2020年5月11日月曜日

【駆け出しのころ】新日本空調上席執行役員・前川伸二氏


 ◇楽しむ心を忘れずに◇

 大学時代は物理学を専攻していました。研究室の先輩が新日本空調の原子力事業部で働いており、担当の先生からの薦めもあって畑違いの分野でしたが、建築設備工事に興味を持ちました。

 最初の配属先は原子力部門ではなく、電算機専用チラーの機器製作から施工、保守点検までを一貫して行う特機部。顧客の大型電算機などを冷やすチラー関係のメーカー部門で、社内でも特殊な仕事です。新設や点検、故障対応などで全国の納入先を駆け巡りました。

 会社の本流の事業とはいえず、あまり新人が最初に配属される部署ではなかったようですが、もともと畑違いの分野を学んでいたこともあり、仕事への違和感は特にありませんでした。それよりもチラーの故障などで電算センターのオンライン業務を止めてしまうと顧客に大きな損害を与えることになり、今思えば新人ながら責任重大な仕事を任されていたんだと思います。

 とにかく平日、休日を問わず、24時間いつ警報が出るか分かりません。当時は携帯電話ではなく、ポケベルを肌身離さず持ち歩き、私生活も規則正しくを心掛けていました。特機部にいた約10年の間には、間一髪でオンライン業務を止めてしまうような経験も何度かあり、止めてしまった夢もよく見ました。大変な場面に何度も遭遇しましたが、顧客の業務・サービスを守り続ける責任ある仕事にやりがいを感じていました。

 特機部から異動したリニューアル部門は業務内容が全く異なります。また新しい会社に入ったような感覚です。使用中の施設の設備を改修するため、土日や夜間の工事がほとんどで、仕事のサイクルに慣れるのに苦労しました。計画通りに作業が進まないとお客さまの始業前に引き渡せなくなり、作業手順など段取りを何度も確認することの大切さを学びました。

 一生懸命やれば結果は後から付いてきます。何より誠実に物事に当たることが大切です。また、若い人たちはミスを嫌がりますが、失敗は誰にでもあるもの。一人で挽回しようと頑張り、いよいよだめになって手遅れになることは個人にとっても、企業にとってもマイナスです。私も若いころ、一人で抱え込んで傷口を広げた苦い経験があります。

 今は昔よりも分業化が進み、一人に業務を集中させず、周りに助けを求めやすい環境になっていると思います。失敗を恐れずに挑戦し、成長してほしいです。

 仕事とプライベートの両立も大切なこと。昔は社内のサークル活動も盛んで、若いころ室内音楽部でクラリネットを吹いていました。仕事も上司や先輩との夜の付き合いも含め、忙しい毎日でしたが、常に楽しむ心を忘れてはいけません。

入社6年目ころ、同期入社の仲間の結婚披露宴で
(奥側左でクラリネットを演奏しているのが本人)
(まえかわ・しんじ)1983年東京理科大学理工学部物理学科卒、新日本空調入社。執行役員首都圏事業本部関東支店長などを経て2019年4月から現職(上席執行役員首都圏事業本部リニューアル事業部長)。北海道出身、60歳。

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