工法を導入。柱と梁を1日に6~8本ずつ架設し、高架橋1ブロックを最短5日間で構築できるようにした。工期短縮と現場作業の削減を両立し、働き方改革を強力に推し進めている。  柱部材と基礎の接合には、柱部材から突出した複数の鉄筋を、基礎部に設けた鋼管に差し込んで建てる「鋼管拘束型鉄筋継手」を採用している。柱の設置直前に鋼管や接合面に無収縮モルタルを充填し、接合時の密着性を確保。柱の建て込み後は転倒防止用の仮固定を行い、モルタルの硬化後に撤去する。接合に特殊な材料は必要なく、1本の柱部材を短時間で建てられる。  柱部材と梁部材の接合には、「閉合鉄筋継ぎ手」を導入している。両部材の継ぎ手部分にコの字形に突き出した鉄筋を設け、くしの歯状に交錯させて接合する。梁は柱に設置した仮設のブラケットが受け止める仕組みで、重い梁を垂直方向に架設できるメリットがある。  梁を水平方向に差し込む従来工法と比べ、仮設足場や支保工を省略できるため、作業効率の向上につながっている。両部材の継ぎ手の重複部分は鉄筋径の2倍以上の長さがあれば十分な強度を維持する。施工誤差が生じた場合も継ぎ手部分で柔軟に対応できる。  施工内容を広く周知するため、鉄道総合技術研究所(鉄道総研)や鉄道事業者、設計コンサルなど業界関係者を対象とした現場見学会を2月19日と3月3日に開いた。柱と基礎、柱と梁の接合作業を公開した。参加者からは作業の効率性や精度の高さを評価する意見が出た。型枠の製作費など施工コストの増加を懸念する声もあった。  鉄建建設は「型枠を多く転用できれば、部材の単価も下がる。まとまった工事量を確保し、コスト面の優位性を高めていきたい」とした。 from...

2025年3月14日金曜日

回転窓/ロボットランナーへの期待

 2日の東京マラソン、9日の名古屋ウィメンズマラソンを終えて、男女とも9月の東京世界陸上競技選手権大会(世界陸上)の代表選考レースがすべて終了した。男女各三つの狭き代表枠をつかみ取った選手には最高のコンディションで世界陸上を迎えてもらいたい▼新華社電などによると、中国・北京市が同市郊外の産業団地で4月13日に開催されるハーフマラソン大会に人型ロボットが参戦すると発表した。安全上の理由で一般ランナーとは別のレーンを走るが、マラソン大会で人型ロボットが走るのは世界初という▼世界中の企業や研究機関、大学などから人型ロボットを大会に招待。二足で歩行し、遠隔操作あるいは自律走行できるロボットだけが参加でき、レース中にバッテリー交換も可能だ▼3時間半の時間制限も課すそう。ぎこちなくゆっくり歩くのではなく、人間と対等な条件・状況下でレースを行えるようになっていることに驚く▼マラソンはもっぱらテレビ観戦だが、レース展開の駆け引きが面白く、ゴールを目指し健脚を競い合うランナーの姿に心打たれる。ロボットランナーらの技術競争からも目が離せない。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172145 via 日刊建設工業...

東急建設、東京都市大学/建築現場で人協調型ロボ実装、竣工後もサービス支援

 東急建設と東京都市大学は、建築物に適用する「人協調型ロボティクスの社会実装技術開発」の共同研究に乗りだす。人とロボット建物が連携し、建築現場の作業や竣工後のさまざまなサービスを支援するロボットが動作しやすい「ロボットフレンドリー環境」の設計、実装に取り組む。共同研究開発では同大学の横浜キャンパス(横浜市都筑区)に建設する新研究棟を活用。ロボットとエレベーターが連携する機能とともに、ロボットが利用するIoT無線ネットワークをロボットフレンドリー環境の基本機能として実装する。  共同研究開発は、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期の「人協調型ロボティクスの拡大に向けた基盤技術・ルールの整備」の採択事業として展開する。  東急建設と東京都市大学は「住宅・ビル等の人協調型ロボティクスの社会実装技術開発」を提案。同大学横浜キャンパスの建設期間中、IoTネットワークを現場のセンシングや建設ロボットの通信ネットワークとして用いる。現場ではパワーアシストスーツや建設用ロボットを活用し、IoTネットワークを利用した作業員のモニタリングやロボットとの連携による生産性向上を目指す。  竣工後は照明や空調などの設備とロボットが有用レベルで連携できるよう、東急建設が大阪大学と共同開発した建物デジタルプラットホーム「Building OS」(建物OS)を導入。スマートビルとして人やロボット、建物が連携したサービスを建物OS上で動くアプリケーションとして提供する。ロボットを活用した屋内の自動巡視や清掃、ビル機械室の遠隔監視などを実現する。 from...

大阪市/長居障がい者スポーツセンター、BTO方式で建て替え

 大阪市は、老朽化が進んでいる「長居障がい者スポーツセンター」(東住吉区長居公園)について、BTO(建設・移管・運営)方式のPFIで建て替えることを決めた。既存施設の南側の敷地に延べ床面積1万2990平方メートルの規模で建設する。アリーナやプールなどが入り、近隣の早川福祉会館(東住吉区南田辺)の機能も備える。2025年度はアドバイザリー業務を委託し、PFI事業者の選定準備を進めるほか、先行して運営予定事業者を決定する。27年度にPFI事業者を選定し、28年度に設計を始める。  既存施設の規模は別館を含めて延べ約8500平方メートル。バスケットボールコート1面分が取れるアリーナや温水プール(25メートル×6コース)、ボウリング室などを備え、アーチェリーもできる。  基本計画によると、障害者がスポーツやレクリエーション、読書など文化活動を楽しめる施設を目指すとともに、早川福祉会館の機能を移す。  建て替え場所は道路を挟んだ南側。敷地面積は1万1600平方メートル。規模は地下1階地上3階建てを想定し、1階に競泳プール(25メートル×8コース)やボウリング室、民間活用スペースなどを配置。2階にバスケットボールコート2面分が取れるアリーナやサブアリーナ、トレーニング室、多目的室、卓球場、3階に点字図書館や会議室、和室を設ける。  アリーナは吹き抜けで3階に観覧エリアとランニングコースを設置する。屋上にはアーチェリー場と屋外広場を整備する。概算整備費は100億円程度と試算している。  25年度予算案にはPFIアドバイザリー業務委託費などに2099万8000円を計上しており、同年度早期に委託先の選定手続きを始める見通し。運営予定事業者は25年度中に募集を開始し、同年度内に選定する。いずれも事業者の選定方法は検討中。  障害者施設の運営に専門的なノウハウを持つ事業者を先に決めることで要求水準書案などの検討に反映する方針だ。  27年度にPFI事業者の選定を始め、同年度内に事業者を決めて契約を締結する。設計・建設期間は4年6カ月を見込み、開館準備を経て、33年度の開館を予定。維持管理・運営期間は15年程度。  スポーツセンターの跡地は緑地を基本に新施設が完成した後に検討する。早川福祉会館は当面の間は継続して保有し、用途転用などを検討する。 from...

DIC、国際文化会館/川村記念美術館を東京・六本木へ移転、設計はSANAA

 ◇新常設展示も開設  DICと公益財団法人国際文化会館(近藤正晃ジェームス理事長)は12日、DIC川村記念美術館(千葉県佐倉市)を東京・六本木にある同会館に移転すると発表した。法人の同会館が建設する新西館に常設展示室を新設。設計は建築ユニットのSANAA(妹島和世氏、西沢立衛氏)が手掛ける。DICは2024年12月の取締役会で、規模を縮小した上で都内に移転する方針を決定していた。  同日、両者は理念と戦略的目標が合致したとし、アート・建築分野を起点とした協業に合意した。民間外交、国際文化交流を推進する公益プログラムの充実を図り、幅広い分野で連携していくという。  戦後アメリカ美術をはじめとする20世紀美術品を中心に移設する。マーク・ロスコの「シーグラム壁画」全7点は、新たに開設する常設展示室「ロスコ・ルーム」に移す。展示室の運営は両者が共同で行う。  DICは24年8月に資産効率の改善などを理由に現美術館の運営見直しを発表。同12月の取締役会で保有作品数は4分の1程度に減らし、継続して保有しない美術品は売却する方針を決定。移転費用は数億円規模に抑えるという。  現美術館の所在地は佐倉市坂戸631。DIC総合研究所の敷地内に立地している。最終営業日は31日。4月1日に閉館する。休館後の施設の利用可能性などはDICと同市で協議を進める。  DICの池田尚志社長執行役員は「民間企業と公益財団による新たな価値の創造に向けて鋭意努力していく」と熱意を語った。「国際文化会館の近藤理事長は民間外交や国際文化交流の重要性が高まっている。公益プログラムをDICさまと共同運営できることに心から感謝している」と期待を寄せた。  建築ユニットSANAAは、新西館を設計する上で「自然と建築の融合、歴史の継承と新しい風景、知的対話・文化交流を生み出す空間という三つのコンセプトを具現化できるようにしてきた」とコメントした上で、「ロスコ・ルームの設計という機会に巡り会うことができ、大変光栄に思う」と気持ちを語った。 from...

