2019年3月29日金曜日

【回転窓】新時代へ気持ちを整理

きょうで2018年度も実質終了。週明けの月曜日には、5月1日の改元に向けて新元号が発表される。果たしてどんな名称になるのか▼本紙は先月初旬から約2カ月にわたって「紙面で振り返る平成の歩み」と題した15回のシリーズ企画を掲載した。毎回2年ずつ、平成という時代に建設業界で起こった出来事を紙面で報じた内容から振り返った▼バブル経済崩壊前の平成初頭。市場の活況を背景に建設産業は人材不足が深刻化。若者の建設離れを食い止めようと官民挙げたイメージアップに取り組み、なお不足する穴を埋めるべく外国人材の活用が期待される一方で、不法就労が社会問題となっていた。さらに言えば平成元年は4月からの消費税導入を控え、その扱いが業界の大きな関心事だった▼平成も30年が経過した今、また同じような状況になっていると思えなくもない。ただ確実に違うのが、今の日本は「超」が付く高齢化社会で人口減少の局面に入っていること。反面教師的な意味も含めて、未来に向けた過去の検証は必要であろう▼平成最後の1カ月となる4月を新たな時代を迎える気持ちを整理する期間にしたい。

【15年度入社は10%未満が4割】ゼネコン31社、3年以内離職率の低下傾向顕著に

主要ゼネコンが採用した新卒社員の離職率が低下傾向にある。日刊建設工業新聞社の調査に回答した31社のデータによると、15年度新卒社員の3年以内離職率は「10%未満」が最も多く、全体の約4割を占めた。13年度入社の離職率は「10%以上20%未満」という回答が4割を超え最多だったが、14年度入社から離職率の低下傾向が顕著になっている。

 アンケートは1月16日~2月28日に実施。13~15年度入社の離職率を33社に聞き31社が回答した。3年以内離職率は新卒で入社した社員のうち3年以内に離職した人の割合を示す数値。就職活動中の学生が入社後の働きやすさの目安にしている。

 15年度入社の離職率を13年度と比較すると▽30%以上=3・2%(13年度比6・5ポイント低下)▽20%以上30%未満=16・1%(6・5ポイント低下)▽10%以上20%未満=38・7%(6・5ポイント低下)▽10%未満=41・9%(19・3ポイント上昇)-となった。15年度と14年度は離職率にほとんど変化がなく、超売り手市場といわれる新卒採用活動を踏まえ、この時期に各社で入社後の対応に変化があったと推察できる。

 大林組、鹿島、清水建設、大成建設、竹中工務店の大手5社の離職率は5%以内。竹中工務店は31社全体で見ても1・7%と最も低く、3年連続で3%未満をキープした。

【2019年度から第1ステップ着手】品川駅西口駅前広場整備、全体事業費1300億円想定

整備完了後の品川駅西口駅前広場の機能イメージ
(画像提供:国土交通省)
関東地方整備局は、品川駅(東京都港区)の西口で計画する駅前広場などの再整備で事業計画(案)をまとめた。国道15号上空に人工地盤(デッキ)を設け、次世代型交通ターミナルやにぎわい広場を整備。基盤整備の全体事業費は、道路管理者が担当する道路事業が約800億円、民間事業を約500億円と試算した。ターミナル整備に向け、来年度に民間企業へのヒアリングを実施する。

 事業計画(案)は、 27日に東京都内で開いた「国道15号・品川駅西口前広場整備事業計画検討会」(座長・岸村隆幸日本大学理工学部土木工学科特任教授)の最終会合に提示した。プロジェクトでは駅前広場の1階部分となる国道15号の拡幅を道路管理者が担う。上空デッキ北側のターミナルは官民が連携して設ける。南側に置くにぎわい広場と商業施設は民間が建設する。

 交通ターミナルは、自動運転技術を活用した最先端モビリティーなどの乗降と、駅の東西自由通路から続く歩行者導線「センターコア」で構成する。ヒアリングなどで事業手法を決め、2021年度の実施方針の公表を目指す。事業者との契約締結は22年度を目指す。にぎわい広場の整備は19年度に道路上空の利活用方針や募集要項を公表。20年度に優先交渉権者の選定を予定する。20~21年度に関係機関との協議・調整や都市計画手続きの着手を想定する。

 工程は3段階に分け、19年度から第1ステップに入る。国道15号の拡幅に向けた用地買収や京急品川駅の地平化のため、京急線の連続立体交差事業に着手する。第2ステップはリニア新幹線が開通する27年度から32年度まで。上空デッキ北側部分と1階駅前広場拡張の完成を予定する。第3ステップは32~42年度の期間を想定。2階上空デッキ南側部分やにぎわい広場の完成を目指す。

 同検討会には有識者や関係行政のほか、関東整備局が事業協力者として選定した京浜急行電鉄と西武プロパティーズ、JR東日本の3社が参画していた。

【延べ10.9万㎡、21年春開業へ】JR九州熊本駅ビル新築が起工

 JR九州が熊本駅周辺開発のメインプロジェクトとして計画する「熊本駅ビル(仮称)新築他工事」の安全祈願祭が28日、熊本市西区春日の建設地で開かれた。

 同ビルは商業施設やホテルなどで構成する複合施設でS一部RC造地下1階地上12階建て延べ約10万9000平方メートル。同社の駅ビルでは博多駅ビルに次ぐ規模となる。2021年春の開業を目指す。設計は日建設計、施工は大林組が担当。

 神事では祝詞奏上などに次いで安全祈願行事でJR九州の青柳俊彦社長が斎鎌(いみかま)の儀、蒲島郁夫熊本県知事と大西一史熊本市長が斎鍬(いみくわ)の儀、亀井忠夫日建設計社長が斎鋤(いみすき)の儀を行い、最後に大林組の大林剛郎会長が土山元治工事事務所長の介添えで起工の杭を打ち込んだ。引き続き祭壇に玉串をささげ、工事の安全と円滑な進捗(しんちょく)を祈念した。

 閉式後、青柳社長は「住んで良し、働いて良し、集って良しの街づくりを熊本駅周辺で実現したい」とあいさつ。蒲島知事と大西市長は来賓祝辞で陸の玄関口にふさわしい街づくりへの期待感を表明した。

 亀井社長は「新しい駅舎、駅前広場が完成し、2年後に駅ビルが完成すれば白川口は非常ににぎわいのある都市空間になる」と述べた。大林会長は「安全確保に細心の注意を払い、持てる技術を結集し品質確保にも万全を期し、誠心誠意施工に取り組む」と力強く話した。

 熊本駅ビルの建設地は白川口(東口)駅前広場の南側隣接地。建物の店舗面積は約3万9000平方メートル。1~8階にシネマコンプレックス(複合型映画館)を含めた商業施設、8階にウエディング施設、9階以上に約200室のホテルを配置し、新たなシンボル空間として滝が流れる「水と緑の立体庭園」を設ける。

【12事務所から140人以上参加】設計事務所スキー大会、日建設計が団体総合優勝

 建築設計事務所に所属するスキー・スノーボード愛好者らが日ごろの練習の成果を発揮する第31回「全国設計事務所スキー大会」が3月9、10の2日間、長野県小諸市のアサマ2000パークで開かれた。

 12事務所から140人以上が参加。団体総合の部は日建設計が24年ぶりに優勝の栄冠を手にした。11連覇を懸けて臨んだ日本設計は2位、梓設計が3位となった。

 大会は参加事務所で構成する全国設計事務所スキー会が主催し、日刊建設工業新聞社などが協賛した。

 個人戦男子の部はスキーで植松繁さん(ジェイアール東日本建築設計事務所)、スノーボードで武田和也さん(石本建築事務所)が優勝。女子の部はスキーで吉村飛実さん(日建設計)、スノーボードでは佐川真美さん(梓設計)が勝利を収めた。

 個人成績は次の通り(敬称略、かっこ内は所属事務所)。

 【スキー男子】1位=植松繁(ジェイアール東日本建築設計事務所)▽2位=谷口琢磨(スチール設計)▽3位=小林政信(日建設計)▽4位=井上滋道(梓設計)▽5位=伊藤雅人(日建設計)▽6位=西川健(日本設計)▽7位=竹歩夢(リーゼン)▽8位=竹部友久(日本設計)▽9位=高橋泰文(久米設計)▽10位=金井田晃央(同)

 【スノーボード男子】1位=武田和也(石本建築事務所)▽2位=山崎厚(日建設計)▽3位=野村哲(同)▽4位=竹重剛毅(梓設計)▽5位=田中泰典(日本設計)▽6位=深澤衛(INA新建築研究所)▽7位=村瀬弘幸(日本設計)▽8位=粕谷朋弘(INA新建築研究所)▽9位=荒井基樹(山下設計)▽10位=藤岡隆(久米設計)

