2022年2月24日木曜日

【回転窓】街に根付くアートを

  街頭の壁面などに無断で描かれた落書きはストリートアートとも評される。評価の境界線は分からないが、中には芸術性が高く、人々の心をつかんでいる「作品」があるのも間違いない▼ストリートアートの先駆者と呼ばれるキース・ヘリング(1958~90年)は80年代初頭、ニューヨークの地下鉄で使われていない広告板にグラフィティアートを描いた。コミカルで親しみやすく、誰もが楽しめる落書きは地下鉄利用者の間で評判となり、一躍その名を広めた▼「芸術はみんなのためのものだ」という名言を残したヘリングには社会問題への行動主義者の一面も。子どもの病院や孤児院のために作品を作り、ベルリンの壁に大型のミューラルアート(壁画)を描いている▼海外ではミューラルアートが街づくりで活躍しているそうだが、日本ではまだ発展途上の段階。そんな中、JR東日本が大宮駅から横浜駅まで沿線8カ所の空いている壁に絵を描くミューラルアートプロジェクトを開始した▼誰にとっても身近な公共施設の壁に作品が出現する。アートがもっと身近に感じられ、街に根付いたものになることを期待したい。

【清潔、安心、信頼の“東熱らしさ”表現】東洋熱工業、25年ぶりにユニホーム刷新

  東洋熱工業のユニホームが25年ぶりに生まれ変わった。清潔感、安心感、信頼感が伝わる“東熱らしさ”が見えるデザインに仕上げた。青や紺色をメインカラーにロゴマークを効果的に配置。ストレッチ性と通気性に優れた生地を採用し機能性と安全面に考慮した。2月から着用を始めた。

 帽子と防寒着、ブルゾン、シャツ、パンツを刷新した。パンツはセンターラインにステッチを施し、スッキリとしたスタイルにした。夏用と冬用の2種類を用意し、女性サイズも展開している。フルハーネス型安全帯にも対応できるようにポケットを配置し、スマートフォンや手帳がすっぽり収まるサイズ。左胸ポケットは名刺や通行証などを収納する取り外し可能なクリアケースを付けた。

 「動きやすさが段違い」「ストレッチが効いている」と社員の評判も上々。開発に携わった中村明生産管理本部安全管理部兼品質・環境管理統括室長は「唯一無二のデザイン。誇りを持って着用してほしい」と話した。

【初弾は福岡市で5台配備】清水建設、土木現場に電動キックスケーターを試験導入


  清水建設は、土木工事現場に電動のキックスケーターを試験導入する取り組みを始めた。初弾は都市再生機構発注の「九大箱崎南地区雨水幹線築造その他工事」(福岡市東区)。広大な敷地の現場で働く従業員の負担軽減を目的に5台配備した。日々の移動などによる有効性を実証した上で、導入現場を増やしていく。

 試験導入は、現場運営の効率化や働き方改革に向けた取り組みの一つ。スタートアップのmobby ride(福岡市中央区、安宅秀一代表取締役)が提供する「mobby」を昨年9月から利用している。

 現場では、九州大学の移転に伴い跡地利用が予定される旧箱崎キャンパス敷地の地下20メートルに、博多湾へとつながる雨水幹線の築造が昼夜2交代で行われている。仕上がり内径3000ミリの泥土圧式シールドによる施工は曲線部を含め延長約477メートルに達する。現場の発進立坑までは事務所から約1キロ。頻繁に往復する従業員から「速く負担も少なく移動できる」(田尾一憲所長)と評判も上々だ。

2022年2月22日火曜日

【回転窓】案ずるより産むが易し

  来週に3月を迎えるとはいえ寒い日が続き日々の生活で春の訪れを感じるのは難しい。冬の寒さがあるからこそ春の暖かさが幸せに感じるとも言えるが、そろそろどうにかならないかと思わずにはいられない▼この時期は進学や就職など春に新生活を始める前に何かと不安が募る。首都圏では今週、公立高校の入試が行われる。都立高校は21日に学力検査があり、3月1日が合格の発表日。千葉県は24、25の2日間が試験日で3月7日に結果が分かる▼既に入試を終えている私立高校は公立高校の結果で追加合格を発表していく。追加合格候補者は長ければ2週間ほど不安な日々を過ごすことになる。受験生はもちろんご家族にとってもつらい時間。多くの人に吉報が届くよう願っている▼コロナ禍の影響もあり、この2年は例年と違った流れで物事が進んでいく。入試だけでなく新規採用や定期異動で企業の人事担当は苦労が絶えないだろう。在宅勤務をどうするのか?採用後の研修は?転勤を含めた人材配置の最適解は?▼悩みは尽きないが、物事はあれこれ心配するより実行してみれば案外たやすいことが多いのも世の常か。

【鉄道模型と言えば…】埼玉県鶴ケ島市と関水金属、鉄道模型展示施設を建設

展示施設の完成イメージ(鶴ケ島市提供)

  埼玉県鶴ケ島市は、鉄道模型メーカー大手の関水金属(東京都新宿区、加藤浩社長)と共同で機関車や鉄道模型などを展示する「(仮称)Nゲージとガーデンパーク」を整備する。関水金属が同市鶴ケ丘地内に建設する新工場と、隣接する市立鶴ケ丘児童公園を一体的に整備し、官民連携で新たなにぎわい交流拠点を創出する。公園整備費は約1億5000万円を見込む。市は5000万円を負担。2022年度予算案に設計費500万円を計上する。24年度のオープンを予定している。

 同市富士見に埼玉工場を持つ関水金属は、市内に2カ所目の拠点となる倉庫・工場を建設している。敷地内の倉庫は既に稼働しており、今後、倉庫に隣接して工場を建設する。2カ所目の拠点整備を決めたことから両者は連携した交流拠点づくり計画の検討を開始、19年10月に包括連携協定を締結した。

 新工場の敷地面積は約3万2000平方メートル。隣接する児童公園は約2400平方メートル。同社は工場の周囲に塀などは設けず、敷地内の緑地を地域に開放する「まちなか工場」にする計画。市は隣接する児童公園を工場と一体的にリニューアルすることで、新たなにぎわい交流拠点の整備を図る。

 パーク内には線路を設け、同社が所有する機関車(軽便鉄道)の展示や走行を行う。同社の鉄道模型の展示も行う。公園は英国式ナチュラルガーデンをコンセプトとし、地域に根差した公園づくりを目指す。

【記者手帖】職人技に感動

  ときどき近所のスーパーで大福を買う。先日買ってみるといつもよりお餅が柔らかく、おいしく感じた。どうやら仕入れ先メーカーを変えたらしい。これをきっかけに、もっとおいしい大福がないかとネットで調べた。すると東京には三大豆大福なるものがあるという◆先日、そのうちの一つ群林堂(文京区)を訪れた。店の外まで行列ができている。自分の番が回ってきた時には残りわずかだったが、辛うじて買うことができた。柔らかい餅の中に程よい甘さのあんこが詰まっていた。人気なのもうなずけた◆大福作りはお餅やえんどう豆の柔らかさ、あんこの甘さ加減に加え、手早くお餅であんこをくるむ作業など、実は高度な職人技が必要だ。日本はものづくりの国。それを支えているのが職人や技術者だ◆建設業もものづくり産業の一つ。先輩から技術を受け継ぎ、発展させて後輩に伝えていくことで優れた技術が未来へとつながっていく。担い手不足への対応など今後も注視していきたい。職人の技術力に思いをはせつつ、残り二つのお店にも行ってみようと思った。(W)

【建設業を身近に感じてもらいたい】イラストレーター・広野りおさんに聞く「作品に込めた思いは?」

  構造物や人物を柔らかいタッチで描く人気イラストレーター・広野りおさん。図鑑や教科書などの教材関連から行政パンフレットなど幅広い分野でイラストを提供している。土木学会(谷口博昭会長)が制作した「土木偉人かるた」や土木学会誌の表紙も手掛け、建設工事に関わる職人のイラストも自身のSNS(インターネット交流サイト)で発信している。「職人や作業員の方が個人的に好き」と話す広野さん。職人を描くきっかけや自身の作品を通じて伝えたいこと、建設業界への思いを聞いた。

