2024年11月28日木曜日

回転窓/探求心と熱意の結晶

 長年愛用していた急須を不注意で割ってしまった。金継ぎでは直せないほど粉々に。残念ながら処分することにした▼新たな急須を探しに陶器店などを見て回り、なじみのお茶屋さんから透明で独特な形状の急須を薦められた。医療用器具や哺乳瓶などに用いられているトライタンという合成樹脂製で美しい光沢があり軽量。耐衝撃性や耐熱性、耐薬品性も兼ね備えているという▼形は酒器などに使われる和食器の片口をモチーフにしたデザイン。片手で持ちやすく、利き手を選ばない左右対称の形状が手になじんだことから購入を決めた▼ペットボトル飲料やティーバッグが普及する中、茶道具メーカーは茶葉から入れるお茶の風味、おいしさが日常から切り離されているとの危機感から新しい急須の開発に着手。さまざまな急須の形状や素材、持ちやすさ、洗いやすさなどを徹底的に分析・検証し、課題を一つ一つ改善していき3年をかけてようやく完成させた。急須という小さな茶道具も今の時代に寄り添うための工夫が詰まっている▼建設技術も開発者たちの探求心と熱意の結晶。込めた思いをくみ取り、きちんと伝えていきたい。




from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169286
via 日刊建設工業新聞

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