2016年1月7日木曜日

【東京一極集中から抜け出せ】関西で大規模プロジェクト続々

 首都圏と並ぶ経済圏域として関西の再浮揚は欠かせない。東京一極集中をどう改善するかは長年の懸案事項。圏域活性化を実現する起爆剤として期待が高まるインフラ、建築プロジェクトを紹介する。

2期開発が始動するJR大阪駅北側の「うめきた地区」
 ◇基盤整備が順次始動◇

 JR大阪駅北側に隣接し、大阪都心部に残る最後の一等地と言われる「うめきた地区」(大阪市北区)の2期開発が本格的に動き出す。都市再生機構が鉄道建設・運輸施設整備支援機構から土地を取得し、15年度から土地区画整理事業による基盤整備工事に順次着手する。16年度以降早期に民間開発事業者の募集も行われる予定だ。

 うめきた2期は、三菱地所など12の企業連合が開発を手がけた高層ビル群「グランフロント大阪」(13年4月開業)に続くプロジェクトで、関西活性化の起爆剤として注目が集まっている。

 大阪府や大阪市、経済団体らで構成する協議会が民間提案募集(1次募集)の優秀提案者20者との対話など経て策定したまちづくり方針では、「みどり」と「イノベーション」の融合拠点を目標に掲げる。「みどり」は地区全体で約8ヘクタール確保することとし、2期区域のシンボルとして中央部に4・5ヘクタールの都市公園を整備する。中核機能として▽新産業創出(健康・医療、環境など)▽国際集客・交流(MICE・文化創造など)▽知的人材育成(連携大学・大学院、国際文化教育など)|の導入を検討している。

 土地区画整理事業の施行面積は都市公園を除く約19・3ヘクタール(公共用地10・1ヘクタール、宅地9・2ヘクタール)。事業期間は26年度、事業費262億円を見込む。大阪市とJR西日本では、15年度から区域西端を走るJR東海道線支線を中央部に移設・地下化し、新駅を設置する工事を実施。延長は北区豊崎6丁目から福島区福島7丁目に至る約2・4キロで、事業の進ちょく状況に合わせ、2期区域の基盤整備工事も進められることになる。

 民間開発事業者を選ぶ2次募集は、15年度にまとめる中核機能のあり方などを踏まえ、16年度以降早期に行われる見通しだ。大阪市と都市再生機構では、民間開発が本格化するまでの間、周辺エリアのにぎわい創出、活性化などを図る暫定利用を行う方針で、2月に暫定利用事業者の募集を始める。


関西経済同友会がまとめたIRプランの完成イメージ
 ◇府市連携でIRの誘致狙う◇

 大阪府と大阪市は、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致に向けた取り組みを連携して進めていく。大阪市此花区夢洲に誘致する方針で、大阪の観光・経済の起爆剤したい意向だ。府は16年度当初予算案に経済波及効果の分析や課題への対応の検討などを行う体制に必要な費用を計上する方針。

 15年1月に大阪市此花区夢洲の約220ヘクタールに、IRエリアを展開するプランをまとめた関西経済同友会は同12月、IR誘致などを盛り込んだ要望書を府市に提出した。同友会が策定したのは「大阪・関西らしい世界初のスマートIRシティ」と名付けた臨海部のIR計画。

 エンターテイメント施設や、劇場・映画館、レストラン、関西の歴史・文化を表現するミュージアム、ウエルネス(健康)関連施設をはじめホテル、商業施設、国際会議や見本市・研修などを開催するMICE施設とカジノ施設を一体的に配置する環境配慮型都市。夢洲の約220ヘクタールの用地は地権者が大阪市だけ。世界的な観光集客拠点を創出するには十分な広さで、将来の事業拡張性もあると評価している。

 ここに展示場(展示面積最大35万平方メートル)・会議場(5万平方メートル)・ミーティングバンケット(3万平方メートル)で構成するMICE施設や、エンターテインメント分野のテーマパーク(20ヘクタール)、アリーナ、ホール、シアター、博物館(1万平方メートル)、ウェルネス分野のスパ施設(1万平方メートル)、ホテル(7000室)、商業施設(店舗面積10万平方メートル)、カジノを計画。夢洲へのアクセス改善策として地下鉄中央線やJR桜島線、京阪電鉄中之島線の延伸も盛り込んだ。

建設中の新名神・高槻JCT
 ◇待たれる、高速道路網の早期整備◇

 関西圏では、高速道路ネットワークの整備が進んでいるものの、未事業化区間も多く、環状高速道路の未連結区間(ミッシングリンク)がすべて解消されるめどが立っていないのが現状だ。

 着実に事業が進む路線の一つが新名神高速道路。西日本高速道路会社では大津~神戸間約80キロで事業を展開中で、16年度に城陽~八幡間3・5キロと高槻~神戸間40・5キロの開通を目指す。23年度開通の大津~城陽間25・1キロと八幡~高槻間10・7キロでは、調査・設計、用地取得などを順次進めており、15年度に京都府域で本線工事を発注する。

 一方、早期事業化が望まれている路線が「淀川左岸線延伸部」と「大阪湾岸道路西伸部」だ。15年6月には関係自治体や経済界らが「関西高速道路ネットワーク推進協議会」を設置。国への要望活動などを強力に推進している。

 淀川左岸線延伸部は、大阪市が進める淀川左岸線2期事業の終点部(大阪市北区豊崎)から、近畿自動車道・第二京阪道路門真JCT(大阪府門真市ひえ島)に至る約8・7キロ。近畿自動車道や阪神高速湾岸線・淀川左岸線1期、事業中の大和川線・淀川左岸線2期と共に大阪都市再生環状道路約60キロの一部を担う。事業化に向け、大阪府と市が都市計画手続きを進めている。

 大阪湾岸道路西伸部は、神戸市垂水区の神戸淡路鳴門自動車道垂水JCTから関西国際空港(りんくうJCT、大阪府泉佐野市)に至る大阪湾岸道路約80キロの一部を形成。09年に都市計画決定された阪神高速5号湾岸線六甲アイランド北出入口(神戸市東灘区)~駒ヶ林南間(長田区)の約14・5キロ、94年に都市計画決定済みの駒ヶ林南~名谷JCT(垂水区)間約6・4キロを合わせた約21キロで、早期事業着手に向けた協議が進む。

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