2019年4月15日月曜日

【駆け出しのころ】長谷工コーポレーション常務執行役員建設部門技術担当・山本三里氏

 ◇技術力と人間力のアップを◇

 高校時代、手にした本に描かれていた設計図面を見て、寸法線などがすごく繊細で美しく、素晴らしいと感動しました。大学で建築を専攻し、将来進むべき道を考えていた際、ヘルメットをかぶった現場監督が図面を抱えながら作業員に指示している姿を見て、自分には現場で働く仕事が向いていると感じました。

 入社後は東京周辺のマンション現場を中心に担当してきました。新入社員で何も分からない中、上司や先輩たちの指導を受けながら毎日がむしゃらに働きました。夜には事務所に戻り、昼間に行った作業での技術的な事柄を「技術ノート」に書き込み、翌日先輩にチェックしてもらう日々。真っさらなノートに書き込んだ杭工事や鉄筋工事などの内容は、いまでも鮮明に覚えています。

 先輩に借りた専門書「絵でみる鉄筋専科」を読み、現場の技術は数字なのだと思い知らされました。鉄筋のアンカーやかぶりなど、すべて定められた数字をしっかり覚えることが施工管理の一歩となります。新入社員への役員訓話では、技術ノートと鉄筋専科の話を毎年伝えています。

 入社4年目で型枠工事の担当となり、コンクリートの施工図を寝る間を惜しんで何枚も書きました。建築は、1ミリ単位で仕事をしていることを実感しながら現場での躯体の収まりなど、設計図書を見る力を養うことができました。

 最近はICT(情報通信技術)を駆使した勉強会なども見られますが、社員教育の一環で技術ノートはいまでも使われています。技術指導でのコミュニケーションの大切さはいつの時代も変わりません。

 現場では役所や近隣などとの対外的なマネジメント力も重要です。一方通行の狭い道路で大きな機械をどう搬入すればいいか。さまざまな問題解決に当たり、関係機関の許可や地域住民の同意を得るために何度も通いました。苦難を乗り越え、周囲の足場とシートを外し、建物全体が見えた時の喜びは何物にも代え難いものがあります。

 社内では現場を後方支援する体制が整備・拡充されてきていますが、所長が先頭に立って熱意を伝え続けないと現場は前に進みません。建設生産ではBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)などITによる高度化が急速に進んでいますが、コンピューターやロボットの世界だけではなく、人としての魅力といった「人間力」を高めることも大切です。

 技術の継承では、若い人たちの考え方と最先端の技術をかみ合わせ、ベクトルをそろえて導くことがわれわれの役目になると思います。長谷工のDNAをつなぎ、技術力のアップを目指します。

入社1年目、毎日がむしゃらに働いていた
(やまもと・みさと)1980年東京理科大学理工学部建築学科卒、長谷川工務店(現長谷工コーポレーション)入社。建設部門第三施工統括部建設2部長、第一施工統括部長、執行役員などを経て、2019年4月から現職。山梨県出身、61歳。

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