国際的な産業見本市を企画・運営する独メッセ・フランクフルトが主催する国際冷暖房・空調・衛生設備専門見本市「ISH2019」が、11~15日に本拠地を置くドイツ・フランクフルトの国際見本市会場で開かれた。
現地企業をはじめ、日本を含む57の国や地域から2532社(前回2485社)が出展。環境に配慮したオリジナル製品や、IoT(モノのインターネット)、ICT(情報通信技術)を駆使した最新機能を備える製品を熱心にPRした。
◇世界から2500社超が出展◇
メッセ・フランクフルトは見本市を2年に1回開いている。その歴史は60年以上になる。今回の総展示スペースは27万5000平方メートルに達し、同種の国際見本市としては世界最大級の規模となる。期間中は161の国・地域から19万人余りが来場。冷暖房・空調・衛生設備に対する関心の高さがうかがえた。ドイツ以外からの来場者が特に増えているという。
欧州は新築する住宅について、2021年以降にエネルギー消費をゼロに近づける「Nearly ZEB」を進める方針を打ち出しており、環境負荷の低減につながる製品のPRが目立った。
ドイツの暖房は地下室に設置した熱源設備で作った温水を建物内に張り巡らしたパイプに通し、暖房機能を発揮させるセントラルヒーティングが一般的。しかし、熱源として使われているボイラーはエネルギー効率が悪く、環境への負荷も大きい。展示ブースでは空気熱を利用したヒートポンプ技術を搭載した製品の展示が多く見られた。
「更新時期を迎えたボイラー設備の買い替え需要が増してきている」。そう指摘するのは、冷暖房と温水供給が可能なヒートポンプの新商品を展示していた独大手冷暖房設備メーカー・VAILLANT GROUPの販売担当者。暖房効率を上げると同時に、二酸化炭素(CO2)の排出量を減らせる天然ガスを使用する製品のメリットを強調していた。
ドイツは11年に起こった日本の福島第1原発事故などを受け、太陽光や風力など再生可能エネルギーの活用に力を注ぐ。ただ、再生可能エネルギーは天候に左右されることが多く、安定的な電力供給に支障が出ていることが課題となっている。そこで、創エネルギーと省エネルギーを両立するスマートハウスへの関心が、年を追うごとに高まっている。ドイツをはじめ、複数の大手空調設備メーカーは、計測機器メーカーやIT企業と連携。電力消費量などを可視化した上で、最適なエネルギーマネジメントを実現するシステムの開発に力を入れており、展示会で独自の製品をアピールした。
◇日本企業も積極的にPR活動◇
日本企業も欧州での市場開拓に向け、存在感を示していた。ダイキンは、静音性に優れるヒートポンプの新商品を展示。ヨーロッパでは暖房機器の稼働音に敏感なユーザーが多い。同社は稼働音を抑えつつ、さらに室外機のファンが見えづらいデザインを採用した。
衛生設備ではTOTOが6回目の出展となった。同社は08年に欧州の拠点として独デュッセルドルフに現地法人を設立し、欧州市場への対応を本格化した。フランスや英国でも事業を展開している。
同社広報部の佐藤主税主査は「最大規模となるこの展示会でわれわれの認知をさらに広げたい」と力を込めた。「ウォシュレットなどの製品が生活の中でどう使われるかを知ってもらいたい」とも話し、ブースにはトイレや浴槽、洗面器・金具の中高級品を並べ、技術力の高さやデザイン性をPRした。書斎に浴槽やトイレを配置したユニークな空間も提案し、来場者を楽しませていた。
建築用工具メーカーの小山刃物製作所(兵庫県三木市)は、見本市に初出展した。小山和豊代表取締役は「新たな市場調査」と狙いを語った。水道管工事などで使う工具を展示したところ、ドイツ以外にも複数の国の企業から引き合いがあり、見積もり依頼が相次いだ。ただ、ヨーロッパと日本とでは規格が異なり、改めて対応を協議することにしている。
見本市では若手技術者が排水や配管設備の施工能力を競う大会や、VR(仮想現実)などの最新技術を活用した展示なども行われていた。今年の展示会は「エネルギー」と「水」の活用がテーマ。来場ターゲットは▽設計士▽エンジニア▽建築家▽建設業者▽公共機関-など。会場は連日活気であふれており、多くの関係者が今後の業界動向を探っていた。
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