2017年12月15日金曜日

【回転窓】独創性生み出す知恵

工芸の世界で、東の芸大(東京芸術大学)に対して西の「京芸」と呼ばれる京都市立芸術大学で学んだ人は独創的な作品を生み出すといわれる▼そうした校風に影響を与えたのが陶芸家の富本憲吉。京芸で陶芸を指導した富本は東京芸大の建築学科出身で、卒業後は清水組(現清水建設)に入社したが、建築だけでは飽きたらず、陶芸家に転身した▼建築を学んだだけに優れた意匠家でもあった富本は「模様から模様をつくらず」を信条とし、過去の伝統的な作品の模様を使うことをせず、独創性を追求。時間を見つけては野に足を運び、スケッチを繰り返す中でデザインを練り上げた▼作品のオリジナリティーが問われるのは、アイデアと知恵を売り物にする建築設計事務所も同じ。丹下健三氏は生前、「多くの人々と会い、多くのものを見なさい」と所員に外に出るよう諭していたそうだ▼建築設計各社が、ICT(情報通信技術)や人工知能(AI)を業務に活用してクリエーティブな時間を創出する取り組みに本腰を入れている。本来の仕事である知的生産に力を振り向ける環境をどうつくるか。これも知恵比べである。

【地形判別の高精度化実現】アジア航測、赤色立体地図作成にAI活用

アジア航測は、自社の特許技術である赤色立体地図のデータに人工知能(AI)の深層学習(ディープラーニング)手法を組み合わせた高精度の地形判別技術を開発した。

 新しい技術は、航空レーザーで取得した計測データに含まれる樹木や建物などを自動で除去する「航空レーザーのノイズ除去」と、土砂災害の恐れがある場所を把握できる「土砂災害リスク地形自動抽出手法」の二つ。今後、地形判別の品質向上に役立てる。

 赤色立体地図は、同社の技術者が2002年に航空レーザー計測結果を表現(可視化)するために開発。尾根は明るく、谷は暗くなる地形表現方法を採用した地図で、地面の高低差や細かな凹凸が立体的で鮮明に分かる。

 同社は、高品質な地盤データを求めるため、航空レーザーデータに含まれる樹木や建物などを除去するフィルタリング処理に赤色立体地図を活用しているが、今回はディープラーニングを活用してフィルタリング処理を自動的に行うノイズ除去手法(名城大と共同特許申請済み)を開発。既に一部作業に使い、実用化段階に入っている。

 土砂災害リスク地形自動抽出手法は、地形判読に優れた赤色立体地図とディープラーニングを組み合わせ、災害リスクのある場所を精度よく自動で抽出して見落としやばらつきの減少を図る技術。危険箇所を効率的に漏れなく把握することが可能という。

【デザイン・機能刷新、地域の魅力発信拠点に】銀座線大規模改修、下町エリア7駅が新装開業

 東京メトロが総額500億円を投じて進める銀座線全駅リニューアル事業で、先行して整備を進めてきた上野や浅草など下町エリア7駅の工事(一部残工事を除く)が完了した。14日未明、作業員らによって仮囲いが撤去され、新たなデザインや機能を取り入れた駅舎が姿を現した。=4面に詳細

 上野駅(東京都台東区)のリニューアル工事は近接する日比谷線の駅と一体的に実施。設計はパシフィックコンサルタンツ、施工は大林組が担当した。「美術館のある街」をデザインコンセプトとした両駅では同日から新装したホームや改札、コンコースなどの運用を開始。銀座線側の駅構内には商業施設「Echika fit 上野」もリニューアルオープンした。

 銀座線のJR上野駅方面の改札中央部には、90年前の地下鉄開業当時、上野~浅草間の駅で使われていた回転改札の再現品をモニュメントとして展示。一定時間ごとに音と光に合わせて改札のバーが回転する演出も取り入れ、駅の魅力向上を図っている。


【年明けにも一部地上部が本格化】東京五輪選手村整備(東京都中央区)、躯体施工が進行中

 東京都は14日、2020年東京オリンピック・パラリンピックに備え、中央区晴海で進めている選手村整備の進ちょく状況を明らかにした。

 現場周辺の生活環境に配慮して行っていた掘削土の海上輸送は10月14日までに完了し、計30万m3の土砂を運搬。現在は建築物の地下躯体を施工中で、地上付近まで躯体が構築されてきた街区もある。選手村に付随する仮設施設の整備スケジュールも併せて公表した。

 選手村の建設地は中央区晴海5。都施行の再開発事業として五輪開催までに選手の宿泊施設となる14~18階建ての住宅棟21棟と、商業棟1棟を整備する。五輪後にはすべての住宅棟を分譲・賃貸マンションとして改修するほか、高さ180mのタワーマンション2棟も追加整備する計画だ。

 住宅棟建設のため海上輸送した土砂は、10tダンプで約5万2000台分。躯体工事では、地上で組み立てた鉄筋をクレーンで所定の位置に降ろし、コンクリートを打設する作業などを繰り返している。都都市整備局市街地整備部の担当者によると、年明けには一部地上躯体の工事が本格化する見通し。

 再開発事業の工事発注を担う特定建築者は、三井不動産レジデンシャルを代表とするグループが担当している。住宅棟の工区は五つに分かれ、「5-3」を東急建設(共同設計者=日建ハウジングシステム)、「5-4」を長谷工コーポレーション(同=日本設計)、「5-5」を前田建設(同=三菱地所設計)、「5-6」を三井住友建設(同=日建ハウジングシステム)がそれぞれ施工中だ。

 RC造地下1階地上4階建て延べ2万9500㎡の商業棟を整備する「5-7」では、三井住友建設が既存施設の解体を進めている。本体工事の設計は日建設計が担当し、18年7月にも着工する。5日には、東京労働局を中心とした官民合同の現場パトロールが前田建設の工区で行われ、年末と来年に向けて現場管理者と作業員らが安全意識を高めた。