2025年3月13日木曜日

福島国営追悼・祈念施設で震災追悼の会/工事関係者が犠牲者の冥福祈る

 東日本大震災の発生から14年を迎えた11日、東北各地で犠牲者を追悼する式典が開かれた。福島県の浪江、双葉両町にまたがるエリアに建設している福島県復興祈念公園では、国営追悼・祈念施設の管理棟整備に関わる発注者や設計者、施工者が追悼の会を開き、祈りをささげた。建築工事を指揮する大林組の熊谷敦所長は「復興を後世に伝える大変意義深い仕事を担っている」などと話した。  追悼の会には東北地方整備局東北国営公園事務所、アール・アイ・エー、大林組、第一設備工業、ユアテック、植留緑化土木から約100人が参列した。地震が発生した午後2時46分に全員で黙とうした後、東北国営公園事務所の岩崎健所長は「福島の再生を発信するとともに被災者の心のよりどころになる施設だ。工事に関わる一人一人が大きな役割を感じ完成まで力を尽くしてほしい」と述べた。  管理棟は福島国営追悼・祈念施設のシンボルになる建物で、「追悼と鎮魂の丘」と名付けた場所に造っている。逆円すい状の空間に震災を経験した人の思いを集め「3・11」に意識を向け続ける場所になるよう、完成後は丘の中に埋まるような姿になる。竣工は2026年1月末を予定する。福島国営追悼・祈念施設は県が整備する復興祈念公園と合わせ、震災発生から15年の節目を迎える26年3月の完成を計画している。 from...

回転窓/思い出のブランコ

 大勢の子どもたちが遊んできた近所の公園のブランコ。幼児が「一人で乗れるようになった」と得意げな顔を見せてくれたり、サッカーの全国大会で負けてしまったという小学生が暗くなっても座り続けていたりしたこともあった▼そのブランコが交換されることになり、昨年10月に工事のための仮囲いが設置されて使えなくなった。コンクリートの基礎や鋼製の部材などもすべて新しくするそうで、工期が3月11日までに設定されていた▼同日には新しいブランコで遊べるかもしれないと楽しみにしていた子どもたちも多かったが、12日になっても仮囲いで覆われたまま。完了検査がまだ先なのだと聞いた▼どうやら交換工事を五つの公園で行っており、一つの工程をすべての公園で終えてから次の工程に進む計画になっている。完了検査は全公園の作業を終えてからになるという▼公園は登校前の小学生の集合場所。「まだかな」と毎朝そわそわしている子どもたちと遊べるのをブランコも楽しみにしているだろう。施工者によると完了検査までは「もう少し」。新しいブランコからもたくさんの思い出が生まれるといい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172114 via 日刊建設工業...

関東整備局/老朽管や路面を確実に補修、3カ年国債活用したフレームワークモデル試行

 関東地方整備局が、道路下にある老朽管路や路面を素早く確実に補修するための取り組みを始める。3カ年国債を活用した「フレームワークモデル工事」を、大宮国道事務所が国道4号で実施する横断管補修と路面復旧工事に初めて試行。施工体制など長期間の見通しが可能となるため、入札不調・不落の抑制にもつながる。工事発注は4月以降を予定する。  フレームワークモデル工事は、複数工事(フレームワーク)に参加を希望する事業者を事前に「特定工事参加企業名簿」として登録。その中から複数の工事参加者を指名する。これまでは単年度の発注工事に適用していた。  見通しを鮮明な状態にするため、整備局は通常のフレームワーク工事に3カ年国債を活用したモデル工事を試行する。3年先の施工量が把握できるため、受注者は余裕を持った施工体制を組める。さらに施工箇所の近傍で突発的な事態が発生した場合、受発注者間で「パートナーシップ協定」を締結した他の企業に対応してもらう。緊急性の高い工事が着実に推進できる環境を整える。  初弾は大宮国道事務所が発注する「R7~R9国道4号強靱化フレームワークモデル工事」で行う。複数の工事を発注する考えで、3月末にパートナーシップ協定の締結先を決める。4月以降に公募型指名競争入札(総合評価方式)する予定だ。  同様の工事はこれまで一般競争入札で受注者を決めていたが、関係機関との調整が煩雑な上に工事の利益率も低く「なり手が少なかった」(企画部)という。ライフラインや道路の老朽化対策が急務となる中、整備局は「不調・不落を理由にした補修工事の遅れ回避」(同)を期待する。 from...

静岡県磐田市/新消防庁舎基本設計まとまる、防災アミューズメント機能を導入

 静岡県磐田市は、新消防庁舎の基本設計をまとめた。迅速に出動するため幹線道路と建物、車庫の配置に配慮したほか、高層住宅や山岳救助などを想定した実践的な訓練設備を整備する。市民の防災力や防災意識を向上するため、活動を見学できる専用通路や展示スペースを設けるなど「防災アミューズメント」としての機能も持たせる。2025年度は10月までに実施設計を終えるとともに用地取得、造成準備工事に入る。当初予算案に約6億円を計上した。基本・実施設計は佐藤総合計画が担当。  新消防庁舎はRC造3階建ての庁舎棟、車庫棟、訓練棟、補助訓練棟などで構成。施設の総延べ床面積は約7200平方メートル。市消防署のほか東部分遣所、消防本部の機能が入る。建設地は大藤地区(大久保)の敷地約2・5ヘクタール。  設計方針は▽迅速な出動と実践的な訓練を実現する防災拠点▽環境親和型庁舎と健康で快適な環境の実現▽市民の防災力を育む、庁舎内外に展開する防災アミューズメント-とした。このうち防災アミューズメントは、市民が消防活動を見学できる専用通路を敷地内に整備するほか、訓練エリアや建物内の展示スペースが見学できるようにした。  25年度は、消防庁舎等整備検討部会を随時開催し意見を設計に反映、10月までに実施設計を完了させる。造成工事も進め、建築工事は27年3月に着工し28年10月に完了予定。29年4月の供用開始を目指す。総工事費は約75億円。 from...

鹿島ら/大気中CO2活用しコンクリ製造に成功、大阪・関西万博に舗装ブロック導入

 鹿島と川崎重工業は、大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収・固定するコンクリートの製造に成功した。1日5キロ以上のCO2を99%以上の高純度で回収できるCO2分離・回収装置と、コンクリートにCO2を吸収・固定させるための炭酸化養生槽を組み合わせたシステムを構築。実証実験の結果、所定のCO2固定量と十分な曲げ強度を確保した。  大気中のCO2を直接回収するDAC(ダイレクト・エア・キャプチャー、直接空気回収技術)を、CO2を吸収・固定する環境配慮型コンクリート「CO2-SUICOM」の製造に利用。開発したDAC装置は、付帯設備も含めコンテナに収納し、大気から1日5キロ以上のCO2を分離回収して高濃度CO2を完全自動で供給できる。  コンテナ型とすることで搬送や設置が容易になるため、さまざまな利用先に適用可能。大気中の約400ppmのCO2を回収・濃縮し、約99%と高純度なCO2を生成する。新システムをプレキャスト(PCa)コンクリート製品工場に設置して実証実験した結果、製造した舗装ブロック「CUCO-SUICOMブロック」が、CO2-SUICOM製のブロックと同等のCO2固定量と曲げ強度があることを確認した。  両社はCUCO-SUICOMブロックを製造し、大阪・関西万博の「CUCO-SUICOMドーム(通称サステナドーム)」のエントランスに敷設した。  両社は今後、PCaコンクリート製品工場でのCO2-SUICOMの本格的な製造に向けて、必要なCO2量を踏まえたDAC装置の検討を進める。システムの高度化を図り、コンクリートに吸収・固定させるCO2の地産地消を目指す。 from...