 【スキー女子】1位=吉村飛実(日建設計)▽2位=宮澤真紀(リーゼン)▽3位=柳瀬りつ子(構造計画研究所)▽4位=升岡薫(INA新建築研究所)▽5位=高田万琳(日建設計)▽6位=佐藤亜紀(構造計画研究所)▽7位=福田さち子(スチール設計)▽8位=立田彩(日建設計)▽9位=福田悦子(ジェイアール東日本建築設計事務所)▽10位=黒澤智子(日建設計)

 【スノーボード女子】1位=佐川真美(梓設計)▽2位=山本恵美子(日建設計)▽3位=米森美来(スチール設計)▽4位=川崎香織(ジェイアール東日本建築設計事務所)▽5位=堀口智香(同)▽6位=米森椿(スチール設計)▽7位=野田うらら(山下設計)。

【「工芸美術」の技の継承へ】国交省、迎賓館赤坂離宮改修の職人名簿公開

 国宝建築を支える職人をたたえる-。国土交通省は内装や建具など「工芸美術」の技の継承と担い手確保に向け、国宝「迎賓館赤坂離宮」(東京都港区)の改修工事に携わった職人の名前を残し、技を紹介する取り組みを始める。職人たちの功績を顕彰するとともに、工芸美術の魅力を広く発信する。

 文化財の改修には工芸美術の技が随所に必要となるが、技を受け継ぐ職人の数は年々減少し担い手の確保が重要な課題だ。官房官庁営繕部は昭和の大改修以降、迎賓館の改修工事に従事した職人の「名簿」をホームページに掲載した。

 工芸美術のうち△手織り緞通(だんつう)△紋ビロード△石こう装飾△金箔(はく)押し-の四つも掲載。技の内容や職人の言葉を通じて魅力を伝えている。今後、名簿を追加掲載し、紹介する工芸美術の種類も拡充する。

 迎賓館赤坂離宮で最も格式高い「朝日の間」の内装改修を終え、4月2日に一般参観が再開される。

2019年3月28日木曜日

【回転窓】仮囲いを入口に

建設専門紙記者という職業柄か、工事現場の仮囲いを見掛けるとつい気になってしまう。かつては許可関係の掲示があるだけの素っ気ないものが多かった。今は工事概要を分かりやすく記したり街の変遷を紹介したりと、バリエーションに富んでいる▼全国建設業協同組合連合会(全建協連)は、仮囲いを「工事中と人々を結ぶ装置」と位置付け、学生向けデザインコンテストを実施。57グループが応募するなど話題を呼んだ▼東京・渋谷では、知的障害があるアーティストの作品で仮囲いを彩る試みが始まっている。仕掛けたのは福祉を軸とした社会実験などに取り組んでいるヘラルボニー(岩手県花巻市、松田崇弥代表取締役)という企業だ▼建設会社がサポート費用として作品使用料を支払い、福祉施設とアーティストに還元される仕組み。渋谷の現場を皮切りに、全国で仮囲いプロジェクトを展開していくそうだ▼仮囲いは建設現場と市民との境界線に設置される。壁になるのか交流の入り口になるかで、意味合いは大きく変わろう。建設現場が幅広い人たちを結ぶ接点になる-。すてきな出会いの広がりを期待している。

【著者に聞く】成蹊大学名誉教授・浅見和彦氏『日本文学きまま旅』

 2008年8月~15年8月に日刊建設工業新聞に掲載されたコラム「文学気まま旅」が書籍化された。執筆者である浅見和彦成蹊大学名誉教授が専門の日本古典文学などと全国の知られざる名所をひも付けながら、その土地の魅力を紹介。小さな名所を巡る旅が昨今のオーバーツーリズムの問題解決にもつながると指摘する浅見名誉教授に、コラム執筆時のエピソードなどを聞いた。

 □日本の観光は偏りすぎ□


 コラムの話をいただいた時、最初は畑違いの建設業界の新聞に書くことはできないとお断りした。その後も熱心に推挙していただいた上、父親が建築家であり、専門分野の古典文学で方丈記の作者・鴨長明も建築の才ある人物だったことも何かの縁と感じ、引き受けることにした。

 日本の観光地というと京都や奈良、鎌倉など有名どころは数多い。ただ、日本の旅行や観光は偏りすぎているのではとも感じる。東海道新幹線は東京から横浜、名古屋、京都、大阪までを結んでいる。それぞれ観光の要所ではあるが、通過区間にも無数の街がある。途中下車してみると、それぞれの土地には多くの歴史や物語があり、食べ物もおいしく、人情も厚い。一気に移動して切り捨てるのはもったいない。

 昔の東海道は、人々が数週間ほどかけて移動していた。行く先々でおいしい食べ物を味わい、素晴らしい風景を眺める。今や忘れかけ、埋もれかかっている旅の名所を紹介し、多くの人たちとその価値と魅力を共有したい。コラムにはそうした思いを込めている。

 □全国各地に名所あり□


 旅案内はするけれど、単なるガイドブックにはしたくなかった。その土地にある物語のほか、そこで暮らす人々の生活や気風といったものを通して、各地を見て回っていきたいと考えた。ガイドブックにはどんな店があるとか、どこがビューポイントだとかといった情報も必要だろう。けれども普段目が向かないところにも面白い場所はあり、全国どこにでも名所はある。その土地と人、ものに思いを巡らせるきっかけになればと願い、休載を挟みながら55回にわたり書き連ねてきた。

 コラムでは47都道府県を踏破し、モンゴルの旅路での出来事などを含め、有名観光地とは違った旅の味わい方をつづっている。使っている写真もほぼすべて自分で撮影した。観光スポットだけでなく、その周辺をぶらぶら歩いてみるのも面白い。有名な観光ルートから外れたところに、隠れた名所があることも少なくない。

 いまの若い人たちはスマートフォンなどの位置情報を駆使して目的地に迷うことなく、スマートに着くだろう。負け惜しみに聞こえるかもしれないが、地図とコンパスで道すがらに出会う人たちの助言を得ながら、苦労して目的地にたどり着いた時の喜びは格別なものだ。コラムに書こうと思った目的地より、おまけで立ち寄ったところの方が面白く、場所やテーマを差し替えたケースは何度もある。

 大きな街よりも小さな地方の街を回ることが多かったので、各地でチェーン展開するビジネスホテルには随分やっかいになった。チェックインの後、地元の人たちが集まるお店を探し当て、地のものをさかなに酒を飲みながら、常連客たちの話を聞くのがまた面白い。地域からあふれ出る人情のようなものも観光のPR情報ににじませることで、土地の持つ魅力がさらに高まると思う。

 □一極集中から分散型へ□


 コラムの連載当初は、普段と異なる業界の方々が読むことになるから反応が心配だった。近所の知り合いで日刊建設工業新聞を職場で読んでいる方からは、「工事の発注など仕事に関係する記事とは違い、心休まるコーナーで楽しみにしています」と励ましの言葉を掛けられた。今回発刊した書籍を購入していただいた方々からは、「実際に紹介されている地を訪れてみたい」などといった声が聞かれた。

 観光政策に力を入れる日本では昨今、インバウンド(訪日外国人旅行者)が急増し、ものすごい数の観光客が海外から押し寄せている。観光を通じて国が豊かになることはいいことだが、オーバーツーリズムなどの問題が深刻化しつつある。受け入れ側が観光客をさばききれず、どう過ごしてもらえばいいかと頭を悩ませている。

 有名観光地への一極集中ではなく、小さな名所を巡る地方分散型観光の魅力を発信することが、オーバーツーリズムの問題解決の糸口になるのではないか。全国各地の隠れた名所にもっと光を当ててもらいたい。

 (あさみ・かずひこ)1947年生まれ。東京大学文学部卒。成蹊大学名誉教授。NHKラジオ第二放送の古典講読(毎週土曜午後5時~午後5時45分)で4月から始まる「『方丈記』と鴨長明の人生」を担当する。

【100億円投資、観覧スタンドを更新】よみうりランド、船橋競馬場を大規模改修

観覧スタンドの改修イメージ
(よみうりランド公表資料より)
よみうりランドは、千葉県船橋市にあり土地と建物を所有する「船橋競馬場」を大規模リニューアルする。観覧スタンドの建て替えや入り口の新設などで、耐震性能の強化や新規客層の取り込みを図る。設計、施工者は決まっていない。2020年度に着工し、23年度末の完成を目指す。投資額は約100億円を見込む。
船橋競馬場の俯瞰図
(同)
船橋競馬場の所在地は若松1の2の1(敷地面積34万7436平方メートル)。計画によると、1967年に完成した既存の観覧スタンドを解体。これまでよりも規模を縮小して新スタンドを整備する。隣接する商業施設「三井ショッピングパーク ららぽーとTOKYO-BAY」の正面側に入場口を新設するほか、場内に子どもたちが馬とふれあえるブースも設ける。
正面入り口の改修イメージ
(同)