 五輪期間中には宿泊棟・商業棟に加え、近接する空き地(学校建設予定地)や、晴海客船ターミナルなどに東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の発注で付随施設が仮設される。18年内にはすべての実施設計に着手する。仮設のバス発着場と、晴海客船ターミナルに設ける選手向け利便施設の完成は20年4月を想定。19年3月には仮設倉庫、同12月にはその他の運営施設・利便施設の設置を終える。

2017年12月14日木曜日

【回転窓】北の国から2017

先日、国際線ターミナルを中心に再編・整備事業が進む新千歳空港を取材した。近年の観光需要の高まりを受け、国際線は外国人旅行者が急増しているという▼今年の北海道は、強い寒波の影響で早くも大雪が降っている。その雪を目当てに、夏よりも冬にアジア各国から観光客が押し寄せる。2020年東京五輪までに事業全体を完了させ、1時間当たりの旅客処理能力を倍以上に高める計画だ▼ターミナルビルの増築エリアには、海外からの富裕層をターゲットにした高級ホテルも整備される。空港機能の向上により、五輪後も北の国へ観光需要を呼び込む取り組みが着々と進む▼17年の世相を表す「今年の漢字」に「北」が選ばれた。度重なる弾道ミサイルの発射や核実験の強行といった緊迫化する北朝鮮情勢などが主な理由。北海道関連では、ジャガイモの不作でポテトチップスの販売休止、地元のプロ野球チーム・日本ハムファイターズの大谷翔平選手の大リーグ移籍や清宮幸太郎選手の入団などに注目が集まった▼地政学的リスクは観光だけでなくさまざまな産業に影響を与える。来年1年が平穏でありますように。

【複合スポーツ施設に生まれ変わるよ】本牧市民プール再整備PFI(横浜市中区)、19年度に事業者公募

横浜市は老朽化した本牧市民プール(中区本牧元町46の1)をBTO(建設・移管・運営)方式のPFI事業で再整備する。

 19年度に民間事業者を公募する。20年度に設計、21年度に工事を進め、22年度の供用開始を目指す。事業費総額は約30・9億円と試算している。

 本牧プールは敷地面積2万2765平方メートル。1969年に完成し、老朽化により現在は使用を停止している。施設は大プール(148メートル×44メートル)、児童プール、幼児プール、スライダー(長さ20メートル、15メートル)など。15年度の利用者数は7万3325人だった。

 再整備を見据えて16年には民間事業者との対話を実施。夏季以外の利用も含めたスポーツ・レクリエーション施設としての再整備を検討してきた。レストラン、フィットネス施設などの民間施設を併設する一体的な再整備を想定している。

 事業費算出の前提として想定する施設規模は、プール(水面積)約2900平方メートル(流水プール、スライダー、子どもプール、幼児プール、25メートルプール)。プールサイド約7500平方メートル。管理棟など約2000平方メートル(更衣室、事務室、飲食店、売店など)。事業期間は指定管理方式で20年を想定している。

【110年の歴史を16分に凝縮】住友大阪セメント、会社紹介動画を公開

ドローンで撮影したセメント工場㊧と石灰石鉱山
(住友大阪セメントの会社紹介動画より)
住友大阪セメントは、110年に及ぶ会社の歴史や生産拠点などを紹介する動画をウェブサイトで公開した。豊富な写真や動画を用い、セメント関連事業と高機能品事業の2分野について説明している。

 同社のセメント関連事業は、高品質なセメントを安定的に供給する事業と、良質な石灰石資源を扱う鉱産品事業、社会インフラの補修に貢献する建材事業などで構成。高機能品事業は、光通信技術を活用した光電子事業、ナノ粒子の特性を生かした新材料事業、リチウムイオン電池用の正極材料を開発・製造する電池材料事業から成る。

 サイトではこれらの事業を視覚的に説明。セメントを中心とした素材の供給を通じ、人々の暮らしを支えてきた同社の歴史が分かる内容となっている。動画は同社ウェブサイトYouTubeまで。

【建設現場の合理化へ新サービス展開】コマツ、米NVIDIA社とAI導入で協業

 コマツは13日、米NVIDIA(ジェンスン・ファン社長兼最高経営責任者)と協業し、建設現場への人工知能(AI)導入に向けた研究開発を行うと発表した。

 AIで地形図作成などの作業や安全管理を合理化する。まずは、NVIDIAの画像処理ユニット(GPU)で現場の3次元画像データから速やかに地形図を作成するサービスを18年2月に開始。将来的には現場の画像データをAIに分析させ、車両の最適な稼働や作業者の安全確保を提案・警告する技術の開発を目指す。

 ICT(情報通信技術)で施工を管理するコマツの「スマートコンストラクション」の稼働現場で複数のAI技術を実用化し、施工や安全管理を合理化する。

 来年2月には、NVIDIAの画像処理ユニット(GPU)を、全国に4000カ所以上あるスマートコンストラクションの現場に導入。20分程度で3次元データから地形図を作成するサービスを提供する。

 来年度以降、両者の知見・技術を融合させた複数の新たなサービスを提供する。具体的には、ダンプトラックによる土砂積み降ろしの様子や、車両と作業者の接触事故発生状況などを撮影した画像データをAIに分析・学習させ、作業の効率化や事故抑止につなげる。

 コマツは、建機などの運転席から周囲を360度見回せる画像提供システムの実用化なども視野に入れている。

 両者の協業により、少子高齢化と熟練工の減少で労働力不足にあえぐ国内の建設現場で、省力化・省人化の技術開発が大きく前進する可能性がある。コマツは「将来的に、AIが現場監督業務の一部を代行するようになる可能性がある」(コーポレートコミュニケーション部)としている。