2025年3月12日水曜日

東日本大震災から14年/宮城県庁で式典、村井嘉浩知事らが献花・黙とう

 東日本大震災の発生から14年を迎えた11日、東北の被災各地で犠牲者を追悼する式典などが開かれた。宮城県では仙台市青葉区の県庁に設置された献花台に村井嘉浩知事らが花を供え、黙とうをささげた=写真。  青森、岩手、宮城、福島の被災各県では同日、困難と各地から寄せられた支援への感謝を忘れず、経験と教訓、記憶を後世に伝える追悼行事が開かれた。 from 行事 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172075 via 日刊建設工業...

回転窓/授業料無償化の行く先は

 12日に実施される大阪府の2025年度公立高校一般選抜入試で、全日制128校のうち65校で倍率が1倍を下回る「定員割れ」となった。有名大学への合格者を多数輩出してきた伝統校も複数含まれる▼吉村洋文知事は10日の会見で少子化の影響を指摘。「定員割れはいずれ来る道。行きたい学校に行けるという選択肢を保ちつつ、高校の再編を通じ公立も私立も切磋琢磨(せっさたくま)しながら教育の質を高めていくべきだ」と所見を述べた▼定員割れが相次いだ背景には、府が24年度から国に先駆け導入した高校授業料の無償化に伴い、私立の専願率が高くなっていることも影響しているとみられる▼府では3年連続で定員を満たせず、改善の見込みがない高校は再編整備の対象にすることが条例で定められており、実際に閉校した学校もある▼吉村氏はタブレット教育の導入や海外留学の支援を列挙して「公立高校にももっと投資をしていく」方針を打ち出す。私立とは予算や運営の自由度が大きく異なる状況にあり、これからの公立は知名度だけでない魅力も求められる。府の動向は全国的なモデルとしても注目される。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172085 via 日刊建設工業...

建退共/複数掛け金制度導入検討、段階的にアップし退職金1000万円超実現へ

 勤労者退職金共済機構(勤退共、梅森徹理事長)の建設業退職金共済事業本部(建退共本部、大澤一夫本部長)は、退職金1000万円超の実現に向け1人につき複数の掛け金を納付する「複数掛け金制度」の導入を検討する。現在の掛け金日額320円を3段階で徐々にアップさせ、掛け金を40年程度納付した場合の退職金を1000万円超にする。インターネットで掛け金を納める電子申請方式の拡大に向けては、退職金ポイントを還元するなどのインセンティブ付与を検討する。  11日に東京都内で運営委員会・評議員会を開き、2025年度事業計画とともに当面の事業方針などを説明した。退職金額の増額に向けた複数掛け金制度の導入はこれまでも業界団体などから要望が上がっていた。このほど初めて具体的な目安として1000万円を掲げた。  現在の退職金は、日額320円で37年間納付した場合で388万円。これに対し、東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情」(2024年版)によると全産業の退職金額は842万円と大きく上回る。「将来の安心につながる制度にする」(建退共本部)ため、日額320円に上乗せした複数掛け金制度を検討する。検討に当たっては建設キャリアアップシステム(CCUS)の能力評価を参考にする。  電子申請方式の拡大に向けては、ポイント還元などによるインセンティブの付与を検討する。建退共の掛け金として利用できる「退職金ポイント」を証紙に代え、ペイジー(電子決済)で購入した掛け金負担者に対し、一定割合の退職金ポイントを還元して次回以降の退職金ポイントに充当できるようにするなどの運用を想定。インセンティブの付与は、今秋予定している電子申請システムの大規模改修の後に始める。25年度は電子申請方式による掛け金納付率12%以上(24年度目標9%以上)を目指す。 from...

主要ゼネコン35社の23年度採用社員、5社が離職率ゼロ/本社調べ

 日刊建設工業新聞社が主要ゼネコン35社を対象に実施したアンケートによると、2023年度に採用した社員の離職率(24年3月末時点)は回答33社の平均で4・5%だった。企業別に見ると19社が平均値を下回った。安藤ハザマ、竹中工務店、東亜建設工業、飛島建設、前田建設の5社がゼロを達成。いずれも働き方改革の推進やきめ細かな研修、フォロー体制の構築などが成果に結び付いたようだ。  アンケートは1~2月に実施し、企業別に21~23年度に採用した社員の離職率(同時点)を調べた。  23年度採用社員の離職率が平均値を下回った企業は、ゼロだった5社と合わせて▽大林組(離職率0・6%)▽鹿島(0・6%)▽熊谷組(2%)▽五洋建設(2・7%)▽清水建設(0・3%)▽大成建設(1・3%)▽竹中土木(2・6%)▽東洋建設(2・7%)▽西松建設(1・8%)▽日本国土開発(2・6%)▽長谷工コーポレーション(1・5%)▽フジタ(2・8%)▽松井建設(3・5%)▽三井住友建設(4%)-の各社。  23年度入社の離職率がゼロだった5社では、採用選考段階から自社のニーズや方針に合った学生との「マッチングを高める」(竹中工務店)、「ミスマッチを減らす」(東亜建設工業)といった企業が目立つ。教育制度を充実させる動きも相次ぎ、「1年間の研修・自己申告制度によるキャリアや個性の引き出し」(前田建設)、「キャリアデザインを描き、技術力だけでなく人間力を高められる研修制度の確立」(飛島建設)といった回答もあった。  研修では若手に寄り添ったフォロー体制の構築にも注力。鹿島や清水建設、大成建設、戸田建設、奥村組、東鉄工業、淺沼組、大日本土木などはメンター制を導入・拡充し、年齢の近い先輩社員が仕事の相談や指導に対応する。若手が前向きな気持ちで仕事に取り組めるような心のケアにも気を配る。定期的に人事担当者や上司らが若手との面談を設け状況把握などに努める企業も多く見られる。  フレックスタイムの導入などによる柔軟な働き方や、初任給や各種手当による処遇改善の取り組みを定着率の改善や向上につなげるようとする企業も少なくない。大成建設や前田建設は服装のオフィスカジュアル化を推進。西松建設や安藤ハザマは独身者向けの帰省交通費を支給する。 from...

福島県/双葉地域中核病院基本計画を策定、4月以降に設計プロポ公告

 福島県病院局は、浜通り・双葉地域の医療体制で中核になる新病院の整備に向けた基本計画を策定した。東日本大震災の福島第1原発事故で休止した大野病院の解体後、跡地に延べ2万5400平方メートルの新病院を建設する。各工程で仕様や設計額が見直せ、物価の変動などにも対応が容易な設計・施工分離発注方式で整備する。4月以降に基本・実施設計業務の委託先を決める公募型プロポーザルを公告。2029年度以降をめどに、整備工程などを精査し早期の開院を目指す。  計画地は大熊町下野上大野98の1(敷地面積2万6000平方メートル)。JR大野駅から約200メートルに位置する。新病院のコンセプトは▽地域に密着し、住民が安心して生活するための連携の核になる▽地域の発展に貢献し、医療従事者に魅力ある病院。診療科は20科、病床数は250床前後を想定する。  大野病院は1951年に開設し、72年に現在地へ移転した。本館の施設規模はSRC造4階建て延べ1万0427平方メートル。病床150床、診療科目は9科。20年3月に敷地を含む区域の避難指示が解除され、地元を含めた周辺自治体から病院再開の期待が高まっている。 from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172087 via...

