2019年3月19日火曜日

回転窓/ごみ箱に直行した原稿用紙

 記者という仕事を始めたばかりの頃、記事は原稿用紙に手書きし、写真はフィルムを現像して使うのが当たり前だった。原稿を起こし隣の席に座っていた先輩に見てもらう時、いつも字の汚さを恥じていた▼20年余りの時が過ぎ、原稿を手書きすることはなくなり、写真もデジタル化されて現像という言葉も姿を消した。便利な世の中になったと感じる一方で、1文字ずつ原稿を書くという作業を経験して良かったと思うこともある▼自分の書いた記事を読んだ先輩が、何も言わずに原稿用紙をごみ箱に放り込む。何度か経験した出来事で、その時は先輩の行為に腹を立てることしかできなかった。けれども今にして思うと相当できの悪い内容だったのだろう▼人をどう育てていくかが、多くの職場で懸案事項になっている。丁寧に分かりやすく説明し、仕事を任せて問題点があれば改善していく。マニュアルをきちんと整備することは言わずもがなの条件…▼昔のやり方を懐かしむわけではないが、つらい経験や悔しい思いをし、腹を立てることも時には必要ではと考えることがある。自分の経験を伝えるのはなかなか難しい。

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