【清水建設ら12者が101億円出資】ispace(東京都港区)が月探査計画始動、着陸船開発へ

 資源探査などの宇宙開発を手掛けるベンチャー企業のispace(東京都港区、袴田武史代表取締役)は13日、月着陸船を独自開発し、月の周回と月面着陸に挑む計画を発表した。

 民間では国内初の試みで、産業革新機構や清水建設など計12の機関投資家・事業会社が101.5億円を出資。2019年末までに月の周回軌道へ投入して軌道上から月探査を実施した後、20年末を目標に月面に軟着陸して探査ロボットで月面探査を行う予定だ。

 同日、東京都内で記者会見した袴田代表取締役は「宇宙では特に水が最も重要な資源となる。月面で水資源を開発するには、まず水資源を見つけないといけない。それが探査だ。高頻度で安定的な月面への輸送サービスを構築し、さまざまな探査を可能にしていく。月面着陸技術を確立し、21年以降は商業的な月面輸送サービスを開始したい」と意気込みを語った。

 開発する月着陸船には、探査ロボを2台積むことが可能。探査ロボには観測装置やさまざまな物資を搭載し、月面上のさまざまな場所でビジネスを展開することを想定している。月面上で得られる画像や情報などを活用したデータビジネスも展開していく。

 清水建設など事業会社には、月探査ミッションを通じてさまざまな共同プロジェクトに参加してもらい、事業パートナーとしてサポートしてもらう予定という。

 同社によると、2040年には、月に1000人が住み、年間1万人が訪れ、建設、エネルギー、鉄鋼、通信、運輸、農業、医療、月旅行など月の水資源を軸とした宇宙インフラが構築されると見込む。プロジェクトのイメージ動画はYouTubeで公開している

2017年12月13日水曜日

【竜宮城がお色直し】小田急電鉄、片瀬江ノ島駅の改良工事実施

小田急江ノ島線の片瀬江ノ島駅(神奈川県藤沢市)を改良するプロジェクトが始動する。

 長年親しまれてきた竜宮城の外観イメージを残しながら、コンコースの拡大やトイレの全面リニューアルなど、より便利で快適に駅が利用できる環境にする。

 デザインは小田急エンジニアリングと菅野企画設計が担当。清水建設の設計・施工で2018年2月に着工する。完成は2020年5月を予定。東京オリンピックの開催前に供用を開始し、新しい竜宮城で国内外から江の島を訪れる観光客らを迎える。

 現在の駅舎は1929年4月に開業した。竜宮城をイメージしたデザインが特徴で、1999年には運輸省(現国土交通省)による「関東の駅100選」に選ばれている。供用から長い年月が経過し、建物が老朽化している上、駅舎内の設備に機能不足が見られることから、全面的なリニューアル工事を実施する。

 駅舎の外観は竜宮造りと呼ばれる神社仏閣の建築技法を採用して建設し、デザイン性を高める。ホーム上の屋根は半透明のテント膜を使ったもの変更し、自然光を採り入れ明るい空間にする。ホームと駅舎の屋根は連動性を持たせる。

 コンコースは現状から25%広くして駅構内の回遊性を高めるとともに、イベント開催時でも人の流れがスムーズになるよう工夫する。トイレは男性用、女性用共に個室数を増やすほか、現在1カ所の多目的トイレを男女トイレ内にそれぞれ設ける。女性向けにパウダーコーナーも新設する。

 駅の建物概要は敷地面積1305㎡、2階建て延べ936㎡。工期は18年2月~20年5月。片瀬江ノ島駅の平均乗降客数は2016年度で1日当たり2万1440人だった。

【回転窓】最後の「平成」カレンダー

大型書店で2018年のカレンダーが並べられた特設コーナーを見て、その種類の多さに改めて驚かされた。壁掛けと卓上のタイプごとにさまざまなデザインがあり、時間が許せばいつまで見ていても飽きることがない▼デザインは風景や動物、植物、アニメ、芸能人などが定番といったところか。2カ月分の暦が一緒に見られるタイプも便利でよさそう▼建設会社が制作するカレンダーで多いデザインは自社で施工した構造物や建築物、あるいは工事中の写真。どういったプロジェクトをどう撮影してアピールするか。新しいカレンダーを頂くと、企画から制作まで携わる担当者の苦心がうかがえるようだ▼政府は8日、天皇陛下が退位される日を19年4月30日と定めることを決めた。翌5月1日に施行される新元号は、官民のシステム改修や印刷物など国民生活への影響を最小限に抑えるため18年中に公表する方針だという▼とすれば「平成」だけの元号を記したカレンダーは18年版が最後になるかもしれない。「平成」を回顧するには少し早いが、今のうちからお気に入りのカレンダーを“保存版”に決めておくのもいい。

【細分街区を一体開発】新虎通り沿い初弾プロジェクト、ビル名称「新虎通りCORE」に

 森ビルと大林新星和不動産は、東京都港区の新虎通り(環状2号線)沿いに建設中の複合ビル「(仮称)新橋四丁目計画」の名称を「新虎通りCORE」に決めた。

 細分化した街区を一体的に開発する新虎通り沿いでの初弾事業。多くの開発事業が計画されている新虎通りのリーディングプロジェクトとなる。設計・施工は大林組が担当。16年8月に着工しており、このほど上棟した。18年9月の竣工を目指す。

 建設地は新橋4の1の1ほか(敷地面積1524平方メートル)。新虎通りと日比谷通り(都道409号線)に面する。敷地の西側が大林新星和不、区道を挟んで東側が森ビルの所有地だったが、区道を廃止することで敷地を一体化し、開発を進めている。建物はS一部SRC造地下1階地上15階塔屋1階建て延べ1万7434平方メートルの規模。高さは75メートルとなる。

