自然と触れ合える庭師の仕事にやりがいを感じている |
庭師として活躍したい-。前職を辞めて新たな道に進もうと、守屋育子さん(仮名)が思い立ったのは今から10年ほど前。造園会社に入って修行を積み、5年前に独立し生まれ故郷で小さな会社を立ち上げた。自分を含めた3人の職人で、個人宅の庭造りや剪定(せんてい)などを手掛けている。
男性の仕事というイメージが強い建設業にあって、女性を受け入れ活躍してもらうため、官民挙げた環境整備の取り組みが進む。大きな建設現場では女性専用トイレの設置も珍しくなくなってきた。ただ個人を相手にする庭師の仕事で女性の存在はまだ珍しい。庭造りや剪定に出向いた先でも、「お父さんの跡を継いだのですか」「だんなさんと一緒にやっているのですか」などと言われることが多い。きゃしゃな守屋さんが、まさか自ら率先して庭師の道に進んだとは、なかなか思われないようだ。
前職は病院勤めの管理栄養士だった。「誰かのために」と志を持って目指した仕事ではあったが、朝出勤して、帰宅の途に就くまで一日中病院の中にいることがほとんど。仕事が嫌になったわけではなかったが、その日の天気さえ分からないような生活に「このままでは…」と不安が募っていた。
小さなころから、植物が好きだった。常に自然と触れ合える庭師の仕事に漠然とではあったが、あこがれを抱いていた。しかし、知り合いに関係者もおらず、あてもなかった。たまたま見つけた造園会社の募集を見て、自分の気持ちを抑えることができなくなった。前職を辞める決心も付いた。
5年間の修行を経て、起業した会社で守屋さん以外の職人は2人とも男性。力仕事は彼らに任せることが多かったが、2年ほど前、設立当初から一緒に仕事をしてきた1人が独立したいと言い出した。大事な戦力ではあり、引き留めたい気持ちもあった。それでも自分と同じような夢を持つ彼の気持ちを考え、快く送り出すことにした。
2人になった仕事で守屋さんも男性に任せていた力仕事を率先して手掛けるようにした。小さいながらも会社を率いる社長としての責任感からだ。それでも3人で分担していた仕事を2人で行うのだから、その分のしんどさはあった。
「職人募集」の求人票を出してはみたものの、なかなか来てもらえない日々が続いていたが、ようやく若い人材に入ってもらえることになった。
女性庭師が率いる会社として何か特色を出そうと、いろんな事を考え、風水でカウンセリングを行う資格を取得した。その知識と女性ならではの感性を生かした庭造りの在り方を思案している。
新たな取り組みの中でも必要となるのは人材。賃金や休日を見直すなど、働き方改革は避けて通れない。せっかく好きで始めた庭師の仕事だ。職人たちにも魅力を持って長く働き続けてもらえるような会社の運営に、本気で取り組もうと決意を新たにしている。
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