2019年3月27日水曜日

【回転窓】都市計画法制定100年

都市計画制度の変更は利害調整がからむ。「それだけに政治の力によるところが大きい」と、国土交通省OBのT氏はいう▼2006年に改正されたまちづくり3法。当時、郊外に大型店の出店が続き、中心市街地はシャッター街となって空洞化が進んだ。その状況を憂いたある政治家が「大型店を商業地域以外には立地できなくすべきだ」と、国交省に詰め寄った▼T氏はその意見に理解を示しつつも「建築基準法で商業地域以外で建てられないのは風俗産業などに限定され、風俗店と大型店は一緒にできない」と抵抗。役人として当然の反論だろう▼ただ政官で議論を重ねるうちに、典型的な商業施設である大型店が商業地域以外で広範囲に立地できる都市計画制度とは一体何なんだと疑問を抱く。その問題意識が改革への信念に変わり、法律改正が進んだという▼都市計画に関する規制は企業や個人に大きな影響を与える。政治的な判断が求められるケースも多かろう。今年、都市計画法は制定100年を迎える。これを機に都市計画とは誰のためのものか、もう一度考えてみてはどうか。T氏こと竹歳誠氏の話は実に興味深い。

【ホテル総客室面積は10万㎡以上に】政府、IR実施法施行令を決定

政府は26日の閣議で、特定複合観光施設区域整備法(IR実施法)の施行令を決定した。

 カジノを含むIR(統合型リゾート)施設の最低規模など整備要件を設定。IR施設の一角に整備を義務付けるホテルの総客室床面積はおおむね10万平方メートル以上とした。整備要件を含む大部分の規定は4月1日に施行する。

 IR実施法では、IR施設の定義は▽カジノ▽国際会議場▽展示施設▽日本の観光に関する魅力増進施設▽送客機能施設▽宿泊施設(ホテル)-を一体化した施設。全国でIR施設を整備できる区域数は最大3カ所となる。

 施行令では、IR施設の構成施設ごとに整備規模の要件を規定。ホテルは海外事例を踏まえ、全客室の合計床面積をおおむね10万平方メートル以上とした。

 国際会議場に設ける最大規模会議室の収容人数はおおむね1000人以上。展示施設の規模は国際会議場の収容人数に応じ、要件として三つの選択肢を用意した。▽国際会議場内に設ける最大規模会議室の収容人数約1000人以上3000人未満・展示施設の床面積約12万平方メートル以上▽同約3000人以上6000人未満・同約6万平方メートル以上▽同約6000人以上・同約2万平方メートル以上-のいずれかを求める。IR施設1カ所当たりに確保できるカジノ専用スペースの上限面積は総延べ床面積の3%と定める。

【提携紙ピックアップ】建設経済新聞(韓国)/弾力的労働時間制で改編論議

労働時間短縮(週52時間制)に対する処罰猶予期間が今月末に終了する中、建設業界では弾力的労働時間制の単位期間の拡大や要件緩和などを求める声が一段と強まっている。

 昨年7月、常勤労働者300人以上の事業場は労働時間を週52時間に短縮することになった。同制で時間短縮に努力している企業には時間超過に対する処罰(事業主に2年以下の懲役または2000万ウォン以下の罰金)を猶予してきた。

 政府は今年6月から長時間労働事業場の点検に着手する。一方、弾力的労働時間制の制度改編まで、同制の導入企業などには経過措置を講じる考え。しかし、改編内容については国会論議の結果次第で見直される可能性もあり、建設業界側の要望がどこまで受け入れられるかは不透明だ。

 現行の弾力的労働時間制は最大3カ月まで活用可能。国の委員会が先月作成した合意案では単位期間を6カ月まで延ばす。建設業界側では工期6カ月以上の工事が全体の9割を占めることなどを踏まえ、1年間への拡大を求めている。

CNEWS、3月20日)

【提携紙ピックアップ】セイ・ズン(越)/メトロ建設資金提供を要請

グエン・タイン・フォンホーチミン市人民委員会委員長は、現在建設中のメトロ1号線の建設費支払いに充てるため、9290万ドルの資金提供をグエン・スアン・フック首相に要請した。

 投資プロジェクトに対する規制上、同市は市予算を先取りして支出することができず、中央政府の財源から資金提供を受けることしかできない。政府の財源があれば、事業が計画通りに進捗(しんちょく)し、建設費支払いを巡る苦情や訴訟を避けることができるとしている。市は計画投資省から事業資金の提供を受け次第、中央政府に返金する予定。

 メトロ1号線は、中央政府が管轄する政府開発援助(ODA)の提供を受けているが、一部にホーチミン市も拠出している。2016~20年の投資計画によると、必要とされる総事業費20・5兆ドン(8億8580万ドル)のうち、7・5兆ドン(3億2400万ドル)が支出予定で、16、17年に市が受け取ったのは2.7兆ドン(1億1670万ドル)だった。

セイ・ズン、3月9日)

【5日間で19万人来場】独フランクフルトで冷暖房・空調国際見本市

 国際的な産業見本市を企画・運営する独メッセ・フランクフルトが主催する国際冷暖房・空調・衛生設備専門見本市「ISH2019」が、11~15日に本拠地を置くドイツ・フランクフルトの国際見本市会場で開かれた。

 現地企業をはじめ、日本を含む57の国や地域から2532社(前回2485社)が出展。環境に配慮したオリジナル製品や、IoT(モノのインターネット)、ICT(情報通信技術)を駆使した最新機能を備える製品を熱心にPRした。

 ◇世界から2500社超が出展◇

 メッセ・フランクフルトは見本市を2年に1回開いている。その歴史は60年以上になる。今回の総展示スペースは27万5000平方メートルに達し、同種の国際見本市としては世界最大級の規模となる。期間中は161の国・地域から19万人余りが来場。冷暖房・空調・衛生設備に対する関心の高さがうかがえた。ドイツ以外からの来場者が特に増えているという。

 欧州は新築する住宅について、2021年以降にエネルギー消費をゼロに近づける「Nearly ZEB」を進める方針を打ち出しており、環境負荷の低減につながる製品のPRが目立った。

 ドイツの暖房は地下室に設置した熱源設備で作った温水を建物内に張り巡らしたパイプに通し、暖房機能を発揮させるセントラルヒーティングが一般的。しかし、熱源として使われているボイラーはエネルギー効率が悪く、環境への負荷も大きい。展示ブースでは空気熱を利用したヒートポンプ技術を搭載した製品の展示が多く見られた。

 「更新時期を迎えたボイラー設備の買い替え需要が増してきている」。そう指摘するのは、冷暖房と温水供給が可能なヒートポンプの新商品を展示していた独大手冷暖房設備メーカー・VAILLANT GROUPの販売担当者。暖房効率を上げると同時に、二酸化炭素(CO2)の排出量を減らせる天然ガスを使用する製品のメリットを強調していた。

 ドイツは11年に起こった日本の福島第1原発事故などを受け、太陽光や風力など再生可能エネルギーの活用に力を注ぐ。ただ、再生可能エネルギーは天候に左右されることが多く、安定的な電力供給に支障が出ていることが課題となっている。そこで、創エネルギーと省エネルギーを両立するスマートハウスへの関心が、年を追うごとに高まっている。ドイツをはじめ、複数の大手空調設備メーカーは、計測機器メーカーやIT企業と連携。電力消費量などを可視化した上で、最適なエネルギーマネジメントを実現するシステムの開発に力を入れており、展示会で独自の製品をアピールした。

 ◇日本企業も積極的にPR活動◇

 日本企業も欧州での市場開拓に向け、存在感を示していた。ダイキンは、静音性に優れるヒートポンプの新商品を展示。ヨーロッパでは暖房機器の稼働音に敏感なユーザーが多い。同社は稼働音を抑えつつ、さらに室外機のファンが見えづらいデザインを採用した。

 衛生設備ではTOTOが6回目の出展となった。同社は08年に欧州の拠点として独デュッセルドルフに現地法人を設立し、欧州市場への対応を本格化した。フランスや英国でも事業を展開している。

 同社広報部の佐藤主税主査は「最大規模となるこの展示会でわれわれの認知をさらに広げたい」と力を込めた。「ウォシュレットなどの製品が生活の中でどう使われるかを知ってもらいたい」とも話し、ブースにはトイレや浴槽、洗面器・金具の中高級品を並べ、技術力の高さやデザイン性をPRした。書斎に浴槽やトイレを配置したユニークな空間も提案し、来場者を楽しませていた。

 建築用工具メーカーの小山刃物製作所(兵庫県三木市)は、見本市に初出展した。小山和豊代表取締役は「新たな市場調査」と狙いを語った。水道管工事などで使う工具を展示したところ、ドイツ以外にも複数の国の企業から引き合いがあり、見積もり依頼が相次いだ。ただ、ヨーロッパと日本とでは規格が異なり、改めて対応を協議することにしている。

