2019年3月13日水曜日

【回転窓】未完建築を楽しむ

SF作家の星新一氏は小説の題材に困った時、気になる言葉をメモした紙を何枚も袋に入れ、そこから二つだけを取り出し、言葉を組み合わせて物語を創作したという▼星氏いわく。「新鮮な組み合わせは組み合わせるものの間がかけはなれていればいるほどいい」(『きまぐれ博物誌』角川文庫)。だが、それを奇想天外な読み物にしていくには、単なる想像力だけでなく、幅広い見識が必要なのは言うまでもない▼建築は独創的な想像力が必要なことに今も昔も変わりはない。ただ時代の変化とともに街並みや人の価値観の変化など、別の要素を組み合わせることが求められるようになってきた。その中で、どれだけ個性や独創性を発揮できるかが問われる▼埼玉県立近代美術館で24日まで開催している「インポッシブル・アーキテクチャー」展は完成に至らなかった構想や建築、あえて提案にとどめた建築などの図面や模型などが展示されている。未完建築だけに逆に見る人の想像力をかきたてる▼この作品はどうして実現しなかったのか。建築家は何を考え訴えたくて図面を描いたのか。見る側が勝手に想像するのも楽しい。

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