2025年3月11日火曜日

中部整備局ら/蒲郡BP開通式開く、名豊道路全線つながる

 中部地方整備局が愛知県内で整備を進めていた国道23号蒲郡バイパス(BP)の豊川為当~蒲郡ICが8日、開通を迎えた。これにより、名古屋市から豊橋市までを結ぶ延長約72・7キロの高規格道路「名豊道路」が、1972年度の事業着手から半世紀の時を経て全線開通となった。同日、蒲郡市内で行われた開通式典やセレモニー、パレードには、地元関係者や施工者、設計者、自治体関係者、国会議員など約430人が参加。事業の節目を盛大に祝った。  式典やセレモニー、パレードは、中部整備局名四国道事務所や愛知県、豊川市、蒲郡市、名豊道路建設推進協議会、国道23号蒲郡BP建設促進協議会で構成する実行委員会が主催した。  蒲郡市民会館で行われた式典で鈴木寿明蒲郡市長は「さまざまな関係者のおかげで開通を迎えることができた。道路を活用し、物流や人流、産業、観光による地域活性化、防災などにつなげたい」、大村秀章知事は「名古屋港や三河港へのアクセス性を飛躍的に高め、県の重要な東西軸になる。開通効果を最大限に生かすため、イノベーションを創出する取り組みなどを加速し、日本の成長をリードしたい」とあいさつ。佐藤寿延中部整備局長は「連綿と多くの方が事業に携わり、きょうを迎えることができた。開通を機に地域、圏域がますます発展し、つながることを祈念する」と話した。来賓の今枝宗一郎衆院議員は「皆さんと一緒に盛り上げ、地方創生につなげたい。今後の4車線化に向けても力を尽くす」と述べた。その後、蒲郡IC周辺の道路現地に移動し、セレモニーとして鋏入れやくす玉開披が行われた。  豊川為当~蒲郡ICの延長は9・1キロ。蒲郡BPを形成する。  名豊道路は知立、岡崎、蒲郡、豊橋、豊橋東の5BPで構成。8市1町を通過する。物流効率化や災害に強い道路機能の確保など、さまざまな効果が期待される。 from...

回転窓/記念日への思い

 いつまでも忘れず、思い出すきっかけとして作られるものに記念碑や記念誌などがある。企業や団体、個人らが制定する記念日にも人々の記憶にとどめようと、さまざまな思いや願いが込められている▼日本記念日協会が認定・登録した記念日はホームページで検索・閲覧できる。きょう3月11日を見ると、東日本大震災関連の記念日が目立つ▼「防災意識を育てる日」はネットテレビやラジオ局の運営会社が制定していたのを防災士の社長が継承して登録。関東大震災に由来する「防災の日(9月1日)」に行われる防災訓練が台風シーズンで中止となることも鑑み、震災の教訓を次世代につなぐための話し合いや行動を促す日とした▼メディアコマースが制定した「おくる防災の日」は、防災用品を大切な人に贈る・送る習慣を根付かせるのが目的。NPOが定めた「いのちの日」には多くの命を失った震災の教訓を風化させず、災害時医療を考える機会とする思いがこもる▼本紙でも早期の復旧・復興や防災・減災対策の重要性を訴えてきた。これからも安全・安心な国土づくり、それを支える建設産業の取り組みを報じていく。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172050 via 日刊建設工業...

東日本大震災から14年/福島第1原発廃炉へ一歩ずつ、デブリ試験的採取に成功

 廃炉への道として大きな前進だった--。2024年11月、東京電力ホールディングス(HD)は福島第1原子力発電所(福島県大熊町、双葉町)2号機の溶融燃料(デブリ)の試験的採取に成功した。当初計画より数年ずれ込んだが、本格的なデブリ取り出しへの道が見え始めた。デブリ保管施設の整備に向け、ALPS(アルプス、多核種除去設備)処理水貯蔵タンクの解体も始まった。長い時間をかけながらも、廃炉作業は着実に進んでいる。  同社は1月14日、福島第1原発構内を報道機関に公開した。1~4号機を見渡せる「ブルーデッキ」からは、1号機を覆う大型カバーの設置工事の様子がうかがえた。がれき撤去時のダスト飛散や雨水の流入を抑えるためのもので、今夏ごろまでに設置を終える見通しだ。1、2号機の原子炉建屋内部のプールには、使用済み燃料が残る。1号機の使用済み燃料取り出しは27、28年度の開始を予定している。  2号機は、建屋上部にあるプールにアクセスするため、建屋南側に使用済み燃料搬出用の構台と前室を設置。建屋と前室を行き来するブーム型クレーンを遠隔操作して使用済み燃料を取り出す。構台の鉄骨組み立ては24年6月に完了し、現在はクレーン走行レールの基礎(ランウェイガーダ)を設置している。26年度までに使用済み燃料の取り出しに着手する。既に使用済み燃料の取り出しを終えている3、4号機を含め、31年内に1~6号機すべてで作業完了を目指す。  1~3号機と形や大きさがほぼ同じという5号機の原子炉内部は非常に狭く、天井も低い。全身防護服を身に着けて、圧力容器直下部へ進入すると、天井部一面に制御棒の駆動設備などが配列されていた。  廃炉の最難関とされているのが、燃料デブリの取り出し作業だ。事故当時、運転中だった1~3号機は、津波で電源を喪失した。燃料の過熱を免れず原子炉内の構造物と燃料が溶融し、デブリとなって今も原子炉内部に残っている。1、3号機は格納容器内、2号機は圧力容器底部に多く溶け落ちたと見られている。  原子炉内部は放射線量が高く、人間は近づけない。除去するための装置や用具を開発しようにも、デブリは重さや硬さ、成分が不明なため、まずはサンプルを採取し、分析する必要がある。  試験的なデブリ取り出しは2号機から着手した。23年度に実施予定だったが、新型コロナウイルスの影響や作業の安全性、確実性を高めるために工程を見直した。取り出し作業は24年9月に開始。同11月、大きさ約9ミリ×約7ミリ、重量約0・7グラムの採取に成功した。  採取できたサンプルは1グラムにも満たないが、東京電力HD担当者は「2~3年遅れたものの、結果として取り出せたのは大きな前進だった。廃炉の道として一歩進めた」と採取成功の意義を語った。春ごろにも、2回目の試験的採取に着手する見込み。取り出し作業は段階的に規模を拡大していく。  取り出したデブリは金属製の密閉容器に収め、新たに整備する保管施設に移す。新施設の計画地は、ALPS処理水などのタンク設置エリア(E、J8・J9)にあるタンクを解体した跡地。Eエリアには2号機の、J8・J9エリアには3号機の燃料デブリ取り出し関連施設を設ける。  2月3日、東京電力HDは原子力規制委員会からJ8・J9エリアのタンク解体に関する実施計画の認可を受けた。ALPS処理水の海洋放出で水抜きが先行しているJ9エリアのタンク12基は、同14日に解体を始めた。今月4日に1基の解体が完了。速やかに2基目の解体に取りかかる。  処理途上水を貯留しているJ8エリアのタンク9基は、空のタンク群に処理途上水を移送後、解体に着手する。溶接型タンクの解体は初の事例となるため、知見を蓄えつつ、安全最優先で作業を実施していくという。  事故から14年。現場に立つことで新たな進展を目の当たりにした。廃炉作業が本格化しつつある中、課題も残る。現場に入る作業員の安全管理や作業環境の向上、改善は不可欠だ。現在、構内では1日当たり約4000~4500人が働いているという。多重下請構造のため、東電HD担当者は、「協働者と対話し、さまざまな意見をキャッチアップしていかないとならない」と気を引き締める。 from...