 見本市では若手技術者が排水や配管設備の施工能力を競う大会や、VR(仮想現実)などの最新技術を活用した展示なども行われていた。今年の展示会は「エネルギー」と「水」の活用がテーマ。来場ターゲットは▽設計士▽エンジニア▽建築家▽建設業者▽公共機関-など。会場は連日活気であふれており、多くの関係者が今後の業界動向を探っていた。

2019年3月26日火曜日

【回転窓】ごたごたも歴史のうちか

来週月曜日の4月1日に行われる新元号を決める手続き。安倍晋三首相は候補名の考案を学者に委嘱済みで、提出された候補から菅義偉官房長官が3案程度に絞り込んだ後、首相が最終判断する▼新時代を象徴する元号の発表まで1週間。情報漏えいを巡って政府と国会との調整が難航しているというニュースを目にした▼事前報道に神経をとがらせる政府は、正式発表前に意見を聞く衆参両院の正副議長4人に外部との接触を避けるよう協力を求めた。ただ情報漏えいを前提にした要請に対し一部メンバーが猛反発しているとか▼奈良時代の歴史書『日本書紀』によると、元号が最初に用いられたのは飛鳥時代の大化の改新(645年)の時。その後、701年に「大宝」という元号が定められ継続的に使われるようになった。初めての元号とされる「大化」から現在の「平成」までその数は231、1300年代の南北朝時代の混乱期を含めると247になるという▼平成が終わるのは4月30日。皇太子さまが新天皇に即位する5月1日午前0時には改元される。政府と国会のもめ事はさておき、新元号の発表を楽しみに待ちたい。

【シティに新ランドマーク】三菱地所、ロンドン中心部で超高層ビル着工

 三菱地所は25日、子会社の三菱地所ロンドンが英ロンドンにある金融地区シティ・オブ・ロンドン(シティ)の中心部に超高層ビルを建設する「(仮称)8Bishopsgate開発計画」に着工したと発表した。

 規模は地下3階地上51階塔屋1階建て延べ約8・5万平方メートル。2022年末の竣工を目指す。20日に現地で鶴岡公二駐英国特命全権大使をはじめ大勢の関係者が参加した起工式を開いた。

 建設するビルは、保険大手ロイズの本社に隣接する。高層、中層、低層の基準階面積はそれぞれ750平方メートル、1300平方メートル、1700平方メートル。全面ガラスの外装となっており、環境性能が高く、メンテナンスがしやすいファサードを採用する。

 英国の建築環境評価認証「BREEAM」のエクセレントを取得する見込みという。さまざまな働き方に対応できるよう、屋外テラス、共用ワークスペース、イベント・交流施設を設ける。地下には大規模駐輪場を設置する。

 三菱地所が現地に保有していたオフィスビルの「6-8Bishopsgate」(地下2階地上23階建て延べ約2・1万平方メートル)と、「150Leadenhall Street」(地下2階地上8階建て延べ約0・9万平方メートル)を一体で建て替える。完成後は賃貸面積が約2・8倍に増える。

 同社は1986年に現地法人として三菱地所ロンドンを設立。ロンドンのオフィスビル5件を含め、13棟(仕掛かり中含む)の賃貸用オフィスビルの保有・運営などを行ってきた。投資先をフランス、ドイツ、オランダに拡大しており、今後も欧州の対応をさらに強化するという。

【営業線またぎ超高層ビル整備】大林組JV施工で「ダイヤゲート池袋」完成

 西武ホールディングス(HD)傘下の西武プロパティーズ(埼玉県所沢市、上野彰久社長)が東京・池袋に建設していたオフィスビル「ダイヤゲート池袋」が竣工した。

 西武HDなどの本社機能が入り、グループの新たな拠点となる。建物は西武池袋線の線路上空に建設。線路をまたいで整備された超高層ビルは国内初という。設計は日建設計、施工は大林組・西武建設JVが担当した。

 25日に現地で竣工式が開かれた。西武HDの後藤高志社長は「シンボリックな外観やにぎわいを創出するデッキなどを備えた、池袋の新たなランドマークが完成した」と喜びを語った。豊島区の高野之夫区長は「これからの池袋の発展への道を力強く開く存在だ」とコメントを寄せた。続いて後藤社長、上野社長、西武鉄道の若林久社長らがテープにはさみを入れ、ビルの無事完成を祝った。

 ダイヤゲート池袋の所在地は豊島区南池袋1の16の15(敷地面積5530平方メートル)。西武鉄道旧本社ビルの敷地とその西側の池袋線の線路上空、線路西側の所有地を一体的に活用した。

建物はS一部RC・SRC造地下2階地上20階建て延べ4万9661平方メートル、高さ約100メートルの規模。中間免震構造の採用や備蓄倉庫の整備などで、防災性の向上を図った。

 地上1、2階に商業店舗を配置。4~18階に設けたオフィスのうち、14~18階の区画に西武HDとプリンスホテル(東京都豊島区、小山正彦社長)、西武プロパティーズの本社が入る。オフィスの総貸室面積は約2100平方メートル、池袋エリアでトップクラスとなる。地上2階から線路上空に設けたデッキは25日から供用を開始した。

【記者手帖】異国で受けた優しさ

見知らぬ国で受ける親切は普段より心を打たれる。先日、空調衛生設備の展示会を取材するため単身ドイツ・フランクフルトを訪れ、改めてそう思った◆欧州有数の金融都市であるフランクフルト。展示会場はもちろん、さまざまな国と地域の人々が市内を行き交う。コミュニケーションをつなぐ言語は英語。恥ずかしながら語彙(ごい)力はつたなく、通訳の方に頼る場面が多かった。仕事はもちろん食事も一苦労で、言葉が通じないもどかしさを感じずにはいられなかった◆円をユーロに両替しようと銀行を探していた時のこと。道に迷って途方に暮れてしまった自分に話しかけてくれたドイツ人の男性がいた。身ぶり手ぶりを交え、つたない英語で意思を伝えようとした。その時、相づちを打ったり首をかしげたりしながら、親身になってくれる男性の振る舞いを見て、人の優しさを感じた◆インバウンド(訪日外国人旅行者)の増加が続く日本。きっと初めての地で戸惑う人も多かろう。ドイツ出張を思い出し、勇気と優しさを持って声を掛けていこうと思っている。(裡)

2019年3月25日月曜日

【受注総額280億円】三井住友建設JV、ミャンマーで橋梁建設受注

バゴー橋の完成イメージ(提供:国際協力機構)
三井住友建設は18日、ミャンマー・ヤンゴン市のバゴー川に架ける「バゴー橋」建設工事を、横河ブリッジとのJVで受注したと発表した。約2・7キロを施工する。受注総額は約280億円。12日に首都ネピドーで発注者の建設省橋梁局と契約した。

 工事名称は「バゴー橋建設事業(CP1-CP2)」。ヤンゴン市中心部と、ティラワ経済特別区を含むタンリン地区を隔てるバゴー川に、政府開発援助(ODA)で橋梁を整備する。CP1では延長1312メートルのアプローチ道路や、PC箱桁橋・鋼箱桁橋・鋼斜張橋を、CP2では延長1364メートルの鋼箱桁橋・PC箱桁橋と料金所を建設する。工期は32カ月。

 設計は▽日本工営▽オリエンタルコンサルタンツグローバル▽首都高速道路会社▽長大▽大日本コンサルタント-の5社JVが担当した。

 2013年にヤンゴン事務所を開設した同社は、ODA工事の受注に併せて、日系企業の進出に伴う生産施設などの建設工事も請け負いながら、ミャンマーの経済発展に貢献していく。

【こちら人事部】大豊建設「100周年に向けやる気ある人材獲得」

 中国東北部で進められた巨大ダム(大豊満ダム工事)に従事した技術者が中心となって会社を興し、1949年に誕生した大豊建設。土木ではダムや橋梁、高速道路などを得意としており、技術力を発揮している。

 建築では、マンション工事や福祉・教育・商業施設、物流倉庫、工場など多岐にわたる施設を手掛ける。設計・施工の双方で国内外の多数の賞を受賞している。

 今月31日には創立70周年の節目を迎える。本社ビルではリニューアル工事が終わり、働きやすく魅力的なオフィスに生まれ変わった。

 管理本部人事部人事課の堀川順子氏は、「学生時代に『負けずにやり切った』と思えるものを持っていて、やる気のある人に来てほしい」と求める人物像を語る。創立100周年に向けて、会社の中心人物になっていくような人材を見つけて育てていくことを目指している。

 そうした人材を呼び込むために、学生や大学、一般市民らの認知度を高めることにも力を入れている。業界セミナーや現場見学会を積極的に実施しており、就職活動サイトが主催するイベントや技術フォーラムにも参加して知名度アップに努めている。いろんな場面で出会った学生をインターンシップ(就業体験)や会社説明会に呼び込み、学生との接触回数をできるだけ増やして、入社意欲を高めていく方針だ。

