外でどじょう鍋や鶏鍋などを食べ、風邪をひいた時はそば屋に入りたこ、なが芋、れんこんの甘煮で薬代わりに酒を二合。幕末のころ、故郷を離れて江戸に住む勤番侍は、質素に暮らしながらもこんな食生活を送っていたらしい▼今で言うサラリーマンの単身赴任生活。決してぜいたくなどはできないが、外食を意外と楽しんでいたようだ。その暮らしぶりは、紀州藩士の日記を基に書かれた『幕末単身赴任 下級武士の食日記 増補版』(青木直己著、筑摩書房)に詳しい▼普段の自炊で人によって差が出たのは炊飯。水加減や火加減でおかゆのように炊き上がったり、こわ飯になったり。かまどの前で苦闘している侍の姿を想像するとほほ笑ましい▼本日付小欄の筆者が単身赴任中頼りにしたのは、晩酌のつまみに合う小鍋料理を作れるレシピ本。これなら健康にも良く楽しめると、コロナ禍で豊富にある家時間につゆ作りからチャレンジしていた▼春は人事異動の季節でもある。今春から慣れない地で新たに単身赴任生活を始める方もおられよう。早く慣れなければと焦らず、ぜひ家でも外でも食を楽しむくらいの心持ちで。
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