2024年11月1日金曜日

建築へ/上智大学1号館が東京都選定歴史的建造物に、れんが調の重厚な外観

 上智大学のシンボル校舎「1号館」(東京都千代田区、1932年竣工)が東京都選定歴史的建造物に選ばれた。スイス人建築家が設計したれんが調の学校建築。竣工当時はエレベーターも設置されるなど、最新の設備と重厚な建築で知られた。戦時下の東京大空襲による被害もなく、残存しているケースが少ない貴重な建物だ。四谷キャンパスの正門近くに位置し、現在も大学のランドマークとして親しまれている。
 東京都選定歴史的建造物は、築50年を経過した歴史的な価値を持つ建造物のうち、景観上重要な建物。都知事によって選定される。
 1号館の所在地は紀尾井町7の1。RC造地下1階地上4階建て延べ4518平方メートルの規模となる。日本で数多くのカトリック教会を手掛けた建築家マックス・ヒンデル(1887~1963年)が設計した。
 外壁は1階が花こう岩のルスティカ積みを採用。表面を滑らかに加工せず、自然な凹凸をあえて残しているのが特徴だ。2階以上は赤色二丁掛けタイル貼りで変化を持たせている。各階の窓の上下には突起状のリブを配置し、水平線を強調した印象的な外観を生み出している。
 上智大学はカトリック修道会の一つ、イエズス会が中心となり、1913年に創立した。18年に大学令が公布されると大学への昇格を目指すようになる。当時の学校関係者が大学に昇格した時、いろいろな施設や教室が必要になるであろうとの思いから、1号館の建設に向け動き出した。
 建設の背景には世界規模でのドラマと善意があった。資金の確保に尽力したのはドイツ人のブルーノ・ビッテル神父。ドイツのケルンに募金事務所を設置し同国内だけでなく、オランダやフランス、米国などのカトリック教会や学校に募金を呼び掛ける書面を送付。多くの人が募金に応じた。
 募金活動を展開する中、大きな影響を与えた人物の1人がローマ教皇ピオ11世だ。校舎建築のため募金する人に対し、「大いなる愛と父親としての感謝の念を込めて教皇祝福を与える」と発信し、全世界からの寄付につなげた。
 32年6月12日に1号館が完成。地下は学生食堂や浴室、機械室、1階には事務室や図書館などを配置。2~4階は大小さまざまな教室が入った。当時としては珍しいエレベーターも完備した。
 校舎西側の2、3階には約310人が収容できる講堂(398平方メートル)を設け、入学式や卒業式、ミサ、講演などの会場として使った。71年に体育館が造られると学校行事の会場は体育館に移行した。同年、講堂は劇場に改造。壁や柱をペンキで黒く塗り、照明装置も設置した。現在も学生の演劇活動の場として活用。「上智小劇場」と呼ばれている。
 1階の廊下の天井には竣工時からある時計がつり下げられている。上智大学総務局の栗原康行さんによると「卒業式などで学生がよく写真を撮っており、フォトスポットになっている」という。現在は1階の廊下にあるが、建物完成時は全階か、2階の廊下だけに設置していたと見られている。
 上智大学は1号館を改修する時に外観のイメージを壊さないよう、行政と協議を行う。例えば窓枠は鉄製からアルミ製に変更しているが、竣工当時の風合いを再現した。内部も昔のままを維持する一方、安全性確保などの観点から必要な改修や設備の導入を行っている。
 2008年度には耐震改修を実施した。新型コロナウイルスが流行した時は「昔の建物なのでコロナの時の換気基準を満たしていなかった」(総務局・松崎憲隆さん)ため、全ての教室の窓に換気扇を設置することになった。その際、建物裏手に設置したため、表側の景観は何も変わっていないという。
 今後の1号館の在り方について、栗原さんは「上智大学のシンボル的な建物である一方、教室として今でも使っている。学生の思い出の場所になるよう、現在の状態を維持して将来の世代に引き継いでいきたい」と展望する。