関東整備局ら/首都圏外郭放水路でパワーアップ計画、見学者10万人達成へ

 ◇防災を自分事に  関東地方整備局ら3者が、首都圏外郭放水路(埼玉県春日部市)で見学者10万人を達成するための八つのパワーアップ計画をまとめた。「防災地下神殿」の異名を持つ同施設を巡る四つの見学コースに加え、さらにもう2コースを用意。防災コンシェルジュも配置し、見学者に防災の「自分事化」を啓発する。観光しながら防災知識が身につけられる防災ツーリズムがスタートする。  パワーアップ計画は関東整備局と埼玉県春日部市、外郭放水路の見学会を運営する東武トップツアーズ(東京都墨田区、百木田康二社長)が作成した。一つ目は全長6・3キロに上る地下トンネルのほぼ中間に位置する第3立坑を見て回るコース「地下河川を歩くアドベンチャー体験コース」を16日に始める。年間で限定100人を招待し、地下50~60メートルの世界を体感できる。  二つ目はプレーヤーが自由にブロックを配置して構造物を体験できるマインクラフト(マイクラ)を活用した防災学習コースも立ち上げる。外郭放水路をマイクラで再現し、ゲーム感覚で防災を学べる。6月以降開始する予定だ。  関東整備局の江戸川河川事務所が認定した防災コンシェルジュ(現在13人)を配置。自然災害への備えを解説した「災害から命を守る自分事化カード」も配布する。21言語対応の翻訳システムなども用意する。  10日には「地底探検ミュージアム龍Q館」で3者共同の記者会見を開催。岩谷一弘春日部市長、小池聖彦江戸川河川事務所長、望月康紀東武トップツアーズ東武沿線事業推進部長が出席した。  小池所長は「災害から命を守る『災害の自分事化』を広げるための防災ツーリズムをスタートさせる」と宣言。岩谷市長は「外郭放水路の新たな取り組みを盛り上げていきたい」、望月部長は「(外郭放水路の)認知度向上などを通じ、東武沿線の新たな観光地づくりを進める」と述べた。  外郭放水路は倉松川など地域の河川から地下に水を取り込む立坑と地下で水を送り込むトンネル、スムーズな排水を促す調圧水槽、水を江戸川に吐き出すポンプ設備などで構成する。貯水容量はサンシャイン60(東京・池袋)1棟分に相当する約67万立方メートルを見込む。23年度時点で約6万3000人が見学に訪れている。 from...

国交省/直轄工事で賃金・労働時間「見える化」、受注者側の理解得て試行を

 国土交通省が直轄工事で試行する方針を示した技能者の賃金や労働時間の実態把握について、受注者となる元請や下請への丁寧な説明と十分な理解を踏まえ試行に取り組むことを7日の有識者会議でほぼ了承した。元請団体を中心に、技能者を雇用する下請にもデータ提出を求める難しさや、試行のメリットを問う声も挙がった。試行の中で元請と下請のそれぞれに依頼する事項を明確にし、将来的に実現を目指す受注者側のメリットについても理解を得ていく必要がありそうだ。  有識者会議「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会」の「建設生産・管理システム部会」(部会長・小澤一雅政策研究大学院大学教授)が7日開いた会合で、国交省が提示した試行の方向性について議論した。  試行工事では受注者の元請と、技能者を雇用する下請に支払い賃金と労働時間、労務費の三つのデータを発注者に提出してもらい「見える化」する。各工事で実態把握の対象工種をあらかじめ決めた上で、雇用主の下請は賃金台帳に記載された技能者の賃金総額と総労働時間を発注者に直接提出。元請は下請に支払った労務費と、試行工事で技能者が実際に働いた作業時間を把握し提出する。  この実態把握により企業単位では労働時間に対し賃金が、工事単位では作業時間に対し労務費が、適切に支払われているかどうか判断する材料になる。ただ下請の賃金開示には抵抗感が強いとの指摘もある。そこで試行では提出してもらう賃金を技能者個人ごとではなく全員の合算値とし、なおかつ元請を通さない提出方法とすることで下請に配慮する。  小澤部会長は試行に当たって把握するデータの定義や提出主体を明確化し、受注者側に誤解が生まれないよう国交省に対応を要請。データ把握で何が明らかになり何が実現できるか、具体的なモデルケースを示すことで理解も深まると助言した。国交省は丁寧な説明により試行への協力に理解を得ていく考えを示した。  このほか有識者からは、試行の開始以降も必要に応じ実施方法を改良すべきとの意見があった。今回の試行が建設業の生産性向上と働き方改革を実現する制度の設計につながる可能性を指摘し、受注者側へのメリット訴求に期待する声もあった。 from...

東日本大震災から14年/伊藤復興相インタビュー、被災地に寄り添い責任全う

 伊藤忠彦復興相は、東日本大震災から14年を迎えるに当たり、報道各社の共同インタビューに応じた。原子力発電所の廃炉や、原発事故から発生した「除去土壌」の処分・再生利用に関する取り組みが進む中で、「現場主義を徹底し、被災地に寄り添い、責任を全うするつもりで復興が進むよう取り組む」と決意を述べた。  復旧・復興の現状についは、「岩手県、宮城県はハードの整備、復興が進んだ」としながらも、被災者の心のケアをはじめ「必要な課題がある」と指摘した。2025年度までの第2期復興・創生期間の後も「必要な支援が行えるよう関係省庁、自治体と連携し、丁寧に取り組む」と話した。  福島県は被災地域の訪問を踏まえ「(廃炉、除去土壌の対応など)ステージが進むにつれて、多様なニーズに国が対応しないといけないと心に刻んだ」と受け止めを話した。住民の帰還に向けた特定帰還居住区域の除染などを進めながら、帰還困難区域にある土地や家屋の在り方を巡り地元自治体と協議していく考えも示した。  帰還や移住の環境整備、既存ストックを生かしたまちづくりなどに投じている福島再生加速化交付金に関し、「帰還困難地域を抱えている地域があり、復興の状況は異なる」と被災地の現状を説明した。安全で着実な廃炉、除去土壌の県外最終処分、帰還困難区域の解除、生活再建などを課題に挙げ、「生活環境、にぎわい創出に引き続き取り組み、安心して暮らせるまちづくりをしっかり支援していく」と述べた。  除去土壌の県外最終処分に関し、福島県双葉町の伊沢史朗町長が町内での再生利用を検討する考えを示したことについては「心配するのは当然。広い場所に(除染で出た)土砂がある。しっかり対応することがわれわれの責任」と述べた。政府は除去土壌の県外最終処分と再生利用について、今春に基本方針をまとめ、今夏にロードマップを策定することにしており「きっちりやり遂げたい」と強調した。  施設設計が進んでいる福島国際研究教育機構(F-REI)は「造成工事に着手する。集まれる場所を確保して夢のある課題が議論されればいい」と述べ、早期の供用開始に意欲を見せた。首都直下地震や南海トラフ地震の発生が懸念されていることについては「起きた時に立ち上がる方法を共有することが必要なことだと認識している」と話した。 from...

内閣府/自治体のPPP・PFI事業、分野横断・広域連携推進へ手引策定

 内閣府民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)は10日、分野横断型・広域型のPPP/PFI事業の実施を促すための手引を発表した。複数分野や複数の公共施設などを一括して事業化する「分野横断型」と、複数の地方自治体が管理者などになった「広域型」の事業の導入検討、事業者募集・選定、事業推進のポイントなどをまとめた。事例も多く示した。  「分野横断型・広域型のPPP/PFI事業導入の手引」を公表した。公共施設やインフラの老朽化、技術職員の減少といった公共施設やインフラの管理者が直面する課題への対応を支援し、PPP/PFI事業の裾野を拡大するのが狙い。  社会情勢の変化から、公共サービスを従来の所管範囲を超えて提供したり、複数の分野や施設をまとめることでスケールメリットを働かせたりすることの必要性を強調している。分野横断型、広域型の事業とも、多様な民間事業者の参画が促され、事業機会の創出になることなどを効果に挙げた。  手引は分野横断型、広域型の事業を進めるための合意形成、庁内外との調整、発注体制・方法、民間事業者の選定・審査・コミュニケーションなどを対象に、要点を分かりやすく示した。分野横断型は上水道・下水道・工業用水道一体や公立学校など、広域型は水道、廃棄物処理などの事業を例に挙げた。  先行事例で導入のきっかけや、重視した事項なども紹介。国や都道府県が主導的な立ち位置となる「垂直連携」や、発注者の権限を特定の市区町村に集約するような「共同発注」などの事業手法と、その考え方を記載。モニタリングの体制や、民間事業者に過度な負担をかけない工夫といった留意点も示している。  手引をまとめるに当たって調査した分野横断型・広域型の29事例で事業化に至った動機、連携方法、期待している効果、留意点などが参考となるよう掲載。事業化までの工程とポイントも整理してある。 from...