 内定後に、「本当にこの会社に入社すべきか」と学生に迷いが生じるケースもある。個別に話を聞くために面談を行ったり、社内行事や新聞掲載記事を知らせたりと内定後のフォロー活動にも力を注ぐ。「一人一人に誠実に対応することで、会社としての信用も出てくる。学生との出会いを大切にして、誠実に対応していくよう心掛けている」と堀川氏は話す。

 若手社員の研修プログラムも拡充している。昨年までは本社研修を1週間としていたが、今年4月からは期間を延ばす予定だ。座学や、鉄筋・型枠・足場・測量の実習、CAD、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)などの基礎力を固めてから現場に送り出すやり方に改める。入社半年後にはフォローアップ研修を行い、同期が集まる場を設ける。悩みや今後のキャリアプランなどを共有する機会にしてもらう。

 社員同士の仲が良いことや、相談しやすい環境が整っていることが同社の強み。社内の雰囲気を知ってもらい働くイメージを高めてもらうためにも、会社訪問などを積極的に受け入れている。

 一人に任される業務は多岐にわたる。そうした環境だからこそ、若手の成長も早く、場合によっては30代後半で所長に就任するケースもある。若いうちから現場を動かすことができることが、やりがいや醍醐味(だいごみ)にもつながっているそうだ。

 堀川氏は、「これだけは譲れないという軸や、働く目的があれば簡単に辞めることはない。そこを意識して会社を選んでほしい」と学生にアドバイスする。

 《新卒採用概要》

 【新卒採用者数】 男性36人(うち技術系34人)、女性5人(うち技術系1人)(2018年度実績)
 
 【3年以内離職率】13・8%(16年度新卒)
 
 【平均勤続年数】 男性19・7年、女性11・6年(18年12月末時点)
 
 【平均年齢】   44・8歳(18年12月末時点)

【回転窓】別れのいちご

甘味と酸味が絶妙にバランスし、みずみずしくて果汁たっぷりのいちご。品種ごとにおいしい食べ方があるという。へた側から食べ始めて甘味の強い先を最後に味わうのが王道ながら、丸ごとほうばって甘味と酸味を口の中で同時に楽しむ食べ方がいい品種もあるそうだ▼市場に出回るようになって3年目。千葉県が開発したオリジナル品種のいちご「チーバベリー」がSNS(交流サイト)で話題と聞いた。晴天が続くほど甘味が増すのが特徴で、県は王道の食べ方を推奨している▼「40年の会社生活から離れ、3月末にて定年退職することになりました」。お世話になった舗装会社の技術者から、別れの便りをいただいた。技術発表会の企画・進行役を担い、長い現場勤務の経験を生かして後進の育成に励んでおられた▼いちごが旬を迎え、別れと出会いの季節になった。「ありがとうございました」。大勢の仲間に温かい言葉で職場から送り出される人が建設業各社にもおられよう▼幸福な家庭-。たくさんの実がなるいちごの花言葉の一つにあやかって、退職される方々がこれからも幸せな日々を過ごされるよう願いたい。

【国内最大級のVIP・ビジネスエリア確保】山梨県総合球技場整備、概算建設費は110億~120億円

 ◇四つの事業手法を比較検討◇

 山梨県の総合球技場基本計画検討委員会(会長・清水一彦山梨県立大学学長)は20日、甲府市の小瀬スポーツ公園で予定している総合球技場建設計画の報告書をまとめた。

 設計や監理、外構整備などを除いた施設整備費を110億~120億円と試算。事業手法はPark-PFI(公募設置管理制度)など4案を比較検討し選定する。報告書は28日に長崎幸太郎知事へ提出する。具体的な整備スケジュールは県の財政などを考慮しながら決定するとしている。

 建設地は小瀬スポーツ公園第3駐車場(下鍛冶屋町)。敷地面積は買収予定面積を含めて約5万7000平方メートル。建築面積は約1万5000平方メートル。メインスタンドは5階建て、サイド・バックスタンドは2階建てで、延べ床面積は約3万2000平方メートルとした。

 基本のフィールド寸法はサッカーやラグビー、アメリカンフットボールに対応可能な84×124メートル。観客席は一般席が約2万席、VIP席やビジネス席は500席以上を想定している。全席を屋根で覆い、背もたれ付き・個席化を図る。

 VIP・ビジネスエリアは会議やパーティー、レセプションなどでの利用を見込む。実現すれば国内のサッカースタジアムでは最大規模のVIP・ビジネスエリアとなる。付帯施設としてトレーニングジム、芝生練習場、ランニングコースなど県民が利用できる機能も整備する。

 事業手法は▽DBO(設計・建設・管理)▽PFI-BTO(建設・移管・運営)▽DB(設計・施工一括)+コンセッション(公共施設等運営権)▽Park-PFI-の4案を比較検討し選定する。

 想定スケジュールは事業者公募手続きと審査・選定、契約協議などの期間が18~24カ月、事業者による基本・実施設計期間が12~18カ月、施工期間は24~30カ月程度と見込んでいる。

 並行して代替駐車場の確保、都市計画手続き、用地の買収・測量などを進める。PPP事業の導入に当たっては、十分な選定期間を確保する方針だ。

 施設整備費は設計、工事監理、外構整備費、代替駐車場整備費、用地買収費などを除き、現在の建設物価で試算すると110億~120億円。設計・施工一体などによる効率化や、民間事業者間の競争などで整備費の低減が期待できるとしている。運営や維持管理などの収支を試算した結果、実質的な県の負担金額は年間5000万~8000万円と見積もっている。

【長崎県大村市に新拠点】V・ファーレン長崎練習拠点整備、本社移転を追加提案

ジャパネットHDが公表したホームタウン整備の完成イメージ
(ジャパネットHDニュースリリースより)
通信販売大手のジャパネットホールディングス(HD)は、グループ会社でサッカーJリーグに所属するV・ファーレン長崎の新たな練習拠点整備で長崎県大村市に提案している施設計画を公表した。

 用地公募の際に想定していたサッカーコートやクラブハウスなどに加え、テレビショッピングスタジオやV・ファーレン長崎の本社機能の移転を提案。仮構想の施設として体育館やコールセンター、ホテルなどを挙げた。

 新たな練習拠点の整備では同社が10ヘクタール程度の土地の提供などに協力する県内自治体を募り、大村市が応募。市内の新工業団地(雄ケ原町)への整備について両者で協議を進めている。

 提案によるとサッカーコートは天然芝、人工芝各2面でクラブハウスやトレーニングケア施設、選手寮を設ける。雇用・人口の拡大に向けテレビスタジオとV・ファーレン長崎の本社機能を移転。レストランやファンスペース、飲食エリアも整備する。

 このほか仮構想段階の施設としてサッカー以外のプロバスケットボールなどへの参入も視野に入れたバスケットコート2面分の体育館、全天候型でハーフコート1面分の屋内練習場、保育所などを併設したコールセンター、ホテルや教育施設などの整備を挙げた。

 スタジオなどの機能移転に伴う雇用創出効果は約350人、その他の新設する機能も合わせると約470人程度の雇用を見込む。

 市では4月から新工業団地の分譲が始まることから4月の早い段階で整備の是非を判断する意向だ。

【凜】東京都下水道局建設部・竹内真悠子さん


 ◇やりたいことは今やる◇

 大きな機械に心が引かれるという。東京都下水道局に入った1年目は、下水道施設を回り、機器類の点検に明け暮れた。当時はベテランの先輩が大勢いて「やってみろ」と言われて、不具合の出た機械の修理や補機の交換などさまざまなことに挑戦した。

 お世話になった先輩が定年退職で職場を去った今、「職人気質の人たちと接することができた最後の世代だったのかもしれない」と当時を懐かしく感じる。

 今は現場を離れ、設計書のチェックや発注段階の事務処理などを担当する。「実際に下水道の機械に触った経験がないと、現場に適した設備設計が分からない」。今の仕事でも現場経験が役に立っている。

 多趣味だが共通しているのは「人がつくったものが好き」なこと。機械設備だけでなく土木にも興味があり、建設局の研修に参加することもある。はにかみながら「研修も趣味の一つかもしれない」と話す。

 人生観が変わったのは環境局に在籍した時に起こった東日本大震災だ。2011年の3月末から4月初めまで被害の大きかった宮城県石巻市に入り、家屋の被害調査を支援した。人の営みを根こそぎ奪い去る災害の残酷さを目の当たりにし、「先延ばしにするのではなく、やりたいことは今やろう」と心に刻みつけた。

 これからも自分の気持ちに正直に、好きなこと、やりたいことに挑んでいく。

 (設備設計課、たけうち・まゆこ)

【やっぱり!マイ・ユニフォーム】ダイケンエンジニアリング「一目で分かる濃紺ライン」

 肩から腕にかけて一直線に伸びる濃紺のラインが印象的なダイケンエンジニアリングの作業着。「数百メートル先からでも一目で分かるほど良くも悪くも目立つ」というのが、現場で働く社員の声。だからこそ「どのような場面でもきちんとしないといけない」と、襟を正すきっかけになっているそうだ。