 地上1階にはイベントスペースを設け、新虎通りににぎわいをもたらす情報発信の場を提供。商業施設が地上1~2階に入る。3階には共用の会議室や小規模なオフィスなどのインキュベーションスペースが入り、ベンチャー企業への支援の場となる。4~14階のオフィスには、クリエーターへの支援などを手掛けるクリーク・アンド・リバー社(東京都千代田区、井川幸広社長)と同社のグループ企業が入居。最上階には屋上庭園を設ける。

 入居テナントのBCP(事業継続計画)にも配慮。地震対策として粘性系と摩擦系の2種類のダンパーを採用したほか、非常用電源としてディーゼル発電機を備える。

【山梨県、専スタ実現へ一歩】総合球技場基本計画策定業務の発注手続き開始

山梨県は「山梨県総合球技場基本計画策定業務」の委託先を選定するためのプロポーザル方式の手続きを開始した。

 参加表明書は25日まで総合政策部政策企画課リニア環境未来都市推進室総合球技場担当で受け付ける。18年1月10日に参加資格審査の結果を通知する。提案書の提出期限は同1月30日。同2月下旬に審査を行い、同3月上旬にも業務委託予定者を選ぶ。

 参加資格は県の設計で「建築一般」または物品等で「調査・研究」に登録があること。サッカー場・陸上競技場などで観客席(固定席)1万席以上の施設の計画・設計業務を行った実績も求める。業務の履行期限は19年3月15日。予算上限額は17、18年度合計で1950万8000円(税込み)。

 業務では、県が9月に策定した「山梨県総合球技場基本構想」を踏まえ、施設の具体的な整備内容や管理・運営方法などを調査・検討。球技場の規模や収容人員、ゾーニング、PFI導入の可能性なども検討する。建設予定地は甲府市小瀬町の小瀬スポーツ公園周辺(現第3駐車場)で、収容人数は2万人程度を想定している。

 基本構想によると球技場の規模は190メートル×150メートルで、現第3駐車場(245メートル×135メートル)の敷地に加え、新たな用地取得が必要になる。サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールなどでの利用をメインにする。イベント開催などにも活用し、付帯施設として会議室や飲食・物販施設などを設けることを検討する。防災機能も備える。アクセス強化として新山梨環状道路の「(仮称)落合東IC」を整備する計画。

 概算建設費は80億~140億円程度。PFIの導入に加え、ふるさと納税の活用、ネーミングライツ(施設命名権)や太陽光発電の導入なども検討する方針。具体的な整備スケジュールは基本計画で決定する。

【映像技術駆使し空間演出】DMM.com、沖縄県豊見城市に水族館開業へ

 デジタルコンテンツの配信事業などを手掛けるDMM.comは12日、沖縄県豊見城市で「DMMかりゆし水族館(仮称)」を開業すると発表した。

 通常の水槽展示に加え、最新の映像技術を駆使した多彩な空間演出を展開し、生物の多様性や独自性を体感・学習できる施設とする方針。設計・監理は大建設計が担当。施工者は決まっていない。19年上半期の着工、20年上半期の竣工・開業を予定。初年度の入場者数の目標を210万人と設定している。

 計画地は、大和ハウス工業が美らSUNビーチ隣接地で開発予定のショッピングセンターの敷地内(豊崎3)。那覇空港から車で約20分、専用シャトルバスで約30分圏内に位置する。

 大和ハウス工業が開発する建物(S造3階建て)の1~2階部分(延べ8066平方メートル)をDMM.comが借り受けて水族館を運営する。

 同水族館では実際の海洋生物の展示と最新映像技術を組み合わせ、リアルとバーチャルが融合した海洋体験を提供する。

 具体的には最新の視覚表現を活用し、季節や時間の変化、沖縄の澄んだ海や亜熱帯気候が織りなす美しい自然などを味わえる空間演出を実現する。

 海洋生物以外にも、沖縄地方を中心としたさまざまな動植物と触れ合える「インタラクティブ体験」もできるようにする。開発中の技術や特許技術などがあるため、導入技術の詳細は公表していない。

 同水族館が完成すれば沖縄県内2カ所目の水族館となる見込み。DMM.comは、同水族館の開発・運営に当たり、県内での水族館運営に知見がある企業と技術提携に向けて協議している。

【民間事業者の取り組み後押し】外航クルーズ船受入拠点整備、投資補助第2弾に9港12地区

国土交通省は、外航クルーズ船の受け入れに必要な港湾の設備投資費用を補助する「国際クルーズ旅客受入機能高度化事業」の第2弾として9港12地区の事業を採択した。

 地方自治体や民間事業者が取り組む旅客ターミナルの設備改修や屋根付き通路の新設などにかかる費用の3分の1を補助する。第2弾事業の補助額の合計は国費で約1億43百万円、事業費で約4億29百万円となる。

 外航クルーズ船の受け入れ拠点整備は国の成長戦略として推進中。政府はクルーズ船で来日する年間の外国人旅行者数を2020年に過去最高だった16年(約199万人)の2・5倍となる500万人にまで増やす目標を掲げる。今回の補助事業は具体策の一つに当たる。

