ゼネコン各社が、技術研究所などに実証施設を設け、建物単体で年間の1次エネルギー収支ゼロを目指す「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」の実現に向けた技術開発に力を入れている。省エネや創エネ、蓄エネなどの技術を最適に組み合わせ、環境への影響を最小限にするのが目的。エネルギー消費量の多い都市部に特化したZEBを追求する社や、エネルギー収支のバランスに加え、二酸化炭素(CO2)排出量の削減に一段と力を入れる社もある。 ZEBは、1次エネルギー消費量を省エネ性能の向上やエネルギーの面的利用、オンサイトでの再生可能エネルギー使用などにより削減し、年間消費量を正味(ネット)でゼロまたはおおむねゼロを達成する建築物。 政府が4月に閣議決定した第4次エネルギー基本計画では、2020年までに新築の公共建築物など、30年までに新築建築物の平均でZEBの実現を目指すことが明記された。建築に求められるスペックが省エネから「ゼロエネ」に移行する中、各社とも対応技術の開発に余念がない。 大成建設は、横浜市戸塚区の技術センターにZEB実証棟(RC一部PCa造3階建て延べ1277平方メートル)を5月に完成させた。環境負荷の大きい都市部でZEBを実現する「都市型ZEB」の初弾。適用した技術・システムの性能を検証すると同時に、快適性やコストパフォーマンスの向上を図り、都内で実建物での都市型ZEBの検討を進める。 大林組は、東京都清瀬市の技術研究所本館「テクノステーション」(S造3階建て延べ5535平方メートル)で、年間を通じてCO2排出量をゼロにするソースZEB化に向けた工事を終えた。ZEBを前進させた試みで、省エネなどによる実質的なCO2削減対策を再生可能エネルギーの利用などで補い、CO2排出量をゼロにする体制を構築した。 清水建設は、山梨県北杜市で設計・施工を手掛けた「生長の家 森の中のオフィス」(総延べ8154平方)でZEBの取り組みを具体化。自然通風などの活用で消費電力を大幅削減すると同時に、太陽光発電や間伐材を利用したバイオマスプラントなどで消費電力を賄っている。 ZEB化に必要な要素技術の開発も進む。戸田建設は、太陽光パネルで発電した直流電気を照明器具などにそのまま供給し、電流変換ロスを抑えるシステムの開発に取り組んでいる。 五洋建設は、東京都文京区の本社ビル別館(RC一部S造4階建て延べ1661平方メートル)に導入した省エネ技術を検証中。西松建設は、東京都世田谷区に建設した高齢者施設(RC造5階建て延べ2829平方メートル)をフィールドに、ZEBの設計技術の確立に向けた空調システムの検証を進めている。 低コストの汎用技術で高効率の省エネを追求するのは鹿島。東京都調布市の技術研究所本館研究棟(RC造地下1階地上5階建て延べ8914平方メートル)では、低い照度でも明るさ感を確保できる照明計画や、ひさしによる日射制御などで高いCO2削減効果を生み出している。竹中工務店は、CO2排出量を抑制する次世代型省エネオフィスルームを考案した。 民間の市場調査会社は、国内のZEB市場が2030年度には竣工ベースで7000億円を超えると予測している。省エネに比べ創エネは設備の導入コストがかさむとされ、いかに安く効果の高い技術を開発していくかが市場拡大のカギとなりそうだ。
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