 ベースカラーとして使っているのはコーポレートカラーのグレー。肩から腕に濃紺を配色したのは、材料を肩で担いだ時に汚れても目立たないよう配慮したためだ。リニューアルした2001年当時は斬新なデザインが評判だった。

 左胸のポケットは深さ20cmで、レベルブック(測量野帳)が収納可能。落下防止のフラップも付いている。ポケット幅よりペン1~2本分幅を狭め、フラップを閉じていてもペンが抜き差しできる工夫も。

 作業服づくりに携わった大阪支店建築部部長の福田統武さんによると使いやすさなどに加え、一目でダイケンエンジニアリングだと分かるデザインを考えるのに苦労した。

 リニューアルから約20年。福田さんは「今も古さを感じさせないデザインだと自負している」と出来栄えに胸を張る。

【駆け出しのころ】横河システム建築常務取締役・高柳隆氏


 ◇情熱が「仕事力」を高める◇

 高校1年生の時に交通事故で入院し、病院の屋上から夕日に浮かぶ西新宿の超高層ビルの鉄骨が立ち上がっていくのを見た時、建設の仕事に携わりたいと思ったことを覚えています。

 大学の近代建築史という授業で鉄骨造の先駆者・横河民輔を知り、日本を代表する橋梁やビルを建設する横河橋梁製作所(現横河ブリッジ)で働きたいと思いました。しかし、実際に入社すると、超高層ビルの鉄骨部門は、花形と言うよりは不採算部門で日陰の部署だと感じました。鉄骨の営業部門に配属され、社内の評価に違和感を覚えながらも目の前の仕事にまい進していました。

 入社4年目のころ、新規事業だった「開閉屋根」の部署に異動しました。当時はガラス張りのプールの屋根が主な市場でしたが、その後、野球場やサッカースタジアムに開閉ドームとして採用されるようになりました。

 利益の出ない鉄骨に「動く」という付加価値を持たせた開閉屋根の仕事が面白く、当時は寝る間を惜しんで仕事に没頭しました。売り上げは決して大きくなかったので社内の評価は低かったのですが、われわれの技術力は社外からは高く評価されていましたので自信と誇りを持って働いていたことを思い出します。

 ドームの仕事が一段落した40代前半、再びビル鉄骨の営業へ異動になりました。六本木をはじめとする超高層ビルの鉄骨を同業者らと共同で請け負っていましたが、どこの会社も大きな赤字を出しており、このままでは誰も幸せにならないと思い、当時の上司と相談し意を決してビル鉄骨事業からの撤退を会社に進言しました。当時、業界最大手だった当社が最初に撤退を決めたのですが、その時は私が部長になっていました。

 自らの手で部署を解散した後、40代後半で今の横河システム建築へ転籍になりました。当時はシステム建築も利益が出ていない事業で、グループ内でも日陰の存在でした。しかし、この仕事は橋梁や鉄骨よりも市場が大きく、他社との差別化が図れる武器を持った商品だと直感しました。

 建設業界は「仕事を取りにいく」という考え方が主流ですが、当社は「ほしいと思ってくれる顧客を増やす」ことを一番の営業戦略に据えています。自動車販売と同じ仕組みで、全国に組織する販売施工店がディーラー、当社はメーカーの役割を担う関係を構築してきました。この戦略が功を奏し、グループ内2番目の会社に成長させることができました。今後は一層広報戦略に力を入れ、事業拡大に取り組みたいと考えています。

 今の若い人は勉強もできて言われたことはすぐにこなします。しかし、どこか冷めた面も見られます。自分の熱や鼓動を相手に伝える情熱が「仕事力」を高めると私は考えています。若い人たちにはもっと熱いハートを持って建設の世界で働いてほしいと思っています。
「開閉式屋根」の仕事に熱中していた入社13年目。
こまつドームの現場で
(たかやなぎ・たかし)1982年東京電機大学工学部建築学科卒、横河橋梁製作所(現横河ブリッジホールディングス)入社。2006年に横河システム建築に転籍後、営業部長、取締役を経て18年から現職。埼玉県出身、60歳。

2019年3月19日火曜日

回転窓/ごみ箱に直行した原稿用紙

 記者という仕事を始めたばかりの頃、記事は原稿用紙に手書きし、写真はフィルムを現像して使うのが当たり前だった。原稿を起こし隣の席に座っていた先輩に見てもらう時、いつも字の汚さを恥じていた▼20年余りの時が過ぎ、原稿を手書きすることはなくなり、写真もデジタル化されて現像という言葉も姿を消した。便利な世の中になったと感じる一方で、1文字ずつ原稿を書くという作業を経験して良かったと思うこともある▼自分の書いた記事を読んだ先輩が、何も言わずに原稿用紙をごみ箱に放り込む。何度か経験した出来事で、その時は先輩の行為に腹を立てることしかできなかった。けれども今にして思うと相当できの悪い内容だったのだろう▼人をどう育てていくかが、多くの職場で懸案事項になっている。丁寧に分かりやすく説明し、仕事を任せて問題点があれば改善していく。マニュアルをきちんと整備することは言わずもがなの条件…▼昔のやり方を懐かしむわけではないが、つらい経験や悔しい思いをし、腹を立てることも時には必要ではと考えることがある。自分の経験を伝えるのはなかなか難しい。

竹中工務店/65歳超対象の優良職長認定制度創設/機会均等へ認定要件緩和も

 竹中工務店は、同社の建設現場で働く優良職長を認定する「竹中マイスター制度」を改定した。マイスター認定者に手当を与える「竹中優良職長制度」の資格区分に、65歳超を対象とする「グランマイスター」を新設する。優良職長の認定要件となる稼働日数も一部緩和する。比較的稼働が少ない職種でも優良職長を認定しやすくして、機会均等や意欲向上につなげる。
 竹中優良職長制度は、これまでは、ジュニアマイスターとマイスター、シニアマイスターの3区分で、65歳を定年としていた。優秀な職長でも定年後は手当てが無くなるため、意欲低下が懸念されていた。
 グランマイスターは、最上位のシニアマイスターとして認定前年の12月末時点に65歳を迎えた人が対象。定年は満70歳。後進の指導・育成や技術の伝承などを担ってもらう。ヘルメット掲示用ステッカーを配布するとともに、初年度は記念の盾を授与する。2年目以降は、稼働日数に応じて最大8万円の商品券が与えられる。初弾として2月に5人が認定された。
 優良職長の認定に必要な稼働日数は、職種ごとの稼働状況などを考慮して、従前の1区分から3区分に改めた。鉄筋やとびなど一般職種は従前と同じで、初年度120日以上(東京・大阪は150日以上)、2年目以降は全国一律90日以上とする。掘削工など12工種は「特定I種」に位置付け、初年度70日以上(同90日以上)、2年目以降は同55日以上に緩和。くい工など5工種は「特定II種」として初年度25日以上(同30日以上)、2年目以降は同20日以上に改めた。

建退共/予定運用利回り見直し検討/今後5年間の赤字試算

 勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済事業本部(建退共、稗田昭人本部長)は、18日に東京都内で開いた運営委員会・評議員会で財務状況を報告した。2019年度は、中小企業退職金共済法で定められた5年に1度の財政検証の年に当たる。財務状況報告では、今後5年間で毎年約81億円の赤字が見込まれると試算した。安定的な収入源である自家運用と国内債券の運用収入が金利の低下に伴い減少するのが要因で、予定運用利回りと資産構成の見直しが必要とした。=2面に関連記事
 2月時点の試算によると、19~23年度の5年間の平均の自家運用収入は35億円、金銭信託運用収入は50億円で支出が上回り、毎年度約81億円の赤字になることが分かった。
 現在の予定運用利回りは3・0%、掛け金日額は310円。過去2回の利回り引き下げ時にはいずれも、掛け金日額の引き上げを同時に実施している。6月の運営委員会・評議員会でたたき台を示す。
 財政検証は労働政策審議会(労政審、厚生労働相の諮問機関)で審議され、予定利回りなども議論を経て決定される。
 1月末時点の建退共制度の概況は、共済契約者が17万2032カ所(前年比0・5%増)、被共済者は223万5456人(0・7%減)となった。
 18年4月~19年1月の掛け金収納額は457億71百万円(前年同期比1・6%増)、退職金支払総額は416億37百万円(0・3%増)で収納が支払いを上回る。資産の運用残高は1兆0127億円(0・0%減)となっている。
 18年4月~19年1月に退職金を支払ったのは4万6153人(1・0%減)、平均額は90万2000円(1・3%増)。最高支給額は昨年4月の1264万7000円で、過去最高だった11年10月の1099万円を上回った。
 建退共事業の19年度収支案は、主体の給付経理の収入が613億44百万円(前年度607億84百万円)で、うち掛け金収入は550億79百万円(537億16百万円)。支出は573億58百万円(581億39百万円)で、退職給付金が527億74百万円(536億39百万円)。19年度の新規加入被共済者数の目標は11万人以上(18年度は11・2万人)に設定した。

