◇壁面再現し経過観察
広島市は6月29日、世界遺産「原爆ドーム」(中区)の保存策を検討する「特別史跡原爆ドーム保存技術指導委員会」(委員長・三浦正幸広島大学名誉教授)を平和記念公園(中区)内のレストハウスで開き、今後の保存工事に備え、試験施工を行うと報告した。壁面がれんがとモルタル、しっくいの試験体を製作し、吸水防止剤や充填材を施工して効果を確認する。2039年ごろまでドーム敷地内で経過を観察し、実際の保存工事に適用できるかを調査する。
原爆ドームは被爆から80年以上がたち、壁面のひび割れやれんが、コンクリートの劣化が進み、過去5回にわたって崩落や落下、雨水、地震対策などの保存工事を実施。約3年ごとの健全度調査を基に、劣化した部材の補修や補強を行いながら現状維持の保存に努めている。
25年2月には「経年的な劣化によるひび割れなどが確認されたが、特筆すべき劣化はみられなかった」と報告し、市は今後の保存工事に備え、現地での試験施工を視野に補修工法を検討している。
市によると、れんがとモルタル、しっくいで約30センチ四方の壁面を再現した試料(立方体・直方体)を製作し、補修材を施工して試験体にする。補修材には中性化や白華など建物の劣化を防ぎ、長寿命化や外観の維持に効果を発揮する浸透性の吸水防止剤を採用。外壁がれんが、モルタル、しっくいの試験体を2個ずつ作る。
過去に原爆ドームの小さなひび割れの補修に使った無機系の充填材を塗った試験体も2個製作し、吸水防止剤と充填剤の効果を比較するため、補修材を使わない試験体もそれぞれ1個ずつ作る。
設置場所は原爆ドームの柵内。26年度内に試験体を設置し、39年まで13年間の長期にわたって試験施工を行い、3年ごとのモニタリングで防水性や外観への影響、材料と試験体との不着性などを確認する。
コンクリートのひび割れは、5回目の保存工事で無機系充填材で補修を行っているが、24年度の健全度調査で一部ひび割れが進んでいることが確認されたことから、ひび割れを再現した試験体の製作が可能か検証を行う。
会合後、三浦委員長は「通常の文化財は傷んだ部分を取り換えることで半永久的に保存できるが、原爆ドームはそのもの自体に価値があるため、取り換えができない」と説明。「核兵器が世界からなくなるまで絶対に残さないといけない使命がある。少しでも長く保存できる方法の開発が急務だ」と強調した。
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