 --建設・土木関連のイラストを描くようになったきっかけは。

 「土木学会から仕事を頂いてから本格的に描くようになった。もともと技能者や技術者、作業員、職人をメインに描いていたわけではない。構造物や都市景観を描く仕事が中心で、その一部として職人や技術者を描く程度だった。今では、土木学会などの団体やゼネコン、大学、出版社との仕事が多く、ゼネコンの求人広告なども担当している」

 --イラストへのこだわりは。

 「趣味で描く分には好きなように格好良ければと思って描いている。仕事で依頼された時は一体何がメインかでこだわるポイントが変わる。例えば、とび職なら道具にこだわりを持たせている。もちろん依頼されたテーマに沿って描くが私目線で独りよがりになってはいけない。風景の一部なのか、人がメインなのかでニュアンスが変わる。外国人を描くことも増えた。海外の現場では安全基準が違うため国の基準に照らし合わせて描いている」

 「イラストを目にする人には単純に格好良く映したい。顔を格好良く描くのとは違って、アウトラインを重視している。例えば、職人のいでたちや作業風景、フォーム。ただ描けばいいだけではない。何のために描くのか、どういう特徴を出すのかを考えている。どういう意図でイラストを描くか、何を主張するかはイラストを描く際に大事だ。私自身、建設現場でも作業服メーカーでも働いたことがない素人だが強みでもある。イラストレーターの立場で浅く広く関わることで第三者としてのイメージを分かりやすく伝えられる」

広野さんの作品(本人提供)

 --イラストの題材や描くヒントは。

 「仕事ではテーマを与えられるが、趣味で描く時は、過去のイラストやユーチューブ(動画投稿サイト)、外国の作業服カタログを参考にする。カタログはすごく面白いし勉強になる。国によって安全基準が違って国が何に重きを置いているかが分かる」

 「作業服にも流行や地域性があって最近だとデニム素材が多い。日本で作業服メーカーが多いのは広島、岡山だが、上下デニム素材で着こなす人が増えた印象だ。西日本と東日本で売れている物も違う。日常生活で作業服を着て歩く人はついつい目に入る」

広野さんの作品(本人提供)

 --イラストを通じて何を伝えたいか。

 「イラストを通じて、一般の人にもっと身近に感じてほしいし、建設業に対するイメージを柔軟に持ってほしい。捉え方はどうしても固定観念がある。どの職業にでも当てはまる話だが、知らない人は大きな枠でしか見ていない。『そんな仕事もあるんだな』と知ってもらえるとうれしい」

 「イメージがどうこう以前に単純に知らないことが問題だ。私やゼネコン目線で格好良いと思うことが学生や子どもにとって一緒かどうか分からない。若手入職者が増えるには実際に作業服を着ている人の格好良さよりも大きな構造物を作れる格好良さを伝えることが効果的かもしれない」

広野さんが描いた安芸灘大橋の風景(本人提供)

 --今後、挑戦したいことを。

 「建設関係の仕事を増やしたい。特に、土木と教材を融合させた仕事が理想だ。土木偉人かるたのような教材だと子どもが建設業や構造物を知る機会が増える。イラストをきっかけに入職者が増え、業界の活性化につながればうれしい。幼い頃から建設業界になじみがあって理解していれば業界への抵抗感もないだろう。環境を良くするのも大事だが一時的なものだ。工事現場は仮囲いがあって、一歩隔たったイメージが強い。安全面で考えたら壁があって当然だが、少しでも身近に感じてもらえるように心の壁を取り除きたい」。

 
1971年6月26日生まれ、50歳。90年兵庫県立神戸商業高校卒業。阪急百貨店販売促進部に勤務した後、職業訓練、専門学校、高校でのコンピューターグラフィックス講師を経て、現在はフリーランスイラストレーターとして活躍している。主に土木・建設分野、教材、行政のイラストを幅広く手掛けている。兵庫県出身。

2022年2月21日月曜日

【回転窓】侍にならい「食」を楽しむ

  外でどじょう鍋や鶏鍋などを食べ、風邪をひいた時はそば屋に入りたこ、なが芋、れんこんの甘煮で薬代わりに酒を二合。幕末のころ、故郷を離れて江戸に住む勤番侍は、質素に暮らしながらもこんな食生活を送っていたらしい▼今で言うサラリーマンの単身赴任生活。決してぜいたくなどはできないが、外食を意外と楽しんでいたようだ。その暮らしぶりは、紀州藩士の日記を基に書かれた『幕末単身赴任 下級武士の食日記 増補版』(青木直己著、筑摩書房)に詳しい▼普段の自炊で人によって差が出たのは炊飯。水加減や火加減でおかゆのように炊き上がったり、こわ飯になったり。かまどの前で苦闘している侍の姿を想像するとほほ笑ましい▼本日付小欄の筆者が単身赴任中頼りにしたのは、晩酌のつまみに合う小鍋料理を作れるレシピ本。これなら健康にも良く楽しめると、コロナ禍で豊富にある家時間につゆ作りからチャレンジしていた▼春は人事異動の季節でもある。今春から慣れない地で新たに単身赴任生活を始める方もおられよう。早く慣れなければと焦らず、ぜひ家でも外でも食を楽しむくらいの心持ちで。

【回転窓】2月にお花見?

  2月も半ばを迎え、あと1カ月もすると春の訪れを感じる時期になる。民間気象情報会社のウェザーニューズによると2022年のサクラの開花は全体的に平年並み~非常に早い見込みという▼関東甲信の開花予想は東京が3月16日。続いて19日に横浜、21日は熊谷、水戸などで22日につぼみがほころび始めるそう。今冬は寒さが厳しかったが、春を迎える準備は進んでいるようだ▼季節ごとに咲く花々は四季の移ろいを感じさせてくれ、サクラに代表される日本らしい風景に彩りを添える。そんな植物の生育が地球温暖化で変わりつつある▼時事通信が2月7日に配信したロンドン発の外電によると、ある研究機関が1753年から約270年を対象に英国の植物の開花時期を調べたところ、平均で1カ月近く早まっていた。調査対象は植物406種、約42万件のデータを分析した結果で気温の観測値とも照合し開花時期の早まりと平均気温の上昇に強い相関関係があった。農村部よりも都市部の方が深刻とも▼気候変動は世界規模での対応が不可避な重要課題。2月に桜吹雪を見て、3月は熱帯の花々をめでる。なんとも味気ない。

【ひと】技能五輪全国大会建築大工職種で金賞の関根祥智さん

 ◇挑戦し続けることが大事◇

  59回目の「技能五輪全国大会」に出場し、建築大工職種で金賞を獲得した。日常の現場作業で主に使うのは電動工具だが、カンナやノコギリなど手道具しか使えないのが競技のルール。初出場だった前回大会はカンナ削りで失敗し悔しい思いをした。「何とか克服したかった」と練習を繰り返し大会に臨んだ。

 大会前の2カ月間は母校の建築カレッジで特訓。「カンナの研ぎ方もうまくなり、高い技術が身に付いた」と手応えを感じていた。大手メーカーが複数の選手を送り込むなど手ごわいライバルがそろっていたが、努力のかいもあり金賞を勝ち取った。

 高校時代、自宅のリフォームで大工仕事を目にしたのが建築大工を目指すきっかけだった。「ものづくりが好きなので、向いていると思った」。高校卒業と同時に職人の世界に飛び込み、一戸建て住宅の新築やリフォームに携わってきた。

 技能のレベルをもう一段階上げるため、2級建築士の試験に挑戦しようと思っている。「挑み続けることが大事。当たって砕けての繰り返し」と力を込める。

 (せきね・よしのり)2018年3月に東京都立蔵前工業高校を卒業。同4月に匠・林工務店(東京都足立区、林牧人代表取締役)に入社。入社と同時に職業能力開発短期大学校東京建築カレッジ(同豊島区)に第23期生として入学し、20年に卒業した。東京都出身、22歳。(匠・林工務店)

【中部整備局長賞は平川拓光さん】中部建設青年会議、国土をつくる人写真展受賞作品選定

中部整備局長賞を受賞した平川拓光さんの「俺たち。もぐら屋、推進屋!」
写真は中部建設青年会議提供

  中部建設青年会議(山浦正貴会長)は、第10回「国土をつくる人写真展」の受賞作品9点を決定した。中部地方整備局長賞は平川拓光さん(加藤建設)の「俺たち。もぐら屋、推進屋!」が選ばれた。表彰式は行わないが、名古屋市内で作品展示を予定している。

 この写真展は、社会資本整備に携わる地元建設業者の姿や働く人たちの姿を一般に広く知ってもらうとともに、魅力ある地域建設業の育成を目的に2012年から毎年開催している。今回は「地域の担い手たち」をテーマに作品を募集し、中部5県(愛知、岐阜、三重、静岡、長野南部)から349件の作品が寄せられた。

 受賞者、作品名は次の通り。敬称略。

 【中部地方整備局長賞】

 ▽平川拓光(加藤建設)=俺たち。もぐら屋、推進屋!

