阿蘇大橋地区斜面対策は19年度末に既成を予定する (3月撮影、提供:熊本復興事務所) |
2016年4月の熊本地震の発生から3年を迎えた。熊本県と県内市町村の災害復旧事業の工事は約9割が発注を終え、6割超が完了。阿蘇地域で国道57号の災害復旧「北側復旧ルート」の整備が進み、益城町で土地区画整理事業がスタートするなど県が掲げる「創造的復興」の姿は徐々に見えつつある。一方、入札の不調・不落は依然として高い割合で発生し、円滑な施工体制の確保が課題だ。19年度は県の熊本復旧・復興4カ年戦略の最終年度に当たる。早期の復興と将来の発展に向けた取り組みの加速化が求められている。
JR豊肥本線は20年度運転再開
大きな被害を受けた益城町では被災市街地復興土地区画整理事業が18年9月に認可。同事業と一体的に行う県道の4車線化も1月に着工した。
阿蘇地域では無人化施工技術を駆使して進められていた阿蘇大橋地区の大規模斜面崩壊対策工事が進み、18年9月に有人作業に全面的に移行。国土交通省は12日、同対策工事を19年度末に概成させ、斜面崩壊で被災し復旧工事の進むJR豊肥本線の運転を20年度に再開させると発表した。
地震やその後の降雨により斜面崩壊や土石流が多数発生したことを受け、阿蘇山・阿蘇カルデラでの直轄砂防事業もスタートした。
阿蘇大橋の架け替えと合わせて20年度の開通を目指す「北側復旧ルート」はメインの構造物となるトンネルが貫通し、2月に行われた貫通式で蒲島郁夫知事は異例のスピードで進む工事を「奇跡」と称賛した。このほか道路関係では国が権限代行で進めている俵山トンネルルート(県道熊本高森線)の全線本復旧が今秋に完了する。
大切畑ダム復旧本体工事発注へ
熊本城では天守閣のうち大天守の外観の復旧が進み、今秋に天守閣前広場が開放される予定。今後、復旧の様子を見学できる特別見学通路の工事も進められる。
18年6月には県内で初めて災害公営住宅が西原村に完成した。県の集計によると県内で計画されている災害公営住宅70団地1717戸のうち3月末時点で29%に当たる25団地496戸の工事が完了している。
堤体にひび割れが発生するなどした西原村の農業用ため池「大切畑ダム」は堤体を移設する災害復旧の事業費が決定、県が本年度中に本体工事を発注する。
県が創造的復興のシンボルと位置付ける熊本空港の民営化ではコンセッション(公共施設等運営権)事業の優先交渉権者が3月に決定した。同事業では旅客ターミナルビルの運営などに加え、地震で被災した国内線と国際線のターミナルビルの一体的建て替えも行う。関連して空港へのアクセスを改善する新たな鉄道整備について県とJR九州が2月に合意。今後、ルートなどの検討が進められる。
入札不調・不落依然高い発生率
県の集計によると県・市町村の災害復旧工事は18年12月末時点で総件数1万0191件のうち件数ベースで88・4%(9012件)の発注を終え63・9%(6516件)が完了した。
一方、入札の不調・不落は国交省と県、市町村の18年度の発注工事7585件のうち1201件(18年12月時点)で発生し、前年度よりは落ち着いたものの15・8%と依然として高い割合で発生している。被災庁舎を建て替える人吉市と大津町の新庁舎建設工事で不調・不落が続くなど特に建築工事で落札決定しないケースが目立つ。
国交省は被災地で円滑に工事を進めるため土木工事積算の復興歩掛かりと復興係数の継続を決めたが、今後は「防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための3か年緊急対策」に伴う工事量の増加が見込まれ「予断を許さない状況」(県幹部)は続く見込みだ。
終盤に差し掛かった災害復旧を着実に進めるためにも余裕期間の設定や発注ロットの大型化といった地域の実情に即した入札・契約制度の弾力的な運用に加え、受・発注者間での情報共有など円滑な施工体制の確保に向けた対策が引き続き必要となる。
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