2級施工管理技術検定/受験者数3年連続10万人超に/受験機会拡大策が奏功

 建設業法に基づく施工管理技術検定の2018年度2級学科試験で、若年層の受験者が多い「学科のみ試験」の受験者数が初めて4万人を超えた。全6種目を年2回実施する取り組みが奏功した。「学科・実地試験」を含めると3年連続で10万人を超えた。国土交通省が進める受験機会の拡大策で「学生だけでなく社会人にも広がっている」(建設業課)としており、幅広い世代に受験を促す効果を発揮しているようだ。
 技術検定は、監理技術者や主任技術者になれる国家資格「施工管理技士」を取得するための試験。土木、建築、管工事、電気工事、建設機械、造園の6種目それぞれに1級と2級があり、学科試験と実地試験で構成する。受験者・合格者の平均年齢も上昇傾向にあるため、国交省は技術力の水準は維持しつつ、若年層の受験機会の拡大や受験要件の緩和を進めている。
 建設現場の担い手確保の一環として、若年層の受験者が多く、高校在学中の合格者の増加が期待できる2級学科試験を、18年度からすべての種目で年2回実施した。この結果、学科のみ試験の受験者数は、6種目合計で4万0165人(17年度2万6674人)と過去最多を更新。年2回実施する前の16年度(1万7268人)と比べると2・3倍に伸長した。
 18年度の種目別内訳は▽土木=1万5746人(16年度7054人、17年度1万2395人)▽建築=1万4580人(7339人、1万0803人)▽管工事=3536人(704人、825人)▽電気工事=3498人(1537人、2019人)▽造園=1594人(500人、528人)▽建設機械=1211人(134人、104人)。
 「学科・実地試験」を含め2級全体では、6種目合計は10万7071人(10万0696人、11万1227人)。土木と造園が減少したものの、残り4種目は前年度を上回り、3年連続で10万人超となった。
 近年は1、2級ともに女性の受験者数が増加しており、合格率も高い。受験者に占める女性比率は1級学科が3・8%、2級学科が7・3%。6年連続で比率が高まり、18年度は1、2級とも学科は過去最高を更新した。2級実地の合格者の女性比率は8・9%で過去最高を記録した。
 国交省は16年度に2級の学科のみ試験を17歳で受験できるよう要件を緩和した。17年度からは土木と建築の2種目、18年度から全6種目で年2回実施。建設業界への入職・在職する動機付けの強化を図ってきた。

2019年3月14日木曜日

【回転窓】「大迷惑」も今は昔

就職活動シーズンに入り、街中でリクルートスーツ姿の学生を見かけるようになった。社会人としての第一歩を踏み出す上で、就職活動に費やす時間と労力は今も昔も大切なことに変わりはない▼保険大手のAIGグループが会社都合による転居を伴う勤務制度を4月に廃止するそうだ。社員が希望勤務エリアを選びエリア内での異動を原則化する内容。試験運用では社員のモチベーションが上がっているとの声が予想以上に届いた▼「君をこの手で抱き締めたいよ。(中略)帰りたい」。歌手の奥田民生さんが在籍するバンド「UNICORN」の曲の一節だ。単身赴任の悲哀を歌い、ヒットしたのは平成元(1989)年。「大迷惑」というタイトルも含めサラリーマンらから共感を呼んだ▼さまざまな事情を抱える人がいる中で、働き方の選択肢を増やして優秀な人材を呼び込む。この流れは揺るぎないものになっている▼建設業界で働く場合、施工管理を担う技術職など仕事によっては対応が難しいケースもある。だが、人を呼び込むには当たり前を変えるのが不可欠。「建設業も変わった」と言われる日がいずれは来るのだろう。

【床材にCLT導入、施工は竹中工務店】三菱地所、仙台市にCLT採用マンション完成

三菱地所は13日、仙台市泉区の泉パークタウンで建設を進めていた賃貸マンション「PARKWOOD高森」の竣工式を開いた。

 国内で初めて床材にCLT(直交集成板)を採用した高層建築物で、RC造に比べ3カ月程度の工期短縮を実現したという。設計・施工は竹中工務店が担当し、同社が開発した2時間耐火集成材「燃エンウッド」も使用した。

 建設地は泉区高森2の1の11の敷地約3550平方メートル。建物は木造とS造を組み合わせたハイブリッド構造で、規模は10階建て延べ3605平方メートル。住戸数は39戸。専有面積は51・74~89・46平方メートル。間取りは2LDKと3LDK。主にファミリー世代の入居を見込む。23日に入居を開始する。

 国土交通大臣認定を取得したCLT耐火床システム(三菱地所、三菱地所設計、竹中工務店、山佐木材の共同開発)は4~10階の床に使用。下面に強化石こうボード、上面に石こう系材料(セルフレベリングプラスター)を使用することで高層化に必要な2時間耐火性能と被覆工事の省力化を実現した。1~5階部分にはCLT耐震壁を取り付けた。

 木材の周りを不燃化材(石こう系セルフレベリング材など)で包み込んだ燃エンウッドは、耐火構造の木造部材(集成材)として2~10階の柱や梁などに採用した。同社は沖縄県の下地島空港旅客ターミナルや、三菱地所が事業主の東京都中央区晴海のプロジェクトにCLTを採用している。

【26年国民スポーツ大会見据え調査実施】宮崎県、県営プール整備運営でPPP・PFI導入可能性調査

 宮崎県は、2026年開催の国民スポーツ大会などに対応するため計画している新たな県プール整備についての民間活力導入の可能性を調査する「県プールPPP/PFI手法導入可能性調査業務」の公募型プロポーザルを公告した。

 参加表明書と提案書の提出期限は4月3日。同17日にプレゼンテーション・ヒアリングを行い最優秀提案者を選定する。

 参加資格は県で物品の買い入れ等の「調査・研究・検査」または建設工事等の「都市計画および地方計画」か「建築設計」の入札参加資格があり、国内に本社か営業所を有し03年度以降に同種または類似業務の実績があることなど。

 業務内容は▽前提条件の整理と課題の抽出▽施設基本計画の検討支援▽運営計画の検討▽想定事業スキームの抽出・整理▽民間事業者ヒアリング▽VFM(バリュー・フォー・マネー)の算定▽事業評価と最適事業スキームの抽出▽事業化に向けた課題・スケジュール整理。履行期限は9月30日。参考業務規模は1270万円(税込み)を限度とする。

 プールの建設地は宮崎市錦本町の県有グラウンド内。敷地面積約5・8ヘクタールのうち駐車場を含むプール用地は1・6ヘクタール程度を想定している。

 施設は10レーンで可動床の50メートルプール、8レーンの25メートルプール、仮設を含め2500席程度の観客席、トレーニング室、多目的スペース、大規模災害対応の備蓄倉庫などで構成し、規模は地下1階地上3階建て延べ約1万2120平方メートル。

 PFIで行う場合は19年度後半に事業者選定を開始し20年度末までに事業者を選定、24年度の完成を予定している。担当は国体準備課(4月以降は国民スポーツ大会準備課)。

【提携紙ピックアップ】建設経済新聞(韓国)/PM2・5で公共工事中断も

今後3日以上、高濃度微細粉じん(PM2.5)の非常低減措置が発令されれば、公共機関が発注した建設工事の現場で作業が中断される見通しだ。

 7日会見したチョ・ミョンレ環境部長官は「これまで非常低減措置が連続発令した際、5等級車両の走行制限、発電所の80%上限制約(稼働制限)といった一律的な措置で対処してきたが、今後は発令日数に応じて段階別に強化措置を施行して効果を高める」と表明した。

 環境部は3日連続発令時には国発注工事や資材官給建設工事のうち微細粉じんが大量発生する掘削などの工事を中心に、現在50%まで短縮できる工事時間をさらに短くする方向で調整に入った。

 石炭火力の稼働率80%の上限制約対象を40基から60基に増やす。低硫黄炭の使用拡大を図る一方、老朽化した石炭火力2基(保寧1号機・2号機)の早期閉鎖を検討。公共建物屋上の遊休空間に空気浄化設備をモデル的に設置して低減効果を検証する。

 中国との共同対策では西海上空で人工降雨実験を年内に実施。PM2.5予報・早期警報システムも構築する。

CNEWS、3月8日)