 【中部建設青年会議会長賞】

 ▽高木理空(オカシズ)=電子黒板で施工管理!

 ▽鈴木日香梨(愛知県立豊橋工科高校)=雷

 【建設産業再生賞】

 ▽石水健一(加和太建設)=車を守るために

 【中部建設青年会議長野県南部支部長賞】

 ▽佐藤直道(ヤマウラ)=鉄筋は芸術だ!

 【同岐阜県支部長賞】

 ▽青木貴志(吉川工務店)=道路開通前の水たまり

 【同静岡県支部長賞】

 ▽塩川靖(渡邊工業)=トンネル内出来形確認

 【同愛知県支部長賞】

 ▽佐藤莉胡(愛知県立豊川工科高校)=背中にたくす

 【同三重県支部長賞】

 ▽山本楓希(伊勢土建工業)=重機と人の協奏。

【凜】国土交通省水管理・国土保全局水資源政策課・志賀紹子さん

  ◇長いスパンで地道に◇

 入省して17年目、現在は水循環政策全般の統括を担当している。毎年8月1日の「水の日」の広報活動では、人気アニメ「ポケットモンスター」とのコラボレーションが一昨年に実現。人気ポケモンの「シャワーズ」を「『水の日』応援大使」に任命し、認知度アップに一役買ってもらった。「すぐに目に見える結果が出る分野ではないけれど、長いスパンで地道にやっていくのが大事だ」と前を向く。

 愛知県で生まれ育った。大学在学中に旅行で訪れた東南アジアなどでの経験が人生の転機になった。道路や水道などインフラの整備状況は国ごとにさまざまで規格や構造も日本と違う。背景に見え隠れする各国の事情。街づくりの奥深さを感じた。国家公務員を志したのは「ルールやフレームを作る仕事をしてみたかったから」。大学で学んだ法律や政治の知識も生かせると感じ、国土交通省を選んだ。

 約10年前に航空局で担当した仕事が印象に残っている。空港周辺の騒音対策を任され、住民と直接やりとりした。「地元の懸念をどう払拭(ふっしょく)するか本当に悩んだ」と当時を振り返る。国交省の果たすべき役割を知る貴重な経験にもなった。

 3児の母親として仕事と子育ての両立に奮闘する。「次の世代に一つでも多く良い物が残せれば。今の仕事がそれにつながればいいなと思う」とはにかむ。

 (水資源対策企画官、しが・しょうこ)

【中堅世代】それぞれの建設業・309

活躍の場は現場だけではない

 ◇みんなが楽しくなるように◇

  ウェブ関連の業界から防水工事会社に転職して5年、桜井敬さん(仮名)は「業界の在り方を変えなければ」という思いを強くしている。前職の経験や身に付けたノウハウを生かし、ホームページ(HP)の運営やSNS(インターネット交流サイト)の投稿に力を入れ、広告料を設定して収益を上げている。社内でも異色の存在だが「一度建設業の外に出た経験がとても役に立っている」と話す。

 最初に建設業とつながったのは10代の時。高校を中退してぶらぶらしていた自分を見かねた父親が「友人が経営する耐火塗装会社で働かないか」と声を掛けてきた。軽い気持ちで働き始めたが、現場仕事はつらく、休みを取ることもままならなかった。「こんな所で何十年も勤め上げることができるのか…」。脳裏に浮かんだ不安と疑問は次第に「いつ辞めるか」という思いに変わった。

 気持ちが定まらない日々を過ごす中、同じ現場で働いた仲間でウェブ業界に転職した人がいた。当時はHPやインターネットという言葉が世の中に広まり始めた時期。「最先端でかっこいい仕事ができる」との言葉に魅力を感じ、転職を決心した。

 ウェブの仕事は忙しかったが、十数年の経験で知識は人一倍と自負できるほどになった。仕事で知り合った人と結婚した。マイホームを手に入れようと内覧会を回る中で、心の中に「成果が目に見える仕事の素晴らしさをひしひしと感じている自分がいた」。

 父親の防水工事会社を継いだ友人と話す機会があり、自分の思いを率直に話した。すると「猫の手も借りたい状態だから、ぜひ来てくれ」と誘われた。ブランクの長さが不安要素だったが、「現場の仕事を任せるわけじゃない。アイデアを好きなように打ち出してほしい」と切り返された。熱心な誘いもあり2度目の転職を決めた。

 建設業界に戻って感じたのは「昔と変わっていない」。現状を後ろ向きに捉えず、変わっていないだけで「変わるポテンシャルがある」と考えるようにした。若い頃に感じ納得できなかったところを、とことん変えてやろうと思った。

 10代の頃に抱いた「何十年も働けるのか」という疑問の答えとして、「体を動かす以外の働き方もできる会社」を目指せばと考えた。天候が悪い日は現場に出られず、収入が減ってしまう職人の仕事。稼げないなら稼ぐ仕事を作ればいい。ウェブ業界にいた経験を生かし、会社のHPに広告収入が得られる仕組みを導入した。社員の力を借り、SNSで会社の情報をとにかく拡散してもらった。

 建設業界では破天荒なやり方に反発する職人は少なくなかった。丁寧に説明し協力してもらうことに心血を注ぎ、「SNSの管理などに携わってもらった」。時間はかかったが協力の輪は社内に広がっていった。

 「昔は辞めたいとばかり思っていたのに、ここまで熱く取り組むことになるとは」というのが正直な思い。これからも挑戦する姿勢を貫き、「みんなが楽しくなるように変えていこう」と考えている。

【サークル】戸田建設女子ゴルフ部「ゴルフを楽しむ!」が合言葉


  2016年6月に今井雅則代表取締役会長(当時社長)の呼び掛けで発足した「戸田建設女子ゴルフ部」。歴史と実績がある男子ゴルフ部に負けないよう「3年以内に大会成績上位入賞を果たす」ことを目標に14人でスタートした。とにかく「ゴルフを楽しむ!」が合言葉だ。

 1月時点の部員は本社と東京、千葉、関東の各支店に所属する社員15人。年齢や部門、立場も異なり経験や実力もさまざま。男子ゴルフ部OBに参加してもらい和気あいあいと楽しく練習に励んでいる。ラウンド中は各自が課題を設定。スコアは気にせず腕を磨くことに徹しているという。

 年に3回のラウンド練習と女子プロによる練習会を毎年実施。昨年の企業対抗別レディースゴルフ大会では1チームが8位入賞を果たした。今年は昨年よりも好成績を狙い実践的なラウンド練習を企画。部長を務める医療福祉部主任の本多亜紀さんには「出場選手を固定せず、部員全員が一度は経験できるようにしたい」との思いがある。

 どうしてもゴルフ経験者の集まりと思われがち。本多さんは「経験の有無や実力に関係なく気軽に入部してもらい、コミュニケーションの場にも活用してほしい」と呼び掛けている。

【駆け出しのころ】大林組執行役員グリーンエネルギー本部副本部長・安藤賢一氏

  ◇自分のよりどころとなる柱を◇

 大阪出身の自分にとって身近なゼネコンだった当社のことは、大学の先輩たちからも施工現場の話などをよく聞いていました。海外の仕事にも携わってみたいとの思いがあり、当社に入社しました。

 最初の配属先は現場だろうと勝手に思い込み、やる気満々でしたが、会社から伝えられた部署は土木本部の設計部門。勤務場所も東京だと言われ、当初思い描いていたイメージとはだいぶ違うなと感じました。

