2024年11月15日金曜日

建築へ/日建連が木造建築の普及後押し、木造・木質プロジェクトデータ298件を公表

 日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は木造建築の普及や木材の活用をさらに進める。会員企業が施工した木造・木質建築プロジェクト298件のデータを10月に公表。建物の用途や耐火性能、主な木造採用部位などをまとめた。市場分析などの活用が可能という。一覧には「新国立競技場」や「名古屋城本丸御殿」といったランドマークプロジェクトも多数掲載。木材を多彩に取り入れた建築の誕生に期待がかかる。
 公表したのは会員企業が施工を手掛けた木造・木質建築プロジェクトのうち、公開可能な298件。日建連のホームページで確認できる。
 298件を用途別で見ると、最も多かったのが「学校施設」(53件)で、全体の18%を占めた。次いで「事務所ビル」(34件、11%)、「福祉施設」(31件、10%)と続く。このほか「スポーツ施設」や「研究所」「駅・空港・ターミナル」「歴史的建造物」など幅広い用途に木材が使われている。
 298件のうち新築プロジェクトが256件と大多数を占め、増築は25件、改修は13件、その他は4件だった。その他は「四阪日暮別邸移築計画」「旧広瀬邸煉瓦書庫・茶室ほか保存修理工事」(いずれも愛媛県)といった歴史的建造物が含まれる。竣工年が最も古かったのは2001年竣工の「白石市立福岡中学校体育館」(宮城県)で、集成材を梁や屋根の構造材として用いた。
 木材使用量を公表しているプロジェクトのうち、最も多かったのは「南陽市文化会館」(山形県)。3570立方メートルの木材を柱や梁、ブレースなどに使った。「流山おおぐろの森中学校」(千葉県)は3518立方メートル、「流山市立おおぐろの森小学校」(同)には2420立方メートルを使用。同小学校は、木材の利用促進に貢献した優良な施設を顕彰する「木材利用優良施設表彰」(主催・木材利用推進中央協議会)で環境大臣賞を21年に受賞した。
 樹木が二酸化炭素(CO2)を吸収・固定する特性に着目し、脱炭素化の一環で木材を活用する動きも見られた。環境に配慮して適切に管理された森林で生産された木材(森林認証材)を活用したプロジェクトを認証する制度を8件のプロジェクトで活用していた。
 具体的には「マルチモビリティステーション」(東京都)など4件が国際的な森林認証制度に基づく「SGEC/PEFCプロジェクト認証」を、「Port Plus大林組横浜研修所」(神奈川県)など3件が森林管理協議会の「FCS認証」をそれぞれ取得していた。
 木材の積極活用が進む中、適切に管理された木材の認証を得ることで、プロジェクトの付加価値をさらに高めようとする動きも出てきそうだ。
 木造・木質建築の情報提供の一環として、日建連はプロジェクトの公表に合わせて木造情報をまとめた独自パンフレット「もくネタ!」も発行した。中大規模建築物の木造・木質化に関する情報に特化したのが特徴。
 木造建築の経験が少ないゼネコンなどの活用を想定しており、「発注者から相談を受けた際、情報を得るためのファーストステップの『ネタ帳』のような使い方をイメージして作成した」(日建連)という。
 「耐火」や「耐震」「維持管理」といった木材活用に関する基本的な情報のほか、「法解釈」「科学的根拠」「経済効果」など、木造・木質についてさまざまな切り口から資料を整理。木造・木質建築に関する技術や法律、メリットをまとめた国や地方自治体、団体が発行する冊子を紹介している。
 脱炭素化や植林サイクルへの貢献、快適な室内環境の創出によるウェルビーイングといった付加価値を生み出す木材活用に関心が高まっている。日建連は木造・木質化に関する積極的な情報提供を通じて、これらニーズに応えていく。




from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=168910
via 日刊建設工業新聞

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