from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=168518
via 日刊建設工業新聞

東保証/23年度財務統計指標、総資本経常利益率が3年連続低下4・06%

 東日本建設業保証(東保証、栗田卓也社長)は10月31日、中小建設会社の経営活動実態を分析した「建設業の財務統計指標(2023年度決算分析)」を発表した。収益の総合指標にしている総資本経常利益率は前年度から0・26ポイント低下の4・06%と3年連続で低下した。資材価格の高騰や賃金のアップなどで経費が増加し、利益が圧迫されていることが要因と見られる。地区別では新幹線工事で全体的に売り上げが伸びていた北陸地区が5・18%と最も高かった。
 調査は公共工事前払金保証を扱った中小建設会社の経営活動実態を把握し、合理化の参考にしてもらう目的で行っている。23年度版は23年4月期~24年3月期の決算書を受け取った東日本にある企業のうち、2万0574社を対象に調査した。
 経常利益を総資本で割った総資本経常利益率は、業種別で電気が5・38%で最も高く、建築が2・55%と最も低い。地区別では北陸が最も高いのに対し、最低は東北の3・15%だった。収益性は「ここ数年、東北の低さが全体の足を引っ張っている」(東保証)状態が続く。福島県での除染工事など、震災関連工事が減少する中で、24年度以降は東北の動きや能登半島地震による北陸への影響などが注視される。
 資金の流動性を表す「当座比率」は、東日本全体の平均で前年度比8・06ポイント低下の401・30%で、業種別では電気の482・10%が最高で、土木建築が341・59%と最低だった。
 財務の健全性を示す自己資本比率は、東日本平均で1・33ポイント上昇の42・90%。業種別では電気が52・55%で最も高く、最低は34・17%の建築だった。
 労働生産性の代表指標になる1人当たり付加価値は、東日本平均で17万円増の1171万円。業種別では土木建築が1289万円と最も高く、管が1040万円と最低だった。都道府県別では東京が1347万円で最も高く、岩手県の929万円が最も低い。東京は生産性向上の効果が出やすい大型工事が多く行われている影響で1人当たり付加価値が高まっていると見られる。




from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=168516
via 日刊建設工業新聞

大阪府/茨木寝屋川線を阪急京都線と立体交差、400億円投じ25年度事業化

 大阪府都市整備部は茨木市から寝屋川市に至る都市計画道路・茨木寝屋川線街路事業のうち阪急京都線との立体交差部を含む未着手の約1・5キロ区間について、2025年度に事業化する対応方針案(事前評価)をまとめた。約400億円を投じ、39年度の完成を目指す。10月31日に開いた府建設事業評価審議会都市整備部会で事業目的や費用対効果、整備スケジュールを説明。説明資料を一部修正の上で「事業実施を同意する方向」という結論を得た。
 対象区間は阪急茨木駅大住線との分岐点(茨木市大住町)から茨木鮎川線に合流する地点(寺田町)までの延長約1500メートル。両側に自転車道などが付く片側1車線道路。計画区間は両端が一般部、中央部が掘割とボックスカルバートからなる地下構造物となる。平面道路の一般部を経て掘割区間で傾斜を付け下り、阪急京都線や府道高槻茨木線、牟禮神社直下をボックスカルバートでアンダーパスする。幅員は一般部21・5~24・5メートル、阪急京都線を挟んだ北側の掘割部24・5~55・0メートル、南側掘割部21・5~23・5メートル、ボックスカルバート部15・1~17・9メートルを見込む。北側の掘割部は両側に歩車道と路肩で構成する側道が連結する。
 全体事業費は396億5000万円。内訳は調査・設計費が8億8000万円、工事費171億1000万円(道路築造工160億6000万円、電線共同溝工10億5000万円)、用地費216億6000万円を概算する。
 今後は府民から意見を募集し、25~28年度に測量・設計、28~37年度に用地買収、31~39年度に工事を予定する。事業が実現した場合の費用便益比(B/C)は1・39。
 資料の修正で委員からは「平面交差ではなく立体交差させる必要性をしっかり示すべきだ」「渋滞の状況と解消する効果をもっと詳しく説明した方がいい」といった意見が出た。
 同日は「国道170号高槻東道路道路改良事業」の再々評価も実施したが、審議継続となった。