採択された9港12地区の事業概要は次の通り。▽港湾名(地区名)=〈1〉事業主体〈2〉整備施設〈3〉補助額(国費、事業費)。

 ▽秋田港(本港地区)=〈1〉秋田県〈2〉待合施設〈3〉国費9百万円、事業費27百万円

 ▽仙台塩釜港(石巻港区雲雀野地区、大手地区、中島地区、仙台港区中野地区)=〈1〉宮城県〈2〉移動式照明〈3〉80万円、2・4百万円

 ▽横浜港(新港ふ頭地区)=〈1〉新港ふ頭客船ターミナル〈2〉駐車場〈3〉約25百万円、約74百万円

 ▽金沢港(南地区)=〈1〉石川県〈2〉駐車場〈3〉約28百万円、約83百万円

 ▽四日市港(霞ケ浦地区)=〈1〉四日市港管理組合〈2〉大型テント〈3〉1・5百万円、4・5百万円

 ▽神戸港(新港地区)=〈1〉神戸市〈2〉旅客上屋等〈3〉40百万円、1億20百万円

 ▽厳島港(胡町地区)=〈1〉広島県〈2〉屋根付き通路〈3〉32百万円、96百万円

 ▽徳島小松島港(赤石地区)=〈1〉徳島県〈2〉貨客分離フェンス〈3〉4・6百万円、約14百万円

 ▽八代港(外港地区)=〈1〉熊本県〈2〉駐車場〈3〉約2・7百万円、8百万円。

【提携紙ピックアップ】建設経済新聞(韓国)/BIM適用対象を段階的に拡大

調達庁は、20年までにBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)適用対象を段階的に拡大する。11月23日に開かれた「ビルディング・スマート・カンファレンス2017」で、基調講演者として出席した調達庁施設事業企画課のシン・ドンホン事務官が「調達庁施設事業BIM適用現況」を発表。BIMの活用度を高め、支援方策も増やすとした。

 20年までに300億ウォン未満は中間設計と実施設計、300億ウォン以上は設計公募までBIMを適用する計画。「施設事業BIM適用基本指針書」も大幅改定する方針で、内容は△計画、中間、実施設計、施工段階におけるBIM要求水準の改善△BIMデータ作成・活用基準の改善△BIM業務遂行計画書テンプレートなど各種テンプレートの改善△「BIM適用基本指針ガイドライン」の作成。

 シン事務官は「来年作成される予定のBIM適用基本指針ガイドラインは、設計の協業を支援するため、建築、構造、機械、電気分野の設計と見積もりに関する内容が含まれるだろう」と説明した。

CNEWS、11月24日)

【提携紙ピックアップ】セイ・ズン(越)/ハノイ北部でスマートシティー着工へ

ハノイ市北部にスマートシティー建設を計画している住友商事とBRGグループが、2018年第1四半期に工事に着手する予定であることが分かった。
 ニャッタン・ノイバイ間高速道路の沿道地区は、5区を段階的に開発されることが決まっている。

 住友・BRGグループは、10億ドルを投資して73haの第1期開発を担当する。計画中のハノイ都市鉄道2号線が全区域をつなぐ予定だ。コンサルタントの日建設計が現在第1期の詳細な設計を調整している。2社は12月中に、ハノイ市人民委員会に設計案を提出し、承認を求める。同委員会はプロジェクトに全面的に協力する考えで、事業がスムーズに推進されるよう環境整備に努めるとした。

セイ・ズン、12月11日)

2017年12月12日火曜日

【回転窓】「老後指南書」の隆盛

出版取り次ぎ大手の日本出版販売(日販)とトーハンが先日発表した今年のベストセラー。総合1位は、ともに佐藤愛子著『九十歳。何がめでたい』(小学館、16年8月発売)だった。発売からの累計発行部数は105万部というからすごい▼〈身体に次々に起こる「故障」を嘆き、時代の「進歩」を怒り、悩める年若い人たちを叱りながらも、あたたかく鼓舞〉(版元の宣伝文句から)する痛快なエッセーだそうである。老いてますます盛ん、と言っては失礼か▼書店をのぞいても、新聞の出版広告でも、最近は高齢の有名作家などが書くエッセーの類いが随分と目に付く。どれも宣伝文句から先は読んだことがないが、「老後人生の指南書」とでもいえようか▼人生80年、90年が当たり前の時代。長い老後をどう生きるべきか、ある種の指針を求める高齢者やその予備軍が大量にいることが、こうした本が受ける背景かもしれない。出版社もそこを大いに意識しての販売戦略だろう▼本が売れない、町の本屋が無くなるなどと出版不況が深刻な折、老後指南書のヒットは結構なことではあるが、何か少し物足りない気もする。

【技・人づくり】東和(埼玉県川越市)/ベテラン職人が徹底指導

 ◇高卒者定期採用、内部研修で即戦力に◇

 内装工事の東和(埼玉県川越市、石田信長社長)が高卒者の定期採用を始めてから6年が経過した。

 毎年4月に入社する新卒者が現場に配属されるのは8~9月。その間、ベテラン職人が軽量鉄骨ボードなどの内装工事の基本を徹底指導する「東和アカデミー」で即戦力の人材に鍛え上げる。来年4月で設立44年。技術を売り物にしてきた同社の「技」を若手につなぎ、さらなる飛躍を目指す。

 埼玉県を中心に主に北関東エリアでゼネコンの下請施工を手掛ける同社は、労務の多くを2次下請に外注する。ただ、2次下請には規模の小さい会社が多く、技能者の処遇改善もなかなか進まないため、人手を確保するのに苦労していた。

 「このままでは技能を継承していけなくなる」。そんな危機感から、同社が直接採用する形で高卒者の募集に取り組むことを摸索。8年ほど前から高卒者の定期採用を目指し、県内の高校に求人票を出し始めた。石田社長のつてで北海道松前町も毎年訪問。働き手の確保に力を注ぐ。採用人数には波があるが、毎年数人を確保。来春入社の内定者2人を含め、これまでに25人を採用した。中には職人を目指して入職した女子社員もいる。

 協力会社は80社ほどで、同社が施工に携わる現場には日々150~200人が従事する。4月に入社した社員はまず、各現場を回って軽鉄ボード、クロス、床などの作業を手伝いながら一通りの仕事を体験。その上で5月中ごろから富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)で3週間にわたる合宿生活を行い、内装の基礎を学ぶ。