国交省/技術提案評価SI型の試行実施要領案まとめる、配点や費用の考え方提示

 国土交通省は直轄工事で2025年度から試行する総合評価方式の新タイプ「技術提案評価型(SI型)」の実施要領を固めた。月内に策定・公表し、適切な運用を各地方整備局に要請する。SI型ではVFM(バリュー・フォー・マネー)の考え方に基づき、仕様や工法の変更で安全性や生産性、品質の向上などが期待できる事項について「技術向上提案」を求める。技術向上提案の評価点は当面、現行のS型で技術提案に充てている配点の合計の2分の1から3分の1のウエートで設定する。  7日開いた有識者会議「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会」の「建設生産・管理システム部会」で試行の実施要領案を明らかにした。  SI型は、S型で発注する工事のうち仮設物や工法、目的物の比較的軽微な変更で効果が期待できる場合や、新技術・工法の活用が期待できる場合に適用。コスト面で分が悪い省人化などに寄与する工法や資材の採用を促す。大規模工事ほど効果的な提案が得られやすいことを踏まえ試行対象を選定。発注手続きの期間はS型より長く設定する。  技術向上提案のテーマは、通常の技術提案テーマとは別に一つ設定する。施工性の高い工法への変更、交通渋滞・事故防止や作業員の危険防止、維持管理性の高い工法の採用といった具体例を示す。特定の工種・箇所・段階でのテーマ明示を推奨。コスト縮減は提案に含めず、資材の一部を既製品に置き換えるだけの提案も評価しない。  競争参加者には提案実施の概算費用の明示を求める一方、入札はその費用を含めず当初仕様で行う。第三者に諮った上で提案を採用する場合、当初契約後に契約変更を行う。  増額変更の上限は、公告時点の予定価格の5%を超過しない範囲で発注者が設定。受注者から提案部分の見積もりを徴収し、協議を経て請負代金の変更額を決定する。新工種を提案する場合を除き、変更時に落札率がかかる。  試行開始後、提案に基づく実際の効果や配点の妥当性などをフォローアップする。将来的に直轄工事の総合評価方式のガイドラインに明記し本格運用する。同部会では建設業団体から、同じような技術向上提案テーマが続けば一部の技術を持った企業に継続的に有利に働く可能性があるとして、テーマ設定の是非について透明性ある制度運用を求める声があった。 from...

鹿児島県/志布志港(志布志市)長期構想を策定、新バルク貨物ターミナル整備など

 鹿児島県は志布志港(志布志市)のおおむね20~30年後の目指すべき姿とその実現に向けた空間利用計画や施策などを取りまとめた長期構想を策定した。物流やにぎわい、エネルギーなど四つの分野で目指すべき将来像を提示。新バルク貨物ターミナルの整備や高付加価値型産業の誘致、新たな交流拠点の創出などを盛り込んだ。  構想では「地域のポテンシャルと稼ぐ力を引き出す、世界に開かれた志あふれる志布志港」を基本理念に、▽物流・産業▽人流・にぎわい▽安全・安心▽環境・エネルギー-の四つの分野で目指す将来像を示した。  主な取り組みについては、物流・産業では▽新若浜地区でのコンテナターミナルの拡張と新バルク貨物ターミナルの整備▽輸送方法を環境負荷の少ない船舶などに転換するモーダルシフトを促進する次世代高規格ユニットロードターミナルの形成▽大型穀物船に対応するための耐震強化岸壁の整備▽若浜地区の緑地公園移設による新たな産業用地の確保▽企業用地を活用した流通加工機能などを有する付加価値型の物流施設誘致-などに取り組む。  人流・にぎわいでは、若浜地区の緑地公園をフェリー機能の移転に合わせて外港地区に移し、志布志港の景観を一望できる緑地を整備。みなと緑地PPP制度を活用した新たな交流拠点の創出も検討する。  安全・安心では、コンテナターミナルやフェリー・RORO船(貨物車両をそのまま運搬できる船舶)ターミナルの耐震化、外港地区での港湾機能の維持や早期回復に必要な作業船の係留場所の確保、コンテナなどの流出防止対策といった取り組みを進める。  環境・エネルギーでは、若浜地区での次世代エネルギー関連産業誘致や脱炭素化の推進に向けた港湾機能の高度化、環境に配慮したブルーインフラとして藻場や干潟の造成を検討していく。  今後は長期構想に基づき、早期に取り組むべき施策は港湾計画を改定して反映させる。 from...

大成建設/トンネル坑内で10tダンプ自動運転、位置情報取得技術を高度化

 大成建設はGNSS(全球測位衛星システム)の電波が届かないトンネル坑内で、掘削土砂を搬出する10トン積みダンプトラックの自動運転を実用速度(時速20キロ)で実証した。車両に搭載したセンシング装置の計測情報に基づき、車体の周辺環境を示す「環境地図作成」と「自己位置推定」を3Dで同時に行うSLAM技術を用いた位置情報取得技術「T-iDrawMap」で実現。自動運転で運転手が不要となりトンネル施工の生産性向上に貢献し、操作ミス防止による事故リスクを低減する。  茨城県つくば市にある国土交通省国土技術政策総合研究所の実大トンネル実験施設と、富山県南砺市で国交省北陸地方整備局が建設している「利賀トンネル(2工区)工事」の現場で実証し、性能を確認した。  実証では、タイヤ式車両の10トン積みダンプトラックにT-iDrawMapを適用。トンネル坑内の周辺環境を示すデータを基に車体の位置情報を取得しながら、あらかじめ設定したルートを自動走行することを確認した。GNSSを利用できない坑内や地下でも実用速度の時速20キロで自動運転が可能になることも確認。移動式鋼製型枠(セントル)を設置している狭い区間でも通過速度を減速し、安全に走行する。  大成建設は2021年に時速7キロの無限軌道式建設機械(クローラダンプ)を対象に、T-iDrawMapを適用してトンネル坑内の自動運転を実現した。今回の実証によってT-iDrawMapの適用範囲を、実用性の高い時速20キロで走るタイヤ式車両の10トン積みダンプトラックにも広げた。今後は早期の実用化を目指す。  同社はT-iDrawMapを活用し、将来的には屋内・地下空間での自動運転も想定している。災害時の探査や点検での適用とともに、無人・有人の建設機械が協調稼働する「T-iCraft」との連携も視野に入れる。 from...

2025年3月10日月曜日

回転窓/やっぱり!マイ・ユニホーム

 本紙最終面の企画欄「やっぱり! マイ・ユニホーム」は2019年に掲載がスタートした。建設会社などの作業服を紹介するシリーズで、これまでに180以上の企業・団体が登場している▼多くが作業服をリニューアルしたタイミングでの掲載であり、数十年ぶりにデザインを刷新したという会社も少なくない。それぞれの顔とも言える作業服は企業イメージにつながるだけに、記事を読むとブランディング戦略の一環であることがよく分かる▼新しい作業服はデザイン性や機能性だけでなく、愛着を持って着用できることも重要なコンセプトとなる。スポーツメーカーやデザイン専門学校とタイアップしたり、社員の意見を反映させた複数案から社内投票で決めたりするなど、さまざまな取り組みが見られる▼作業服を一新したある地域建設会社の広報担当者は「建設業を憧れのナンバーワン職業とするためイメージアップに貢献したい」と話す。作業服を通じた魅力向上に期待したい▼今年も4月に多くの若者が建設業界に仲間入りする。職場や仕事に早く慣れ、マイ・ユニホームを着た姿が板に付くのを楽しみにしよう。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172023 via 日刊建設工業...

大林道路/社長に安孫子敬美氏、4月1日就任

 大林道路は7日、安孫子敬美代表取締役兼専務執行役員が4月1日付で社長に昇格する人事を発表した。黒川修治社長は同日付で代表権のない取締役となり、6月下旬に取締役を退任し特別顧問に就く予定。  安孫子 敬美氏(あびこ・ひろみつ)1986年日本大学工学部土木工学科卒、大林道路入社。2018年執行役員、20年本店営業部長、21年常務執行役員、22年4月プロジェクト推進部長、同6月取締役を経て、24年4月から現職。北海道出身、61歳。 from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=172024 via 日刊建設工業...

