2022年9月15日木曜日

東北新幹線復旧の1カ月・1/JR東日本、早期の運転再開へ総力結集

 福島県沖で3月16日に発生した地震による影響は各地に広がり、JR東日本の鉄道施設も大きな被害を受けた。特に東北新幹線は走行中の車両が脱線し、高架橋の損傷や軌道変位、電柱の傾斜・圧壊など構造物、設備の被害も多く、被災箇所が広範囲に及んだ。同社は2004年の新潟県中越地震、11年の東日本大震災、昨年2月の福島県沖地震といった過去の経験を生かしながら、建設会社や設備工事会社、建設コンサルタントなどと総力を結集して復旧に当たり、約1カ月という短期間で全線運転再開にこぎ着けた。明日16日で地震発生から半年、東北新幹線復旧までの軌跡を追った。 
 (東北新幹線復旧取材班)
 宮城、福島両県で最大震度6強を観測した今回の地震で、東北新幹線は那須塩原・盛岡駅間で運転を見合わせた。JR東日本によると、東北新幹線の被害は土木設備約60カ所、軌道変位・損傷約300カ所、駅設備約10カ所、電柱約90本、架線断線2カ所、架線金具等の損傷約550カ所など、計約1000カ所にも上った。  
 「福島・仙台間で部分的に東日本大震災の最大値を超えるような揺れ方をした箇所があった」
 JR東日本の鉄道事業本部設備部門土木ユニット(大規模改修プロジェクト推進センター)マネージャーの久保木利明は、地震波の伝わりやすさなどが被害の大きさと関係していると推測する。
 土木構造物に桁・スラブの落下や柱の破断といった「損傷度・大」レベルの被災はなかったものの、桁・スラブの沈下や鉄筋はらみ出しなど「損傷度・中」レベルが福島・仙台駅間の高架橋部2カ所で発生。「中程度の損傷を受けた2カ所と脱線現場の復旧が、土木部門としての大きなミッションだった」と久保木は話す。
 新幹線統括本部新幹線設備部保線ユニットリーダーの小田和美は、発災直後にメールで送られてきた震度や点検範囲の情報から「半月ほどで全線運転再開した1年前と同じぐらいの地震規模ではないか」とイメージした。ところが、その後に車両の脱線や高架橋の被害などの情報が続々と入り、復旧には相当の時間を要すると予測。被害状況の調査を終えると、保線部門が担当する軌道の復旧規模は「昨年2月の地震被害と比べて約1・4倍」(小田)に上ることが分かったという。
 不幸中の幸いだったのは、車両が緊急停止してから脱線したことで、その現場周辺で軌道の損傷が抑えられたこと。小田は「走りながら脱線すれば、レールを固定する治具などがすべて破壊されていただろう」と説明する。
 昨年の地震と同様、電柱の傾斜や折損、架線を支持する金具など電気関連設備の被害も目立った。同本部新幹線電気ネットワーク部電力ユニットマネージャーの濱田貴弘は「揺れが昨年より大きかったからか、架線にパンタグラフの微妙な曲がりによるくせが付いた箇所が倍以上も多かった」と話す。
 運転見合わせを余儀なくされた東北新幹線は、迅速に点検と復旧工事が進み、3月22日に損傷規模の小さな区間から順次運転を再開。最後に残った福島・仙台駅間が4月14日に運転を再開した。架線関係の修繕などには時間を要したことから、全線運転再開後も郡山・一ノ関駅間でしばらく徐行運転が続き、5月13日から通常ダイヤによる運行に戻った。
 =敬称略
 東北新幹線復旧の約1カ月にわたる軌跡を、事業者であるJR東日本の対応に続き、最前線で復旧に携わった関係各社の取り組みにスポットを当てる。(次回から2面に随時掲載します)



source https://www.decn.co.jp/?p=146093

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