 同センターでの研修後は、本社倉庫の架台を利用した実践的な内部研修が待っている。「アカデミー」と称する研修の講師は同社のベテラン職長などが務め、▽壁ボード貼り基礎▽LGS(軽量鉄骨)施工基礎▽LGS・ボード初級▽GL(石膏ボード直張)工法基礎▽石綿吸音板仕上げ▽点検口取り付け作業▽復習・まとめ-を合計273時間にわたって実施。即戦力として現場作業ができるよう育て上げる。

 「手探りで行ってきた育成の取り組みがようやく形になってきた」。石田社長の実弟で、採用業務を担当する石田信次常務はそう話す。定期採用組のトップはまだ20代前半。技能伝承の効果が見えてくるのはこれからだが、確実に人材が増えつつあることに一定の手応えを感じているという。

 新卒者を定着させることを意識し、積極的な声掛けにも心を配る。現場に直接出向くことが多い彼らが月に1度は会社に集まる場を設け、社長も食事に誘うなどしてコミュニケーションを取りやすい雰囲気をつくる。

 「技術の東和」を標ぼうする同社。一定の実務経験積んだ人材には技能検定試験の受験も奨励し、過去に合格した先輩がアドバイスする受験対策指導や現地トライアルにも出向かせる。資格を取得すれば、職務手当が支給され、「本人のやる気も見違えるように変わってくる」(石田常務)という。

【記者手帖】人と機械が助け合う現場

先日の本紙に、ICT(情報通信技術)活用工事のモデル現場で、作業時間短縮と精度向上の効果が確認できたとの記事が掲載された。ICT建機の活躍によって丁張りの設置が不要になり、120m2の作業時間が従来より11分短くなったという◆最近読んだ小説に、10分は「インスタント食品ができあがり、食べ終わって片付ける程の時間」という一節があった。時間のゆとりは心のゆとりにつながるだろう。心にゆとりが持てれば、焦りに起因する労働災害も減らせるのではないか◆ある現場で、ICT建機を導入しながら丁張りが設置されているのを見たことがある。「GPS(衛星利用測位システム)が不安定な時がある。品質確保のために、現段階では丁張りを外せない。もっと精度が上がれば、不要になる日が来るかもしれない」と現場代理人が話していた。手間と時間をかけても質の高いものをつくりたいという技術者のこだわりが垣間見えた◆人と機械が共に仕事をする時代。両者がうまく共存し、互いに助け合ってより良いものをつくる現場の実現を期待したい。(岩)

【技・人づくり】春日基礎(東京都豊島区)/職人の健康に手当て支給

 ◇体脂肪率平均以下や禁煙にも◇

 首都圏で鉄道関連の杭打ち工事を手掛ける春日基礎(東京都豊島区)の齋藤貢司社長は、職人の健康を人一倍大切に考えている。年齢上昇に伴う疾病リスクの増大は否めない。そうした中でも現場作業を滞らせないよう、健康状態や禁煙に対応した手当を毎月の給料に上乗せし、健康維持や意識の醸成に役立てる。数年前に始めた取り組みの成果で禁煙者も増え、職人の意識も変わり始めている。

 ヘビースモーカーだった社員の職人が心筋梗塞になったことをきっかけに齋藤社長は、「病気になれば当然本人は辛いし、家族も心配。会社にとっても現場が滞るなどの影響が出る。何とかしないと」という思いから効果的な対策を摸索した。

 「仕事をするためには体が基本。健康を維持している社員に待遇で報いよう」というアイデアが浮かび、体脂肪率が平均値以下で、もともとたばこを吸わない人と自己申告で禁煙した時に手当を支給することにした。健康を維持しながら、社会にも貢献できるとして、献血時に調べる健康状態に応じた手当も用意した。

 特に禁煙手当を始めてからは、たばこをやめる社員が増加するなどの効果も出ている。「医学的にはどうか分からないが、10年後、20年後と長い目で効果を見定めていきたい」と齋藤社長。中小企業向け格付けを連続で取得するなど、良好な財務内容をバックボーンに、健康に対する手当の支給はしばらく続けていきたいという。

 同社は来年1月に設立50周年を迎える。社員は現在36人。齋藤社長と事務、機材担当などを除いた31人が技能工として働き、常に6~7班がどこかの現場で杭打ち工事に携わっている。

 前期6億80百万円だった売上高は、連続立体交差や首都圏での相互乗り入れといった大型鉄道工事に伴い、次の決算では9億円に伸びる見込みだ。

 毎年の定期採用で同社に入る新入社員は、加盟する全国基礎工事業団体連合会(全基連)や建設機械メーカーが催す外部講習会を経て現場に配属。見習いとして働きながら道具や機械の名前を覚えながら、OJT方式で現場での作業を習得していく。仕事を一通り覚えるのに現状では7~8年かかっているが、「本音を言えば、この期間をもう少し短くしたい」(齋藤社長)。

 技能工は基本的に自宅から現場に出向き、仕事が終わればそのまま帰宅する直行直帰のスタイルだが、月に1度は池袋の本社に全員が集まり、安全施工のための会議を開く。全基連や建設業労働災害防止協会(建災防)から提供されるイラスト入りの事故事例集などを見ながら、どうすれば事故を防げるかを全員でディスカッションする。

 仕事に必要な各種資格の取得費用はすべて会社持ち。今後、「2級土木技術検定の取得を必須とし、1級土木を職長になる条件にしようと思っている」と齋藤社長。現場でゼネコンの技術者とできるだけ対等な立場で話をするためにも、資格取得が重要になると考えている。