2019年3月13日水曜日

【回転窓】未完建築を楽しむ

SF作家の星新一氏は小説の題材に困った時、気になる言葉をメモした紙を何枚も袋に入れ、そこから二つだけを取り出し、言葉を組み合わせて物語を創作したという▼星氏いわく。「新鮮な組み合わせは組み合わせるものの間がかけはなれていればいるほどいい」(『きまぐれ博物誌』角川文庫)。だが、それを奇想天外な読み物にしていくには、単なる想像力だけでなく、幅広い見識が必要なのは言うまでもない▼建築は独創的な想像力が必要なことに今も昔も変わりはない。ただ時代の変化とともに街並みや人の価値観の変化など、別の要素を組み合わせることが求められるようになってきた。その中で、どれだけ個性や独創性を発揮できるかが問われる▼埼玉県立近代美術館で24日まで開催している「インポッシブル・アーキテクチャー」展は完成に至らなかった構想や建築、あえて提案にとどめた建築などの図面や模型などが展示されている。未完建築だけに逆に見る人の想像力をかきたてる▼この作品はどうして実現しなかったのか。建築家は何を考え訴えたくて図面を描いたのか。見る側が勝手に想像するのも楽しい。

【概算事業費29億円、20年度着工へ】熊本競輪場施設整備、バンク縮小やメインスタンド改修を計画

熊本市は、熊本地震で被災し自場開催ができなくなっている熊本競輪場(中央区水前寺)の再開に向けた施設整備基本計画をまとめた。

 現在の周長500メートルのバンクを解体し400メートルのバンクを新設。メインスタンドは耐震補強と大規模改修を行い観客席や車券発売機能などを集約する。2019年度に設計や解体工事、20年度に建物の改修工事やバンクの工事にそれぞれ着手し21年12月の完成を目指す。概算事業費は約29億円。

 既存のメインスタンドと選手管理棟に合わせて400メートルバンクを配置。メインスタンド(延べ約4500平方メートル)は耐震補強と大規模改修を行い観客席、車券発売機能、投票所などの来場者が利用するスペース、管理機能、開催機能を集約し、座席数1250席で立ち見を合わせて2000人を収容できる施設とする。

 選手管理棟の耐震補強・大規模改修、自転車競技練習棟の増築も行う。サービスセンターは地域交流施設として再び活用できるよう整備する。バックスタンドとサイドスタンド、第2支払い棟は解体。解体後のオープンスペースには小規模公園や駐車場を整備し災害時には避難場所として活用する。

 概算事業費のうち建築改修工事に約13億8200万円、バンクの設計・施工に約6億3900万円を見込む。19年度当初予算案には関連事業費として約3億6200万円を計上し、20年度までの限度額3億1800万円の債務負担行為を盛り込んでいる。基本計画策定業務は三菱UFJリサーチ&コンサルティングが担当。

【ものづくりは生き残れるか】金剛組専属宮大工・木内繁男氏、LEXUSドキュメンタリー映像に出演

 高松コンストラクショングループの事業会社で世界最古の建築会社として知られる金剛組(大阪市天王寺区、刀根健一社長)の専属宮大工棟梁(とうりょう)の木内繁男氏が、日本の匠(たくみ)に焦点を当てたドキュメンタリー映像に出演する。

 高級自動車ブランドのLEXUSが誕生30周年記念として制作した映像で、タイトルは「Takumi-A 60,000-hour story on the survival of human craft(Takumi:AI時代にモノづくりは生き残るのか。)」。4人の匠たちが、長年にわたって鍛錬を繰り返す匠の姿を通じて、人工知能(AI)時代のものづくりの未来を考える内容となっている。19日からアマゾンプライムビデオなどで配信する。

 木内氏は、宮大工歴51年で、金剛組の専属宮大工組織「匠会」の会長を務める。「本物の匠になるためには一生かかるだろう。宮大工に定年はない。ずっと仕事をしていたい」とコメントを寄せている。

【竹中工務店とMBJがコラボ】東京・六本木に未来の暮らし体験施設開設

 メルセデス・ベンツ日本(MBJ)と竹中工務店は13日、東京・六本木にモビリティーとリビングの未来を具現化した体験施設「EQ House」をオープンする。建築とモビリティー、情報、自然がつながり、暮らしを豊かにしていくイメージだ。

 施設内に車が入り込む構造となっており、暮らしと重なる状況を生み出す。手の動きや声で室内環境の操作が可能で、太陽の位置などに合わせて透明度を変える調光フィルムも導入している。人とのコミュニケーションを通じて人工知能(AI)が快適な環境を学習し、人を見守るように成長する「生命が宿る建築」(竹中工務店)という。

 12日に発表会が開かれ、MBJの上野金太郎社長兼最高経営責任者(CEO)は「最新テクノロジーを駆使した施設で近未来を体験してほしい」と語った。

 竹中工務店の大神正篤代表取締役執行役員副社長は、「モビリティーとリビングの両観点から未来を描いた」と説明した。EQは、MBJの電動モビリティーを包括するブランド。同施設にはMBJの初弾となる電気自動車も展示される。

【設計は森ビル、施工は清水建設ら】虎ノ門・麻布台地区再開発(東京都港区)、7街区のうち3街区の施工者決定

東京・六本木周辺で計画されている総延べ約86万平方メートルの大規模再開発プロジェクトが始動する。虎ノ門・麻布台地区市街地再開発組合(東京都港区)は、七つの街区で計画する再開発ビルのうち、三つの街区で施工者を決めた。

 延べ約46万平方メートルのA街区と延べ約17万平方メートルのB-2街区を清水建設、延べ約19万平方メートルのB-1街区を三井住友建設が担当する。

 計画地は外苑東通り(都道319号)や桜田通り(国道1号)に面する虎ノ門5ほか(区域面積8・1ヘクタール)。旧麻布郵便局のあるA街区をはじめ、B-1~2、C-1~4の計7街区に分けて整備する。

 A街区の建物規模はS一部SRC・RC造地下5階地上64階建て延べ46万1292平方メートル。B-1街区がRC一部SRC・S造地下5階地上64階建て延べ18万5228平方メートル、B-2街区が同地下5階地上54階建て延べ16万9341平方メートルとなる。

 A街区とB-2街区は8月初め、B-1街区は10月初めに着工し、2023年3月末の竣工を目指す。C-1~4街区の施工者は未定。すべての街区で森ビルが設計を手掛ける。

2019年3月12日火曜日

【回転窓】気分転換が必要かも

4月の新年度を控え、さまざまな業界で労働組合と経営者が賃金や労働条件を話し合う春闘が最終盤を迎えている。基本給を引き上げるベースアップ(ベア)の労使交渉。電機大手6社は9日までに月額1000円で事実上決着したという▼つい先日まで景気拡大期間が戦後最長になったといわれていた国内景気も、ここに来て雲行きが怪しくなってきた。経済協力開発機構(OECD)の経済見通しなどを見ても、世界的に景気減速を示す指標や予測が相次いでいる▼国内景気は後退局面に入ったのかどうか。本来であれば政府が公表する雇用や景気動向などの調査結果を頼りにするところなのだろうが、年明け早々に発覚した政府統計のデータを巡る不祥事があっただけに、何を信じていいのか判断に迷う人も多かろう▼将来の見通しが明るいと感じられれば、消費が活発化して景気も良くなりやすくなる。先行きに不安を感じれば財布のひもは固くなり、行動も慎重になって景気に悪影響が出る▼きょう3月12日は数字の語呂合わせで「サイフの日」だそう。暗い話はとりあえず脇に置き、気分転換に財布でも替えてみるか。

【海外富裕層の訪日後押し】スーパーヨットの受け入れ拡大へ省庁連携

政府は観光振興の一環で、外国人が個人所有する超大型クルーザー「スーパーヨット」の受け入れ環境の整備に向けた議論を開始した。

 省庁横断の「スーパーヨットの受入拡大に関する関係省庁連絡調整会議」を設立し、8日に東京都内で初会合を開いた。スーパーヨットの誘致を巡る課題を整理し、港湾施設の機能増強による長期係留の実現など今後の方向性を検討。富裕層を中心としたインバウンド(訪日外国人旅行者)の取り込みを狙う。寄港地での消費拡大による地域経済の活性化や地方創生にも期待している。

 スーパーヨットの明確な定義はないが、一般に外国人富裕層などが個人所有する全長24メートル以上の大型クルーザーを指す。連絡調整会議では主な課題として、港湾施設の機能増強が挙げられた。

 現在、スーパーヨットが係留可能な施設規模を持つマリーナは少ない。公共の岸壁も使用できるが、スーパーヨットは長期停泊する傾向があるため、貨物船など本来岸壁を使用する船舶との調整が難しい。既存施設の有効活用を念頭に、施設増強を図る。

 対策として、港湾の中で利用頻度が低い岸壁を浮桟橋で延伸することなどを想定している。港湾管理者が設備投資することになるが、政府として財政面での後押しも検討する。

 スーパーヨットは寄港地での食事や観光、宿泊、土産物の購入などで大きな経済効果を生む。スーパーヨット誘致会議(横浜市、小谷昌会長)によると、16年に全長54メートルの船が3日間停泊し、1200万円を消費した事例もあったという。日本への来訪実績は2018年が10隻で、19年は10~15隻程度を見込む。

 連絡調整会議は内閣官房のほか、法務、財務、厚生労働、農林水産、国土交通(観光庁、海上保安庁含む)各省で構成。国交省の港湾局海洋・環境課が事務局を務める。