2019年1月21日月曜日

【回転窓】時代の流れを読む建築家

〈優良な社会資産を「美しい」というもので包みたい〉。昨年12月25日に亡くなった建築家の中園正樹氏(松田平田設計最高顧問・前社長)が生前、話していた言葉だ▼若いころに手掛けた玉川高島屋をはじめ、横浜国際総合競技場や羽田空港第2旅客ターミナルなど多くの秀作を設計。建築に対する理念と情熱、独特の語り口は多くの人を魅了した▼建築家としての業績に目がいきがちだが、中園氏は堅実なかじ取りをする経営者でもあった。社長就任はバブル崩壊後の1995年9月。先の見えない景気後退の中で身の丈に合った経営に徹し、昨年12月6日付で最高顧問に就くまでの約四半世紀、組織設計事務所の安定経営に心を砕き続けた▼環境が変化する中、現状を維持することは極めて難しい。毎年お願いしていたインタビューの際、「松田平田設計はいつもと変わらない1年だったよ」と笑顔で語る姿がまぶたの裏に焼き付いている▼優れた提案力や設計力だけでなく、時代の流れを読む力に秀でた建築家であり経営者だった。「明日からさらにいい建築をつくろう」と、空から後進に温かいまなざしを向けているはずだ。

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