2019年8月26日月曜日

【駆け出しのころ】大林組執行役員東京本店建築事業部担任副事業部長、松田勝彦氏

 ◇聞く力・伝える力で信頼構築◇

 就職活動をしていた当時を振り返ると、自分も含めて金融機関や商社などを志望する人たちが多かったです。そうした中でゼミの先生から「建設業界がこれから面白い」といった話を聞きました。国土や人々の暮らしが豊かになっていく過程での建設業の役割の大きさに、全く目が向いていなかったので、とても新鮮に感じました。

 建設業に関心を持ち、大林組の会社説明会を受けました。そこでお会いしたリクルーターの方の人柄に引かれ、「地球上で一番大きなものを造る業界だよ」との言葉が心に響きました。

 入社後はジョブローテーションで総務・人事系の管理部門、財務・経理系の会計部門、工事現場の3部署を回ります。最初の配属先は人事部人事課。当時はまだOA化のはしりだったので、膨大な事務作業を先輩たちが職人芸的にこなしている姿に圧倒されました。ようやくコンピューターなどが入りつつある中、事務作業のOA化を推進。省力化などの効果を定量的に把握でき、達成感がありました。

 6年目に埼玉県内の複数の建築現場を回り、月々の出来高管理などを担当。常駐していませんでしたが、建物の躯体が刻々と立ち上がっていく様を見ていると、現場に関わっているのだと実感できました。

 1年半ほどの現場勤務の後、大阪本店の経理部門に異動。決算や会計などの仕事に携わりました。入社後の10年ぐらいは目の前の仕事を早く、正確に仕上げることに専念してきました。建設会社の事務屋の立場から、特定の仕事をやりたいというよりは、何でもやれるゼネラリストを目指そうと考えていました。

 情報系子会社への出向後、営業に回りました。それまでのキャリアがほとんど役に立たず、特に仕事がない時代だったこともあり、最初はしんどかった思い出が多いです。一時期疎遠になっていたお客さまに営業攻勢をかけた時、工事案件の提案書や見積書の作成など、お盆休み返上で多くの人たちに仕事をしてもらいました。提案内容を見て受注を確信していましたが、実績が一定期間なかったことから別の会社が受注し、悔しい思いをしたことを今でも覚えています。

 その時の失注をバネにして頑張り、営業の面白みも分かってきました。仕事が受注できた時の達成感と喜びは、何度でも味わいたいと思います。

 価値観が多様化する中で、お客さまから仕事をいただき、それを空間に実現していくには、対話と議論で互いの決着点を見いだし、信頼関係を構築することが不可欠。「人の話をきちんと聞き、相手の考えを聞き出す力」と「自分の考え方を正確に伝える力」が何より重要です。この二つの力があれば、仕事もあらゆる人間関係もうまくいきます。

入社5年目ころ。社内で開かれたソフトボール大会での一枚
(肩車をされているのが本人)
(まつだ・かつひこ)1981年山口大学経済学部経営学科卒、大林組入社。東京本店建築事業部の営業部部長、統括部長などを経て2019年4月から現職。広島県出身、62歳。

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