凜/佐藤機工・安齊優翔さん、一人前のクレーンオペレーターに

 「ものづくりに携わりたい」という思いを抱いて神奈川県立磯子工業高等学校に入学した。在学中に神奈川建設重機協同組合(大平道成理事長)が実施した出前授業で初めてクレーン車に触れた。実際にクレーン操作を体験して「クレーンオペレーターの仕事に就きたい」と強く意識するようになった。  高校卒業後、佐藤機工に入社が決まり、クレーンオペレーター資格に必要な大型特殊、移動式クレーン免許を取得するために「神奈川クレーン塾」に入塾。開講期間約1カ月の間に免許取得だけでなく、建設業界の基礎知識や安全教育、コミュニケーションのためのマナー研修を受講し、見事試験に合格してクレーンオペレーターになる資格を手に入れた。現在は、12トンラフタークレーンオペレーターとして県内の現場を担当している。  「安全に作業を進めていくため、現場環境と周りに気を配るように心掛けている」とし、周囲への顧慮を怠らず業務にまい進している。  「各現場に行き、さまざまな職人さんたちと一緒に仕事し、いろいろと学びながら仕事を覚えられる今が楽しい」と笑みがこぼれる。クレーンオペレーターは力仕事ではなくて、性別も関係なく仕事をすることができる。これからも技術を磨いて頑張っていく。  (あんざい・ゆいか) from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞...

国交省/賃金や労働時間「見える化」直轄工事で25年度試行、生産性競う環境目指す

 国土交通省は直轄工事に従事する技能者に支払われた賃金や労働時間を、受発注者間で「見える化」する試みに乗り出す。2025年度に全国の地方整備局で試行工事を始める。受注者の元請と、技能者を雇用する下請に協力を依頼し、支払い賃金と労働時間、労務費の三つのデータを発注者に提出してもらう。見える化の浸透により工事入札などで適正な労務費が確保される環境が創出され、生産性向上による健全な競争も促されると期待する。  有識者会議「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会」の「建設生産・管理システム部会」が7日開いた会合で説明し、学識者や建設業の元請団体などに意見を聞いた。  公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の運用指針では、発注者に賃金・労働時間の実態把握を努力義務化している。建設業従事者の処遇や労働環境の改善の必要性から設けられたこの規定を実行に移す。23年9月から試行に取り組む四国整備局徳島河川国道事務所の先行事例で受注者から挙がった意見も踏まえ、試行内容を改善・拡充し全国へ展開する。  会合では、試行工事で元請と下請に対応を求める実態把握の方法などを提示した=表参照。試行案件は受注者の希望も踏まえ選ぶ。鉄筋や型枠などの工種ごとに実態把握する方法とし、技能者を雇用する下請の理解も得て元請が最低一つの対象工種を決定。従事する技能者の賃金・労働時間を把握する。雇用主の下請には個人特定を避ける観点で賃金・労働時間の合計値の提出を求める。元請には下請に支払った労務費と、試行工事での技能者の作業時間を把握してもらう。  国交省が将来的に目指すのは、こうしたデータの見える化による健全な競争環境の実現だ。賃金・労務費の適正額が実質的に確保されることで、工事入札や元下間の工事契約で価格競争の原資として生産性の高さを競わざるを得ない環境になるという絵姿を描く。  小規模な維持工事などで積算上の歩掛かり・経費が現場実態と合わないとの声があることも念頭に置く。見える化されたデータに基づく歩掛かり・経費の設定や見積もりの活用で現場条件に即した積算方法を採用できる可能性も指摘する。  会合では受発注者双方がアクセス可能な「データ共有システム」を国交省が用意する考えも示した。データ入力・格納・出力のルールを決め、データを扱う余計な手間を省く。発注者による現場の状況把握、元請・下請による労務関係のマネジメント、技能者による賃金の確認など、それぞれの立場に応じメリットがあるデータの使い方ができる仕組みを検討する。 from...

大気社ら/新たなDACシステム開発着手、大気中のCO2大量回収可能に

 東京都立大学や大気社ら6者でつくる研究グループが、大気中の二酸化炭素(CO2)を大量回収可能にする「DAC(ダイレクト・エア・キャプチャー)システム」の開発プロジェクトに着手した。DAC技術でこれまでネックとなっていた送風エネルギーを使わず、自然風や走行風を利用した「パッシブDAC」を開発する。大量のCO2を回収可能な低エネルギーシステムを新たに構築・実証する。  研究グループは▽東京都立大▽大気社▽パンタレイ▽長岡技術科学大学▽小島プレス工業▽九州大学-の6者。開発プロジェクトは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公募事業「ムーンショット型研究開発事業/2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」に採択されている。事業総額は約19億円。事業実施期間は29年度まで。  研究達成に向けて、▽固定型パッシブDACシステムの開発▽移動型パッシブDACシステムの確立▽マイクロ波によるCO2脱離回収システムの開発-に取り組む。トラックや船舶などの走行風を利用し、無動力で大気中のCO2を吸収・回収する技術を確立する。パッシブDACで生成した固体カルバミン酸をエネルギー効率の高いマイクロ波で直接加熱することでCO2の脱離・回収を行うシステムも開発する。  29年度までに年間1・2トンのCO2を空気から回収し、1トンのCO2に対してエネルギー消費を4・5ギガジュール以下に抑える計画。将来的には、回収したCO2を有用な炭化水素に変換する技術と組み合わせ、2050年までに1・5億トンのCO2を回収し、0・5億トンを貯蔵、1億トンを資源化することで、カーボンネガティブな社会を目指す。 from...

甲府市/リニア山梨県駅前エリア基盤整備方針、26年度にも検討パートナー公募

 甲府市は「リニア山梨県駅前エリアの基盤整備方針」をまとめた。2023年度に策定した「(仮称)リニア山梨県駅前エリアのまちづくり基本方針」の具現化に向け、主に公共が担う都市基盤施設整備の配置や事業スケジュールなどを示している。市は駅南側エリアの交通広場と南側アクセス道路の事業主体となる。官民連携ゾーンについては山梨県、民間事業者などと連携する。  26年度にも基本計画づくりに参画可能な検討パートナーを公募する。27年度以降にまちづくり基本計画を策定し、34年度以降の基盤整備完了を目指す。リニア事業の進捗を見ながら適時スケジュールを見直す考えだ。  甲府市大津町内に整備予定の「(仮称)リニア中央新幹線山梨県駅」の駅前エリア全体(約24・5ヘクタール)が対象。同方針はこのうち市が事業主体となる同駅南側エリア(約11・5ヘクタール)を主な対象とする。南側交通広場と南側アクセス道路の事業主体は甲府市で、民間活力の導入も検討する。南側に広がる官民連携ゾーンは市と県、民間事業者が連携し、施設の整備・運営などを検討する。27年度以降に予定する都市計画決定・事業認可を経て、官民連携ゾーンの事業者を決定する見通しだ。  このほかの事業主体は山梨県駅(仮称)がJR東海、(仮称)甲府中央スマートICが山梨県と中日本高速道路会社。メイン道路と1号線アクセス道路、北側交通広場、パーク&ライド駐車場は山梨県。基盤整備の概算事業費は約40億円を見込む。官民連携ゾーンの事業推進費は含まれていない。  市はリニア中央新幹線南アルプストンネル静岡工区の工期などを注視しながらスケジュールを調整する。25年度に「まちの将来像」を提案する。26年度にコンセプトブックを公表し、基本計画づくりに参画可能な検討パートナーを公募する。29年度以降のまちづくり基本計画策定、都市計画決定を目指すとしている。 from...

