2019年3月1日金曜日

【回転窓】制度が夢の追い風に

東京都日野市で市街化区域内の生産緑地を貸借した全国初の新規就農者が誕生した。市内に在住する27歳の女性が1095平方メートルの農地を所有者から借り受けて農業を始めるそうだ▼農地を借りたのは川名桂さん。日野市は父親が生まれ育った土地で、自身も15歳から住む。東京大学入学後、思うところあって3年時に農学部へ進んで就農を目指した▼先日、日野市役所での会見で川名さんは「海外に住んでいた経験から途上国支援をしたいと考えていたが、各国を巡るうちに、人間の本質に迫る農業に興味を抱いた」と語った▼就農を可能にしたのが、2018年9月に始まった都市農地貸借法。生産緑地の貸借が安心して行える仕組みだ。1992年、都市部の一部農地を「生産緑地」と指定し、税制優遇する代わりに30年間の営農を義務付けた。宅地化が進む農地の存続を狙った施策だが、期限が到来する生産緑地を巡り「2022年問題」が起きると言われている▼就農へあらゆる可能性を模索してきた川名さんにとって新法施行は追い風になった。規制ばかりが制度ではない。若者の夢を制度が後押しした好事例となるよう願う。

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