全国建設業協同組合連合会(全建協連、青柳剛会長)は、高校生以上の学生から工事現場の仮囲いのデザインを募集する「仮囲いデザインアイデアコンテスト」の作品提出の受け付けを開始した。デザインのテーマは「工事中と人々を結ぶ装置」。作品の提出期限は21日。公開プレゼンテーションや審査を経て、最優秀賞などを決める。青柳会長と建築関係の審査委員にコンテストへの思いを語ってもらった。
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コンテストの実施を発表した記者会見。 青柳氏㊨と古谷氏は建設業の魅力アップに意欲を見せた (18年10月18日、東京都内で) |
コンテストは、「KOJICHUプロジェクト」と銘打ち、仮囲いが建設業や工事現場の魅力を伝えるための「観覧席」となるようなデザインを求める。鹿島が東京都町田市で進めている桜美林大学の「(仮称)本町田キャンパス新築工事」の現場にある仮囲いがデザインの対象。青柳会長は「安全を理由に仮囲いが建設業の見せ場を隠しすぎている」と指摘する。コンテストは建設業の魅力を高める全建協連の取り組みの一環で、「若い人の感性による自由な発想の作品がたくさん出てきてほしい」と期待を寄せる。
審査委員は、建築設計やデザインの専門家、国土交通省幹部などが務める。その一人、建築学会長の古谷誠章氏は、仮囲いについて「活気が伝わらない。迷惑の塊を包んでいるように思われていたら残念」と語る。
建築家で横浜国立大学客員准教授の大西麻貴氏(
写真㊨)は「完成までのプロセスが見えず、『ハコもの』という呼び方につながってしまう」と懸念を示す。クリエーティブディレクターの宮崎桂氏(
写真㊧)は「仮囲いにネガティブなイメージはない」と考えているものの、「有効に使われていない」と指摘。その上で「独自性やアイデンティティーを表現するスペース」として利用できる余地があると見ている。
コンテストは「学生と建設業の距離をさらに縮める」(青柳会長)のも狙い。技術者が自分を表現することができ、やりがいに結び付く事業を行おうと、実施に踏み切った。古谷氏は「職人が生き生きと働き、建築が進む様子を外からも感じてほしい」と賛意を表明。大西氏も「街に生まれる建築に興味を持ってもらえる」と同調する。宮崎氏は「街をおしゃれにするツールになる」と期待し、「養生シートや機材にもおしゃれなデザインが波及する」と副次的な効果も挙げる。
KOJICHUプロジェクトは、東京モード学園の学生がデザインした作業着を実際に仕立てた17年度の「ユニフォームデザインプロジェクト」に続く取り組みとなる。「日本中の建設現場をおしゃれにするくらいの気持ちで構わない」と青柳会長。宮崎氏は「私も参加したい」と笑顔を見せ、▽周辺環境を落ち着かせる▽SNS(インターネット交流サイト)での見栄えの良さ▽コストも当然意識-と注文を付ける。古谷氏は「にぎやかで活気があるポジティブな工事中を感じさせる案」を求める考え。大西氏は「大勢で一つの建築を造る現場の面白さが伝わる提案」を待つという。審査結果は2月14日に発表する。
□ユニホームは実際に着用□
ユニフォームデザインプロジェクトは「わくわくする建設業」を目指し、「自信と誇りを着る」をコンセプトに東京モード学園の学生からデザインを募集した。
レーシングスーツがモチーフの男性用、赤・白・黒のデザインと視認性の高さが特徴の女性用の作業着をそれぞれ最優秀賞に選定した。プロジェクトは、「業界全体のイメージアップを図る画期的な取り組み」(毛利信二前国土交通事務次官)と高く評価された。
6着の作業着が実際に仕立てられ、女性用の最優秀賞作品は群馬県建設業協会が会員企業の女性職員に着用してもらっている。