 当時の担当課長は高卒で入社後に留学した米国の大学でドクターまで取られた、たたき上げで有名な方でした。「努力しないやつは駄目だ」「大学院まで行って何やっていたんだ」などとよく怒られ、ものすごく厳しかったです。

 設計の仕事には、独特の緊張感がありました。設計が間違ったら、そのまま施工して造られてしまい、鉄筋一つとっても構造が持たなくなる可能性があり、取り返しの付かない事態も考えられます。適切に設計したつもりでも大きな地震が来れば不安になり、怖さを感じていました。

  当時の思い出深い仕事の一つは、液化天然ガス(LNG)タンク関連の設計業務。プレストレストコンクリートを用いた新しいタイプの構造物で、耐震性能などの計算・解析をひたすらやっていました。民間のエネルギー関連施設は設計・施工で対応するため、顧客とじかに接する機会も多く、新技術の提案など、営業に近い部分があります。事業全体を俯瞰(ふかん)できるような面白さもありました。

 技術者として貴重な経験をさせてもらう中で、自分の力で新しい分野を開拓したいとの思いが募ります。社内であまり専門的に取り組んでいなかった「地下水」について2年間、米国の大学で学びました。新しく、面白いことに貪欲だった設計部門の担当課長の影響もあったと思います。

 帰国して2年ほど地下関連の設計に携わった後、スイスの研究機関に派遣されます。コミュニケーションはドイツ語が基本で新参者に厳しく、日本からの視察団の対応など大変なこともありました。そんな中でも、ヨーロッパの雰囲気を味わえ、生活は楽しかったです。

 入社から15年のうち約半分は社外にいたため、当社全体の中で自分が何をしているかがよく見えていない感覚はありました。一方で他社の人たちの仕事を見ることができ、逆に当社のカラーがよく見えたことは、良い経験でした。

 仕事を楽しく、面白くするためには、基礎になる力が不可欠。若手には自分の中によりどころとなる柱を築き、自分の売りを作ってもらいたいです。そうした柱がないと周りを説得できず、面白いことも任せてもらえません。

30代半ばに派遣されたスイスで子どもたち雪遊び

 (あんどう・けんいち)1987年京都大学大学院工学研究科土木工学専攻修了、大林組入社。アリゾナ大学大学院留学、NAGRA(スイス)派遣、技術本部原子力本部原子力環境技術部副部長、土木本部本部長室長などを経て、2021年4月から現職。大阪府出身、60歳。

2022年2月10日木曜日

【回転窓】陰陽師と土木

  その昔、病気の原因は怨霊の仕業と信じられ、神職による加持祈祷(きとう)が重要な医療行為の一つとされた。神仏に祈りをささげ、病などの災厄を払う風習は各地に残る▼異常気象や疫病などが毎年のように繰り返された平安時代。急病人には薬による治療よりも、まず加持祈祷を行うことが日常的だったようだ。そこで活躍したのが呪術や祭事を行う陰陽師(おんみょうじ)。なかでも安倍晴明の人気は高く、現代の小説や映画などにもよく登場する▼陰陽師は天文学に通じ、占術を専門とする官職の一つ。悪霊退治も職業として重視されるようになり、清明も式神を自在に操り、災いを取り払ったとされる▼東日本建設業保証の広報誌『EAST TIMES2022冬号』に掲載されている江口知秀氏のエッセーで、全国に残る晴明の伝承が紹介されていた。意外にも井戸に関する伝承が最も多いという。民俗学者の小松和彦氏の見解として、当時の陰陽師が井戸掘りなど土木工事にたけていたとの見方を示す▼異能者と土木技術者の意外なつながり。晴明人気にあやかり、建設業の魅力アップに一役買ってもらいたい。

【RC造で木組みの美しさ表現】香川県庁舎旧本館・東館(高松市)など10件を重文指定

  末松信介文部科学相は9日、建築家の丹下健三氏(1913~2005年)が設計を手掛けた「香川県庁舎旧本館及び東館」など10件の建造物を重要文化財(重文)に指定した。

 旧本館と東館は1958年に建設された初期の丹下作品。RC造で木造建築の木組みの美しさを表現した建物として知られる。同日、「霧島神宮本殿・幣殿・拝殿」(鹿児島県霧島市)も国宝に指定した。

 重文指定された10件は次の通り。△旧三井銀行小樽支店(北海道小樽市)△ニッカウヰスキー余市蒸溜所施設(同余市町)△上野家住宅(山梨市)△京都ハリストス正教会生神女福音聖堂(京都市)△江埼灯台(兵庫県淡路市)△美保関灯台(松江市)△出雲日御碕灯台(島根県出雲市)△香川県庁舎旧本館・東館(高松市)△若戸大橋(北九州市)△鹿児島神宮本殿・拝殿(鹿児島県霧島市)。

【投資額2000億円、延べ28万㎡規模】新宿駅西口地区開発、共同事業者に東急不参画へ

ビルの完成イメージ(小田急電鉄報道発表資料から)

 小田急電鉄と東京メトロが東京・新宿駅西口で計画する「新宿駅西口地区」の開発事業に、共同事業者として東急不動産が参画する。小田急百貨店新宿店本館などを建て替え、延べ約28万平方メートル規模の高層ビルを建設するプロジェクト。10月にも着工し、2029年度の竣工を目指す。小田急と東急不の投資額は2000億円程度を見込んでいる。

 計画地は新宿区新宿3、西新宿1各地内(敷地面積約1万5720平方メートル)。小田急百貨店や新宿ミロードなどの商業施設、小田急電鉄の鉄道設備などを建て替える。ビルの建設を東急不が担い、完成した建物の一部を小田急が所有する敷地の一部と交換する「等価交換方式」の採用を検討している。

 建設するビルは地下5階地上48階建て延べ28万1700平方メートルの規模となる。最高高さは約260メートル。高層部にはオフィス、中低層部には商業施設の機能を入れる。新宿の特性を生かし、来街者と企業の交流の場となるビジネス創発機能も導入する。ビルの設計は日本設計が担当している。既存建物の解体や新ビル建設の施工者は決まっていない。

【最優秀賞は「四国防災八十八話マップ」】土木学会、土木広報大賞2021決定

  土木学会(谷口博昭会長)は、土木インフラの役割や意義、魅力を伝える優れた広報の取り組みを表彰する「土木広報大賞2021」を決定した。

 最優秀賞には四国防災八十八話普及・啓発研究会の「防災の教訓伝承 先人の知恵や工夫に学ぶ『四国防災八十八話マップ』」を選定。優秀部門賞6件と準優秀部門賞11件、特別賞3件も選んだ。表彰式は3月28日に東京都新宿区の土木学会で行う。

 受賞者は次の通り。▽活動・作品名(団体名=所在地)。

 【最優秀賞】

 ▽防災の教訓伝承 先人の知恵や工夫に学ぶ『四国防災八十八話マップ』(四国防災八十八話普及・啓発研究会=徳島県など)

 【優秀部門賞】

 〈イベント部門〉

 ▽橋梁架設見学イベント「かける北九州」~国内最大クレーンで「かける」瞬間を共有する~(川田工業、ツタワルドボク=福岡県など)

 〈映像・メディア部門〉

 ▽土木の魅力PR番組「ドボクリップ~私がキリトル土木の未来~」(群馬県建設企画課=群馬県)

 〈広報ツール・アイテム部門〉

 ▽写真集、アプリ、書籍を活用した土木の魅力発信(寿建設=福島県)

 〈教育・教材部門〉

 ▽「土木クイズ“土木Q”」みんな土木のこと知っとる????(江口組ファン創りプロジェクト=石川県)

 〈商業広告部門〉

 ▽先端ITゼネコンへの変貌を目指す「土木をコードで書きかえろ。」特設サイトと、鹿島が目指す土木の未来が体感できる「KAJIMA DX LABO」による一連のPR施策(鹿島=東京都)

 〈企画部門〉

 ▽紀寿橋梁生誕祭2020in周南~橋にねがいを(紀寿橋梁生誕祭2020実行委員会=山口県など)

 【準優秀部門賞】

 〈イベント部門〉

 ▽清正公さん国づくり狂言 肥後・尾張(国づくり狂言プロジェクト実行委員会、やまかわさとみ事務所=熊本県、愛知県)