2017年12月11日月曜日

【回転窓】本物の体験を思い出に

先日、久しぶりに都内屈指の観光スポット浅草を訪ね、国内外の観光客でにぎわう下町の活気を味わった。すれ違う人の多くが外国人で、旺盛なインバウンド(訪日外国人旅行者)需要を目の当たりにした▼今年の訪日旅行者数は11月4日時点で昨年の2404万人を超え、足元も順調に伸びているようだ。2020年までに4000万人、30年までに6000万人という目標を達成するためにも受け入れ環境の整備を急がなければならない▼世界では旅行の形態が団体旅行から個人旅行へ、消費がモノからコトへと移行しているという。国土交通省は「楽しい国・日本」の実現を目指し、観光資源の体験メニュー拡充や体験満足度向上のための方策を検討中。来年3月に提言をまとめる▼インバウンド需要を地域に呼び込むには、外国人が訪れたくなる地域を目指して魅力を磨くこと、併せて交通利便性の向上や公共交通ネットワークの構築も欠かせないだろう▼寒空の下、浅草の街を夏の浴衣で闊歩(かっぽ)する外国人の姿には驚かされた。気軽に日本文化に触れる機会を増やし、本物の体験を日本の思い出として持ち帰ってほしい。

【本館大屋根改修、中道場棟増築も】東京都、日本武道館増築・改修アセス評価書案公表

改修・増築後の完成イメージ㊤と現在の日本武道館
東京都が2020年東京五輪に合わせて計画している日本武道館(千代田区北の丸公園2の3)の改修・増築工事の概要を明らかにした。本館の大屋根などを改修するとともに、「中道場棟」と呼ぶ延べ3070平方メートルの練習道場を増築する。中道場棟は18年度の着工、19年度の竣工を目指す。本館改修の工期は19~20年度を想定している。

 改修・増築工事の発注は公益財団法人の日本武道館が担当する。本館を含む計画地の範囲は1万6180平方メートル。現在の本館は地下2階地上3階建て延べ2万1133平方メートル(最高高さ42メートル)の規模。防火性や避難の安全性の向上を目的に、大屋根・設備の改修、天井の耐震化、バリアフリー化などを行う。改修後の規模は延べ2万1460平方メートル(最高高さは同じ)となる見通し。
改修・増築後の日本武道館施設位置図
(実施段階環境影響評価書案より)
既存の練習施設だけでは、五輪の参加選手の人数に対応できない恐れがあり、本館南側の敷地に新たな練習道場として中道場棟を増築する。SRC一部S造地下1階地上2階建て延べ3070平方メートル(最高高さ8メートル)の規模とする計画で、事務所、食堂・ホールなども配置し、地下通路で本館と接続する。埋蔵文化財調査に必要な準備工事には既に着手している。

 改修・増築の計画概要は、都オリンピック・パラリンピック準備局が環境局に提出した実施段階環境影響評価書案で明らかになった。評価書案の作成に必要な調査などは日本工営が担当した。日本武道館によると、改修・増築の基本・実施設計は、現施設の設計を手掛けた山田守建築事務所が受託している。

 日本武道館は1964年に完成し、同年開催の東京五輪で柔道の競技会場となった。20年東京五輪では五輪種目の柔道・空手、パラリンピック種目の柔道の試合が行われる。

【凜】東京都建設局河川部防災課・坂井智美さん


 ◇水害から地域守る使命を実感◇

 3年前から、台風や集中豪雨などが発生した際の水防情報の収集・発信業務に当たる部署の一員に。「都の送る情報が、区市町村の避難勧告などの判断に直結する。降雨の多い時期は毎日が緊張の連続」とこれまでの経験を振り返る。

 日々の情報収集は、東京都水防災総合情報システムや河川の監視モニターなどを集約した防災対策室で行っている。川の監視は24時間体制。災害時に取り扱う情報量も膨大で、「情報処理の速さと正確性は組織運営に不可欠。雨や水位の状況によっては、事務所も含め200人規模で監視する場合もある」という。

 今でこそ、業務全体の流れを把握し、主体的に対応できるようになったが、初めは上司や先輩の対応に付いていくので精いっぱいだった。自分の考えや意見に自信を持てるようになったのは3年目に入ってから。「まだ完璧ではないし、重圧は変わらない。それでも、地域の安心・安全を守ることがどういうことか、実感を持って過ごせている」。

 いつかは河川工事の現場監督も担当したいと考えている。水防業務を通じ、良い川づくりにはソフト・ハードどちらの対策も重要だと強く感じたからだ。「人と自然と川。その組み合わせが好きだし、魅力的だと思う。現場の視点や考えをもっと学びたい」。目の前の課題や困難をステップに、河川のスペシャリストを目指す。

 (防災総括担当主事、さかい・ともみ)

【中堅世代】それぞれの建設業・186

担い手確保に向けた取り組みが本格化している
 ◇お金と時間惜しめば人は育たない◇

 東日本大震災からの復興や2020年東京五輪の開催決定などで建設業の事業環境は一変。ゼネコン各社は首都圏を中心に、施工体制を維持できる上限まで手持ち工事を増やし、フル稼働している。

 そうした建設現場の最前線に職人を送り込む専門工事業が担い手の確保に苦労している。四国でとび工事会社を営む井口大志さん(仮名)は、「例年5~6人、多い時は7~8人採用してきたが、今年は1人しか採れなかった」とこぼす。

 専門工事業者は元請のゼネコンに比べてネームバリューが低い。建設業に付きまとうマイナスイメージの3K(きつい・汚い・危険)も重なり、人がなかなか集まらないのが実情だ。今は多くの産業が人手不足。労働条件をてんびんに掛けられ、異業種に引き抜かれるケースも少なくない。

 井口さんの会社が手掛ける現場で働く下請の職人が、昨年、今年と1人ずつ辞めていった。職人の多くは日給制。仕事がある時は稼げるが、連休や盆・正月で休みが増える5、8、1月は稼ぎが極端に落ちる。「収入の不安定さを家族が心配し、製造業の会社に移った」という。

 待遇や労働環境を改善しないと、人は入ってこないというのが業界の共通認識。担い手確保に向けた取り組みの一つが「働き方改革」だ。社会保険加入、月給制への移行、週休2日の確保など、他産業では当たり前とされる環境の整備が本格化しており、国の施策も後押しする。

