◇工期短縮・品質向上など期待◇
施工難度が高く、円滑な事業実施が求められる大型の公共建築プロジェクトで、設計・施工を一括発注するデザインビルド(DB)方式を採用する動きが目立ってきた。開幕が4年半後に迫る東京五輪の競技施設整備では、メーンスタジアムとなる新国立競技場に続き、このほど事業者が決まった東京都の3競技施設などにDB方式が採用された。建設会社が持つ技術・ノウハウを設計段階から積極活用することで、長期にわたる工事期間で発生するリスクを最小限に抑えつつ、より高品質の施設づくりを目指す。
公共工事では設計と施工を分離して発注するのが一般的だが、工事費の上昇や人材不足など、建設事業を円滑に進めるためのリスクが増大していることを踏まえ、DB方式を採用して施工に関わる技術・ノウハウなどを設計業務に反映させ、事業を着実に進めようと考える発注者が増えている。
DB方式では、施工者が設計段階から事業に関与することにより、より生産性の高い工事計画を作成でき、工事の準備が前倒しで行えるとされる。現場作業の円滑化など工期短縮や施工品質の向上といった効果も期待されている。
一方で、設計者や発注者などによる監理・チェック機能が働きにくくなると指摘する声もある。こうした懸念を払しょくするため、都は競技施設の基本・実施設計の妥当性について外部有識者の意見を聞く「都立競技施設整備に関する諮問会議」を設置した。建築や土木、スポーツ、法律などの専門家らで構成し、専門的な視点から、より適切な施設の性能や仕様、コストなどについて意見を求める。
舛添要一都知事は「新国立競技場(の当初計画)が白紙撤回になったプロセスへの反省を踏まえて、同じ轍(てつ)を踏まないのが原則。専門家の立場から都民の疑問に的確に答え、理解を得ていきたい」と話している。
入札には同JVのほか、清水建設・きんでん・朝日工業社・新菱冷熱工業異業種JV、大成建設・協和エクシオ・川本工業・高砂熱学工業異業種JVが参加。大林JVは価格点、技術点ともに最も高い評価を得た。技術提案では特に国際公認プールの品質管理などでの経験や実績に基づく的確な分析による施工計画への評価が高かった。
バレーボール会場の「有明アリーナ」(RC一部S・SRC造5階建て延べ4万5600平方メートル)の事業者は竹中工務店・東光電気工事・朝日工業社・高砂熱学工業異業種JVに決まった。
入札には竹中JVのほか、鹿島・日本電設工業・須賀工業・大気社異業種JVが参加。価格点は鹿島JVが高かったが、四つの技術課題のうち三つで竹中JVが技術点を上回った。
特に屋根架構の施工計画で、品質・安全に関するシミュレーションなどによって工程ごとの問題点を詳細に分析し、確実な工程管理を踏まえた取り組みが高く評価された。
ボート・カヌー会場の「海の森水上競技場」(締め切り堤350メートルなど港湾構造物、建築施設総延べ1万3000平方メートル)の事業者は大成建設・東洋建設・水ing・日立造船異業種JVに決定した。
入札には同JVだけが参加。技術提案では、決められた東側締め切り堤区間の施工時期を確実に達成するため、輻輳(ふくそう)する作業を極力回避し、遅延リスクを軽減させる取り組みへの評価が高かった。
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