 〈映像・メディア部門〉

 ▽UNDER RIVER(大豊建設=東京都)

 ▽技術者向けの工事記録を世界の人々へ伝えたい「青函トンネル」から(鉄道建設・運輸施設整備支援機構=神奈川県)

 〈広報ツール・アイテム部門〉

 ▽新たな発見!しまねインフラツーリズムinIWAMI(いわみインフラツーリズムガイド戦略会議=島根県)

 ▽ツナガルドボクの広報アイテム~ヘルメットクッキーと建設絵本~(ツナガルドボク=鳥取県)

 〈教育・教材部門〉

 ▽絵本「どぼくのおしごと おだがわさいがいへん」(荒木組=岡山県)

 ▽SNSデータ分析による若年層向け広報「ソーカツに聞け」「ドボクイズ」(国土交通省九州地方整備局広報プロジェクトチーム=福岡県)

 〈商業広告部門〉

 ▽「IT’S NOTHING SPECIAL当たり前をつくる。舗装をつくる。」(日本道路建設業協会=東京都)

 〈企画部門〉

 ▽危機感を共有する合同記者会見~情報の伝え手と受け手の協働~(九州災害情報〈報道〉研究会=福岡県)

 ▽鉄道土木の安全・安心と魅力を発信(鉄建建設=東京都)

 ▽土木広報大使「元気丸」による土木漫才での活動及びYouTube「元気丸チャンネル」(元気丸〈オフィスまめかな〉=東京都)

 【特別賞】

 ▽デミーとマツの土木広報大賞2020(噂の土木応援チームデミーとマツ=福岡県)

 ▽SNSを活用した地域防災「ぐんケン見張るくん」(群馬県建設業協会=群馬県)

 ▽対話で創るドボクの未来(九洲日東=福岡県)。

2022年2月8日火曜日

【回転窓】気持ちを楽に習慣づけを

  体重と身長を基に算出するボディマス指数(BMI)は肥満度を示す物差しとして知られる。日本肥満学会が公表している肥満の判断基準ではBMIが18・5以上25未満で「普通体重」、統計的に病気になりにくい体重といわれる▼日常生活を過ごす上で人はさまざまな欲求と向き合っている。その中で食欲と性欲、睡眠欲の「三大欲求」は重要度が高いとされる。命を維持するには睡眠が不可欠。しっかり栄養を摂取しなければ活動できない▼最近おなか周りが気になる、このズボン去年ははけたのに…。ダイエットを思い立つきっかけはさまざまだが、いざ始めても食事に気を配り、運動を習慣付けるのはなかなか難しい。食欲を無理やり押さえ込み、飲まず食わずのようなことをしても長続きはしない▼時事通信が7日、ダイエットに関する記事を配信していた。添えられていた見出しは「ダイエットに近道なし」。肥満気味の人を対象に実施した調査結果をまとめていた▼自分自身の経験からすると食欲を抑えて運動をし続けるのはやっぱり大変なこと。楽な心構えで行動を習慣付けるのがダイエット成功の秘訣(ひけつ)だと思う。

【施工はフジタら】延長1.3kmの17号新三国トンネル、3月19日に開通

群馬県側の坑口(関東整備局報道発表資料から)

  関東地方整備局高崎河川国道事務所が群馬、新潟県境で建設していた国道17号の「新三国トンネル」(延長約1・3キロ)が完成し、3月19日に開通する。旧トンネルは劣化が進行していた上、幅員不足で大型車両のすれ違いが困難だった。新トンネル開通で地域の観光振興や防災機能向上に期待が高まる。施工はフジタ。舗装工は鹿島道路が担当した。

 新トンネルは群馬県みなかみ町永井と新潟県湯沢町三国を結ぶ。施工延長は1284メートル。内空断面積は60平方メートル。旧トンネルの横に幅員と高さを広げた2車線の新トンネルを建設した。2017年からNATMで掘削していた。

 トンネル掘削に当たりフジタは、古河ロックドリル(東京都中央区、阿部裕之社長)と共同開発した山岳トンネル施工用のロックボルト遠隔打設装置「ロックボルタ」を搭載した新型多機能機械を試験投入。最新技術を活用して作業の効率化と安全性向上を図った。

 舗装工を担った鹿島道路も締め固めなどが1台で可能な多機能型施工機械を使ったスリップフォーム工法を採用。ICT(情報通信技術)を組み合わせた「3D-MCスリップフォームペーバ」で大幅な省人化を実現した。

【橋長916m、施工は鹿島JVら】斜張橋「岩城橋」(愛媛県上島町)、3月20日開通

生名島から岩城橋を望む(愛媛県提供)

  愛媛県が建設中の一般県道岩城弓削線(上島町岩城~弓削)で、生名島と岩城島を結ぶ岩城橋を含む延長約2キロの区間が3月20日午後1時ころに一般供用を開始する。同橋の延長は916メートル。PC4径間連結コンポ橋と5径間連続鋼・コンクリート混合斜張橋、PC単純コンポ橋で構成。高さ約137・5メートルのコンクリート製主塔は、斜張橋としては国内トップクラスとなる。

 岩城島側は鹿島・エム・エムブリッジ・富士ピー・エスJV、生名島側は三井住友建設・三井造船鉄構エンジニアリング・昭和コンクリート工業JV、取り付け高架橋は愛橋が施工を担当している。

 上島町内の弓削島と佐島、生名島、岩城島を結ぶ架橋事業で、開通済みの弓削大橋、生名橋と今回の岩城橋により、4島を結ぶ岩城弓削線の全線「ゆめしま海道」(延長約6・1キロ)が開通することになる。町民の生活や救命救急活動、各島の相互支援に寄与するとともに、4島を巡るサイクリストの来訪に期待が寄せられている。

【記者手帖】子供に勧められる業界に

  ある日、高校1年生の娘が将来就きたい職業を真剣に考えていた。少し早いような気もするが、夢や目標を立てて大学の進路をどう考えているか、学校に伝えなければならないという。「大学に行ってから考える」などと言える雰囲気ではないようだ◆イメージ先行で思い描く職業の候補に建設業はない。まだ3K(きつい・汚い・危険)のイメージが強く、良い印象は持っていないようだった。建設業も急速にIT化が進み、女性も活躍できる職業に変わりつつある現状だけを伝え、特に勧めることはしなかった◆記者として建設業で働く人にインタビューする機会は多い。魅力を聞くと「非常にやりがいと達成感がある。建設業に入って後悔はない」という答えが返ってくる。ただ自分の子どもとなると話は別。少し悲しい気もする。若者の入職者が減少する中、親の思いだけで選択肢から除外させることはだめだと思いつつ考えてしまう自分がいる◆染みついたイメージを払拭(ふっしょく)することは難しい。それでも子どもに自信を持って勧められる真に魅力的な業界になるよう、微力ながら貢献していきたいと思う。(大)

【宇宙農業実現へ前進】大林組ら、月の模擬砂加工しコマツナ栽培に成功

月の模擬砂を加工し栽培したコマツナ(大林組提供)

  大林組と宇宙農業の実現を目指す名古屋大学発のベンチャー・TOWING(名古屋市南区、西田宏平社長)は7日、月の模擬砂と有機質肥料を使った植物栽培の実証実験で、コマツナを育てることに成功したと発表した。月の砂を植物の栽培が可能な土壌に加工する技術を確立。月面での食糧確保に宇宙農業で対応すると同時に、滞在中のQOL(生活の質)向上につなげる。

 実証実験では、月の砂を作物の栽培可能な土壌として活用するため、固形化した上でマイクロ波による加熱焼成などで多孔体に加工した。肥料には人間の排せつ物や食品かすなど有機性廃棄物を循環利用する。肥料が多孔体の隙間に入ることで作物の育成を促進する。

 従来技術では、月の模擬砂を多孔体に加工する過程で加熱箇所が偏り、植物栽培に適した多孔体として回収できない割合も多かった。今回の実証実験では均質な加熱を実現することで、月の模擬砂を無駄なく多孔体として回収できるようにした。