 井口さんの会社では、幹部が手分けして工業高校などを回り、就職指導の担当教員にPRする。ただ、せっかく採用できても、3年以内に辞められると、出身校からの推薦が得られなくなる。「3年間は大事にするが、丁寧に扱い過ぎると職人として物にならない」とも。入社年次が同じメンバーでつくる同期会に毎年5万円を支給している。同期の絆を深めてもらうのが狙いだ。「旅行に行こうが、ゴルフをしようが構わない。金と時間を惜しむと人は育たない」。

 協力会社が3年前、新入社員の出身校のラグビー部にボールを20個寄付した。1個5000円で全部で10万円。その効果もあったのか、次の年から1人ずつ入社が続くようになったという。

 同業者が集まるとよく話題になるのが、建設現場で働く人が事件を起こした時の新聞やテレビの報道。一般の会社員と異なり、「建設作業員」や「土木作業員」と表現される。「業界全体に対するネガティブな印象を与える。本当にやめてほしい」と意見が一致する。

 地元の警察署で、「警察は上下関係が厳しいから、若い人は入ってこないのでは」と聞くと、「応募が山ほどある」と言われた。警察を舞台にしたテレビドラマや漫画が多く、それに影響されて就職を希望する人が多いという。「建設業もそうしたイメージ戦略が必要だ。正々堂々、胸を張って土木、建築をやりたいと言える環境にしないといけない」。

【サークル】鉄建建設 鉄建チャリダー倶楽部

 ◇初心者から上級者まで、安全第一で楽しく◇

 菊地眞取締役専務執行役員土木本部長が会長を務め、総勢29人で構成する会社公認の部。きっかけは、部長の小菅三雄土木本部土木部課長が14年2月に社内外の自転車好きの有志と共に結成した「チーム月輪」。社内からの参加が徐々に増え、会社が社内クラブ活動を奨励するようになった同12月に14人で倶楽部を立ち上げた。

 「交通マナーの順守」と「安全第一」をモットーに、内勤や現場の社員、女性社員と初心者から上級者まで幅広い層がサイクリングを楽しむ。

 各メンバーの提案で荒川や江戸川、多摩川、相模川沿いのサイクリングロードを中心に毎月開く走行会のほか、花見ツーリングやヒルクライム、グルメツアーといった季節に応じたイベント、交通マナーやメンテナンスの講習なども実施。時にはチーム月輪と一緒に走るなど、社外との親睦も深めている。

 課題は首都圏以外での活動。メンバーの加古昌之さん(土木本部リニューアル推進部)は「転勤者には地方での活動を呼び掛けている。今後は地方にも出掛けて交流を図っていきたい」と活動拡大に意欲を見せる。

【駆け出しのころ】ケミカルグラウト専務取締役環境地盤改良本部長・米田国章氏

 ◇技術と品質に自信を持つ◇

 北海道で生まれ育った私は5人兄弟末子の三男です。長男は建築を学んでゼネコンに、次男は父と同じ大工の道に進みました。父は寺などの歴史的建造物を手掛ける大工でした。私がまだ小さかった頃、家の近くの現場で夜遅くまで仕事をしている父のところに、母がこぐ自転車の後ろに乗ってよく夕飯を届けに行ったものです。

 大学で土木を勉強し、教授の推薦を頂いて就職したのがケミカルグラウトです。設立からまだ十数年という若い会社でした。当時、会社の事業は薬液注入が全盛期にありましたが、私は入社してすぐ、「ジェットグラウト(高圧噴射撹拌(かくはん))工法」を手掛ける工事課に配属されました。今でこそジェットグラウト工法は会社の主力となっていますが、当時は開発されてから間もない時期で、その部署も社員がわずか10人しかいない弱小の組織でした。

 ここでは現場で何かトラブルが起きると、スタッフたちが必ず集まり、原因や対策を協議するのが日課でした。手戻りと手直しを二度と繰り返さないことが目的です。上司や先輩たちの情熱はすごく、新人の私も新しいことに挑戦しているという気概を持つことができ、大変良い勉強になりました。ジェットグラウト工法の適用実績がどんどん伸びていく時期とも重なり、毎日の仕事が面白く充実していました。

 国内の地盤改良工事に長年携わり、40代後半からは台湾で支店の立ち上げと地盤改良工事、ブラジルでの現地法人の立ち上げと運営などにも携わりました。こうした海外での経験も大変に貴重なものとなっています。

 構造物を造るのと異なり、私たちの仕事は地下の地盤改良ですから、施工している時は形としての成果を見ることができません。地盤改良を終えた後、トンネルの掘削が始まるなどした時に初めて成果が分かります。そういう目に見えないところでいかに品質を確保するか。ここに私たちの技術と過去の経験に基づくノウハウがあります。

 「さすがケミカルグラウト」。私がお客さまから言って頂ける言葉の中で一番うれしいものです。同業他社と比べて「さすが」と言われ、自らも「うちの技術は最高です」と言えるようになるには、いろいろな知識を身に付け、自信を持たなければなりません。

 “技術立社”を目指す会社として、若い人たちにもそうした気持ちでいろいろな経験を積んでいってほしいと思います。そういった意味で、最近は課長クラスの頑張りようを見て大変に頼もしく思っています。この世代は、私たちがそうであったように、自分たちの技術と品質に自信を持っています。これからも積極的に行動していってくれるでしょう。

 (よねだ・くにあき)1976年千葉工大工学部土木工学科卒、ケミカルグラウト入社。取締役技術本部副本部長兼ブラジル現地法人担当、常務技術本部長などを経て、17年6月から専務環境地盤改良本部長兼福島主張所長兼海外調査室長兼台湾支店長。北海道出身、63歳。
新入社員の頃、作業所で撮影した一枚
(2列目右から2番目が本人)