2016年1月28日木曜日

【北海道の現状リポート】若手技術者育成型総合評価、地方で活用低調

 国土交通省が、全国の直轄工事の入札で試行的に運用している「若手技術者育成型総合評価方式」。経験や実績が少ない若手技術者を工事に積極的に登用するよう促し、人材育成の場を提供しようというのが目的だ。ところが、若手の人材がもともと少ない地方では、若手育成の場として十分に活用されているとは言い難いのが現状だ。若者の流出や人口の高齢化が深刻な北海道はその典型。北海道開発局が15年度に若手育成型を適用した工事のうち、40歳以下の技術者が配置された工事は3割にも満たない。現状を取材した。

◇若者技術者「そもそも人材いない」◇

 「そもそも若い技術者がいない会社では活用のしようがない」。道内に本社を置くある建設会社の社長は、そんな嘆きを口にする。

 北海道開発局が実施している若手技術者育成型(一部の開発建設部は「技術者育成型」)の総合評価方式では、過去の工事成績や局長表彰などの表彰実績に関する評価項目を無くすことで、ベテラン技術者と経験の浅い若手技術者を同等に評価できるようにしている。

 年齢制限も設けておらず、年齢を問わずに経験の浅い技術者の配置を促す狙いがある。全国の他の地方整備局などで運用されている「若手育成型」と比較すると、技術者に求める要件が緩く、技術者により広く門戸を開けている点が特徴だ。

 他の地方整備局の若手育成型を見ると、例えば近畿と九州の両整備局では、参加要件を40歳以下に限定したタイプを一部の若手育成型で実施。関東整備局と九州整備局では、35歳以下の技術者の配置を加点評価するなど、より若い技術者の配置を誘導する仕組みになっている。だが、要件が緩く門戸も広いにもかかわらず、北海道では若手育成への活用が低調だ。

 北海道開発局には、工事を発注する出先機関として道内各地に計10の開発建設部がある。これらの機関が15年度に入ってこれまでに発注した工事の入札で、若手技術者育成型総合評価方式が適用された案件は計93件。内訳は、一般土木が63件、舗装が7件、建築が9件、維持が11件、浚渫が2件、管が1件となっている。

 全体の8割を、予定価格が2億円未満の工事が占める。あらかじめ経験の少ない若手技術者が配置されることを想定し、比較的難易度の低い工事に適用されているのがその理由だ。

 しかし、93件のうち、40歳以下の技術者が配置された工事は24件と全体の4分の1にとどまる。内訳は、一般土木が19件、維持が3件、建築、舗装がそれぞれ1件。ほとんどの工事には、40歳以上の技術者や、ベテラン技術者が配置されたことが分かった。

 若手技術者育成型の導入に対し、受注する建設業者側の評判が必ずしも悪いわけではない。ある道内業者の社長は「若手技術者育成型の活用で経験がない技術者にもチャンスが与えられ、技術者のモチベーションが上がっている」と評価する。

 その一方で、「人材が多様な大きい会社ならまだしも、若い技術者がいない会社では活用のしようがない」と、もともと若手の人材が少ない地元の実情との乖離かいりも指摘する。建設業で働く人の高齢化は全国的な傾向だが、北海道では高齢化が全国を上回る速度で進行している。

◇札幌集中が地方の若手不足に拍車◇

 総務省の労働力調査を基に道がまとめたデータによると、建設業の就業者全体に占める40歳以下の人の割合は、全国では2000年度に41・5%だったのが14年度には30・8%にまで落ち込んでいるが、北海道では14年度の40歳以下の人の割合が30・4%。全国平均を0・4ポイント下回る。

 加えて、広い北海道には「札幌一極集中」の傾向もある。道内には工業高校がない地域もあり、「若い技術者は札幌に集中してしまう」と道内業界の関係者。札幌集中が地方の若手不足に拍車を掛けている状況だ。

 15年度は公共工事の発注量が減少傾向。「各社とも受注に必死で、技術者の育成にまで意識がいっていない」との声も上がる。若手技術者育成型が適用された工事を受注したある道内企業の担当者は「ベテラン技術者の手が空いていない時に若手技術者育成型の入札が公告されたため、手が空いている中堅の技術者を充てて応札した」と明かす。

 北海道開発局も、40歳以下の技術者を配置された工事が25%にとどまることを「少ない」と認めるが、当面は運用方法を変更しない方針だ。

 「25%という数字が、若手技術者を配置して競争できる建設会社の割合だとすれば、他の地方整備局のように年齢制限を設けるなどして条件を厳しくすると参加業者がいなくなってしまうのでは。入札不調が起きてしまったら本末転倒になる」と担当者。16年度も本年度と同様に100件程度に適用し、効果の検証を続けるとしている。

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