 月面開発に向けては、大林組は月の砂をマイクロ波やレーザーで建材化する技術開発を宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと実施。TOWINGは無機多孔体の設計技術を保有している。TOWINGは農業・食品産業技術総合研究機構が開発した人工的な土壌化技術を活用。有機質肥料を使った人工土壌栽培のノウハウも保有している。

 月面開発での有人活動は食糧の確保が課題の一つになっている。長期的な月面有人活動の実現には月面資源の活用が不可欠。地球からの物資輸送は莫大(ばくだい)なコストがかかる。月面での植物栽培が可能になれば食事の幅も広がり、滞在期間中のQOL向上も期待できる。

【トンネル貫通の写真展も同時開催】八重洲ブックセンターで『トンネル本フェア』、3月6日まで

 東京都中央区の八重洲ブックセンターで7日、トンネル関連書籍を集めたブックフェアが始まった。

 同センターと日本トンネル専門工事業協会(トンネル専門協、野崎正和会長)、グッドブックス(東京都中央区、良本光明代表取締役)が連携して実現。トンネル貫通写真のパネル展と合わせて3月6日まで開催する。

 トンネル専門協組織広報委員会の森崎英五朗副委員長(寿建設社長)の発案。写真家・山崎エリナ氏の写真集『トンネル誕生』(グッドブックス)や、トンネル探究家・花田欣也氏の『鉄道廃線トンネルの世界』(天夢人)、作家・田村喜子氏の『土木のこころ復刻版』(現代書林)などトンネル工事や技術者にまつわる11冊を選んだ。

 「これだけトンネル本がそろうのはあり得ない」と花田氏。良本氏は「トンネルの貫通写真や本から希望の光を見いだしてもらえれば」と話した。

2022年2月7日月曜日

【回転窓】大切にしたい花言葉

  赤やピンク、黄色などのかわいい花を咲かせるチューリップは、春の到来を告げてくれる。室内で楽しめる切り花の出荷は例年3月ころにかけて増え、今年もシーズン本番に入った▼一大産地の富山県砺波市では、チューリップの切り花出荷本数が2021年度に過去最多の約240万本になる見通しという。北日本新聞が1月20日付の記事で伝えている▼記事によると市内の事業者が最先端の栽培設備を導入し、生産性を大幅に向上。他の事業者もインターネットなどで販路拡大に力を注ぐ。コロナ禍の巣ごもり需要で、花の人気が高まったことも要因とみる市のコメントも紹介されている▼感染拡大の第6波が2月にピークアウトを迎えるとの予測もあるようだが、しばらくは一人一人が行動を制限せざるを得ない日々が続く。消費低迷の長期化に危機感は募るばかり。そんな中で生産方法や販売方法に工夫を凝らし、花の需要をうまく取り込んでいる事業者には勇気づけられる▼チューリップはいろいろな花言葉を持つ。その一つが「思いやり」。人と人が直接に会っての交流が難しい時だけに、大切にしたい言葉である。

【モデルに乃木坂46・山下美月さん】建災防、年度末労災防止強調月間でポスター作製

  建設業労働災害防止協会(建災防、今井雅則会長)は、3月に迎える「建設業年度末労働災害防止強調月間」の普及啓発用ポスターを作製した。年度末の完工時期を控え、繁忙期で労働災害の多発が懸念されるため、安全衛生意識をさらに高める。

 ポスターのモデルは人気アイドルグループ・乃木坂46の山下美月さん。作業員と桜のイラストを描いたバージョンも用意した。価格(税込み)は会員200円、非会員220円。

 東京都内の会員・非会員と青森、新潟、三重、高知、佐賀、鹿児島各県の非会員は注文を建災防本部教材管理課(電話03・3453・3391)で受け付ける。青森など6県の会員と道府県の会員・非会員は最寄りの建災防支部に申し込む。

【凜】東京都目黒区街づくり推進部地区整備課・池田寿々子さん、畑島美南海さん

  ◇街づくりは生活の延長◇

 東京・目黒区は地域住民が主役の街づくり活動を後押ししている。地区整備課で東急中目黒駅周辺エリアなどを担当するのが係長の池田寿々子さん=写真右=と、入庁2年目の畑島美南海さん。地域住民や庁内部署との調整に日々奔走している。

 地域に積極的に出向き、住民の声に耳を傾けている。今後の街づくりについて「地元住民や民間企業との連携が欠かせない」と池田さん。他の地域で良い取り組み事例があれば、チャットを使って写真を共有することもある。畑島さんも「街づくりは生活の延長線上にある」と話し、生活者目線を大事にしている。

 中目黒駅エリアの活性化プロジェクト「なかめスタイル」では、目黒川河川敷の公共空間・船入場の利活用が課題だった。他区の先行事例を参考に、地元飲食店によるキッチンカー販売ができる仕組みを整備。イベントも開催しやすくし、地域の交流拠点としてにぎわいを生み出した。

 「“楽しい”や“かわいい”など、街づくりを考える上で感受性はとても大切な視点になる」と池田さん。休日に小学生の子どもを連れて都内の都市公園などを巡る中、アイデアを得ることも多いという。学生時代から神社巡りや街歩きが好きだった畑島さんは「各地を歩くことで街の魅力を知ることができる。目黒をもっと理解し、街づくりに生かしたい」と目を輝かせる。

 (いけだ・すずこ、はたしま・みなみ)

【中堅世代】それぞれの建設業・307

人事部でやりがいを見つけてから仕事との向き合い方が変わった

 ◇そのままの自分でいい◇

  建材をメインで扱う企業に勤務する日野幸太さん(仮名)は、営業や人事などさまざまな部署を経験してきた。挫折感を味わうこともあったが、「目の前のことを一生懸命に取り組めば、きっと人から信頼される」と信じて、必死で仕事をしてきた。入社して20年以上が過ぎた今、「仕事ってなんだろう」とふと考えることがある。周囲を楽にするのが働くということではないか。それが自分にとっての答えだ。

 インテリアに興味があった日野さんは、暮らしに直結して多くの人に貢献できると考えて、建材メーカーを選んだ。入社して最初に配属されたのは営業で、まずは自社の商品を必死になって勉強した。

 大手ハウスメーカーの担当で、全国各地のクレーム対応にも追われた。「納品物が違う」などの電話が入ると、現地確認のためにすぐに駆け付けた。楽しい仕事ではなかったが、顧客の多くは紳士的に対応してくれた。「クレームが終われば出張先で羽を伸ばせる」と前向きに考えた。

 開発や製造など工場で働く社員とのつながりも大切にした。若手の日野さんにとっては大先輩ばかり。職人気質で、仕事で手を抜くような人間は相手にされないが、「人情味が厚く、きちんと仕事をすれば親身になってくれた」。真剣勝負で取り組む姿が次第に認められるようになった。

 工場とのつながりが強まっていたため、次の異動先が人事部と伝えられたのは「青天のへきれきだった」。人事部は営業とは全く違う環境だった。外回りや出張はほとんどなく、デスクワークがメインの部署で「席に座っているのが苦痛だった」。

 採用担当として、学生と接する機会が多くなり、向き合い方が変わった。いい人材を採用するためには、学生に入社を決断してもらわなければならない。商品を売って買ってもらう営業と近い気がした。「これなら楽しみを見いだせる」。

 合同説明会用の会社紹介の動画では、気の合う後輩と一緒に家の形をした段ボールをかぶってPRしたことも。「少しくらいアホやってもいい。人事担当が楽しそうな方が会社を魅力的に思ってもらえる」。

 現在、日野さんは広報部に所属している。立場が上がった今でも誠意を持って仕事をする姿勢は変わらない。「言われたことをただやるのではなく、どうやればより存在意義を出せるのか」を日々考えている。

 休日は少年野球のコーチをしている日野さん。子どもたちに「道具を大事に」するように教えている。「物も人も大切にすれば自分のために活躍してくれる。働くことも似ている」。

 営業から人事部への異動が決まった時、顧客が「何で日野を外すんだ」と言ってくれたと聞いた。「信頼の証しと思った。うれしかった」。やるべきことに集中し真剣に取り組んだからこその言葉であり、自分の姿勢に間違いはなかった。