from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=168508
via 日刊建設工業新聞

関東整備局利根川水系砂防ら/浅間山火山砂防で遠隔降灰調査実証実験

 ◇内閣府SIPと連携
 関東地方整備局利根川水系砂防事務所が直轄火山砂防の対象となっている浅間山で、最先端技術を導入した防災の取り組みを展開している。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)と連携し、遠隔で操作する降灰調査ロボットなどの社会実装を進め、革新的な土砂災害防止の実現を目指す。10月30日、浅間山中腹にある東京大学地震研究所浅間火山観測所(長野県軽井沢町)で実証実験の様子を公開した。
 火山噴火の危険性が高まると火口周辺の立ち入りが規制される。噴火後は降灰による土石流や火山泥流の危険性を調べるため、直ちに降灰量の調査が定められている。ただ危険な立ち入り規制区域内での降灰量調査が必要になるため、ドローンやロボットを使った遠隔での調査手法の確立が急がれている。
 内閣府のSIP(第3期、2023~27年度)では、「スマートインフラマネジメントの構築」の1課題として「人力で実施困難な箇所のロボット等による無人自動計測・施工技術開発(火山砂防)」を挙げ、遠隔降灰調査技術の開発に取り組んでいる。開発は工学院大学(羽田靖史准教授)、国際航業らのグループが担当している。
 同グループが開発した降灰厚計測計測デバイスは、ドローンにより山中に運ばれ降灰計測後に回収される。同日公開された機体は3号機。23年度の実証実験で使用した2号機はアルミ製だったが、3号機はカーボン製に素材を変更。これにより機体重量を大幅に軽量化(5・5キロから3・8キロに)した。
 回転するブラシで灰をかき、3Dカメラで撮影することで降灰厚を計測する仕組みは変更ない。3Dカメラに市販のiPhoneを使うことで操作性が向上し、内部機構も単純化できたという。量産を含めた社会実装を見据え、入手が容易な市販品を多用し、メンテナンス性、耐水性、防じん性を高めた。
 同日の実証実験では降灰厚調査に用いる降灰マーカーや降灰スケールのほか、開発中の降灰サンプリングデバイスや可搬型雨量計なども紹介した。これら技術を組み合わせ、噴火後、迅速に火山灰の状況を把握。取得したデータを国土交通省の火山噴火リアルタイムハザードマップに入力し、土石流や火山泥流の危険性をいち早く把握して周辺住民の早期避難につなげるのが狙いだ。
 利根川水系砂防事務所では、噴火時の緊急調査を想定した遠隔無人での降灰計画策定を目指している。




from 技術・商品 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=168510
via 日刊建設工業新聞

大林組ら/石川県輪島市の啓開工事で現場状況をデジタルツイン化、ドローンを遠隔運航

 大林組とKDDIスマートドローン(東京都千代田区、博野雅文社長)は、石川県輪島市の国道249号啓開工事に自動充電ポート付きドローンを常設し、現場状況を日々デジタルツイン化する取り組みを始めた。全長約3キロにわたって切り土・盛り土から舗装までを行う工事で、日ごとに広範囲の土量計算や工事出来高管理などの計測作業を実施。広範囲の自動計測ができる充電ポート付きドローンの遠隔運航により、迅速に現場状況を把握できる。関係者へ情報共有し、現場作業の効率化に貢献している。
 ドローンは月~金曜日の毎日、都内にあるKDDIスマートドローンのオフィスで遠隔運航。撮影した写真を低軌道衛星通信(スターリンク)経由でクラウドにアップロードし、写真から3Dモデルとパノラマ写真を生成して現場状況をデジタルツイン化する。
 2022年度に実施した検証事業で現場監理業務を80%削減できることを確認しており、今回の啓開工事の監理業務でも同程度、作業を効率化している。自動充電ポートを活用しない一般的なドローンによる測量と比較した場合も、現場までの移動時間や現場での準備やデータ処理などにかかる時間(1日当たり約75分)の削減を確認している。
 9月21日に発生した能登豪雨でも、自動充電ポート付きドローンの運航を継続。3Dモデルを生成することで、迅速な現場の被害状況把握に活用した。工事現場のデジタルツイン化で現場状況を把握するだけでなく、ドローン撮影で得たデータとさまざまな工事情報を組み合わせて活用し、建設機械施工の自動化などにつなげる。




from 企業・経営 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=168525
via 日刊建設工業新聞