2025年3月7日金曜日

建築設計事務所16社25年春の採用計画、新卒採用10社増/本社調べ

 主要建築設計事務所16社の今春(2025年4月)の新卒採用者数(大卒、高卒などすべてを含む)が前年よりも1割以上増加することが、日刊建設工業新聞社の調査で分かった。総数は前年より75人多い449人。前年に比べ10社が増加、3社は減少、3社が同数だった。増加した10社のうち、4社が15人以上増やす見通し。今後の採用方針は、12社が「横ばい」、2社が「増やす」と回答。「減らす」との回答はゼロで安定的に人材を確保し、社会ニーズに対応できる人員体制を整える企業が目立った。  1~2月に主要な設計事務所16社にアンケートを行い、新卒・中途採用の人数や人材戦略などを尋ねた。今春入社する新卒者の中で、技術系は16社で合計421人(24年4月は361人)。11社が前年実績を上回り、3社が減少、2社は同数となった。前年に比べ採用数を大幅に確保するのは3社。日建設計が18人、久米設計が16人、大建設計が14人をそれぞれ増やす。  新卒採用では組織体制の維持や適正規模の採用を理由に「横ばい」と回答する企業が目立つ中、設計業務の効率化や業容拡大を狙う企業もあった。松田平田設計は「業務受嘱状況やDX化への対応を含めた中長期の経営視点から増やす」と回答した。  高専卒を採用する動きも見られた。回答した企業のうち、日建設計は今春に1人の採用を見込む。「(高専卒は)育成枠として将来技術者を見込み今後採用を検討中」とした。梓設計は「高専出身の方の技術力、向上心に着目している。組織の活性化という観点からも、具体的な目標値の設定はないが、採用を増やす方針」と回答。石本建築事務所も「採用を増やす検討を行っている」とした。  AI関連など建築系以外の人材を積極的に採用する動きも出ている。課題には「機械・電気・電子系学生の募集・獲得」(NTTファシリティーズ)や「DX人材の獲得」(日建設計)が挙がった。  24年度の中途採用は、16社の合計が427人で、前年度と比べ104人増える見通しだ。増加を見込む企業からは「成長・注力分野での即戦力人材の積極的な採用」(NTTファシリティーズ)、「環境設備、ビジネス分野で実績のあるキャリア人材を積極的に採用する方向」(安井建築設計事務所)との声が上がる。既存領域にとどまらず新規事業を開拓する場合に実務経験で得た知識、スキルを求める傾向は今後も強くなりそうだ。  他産業を含め人材獲得競争が過熱する中、シニア層の活躍に期待する向きもある。三菱地所設計は「25年度から(定年を)60歳到達月末から60歳到達後年度末まで延伸し、75歳まで就業可能な職種の新設を実施予定」と回答。日建設計は1月に定年延長を行い、60歳から65歳に引き上げた。今後、定年延長を「計画している」「検討中」と答えたのは6社あった。  25年度新卒初任給(大学・総合職)引き上げについて回答した15社のうち、5社が「引き上げた」、4社が「検討中」。残る6社は昨年度引き上げを実施したなどから「据え置いた」と答えた。新入社員の2年目、3年目の離職率が1~2割の企業もあり、優秀な人材を獲得し維持していくため、今後も処遇や制度の見直しや改善が求められそうだ。 from...

中部整備局長島ダム管理所/3月13日にレベル3・5のドローン飛行試験

 中部地方整備局長島ダム管理所は13日、長時間ドローンの飛行試験を静岡県川根本町の長島ダム湖面上で実施する。飛行方法はカテゴリーIIのレベル3・5。機体に搭載したカメラで飛行経路下に歩行者などがいない無人地帯であることを確認しながら飛行する。ダムの維持管理を目的としたレベル3・5飛行は全国初。安全、効率的な施設点検を目指し、効果や課題を検証する。  従来、同ダムの施設点検は作業員2~3人が船に乗り、堤体やゲートのコンクリートの状態や周辺の林道が崩れていないか、湖面に異常がないかなどを目視で確かめる。出水、非出水期で差はあるが、半日程度時間がかかることもある。  飛行試験はダムを発着地点とし、北東方向に伸びる接岨湖を回るルートで実施。飛行速度は時速18キロ以下、飛行距離は約17キロ、飛行時間は約2時間を想定する。  使用する機体は、小型の発電機を搭載して内蔵バッテリーを充電しながら飛行できるハイブリッドドローン「GLOW.H」。カメラなどを搭載した状態で2時間ほどの飛行が可能。通信方式は従来の2・4ギガヘルツに加えLTE通信にも対応し、操縦者と機体の距離が離れても通信圏内であれば遠隔操作できる。  飛行試験ではこれらの特徴を生かし、操縦者がダムにとどまり、飛行中のドローンのカメラによる映像をモニターで確認しながら操作する。施設の変状などを確認できるか検証し、点検の省人化や効率化、安全性の向上などの効果を確かめる。  飛行試験は「令和6年度無人航空機を活用した河川等の施設点検調査検討業務」の一環。パスコが受注している。  ドローンのレベル3飛行では、補助者や周知看板を配置するなどの立ち入り管理措置が求められていた。2023年に新設されたレベル3・5飛行ではこれを撤廃した。 from...

建設コンサル17社25年春の採用計画、新卒総数59人増/本社調べ

 日刊建設工業新聞社が主要建設コンサルタント17社を対象に実施した人材採用アンケートによると、2025年4月の新卒採用総数(大卒、高卒などすべてを含む)は前年比59人増の計978人となった。技術系は59人増の907人。企業別に見ると前年から増加したのは8社で、実際の採用数が当初の計画値を上回った企業は5社にとどまる。売り手市場が続く中、多くの企業が事業規模の維持・拡大に向け新たな採用方法を取り入れたり、処遇改善に注力したりするなど工夫を凝らす。  調査は1~2月に実施した。前年に続き最多の新卒採用者数を確保した建設技術研究所は「積極的にインターンシップを受け入れた成果が出て採用の裾野が広がった」としている。前年と比べ26人増となったエイト日本技術開発は「50代以上がボリュームゾーンの年齢構成を見直すため、ここ数年若手採用を強化してきた」ことを理由に挙げる。このほか採用総数が増えたのはアジア航測(前年比23人増)、八千代エンジニヤリング(16人増)、ニュージェック(12人増)、日本工営(10人増)、中央復建コンサルタンツ(7人増)、国際航業(6人増)、オリエンタルコンサルタンツ(1人増)だった。  26年4月の新卒採用総数は17社合計で50人増の1028人を計画しているものの、技術系の採用数を回答した12社の合計は32人減の643人と微減となった。背景には「市場に人がおらず必要なスキルを有する人材が集まらない」(建設技術研究所)、「土木やIT分野など特定分野の学生の応募数確保」(いであ)などの課題が影響しているようだ。  このため即戦力となる中途採用を拡大する社も多い。日本工営、八千代エンジ、オリコンサル、アジア航測、長大、いであ、応用地質、日水コン、中央復建コンサルタンツ、オオバの10社が「増やす」と回答。退職者や内定辞退者を対象にした「アルムナイ採用」や、社員から紹介された人材を採用する「リファラル採用」に取り組む企業が目立つ。  処遇改善も進む。大卒総合職の初任給について、日本工営、パシコン、国際航業、オリコンサル、パスコ、長大、いであ、応用地質、中央復建コンサルタンツ、オオバの10社が「引き上げた」と回答。人材獲得競争が激化する中、事業規模の維持や向上に向け人的資本投資を重点化する。 from...

高知県/香美市で新産業団地開発、25年度に実施設計と用地測量着手

 高知県は、香美市土佐山田町楠目で新たな産業団地の開発に乗り出す。2025年度当初予算案に事業費7610万円を計上した。実施設計、用地測量業務を委託する。同市内では高知工科大学に隣接する「高知テクノパーク」(土佐山田町テクノパーク)に続き2カ所目の産業団地となる。  名称は「(仮称)香美楠目産業団地」。想定する開発面積は約7・8ヘクタール。26~27年度に用地を取得後、28年度に工事に着手し、31年度の完成を目指す。香美市は25年度当初予算案に関連事業費5835万円を計上している。県が発注する業務委託費を一部賄う。  人口減少下でも持続的に成長していく商工業の実現に向けた施策の一環。県は安全・安心な工業団地の計画的な開発により、企業誘致の受け皿を確保する。製造業などをターゲットに据えるが、香美市商工観光班の担当によると、水を大量に使う半導体関連の工場は難しいとみている。産業団地の開発は地域の産業振興や雇用の増加、税収増につながるため、県と市が連携しながら事業を推進していく。  高知テクノパークは総面積約11・6ヘクタール。04年4月に分譲を開始した。全7区画のうち6区画を分譲済み。半導体ウエハー搬送用ロボット・液晶ガラス基板搬送用ロボットメーカーのジェーイーエル(広島県福山市)などが立地している。残る1区画(分譲面積5565平方メートル、分譲価格9257万6610円)の早期分譲を目指している。 from...