 仕事も人生もなるようにしかならない。もしも新人時代の自分に声を掛けるとしたらとの問いに、「そのままでええよ」と笑顔で答えた。

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】加納屋建設「爽やかなイメージに刷新」

  加納屋建設(広島県尾道市、村上龍雄代表取締役)が1月、20年ぶりにユニホームをリニューアルした。爽やかなイメージが目を引くユニホームは、コーポレートカラーの黄色を大胆に使った配色がアクセント。「建設業はとにかくきつい作業の多い業界。動きやすい・疲れにくい・涼しいなど、少しでも作業着で楽に作業ができるように作った」(担当者)という。

 背中のロゴは再帰反射リフレクター仕様で、夜間作業時の視認性を確保する。夏用の上着はストレッチが効き吸汗機能も備えたニット生地を使用した。パンツのフロントとバックのポケット袋布にメッシュ生地を使用。ひざ裏はベンチレーションになっており、空気が入り蒸れにくいなど、細かい部分にも気を配っている。

 デザインから製作まで約3年かけた。リニューアルを担当した村上貴映副社長によると「同業他社や他業者にも褒めていただき、『どこのメーカーで作成したのか』と聞かれることもある」と好評のようだ。村上副社長は「今後は若者の求人アピールの一助になれば」と話している。

【駆け出しのころ】三井住友建設取締役専務執行役員・相良毅氏

  ◇自分にはさらに厳しく◇

 東京・西新宿の三井ビルなどの超高層ビルを見て、建築への思いが強まりました。大学では意匠系を学んでいましたが、デザイン力では同期生らに太刀打ちできないと感じ、現場施工で行こうと決意を強くしました。

 縁があって当社に入り、最初の配属先は九州支店でした。初めての現場はJVのサブとして施工に携わる大型商業施設の工事で、10カ月ほど勤務しました。広大な現場で機械油にまみれながらくい打ちの品質を管理したり、職人と一緒になって資材を運んだりと、一日中現場に出ていたのを覚えています。

 目の前の仕事に必死でつらいと思うことはありませんでした。部分的に先輩から教わることはありましたが、新人時代は自ら学んで覚えることが普通でした。

 本格的に技術者として携わった現場は、1年目の後半に赴任した福岡市内の病院です。作業員に物おじせずに指示を出すなど、現場に慣れてきた頃、帰宅しようとした時に副所長から声を掛けられました。

 ある晩の午後8時ころ、10トンダンプ2台がメインゲートに降ろした砕石を「明日、作業員が来る前までにならしておけ」と厳命を受けました。翌朝の午前4時、一人でスコップを持って作業を始めました。午前6時になっても半分も終わらない。途方に暮れていた時、現場に出てきた作業員が次々と手伝ってくれました。その時に言われた「大学出てもやをいかんなぁ(うまくいかないな)」の一言が今でも耳に残っています。作業後、副所長から「お前が先頭になって動かなければ人は動かない」と諭され、「率先垂範」の大切さを学びました。

 技術者として一つ一つの現場での経験が成長につながります。仕事を楽しく感じられるようになってきたのは、入社4年目に担当した北九州市内の事務所ビルからです。当時、九州では当社が担う一番大きな現場でした。仕事を俯瞰(ふかん)して見られるようになり、現場をある程度コントロールする余裕が出てきた頃でした。

 業績を上げよう、認めてもらおうと力が入りすぎ、先輩や協力業者から孤立したこともあります。自分は間違っていないと妥協ができず、周囲から厳しすぎると煙たく思われることもしばしばでした。しかしながら、衝突していても現場が終わると仕事の姿勢を評価してくれる人がいて、技術者として信頼してくれていたのだと思います。

 「人に厳しく、自分にはさらに厳しく」をモットーに頑張ってきました。失敗しても「なにくそ」と立ち向かい、「一丁一から出直しや」と切り替えるのが大切です。諦めず前に進んでいけば必ず道は開けます。

入社1年目、病院工事の担当者らと(右から2人目が本人)

 (さがら・たけし)1981年早稲田大学理工学部建築学科卒、三井建設(現三井住友建設)入社。九州支店長、安全環境生産管理本部長などを経て2021年から現職(安全環境生産管理本部・DX推進担当)。長崎県出身、64歳。

2022年2月4日金曜日

【ダム湖畔で演奏を】水資源機構、寺内ダム(福岡県朝倉市)にストリートピアノ

 水資源機構筑後川上流総合管理所は、寺内ダム(福岡県朝倉市)の湖畔にストリートピアノを3月19日から27日まで設置する。2017年九州北部豪雨の復興祈念を兼ねたダム広報の一環。ヤマハが全国で展開する「LovePiano(R)」プロジェクトで九州初の取り組みとなる。期間中、ダムへ訪れた人が誰でも自由に弾くことができる。

 豪雨水害に見舞われた朝倉・東峰地域の再生・発展に向けた社会実験となる。ダム湖畔のあまぎ水の文化村せせらぎ館2階に設置するのは、デザインが異なる5台のピアノで展開するLovePianoのうち、イラストレーターのチョコムーさんによるイラストが描かれた5号機=写真(報道発表資料から)。

 演奏可能時間は3月19~24日が午前10時から午後4時30分まで、同25~27日が午前10時から午後8時30分まで。1回の演奏時間は15分までとする。同25~27日はライトアップ「あ!さくら~水灯桜~」も予定されている。

【施工は鴻池組】国道176号名塩道路、生瀬トンネルが貫通

貫通直後のトンネル坑内(近畿整備局提供)

  近畿地方整備局兵庫国道事務所は2日、国道176号名塩道路(兵庫県西宮市山口町~宝塚市栄町、延長10・6キロ)の「生瀬トンネル」が1日に貫通したと発表した。名塩道路に整備する最後のトンネルで、延長は311メートル。施工は鴻池組が担当した。

 名塩道路は現道で慢性化している交通渋滞の緩和や交通安全の確保、異常気象時の交通確保を目的に、道路の拡幅とバイパスの整備を進めている。

 区間内には3本のトンネルが計画され、名塩西トンネル(250メートル)と名塩八幡トンネル(292メートル)は開通済み。貫通したトンネルは幅員10メートルの片側1車線で、仮称は「城山トンネル」だった。

 2020年1月に西側から掘削に着手し、2年余りで貫通した。生瀬トンネルを含めた2・2キロ区間は26年度の開通を予定し、宝塚市側の6・1キロ区間が全て供用する。残りの2・1キロ区間は開通予定時期を示していない。

【国登録有形文化財に】鴻池組旧本店(大阪市此花区)の洋館・和館、4月に一般公開

旧本店の洋館(手前)と和館

  鴻池組は、大阪市此花区の「鴻池組旧本店洋館・和館」が国の登録有形文化財に登録されることを記念して、初の一般公開となる見学会を4月20、27日に開催する。

 同社旧本店は2021年11月19日に開催された文化審議会が新たに登録有形文化財に登録するよう文部科学相に答申。今春、官報告示を経て正式に登録される予定となっている。

 一般公開は事前申込制で、1回当たり上限10人まで。鴻池組担当者によるガイドツアー形式で1日5回行い、1回当たり約50分。参加は無料。

 新型コロナウイルス感染症対策のため、本人のみが入館できる形式となり、子供など本人以外の同伴者は入館できない。

 7日から3月16日まで鴻池組コーポレートサイトのトピックス欄にある「旧本店見学会お申込みサイト」から申し込む。申し込み多数の場合は抽選の上、3月30日までに結果を連絡する。参加者には開催当日の入館方法などを改めて案内する。

【設計・施工は清水建設】千葉ジェッツ新アリーナ(千葉県船橋市)、月内着工へ

アリーナの完成イメージ(千葉ジェッツ提供)

  男子プロバスケットボール・Bリーグの千葉ジェッツは、2日に開いた記者会見で新アリーナの建設に着手すると発表した。三井不動産と千葉ジェッツ親会社のミクシィが事業主体となり、千葉県船橋市の南船橋駅近くに延べ約3万平方メートル、客席数1万席の新アリーナを建設する。月内に着工し、2024年春の竣工を目指す。設計・施工は清水建設。外装コンセプトデザインはHKS、ランドスケープデザインはSWA Groupが担当した。

 新アリーナの名称は「(仮称)LaLa arena TOKYO-BAY」。大型商業施設・ららぽーとTOKYO-BAYの駐車場(船橋市浜町2)だった場所に建設する。敷地面積は約2万平方メートル。規模はS造4階建て延3万1000平方メートル。

