月の模擬砂を加工し栽培したコマツナ(大林組提供) |
大林組と宇宙農業の実現を目指す名古屋大学発のベンチャー・TOWING(名古屋市南区、西田宏平社長)は7日、月の模擬砂と有機質肥料を使った植物栽培の実証実験で、コマツナを育てることに成功したと発表した。月の砂を植物の栽培が可能な土壌に加工する技術を確立。月面での食糧確保に宇宙農業で対応すると同時に、滞在中のQOL(生活の質)向上につなげる。
実証実験では、月の砂を作物の栽培可能な土壌として活用するため、固形化した上でマイクロ波による加熱焼成などで多孔体に加工した。肥料には人間の排せつ物や食品かすなど有機性廃棄物を循環利用する。肥料が多孔体の隙間に入ることで作物の育成を促進する。
従来技術では、月の模擬砂を多孔体に加工する過程で加熱箇所が偏り、植物栽培に適した多孔体として回収できない割合も多かった。今回の実証実験では均質な加熱を実現することで、月の模擬砂を無駄なく多孔体として回収できるようにした。
月面開発に向けては、大林組は月の砂をマイクロ波やレーザーで建材化する技術開発を宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと実施。TOWINGは無機多孔体の設計技術を保有している。TOWINGは農業・食品産業技術総合研究機構が開発した人工的な土壌化技術を活用。有機質肥料を使った人工土壌栽培のノウハウも保有している。
月面開発での有人活動は食糧の確保が課題の一つになっている。長期的な月面有人活動の実現には月面資源の活用が不可欠。地球からの物資輸送は莫大(ばくだい)なコストがかかる。月面での植物栽培が可能になれば食事の幅も広がり、滞在期間中のQOL向上も期待できる。
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