2016年1月13日水曜日

【回転窓】妖怪のまちづくり

漫画家の水木しげるさんは10代のころ、鉱業技術者を養成する学校に通っていた時期がある。英語の成績が振るわなかったようで、教師に呼び出された時にこう提案した▼〈いまやアメリカへ石炭掘りに行くわけにもいかんから、英語なんかやるよりマレー語でもやったほうがいいのではないか〉。英語教師は激怒したが、職員室にいた他の教師は爆笑したという(『人生をいじくり回してはいけない』筑摩書房)▼そんな独特の考え方とセンスが、後に「妖怪ブーム」を巻き起こした人気漫画家たるゆえんであろう。昨年11月に93歳で亡くなってからも、その人気は衰えることがない▼故郷の鳥取県境港市に「水木しげるロード」がオープンしたのは1993年。10年後には「水木しげる記念館」が開館し、鬼太郎列車や鬼太郎バスも運行されている。今では観光振興のモデル地域として知られ、年間300万人を超す人が訪れたこともある▼政府が地方自治体に策定を求めている地方版総合戦略でも観光振興は重要なポイント。ソフト・ハード両面から地域の特性をどう生かすか。センスと知恵が求められている。

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