アリーナ内部の完成イメージ(千葉ジェッツ提供)

 アリーナ中央に4面の大型ビジョンを設け、全周囲からコートが見やすい設計で試合の臨場感を高める。敷地内に大きな場外広場を設け飲食ブースなどを出店する計画もある。会見で千葉ジェッツの田村征也社長は「(新アリーナの建設で)より多くの人に試合を楽しんでもらえる。アリーナグルメの充実など試合観戦以外でも楽しめる非日常体験を提供していきたい」と語った。

 新アリーナはミクシィと三井不動産の共同出資会社が所有し運営する。千葉ジェッツは24~25年のシーズンから利用する。現在は船橋市総合体育館(習志野台7の5の1)を本拠地として使用。観客席は4220人で、新アリーナは倍以上の規模となる。

アリーナの鳥瞰イメージ(千葉ジェッツ提供)

2022年2月2日水曜日

【回転窓】給食と雪道の合い言葉

  寒い日の続く今冬。関東のある小学校は、子どもたちのために昨日の給食で「まごはやさしいごはん」を提供した▼豆、ゴマ、ワカメ(海藻類)、野菜、魚、しいたけ(キノコ類)、いもの7品目の入ったまぜご飯。新型コロナウイルス感染症が再拡大し、黙食が日課の給食を少しでも楽しんでもらう気持ちも献立に込めたと聞いた▼二十四節気の大寒から立春へ、今週は暦の上で季節が変わるものの、寒気が居座り、まだまだ降雪予報の地域が多い。生活に欠かせない除雪は、感染症対策を徹底しつつ地域建設業各社が昼夜の作業に対応している▼オペレーターの班編成を工夫し、感染者や濃厚接触者の発生に備えたり、密を避けて過ごしてもらえるように広い休憩所を用意したりした建設会社がある。人工知能(AI)で降雪に応じた作業計画を立案するような研究開発も進んできている▼立春を過ぎても週末は再び寒気が南下する予報となった。雪道走行の合言葉は、ゆっくり、ゆるやか、ゆったりの頭文字を取った「3Y」。外出せざるを得ないなら余裕を持って急な加減速を避け、除雪に感謝しながら。常に安全運転を心掛けたい。

【東京都内で建設業死亡者の増加傾向続く】東京労働局、墜落転落対策を重点指導

  東京都内の建設現場で死亡災害の増加傾向が続いている。東京労働局によると2021年(1~12月)の建設業死亡者数が1月28日時点の速報値で24人(前年14人)。今年も既に3人(前年同期1人)が亡くなっている。

 1日に都内で会見した同局の辻田博局長は死亡災害の半数を占める墜落・転落に関する設備面で法令違反が多いと指摘し、「対策が的確に実施されるよう重点的に取り組む」と今後の方針を示した。

 同局は建設業の死亡者数の急増を受け、昨年6~7月に緊急対策を実施。この結果、6~7月の死亡者数はゼロだったが、8月以降に死亡災害の発生が続き、今年に入っても増加傾向に歯止めが掛かっていないのが実情だ。昨年の死亡事故の発生要因(昨年末時点、死亡者数23人)を見ると「墜落・転落」が13人と半数を占めた。前年(2人)と比べ約6倍に増加している。

 昨年12月、都内544現場を対象に実施した集中指導の結果を1日に公表。法令違反は指導現場全体のうち、65・6%に当たる357現場で見つかった。前回調査(昨年6月、785現場)の違反率は56・6%(444現場)。法令違反の発生割合が上昇している。

 違反事項別では、下請への指導未実施といった「元請事業者の安全衛生管理面」が311現場(法令違反357現場の87・1%)、足場の手すり未設置など「墜落・転落防止」が221現場(同61・9%)だった。現場管理者が労働災害の発生要因として実感する項目も調査。「作業の慣れ」が247現場(全現場の45・4%)、「危機意識の低下」が199現場(36・6%)と多かった。

 こうした実態を踏まえて同局は元請事業者に対し、安全衛生活動など管理面での対策や、墜落・転落災害防止など設備面での対策が的確に実施されるよう指導を重点化。新規入場者教育の強化と徹底などを周知・指導するとともに、都内の労働基準監督署による現場指導の強化を図る。

【コロナ禍で消毒徹底】群馬県内で懸命の除雪、交代シフト確保し24時間対応

除雪は常時の備えが欠かせない(沼田土建提供)

  強い冬型の気圧配置で降雪量が増えている今冬、降雪が目立つ群馬県内は、新型コロナウイルスの感染対策を徹底しつつ懸命の除雪作業が続いている。群馬県建設業協会の会員企業によると、24時間対応の除雪体制を3月末まで継続するという。オペレーターが各班7人の2班編成をベースに、交代しながら作業に当たる。感染対策を考慮したシフトで、除雪機械のハンドルのアルコール消毒や低温下での換気などに努めている。

 群馬県は、感染者の増加に伴い、まん延防止等重点措置の適用が続いている。群馬建協会員企業の沼田土建(沼田市、青柳剛社長)は、除雪の作業班のために広い休憩室を確保し、時間をずらして利用してもらっている。各所に消毒液や使い捨てのアルコールタオルを配置。班が入れ替わる際にはテーブルをふくなど消毒をこまめに行っている。除雪機械も交代時にハンドルなどをふく。ふぶいた時間は窓の開閉が難しいものの、換気に努めている。

 降雪量によっては除雪機械に助手が乗車する。感染対策として、感染者が発生した班は自宅待機になる。感染者が増えたなら、各班のオペレーターを分けた上で助手を増強し、2班編成を保つ。班に所属しないオペレーターを含め、冬季の道路交通を維持する体制を整えるという。

 群馬県内の建設会社には、濃厚接触者となって自宅待機になる職員が出ている。県は、建設業を社会機能の維持に欠かせないエッセンシャルワーカーに位置付けており、群馬建協は県と建設業の濃厚接触者の自宅待機期間を短縮する方針を確認している。

 県北部のみなかみエリアは、2021年末に記録的な大雪になった。太平洋赤道域東部(南米沖)の海面水温が平年を下回るラニーニャ現象の影響から、寒気が流れ込みやすく、22年も降雪が多い。関越自動車道・水上IC近郊には、スタッドレスタイヤ装着でも2輪駆動の車の来場に注意を呼び掛けたり、無料シャトルバスを運行する道の駅への停車を求めていたりするスキー場がある。地域経済を維持するためにも除雪への期待は大きく、「『地域の守り手』としての備えを続ける」(青柳社長)方針だ。

【施工は清水建設JV、開閉式屋根の膜撤去が進行中】豊田スタジアム(愛知県豊田市)の大規模改修進む


  サッカーJリーグの公式戦などで使われている豊田スタジアム(愛知県豊田市)の大規模な改修工事が進んでいる。施工を担当している清水建設・トヨタT&S建設JVは、日綜産業(東京都中央区、小野大社長)の先行床式システムつり足場「クイックデッキ」を採用。改修期間中の施設使用に対応し、安全面にも役立てている。

 同スタジアムは2001年に豊田市が建設した。規模はS造地下2階地上4階建て、建築面積4万0734平方メートル。長寿命化を図るため、高さ45メートルの開閉式屋根の膜等撤去・防水改修、同51メートルに位置する固定屋根のキールトラス、サブトラスなど鉄骨構造躯体の塗装修繕改修などを行う工事が21年6月から行われている。

 改修は、高所作業が多く大規模な足場が必要。施設をスポーツやイベントに使いながら行うため、スケジュールへの柔軟な対応、安全の徹底を目指し、スタンド席からの足場構築や高所作業車の使用を選ばず、空中で足場を展開できるクイックデッキを採用した。

 現在、開閉式屋根部で約5000平方メートルの足場を組み上げ、開閉式屋根の膜を撤去中。各部の塗装も工区を分けて進めている。全体でのクイックデッキ採用面積は約8500平方メートル。完成予定は23年4月。21年12月時点の進捗(しんちょく)率は25%。同現場の橋本敏志工事長は「クイックデッキは、空中であることを忘れるほど安定感がある。残りの工期も飛来・落下ゼロで進める」と話す。