首都圏を中心に、建設工事に欠かせないダンプトラックの不足を懸念する声が出ている。工事量の増加にダンプの数が追い付かなくなるとの不安だ。運転手の高齢化も進み、労働環境の劣悪さから若手の減少も続く。首都圏ではこれから、東京外かく環状道路都内区間やリニア中央新幹線、2020年東京五輪関連の施設整備など大規模工事がめじろ押し。関係者の間には、現場でダンプの奪い合いが始まると危惧する声もある。
埼玉アスファルト合材協会(島村健理事長)が10月末にさいたま市で開いた会合。会員会社から「工事への対応に強い危機感を持っている」と訴える声が上がった。埼玉県内で今秋以降、ダンプトラックの不足が一段と深刻化することが懸念されているからだ。同協会が8月、会員企業を対象にアスファルト合材の運搬車両の手配状況を調査したところ、いずれの支部でも、繁忙期の今年1~2月は施工者からの搬送要請に対して手配できたのは7割台にとどまった。現在も顧客に工期の調整や限定台数での施工を要請。早朝・夜間や祝日の配送などで対応しているという。
同県内の普通ダンプトラックの台数(自動車検査登録情報協会統計)は、04年の1万5257台から13年は1万2911台へと15・4%減少。約200社が加盟する埼玉県ダンプカー協会の島田松夫会長は「廃業が続き、会員はピーク時の半分ほどに減少した。新規に開業しようにも新車は1台1500万~1600万円もする。燃料費も高騰している」と厳しい現状を指摘する。国土交通省の資料によると、全国のダンプの台数は、ピークの07年には17万1800台(営業用6万5607台、自家用10万6193台)あったが、11年には16万3477台(営業用6万3132台、自家用10万0345台)に減った。台数が減っても工事が少なければ問題はなかったが、東日本大震災の復興工事や、経済対策で公共工事や民間工事が増えた影響でひっ迫感が強まった。
ダンプ運転手の高齢化も深刻だ。ダンプ労働者が加盟する全日本建設交運一般労働組合(建交労)全国ダンプ部会(廣瀬肇事務局長)が13年12月~14年1月に行ったアンケートによると、運転手の年齢で最も多かったのが60代の40・6%、次いで50代の27・6%。70代以上も9・2%あった。一方、20~30代はわずか3・8%にとどまる。燃料代などの経費を差し引いた昨年の純所得の平均は283万円。日給制や歩合制の事業所が多く、賃金も変動しやすい。業界を所管する国交省は女性活用も含めた入職促進策を進めているが、就労環境が厳しいため、状況の好転はすぐには期待できないのが実情だ。
公共工事の設計労務単価では建設ダンプ関係の単価も工事と同様に引き上げられたものの、廣瀬事務局長は「実際に単価が上がったという回答は27・8%。変化がないという回答が64・2%もあり、引き上げの浸透が不十分」とみる。需要が増加していることから、「いったん廃業した事業者が再開する例も皆無ではないが、状況は厳しい。業界の構造的な問題が大きい」と指摘している。
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