◇「人物本位で仕事の結果を見てほしい」
東京・紀尾井町のグランドプリンスホテル赤坂跡地で進む再開発事業のうち、住宅棟を建設するプロジェクトの空調設備工事で、高砂熱学工業に所属する2人の女性技術者が奮闘している。現場代理人を務める入社7年目の豊岡真奈美さんと、同じく3年目の吉田英美さん。今年4月からコンビを組み、来春以降に本格化する工事に向け、準備に追われる。最盛期には50人を超す技能者を指揮する豊岡さんは「性別に関係なく、人物本位で仕事の結果を見てほしい」と話す。
西武プロパティーズ(埼玉県所沢市、安藤博雄社長)が進める「紀尾井町計画住宅棟新築工事」は、都内有数の規模を誇るグランドプリンスホテル赤坂跡地の再開発事業のうち、免震構造を採用したRC造地下2階地上21階建て延べ2万2700平方メートルの住宅棟を建設するプロジェクト。日建設計が設計・監理を担当し、西武建設・大林組・前田建設JVが施工を担当する。高砂熱学工業は空調設備工事を受注し、吉田さんは昨年6月、豊岡さんは今年4月に現場に配属された。
豊岡さんが現場代理人を務めるのは今回が初めて。高等専門学校の電気工学科を卒業し、技術者として入社した08年から6カ所目の工事で、現場を指揮する大役を任された。吉田さんは12年春の入社から2カ所目の現場。「竣工を待たずに今の配属が決まったので、この現場ではぜひ、竣工の瞬間に立ち会いたい」と話す。
産業界全体で女性の活躍にスポットが当たり、建設業界でもこれまで以上に女性が働きやすい環境づくりを進める機運が高まっている。「仕事をする上で性別を意識することはほとんどないし、世の中の流れも気にならない」と豊岡さん。これまで赴任した現場では「先輩方が働きやすい環境づくりにずっと取り組んでくれていた」と感じることも多かった。
現在は、空調設備工事の本格化に向け準備作業の真っ最中。豊岡さんは「工事が始まる前にどれだけ頑張れるかが勝負所。日々つらいことも少なくない。けれどもそれを乗り越えるていくのが仕事の醍醐味(だいごみ)だと思う」と話す。一方、「現場で技術者としての経験を積み、将来は設計業務にも携わってみたい」という希望を持つ吉田さんは、頼りになる先輩所長と二人三脚で仕事と向き合いたいという。
「決して女性技術者は特別な存在ではない。けれどもいつかは『自分を見て入社を決めた』と言ってくれる後輩ができたらうれしい」。豊岡さんは吉田さんと共に、周囲の期待に応えたいと強く願っている。
「現場ではコミュニケーション能力が何よりも大切」と話す豊岡さん㊧と吉田さん |