2016年1月14日木曜日

【基礎杭問題、工事適正化へ動き着々】国交省、一般ルール告示へ

 横浜市のマンションで杭施工のデータ流用が発覚した問題で、国土交通省が設置した有識者委員会が昨年末、再発防止策をまとめた。基礎杭工事の設計・施工・工事監理の適正な体制の構築と同時に、重層下請の改善など業界の構造的課題の解決にも取り組むよう求めた。日本建設業連合会(日建連)は、これに先立って「既製コンクリート杭施工管理指針案」を策定した。国交省と日建連がまとめた対応策のポイントを整理した。

深尾委員長から提言を受け取った石井国交相(中央左)は、
「再発防止策を直ちに実行に移す」と明言した=15年12月25日、国交省で
 国交省が設置した「基礎ぐい工事問題に関する対策委員会」(委員長・深尾精一首都大学東京名誉教授)は、昨年12月25日に石井啓一国交相に提出した中間取りまとめ報告書で、施工データ流用の再発防止と適正な施工の徹底に向けて、基礎杭工事の一般的施工ルールを策定するよう提言した。「施工体制」「支持層到達の判断」「施工記録」を柱として、杭打ち工事を行う際に最低限守るべき事項を示すことになる。

 一般的施工ルールは、建設業法に基づく国交相の告示とする。根拠は、「建設業者は施工技術の確保に努めなければならない」(第25条の27)との規定で、国交相がそのために講じる「措置」として定める。1月中に告示案を公表し、意見募集を行った上で正式決定する。

 対策委は横浜市の傾斜マンション問題で、杭が支持層に到達しているかどうかの元請への報告頻度など、施工データの取得・管理・チェックのルールが「あらかじめ元請・下請間で整備されていなかった」と指摘した。

 そこで一般的施工ルールには、元請が下請の主任技術者の配置状況など施工体制を確認することや、支持層到達について下請の主任技術者が技術的に判断した上で、元請がその判断が正しいかどうかを確認することを明記。施工記録についても、下請が施工データを確認した上で元請に報告し、杭の支持層到達を証明する記録として妥当かどうかを元請が確認することにする。

 対策委は、基礎杭工事に携わる会員企業が多い建設業団体が、国交省の一般的施工ルールに準拠して現場に即した自主ルールを策定することも求めた。国交省は、各団体が策定した自主ルールを同省に届け出てもらい、一般的施工ルールに適合していることを確認した上で同省のホームページで公開。同省が「お墨付き」を与えた自主ルールとして周知する。

 再発防止策にはそのほか、地盤情報が不十分な場合の追加調査の実施、適切な施工管理を補完する工事監理ガイドラインの策定など、適正な施工体制の構築に必要な事項が盛り込まれた。加えて、今回の問題が起きた根底には建設業界の構造的課題があるとも指摘。重層下請構造の改善や技術者・技能者の処遇・意欲と資質の向上、民間工事での発注者、設計者、元請、下請の役割や責任の適正化を図るよう提言した。

 これらを検討するため、国交相の諮問機関の中央建設業審議会(中建審)と社会資本整備審議会(社整審)合同の基本問題小委員会(大森文彦委員長)を、14年1月以来2年ぶりに再開する準備が進められている。

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